説明

耐火材付きセグメントおよびその製造方法

【課題】例えば掘削したトンネルの内面に覆工材として付設されるコンクリート製のセグメント、特に、その表面に耐火材を一体的に設けた耐火材付きセグメントおよびその製造方法に係り、耐火材にコンクリート重量による局部的に過大な力や無理な力が作用することなく容易・安価に耐火材付きセグメントを製造できるようにする。
【解決手段】 本発明による耐火材付きセグメントは、所定形状に成形したセグメント本体の表面に、耐火材形成用スラリーを所定厚さ被覆し固化させて形成してなる耐火材を一体的に設けたことを特徴とする。また本発明による耐火材付きセグメントの製造方法は、予め所定形状に成形したセグメント本体の表面に耐火材形成用スラリーを所定厚さ被覆して固化させることによって上記セグメントの表面に所定厚さの耐火材を一体的に形成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば掘削したトンネルの内面に覆工材として付設されるコンクリート製のセグメント、特に、その内周面に耐火材を一体的に設けた耐火材付きセグメントおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来たとえば掘削したトンネルの内面に覆工材としてコンクリート製のセグメントを付設し、そのセグメントの内周面に耐火材を設けたものは知られている。図3はその一例を示すもので、断面略円弧状に形成したコンクリート製のセグメント本体11の内周面に多数の耐火板12を並べて配置した構成である。
【0003】
また上記のような耐火材付きセグメントの製造方法として、上記のようなセグメント本体11を型枠等で所定の形状に成形する際に、それと同時に耐火材12を一体化するようにしたものは知られている(例えば下記特許文献1参照)。
【0004】
図4はその一例を示すもので、先ず同図(a)に示すように所定の略円弧状に形成した型枠本体130と蓋体131とからなるセグメント成形用型枠13における上記蓋体131を外した状態で上記型枠本体130内の底部に、予め所定形状に形成した耐火材12を配置する。図の場合は、成形すべきセグメント本体11の内周面と略同一の曲面形状に形成した板状の耐火材12を、型枠本体130内の底部130aに複数個並べて配置した構成である。
【0005】
上記のようにして型枠本体130内の底部130aに耐火材12を配置した状態で、上記型枠13内に必要に応じ補強鉄筋を配筋すると共に、図4(b)に示すように上記型枠本体130の上部開口に蓋体131を被せ、その蓋体131に形成した穴131aからセグメント本体11を形成するためのコンクリートを注入するもので、図の場合はコンクリート供給ポンプ(不図示)等に連通する供給管14の供給口14aから上記穴131aを介して上記型枠13内にコンクリートを順次供給する構成である。
【0006】
上記のようにして型枠13内にコンクリートを注入し、必要に応じて加振して成形することによって、図4(c)のように所定形状のセグメント本体11が形成されると共に、そのセグメント本体11の内周面(図で下面)側に上記の耐火材12が一体的に固着された状態となり、所定の養生期間経過後にそれを上記型枠13から取り出せば、前記図3に示すような耐火材12付きのセグメントが得られるものである。なお、前記セグメント本体11を成形する際に図4(a)のように予め上記耐火材12に、セグメント本体11側に突出する突起体15や凹凸を設けておけば、上記セグメント本体11と耐火材12とをより強固に一体化することができる。
【0007】
ところが、通常1つのセグメントを成形するために型枠内に投入するコンクリートの重量は概ね6トン程度あり、上記耐火材12やそれを配置する型枠13の底部内面に僅かな凹凸や歪みがあるだけでも、コンクリートの重量によって耐火材12に局部的に過大な力や無理な力や作用して破損する等のおそれがあった。又その場合、上記コンクリートを型枠内に投入中および養生中は耐火材12の破損の有無を確認することができず、脱型後に確認しなければならないので歩留まりが低下する。
【0008】
また、耐火材が破損したセグメントは、その破損した耐火材を剥がして新たな耐火材をセグメント本体に付け直さなければならないが、既に所定形状に成形したセグメント本体に耐火材を取付けるには、例えばセグメント本体に、あと施工アンカーを打設し、そのアンカーに耐火材をボルト止め等しなければならないので、多大な労力と時間を要すると共に、耐火材の表面にボルトが露出して外管体裁を損ねる等の問題があった。さらに、1つのセグメントにおいて隣接する耐火材と耐火材の間には目地が形成されてしまうので、その目地が耐火構造の弱点となるが、全ての目地を処理して完全な耐火構造にするのは大変手間がかかるものであった。
【0009】
【特許文献1】特許第3490907号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記の問題点に鑑みて提案されたもので、耐火材にコンクリート重量による局部的に過大な力や無理な力が作用することなく容易・安価に製造することのできる耐火材付きセグメントおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために本発明による耐火材付きセグメントおよびその製造方法は以下の構成としたものである。すなわち、本発明による耐火材付きセグメントは、所定形状に成形したセグメント本体の表面に、耐火材形成用スラリーを所定厚さ被覆し固化させて形成してなる耐火材を一体的に設けたことを特徴とする。上記セグメント本体と耐火材との間には必要に応じてメッシュ材を介在させることができる。
【0012】
また本発明による耐火材付きセグメントの製造方法は、予め所定形状に成形したセグメント本体の表面に耐火材形成用スラリーを所定厚さ被覆して固化させることによって上記セグメントの表面に所定厚さの耐火材を一体的に形成することを特徴とする。上記の所定形状に成形したセグメント本体の表面には必要に応じてメッシュ材を配置してから前記の耐火材成形用スラリーを流し込むようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明による耐火材付きセグメントおよびその製造方法は、上記のように所定形状に成形したセグメント本体の表面に、耐火材成形用スラリーを所定厚さ被覆し固化させて耐火材を一体的に設けるようにしたので、前記従来例のように耐火材に局部的に過大な力や無理な力が作用することなく、耐火材付きセグメントを容易・安価に製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明による耐火材付きセグメントおよびその製造方法を図に示す実施形態の基づいて具体的に説明する。
【0015】
図1は本発明による耐火材付きセグメントの一実施形態を示すもので同図(a)はその縦断面図、同図(b)はその一部の拡大図である。
【0016】
本実施形態は前記図3と同様にトンネル覆工用セグメントに適用したもので、セグメント本体1は前記と同様にコンクリートにより断面略円弧状に形成され、その内周面に、耐火材形成用スラリーを所定厚さ被覆し固化させて形成してなる耐火材2を一体的に設けたものである。その耐火材2の材質は適宜であるが、例えばアルミナセメント等のセメント系材料を主体としたもの等を用いることができる。
【0017】
上記セグメント本体1と耐火材2との間には、必要に応じてメッシュ材4を介在させるもので、図の場合は金網等からなるメッシュ材4を上記セグメント本体1と耐火材2との間に介在させることによって、そのメッシュ材4を介して上記セグメント本体1と耐火材2とが一体的に固着されている。図中、5は上記メッシュ材4をセグメント本体1に固定するためのボルト等の固定具である。
【0018】
次に、上記のような耐火材付きセグメントを製造する場合の製造プロセスの一例を図2に基づいて順を追って説明する。図2(a)は略円弧状の型枠本体30と蓋体31とからなるセグメント成形用型枠3内に、必要に応じて補強鉄筋を配筋すると共に、蓋体31に形成した穴31aからコンクリートを流し込み、必要に応じて加振してセグメント本体1を所定の形状に成形した状態を示す。なお前記図4の従来の型枠13は、略円弧状に形成されるセグメント本体1の内周面側が下になるようにして成形する構成としたが、本実施形態の型枠3はセグメント本体1の内周面側が上になるようにして成形する構成である。
【0019】
上記のようにして所定の形状に成形したセグメント本体1は、上記型枠3が脱型可能な状態となるまで養生し、ある程度硬化したところで、蓋体31のみを外し、セグメント本体1の表面(内面)のコンクリート面に、耐火材形成用スラリーを所定厚さ被覆して耐火材(耐火材層)2を形成するもので、その際、上記セグメント本体1と耐火材2との間に必要に応じて前述のようなメッシュ材4を介在させると、上記セグメント本体1と耐火材2とをより強固に一体化することができる。
【0020】
本実施形態は、図3(b)に示すように前記型枠3によって成形したセグメント本体1の上面の略全面に、金網等からなるメッシュ材4を配置したもので、そのメッシュ材4は本実施形態においては所定の強度発現前の状態のセグメント本体1にボルト等の固定具5を打ち込んで上記セグメント本体1の表面(内周面)に固定した構成である。
【0021】
そのメッシュ材4を配置したセグメント本体1の表面、もしくは上記メッシュ材4を配することなく上記セグメント本体1の表面に、耐火材形成用スラリーを被覆するもので、その被覆方法等は適宜であるが、本実施形態においては、図3(c)に示すように不図示のスラリー供給ポンプ等に連通する供給管6の供給口6aからセグメント本体1の表面に耐火材形成用スラリーを流し込んで所定厚さ被覆したものである。なお上記の耐火材形成用スラリーとしては、例えばアルミナセメント等のセメント系材料に耐熱骨材、無機又は有機の補強用繊維等を添加して撹拌混合した流動性のあるものを用いればよい。
【0022】
上記のようにしてセグメント本体1の表面に耐火材形成用スラリーを被覆した後は、そのまま放置するか、或いは必要に応じてコテ等で均して平滑化させたのち固化させて耐火材2を形成する。そして、その耐火材2がある程度硬化したところで型枠を取外し、所定の期間養生すれば、前記図1に示すような耐火材付きセグメントが得られるものである。
【0023】
上記のように本発明においては、セグメント本体1を予め所定形状に成形してから、そのセグメント本体1の表面(内周面)に耐火材成形用スラリーを被覆し固化させて耐火材を一体的に設けるようにしたことによって、前記従来のようにセグメント成形用型枠の底部に耐火材を配置してからコンクリートを流し込む場合のように耐火板に局部的に過大な力や無理な力が作用して破損するようなことがなく、耐火材付きセグメントを容易・安価に製造することができる。なお、耐火材形成用スラリーをセグメント本体1の表面に被覆する手段は上記の如く流し込むだけことに限定されるものではなく、その性状に応じて、吹付け、塗布、打設等の手段によって被覆しても良い。
【0024】
また従来の耐火材は円弧状セグメントの曲面に沿うように予め金型等で円弧状に成形加工する必要があり、その金型はトンネルの種類ごとに異なる半径に合わせて製作しなければならなかったが、本発明においては耐火板を成形するための金型自体が不要となり、セグメント本体1の表面に耐火材形成用スラリーを被覆して固化させるだけで、セグメント本体1の曲面に沿って湾曲した耐火材を容易・迅速に形成することができる。なお、こうして形成された耐火材にはセグメントの内面を被覆する形となって、セグメント表面上に目地が形成されないので、コンクリートセグメントの表面が目地による弱点に曝されることがない。即ち従来製法によるもののように目地処理に労力をかけなくともセグメントを耐火構造とすることが出来る。
【0025】
さらに前記従来の製法では、耐火板の製造工場で生産された耐火板を、セグメントの製造工場に輸送してセグメントと一体成形しなければならず、耐火板の製作コストや輸送費がかかり、コストが嵩むが、本発明においては予め耐火板を所定の形状に成形加工したり輸送する必要なく、セグメント生産の延長上で耐火板と一体成形することが可能となるので、製造コストを大幅に低減させることができる。
【0026】
特に、所定の形状に成形したセグメント本体1が所定の強度を発現するまで型枠を付けたままにしておかなくとも、表面の型枠のみを脱型した状態で耐火材形成用スラリーを流すことが出来、それによって製作日数を短縮することができる。なお、耐火材形成用スラリーを被覆する作業を行う際、上記セグメント本体1と耐火材2との間に前記のようなメッシュ材4を介在させると、上記セグメント本体1と耐火材2とを更に強固に一体化することができると共にスラリーを均一に流して耐火材の厚さを均一に保持することがより適確に可能となる。
【0027】
なお、上記のセグメント本体1は型枠3を全部取り外してから耐火材形成用スラリーを被覆するようにしてもよく、これによって型枠の稼動効率を上げて生産性を高めることが出来る。また、上記セグメント本体1を成形する際に、その表面(内周面)側に耐火材2の脱落防止用の突起状体を埋設したり、凹凸を形成してから耐火材形成用スラリーを被覆するようにしてもよい。また、その場合にも上記セグメント本体1と耐火材2との間にメッシュ材を介在させて一体化するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0028】
以上のように本発明によれば、前記従来のように耐火板が破損することなく耐火材付きセグメントを歩留まりよく製造できると共に、セグメントの製造工程の延長上で耐火材を取付けることができるので、耐火材付きセグメントを容易・安価に製造することが可能となり、産業上きわめて有効である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】(a)は本発明による耐火材付きセグメントの一実施形態を示す縦断面図、(b)はその一部の拡大図。
【図2】(a)〜(c)は本発明による耐火材付きセグメントの製造方法の一例を示す工程説明図。
【図3】(a)は従来の耐火材付きセグメントの一例を示す縦断面図、(b)はその一部の拡大図。
【図4】(a)〜(c)は従来の耐火材付きセグメントの製造方法の一例を示す工程説明図。
【符号の説明】
【0030】
1 セグメント本体
2 耐火板
3 型枠
30 型枠本体
31 蓋体
4 メッシュ材
5 固定具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定形状に成形したセグメント本体の表面に、耐火材形成用スラリーを所定厚さ被覆し固化させて形成してなる耐火材を一体的に設けたことを特徴とする耐火材付きセグメント。
【請求項2】
前記セグメント本体と耐火材との間にメッシュ材を介在させてなる請求項1に記載の耐火材付きセグメント。
【請求項3】
予め所定形状に成形したセグメント本体の表面に耐火材形成用スラリーを所定厚さ被覆して固化させることによって上記セグメントの表面に所定厚さの耐火材を一体的に形成することを特徴とする耐火材付きセグメントの製造方法。
【請求項4】
前記の所定形状に成形したセグメント本体の表面にメッシュ材を配置してから前記の耐火材成形用スラリーを流し込むようにした請求項3に記載の耐火材付きセグメントの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−132247(P2006−132247A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−324542(P2004−324542)
【出願日】平成16年11月9日(2004.11.9)
【出願人】(000129758)株式会社ケー・エフ・シー (120)
【Fターム(参考)】