耐火用接着剤、及び耐火構造体
【課題】
本発明は、耐火被覆材と木質部材との接合に用いることによって、より耐火性能に優れた耐火被覆を得ることができる接着剤を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明の耐火用接着剤は、建築物の耐火被覆等において、木質部材と耐火被覆材との接合に用いる接着剤であって、接着剤に含有される合成樹脂不揮発分の全量中にポリビニルアルコール及び/又はその誘導体を1〜100質量%含有することを特徴としている。図1は、木質部材に耐火用接着剤を介して耐火被覆材が接合された耐火構造体の断面を示している。
本発明は、耐火被覆材と木質部材との接合に用いることによって、より耐火性能に優れた耐火被覆を得ることができる接着剤を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明の耐火用接着剤は、建築物の耐火被覆等において、木質部材と耐火被覆材との接合に用いる接着剤であって、接着剤に含有される合成樹脂不揮発分の全量中にポリビニルアルコール及び/又はその誘導体を1〜100質量%含有することを特徴としている。図1は、木質部材に耐火用接着剤を介して耐火被覆材が接合された耐火構造体の断面を示している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質部材と耐火被覆材との接合に用いる耐火用接着剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、火災時に建築物の柱や梁などの構造部材、或いは非構造部材を火炎から保護すること目的として、柱や梁などに耐火被覆を施すことが行なわれている。
【0003】
耐火被覆は、柱や梁などの部材を耐火被覆材で覆うことによって行なわれる。部材を耐火被覆材で被覆する方法としては、塗料状の耐火被覆材を部材に塗装して部材の表面に耐火被覆材層を形成する方法や、シート状や板状の耐火被覆材を部材の表面に貼り付ける方法などがある。なお、耐火被覆材を部材の表面に貼り付ける方法では、耐火被覆材と部材との接合に接着剤が用いられることがあった。
【0004】
また、耐火被覆材で被覆される部材としては、鉄骨などの鋼材が主であるが、木質の部材を耐火被覆材で被覆することも行なわれていた。
【0005】
例えば、特許文献1には、「断面矩形状をなす長尺な木製基材の周囲を、発泡耐火材からなる発泡耐火層で被覆してなる耐火被覆木材」が記載されており、木製基材の周囲に発泡耐火層を形成する際には、木製基材の外側に発泡性耐火被覆材をコーティングしてもよいし、予め層状に成形した発泡性耐火被覆材を木製基材の外側に貼り付けるようにしてもよく、木製基材と発泡耐火層の間には、必要に応じて接着剤層を介在させることができることが記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開特開2011−38317号公報(特許請求の範囲、段落0017等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
耐火被覆材と木質部材との接合に接着剤を用いた場合、使用する接着剤よって耐火性能に違いが生じることがあるが、耐火被覆に用いる接着剤については十分な検討がされていなかった。
【0008】
本発明者は、耐火被覆材と木質部材との間に介在させる接着剤によって、耐火被覆材による耐火性能に違いが生じることに着目し、耐火被覆に適した接着剤を得るべく検討を重ねる上で、ポリビニルアルコール及び/又はその誘導体をある割合で含有させた接着剤を用いることによって、優れた耐火性能を持つ耐火被覆が得られることを見出し、本発明に至った。
【0009】
本発明は、耐火被覆材と木質部材との接合に用いることによって、より耐火性能に優れた耐火被覆を得ることができる接着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、耐火被覆材と木質部材との接合に用いる接着剤であって、接着剤に含有される合成樹脂不揮発分の全量中にポリビニルアルコール及び/又はその誘導体を1〜100質量%含有することを特徴とする耐火用接着剤である。
【0011】
請求項2に記載の発明は、木質部材に、請求項1に記載の耐火用接着剤を介して耐火被覆材が接合されていることを特徴とする耐火構造体である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の耐火用接着剤を耐火被覆材と木質部材との接合に用いることによって、より耐火性能に優れた耐火被覆を得ることができる。
【0013】
また、耐火用接着剤によって耐火被覆材と木質部材を接合して、耐火性能に優れた耐火構造体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の耐火用接着剤は、建築物の耐火被覆等において、木質部材と耐火被覆材との接合に用いる接着剤である。
【0015】
この耐火用接着剤は、接着剤に含有される合成樹脂(不揮発分)の全量中にポリビニルアルコール及び/又はその誘導体を1〜100質量%含有することを特徴としている。
【0016】
前記合成樹脂としては、具体的には、合成樹脂エマルションや水溶性高分子などが挙げられる。
【0017】
前記合成樹脂エマルションは、一般的に接着剤に用いられるもののなかから適宜選択して用いることができる。例えば、酢酸ビニル,エチレン酢酸ビニル,プロピオン酸ビニル,バーサティック酸ビニル等のビニル樹脂;(メタ)アクリル酸メチル樹脂、(メタ)アクリル酸エチル樹脂、(メタ)アクリル酸メチル樹脂、(メタ)アクリル酸エチル樹脂、(メタ)アクリル酸ブチル樹脂、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル樹脂、アクリロニトリル樹脂、メタクリロニトリル樹脂等のアクリル樹脂;ポリエステル樹脂;フッ素樹脂;エポキシ樹脂;ポリウレタン樹脂;ポリエーテル樹脂;酢酸ビニル樹脂;シリコーン樹脂等の合成樹脂を水に分散させたもの、或いは2種類以上の合成樹脂を共重合したものを水に分散させたものを用いることができる。また、2種類以上の合成樹脂エマルションを混合して用いてもよい。
【0018】
前記水溶性高分子とは、水に可溶な高分子をいい、一般には、分子量が10,000以上で、水酸基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、スルホン酸基等の水溶性基を有する高分子化合物をいう。例えば、ポリビニルアルコール、澱粉類、水溶性アクリル樹脂、水溶性アポリエステル樹脂、水溶性アポリアミド樹脂、水溶性アポリウレタン樹脂、セルロース誘導体(メチルセルロース 、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等)などが挙げられる。
【0019】
前記ポリビニルアルコールは以下の化学式で表わされる。
【0020】
【化1】
【0021】
なお、化1におけるOAcは酢酸基を示す。また、mは1以上の整数であり、nは0以上の整数である。
前記ポリビニルアルコールの誘導体とは、エチレン変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、カルボキシル変成ポリビニルアルコール、カチオン変成ポリビニルアルコール等の変成ポリビニルアルコールや、カルボニル基、カルボキシル基、アルキル基等の水酸基と酢酸基以外の官能基を有するポリビニルアルコールをいう。
【0022】
また、化1における「m+n」の値を重合度といい、「(m/(m+n))×100」の値をけん化度という。
【0023】
前記ポリビニルアルコール又はその誘導体の重合度は好ましくは300〜3500、より好ましくは500〜2500である。重合度がこの範囲にあるものを用いることによって、より耐火性能に優れた耐火被覆を得ることができる。
【0024】
前記ポリビニルアルコール又はその誘導体のけん化度は好ましくは70.0mol%以上、より好ましくは80.0〜99.0である。けん化度がこの範囲にあるとき、より耐火性能に優れた耐火被覆を得ることができる。
【0025】
前記合成樹脂の不揮発分の全量中におけるポリビニルアルコール又はその誘導体の含有率は好ましくは1〜100質量%であり、より好ましくは5〜50質量%であり、特に好ましくは10〜40質量%である。含有率がこの範囲にあるとき、耐火性能に優れた耐火被覆を得ることができる。含有率が小さすぎると耐火用接着剤の耐熱性が十分でなく耐火性能に優れた耐火被覆を得られない。なお、接着剤の接着性能や乾燥・硬化性や塗り作業性などを考慮した場合には、ポリビニルアルコール又はその誘導体は他の合成樹脂と併用することが好ましく、特には合成樹脂エマルションと併用することがより好ましい。
【0026】
前記耐火用接着剤には、本発明の効果を損なわない範囲において、前記合成樹脂以外の成分として、顔料、充填材、添加剤等を含有させてもよい。これらは、接着剤に通常用いられるものの中から適宜選択して用いればよい。
【0027】
前記木質部材としては、主には、建築物において耐火被覆を施される部位を形成している部材、具体的には柱や梁、或いは壁、床などの構造部材や非構造部材などが挙げられる。
【0028】
また、これらの構造部材や非構造部材が、複数の素材によって形成された複合部材である場合には、複合部材を形成する部材のうち木質ものも前記木質部材であって、耐火被覆材と木質部材を接合して複合部材を形成する場合においても耐火用接着剤を用いることができる。例えば、特開2010−242331に記載された集成木部材のように木製の板状部材(単板)と耐火被覆材とを交互に積層する際に、板状部材と耐火被覆材との接合に前記耐火用接着剤を使用することができる。
【0029】
前記耐火被覆材とは、耐火性能を有する板状やシート状などの成形体、或いは、塗料、塗り材、吹き付け材などのように被被覆物に塗布することによって耐火性能を有する耐火被覆層を形成する材料である。
【0030】
耐火被覆材は一般的に用いられているものであればよく、耐火被覆材の中でも特に、火災時に体積膨張して耐火断熱層を形成することによって耐火性能を発揮する発泡性耐火被覆材であることが好ましい。前記耐火用接着剤は、発泡性耐火被覆材用の接着剤として適しており、発泡性耐火被覆材の耐火性能を向上させることができる。
【0031】
発泡性耐火被覆材は、火災時に加熱されることによって、発泡・膨張して不燃性の多孔質な耐火断熱層を形成する耐火被覆材である。発泡性耐火被覆材はシート状等に成形されたものであっても塗料であってもよい。
【0032】
発泡性耐火被覆材としては、例えば、合成樹脂を結合材とし、火炎に晒されたときの加熱によって耐火断熱層を形成する炭化剤及び難燃性発泡剤を含有するものが挙げられる。
【0033】
前記合成樹脂は、発泡性耐火被覆材が火災に晒されて、発泡が開始するまでの間、発泡性耐火被覆材の形状を保持できるものであれば、特に限定はされない。
【0034】
前記合成樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、アクリル樹脂、アルキッド樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、エチレン/酢ビ樹脂、酢酸ビニル/バーサチック酸ビニルエステル共重合樹脂、酢酸ビニル/エチレン樹脂、酢酸ビニル/バーサチック酸/アクリル樹脂、酢酸ビニル/アクリル共重合樹脂、アクリル/スチレン共重合樹脂、ポリブタジエン樹脂等を挙げることができる。これらの樹脂は単独にて用いられてもよく、あるいは共重合したものもを用いても、またこれらを混合して用いてもよい。
【0035】
前記炭化剤は、加熱されることによって炭化して、発泡性耐火被覆材が火災に晒されて形成される耐火断熱層の多孔質構造の骨格を形成する成分である。
【0036】
炭化剤としては、例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトール等の多価アルコール、多糖類、膨張性黒鉛等の炭素、酸素、水素のみによって形成される物質を用いることができる。
【0037】
前記難燃性発泡剤は、加熱されることによって分解されて不燃性ガスを発生し、その不燃性ガスによって前記炭化剤が形成する炭化層を発泡させて、炭化層を多孔質なものとするための成分である。
【0038】
難燃性発泡剤としては、例えば、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、リン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸アルミニウム、ポリリン酸マグネシウムリン酸塩等のリン酸塩が好適に用いられるが、スルファミン酸塩(スルファミンアンモニウム等)、ホウ酸塩(ホウ酸アンモニウム等)等も用いることができる。
【0039】
さらに、発泡性耐火被覆材には、前記難燃性発泡剤以外の発泡剤として、含窒素発泡剤を含有させることができる。含窒素発泡剤としては、例えば、ジシアンジアミド、アゾジカルボンアミド、メラミンおよびトリメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサメトキシメチルメラミンを例とするその誘導体、尿素、ブチルウレア、ジメチルウレア、グアニルウレアフォスフェート、アミノグアニルウレア、尿素ホルムアルデヒド、アミノ酢酸、グアニジンなどが挙げられる。
【0040】
なお、前記発泡性耐火被覆材は、前記した成分以外にも、耐火性能を損なわない範囲において、その他の副資材を配合することができる。副資材には、通常、耐火被覆材に用いられる顔料、充填材、添加剤等を適宜用いればよい。
【0041】
副資材としては、例えば、アンモニア、炭酸ガス等の不燃性(消火性)ガスを発生する熱分解形の有機・無機発泡剤、酸化チタン、べんがら、黄鉛、鉄黄、チタン黄、ファストイエロー、アントラキノンイエロー、ベンジジンイエロー、フタロシアニングリーン、紺青、群青、フタロンシアニンブルー、カーボンブラック等の無機・有機顔料、炭酸カルシウム、アルミニウム粉末、水酸化アルミニウム、無機繊維、アルミナ、シリカ、珪藻土、シラスバルーン、パーライト、バーミキュライト、カオリナイトなどの充填剤、可塑剤、界面活性剤、増粘剤、消泡剤、造膜助剤等の添加剤などが挙げられる。
【0042】
前記耐火用接着剤は、次のようにして使用することができる。
耐火被覆材が板状やシート状に成形されたものである場合には、耐火用接着剤を耐火被覆材、又は耐火被覆材を貼り付ける木質部材に塗りつけて、耐火用接着剤が硬化する前に、耐火被覆材を木質部材に貼り付ける。
【0043】
耐火被覆材が成形体でなく、塗料、塗り材、吹き付け材などのように部材に塗布することによって耐火性能を有する層を形成する材料である場合には、耐火用接着剤を予め木質部材に塗りつけておいて、耐火用接着剤の未硬化時又は硬化後に、耐火用接着剤上に耐火被覆材を塗装する。
【0044】
耐火用接着剤を耐火被覆材や木質部材に塗りつける方法は特に限定されず、例えば、刷毛、ローラー、ヘラ、コテ、エアスプレー、エアレススプレー等の塗装器具や塗装機を用いればよい。
【実施例】
【0045】
(実施例1)
耐火構造体1として下記の仕様の柱材を作製した。この耐火構造体の断面図の概要を図1に示す。
耐火被覆を施す芯材11として、断面10cm×10cmの正方形であり、高さが3mの木質部材(杉の角柱)を用いた。
【0046】
芯材11の表面に耐火用接着剤12を塗りつけた耐火被覆材13を接着した後、耐火被覆材13の表面に更に仕上げ層14を形成した。
【0047】
なお、耐火用接着剤12は下記の組成のものを使用しており、耐火用接着剤12の硬化後の厚みは約0.5mmであった。
アクリル樹脂エマルション(不揮発分50質量%):100質量部
ポリビニルアルコール(重合度600、けん化度87mol%):15質量部
水:100質量部
【0048】
耐火被覆材13には、厚み2mmのシート状に成形された下記の組成の発泡性耐火被覆材を使用した。この発泡性耐火被覆材は250℃程度の温度で発泡して断熱層を形成する。このとき発泡の度合いは、発泡する際の周囲の温度や、仕上げ層の組成や厚み等の条件によって異なるが、外部からの拘束がない場合には10〜20倍に膨張する。
ペンタエリスリトール:100重量部
メラミン:100重量部
酢ビ/アクリル樹脂:350重量部
ポリリン酸アンモニウム:450重量部
二酸化チタン:200重量部。
【0049】
仕上げ層14には、厚み2mmの木質部材(杉の単板)を使用した。また、耐火被覆材13と仕上げ層14を形成する木質部材の接着にも前記の組成の耐火用接着剤12を使用した。なお、この耐火用接着剤12の硬化後の厚みは約0.5mmであった。
【0050】
(実施例2)
実施例1と異なる耐火用接着剤12を用いた以外は、実施例1と同じ耐火構造体を作製した。
【0051】
実施例2で使用した耐火用接着剤12は下記の組成は下記の通りである。
アクリル樹脂エマルション(不揮発分50質量%):100質量部
ポリビニルアルコール(重合度600、けん化度87mol%):6質量部
水:100質量部
【0052】
(実施例3)
実施例1と異なる耐火用接着剤12を用いた以外は、実施例1と同じ耐火構造体を作製した。
【0053】
実施例3で使用した耐火用接着剤12は下記の組成は下記の通りである。なお、ポリビニルアルコールの誘導体としてはシラノール変性ポリビニルアルコールを使用した。
アクリル樹脂エマルション(不揮発分50質量%):100質量部
ポリビニルアルコールの誘導体(重合度600、けん化度87mol%):30質量部
水:100質量部
【0054】
(比較例1)
実施例1で用いた耐火用接着剤12に代わって下記の接着剤を用いた以外は、実施例1と同じ耐火構造体を作製した。
【0055】
比較例1で使用した接着剤は下記の組成は下記の通りである。
アクリル樹脂エマルション(不揮発分50質量%):100質量部
【0056】
(比較例2)
実施例1で用いた耐火用接着剤12に代わって下記のエポキシ系接着剤を用いた以外は、実施例1と同じ耐火構造体を作製した。
【0057】
比較例2で使用したエポキシ系接着剤は下記の組成は下記の通りである。
エポキシ樹脂主剤:100質量部
アミン系硬化剤 : 40質量部
【0058】
<燃焼試験>
実施例1〜3及び比較例1,2の耐火構造体を、それぞれ1.2mの高さに切断し、燃焼試験用の試験体として用いた。なお、各試験体には、予め芯材11の表面に表面温度測定用の熱電対を埋設しておいた。熱電対は、測定位置が芯材11である角柱の側面の中心(底面から高さ0.6mの位置)になるように設置し、角柱に4面ある側面の全てに設置した。
燃焼試験では、各試験体をガス炉に立て、各試験体の上下の端から10cmを厚み3cmのグラスウールで覆った。各試験体をガス炉に設置後、ガス炉を点火し、ISO834の標準加熱温度曲線の加熱を30分間行った。
【0059】
図2に、燃焼試験の結果として実施例1、比較例1、比較例2の温度上昇を示すグラフを示す。なお、グラフに示す各試験体の温度は、上記した4箇所の測定位置で測定した温度の平均値である。また、グラフ中の「ISO」は、ISO834の標準加熱温度曲線を示している。
【0060】
燃焼試験の結果、実施例1〜3の各試験体は、芯材11の表面温度がほぼ同じように上昇し、30分後の温度はいずれも約400℃であったが、比較例1,2の各試験体では、実施例1〜3の各試験体と比較して芯材11の表面温度が大きく上昇し、比較例1の30分後の温度は約750℃で、比較例2の30分後の温度は約670℃であった。
【0061】
比較例1,2の試験体では、実施例1〜3の試験体では見られなかった現象として、芯材11から耐火被覆材が剥離する、耐火被覆材が下方にずり落ちるといった現象が確認でき、そのため、芯材11の表面温度が大きく上昇したと考えられる。
【0062】
このことから、実施例1〜3に使用したようなポリビニルアルコール及び/又はその誘導体を含有する耐火用接着剤を用いれば、比較例1,2に使用したような接着剤を用いるより、耐火性能に優れた耐火被覆を形成することができる。また、実施例1〜3に使用した耐火用接着剤であれば、どれも同程度の効果が得られる。
【0063】
更に、下記仕様についても燃焼試験を行なった。
(実施例4)
実施例1と異なる耐火用接着剤12を用いた以外は、実施例1と同じ耐火構造体を作製した。
【0064】
実施例2で使用した耐火用接着剤12は下記の組成は下記の通りである。
アクリル樹脂エマルション(不揮発分50質量%):100質量部
ポリビニルアルコール(重合度600、けん化度87mol%):3質量部
水:100質量部
【0065】
燃焼試験の結果、芯材11の30分後の表面温度はいずれも約500℃であった。
【0066】
(実施例5)
実施例1と異なる耐火用接着剤12を用いた以外は、実施例1と同じ耐火構造体を作製した。
【0067】
実施例2で使用した耐火用接着剤12は下記の組成は下記の通りである。
ポリビニルアルコール(重合度600、けん化度87mol%):15質量部
水:100質量部
【0068】
燃焼試験の結果、芯材11の30分後の表面温度はいずれも約400℃であった。
【0069】
(実施例6)
実施例1の仕様の耐火構造体の表面に、更に耐火被覆材を形成した。
まず、実施例1の仕様の耐火構造体の表面に、耐火用接着剤を塗りつけた耐火被覆材を接着し、耐火被覆材の表面に仕上げ層を形成した。なお、この耐火用接着剤と耐火被覆材、及び仕上げ層を形成する木質部材には、実施例1で使用したものと同様のものを使用した
【0070】
燃焼試験の結果、芯材11の30分後の表面温度はいずれも約320℃であった。
耐火被覆材層が2層あることで、耐火性能が向上し、芯材の表面温度の上昇を抑制できたといえる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】耐火構造体の断面の概要を示す断面図
【図2】燃焼試験の結果を示すグラフ
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質部材と耐火被覆材との接合に用いる耐火用接着剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、火災時に建築物の柱や梁などの構造部材、或いは非構造部材を火炎から保護すること目的として、柱や梁などに耐火被覆を施すことが行なわれている。
【0003】
耐火被覆は、柱や梁などの部材を耐火被覆材で覆うことによって行なわれる。部材を耐火被覆材で被覆する方法としては、塗料状の耐火被覆材を部材に塗装して部材の表面に耐火被覆材層を形成する方法や、シート状や板状の耐火被覆材を部材の表面に貼り付ける方法などがある。なお、耐火被覆材を部材の表面に貼り付ける方法では、耐火被覆材と部材との接合に接着剤が用いられることがあった。
【0004】
また、耐火被覆材で被覆される部材としては、鉄骨などの鋼材が主であるが、木質の部材を耐火被覆材で被覆することも行なわれていた。
【0005】
例えば、特許文献1には、「断面矩形状をなす長尺な木製基材の周囲を、発泡耐火材からなる発泡耐火層で被覆してなる耐火被覆木材」が記載されており、木製基材の周囲に発泡耐火層を形成する際には、木製基材の外側に発泡性耐火被覆材をコーティングしてもよいし、予め層状に成形した発泡性耐火被覆材を木製基材の外側に貼り付けるようにしてもよく、木製基材と発泡耐火層の間には、必要に応じて接着剤層を介在させることができることが記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開特開2011−38317号公報(特許請求の範囲、段落0017等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
耐火被覆材と木質部材との接合に接着剤を用いた場合、使用する接着剤よって耐火性能に違いが生じることがあるが、耐火被覆に用いる接着剤については十分な検討がされていなかった。
【0008】
本発明者は、耐火被覆材と木質部材との間に介在させる接着剤によって、耐火被覆材による耐火性能に違いが生じることに着目し、耐火被覆に適した接着剤を得るべく検討を重ねる上で、ポリビニルアルコール及び/又はその誘導体をある割合で含有させた接着剤を用いることによって、優れた耐火性能を持つ耐火被覆が得られることを見出し、本発明に至った。
【0009】
本発明は、耐火被覆材と木質部材との接合に用いることによって、より耐火性能に優れた耐火被覆を得ることができる接着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、耐火被覆材と木質部材との接合に用いる接着剤であって、接着剤に含有される合成樹脂不揮発分の全量中にポリビニルアルコール及び/又はその誘導体を1〜100質量%含有することを特徴とする耐火用接着剤である。
【0011】
請求項2に記載の発明は、木質部材に、請求項1に記載の耐火用接着剤を介して耐火被覆材が接合されていることを特徴とする耐火構造体である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の耐火用接着剤を耐火被覆材と木質部材との接合に用いることによって、より耐火性能に優れた耐火被覆を得ることができる。
【0013】
また、耐火用接着剤によって耐火被覆材と木質部材を接合して、耐火性能に優れた耐火構造体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の耐火用接着剤は、建築物の耐火被覆等において、木質部材と耐火被覆材との接合に用いる接着剤である。
【0015】
この耐火用接着剤は、接着剤に含有される合成樹脂(不揮発分)の全量中にポリビニルアルコール及び/又はその誘導体を1〜100質量%含有することを特徴としている。
【0016】
前記合成樹脂としては、具体的には、合成樹脂エマルションや水溶性高分子などが挙げられる。
【0017】
前記合成樹脂エマルションは、一般的に接着剤に用いられるもののなかから適宜選択して用いることができる。例えば、酢酸ビニル,エチレン酢酸ビニル,プロピオン酸ビニル,バーサティック酸ビニル等のビニル樹脂;(メタ)アクリル酸メチル樹脂、(メタ)アクリル酸エチル樹脂、(メタ)アクリル酸メチル樹脂、(メタ)アクリル酸エチル樹脂、(メタ)アクリル酸ブチル樹脂、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル樹脂、アクリロニトリル樹脂、メタクリロニトリル樹脂等のアクリル樹脂;ポリエステル樹脂;フッ素樹脂;エポキシ樹脂;ポリウレタン樹脂;ポリエーテル樹脂;酢酸ビニル樹脂;シリコーン樹脂等の合成樹脂を水に分散させたもの、或いは2種類以上の合成樹脂を共重合したものを水に分散させたものを用いることができる。また、2種類以上の合成樹脂エマルションを混合して用いてもよい。
【0018】
前記水溶性高分子とは、水に可溶な高分子をいい、一般には、分子量が10,000以上で、水酸基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、スルホン酸基等の水溶性基を有する高分子化合物をいう。例えば、ポリビニルアルコール、澱粉類、水溶性アクリル樹脂、水溶性アポリエステル樹脂、水溶性アポリアミド樹脂、水溶性アポリウレタン樹脂、セルロース誘導体(メチルセルロース 、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等)などが挙げられる。
【0019】
前記ポリビニルアルコールは以下の化学式で表わされる。
【0020】
【化1】
【0021】
なお、化1におけるOAcは酢酸基を示す。また、mは1以上の整数であり、nは0以上の整数である。
前記ポリビニルアルコールの誘導体とは、エチレン変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、カルボキシル変成ポリビニルアルコール、カチオン変成ポリビニルアルコール等の変成ポリビニルアルコールや、カルボニル基、カルボキシル基、アルキル基等の水酸基と酢酸基以外の官能基を有するポリビニルアルコールをいう。
【0022】
また、化1における「m+n」の値を重合度といい、「(m/(m+n))×100」の値をけん化度という。
【0023】
前記ポリビニルアルコール又はその誘導体の重合度は好ましくは300〜3500、より好ましくは500〜2500である。重合度がこの範囲にあるものを用いることによって、より耐火性能に優れた耐火被覆を得ることができる。
【0024】
前記ポリビニルアルコール又はその誘導体のけん化度は好ましくは70.0mol%以上、より好ましくは80.0〜99.0である。けん化度がこの範囲にあるとき、より耐火性能に優れた耐火被覆を得ることができる。
【0025】
前記合成樹脂の不揮発分の全量中におけるポリビニルアルコール又はその誘導体の含有率は好ましくは1〜100質量%であり、より好ましくは5〜50質量%であり、特に好ましくは10〜40質量%である。含有率がこの範囲にあるとき、耐火性能に優れた耐火被覆を得ることができる。含有率が小さすぎると耐火用接着剤の耐熱性が十分でなく耐火性能に優れた耐火被覆を得られない。なお、接着剤の接着性能や乾燥・硬化性や塗り作業性などを考慮した場合には、ポリビニルアルコール又はその誘導体は他の合成樹脂と併用することが好ましく、特には合成樹脂エマルションと併用することがより好ましい。
【0026】
前記耐火用接着剤には、本発明の効果を損なわない範囲において、前記合成樹脂以外の成分として、顔料、充填材、添加剤等を含有させてもよい。これらは、接着剤に通常用いられるものの中から適宜選択して用いればよい。
【0027】
前記木質部材としては、主には、建築物において耐火被覆を施される部位を形成している部材、具体的には柱や梁、或いは壁、床などの構造部材や非構造部材などが挙げられる。
【0028】
また、これらの構造部材や非構造部材が、複数の素材によって形成された複合部材である場合には、複合部材を形成する部材のうち木質ものも前記木質部材であって、耐火被覆材と木質部材を接合して複合部材を形成する場合においても耐火用接着剤を用いることができる。例えば、特開2010−242331に記載された集成木部材のように木製の板状部材(単板)と耐火被覆材とを交互に積層する際に、板状部材と耐火被覆材との接合に前記耐火用接着剤を使用することができる。
【0029】
前記耐火被覆材とは、耐火性能を有する板状やシート状などの成形体、或いは、塗料、塗り材、吹き付け材などのように被被覆物に塗布することによって耐火性能を有する耐火被覆層を形成する材料である。
【0030】
耐火被覆材は一般的に用いられているものであればよく、耐火被覆材の中でも特に、火災時に体積膨張して耐火断熱層を形成することによって耐火性能を発揮する発泡性耐火被覆材であることが好ましい。前記耐火用接着剤は、発泡性耐火被覆材用の接着剤として適しており、発泡性耐火被覆材の耐火性能を向上させることができる。
【0031】
発泡性耐火被覆材は、火災時に加熱されることによって、発泡・膨張して不燃性の多孔質な耐火断熱層を形成する耐火被覆材である。発泡性耐火被覆材はシート状等に成形されたものであっても塗料であってもよい。
【0032】
発泡性耐火被覆材としては、例えば、合成樹脂を結合材とし、火炎に晒されたときの加熱によって耐火断熱層を形成する炭化剤及び難燃性発泡剤を含有するものが挙げられる。
【0033】
前記合成樹脂は、発泡性耐火被覆材が火災に晒されて、発泡が開始するまでの間、発泡性耐火被覆材の形状を保持できるものであれば、特に限定はされない。
【0034】
前記合成樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、アクリル樹脂、アルキッド樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、エチレン/酢ビ樹脂、酢酸ビニル/バーサチック酸ビニルエステル共重合樹脂、酢酸ビニル/エチレン樹脂、酢酸ビニル/バーサチック酸/アクリル樹脂、酢酸ビニル/アクリル共重合樹脂、アクリル/スチレン共重合樹脂、ポリブタジエン樹脂等を挙げることができる。これらの樹脂は単独にて用いられてもよく、あるいは共重合したものもを用いても、またこれらを混合して用いてもよい。
【0035】
前記炭化剤は、加熱されることによって炭化して、発泡性耐火被覆材が火災に晒されて形成される耐火断熱層の多孔質構造の骨格を形成する成分である。
【0036】
炭化剤としては、例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトール等の多価アルコール、多糖類、膨張性黒鉛等の炭素、酸素、水素のみによって形成される物質を用いることができる。
【0037】
前記難燃性発泡剤は、加熱されることによって分解されて不燃性ガスを発生し、その不燃性ガスによって前記炭化剤が形成する炭化層を発泡させて、炭化層を多孔質なものとするための成分である。
【0038】
難燃性発泡剤としては、例えば、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、リン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸アルミニウム、ポリリン酸マグネシウムリン酸塩等のリン酸塩が好適に用いられるが、スルファミン酸塩(スルファミンアンモニウム等)、ホウ酸塩(ホウ酸アンモニウム等)等も用いることができる。
【0039】
さらに、発泡性耐火被覆材には、前記難燃性発泡剤以外の発泡剤として、含窒素発泡剤を含有させることができる。含窒素発泡剤としては、例えば、ジシアンジアミド、アゾジカルボンアミド、メラミンおよびトリメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサメトキシメチルメラミンを例とするその誘導体、尿素、ブチルウレア、ジメチルウレア、グアニルウレアフォスフェート、アミノグアニルウレア、尿素ホルムアルデヒド、アミノ酢酸、グアニジンなどが挙げられる。
【0040】
なお、前記発泡性耐火被覆材は、前記した成分以外にも、耐火性能を損なわない範囲において、その他の副資材を配合することができる。副資材には、通常、耐火被覆材に用いられる顔料、充填材、添加剤等を適宜用いればよい。
【0041】
副資材としては、例えば、アンモニア、炭酸ガス等の不燃性(消火性)ガスを発生する熱分解形の有機・無機発泡剤、酸化チタン、べんがら、黄鉛、鉄黄、チタン黄、ファストイエロー、アントラキノンイエロー、ベンジジンイエロー、フタロシアニングリーン、紺青、群青、フタロンシアニンブルー、カーボンブラック等の無機・有機顔料、炭酸カルシウム、アルミニウム粉末、水酸化アルミニウム、無機繊維、アルミナ、シリカ、珪藻土、シラスバルーン、パーライト、バーミキュライト、カオリナイトなどの充填剤、可塑剤、界面活性剤、増粘剤、消泡剤、造膜助剤等の添加剤などが挙げられる。
【0042】
前記耐火用接着剤は、次のようにして使用することができる。
耐火被覆材が板状やシート状に成形されたものである場合には、耐火用接着剤を耐火被覆材、又は耐火被覆材を貼り付ける木質部材に塗りつけて、耐火用接着剤が硬化する前に、耐火被覆材を木質部材に貼り付ける。
【0043】
耐火被覆材が成形体でなく、塗料、塗り材、吹き付け材などのように部材に塗布することによって耐火性能を有する層を形成する材料である場合には、耐火用接着剤を予め木質部材に塗りつけておいて、耐火用接着剤の未硬化時又は硬化後に、耐火用接着剤上に耐火被覆材を塗装する。
【0044】
耐火用接着剤を耐火被覆材や木質部材に塗りつける方法は特に限定されず、例えば、刷毛、ローラー、ヘラ、コテ、エアスプレー、エアレススプレー等の塗装器具や塗装機を用いればよい。
【実施例】
【0045】
(実施例1)
耐火構造体1として下記の仕様の柱材を作製した。この耐火構造体の断面図の概要を図1に示す。
耐火被覆を施す芯材11として、断面10cm×10cmの正方形であり、高さが3mの木質部材(杉の角柱)を用いた。
【0046】
芯材11の表面に耐火用接着剤12を塗りつけた耐火被覆材13を接着した後、耐火被覆材13の表面に更に仕上げ層14を形成した。
【0047】
なお、耐火用接着剤12は下記の組成のものを使用しており、耐火用接着剤12の硬化後の厚みは約0.5mmであった。
アクリル樹脂エマルション(不揮発分50質量%):100質量部
ポリビニルアルコール(重合度600、けん化度87mol%):15質量部
水:100質量部
【0048】
耐火被覆材13には、厚み2mmのシート状に成形された下記の組成の発泡性耐火被覆材を使用した。この発泡性耐火被覆材は250℃程度の温度で発泡して断熱層を形成する。このとき発泡の度合いは、発泡する際の周囲の温度や、仕上げ層の組成や厚み等の条件によって異なるが、外部からの拘束がない場合には10〜20倍に膨張する。
ペンタエリスリトール:100重量部
メラミン:100重量部
酢ビ/アクリル樹脂:350重量部
ポリリン酸アンモニウム:450重量部
二酸化チタン:200重量部。
【0049】
仕上げ層14には、厚み2mmの木質部材(杉の単板)を使用した。また、耐火被覆材13と仕上げ層14を形成する木質部材の接着にも前記の組成の耐火用接着剤12を使用した。なお、この耐火用接着剤12の硬化後の厚みは約0.5mmであった。
【0050】
(実施例2)
実施例1と異なる耐火用接着剤12を用いた以外は、実施例1と同じ耐火構造体を作製した。
【0051】
実施例2で使用した耐火用接着剤12は下記の組成は下記の通りである。
アクリル樹脂エマルション(不揮発分50質量%):100質量部
ポリビニルアルコール(重合度600、けん化度87mol%):6質量部
水:100質量部
【0052】
(実施例3)
実施例1と異なる耐火用接着剤12を用いた以外は、実施例1と同じ耐火構造体を作製した。
【0053】
実施例3で使用した耐火用接着剤12は下記の組成は下記の通りである。なお、ポリビニルアルコールの誘導体としてはシラノール変性ポリビニルアルコールを使用した。
アクリル樹脂エマルション(不揮発分50質量%):100質量部
ポリビニルアルコールの誘導体(重合度600、けん化度87mol%):30質量部
水:100質量部
【0054】
(比較例1)
実施例1で用いた耐火用接着剤12に代わって下記の接着剤を用いた以外は、実施例1と同じ耐火構造体を作製した。
【0055】
比較例1で使用した接着剤は下記の組成は下記の通りである。
アクリル樹脂エマルション(不揮発分50質量%):100質量部
【0056】
(比較例2)
実施例1で用いた耐火用接着剤12に代わって下記のエポキシ系接着剤を用いた以外は、実施例1と同じ耐火構造体を作製した。
【0057】
比較例2で使用したエポキシ系接着剤は下記の組成は下記の通りである。
エポキシ樹脂主剤:100質量部
アミン系硬化剤 : 40質量部
【0058】
<燃焼試験>
実施例1〜3及び比較例1,2の耐火構造体を、それぞれ1.2mの高さに切断し、燃焼試験用の試験体として用いた。なお、各試験体には、予め芯材11の表面に表面温度測定用の熱電対を埋設しておいた。熱電対は、測定位置が芯材11である角柱の側面の中心(底面から高さ0.6mの位置)になるように設置し、角柱に4面ある側面の全てに設置した。
燃焼試験では、各試験体をガス炉に立て、各試験体の上下の端から10cmを厚み3cmのグラスウールで覆った。各試験体をガス炉に設置後、ガス炉を点火し、ISO834の標準加熱温度曲線の加熱を30分間行った。
【0059】
図2に、燃焼試験の結果として実施例1、比較例1、比較例2の温度上昇を示すグラフを示す。なお、グラフに示す各試験体の温度は、上記した4箇所の測定位置で測定した温度の平均値である。また、グラフ中の「ISO」は、ISO834の標準加熱温度曲線を示している。
【0060】
燃焼試験の結果、実施例1〜3の各試験体は、芯材11の表面温度がほぼ同じように上昇し、30分後の温度はいずれも約400℃であったが、比較例1,2の各試験体では、実施例1〜3の各試験体と比較して芯材11の表面温度が大きく上昇し、比較例1の30分後の温度は約750℃で、比較例2の30分後の温度は約670℃であった。
【0061】
比較例1,2の試験体では、実施例1〜3の試験体では見られなかった現象として、芯材11から耐火被覆材が剥離する、耐火被覆材が下方にずり落ちるといった現象が確認でき、そのため、芯材11の表面温度が大きく上昇したと考えられる。
【0062】
このことから、実施例1〜3に使用したようなポリビニルアルコール及び/又はその誘導体を含有する耐火用接着剤を用いれば、比較例1,2に使用したような接着剤を用いるより、耐火性能に優れた耐火被覆を形成することができる。また、実施例1〜3に使用した耐火用接着剤であれば、どれも同程度の効果が得られる。
【0063】
更に、下記仕様についても燃焼試験を行なった。
(実施例4)
実施例1と異なる耐火用接着剤12を用いた以外は、実施例1と同じ耐火構造体を作製した。
【0064】
実施例2で使用した耐火用接着剤12は下記の組成は下記の通りである。
アクリル樹脂エマルション(不揮発分50質量%):100質量部
ポリビニルアルコール(重合度600、けん化度87mol%):3質量部
水:100質量部
【0065】
燃焼試験の結果、芯材11の30分後の表面温度はいずれも約500℃であった。
【0066】
(実施例5)
実施例1と異なる耐火用接着剤12を用いた以外は、実施例1と同じ耐火構造体を作製した。
【0067】
実施例2で使用した耐火用接着剤12は下記の組成は下記の通りである。
ポリビニルアルコール(重合度600、けん化度87mol%):15質量部
水:100質量部
【0068】
燃焼試験の結果、芯材11の30分後の表面温度はいずれも約400℃であった。
【0069】
(実施例6)
実施例1の仕様の耐火構造体の表面に、更に耐火被覆材を形成した。
まず、実施例1の仕様の耐火構造体の表面に、耐火用接着剤を塗りつけた耐火被覆材を接着し、耐火被覆材の表面に仕上げ層を形成した。なお、この耐火用接着剤と耐火被覆材、及び仕上げ層を形成する木質部材には、実施例1で使用したものと同様のものを使用した
【0070】
燃焼試験の結果、芯材11の30分後の表面温度はいずれも約320℃であった。
耐火被覆材層が2層あることで、耐火性能が向上し、芯材の表面温度の上昇を抑制できたといえる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】耐火構造体の断面の概要を示す断面図
【図2】燃焼試験の結果を示すグラフ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐火被覆材と木質部材との接合に用いる接着剤であって、接着剤に含有される合成樹脂不揮発分の全量中にポリビニルアルコール及び/又はその誘導体を1〜100質量%含有することを特徴とする耐火用接着剤。
【請求項2】
木質部材に、請求項1に記載の耐火用接着剤を介して耐火被覆材が接合されていることを特徴とする耐火構造体。
【請求項1】
耐火被覆材と木質部材との接合に用いる接着剤であって、接着剤に含有される合成樹脂不揮発分の全量中にポリビニルアルコール及び/又はその誘導体を1〜100質量%含有することを特徴とする耐火用接着剤。
【請求項2】
木質部材に、請求項1に記載の耐火用接着剤を介して耐火被覆材が接合されていることを特徴とする耐火構造体。
【図1】
【図2】
【図2】
【公開番号】特開2013−68024(P2013−68024A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208350(P2011−208350)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000159032)菊水化学工業株式会社 (121)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000159032)菊水化学工業株式会社 (121)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]