耐火補強建築部材および建築部材の耐火補強方法
【課題】耐火性を高める作業が容易である、扉、サッシ等の耐火補強建築部材および建築部材の耐火補強方法を提供すること。
【解決手段】中空部を有する建築部材であって、前記建築部材の内部に熱膨張性耐火材料が注入され、前記建築部材の内部に注入される前の前記熱膨張性耐火材料の25℃における粘度が、1000〜100000 mPa・sの範囲であり、
前記熱膨張性耐火材料が、前記建築部材の内部に注入された後に、25℃において前記建築部材の内部で流動性を失うことを特徴とする、耐火補強建築部材。
【解決手段】中空部を有する建築部材であって、前記建築部材の内部に熱膨張性耐火材料が注入され、前記建築部材の内部に注入される前の前記熱膨張性耐火材料の25℃における粘度が、1000〜100000 mPa・sの範囲であり、
前記熱膨張性耐火材料が、前記建築部材の内部に注入された後に、25℃において前記建築部材の内部で流動性を失うことを特徴とする、耐火補強建築部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐火補強建築部材および建築部材の耐火補強方法に関し、より詳しくは住宅等の構造物の開口部等に設置される扉、サッシ等の耐火補強建築部材および建築部材の耐火補強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅等の構造物の開口部等に設置される建築部材として、扉、サッシ等が使用されている。
住宅等の構造物の内部または外部で火災が発生した場合にはこの火災による延焼を防ぐ必要がある。火災の炎等が扉、サッシ等の建築部材を貫通して延焼することがないように、扉、サッシ等の建築部材の耐火性を高めることが重要な課題となる。
この課題に関連して、サッシの耐火性を高める技術が提案されている。
具体的には、合成樹脂からなる枠材と耐火性のある板材とを備えたサッシについて、そのサッシに使用される枠材の長手方向に複数の空洞が設けられていて、この空洞に熱膨張性耐火部材と木質部材とが挿入されている防火性樹脂サッシが提案されている(特許文献1)。
この防火性樹脂サッシは枠材の長手方向に熱膨張性耐火部材が挿入されているため、合成樹脂からなる枠材が溶融、焼失した場合でも熱膨張性耐火部材による熱膨張残渣が火災の炎や熱を遮断する。これによりサッシの耐火性を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−9305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記に説明した通り、サッシに使用される枠材の空洞内部に熱膨張性耐火部材が事前に挿入されている場合には、上記の先行技術によりサッシの耐火性を高めることが可能である。
しかしながらサッシに使用される枠材の空洞内部に熱膨張性耐火部材が挿入されていない場合には、サッシに使用される枠材の空洞内部に後から熱膨張性耐火部材を挿入しなければならない。
サッシに使用される枠材の内部の空洞は、通常は外部からは見えない位置にあるから、前記枠材の空洞内部に熱膨張性耐火部材を挿入する場合には、サッシを住宅等の構造物の開口部から取り外して前記枠材を分解する必要がある。
ところが前記開口部が住宅等の構造物の外部に面している場合には、前記開口部からサッシを取り外すと、住宅等の構造物の内部と外部とを隔てるものがなくなるために住宅等の構造物内部の温度管理等が困難になる問題がある。
また外部で雨が降り、風が吹いている場合にはこれらの雨や風等が住宅等の構造物内部に侵入する問題もある。
これらの問題は、住宅等が高層マンション、高層ビル等の場合、季節が梅雨等の降雨が多い時期、冬の降雪が多い時期等の場合にはより深刻な問題となる。
この問題に対応するために、別途閉塞板を準備してサッシを住宅等の構造物の開口部から取り外している間は、その開口部を前記閉塞板により塞ぐ手段も考えられる。
しかしながら、実際の施工現場のサッシの形状は多種多様であるため、施工現場毎にサッシの形状に合わせた多数の閉塞板を準備しなければならず、サッシの耐火性を高める作業が煩雑となり作業に時間がかかる問題があった。
【0005】
本発明の目的は、耐火性を高める作業が容易である、扉、サッシ等の耐火補強建築部材および建築部材の耐火補強方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため本発明者らが鋭意検討した結果、中空部を有する建築部材であって、前記建築部材に熱膨張性耐火材料が注入されてなる耐火補強建築部材が本発明の目的に適うことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、
[1]中空部を有する建築部材であって、
前記建築部材の内部に熱膨張性耐火材料が注入され、
前記建築部材の内部に注入される前の前記熱膨張性耐火材料の25℃における粘度が、1000〜100000 mPa・sの範囲であり、
前記熱膨張性耐火材料が、前記建築部材の内部に注入された後に、25℃において前記建築部材の内部で流動性を失うことを特徴とする、耐火補強建築部材を提供するものである。
【0008】
また本発明の一つは、
[2]前記建築部材が、長手方向に沿って内部に空洞が形成されている枠材と、耐火性を有する板材と、を少なくとも有し、
前記耐火性を有する板材が、前記枠材により支持され、、
前記熱膨張性耐火材料が、前記枠材の内部の空洞に注入されている、上記[1]に記載の耐火補強建築部材を提供するものである。
【0009】
また本発明の一つは、
[3]前記建築部材が二以上の板材を備え、
前記熱膨張性耐火材料が、互いに向き合う板材同士の間に形成される空間に注入されている、上記[1]または[2]に記載の耐火補強建築部材を提供するものである。
【0010】
また本発明の一つは、
[4]前記熱膨張性耐火材料が、反応硬化性樹脂成分、熱膨張成分および無機充填材を少なくとも含む、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の耐火補強建築部材を提供するものである。
【0011】
また本発明の一つは、
[5]前記熱膨張性耐火材料に含まれる反応硬化性樹脂成分が、ウレタン樹脂フォーム、イソシアヌレート樹脂フォーム、エポキシ樹脂フォーム、フェノール樹脂フォーム、尿素樹脂フォーム、不飽和ポリエステル樹脂フォーム、アルキド樹脂フォーム、メラミン樹脂フォーム、ジアリルフタレート樹脂フォームおよびシリコーン樹脂フォームからなる群から選ばれる少なくとも一つである、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の耐火補強建築部材を提供するものである。
【0012】
また本発明の一つは、
[6]前記熱膨張性耐火材料に含まれる熱膨張成分が、熱膨張性黒鉛および熱膨張性樹脂組成物の成形体粉砕品の少なくとも一方を含む、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の耐火補強建築部材を提供するものである。
【0013】
また本発明の一つは、
[7]前記熱膨張性耐火材料が、リン化合物を含む、上記[1]〜[6]のいずれかに記載の耐火補強建築部材を提供するものである。
【0014】
また本発明の一つは、
[8]前記熱膨張性耐火材料に含まれる無機充填材が、炭酸カルシウムを含む、上記[1]〜[7]のいずれかに記載の耐火補強建築部材を提供するものである。
【0015】
また本発明の一つは、
[9]前記熱膨張性耐火材料が、
前記枠材の内部の空洞のうち最も外側にある空洞の内面
および
前記板材同士の間に形成される空間のうち最も外側にある空間の内面
の少なくとも一方に接して注入されている、上記[1]〜[8]のいずれかに記載の耐火補強建築部材を提供するものである。
【0016】
また本発明の一つは、
[10]前記建築部材が、サッシおよび扉の少なくとも一つである、上記[1]〜[9]のいずれかに記載の耐火補強建築部材を提供するものである。
【0017】
また本発明の一つは、
[11]前記サッシまたは扉が、それぞれ、合成樹脂材、金属材、木材および無機材からなる群より選ばれる少なくとも一つからなる、上記[10]に記載の耐火補強建築部材を提供するものである。
【0018】
また本発明は、
[12]構造物の開口部に設置される建築部材に対する耐火補強方法であって、
25℃における粘度が1000〜100000 mPa・sの範囲である熱膨張性耐火材料を前記建築部材の内部に注入する工程と、
前記熱膨張性耐火材料を前記建築部材内部で反応させて、前記熱膨張性耐火材料の流動性を失わせる工程と、
を少なくとも有することを特徴とする、建築部材の耐火補強方法を提供するものである。
【0019】
また本発明の一つは、
[13]前記建築部材が、長手方向に沿って内部に空洞が形成されている枠材と、耐火性を有する板材と、を少なくとも有し、
前記耐火性を有する板材が、前記枠材により支持され、
前記熱膨張性耐火材料を、前記枠材の内部の空洞に注入する工程と、
前記熱膨張性耐火材料を、前記枠材の内部の空洞で反応させて、前記熱膨張性耐火材料の流動性を失わせる工程と、
を有する、上記[12]に記載の建築部材の耐火補強方法を提供するものである。
【0020】
また本発明の一つは、
[14]前記建築部材が二以上の板材を備え、
前記熱膨張性耐火材料を、互いに向き合う板材同士の間に形成される空間に注入する工程と、
前記熱膨張性耐火材料を前記空間内部で反応させて、前記熱膨張性耐火材料の流動性を失わせる工程と、
を有する、上記[12]または[13]に記載の建築部材の耐火補強方法を提供するものである。
【0021】
また本発明の一つは、
[15]前記熱膨張性耐火材料が、反応硬化性樹脂成分、熱膨張成分および無機充填材を少なくとも含む、上記[12]〜[14]のいずれかに記載の建築部材の耐火補強方法を提供するものである。
【0022】
また本発明の一つは、
[16]前記熱膨張性耐火材料に含まれる反応硬化性樹脂成分が、ウレタン樹脂フォーム、イソシアヌレート樹脂フォーム、エポキシ樹脂フォーム、フェノール樹脂フォーム、尿素樹脂フォーム、不飽和ポリエステル樹脂フォーム、アルキド樹脂フォーム、メラミン樹脂フォーム、ジアリルフタレート樹脂フォームおよびシリコーン樹脂フォームからなる群から選ばれる少なくとも一つである、上記[12]〜[15]のいずれかに記載の建築部材の耐火補強方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る耐火補強建築部材は、建築部材の内部に熱膨張性耐火材料が注入されてなる。
住宅等の構造物の開口部に既に設置されている建築部材の耐火性が低いことが判明した場合には、前記開口部から建築部材を取り外してから、その内部に熱膨張性耐火部材を挿入する必要がある。この様に従来の建築部材は耐火補強に手間と時間がかかる。
これに対し、本発明の耐火補強建築部材は、建築部材の内部に熱膨張性耐火材料を注入することにより得られるから、単位時間当たりの生産性に優れる。
【0024】
また本発明に使用する熱膨張性耐火材料は、建築部材の内部に注入される前の25℃における粘度が1000〜100000 mPa・sの範囲であり、流動性を有する。この流動性により、前記建築部材の内部の形状、大きさに依存することなく容易に前記建築部材の内部に前記熱膨張性耐火材料を注入することができる。このため容易に本発明の耐火補強建築部材を得ることができる。
【0025】
また本発明に使用する熱膨張性耐火材料は、前記建築部材の内部で流動性を失うから、前記建築部材の内部から外部へ熱膨張性耐火材料が漏れ出すことを防止することができる。
さらに前記建築部材の内部で、前記熱膨張性耐火材料に含まれる熱膨張成分等が偏在することを防止することができる。これにより、本発明の耐火補強建築部材は、前記建築部材の形状、大きさ等に依存することなく、安定した耐火性能を発揮することができる。
【0026】
また本発明に係る耐火補強建築部材が火災等の炎にさらされた場合、前記耐火補強建築部材に含まれる熱膨張性耐火材料が膨張して熱膨張残渣を形成する。
この熱膨張残渣が断熱層の役割を果たすため、火災が発生している側から前記耐火補強建築部材を通して火災が発生していない側に火災の炎等の熱が伝わることを遅延させることができる。
【0027】
また火災等の熱により耐火補強建築部材に含まれる枠材や板材等の一部が変形、溶融、焼失して耐火補強建築部材に隙間等が生じた場合でも、内部の熱膨張性耐火材料が膨張して熱膨張残渣を形成する。この熱膨張残渣が耐火補強建築部材に生じた隙間を閉塞するから、住宅等の構造物の延焼を防止することができる。
【0028】
また本発明に使用する熱膨張性耐火材料の反応硬化性樹脂成分として、ウレタン樹脂フォーム等の発泡材料を使用した場合には、前記建築部材の内部に注入された熱膨張性耐火材料の内部に気泡を含ませることができる。これにより断熱性に優れた耐火補強建築部材を得ることができる。
【0029】
また本発明に係る耐火補強方法は、前記建築部材の内部に熱膨張性耐火材料を注入することにより実施することができるから、作業性に優れる。
さらに本発明の耐火補強方法によれば、建築部材の形状、大きさ等に依存することなく前記建築部材の耐火性を容易に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る第一の耐火補強建築部材を例示するための模式正面図である。
【図2】熱膨張性耐火材料を注入する前の図1のA−A線に沿う要部断面図である。
【図3】熱膨張性耐火材料を注入した後の図1のA−A線に沿う要部断面図である。
【図4】本発明に係る第一の実施形態を例示する模式正面図である。
【図5】本発明に係る第二の耐火補強建築部材を例示するための模式正面図である。
【図6】図5のA−A線に沿う要部断面図である。
【図7】本発明に係る第二の実施形態を例示する模式部分正面図である。
【図8】本発明の実施例1に係る耐火補強建築部材の構造を説明するための模式正面図である。
【図9】実施例熱膨張性耐火材料を注入する前の図8のA−A線に沿う要部断面図である。
【図10】実施例熱膨張性耐火材料を注入した後の図8のA−A線に沿う要部断面図である。
【図11】実施例熱膨張性耐火材料を注入した後の図8のA−A線に沿う要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は耐火補強建築部材に関するものであるが、最初に本発明に使用する建築部材について説明する。
本発明に使用する建築部材としては、例えば、一戸建住宅、集合住宅、高層住宅、高層ビル、商業施設、公共施設等の建築物、客船、輸送船、連絡船等の船舶等の構造物(以下、「住宅等の構造物」という。)の開口部に設置されるものが挙げられる。
一例を示すとすれば、例えば、開閉窓、固定窓等のサッシ、ドア、引戸、シャッター、回転扉等の扉等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
本発明に係る耐火補強建築部材は、前記建築部材の内部に熱膨張性耐火材料が注入されてなるものであるが、本発明に係る第一の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0033】
図1は、本発明に係る第一の耐火補強建築部材を例示するための模式正面図である。また図2は、熱膨張性耐火材料を注入する前の図1のA−A線に沿う要部断面図であり、図3は熱膨張性耐火材料を注入した後の図1のA−A線に沿う要部断面図である。
前記耐火補強建築部材の一例として、図1〜図3には引き違いサッシが例示されている。
【0034】
図1〜3において、耐火補強建築部材1は住宅等の構造物に形成された矩形の開口部に固定されるものであって、外周の枠材としての開口枠体10と、その内部に水平方向に移動可能の引き違いの2枚の板材20,20とを備えている。
前記開口枠体10等の内部に熱膨張性耐火材料を注入することにより、第一の実施形態に係る耐火補強建築部材1が得られる。
【0035】
前記開口枠体10は左右の縦枠体11,12と上下の横枠体13,14とから構成され、各枠材11〜14に囲まれた内部が開口部となっている。そして、2枚の板材20,20は前記の開口部を閉塞するものであり構造的には略同一構成である。左右の枠材としての縦框体21,22と上下の枠材としての横框体23,24により前記板材20,20は矩形に形成され、中央側の縦框体が前後に重なって、2枚の板材20,20の前後の隙間を閉塞できる構造となっている。
開口枠体10および板材20,20は、縦横の枠材としての枠体11〜14と、縦横の枠材としての框体21〜24とから構成されるアルミニウム金属を組み合わせて構成されている。
【0036】
前記開口枠体10および板材20,20等に使用される素材としては、例えば、合成樹脂材、金属材、無機材、木材等が挙げられる。
前記合成樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル等の塩素含有樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂等が挙げられる。
前記金属材としては、例えば、アルミニウム材、ステンレス材、鋼材、合金材等を挙げることができる。
前記無機材としては、例えば、ガラス、石膏、セラミック、セメント、ケイ酸カルシウム、パーライト等が挙げられる。
前記木材としては、天然の木材の他、木材片、木材シート等を樹脂により硬化させた成形木材等が挙げられる。
【0037】
前記素材は一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0038】
耐火補強建築部材11は、上述した通り開口枠体10に、2枚の板材20,20がスライド可能に支持されるものである。
前記板材20の枠材となる縦横の框体21〜24により、内周側に位置する鉄製網入りガラスからなる窓ガラス25が支持されている。
窓ガラス25は耐火性のある板材を構成するものであり、耐火補強建築部材1の室外と室内とを仕切る仕切り面を構成している。
なお、仕切り面としては透光性を有する窓ガラスに限らず、金属板材やケイ酸カルシウム板のような遮光性を有するもの等であってもよい。
【0039】
第一の実施形態の耐火補強建築部材1の構成は特に限定されるものではなく、本発明に使用する枠体は、サッシを構成する上下左右の各枠体11〜14、各框体21〜24のそれぞれはアルミニウム金属の成形材で形成され、長手方向に沿って貫通する複数の空洞を有する。
【0040】
長手方向と直交する横断面の形状が一つあるいは複数の空洞を有するものであれば、周知のいずれの形態であってもよい。
【0041】
またサッシの枠材である各枠体、各框体として、アルミニウム金属に代えて、またはアルミニウム金属と共にポリ塩化ビニル樹脂等の合成樹脂を使用する場合には、防火性を向上させる観点から硬質塩化ビニルを使用することが好ましい。
硬質塩化ビニル等の合成樹脂を用いて押出成形や射出成形等によって各枠体、各框体を成形することもできる。
【0042】
まず開口枠体10を構成する縦枠体11,12から詳細に説明する。
縦枠体11,12はアルミニウム金属を鋳造して得られた長尺材を切断して形成したものであり、長手方向に沿って貫通する空洞を有している。
前記縦枠体11,12は、横断面形状が2つの大きい矩形の空洞11a,12aと、この空洞を形成する内外の壁面の端部から開口側に延出する2つの小幅の空洞11b,12bとを備えている。
また、開口枠体10を構成する横枠体13,14も、図示していないが同様に複数個の長手方向に貫通する空洞が形成されている。
【0043】
板材20の枠材となる左右の縦框体21,22は、同様にアルミニウム金属を鋳造して成形された長尺材を切断して形成したものであり、横断面には長手方向に貫通する6個の空洞21a,22aを有している。また、板材20の枠材となる横框体23,24も、図示していないが同様に複数個の長手方向に貫通する空洞が形成されている。そして、縦横の框材の内部空間には鉄製網入りガラスからなる窓ガラス25が嵌め込まれている。窓ガラス25は縦框体21,22の段差部に位置しており、ゴムシール材やシーリング剤26で固定されている。
【0044】
第一の実施形態に例示される防火補強建築部材1は、開口枠体10を構成するアルミニウム金属の各枠体11〜14の空洞、および板材20の枠材となるアルミニウム金属の各框体21〜24の空洞に熱膨張性耐火材料15が注入されている。
具体的には、縦枠体11の大きい空洞11a,12aには、熱膨張性耐火材料15が注入された後に、前記空洞11a,12a内部で熱膨張性耐火材料15が流動性を失っている。
【0045】
なお、図示していないが、横枠体13,14にも長手方向に貫通する空洞内に、同様に熱膨張性耐火材料15が注入された後に、前記横枠体13,14の空洞の内部で熱膨張性耐火材料15が流動性を失っている。
【0046】
板材20の縦框体21,22の空洞21a,22aにも、熱膨張性耐火材料15が注入された後に、前記空洞21a,22a内部で熱膨張性耐火材料15が流動性を失っている。
【0047】
そして、板材20の上下の横框体23,24にも、図示していないが長手方向に貫通する空洞内に熱膨張性耐火材料15が注入された後に、前記横框体23,24内部で熱膨張性耐火材料15が流動性を失っている。
【0048】
このように、開口枠体10の空洞と、板材20,20の空洞とには、熱膨張性耐火材料15が窓ガラス25の面に沿う方向に注入され、空洞の内壁面に接して流動性を失っている。
これらの熱膨張性耐火材料15は耐火性板材を構成する窓ガラス25の面に沿って平行な状態に配置され、窓ガラス25と共に耐火面を形成している。このように形成された耐火面は、ガラス面と垂直な方向の各枠体や、各框材の肉厚部分を除く窓ガラスに沿うほぼ全面を埋め尽くしている。
【0049】
本発明に使用する枠材の内部に空洞が複数ある場合には、耐火性板材と垂直方向に最も外側にある空洞内部に接して熱膨張性耐火材料を前記空洞に注入することが、第一の実施形態に係る耐火補強建築部材の耐火性を高める観点から好ましい。
【0050】
室外側、あるいは室内側の正面、すなわち、ガラス面に沿う方向と直角な方向から耐火補強建築部材1を見ると、中央の窓ガラス25,25の外周を囲む縦框体21,22および横框体23,24の空洞の正面には熱膨張性耐火材料15が位置している。板材20,20を支持する開口枠体10の縦枠体11,12及び横枠体13,14の空洞の正面にも熱膨張性耐火材料15が位置しており、全ての熱膨張性耐火材料15が窓ガラス25の面に沿って注入されて耐火面が形成されている。
【0051】
なお熱膨張性耐火材料15の組成については後述する。
【0052】
第一の実施形態に用いられる熱膨張性耐火材料15は、火災時等の高温にさらされると、体積膨張して熱膨張残渣を形成する材料であり、火災の際に各枠材11〜14と各框材21〜24等のアルミニウム金属が加熱されて変形、脱落した部分を、熱膨張性耐火材料15の熱膨張残渣が埋めて、火炎の貫通を防止する。
【0053】
次に前記熱膨張性耐火材料15を空洞内へ注入することにより建築部材を耐火補強する方法について説明する。
図4は、本発明に係る第一の実施形態を例示する模式正面図である。
まず、開口枠体10を構成する縦枠体11,12の上部に電動ドリル等の開孔手段を用いて複数の孔30を開ける。
【0054】
同様に、開口枠体10を構成する横枠体13に孔31を開ける。
次に熱膨張性耐火材料を、前記孔30、31から注入する。開口枠体10を構成する縦枠体11,12ならびに横枠体13には、それぞれ複数の孔30、31が形成されているため、熱膨張性耐火材料15を注入すると、前記開口枠体10を構成する縦枠体11,12ならびに横枠体13の内部の空気は注入されている孔とは別の孔から外部に排出される。これにより、円滑に開口枠体10を構成する縦枠体11,12内部の空洞および横枠体13の内部の空洞に前記熱膨張性耐火材料を注入することができる。
【0055】
図4では各孔は、第一の実施形態に係る耐火補強建築部材1の正面に設けられているが、適宜第一の実施形態に係る耐火補強建築部材1の側面、背面、上面等に設けることができる。
前記開口枠体10の内部の空洞に前記熱膨張性耐火材料15を正面から注入する場合には、正面に設けられた孔以外にも前記開口枠体10の側面に設けられた孔、背面に設けられた孔、上面に設けられた孔の少なくとも一つから、前記開口枠体10の内部の空気を排出することができる。
前記開口枠体10の正面、側面、背面および上面の少なくとも一つの場所に設けられた孔にパイプを挿入し、前記開口枠体10の内部を減圧しながら前記開口枠体10の内部に熱膨張性耐火材料15を注入することができる。
また前記開口枠体10の正面、側面、背面および上面の少なくとも一つの場所に設けられた孔から、前記開口枠体10の内部へピストンとシリンダー等を備えた加圧注入手段により前記熱膨張性耐火材料15を圧力を加えないがら注入することもできる。
なお説明の便宜上、図4では各孔は、第一の実施形態に係る耐火補強建築部材1の正面に設けられているが、意匠性を考慮すると、前記耐火補強建築部材1の側面、上面等に孔を設けることが好ましい。
【0056】
開口枠体10を構成する縦枠体11,12および横枠体13に形成する複数の孔30、31の位置、形状、大きさ等は、前記熱膨張性耐火材料15を注入する効率を考慮して適宜選択することができる。
【0057】
また開口枠体10を構成する横枠体14の内部の空洞が、縦枠体11,12の内部の空洞と連結されていない場合には、開口枠体10を構成する横枠体14に適宜、電動ドリル等の開孔手段を用いて孔を開けておき、この孔から熱膨張性耐火材料15を注入することもできる。
【0058】
また同様に、板材20の枠体となる左右の縦框体21,22ならびに横框体23,24にもそれぞれ電動ドリル等の開孔手段を用いて複数の孔32、33を開ける。この孔から左右の縦框体21,22の内部の空洞ならびに横框体23,24の内部の空洞に熱膨張性耐火材料を注入することができる。
【0059】
施工作業後、前記の孔30〜33に必要に応じて樹脂キャップ、金属製の螺子等の閉塞具を設置してもよい。
【0060】
前記開口枠体10を構成する縦枠体11,12および横枠体13,14、ならびに板材20の枠体となる左右の縦框体21,22および横框体23,24のそれぞれの空洞の内部に注入された熱膨張性樹脂耐火材料15は、時間の経過と共に硬化反応が進み、前記空洞の内部で流動性を失う。
【0061】
このため、それぞれの空洞内部に注入された熱膨張性樹脂耐火材料15を、前記開口枠体10を構成する縦枠体11,12および横枠体13,14、ならびに板材20の枠体となる左右の縦框体21,22および横框体23,24から漏れ出すことなく内部に留めることができる。
【0062】
また前記熱膨張性耐火材料15として、気泡を含む発泡体を使用することにより、第一の実施形態に係る耐火補強建築部材1の断熱性を高めることができる。
【0063】
第一の実施形態に係る耐火補強建築部材1は、開口枠体10等の内部の空洞に熱膨張性耐火材料を注入することにより得られる。
このため開口枠体10から、2枚の板材20,20等を取り外さなくても耐火補強を施すことができるから、容易に耐火性を高めることができる。
【0064】
次に本発明の第二の実施形態について説明する。
図5は、本発明に係る第二の耐火補強建築部材を例示するための模式正面図である。また図6は、図5のA−A線に沿う要部断面図である。
前記耐火補強建築部材1の一例として、図5および図6には開閉扉が例示されている。
【0065】
図5および6において、耐火補強建築部材100は住宅等の構造物の出入り口に形成された矩形の開口部にヒンジ等の可動固定手段により開閉可能に固定されるものであって、外周の枠材としての開口枠体50と、前記開口枠体50を両面から覆う2枚の板材60,60とを備えている。
互いに向き合う2枚の板材60,60の間に形成される空間の内部に熱膨張性耐火材料を注入することにより、第二の実施形態に係る耐火補強建築部材100が得られる。
【0066】
前記開口枠体50は左右の縦枠体51,52と上下の横枠体53,54とから構成されている。そして、2枚の板材60,60は前記開口枠体50を閉塞するものである。
また、前記2枚の板材60,60の間には、断熱材として、ガラスウール等の無機繊維と、前記無機繊維を覆うアルミニウム箔からなる断熱材70が設置されている。
【0067】
前記耐火補強建築部材100は、縦横の枠材としての木製の枠体11〜14と、木製の板材60,60とを組み合わせて構成されている。
また前記耐火補強建築部材100は開閉手段としてドアノブ80を備える。前記開閉手段の構造は公知であり、適宜市販のものを選択して使用することができる。
第二の実施形態に係る耐火補強建築部材100を構成する素材については第一の実施形態の場合と同様、目的や用途に応じて適宜選択することが可能である。
【0068】
第二の実施形態に例示される防火補強建築部材100は、開口枠体50を構成する木製の板材60,60同士の間に形成される空間のうち、前記断熱材70と木製の板材60との間に形成される空間に熱膨張性耐火材料15が注入されている。
熱膨張性耐火材料15が注入された後に、前記空間80内部で熱膨張性耐火材料15が流動性を失っている。
【0069】
第二の実施形態に用いられる熱膨張性耐火材料15は、火災時等の高温にさらされると、体積膨張して熱膨張残渣を形成する材料であり、火災の際に開口枠体50を構成する木製の板材60、開口枠体50の左右の縦枠体51,52と上下の横枠体53,54が加熱された場合、木製の板材60、開口枠体50の左右の縦枠体51,52、上下の横枠体53,54と熱膨張性耐火材料15による熱膨張残渣との接触面の炭化を抑制し、耐火性能を確保することができる。
【0070】
次に前記熱膨張性耐火材料15を空間内へ注入することにより建築部材を耐火補強する方法について説明する。
図7は、本発明に係る第二の実施形態を例示する模式正面図である。
まず、木製の板材60の上部に電動ドリル等の開孔手段を用いて複数の孔30を開ける。
【0071】
次に熱膨張性耐火材料を前記孔30から注入する。木製の板材60には、それぞれ複数の孔30が形成されているため、熱膨張性耐火材料を注入すると、前記開口枠体50を構成する開口枠体50および木製の板材60の内部の空気は注入されている孔とは別の孔から外部に排出される。これにより、円滑に防火補強建築部材100を構成する木製の板材60と断熱材70との内部の空間に前記熱膨張性耐火材料を注入することができる。
木製の板材60に形成する複数の孔30の位置、形状、大きさ等は、前記熱膨張性耐火材料を注入する効率を考慮して適宜選択して決定することができる。
なお説明の便宜上、図7では各孔は、第二の実施形態に係る耐火補強建築部材100の正面に設けられているが、意匠性を考慮すると、前記耐火補強建築部材1の側面、上面等に孔を設けることが好ましい。
【0072】
施工作業後、前記の孔30に必要に応じて樹脂キャップ、金属製の螺子等の閉塞具を設置してもよい。
【0073】
前記木製の板材60および断熱材70の空間の内部に注入された熱膨張性樹脂耐火材料は、時間の経過と共に硬化反応が進み、前記空間の内部で流動性を失う。
このため、空間内部に注入された熱膨張性樹脂耐火材料を、開口枠材50、木製の板材60から漏れ出すことなく内部に留めることができる。
【0074】
また前記熱膨張性耐火材料として、気泡を含む発泡体を使用することにより、第一の実施形態に係る耐火補強建築部材100の断熱性を高めることができる。
【0075】
第二の実施形態に係る耐火補強建築部材2についても、木製の板材60,60等の内部の空間に熱膨張性耐火材料を注入することにより得られる。
このため開閉扉を住宅等の構造物の出入り口から取り外さなくても耐火補強を施すことができるから、容易に耐火性を高めることができる。
【0076】
次に本発明に使用する熱膨張性耐火材料について説明する。
【0077】
前記熱膨張性耐火材料としては、例えば、具体的には反応硬化性樹脂成分、熱膨張成分、無機充填材等を含む樹脂組成物からなるもの等を挙げることができる。
【0078】
前記熱膨張性耐火材料の各成分のうち、まず前記反応硬化性樹脂成分について説明する。
前記反応硬化性樹脂成分としては、例えば、時間の経過と共に前記反応硬化性樹脂成分に含まれる構成成分の反応が進むことにより粘度が増大し、当初は流動性があるが時間の経過と共に流動性を失うものであれば特に限定はない。
前記反応硬化性樹脂成分としては、具体例を挙げるとするなら、例えば、ウレタン樹脂、イソシアヌレート樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0079】
前記ウレタン樹脂としては、例えば、主剤としてのポリイソシアネート化合物、硬化剤としてのポリオール化合物、触媒等を含むものが挙げられる。
前記ウレタン樹脂の主剤であるポリイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0080】
前記芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジメチルジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等が挙げられる。
前記脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ジメチルジシシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0081】
前記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
前記ポリイソシアネート化合物は一種もしくは二種以上を使用することができる。
前記ウレタン樹脂の主剤は、使い易いこと、入手し易いこと等の理由から、ジフェニルメタンジイソシアネート等であれば好ましい。
【0082】
前記ウレタン樹脂の硬化剤であるポリオール化合物としては、例えば、芳香族ポリオール、脂環族ポリオール、脂肪族ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリマーポリオール等が挙げられる。
【0083】
前記芳香族ポリオールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等が挙げられる。
前記脂環族ポリオールとしては、例えば、シクロヘキサンジオール、メチルシクロヘキサンジオール、イソホロンジオール、ジシクロヘキシルメタンジオール、ジメチルジシシクロヘキシルメタンジオール等が挙げられる。
前記脂肪族ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール等が挙げられる。
前記ポリエステル系ポリオールとしては、例えば、多塩基酸と多価アルコールとを脱水縮合して得られる重合体、ε−カプロラクトン、α−メチル−ε−カプロラクトン等のラクトンを開環重合して得られる重合体、ヒドロキシカルボン酸と上記多価アルコール等との縮合物が挙げられる。
【0084】
ここで前記多塩基酸としては、具体的には、例えば、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸等が挙げられる。
また前記多価アルコールとしては、具体的には、例えば、ビスフェノールA、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキサングリコール、ネオペンチルグリコール等が挙げられる。
また前記ヒドロキシカルボン酸としては、具体的には、例えば、ひまし油、ひまし油とエチレングリコールの反応生成物等が挙げられる。
【0085】
前記ポリマーポリオールとしては、例えば、前記芳香族ポリオール、脂環族ポリオール、脂肪族ポリオール、ポリエステル系ポリオール等に対し、アクリロニトリル、スチレン、メチルアクリレート、メタクリレート等のエチレン性不飽和化合物をグラフト重合させた重合体、ポリブタジエンポリオール、または、これらの水素添加物等が挙げられる
【0086】
前記ウレタン樹脂の主剤であるポリイソシアネート化合物と硬化剤であるポリオール化合物とを、ポリオール化合物中の活性水素基(OH)とポリイソシアネート化合物中の活性イソシアネート基(NCO)の割合(NCO/OH)が当量比で、1.2〜15となる様に混合することが好ましい。より好ましくは1.2〜12の範囲である。
前記当量比が1.2以上ではウレタン樹脂の粘度が高くなりすぎることを防ぐことができ、15以下では良好な接着強度を保つことができる。
【0087】
前記ウレタン樹脂の触媒としては、例えば、トリエチルアミン、N−メチルモルホリンビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’−トリメチルアミノエチル−エタノールアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N−メチル,N´−ジメチルアミノエチルピペラジン、イミダゾール環中の第2級アミン官能基をシアノエチル基で置換したイミダゾール化合物等のアミノ系触媒等が挙げられる。
【0088】
次にイソシアヌレート樹脂としては、例えば、先に説明したポリウレタン樹脂を用いて、ポリウレタン樹脂の主剤であるポリイソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基を反応させて三量化させ、イソシアヌレート環の生成を促進したもの等を挙げることができる。
【0089】
イソシアヌレート環の生成を促進するためには、例えば、触媒として、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4−ビス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジアルキルアミノアルキル)ヘキサヒドロ−S−トリアジン等の芳香族化合物、酢酸カリウム、2−エチルヘキサン酸カリウム、オクチル酸カリウム等のカルボン酸アルカリ金属塩、カルボン酸の4級アンモニウム塩等を使用すればよい。
イソシアヌレート樹脂の主剤と硬化剤については先のポリウレタン樹脂の場合と同様である。
【0090】
次に前記エポキシ樹脂としては例えば、主剤としてのエポキシ基を持つモノマーと硬化剤とを反応させて得られる樹脂等を挙げることができる。
【0091】
前記エポキシ基を持つモノマーとしては、例えば、2官能のグリシジルエーテル型として、ポリエチレングリコール型、ポリプロピレングリコール型、ネオペンチルグリコール型、1,6−ヘキサンジオール型、トリメチロールプロパン型、プロピレンオキサイド−ビスフェノールA、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型等のモノマーが挙げられる。
【0092】
また、グリシジルエステル型として、ヘキサヒドロ無水フタル酸型、テトラヒドロ無水フタル酸型、ダイマー酸型、p−オキシ安息香酸型等のモノマーが挙げられる。
【0093】
更に多官能のグリシジルエーテル型として、フェノールノボラック型、オルトクレゾール型、DPPノボラック型、ジシクロペンタジエン、フェノール型等のモノマーが挙げられる。
【0094】
これらは、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0095】
また、前記硬化剤としては、例えば、重付加型硬化剤、触媒型硬化剤等が挙げられる。
前記重付加型硬化剤としては、例えば、ポリアミン、酸無水物、ポリフェノール、ポリメルカプタン等が挙げられる。
前記触媒型硬化剤としては、例えば三級アミン類、イミダゾール類、ルイス酸錯体等が挙げられる。
これらエポキシ樹脂の硬化方法は特に限定されず、公知の方法により行うことができる。
【0096】
なお、前記樹脂成分の溶融粘度、柔軟性、粘着性等の調整のため、二種以上の樹脂成分を混合したものを使用することができる。
【0097】
次に前記フェノール樹脂としては、例えば、レゾール型フェノール樹脂組成物等が挙げられる。
前記レゾール型フェノール樹脂組成物は、例えば、主剤としてのレゾール型フェノール樹脂、硬化剤等を含むものである。
【0098】
前記フェノール樹脂の主剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、パラアルキルフェノール、パラフェニルフェノール、レゾルシン等のフェノール類およびその変性物と、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、フルフラール、アセトアルデヒド等のアルデヒド類とを、触媒量の水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリの存在下に反応させて得られるものがあげられるが、これに限定されるものではない。
フェノール類等とアルデヒド類の混合割合は特に限定はないが、モル比で通常1.0:1.5〜1.0:3.0の範囲である。前記混合割合は、1.0:1.8〜1.0:2.5の範囲であれば好ましい。
【0099】
前記フェノール樹脂の硬化剤としては、例えば、硫酸、リン酸等の無機酸、ベンゼンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ナフトールスルホン酸、フェノールスルホン酸等の有機酸が挙げられる。
【0100】
次に尿素樹脂としては、例えば、主剤としての尿素、硬化剤としてのホルムアルデヒド、触媒としての塩基性化合物、酸性化合物を含む組成物等が挙げられる。
前記尿素とホルムアルデヒド等は重合反応により尿素樹脂を形成する。
【0101】
次に不飽和ポリエステル樹脂としては、主剤としての不飽和多塩基酸、硬化剤としてのポリオール化合物、触媒等を含む組成物等が挙げられる。
前記不飽和ポリエステル樹脂の主剤としては、具体的には、例えば、無水マレイン酸、フマル酸等が挙げられる。
【0102】
前記不飽和ポリエステル樹脂の硬化剤としては、具体的には、例えば、先に説明したウレタン樹脂に使用するポリオール化合物等が挙げられる。
前記不飽和ポリエステル樹脂は、必要に応じて無水フタル酸、イソフタル酸等の飽和多塩基酸を併用することもできる。
【0103】
さらに前記不飽和ポリエステル樹脂の主剤と重合するスチレン、ビニルトルエン、メチルメタクリレート等の架橋用ビニルモノマーを添加することができる。
前記不飽和ポリエステル樹脂の触媒としては、具体的には、例えば、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン等の有機過酸化物等が挙げられる。
【0104】
次にアルキド樹脂としては、例えば、主剤としての多塩基酸、硬化剤としてのポリオール化合物、油脂等を含む組成物等が挙げられる。
前記アルキド樹脂の主剤としては、具体的には、例えば、無水マレイン酸、無水フタル酸、アジピン酸等が挙げられる。
【0105】
前記アルキド樹脂の硬化剤としては、具体的には、例えば、先に説明したウレタン樹脂に使用するポリオール化合物等が挙げられる。
前記油脂としては、例えば、大豆油、ヤシ油、アマニ油等を挙げることができる。
【0106】
次にメラミン樹脂としては、例えば、主剤としてのメラミン、硬化剤としてのホルムアルデヒド等を含む組成物等が挙げられる。
必要に応じて、前記組成物にベンゾグアナミン等を添加することもできる。
【0107】
次にジアリルフタレート樹脂としては、例えば、主剤としての無水フタル酸等の多塩基酸、硬化剤としてのアリルアルコール等、架橋剤等を含む組成物等が挙げられる。
前記架橋剤としては、例えば、スチレン、酢酸ビニル等が挙げられる。
【0108】
次にシリコーン樹脂としては、例えば、主剤としてジアルキルシリルジクロリド、ジアルキルシリルジオール等、反応抑制剤としてトリアルキルシリルクロリド、トリアルキルシリルジオール等、硬化剤として塩化白金酸等の白金化合物を含む組成物等を挙げることができる。
【0109】
前記ジアルキルシリルジクロリドとしては、具体的には、例えば、ジメチルシリルジクロリド、ジエチルシリルジクロリド、ジプロピルシリルジクロリド等が挙げられる。
前記ジアルキルシリルジオールとしては、具体的には、例えば、ジメチルシリルジオール、ジエチルシリルジオール、ジプロピルシリルジオール等が挙げられる。
前記トリアルキルシリルクロリドとしては、具体的には、例えば、トリメチルシリルクロリド、トリエチルシリルクロリド、トリプロピルシリルクロリド等が挙げられる。
前記トリアルキルシリルジオールとしては、具体的には、例えば、トリメチルシリルオール、トリエチルシリルオール、トリプロピルシリルオール等が挙げられる。
前記反応抑制剤は、ポリシロキサン主鎖の末端に結合し、反応を制御してポリシロキサン主鎖の重合度を制御する役割を果たす。
【0110】
本発明に使用する反応硬化性樹脂成分は、火災等の熱にさらされた場合でも容易に溶融することを防止するために、熱硬化性樹脂を使用することが好ましい。
本発明に使用する反応硬化性樹脂成分は、取り扱い性の面からエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂等であることがより好ましい。
【0111】
本発明に使用する反応硬化性樹脂成分は、主剤と硬化剤等とを予め予備的に反応させて使用することもできる。
【0112】
本発明に使用する前記熱膨張性耐火材料含まれる前記反応硬化性樹脂成分の主剤、硬化剤、触媒等はそれぞれ一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0113】
本発明に使用する前記熱膨張性耐火材料含まれる前記反応硬化性樹脂成分に対し、発泡剤、整泡剤を併用することにより、前記熱膨張耐火材料を発泡した状態で硬化させることができる。
【0114】
前記発泡剤としては、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の低沸点の炭化水素、ジクロロエタン、プロピルクロリド、イソプロピルクロリド、ブチルクロリド、イソブチルクロリド、ペンチルクロリド、イソペンチルクロリド等の塩素化脂肪族炭化水素化合物、トリクロルモノフルオロメタン、トリクロルトリフルオロエタン等のフッ素化合物、ジイソプロピルエーテル等のエーテル、あるいはこれらの化合物の混合物などの有機系物理発泡剤、窒素ガス、酸素ガス、アルゴンガス、二酸化炭素ガスなどの無機系物理発泡剤、水等が挙げられる。
【0115】
前記反応硬化性樹脂成分に対する発泡剤の使用量は、使用する前記反応硬化性樹脂成分により適宜設定されるが、一例を示すとすれば、例えば、前記反応硬化性樹脂成分100重量部に対して、通常1〜20重量部の範囲であり、5〜10重量部の範囲であれば好ましい。
【0116】
前記整泡剤としては、例えば、有機ケイ素系界面活性剤等が挙げられる。
前記反応硬化性樹脂成分に対する整泡剤の使用量は、使用する前記反応硬化性樹脂成分により適宜設定されるが、一例を示すとすれば、例えば、前記樹脂成分100重量部に対して、0.01〜5重量部の範囲であれば好ましい。
【0117】
前記発泡剤、整泡剤はそれぞれ一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0118】
本発明に使用する前記反応硬化性樹脂成分は、前記熱膨張耐火材料を発泡した状態で硬化させるため、発泡する機能を有することが好ましく、具体的には、ウレタン樹脂フォーム、イソシアヌレート樹脂フォーム、エポキシ樹脂フォーム、フェノール樹脂フォーム、尿素樹脂フォーム、不飽和ポリエステル樹脂フォーム、アルキド樹脂フォーム、メラミン樹脂フォーム、ジアリルフタレート樹脂フォーム、シリコーン樹脂フォーム等の一種もしくは二種以上を使用することが好ましい。
【0119】
前記熱膨張耐火材料を発泡した状態で硬化させることにより、硬化した前記熱膨張耐火材料に気泡の断熱効果を付与することができ、構造物の開口部等に設置される扉、サッシ等の、熱膨張性耐火材料が注入された建築部材の断熱性を高めることができる。
【0120】
次に前記熱膨張耐火材料の各成分のうち、熱膨張成分について説明する。
前記熱膨張成分は加熱時に膨張するものであるが、かかる熱膨張成分として具体例を挙げるとすれは、例えば、バーミキュライト、カオリン、マイカ、熱膨張性黒鉛等の無機膨張成分、熱膨張性樹脂組成物の成形体粉砕品等を挙げることができる。
【0121】
前記熱膨張性黒鉛は、従来公知の物質であり、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を、濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸と、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等の強酸化剤とで処理してグラファイト層間化合物を生成させたものであり、炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物の一種である。
【0122】
上記のように酸処理して得られた熱膨張性黒鉛は、更にアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等で中和したものを使用するのが好ましい。
【0123】
前記脂肪族低級アミンとしては、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等が挙げられる。
【0124】
前記アルカリ金属化合物および前記アルカリ土類金属化合物としては、例えば、カリウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム等の水酸化物、酸化物、炭酸塩、硫酸塩、有機酸塩等が挙げられる。
【0125】
前記熱膨張性黒鉛の粒度は、20〜200メッシュの範囲のものが好ましい。
【0126】
粒度が20メッシュ以上であると、分散性が向上するため樹脂成分等との混練が容易になる。また、粒度が200メッシュ以下であると、黒鉛の膨張度が大きいため十分な耐火断熱層が得られ易くなる。
【0127】
上記中和された熱膨張性黒鉛の市販品としては、例えば、UCAR CARBON社製の「GRAFGUARD#160」、「GRAFGUARD#220」、東ソー社製の「GREP−EG」等が挙げられる。
【0128】
前記熱膨張性樹脂組成物の成形体粉砕品としては、例えば、市販の熱膨張性耐火シート等を粉砕したもの等を挙げることができる。
かかる成形体粉砕品に使用する熱膨張性耐火シート等の具体例としては、例えば、積水化学工業社製のフィブロック(登録商標。エポキシ樹脂、ゴム樹脂等の樹脂成分、熱膨張性黒鉛等の熱膨張成分、リン化合物、無機充填材等を含む熱膨張性樹脂組成物の成形体)、住友スリーエム社のファイアバリア(クロロプレンゴムとバーキュライトを含有する樹脂組成物からなるシート材料、膨張率:3倍、熱伝導率:0.20kcal/m・h・℃)、三井金属塗料化学社のメジヒカット(ポリウレタン樹脂と熱膨張性黒鉛を含有する樹脂組成物からなるシート材料、膨張率:4倍、熱伝導率:0.21kcal/m・h・℃)等が挙げられる。
【0129】
市販の熱膨張性耐火シート等を裁断機等により細かく切断する等の方法、市販の熱膨張性耐火シート等を粉砕ロールに通して粉砕する等の方法により、熱膨張性樹脂組成物の成形体粉砕品を得ることができる。
前記熱膨張性樹脂組成物の成形体粉砕品は、5〜20メッシュの範囲のものが好ましい。
【0130】
前記熱膨張性樹脂組成物の成形体粉砕品の粒度が5メッシュ以上であると、分散性が向上するため樹脂成分等との混練が容易になる。また、粒度が20メッシュ以下であると、黒鉛の膨張度が大きいため十分な耐火断熱層が得られ易くなる。
【0131】
次に先の熱膨張性耐火材料の各成分のうち、前記無機充填材について説明する。
【0132】
前記無機充填材としては、特に限定されないが、例えば、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーソナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム等のカリウム塩、バーミキュライト、カオリン、マイカ、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セビオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、無機系リン化合物、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、ジルコニア繊維等が挙げられる。
【0133】
これらは、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0134】
前記無機充填材は骨材的役割を果たして、加熱後に生成する膨張断熱層強度の向上や熱容量の増大に寄与する。
【0135】
このため、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛で代表される金属炭酸塩、骨材的役割の他に加熱時に吸熱効果も付与する水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムで代表される含水無機物が好ましく、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及び周期律表IIbの金属炭酸塩又はこれらと前記含水無機物との混合物が好ましい。
【0136】
また、本発明に使用する熱膨張性耐火材料に対し、難燃剤としてリン化合物を添加することもできる。
前記リン化合物は、難燃性を向上させるため、または窒素化合物、アルコール類等と組み合わせて熱膨張性機能を発現するために用いられる。
【0137】
前記リン化合物としては、特に限定されず、例えば、赤リン、
トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート等の各種リン酸エステル、
リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウム等のリン酸金属塩;ポリリン酸アンモニウム類、
下記化学式1で表される化合物等が挙げられる。
【0138】
これらのリン化合物は、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0139】
これらのうち、耐火性の観点から、赤リン、下記の化学式で表される化合物、及び、ポ
リリン酸アンモニウム類が好ましく、性能、安全性、費用等の点においてポリリン酸アンモニウム類がより好ましい。
【0140】
【化1】
上記化学式中、R1及びR3は、水素、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は、炭素数6〜16のアリール基を表す。
【0141】
R2は、水酸基、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基、炭素数6〜16のアリール基、又は、炭素数6〜16のアリールオキシ基を表す。
【0142】
前記化学式で表される化合物としては、例えば、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、2−メチルプロピルホスホン酸、t−ブチルホスホン酸、2,3−ジメチル−ブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジオクチルフェニルホスホネート、ジメチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸、メチルプロピルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジオクチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジエチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス(4−メトキシフェニル)ホスフィン酸等が挙げられる。
【0143】
中でも、t−ブチルホスホン酸は、高価ではあるが、高難燃性の点において好ましい。
【0144】
ポリリン酸アンモニウム類としては、特に限定されず、例えば、ポリリン酸アンモニウム、メラミン変性ポリリン酸アンモニウム等が挙げられるが、難燃性、安全性、コスト、取扱性等の点からポリリン酸アンモニウムが好適に用いられる。
【0145】
市販品としては、例えば、クラリアント社製の「商品名:EXOLIT AP422」及び「商品名:EXOLIT AP462」等が挙げられる。
【0146】
前記リン化合物は、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛等の金属炭酸塩と反応して、金属炭酸塩の膨張を促すと考えられ、特に、リン化合物として、ポリリン酸アンモニウムを使用した場合に、高い膨張効果が得られる。
【0147】
また、有効な骨材として働き、燃焼後に形状保持性の高い残渣を形成する。
【0148】
前記窒素化合物としては、特に限定はないが、メラミン系化合物等であれば好ましい。また前記アルコール類としては、特に限定はないが、ペンタエリスリトール等の多価アルコール等であれば好ましい。
【0149】
本発明に使用する無機充填材が粒状の場合には、その粒径としては、0.5〜200μmの範囲のものが好ましく、より好ましくは、1〜50μmの範囲のものである。
【0150】
無機充填材の添加量が少ないときは、分散性が性能を大きく左右するため、粒径の小さ
いものが好ましいが、粒径0.5μm以上では二次凝集を防ぐことができ、分散性が良好となる。
【0151】
また、無機充填材の添加量が多いときは、高充填が進むにつれて、樹脂組成物の粘度が高くなり成形性が低下するが、粒径を大きくすることによって樹脂組成物の粘度を低下させることができる点から、上記範囲の中でも粒径の大きいものが好ましい。
【0152】
なお、粒径が200μm以下の場合には、成形体の表面性、樹脂組成物の力学的物性が低下することを抑制することができる。
【0153】
前記無機充填材の中でも、特に骨材的役割を果たす炭酸カルシウム、炭酸亜鉛等の金属炭酸塩;骨材的役割の他に加熱時に吸熱効果を付与する水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の含水無機物が好ましい。
【0154】
前記含水無機物及び金属炭酸塩を併用することは、燃焼残渣の強度向上や熱容量増大に大きく寄与すると考えられる。
【0155】
前記無機充填材の中で、特に水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の含水無機物は、加熱時の脱水反応によって生成した水のために吸熱が起こり、温度上昇が低減されて高い耐熱性が得られる点、及び、燃焼残渣として酸化物が残存し、これが骨材となって働くことで燃焼残渣の強度が向上する点で好ましい。
【0156】
また、水酸化マグネシウムと水酸化アルミニウムは、脱水効果を発揮する温度領域が異なるため、併用すると脱水効果を発揮する温度領域が広くなり、より効果的な温度上昇抑制効果が得られることから、併用することが好ましい。
【0157】
前記含水無機物の粒径は、小さくなると嵩が大きくなって高充填化が困難となるので、脱水効果を高めるために高充填するには粒径の大きなものが好ましい。
【0158】
具体的には、粒径が18μmでは、1.5μmの粒径に比べて充填限界量が約1.5倍程度向上することが知られている。
【0159】
さらに、粒径の大きいものと小さいものとを組み合わせることによって、より高充填化が可能となる。
【0160】
前記含水無機物の市販品としては、例えば、水酸化アルミニウムとして、粒径1μmの「商品名:ハイジライトH−42M」(昭和電工社製)、粒径18μmの「商品名:ハイジライトH−31」(昭和電工社製)等が挙げられる。
【0161】
前記炭酸カルシウムの市販品としては、例えば、粒径1.8μmの「商品名:ホワイトンSB赤」(白石カルシウム社製)、粒径8μmの「商品名:BF300」(備北粉化社製)等が挙げられる。
【0162】
冒頭に説明したとおり、本発明に使用する熱膨張性耐火材料としては、上記に説明した反応硬化性樹脂樹脂成分、熱膨張成分、無機充填材等を含む樹脂組成物、さらに上述のリン化合物を含むもの等を挙げることができるが、次にこれらの配合について説明する。
【0163】
前記熱膨張性耐火材料は、反応硬化性樹脂成分100重量部に対し、前記反応硬化性熱膨張成分を10〜150重量部および前記無機充填材を50〜300重量部の範囲で含むものが好ましい。
【0164】
また、前記反応硬化性熱膨張成分および前記無機充填材の合計は、200〜600重量部の範囲が好ましい。
【0165】
かかる熱膨張性耐火材料は火災等の熱によって膨張し熱膨張残渣を形成する。この配合によれば、前記熱膨張性耐材料は火災等の熱によって膨張し、必要な体積膨張率を得ることができ、膨張後は所定の断熱性能を有すると共に所定の強度を有する熱膨張残渣を形成することもでき、安定した耐火性能を達成することができる。
【0166】
前記反応硬化性熱膨成分の量が10重量部以上であると、必要な膨張倍率が得られることから、十分な耐火、防火性能が得らる。
一方、前記熱膨張成分の量が150重量部以下であると、前記熱膨張性耐火材料の25℃における流動性を確保することができる。
【0167】
また前記無機充填材の量が50重量部以上であると、燃焼後の熱膨張残渣の体積減少が少なく、耐火断熱のための熱膨張残渣が得られる。
さらに可燃物の比率が増加するため、難燃性が低下することがある。
【0168】
一方、無機充填材の量が300重量部以下であると、前記熱膨張性耐火材料の25℃における流動性を確保することができる。
【0169】
前記熱膨張性耐火材料における熱膨張成分および無機充填材の合計量は、60重量部以上では燃焼後の熱膨張残渣量が不足せず十分な耐火性能が得られやすく、450重量部以下では機械的物性の低下が小さく、実際の使用に適する。
【0170】
さらに本発明に使用する前記熱膨張性耐火材料は、それぞれ本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、リン酸エステル等の可塑剤、フェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤の他、熱安定剤、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料、粘着付与樹脂等の添加剤、ポリブテン、石油樹脂等の粘着付与剤を含むことができる。
【0171】
本発明に使用する熱膨張性耐火材料の25℃における粘度は、建築部材内部に注入される前の値を基準として、1000〜100000 mPa・sの範囲である。
前記粘度が1000mPa・s以上であれば、建築部材内部の狭い隙間でも前記熱膨張性耐火材料を容易に充填することができる。また建築部材内部に前記熱膨張性耐火材料を注入するための圧力、注入機器の押圧等が必要以上に高くなることがなく、容易に注入を行うことができる。
また前記粘度が100000 mPa・s以下であれば、建築部材内部に前記熱膨張性耐火材料を注入する際に空気を巻き込みにくく所望の充填量を注入することが容易となる。また注入の際に熱膨張性耐火材料の各成分が分離しにくく、不均一となることを防止することができるため、前記建築部材内部で前記熱膨張性耐火材料の組成を均一に保つことができ、所望の耐火性能を発揮することができる。
前記粘度は2000から600000 mPa・sの範囲であれば好ましく、3000〜400000 mPa・sの範囲であればより好ましい。
【0172】
前記熱膨張性耐火材料の粘度の調整は、本発明に使用する熱膨張性耐火材料の反応硬化性樹脂成分の種類等を選択することにより調整することができる。液状の反応硬化性樹脂成分のうち、25℃における粘度が低いものを選択することにより25℃における熱膨張性耐火材料の粘度を小さくすることができる。また逆に液状の反応硬化性樹脂成分のうち、25℃における粘度が高いものを選択することにより25℃における熱膨張性耐火材料の粘度を大きくすることができる。
【0173】
また前記熱膨張性耐火材料の粘度の調整は、前記熱膨張性耐火材料に含まれる熱膨張成分、無機充填材の重量割合を変動させることによっても行うことができる。
例えば、前記熱膨張性耐火材料に含まれる熱膨張成分、無機充填材等の重量割合を減少させると、25℃における熱膨張性耐火材料の粘度を小さくすることができる。加えて、25℃の温度で液状の無機充填材を適宜選択することにより、粘度を小さくすることもできる。
また逆に前記熱膨張性耐火材料に含まれる熱膨張成分、無機充填材等の重量割合を増加させると、25℃における熱膨張性耐火材料の粘度を大きくすることができる。
【0174】
次に前記熱膨張性耐火材料の製造方法について説明する。
前記熱膨張性耐火材料の製造方法に特に限定はないが、例えば、前記熱膨張性耐火材料を有機溶剤に懸濁させたり、加温して溶融させたりして塗料状とする方法、溶剤に分散してスラリーを調製する等の方法、また前記熱膨張性耐火材料に含まれる反応硬化性樹脂成分に25℃の温度において固体である成分が含まれる場合には、前記熱膨張性耐火材料を加熱下に溶融させる等の方法により前記樹脂組成物を得ることができる。
【0175】
前記熱膨張性耐火材料は、前記熱膨張性耐火材料の各成分を単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、混練ロール、ライカイ機、遊星式撹拌機等公知の装置を用いて混練することにより得ることができる。
【0176】
また、イソシアネート基、エポキシ基等の反応性官能基をもつ主剤と硬化剤とをそれぞれ別々に充填材等と共に混練しておき、注入直前にスタティックミキサー、ダイナミックミキサー等で混練して得ることもできる。
さらに触媒を除く前記熱膨張性耐火材料の成分と、触媒とを注入直前に同様に混練して得ることもできる。
【0177】
以上説明した方法により、本発明に使用する前記熱膨張性耐火材料を得ることができる。
【0178】
以上の様に得られた前記反応硬化型熱膨張性樹脂組成物は25℃の温度において流動性を有するため、建築部材の内部に注入することができる。
ここで流動性を有する、とは前記熱膨張性耐火材料を静置したときに一定形状を有しない場合をいい、流動性を有しない、とは前記熱膨張性耐火材料を静置したときに一定形状を有する場合をいう。
【0179】
前記熱膨張性耐火樹脂部材は、火災時などの高温にさらされた際にその膨張層により断熱し、かつその膨張層の強度があるものであれば特に限定されないが、50kW/m2の加熱条件下で30分間加熱した後の体積膨張率が1.1〜6倍のものであれば好ましい。
前記体積膨張率が1.1倍を下回ると、膨張体積が前記樹脂成分の焼失部分を十分に埋めきれず防火性能が低下することがある。また6倍を超えると、膨張層の強度が下がり、火炎の貫通を防止する効果が低下することがある。より好ましくは、体積膨張率が1.2〜5倍の範囲であり、さらに好ましくは1.3〜4倍の範囲である。
【0180】
前記膨張層が自立するためには、前記膨張層は強度の大きいことが必要であり、その強度としては、圧縮試験器にて0.25cm2の圧子を用いて、前記膨張層のサンプルを0.1m/sの圧縮速度で測定した場合の破断点応力が0.05kgf/cm2以上であれば好ましい。破断点応力が0.05kgf/cm2を下回ると、断熱膨張層が自立できなくなり防火性能が低下することがある。より好ましくは、0.1kgf/cm2以上である。
【0181】
次に本発明について図面に基づき実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0182】
実施例1では耐火補強建築部材200を作製して耐火試験を実施した。この試験およびその結果について説明する。
【0183】
図8は本発明の実施例1に係る耐火補強建築部材200の構造を説明するための模式正面図である。また図9は、実施例熱膨張性耐火材料15を注入する前の図8のA−A線に沿う要部断面図であり、図10は、実施例熱膨張性耐火材料15を注入した後の図8のA−A線に沿う要部断面図である。
【0184】
図8に示される通り、ケイ酸カルシウム板からなる耐火性を有する板材201が、長手方向に沿って内部に空洞が形成されている硬質塩化ビニルからなる枠材202により支持されている。
前記板材201と201との間には、前記板材201の外周に沿って框体203が設置されている。
【0185】
また住宅等の構造物の開口部を耐火試験用に再現するために、前記耐火性を有する板材201および前記枠材202の周囲に隙間なくコンクリート成形体204が取り囲んでいいる。
図9に示される通り、前記耐火補強建築部材200の枠材202の内部に長手方向に沿って内部に複数の空洞210〜218が設けられている。
【0186】
次に表1に示した配合に従い、熱膨張性耐火材料15をA成分とB成分とに分けて、それぞれの成分を遊星式攪拌機を用いて攪拌した。
具体的には前記熱膨張性耐火材料としてポリウレタン樹脂を使用した。A成分の樹脂成分としてポリウレタン樹脂の硬化剤としてポリエーテルポリオールを用い、B成分の樹脂成分としてポリウレタン樹脂の主剤としてポリイソシアネート化合物を用いた。
前記ウレタン樹脂の主剤であるポリイソシアネート化合物と硬化剤であるポリエーテルポリオールとを、ポリオール化合物中の活性水素基(OH)とポリイソシアネート化合物中の活性イソシアネート基(NCO)の割合(NCO/OH)が当量比で、1.64:1となる様に調整した。
【0187】
次に図9および図10に示される様に、長手方向に沿って内部に空洞が形成されている硬質塩化ビニルからなる枠材202の空洞のうち、最も外側にある空洞210、211、212、213、214、215の内部に、前記A成分とB成分とを上記の混合比を維持して注入した。
注入された熱膨張性耐火材料15は、空洞210、211、212、213、214、215の内部で発泡しながら硬化して流動性を失い、ウレタン樹脂フォームを形成した。
次に前記耐火補強建築部材200に対してISO834の条件に従い、耐火試験を実施した。耐火試験は炎が前記耐火補強建築部材200を貫通するまで実施した。
【0188】
この耐火試験の結果、加熱面と反対側の面から20分間以上炎の漏出が認められなかった場合を○、20分間未満で炎の漏出が認められた場合を×とした。この結果を表1に合わせて記載する。
【0189】
前記耐火試験を開始と共に加熱面側の熱膨張性耐火材料15が膨張し、熱膨張残渣を形成した。20分経過後も、実施例1の耐火補強建築部材200では炎の漏出が認められなかった。30分経過後に炎の漏出が観察された。
【実施例2】
【0190】
実施例1の場合において、無機充填材、熱膨張成分およびリン化合物の量を表1に示す量に変えたこと、図11に示す通り、長手方向に沿って内部に空洞が形成されている硬質塩化ビニルからなる枠材202の空洞210〜218の全てに対して熱膨張性耐火材料15を注入したこと以外は実施例1の場合と全く同様に耐火試験を実施した。
前記耐火試験を開始と共に加熱面側の熱膨張性耐火材料15が膨張し、熱膨張残渣を形成した。20分経過後も、実施例2の耐火補強建築部材220では炎の漏出が認められなかった。28分経過後に炎の漏出が観察された。
【実施例3】
【0191】
実施例1の場合において、無機充填材、熱膨張成分およびリン化合物の量を表1に示す量に変えたこと以外は実施例1の場合と全く同様に耐火試験を実施した。
前記耐火試験を開始と共に加熱面側の熱膨張性耐火材料15が膨張し、熱膨張残渣を形成した。20分経過後も、実施例2の耐火補強建築部材220では炎の漏出が認められなかった。23分経過後に炎の漏出が観察された。
【実施例4】
【0192】
実施例1の場合において、無機充填材、熱膨張成分およびリン化合物の量を表1に示す量に変えたこと、図11に示す通り、長手方向に沿って内部に空洞が形成されている硬質塩化ビニルからなる枠材202の空洞210〜218の全てに対して熱膨張性耐火材料15を注入したこと以外は実施例1の場合と全く同様に耐火試験を実施した。
前記耐火試験を開始と共に加熱面側の熱膨張性耐火材料15が膨張し、熱膨張残渣を形成した。20分経過後も、実施例2の耐火補強建築部材220では炎の漏出が認められなかった。25分経過後に炎の漏出が観察された。
【0193】
[比較例1]
実施例1の場合において、熱膨張成分を使用しなかったこと、図11に示す通り、長手方向に沿って内部に空洞が形成されている硬質塩化ビニルからなる枠材202の空洞210〜218の全てに対して熱膨張性耐火材料15を注入したこと以外は実施例1の場合と全く同様に耐火試験を実施した。
前記耐火試験を開始と共に加熱面側の熱膨張性耐火材料15はその形状を保持したが徐々に収縮が起こり、熱膨張残渣を形成した。15分経過後に炎の漏出を観察することができた。
【0194】
[比較例2]
実施例1の場合において、リン化合物を使用しなかったこと、図11に示す通り、長手方向に沿って内部に空洞が形成されている硬質塩化ビニルからなる枠材202の空洞210〜218の全てに対して熱膨張性耐火材料15を注入したこと以外は実施例1の場合と全く同様に耐火試験を実施した。
前記耐火試験を開始と共に加熱面側の熱膨張性耐火材料15が膨張し、熱膨張残渣を形成したが、熱膨張残渣の形状保持性が低いため、熱膨張残渣の飛散が見られた。14分経過後に炎の漏出を観察することができた。
【0195】
【表1】
【符号の説明】
【0196】
1、100、200、220 耐火補強建築部材
10、50 開口枠体
11、12、53、54 縦枠体
11a、12a、11b、12b、21a、22a、210〜218 空洞
13、14、51、52 横枠体
15 熱膨張性耐火材料
20、60、201 板材
21、22 縦框体
23、24 横框体
25 窓ガラス
26 ゴムシール材、シーリング剤
30〜33 孔
30a,30b 断面がH字状の鋼材の外面
40 スタッド
41、42 ケイ酸カルシウム板
50、51 ポリ塩化ビニル樹脂製枠材
70 断熱材
80 ドアノブ
202、203 枠材
204 コンクリート成形体
【技術分野】
【0001】
本発明は耐火補強建築部材および建築部材の耐火補強方法に関し、より詳しくは住宅等の構造物の開口部等に設置される扉、サッシ等の耐火補強建築部材および建築部材の耐火補強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅等の構造物の開口部等に設置される建築部材として、扉、サッシ等が使用されている。
住宅等の構造物の内部または外部で火災が発生した場合にはこの火災による延焼を防ぐ必要がある。火災の炎等が扉、サッシ等の建築部材を貫通して延焼することがないように、扉、サッシ等の建築部材の耐火性を高めることが重要な課題となる。
この課題に関連して、サッシの耐火性を高める技術が提案されている。
具体的には、合成樹脂からなる枠材と耐火性のある板材とを備えたサッシについて、そのサッシに使用される枠材の長手方向に複数の空洞が設けられていて、この空洞に熱膨張性耐火部材と木質部材とが挿入されている防火性樹脂サッシが提案されている(特許文献1)。
この防火性樹脂サッシは枠材の長手方向に熱膨張性耐火部材が挿入されているため、合成樹脂からなる枠材が溶融、焼失した場合でも熱膨張性耐火部材による熱膨張残渣が火災の炎や熱を遮断する。これによりサッシの耐火性を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−9305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記に説明した通り、サッシに使用される枠材の空洞内部に熱膨張性耐火部材が事前に挿入されている場合には、上記の先行技術によりサッシの耐火性を高めることが可能である。
しかしながらサッシに使用される枠材の空洞内部に熱膨張性耐火部材が挿入されていない場合には、サッシに使用される枠材の空洞内部に後から熱膨張性耐火部材を挿入しなければならない。
サッシに使用される枠材の内部の空洞は、通常は外部からは見えない位置にあるから、前記枠材の空洞内部に熱膨張性耐火部材を挿入する場合には、サッシを住宅等の構造物の開口部から取り外して前記枠材を分解する必要がある。
ところが前記開口部が住宅等の構造物の外部に面している場合には、前記開口部からサッシを取り外すと、住宅等の構造物の内部と外部とを隔てるものがなくなるために住宅等の構造物内部の温度管理等が困難になる問題がある。
また外部で雨が降り、風が吹いている場合にはこれらの雨や風等が住宅等の構造物内部に侵入する問題もある。
これらの問題は、住宅等が高層マンション、高層ビル等の場合、季節が梅雨等の降雨が多い時期、冬の降雪が多い時期等の場合にはより深刻な問題となる。
この問題に対応するために、別途閉塞板を準備してサッシを住宅等の構造物の開口部から取り外している間は、その開口部を前記閉塞板により塞ぐ手段も考えられる。
しかしながら、実際の施工現場のサッシの形状は多種多様であるため、施工現場毎にサッシの形状に合わせた多数の閉塞板を準備しなければならず、サッシの耐火性を高める作業が煩雑となり作業に時間がかかる問題があった。
【0005】
本発明の目的は、耐火性を高める作業が容易である、扉、サッシ等の耐火補強建築部材および建築部材の耐火補強方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため本発明者らが鋭意検討した結果、中空部を有する建築部材であって、前記建築部材に熱膨張性耐火材料が注入されてなる耐火補強建築部材が本発明の目的に適うことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、
[1]中空部を有する建築部材であって、
前記建築部材の内部に熱膨張性耐火材料が注入され、
前記建築部材の内部に注入される前の前記熱膨張性耐火材料の25℃における粘度が、1000〜100000 mPa・sの範囲であり、
前記熱膨張性耐火材料が、前記建築部材の内部に注入された後に、25℃において前記建築部材の内部で流動性を失うことを特徴とする、耐火補強建築部材を提供するものである。
【0008】
また本発明の一つは、
[2]前記建築部材が、長手方向に沿って内部に空洞が形成されている枠材と、耐火性を有する板材と、を少なくとも有し、
前記耐火性を有する板材が、前記枠材により支持され、、
前記熱膨張性耐火材料が、前記枠材の内部の空洞に注入されている、上記[1]に記載の耐火補強建築部材を提供するものである。
【0009】
また本発明の一つは、
[3]前記建築部材が二以上の板材を備え、
前記熱膨張性耐火材料が、互いに向き合う板材同士の間に形成される空間に注入されている、上記[1]または[2]に記載の耐火補強建築部材を提供するものである。
【0010】
また本発明の一つは、
[4]前記熱膨張性耐火材料が、反応硬化性樹脂成分、熱膨張成分および無機充填材を少なくとも含む、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の耐火補強建築部材を提供するものである。
【0011】
また本発明の一つは、
[5]前記熱膨張性耐火材料に含まれる反応硬化性樹脂成分が、ウレタン樹脂フォーム、イソシアヌレート樹脂フォーム、エポキシ樹脂フォーム、フェノール樹脂フォーム、尿素樹脂フォーム、不飽和ポリエステル樹脂フォーム、アルキド樹脂フォーム、メラミン樹脂フォーム、ジアリルフタレート樹脂フォームおよびシリコーン樹脂フォームからなる群から選ばれる少なくとも一つである、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の耐火補強建築部材を提供するものである。
【0012】
また本発明の一つは、
[6]前記熱膨張性耐火材料に含まれる熱膨張成分が、熱膨張性黒鉛および熱膨張性樹脂組成物の成形体粉砕品の少なくとも一方を含む、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の耐火補強建築部材を提供するものである。
【0013】
また本発明の一つは、
[7]前記熱膨張性耐火材料が、リン化合物を含む、上記[1]〜[6]のいずれかに記載の耐火補強建築部材を提供するものである。
【0014】
また本発明の一つは、
[8]前記熱膨張性耐火材料に含まれる無機充填材が、炭酸カルシウムを含む、上記[1]〜[7]のいずれかに記載の耐火補強建築部材を提供するものである。
【0015】
また本発明の一つは、
[9]前記熱膨張性耐火材料が、
前記枠材の内部の空洞のうち最も外側にある空洞の内面
および
前記板材同士の間に形成される空間のうち最も外側にある空間の内面
の少なくとも一方に接して注入されている、上記[1]〜[8]のいずれかに記載の耐火補強建築部材を提供するものである。
【0016】
また本発明の一つは、
[10]前記建築部材が、サッシおよび扉の少なくとも一つである、上記[1]〜[9]のいずれかに記載の耐火補強建築部材を提供するものである。
【0017】
また本発明の一つは、
[11]前記サッシまたは扉が、それぞれ、合成樹脂材、金属材、木材および無機材からなる群より選ばれる少なくとも一つからなる、上記[10]に記載の耐火補強建築部材を提供するものである。
【0018】
また本発明は、
[12]構造物の開口部に設置される建築部材に対する耐火補強方法であって、
25℃における粘度が1000〜100000 mPa・sの範囲である熱膨張性耐火材料を前記建築部材の内部に注入する工程と、
前記熱膨張性耐火材料を前記建築部材内部で反応させて、前記熱膨張性耐火材料の流動性を失わせる工程と、
を少なくとも有することを特徴とする、建築部材の耐火補強方法を提供するものである。
【0019】
また本発明の一つは、
[13]前記建築部材が、長手方向に沿って内部に空洞が形成されている枠材と、耐火性を有する板材と、を少なくとも有し、
前記耐火性を有する板材が、前記枠材により支持され、
前記熱膨張性耐火材料を、前記枠材の内部の空洞に注入する工程と、
前記熱膨張性耐火材料を、前記枠材の内部の空洞で反応させて、前記熱膨張性耐火材料の流動性を失わせる工程と、
を有する、上記[12]に記載の建築部材の耐火補強方法を提供するものである。
【0020】
また本発明の一つは、
[14]前記建築部材が二以上の板材を備え、
前記熱膨張性耐火材料を、互いに向き合う板材同士の間に形成される空間に注入する工程と、
前記熱膨張性耐火材料を前記空間内部で反応させて、前記熱膨張性耐火材料の流動性を失わせる工程と、
を有する、上記[12]または[13]に記載の建築部材の耐火補強方法を提供するものである。
【0021】
また本発明の一つは、
[15]前記熱膨張性耐火材料が、反応硬化性樹脂成分、熱膨張成分および無機充填材を少なくとも含む、上記[12]〜[14]のいずれかに記載の建築部材の耐火補強方法を提供するものである。
【0022】
また本発明の一つは、
[16]前記熱膨張性耐火材料に含まれる反応硬化性樹脂成分が、ウレタン樹脂フォーム、イソシアヌレート樹脂フォーム、エポキシ樹脂フォーム、フェノール樹脂フォーム、尿素樹脂フォーム、不飽和ポリエステル樹脂フォーム、アルキド樹脂フォーム、メラミン樹脂フォーム、ジアリルフタレート樹脂フォームおよびシリコーン樹脂フォームからなる群から選ばれる少なくとも一つである、上記[12]〜[15]のいずれかに記載の建築部材の耐火補強方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る耐火補強建築部材は、建築部材の内部に熱膨張性耐火材料が注入されてなる。
住宅等の構造物の開口部に既に設置されている建築部材の耐火性が低いことが判明した場合には、前記開口部から建築部材を取り外してから、その内部に熱膨張性耐火部材を挿入する必要がある。この様に従来の建築部材は耐火補強に手間と時間がかかる。
これに対し、本発明の耐火補強建築部材は、建築部材の内部に熱膨張性耐火材料を注入することにより得られるから、単位時間当たりの生産性に優れる。
【0024】
また本発明に使用する熱膨張性耐火材料は、建築部材の内部に注入される前の25℃における粘度が1000〜100000 mPa・sの範囲であり、流動性を有する。この流動性により、前記建築部材の内部の形状、大きさに依存することなく容易に前記建築部材の内部に前記熱膨張性耐火材料を注入することができる。このため容易に本発明の耐火補強建築部材を得ることができる。
【0025】
また本発明に使用する熱膨張性耐火材料は、前記建築部材の内部で流動性を失うから、前記建築部材の内部から外部へ熱膨張性耐火材料が漏れ出すことを防止することができる。
さらに前記建築部材の内部で、前記熱膨張性耐火材料に含まれる熱膨張成分等が偏在することを防止することができる。これにより、本発明の耐火補強建築部材は、前記建築部材の形状、大きさ等に依存することなく、安定した耐火性能を発揮することができる。
【0026】
また本発明に係る耐火補強建築部材が火災等の炎にさらされた場合、前記耐火補強建築部材に含まれる熱膨張性耐火材料が膨張して熱膨張残渣を形成する。
この熱膨張残渣が断熱層の役割を果たすため、火災が発生している側から前記耐火補強建築部材を通して火災が発生していない側に火災の炎等の熱が伝わることを遅延させることができる。
【0027】
また火災等の熱により耐火補強建築部材に含まれる枠材や板材等の一部が変形、溶融、焼失して耐火補強建築部材に隙間等が生じた場合でも、内部の熱膨張性耐火材料が膨張して熱膨張残渣を形成する。この熱膨張残渣が耐火補強建築部材に生じた隙間を閉塞するから、住宅等の構造物の延焼を防止することができる。
【0028】
また本発明に使用する熱膨張性耐火材料の反応硬化性樹脂成分として、ウレタン樹脂フォーム等の発泡材料を使用した場合には、前記建築部材の内部に注入された熱膨張性耐火材料の内部に気泡を含ませることができる。これにより断熱性に優れた耐火補強建築部材を得ることができる。
【0029】
また本発明に係る耐火補強方法は、前記建築部材の内部に熱膨張性耐火材料を注入することにより実施することができるから、作業性に優れる。
さらに本発明の耐火補強方法によれば、建築部材の形状、大きさ等に依存することなく前記建築部材の耐火性を容易に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る第一の耐火補強建築部材を例示するための模式正面図である。
【図2】熱膨張性耐火材料を注入する前の図1のA−A線に沿う要部断面図である。
【図3】熱膨張性耐火材料を注入した後の図1のA−A線に沿う要部断面図である。
【図4】本発明に係る第一の実施形態を例示する模式正面図である。
【図5】本発明に係る第二の耐火補強建築部材を例示するための模式正面図である。
【図6】図5のA−A線に沿う要部断面図である。
【図7】本発明に係る第二の実施形態を例示する模式部分正面図である。
【図8】本発明の実施例1に係る耐火補強建築部材の構造を説明するための模式正面図である。
【図9】実施例熱膨張性耐火材料を注入する前の図8のA−A線に沿う要部断面図である。
【図10】実施例熱膨張性耐火材料を注入した後の図8のA−A線に沿う要部断面図である。
【図11】実施例熱膨張性耐火材料を注入した後の図8のA−A線に沿う要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は耐火補強建築部材に関するものであるが、最初に本発明に使用する建築部材について説明する。
本発明に使用する建築部材としては、例えば、一戸建住宅、集合住宅、高層住宅、高層ビル、商業施設、公共施設等の建築物、客船、輸送船、連絡船等の船舶等の構造物(以下、「住宅等の構造物」という。)の開口部に設置されるものが挙げられる。
一例を示すとすれば、例えば、開閉窓、固定窓等のサッシ、ドア、引戸、シャッター、回転扉等の扉等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
本発明に係る耐火補強建築部材は、前記建築部材の内部に熱膨張性耐火材料が注入されてなるものであるが、本発明に係る第一の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0033】
図1は、本発明に係る第一の耐火補強建築部材を例示するための模式正面図である。また図2は、熱膨張性耐火材料を注入する前の図1のA−A線に沿う要部断面図であり、図3は熱膨張性耐火材料を注入した後の図1のA−A線に沿う要部断面図である。
前記耐火補強建築部材の一例として、図1〜図3には引き違いサッシが例示されている。
【0034】
図1〜3において、耐火補強建築部材1は住宅等の構造物に形成された矩形の開口部に固定されるものであって、外周の枠材としての開口枠体10と、その内部に水平方向に移動可能の引き違いの2枚の板材20,20とを備えている。
前記開口枠体10等の内部に熱膨張性耐火材料を注入することにより、第一の実施形態に係る耐火補強建築部材1が得られる。
【0035】
前記開口枠体10は左右の縦枠体11,12と上下の横枠体13,14とから構成され、各枠材11〜14に囲まれた内部が開口部となっている。そして、2枚の板材20,20は前記の開口部を閉塞するものであり構造的には略同一構成である。左右の枠材としての縦框体21,22と上下の枠材としての横框体23,24により前記板材20,20は矩形に形成され、中央側の縦框体が前後に重なって、2枚の板材20,20の前後の隙間を閉塞できる構造となっている。
開口枠体10および板材20,20は、縦横の枠材としての枠体11〜14と、縦横の枠材としての框体21〜24とから構成されるアルミニウム金属を組み合わせて構成されている。
【0036】
前記開口枠体10および板材20,20等に使用される素材としては、例えば、合成樹脂材、金属材、無機材、木材等が挙げられる。
前記合成樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル等の塩素含有樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂等が挙げられる。
前記金属材としては、例えば、アルミニウム材、ステンレス材、鋼材、合金材等を挙げることができる。
前記無機材としては、例えば、ガラス、石膏、セラミック、セメント、ケイ酸カルシウム、パーライト等が挙げられる。
前記木材としては、天然の木材の他、木材片、木材シート等を樹脂により硬化させた成形木材等が挙げられる。
【0037】
前記素材は一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0038】
耐火補強建築部材11は、上述した通り開口枠体10に、2枚の板材20,20がスライド可能に支持されるものである。
前記板材20の枠材となる縦横の框体21〜24により、内周側に位置する鉄製網入りガラスからなる窓ガラス25が支持されている。
窓ガラス25は耐火性のある板材を構成するものであり、耐火補強建築部材1の室外と室内とを仕切る仕切り面を構成している。
なお、仕切り面としては透光性を有する窓ガラスに限らず、金属板材やケイ酸カルシウム板のような遮光性を有するもの等であってもよい。
【0039】
第一の実施形態の耐火補強建築部材1の構成は特に限定されるものではなく、本発明に使用する枠体は、サッシを構成する上下左右の各枠体11〜14、各框体21〜24のそれぞれはアルミニウム金属の成形材で形成され、長手方向に沿って貫通する複数の空洞を有する。
【0040】
長手方向と直交する横断面の形状が一つあるいは複数の空洞を有するものであれば、周知のいずれの形態であってもよい。
【0041】
またサッシの枠材である各枠体、各框体として、アルミニウム金属に代えて、またはアルミニウム金属と共にポリ塩化ビニル樹脂等の合成樹脂を使用する場合には、防火性を向上させる観点から硬質塩化ビニルを使用することが好ましい。
硬質塩化ビニル等の合成樹脂を用いて押出成形や射出成形等によって各枠体、各框体を成形することもできる。
【0042】
まず開口枠体10を構成する縦枠体11,12から詳細に説明する。
縦枠体11,12はアルミニウム金属を鋳造して得られた長尺材を切断して形成したものであり、長手方向に沿って貫通する空洞を有している。
前記縦枠体11,12は、横断面形状が2つの大きい矩形の空洞11a,12aと、この空洞を形成する内外の壁面の端部から開口側に延出する2つの小幅の空洞11b,12bとを備えている。
また、開口枠体10を構成する横枠体13,14も、図示していないが同様に複数個の長手方向に貫通する空洞が形成されている。
【0043】
板材20の枠材となる左右の縦框体21,22は、同様にアルミニウム金属を鋳造して成形された長尺材を切断して形成したものであり、横断面には長手方向に貫通する6個の空洞21a,22aを有している。また、板材20の枠材となる横框体23,24も、図示していないが同様に複数個の長手方向に貫通する空洞が形成されている。そして、縦横の框材の内部空間には鉄製網入りガラスからなる窓ガラス25が嵌め込まれている。窓ガラス25は縦框体21,22の段差部に位置しており、ゴムシール材やシーリング剤26で固定されている。
【0044】
第一の実施形態に例示される防火補強建築部材1は、開口枠体10を構成するアルミニウム金属の各枠体11〜14の空洞、および板材20の枠材となるアルミニウム金属の各框体21〜24の空洞に熱膨張性耐火材料15が注入されている。
具体的には、縦枠体11の大きい空洞11a,12aには、熱膨張性耐火材料15が注入された後に、前記空洞11a,12a内部で熱膨張性耐火材料15が流動性を失っている。
【0045】
なお、図示していないが、横枠体13,14にも長手方向に貫通する空洞内に、同様に熱膨張性耐火材料15が注入された後に、前記横枠体13,14の空洞の内部で熱膨張性耐火材料15が流動性を失っている。
【0046】
板材20の縦框体21,22の空洞21a,22aにも、熱膨張性耐火材料15が注入された後に、前記空洞21a,22a内部で熱膨張性耐火材料15が流動性を失っている。
【0047】
そして、板材20の上下の横框体23,24にも、図示していないが長手方向に貫通する空洞内に熱膨張性耐火材料15が注入された後に、前記横框体23,24内部で熱膨張性耐火材料15が流動性を失っている。
【0048】
このように、開口枠体10の空洞と、板材20,20の空洞とには、熱膨張性耐火材料15が窓ガラス25の面に沿う方向に注入され、空洞の内壁面に接して流動性を失っている。
これらの熱膨張性耐火材料15は耐火性板材を構成する窓ガラス25の面に沿って平行な状態に配置され、窓ガラス25と共に耐火面を形成している。このように形成された耐火面は、ガラス面と垂直な方向の各枠体や、各框材の肉厚部分を除く窓ガラスに沿うほぼ全面を埋め尽くしている。
【0049】
本発明に使用する枠材の内部に空洞が複数ある場合には、耐火性板材と垂直方向に最も外側にある空洞内部に接して熱膨張性耐火材料を前記空洞に注入することが、第一の実施形態に係る耐火補強建築部材の耐火性を高める観点から好ましい。
【0050】
室外側、あるいは室内側の正面、すなわち、ガラス面に沿う方向と直角な方向から耐火補強建築部材1を見ると、中央の窓ガラス25,25の外周を囲む縦框体21,22および横框体23,24の空洞の正面には熱膨張性耐火材料15が位置している。板材20,20を支持する開口枠体10の縦枠体11,12及び横枠体13,14の空洞の正面にも熱膨張性耐火材料15が位置しており、全ての熱膨張性耐火材料15が窓ガラス25の面に沿って注入されて耐火面が形成されている。
【0051】
なお熱膨張性耐火材料15の組成については後述する。
【0052】
第一の実施形態に用いられる熱膨張性耐火材料15は、火災時等の高温にさらされると、体積膨張して熱膨張残渣を形成する材料であり、火災の際に各枠材11〜14と各框材21〜24等のアルミニウム金属が加熱されて変形、脱落した部分を、熱膨張性耐火材料15の熱膨張残渣が埋めて、火炎の貫通を防止する。
【0053】
次に前記熱膨張性耐火材料15を空洞内へ注入することにより建築部材を耐火補強する方法について説明する。
図4は、本発明に係る第一の実施形態を例示する模式正面図である。
まず、開口枠体10を構成する縦枠体11,12の上部に電動ドリル等の開孔手段を用いて複数の孔30を開ける。
【0054】
同様に、開口枠体10を構成する横枠体13に孔31を開ける。
次に熱膨張性耐火材料を、前記孔30、31から注入する。開口枠体10を構成する縦枠体11,12ならびに横枠体13には、それぞれ複数の孔30、31が形成されているため、熱膨張性耐火材料15を注入すると、前記開口枠体10を構成する縦枠体11,12ならびに横枠体13の内部の空気は注入されている孔とは別の孔から外部に排出される。これにより、円滑に開口枠体10を構成する縦枠体11,12内部の空洞および横枠体13の内部の空洞に前記熱膨張性耐火材料を注入することができる。
【0055】
図4では各孔は、第一の実施形態に係る耐火補強建築部材1の正面に設けられているが、適宜第一の実施形態に係る耐火補強建築部材1の側面、背面、上面等に設けることができる。
前記開口枠体10の内部の空洞に前記熱膨張性耐火材料15を正面から注入する場合には、正面に設けられた孔以外にも前記開口枠体10の側面に設けられた孔、背面に設けられた孔、上面に設けられた孔の少なくとも一つから、前記開口枠体10の内部の空気を排出することができる。
前記開口枠体10の正面、側面、背面および上面の少なくとも一つの場所に設けられた孔にパイプを挿入し、前記開口枠体10の内部を減圧しながら前記開口枠体10の内部に熱膨張性耐火材料15を注入することができる。
また前記開口枠体10の正面、側面、背面および上面の少なくとも一つの場所に設けられた孔から、前記開口枠体10の内部へピストンとシリンダー等を備えた加圧注入手段により前記熱膨張性耐火材料15を圧力を加えないがら注入することもできる。
なお説明の便宜上、図4では各孔は、第一の実施形態に係る耐火補強建築部材1の正面に設けられているが、意匠性を考慮すると、前記耐火補強建築部材1の側面、上面等に孔を設けることが好ましい。
【0056】
開口枠体10を構成する縦枠体11,12および横枠体13に形成する複数の孔30、31の位置、形状、大きさ等は、前記熱膨張性耐火材料15を注入する効率を考慮して適宜選択することができる。
【0057】
また開口枠体10を構成する横枠体14の内部の空洞が、縦枠体11,12の内部の空洞と連結されていない場合には、開口枠体10を構成する横枠体14に適宜、電動ドリル等の開孔手段を用いて孔を開けておき、この孔から熱膨張性耐火材料15を注入することもできる。
【0058】
また同様に、板材20の枠体となる左右の縦框体21,22ならびに横框体23,24にもそれぞれ電動ドリル等の開孔手段を用いて複数の孔32、33を開ける。この孔から左右の縦框体21,22の内部の空洞ならびに横框体23,24の内部の空洞に熱膨張性耐火材料を注入することができる。
【0059】
施工作業後、前記の孔30〜33に必要に応じて樹脂キャップ、金属製の螺子等の閉塞具を設置してもよい。
【0060】
前記開口枠体10を構成する縦枠体11,12および横枠体13,14、ならびに板材20の枠体となる左右の縦框体21,22および横框体23,24のそれぞれの空洞の内部に注入された熱膨張性樹脂耐火材料15は、時間の経過と共に硬化反応が進み、前記空洞の内部で流動性を失う。
【0061】
このため、それぞれの空洞内部に注入された熱膨張性樹脂耐火材料15を、前記開口枠体10を構成する縦枠体11,12および横枠体13,14、ならびに板材20の枠体となる左右の縦框体21,22および横框体23,24から漏れ出すことなく内部に留めることができる。
【0062】
また前記熱膨張性耐火材料15として、気泡を含む発泡体を使用することにより、第一の実施形態に係る耐火補強建築部材1の断熱性を高めることができる。
【0063】
第一の実施形態に係る耐火補強建築部材1は、開口枠体10等の内部の空洞に熱膨張性耐火材料を注入することにより得られる。
このため開口枠体10から、2枚の板材20,20等を取り外さなくても耐火補強を施すことができるから、容易に耐火性を高めることができる。
【0064】
次に本発明の第二の実施形態について説明する。
図5は、本発明に係る第二の耐火補強建築部材を例示するための模式正面図である。また図6は、図5のA−A線に沿う要部断面図である。
前記耐火補強建築部材1の一例として、図5および図6には開閉扉が例示されている。
【0065】
図5および6において、耐火補強建築部材100は住宅等の構造物の出入り口に形成された矩形の開口部にヒンジ等の可動固定手段により開閉可能に固定されるものであって、外周の枠材としての開口枠体50と、前記開口枠体50を両面から覆う2枚の板材60,60とを備えている。
互いに向き合う2枚の板材60,60の間に形成される空間の内部に熱膨張性耐火材料を注入することにより、第二の実施形態に係る耐火補強建築部材100が得られる。
【0066】
前記開口枠体50は左右の縦枠体51,52と上下の横枠体53,54とから構成されている。そして、2枚の板材60,60は前記開口枠体50を閉塞するものである。
また、前記2枚の板材60,60の間には、断熱材として、ガラスウール等の無機繊維と、前記無機繊維を覆うアルミニウム箔からなる断熱材70が設置されている。
【0067】
前記耐火補強建築部材100は、縦横の枠材としての木製の枠体11〜14と、木製の板材60,60とを組み合わせて構成されている。
また前記耐火補強建築部材100は開閉手段としてドアノブ80を備える。前記開閉手段の構造は公知であり、適宜市販のものを選択して使用することができる。
第二の実施形態に係る耐火補強建築部材100を構成する素材については第一の実施形態の場合と同様、目的や用途に応じて適宜選択することが可能である。
【0068】
第二の実施形態に例示される防火補強建築部材100は、開口枠体50を構成する木製の板材60,60同士の間に形成される空間のうち、前記断熱材70と木製の板材60との間に形成される空間に熱膨張性耐火材料15が注入されている。
熱膨張性耐火材料15が注入された後に、前記空間80内部で熱膨張性耐火材料15が流動性を失っている。
【0069】
第二の実施形態に用いられる熱膨張性耐火材料15は、火災時等の高温にさらされると、体積膨張して熱膨張残渣を形成する材料であり、火災の際に開口枠体50を構成する木製の板材60、開口枠体50の左右の縦枠体51,52と上下の横枠体53,54が加熱された場合、木製の板材60、開口枠体50の左右の縦枠体51,52、上下の横枠体53,54と熱膨張性耐火材料15による熱膨張残渣との接触面の炭化を抑制し、耐火性能を確保することができる。
【0070】
次に前記熱膨張性耐火材料15を空間内へ注入することにより建築部材を耐火補強する方法について説明する。
図7は、本発明に係る第二の実施形態を例示する模式正面図である。
まず、木製の板材60の上部に電動ドリル等の開孔手段を用いて複数の孔30を開ける。
【0071】
次に熱膨張性耐火材料を前記孔30から注入する。木製の板材60には、それぞれ複数の孔30が形成されているため、熱膨張性耐火材料を注入すると、前記開口枠体50を構成する開口枠体50および木製の板材60の内部の空気は注入されている孔とは別の孔から外部に排出される。これにより、円滑に防火補強建築部材100を構成する木製の板材60と断熱材70との内部の空間に前記熱膨張性耐火材料を注入することができる。
木製の板材60に形成する複数の孔30の位置、形状、大きさ等は、前記熱膨張性耐火材料を注入する効率を考慮して適宜選択して決定することができる。
なお説明の便宜上、図7では各孔は、第二の実施形態に係る耐火補強建築部材100の正面に設けられているが、意匠性を考慮すると、前記耐火補強建築部材1の側面、上面等に孔を設けることが好ましい。
【0072】
施工作業後、前記の孔30に必要に応じて樹脂キャップ、金属製の螺子等の閉塞具を設置してもよい。
【0073】
前記木製の板材60および断熱材70の空間の内部に注入された熱膨張性樹脂耐火材料は、時間の経過と共に硬化反応が進み、前記空間の内部で流動性を失う。
このため、空間内部に注入された熱膨張性樹脂耐火材料を、開口枠材50、木製の板材60から漏れ出すことなく内部に留めることができる。
【0074】
また前記熱膨張性耐火材料として、気泡を含む発泡体を使用することにより、第一の実施形態に係る耐火補強建築部材100の断熱性を高めることができる。
【0075】
第二の実施形態に係る耐火補強建築部材2についても、木製の板材60,60等の内部の空間に熱膨張性耐火材料を注入することにより得られる。
このため開閉扉を住宅等の構造物の出入り口から取り外さなくても耐火補強を施すことができるから、容易に耐火性を高めることができる。
【0076】
次に本発明に使用する熱膨張性耐火材料について説明する。
【0077】
前記熱膨張性耐火材料としては、例えば、具体的には反応硬化性樹脂成分、熱膨張成分、無機充填材等を含む樹脂組成物からなるもの等を挙げることができる。
【0078】
前記熱膨張性耐火材料の各成分のうち、まず前記反応硬化性樹脂成分について説明する。
前記反応硬化性樹脂成分としては、例えば、時間の経過と共に前記反応硬化性樹脂成分に含まれる構成成分の反応が進むことにより粘度が増大し、当初は流動性があるが時間の経過と共に流動性を失うものであれば特に限定はない。
前記反応硬化性樹脂成分としては、具体例を挙げるとするなら、例えば、ウレタン樹脂、イソシアヌレート樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0079】
前記ウレタン樹脂としては、例えば、主剤としてのポリイソシアネート化合物、硬化剤としてのポリオール化合物、触媒等を含むものが挙げられる。
前記ウレタン樹脂の主剤であるポリイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0080】
前記芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジメチルジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等が挙げられる。
前記脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ジメチルジシシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0081】
前記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
前記ポリイソシアネート化合物は一種もしくは二種以上を使用することができる。
前記ウレタン樹脂の主剤は、使い易いこと、入手し易いこと等の理由から、ジフェニルメタンジイソシアネート等であれば好ましい。
【0082】
前記ウレタン樹脂の硬化剤であるポリオール化合物としては、例えば、芳香族ポリオール、脂環族ポリオール、脂肪族ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリマーポリオール等が挙げられる。
【0083】
前記芳香族ポリオールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等が挙げられる。
前記脂環族ポリオールとしては、例えば、シクロヘキサンジオール、メチルシクロヘキサンジオール、イソホロンジオール、ジシクロヘキシルメタンジオール、ジメチルジシシクロヘキシルメタンジオール等が挙げられる。
前記脂肪族ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール等が挙げられる。
前記ポリエステル系ポリオールとしては、例えば、多塩基酸と多価アルコールとを脱水縮合して得られる重合体、ε−カプロラクトン、α−メチル−ε−カプロラクトン等のラクトンを開環重合して得られる重合体、ヒドロキシカルボン酸と上記多価アルコール等との縮合物が挙げられる。
【0084】
ここで前記多塩基酸としては、具体的には、例えば、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸等が挙げられる。
また前記多価アルコールとしては、具体的には、例えば、ビスフェノールA、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキサングリコール、ネオペンチルグリコール等が挙げられる。
また前記ヒドロキシカルボン酸としては、具体的には、例えば、ひまし油、ひまし油とエチレングリコールの反応生成物等が挙げられる。
【0085】
前記ポリマーポリオールとしては、例えば、前記芳香族ポリオール、脂環族ポリオール、脂肪族ポリオール、ポリエステル系ポリオール等に対し、アクリロニトリル、スチレン、メチルアクリレート、メタクリレート等のエチレン性不飽和化合物をグラフト重合させた重合体、ポリブタジエンポリオール、または、これらの水素添加物等が挙げられる
【0086】
前記ウレタン樹脂の主剤であるポリイソシアネート化合物と硬化剤であるポリオール化合物とを、ポリオール化合物中の活性水素基(OH)とポリイソシアネート化合物中の活性イソシアネート基(NCO)の割合(NCO/OH)が当量比で、1.2〜15となる様に混合することが好ましい。より好ましくは1.2〜12の範囲である。
前記当量比が1.2以上ではウレタン樹脂の粘度が高くなりすぎることを防ぐことができ、15以下では良好な接着強度を保つことができる。
【0087】
前記ウレタン樹脂の触媒としては、例えば、トリエチルアミン、N−メチルモルホリンビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’−トリメチルアミノエチル−エタノールアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N−メチル,N´−ジメチルアミノエチルピペラジン、イミダゾール環中の第2級アミン官能基をシアノエチル基で置換したイミダゾール化合物等のアミノ系触媒等が挙げられる。
【0088】
次にイソシアヌレート樹脂としては、例えば、先に説明したポリウレタン樹脂を用いて、ポリウレタン樹脂の主剤であるポリイソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基を反応させて三量化させ、イソシアヌレート環の生成を促進したもの等を挙げることができる。
【0089】
イソシアヌレート環の生成を促進するためには、例えば、触媒として、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4−ビス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジアルキルアミノアルキル)ヘキサヒドロ−S−トリアジン等の芳香族化合物、酢酸カリウム、2−エチルヘキサン酸カリウム、オクチル酸カリウム等のカルボン酸アルカリ金属塩、カルボン酸の4級アンモニウム塩等を使用すればよい。
イソシアヌレート樹脂の主剤と硬化剤については先のポリウレタン樹脂の場合と同様である。
【0090】
次に前記エポキシ樹脂としては例えば、主剤としてのエポキシ基を持つモノマーと硬化剤とを反応させて得られる樹脂等を挙げることができる。
【0091】
前記エポキシ基を持つモノマーとしては、例えば、2官能のグリシジルエーテル型として、ポリエチレングリコール型、ポリプロピレングリコール型、ネオペンチルグリコール型、1,6−ヘキサンジオール型、トリメチロールプロパン型、プロピレンオキサイド−ビスフェノールA、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型等のモノマーが挙げられる。
【0092】
また、グリシジルエステル型として、ヘキサヒドロ無水フタル酸型、テトラヒドロ無水フタル酸型、ダイマー酸型、p−オキシ安息香酸型等のモノマーが挙げられる。
【0093】
更に多官能のグリシジルエーテル型として、フェノールノボラック型、オルトクレゾール型、DPPノボラック型、ジシクロペンタジエン、フェノール型等のモノマーが挙げられる。
【0094】
これらは、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0095】
また、前記硬化剤としては、例えば、重付加型硬化剤、触媒型硬化剤等が挙げられる。
前記重付加型硬化剤としては、例えば、ポリアミン、酸無水物、ポリフェノール、ポリメルカプタン等が挙げられる。
前記触媒型硬化剤としては、例えば三級アミン類、イミダゾール類、ルイス酸錯体等が挙げられる。
これらエポキシ樹脂の硬化方法は特に限定されず、公知の方法により行うことができる。
【0096】
なお、前記樹脂成分の溶融粘度、柔軟性、粘着性等の調整のため、二種以上の樹脂成分を混合したものを使用することができる。
【0097】
次に前記フェノール樹脂としては、例えば、レゾール型フェノール樹脂組成物等が挙げられる。
前記レゾール型フェノール樹脂組成物は、例えば、主剤としてのレゾール型フェノール樹脂、硬化剤等を含むものである。
【0098】
前記フェノール樹脂の主剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、パラアルキルフェノール、パラフェニルフェノール、レゾルシン等のフェノール類およびその変性物と、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、フルフラール、アセトアルデヒド等のアルデヒド類とを、触媒量の水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリの存在下に反応させて得られるものがあげられるが、これに限定されるものではない。
フェノール類等とアルデヒド類の混合割合は特に限定はないが、モル比で通常1.0:1.5〜1.0:3.0の範囲である。前記混合割合は、1.0:1.8〜1.0:2.5の範囲であれば好ましい。
【0099】
前記フェノール樹脂の硬化剤としては、例えば、硫酸、リン酸等の無機酸、ベンゼンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ナフトールスルホン酸、フェノールスルホン酸等の有機酸が挙げられる。
【0100】
次に尿素樹脂としては、例えば、主剤としての尿素、硬化剤としてのホルムアルデヒド、触媒としての塩基性化合物、酸性化合物を含む組成物等が挙げられる。
前記尿素とホルムアルデヒド等は重合反応により尿素樹脂を形成する。
【0101】
次に不飽和ポリエステル樹脂としては、主剤としての不飽和多塩基酸、硬化剤としてのポリオール化合物、触媒等を含む組成物等が挙げられる。
前記不飽和ポリエステル樹脂の主剤としては、具体的には、例えば、無水マレイン酸、フマル酸等が挙げられる。
【0102】
前記不飽和ポリエステル樹脂の硬化剤としては、具体的には、例えば、先に説明したウレタン樹脂に使用するポリオール化合物等が挙げられる。
前記不飽和ポリエステル樹脂は、必要に応じて無水フタル酸、イソフタル酸等の飽和多塩基酸を併用することもできる。
【0103】
さらに前記不飽和ポリエステル樹脂の主剤と重合するスチレン、ビニルトルエン、メチルメタクリレート等の架橋用ビニルモノマーを添加することができる。
前記不飽和ポリエステル樹脂の触媒としては、具体的には、例えば、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン等の有機過酸化物等が挙げられる。
【0104】
次にアルキド樹脂としては、例えば、主剤としての多塩基酸、硬化剤としてのポリオール化合物、油脂等を含む組成物等が挙げられる。
前記アルキド樹脂の主剤としては、具体的には、例えば、無水マレイン酸、無水フタル酸、アジピン酸等が挙げられる。
【0105】
前記アルキド樹脂の硬化剤としては、具体的には、例えば、先に説明したウレタン樹脂に使用するポリオール化合物等が挙げられる。
前記油脂としては、例えば、大豆油、ヤシ油、アマニ油等を挙げることができる。
【0106】
次にメラミン樹脂としては、例えば、主剤としてのメラミン、硬化剤としてのホルムアルデヒド等を含む組成物等が挙げられる。
必要に応じて、前記組成物にベンゾグアナミン等を添加することもできる。
【0107】
次にジアリルフタレート樹脂としては、例えば、主剤としての無水フタル酸等の多塩基酸、硬化剤としてのアリルアルコール等、架橋剤等を含む組成物等が挙げられる。
前記架橋剤としては、例えば、スチレン、酢酸ビニル等が挙げられる。
【0108】
次にシリコーン樹脂としては、例えば、主剤としてジアルキルシリルジクロリド、ジアルキルシリルジオール等、反応抑制剤としてトリアルキルシリルクロリド、トリアルキルシリルジオール等、硬化剤として塩化白金酸等の白金化合物を含む組成物等を挙げることができる。
【0109】
前記ジアルキルシリルジクロリドとしては、具体的には、例えば、ジメチルシリルジクロリド、ジエチルシリルジクロリド、ジプロピルシリルジクロリド等が挙げられる。
前記ジアルキルシリルジオールとしては、具体的には、例えば、ジメチルシリルジオール、ジエチルシリルジオール、ジプロピルシリルジオール等が挙げられる。
前記トリアルキルシリルクロリドとしては、具体的には、例えば、トリメチルシリルクロリド、トリエチルシリルクロリド、トリプロピルシリルクロリド等が挙げられる。
前記トリアルキルシリルジオールとしては、具体的には、例えば、トリメチルシリルオール、トリエチルシリルオール、トリプロピルシリルオール等が挙げられる。
前記反応抑制剤は、ポリシロキサン主鎖の末端に結合し、反応を制御してポリシロキサン主鎖の重合度を制御する役割を果たす。
【0110】
本発明に使用する反応硬化性樹脂成分は、火災等の熱にさらされた場合でも容易に溶融することを防止するために、熱硬化性樹脂を使用することが好ましい。
本発明に使用する反応硬化性樹脂成分は、取り扱い性の面からエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂等であることがより好ましい。
【0111】
本発明に使用する反応硬化性樹脂成分は、主剤と硬化剤等とを予め予備的に反応させて使用することもできる。
【0112】
本発明に使用する前記熱膨張性耐火材料含まれる前記反応硬化性樹脂成分の主剤、硬化剤、触媒等はそれぞれ一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0113】
本発明に使用する前記熱膨張性耐火材料含まれる前記反応硬化性樹脂成分に対し、発泡剤、整泡剤を併用することにより、前記熱膨張耐火材料を発泡した状態で硬化させることができる。
【0114】
前記発泡剤としては、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の低沸点の炭化水素、ジクロロエタン、プロピルクロリド、イソプロピルクロリド、ブチルクロリド、イソブチルクロリド、ペンチルクロリド、イソペンチルクロリド等の塩素化脂肪族炭化水素化合物、トリクロルモノフルオロメタン、トリクロルトリフルオロエタン等のフッ素化合物、ジイソプロピルエーテル等のエーテル、あるいはこれらの化合物の混合物などの有機系物理発泡剤、窒素ガス、酸素ガス、アルゴンガス、二酸化炭素ガスなどの無機系物理発泡剤、水等が挙げられる。
【0115】
前記反応硬化性樹脂成分に対する発泡剤の使用量は、使用する前記反応硬化性樹脂成分により適宜設定されるが、一例を示すとすれば、例えば、前記反応硬化性樹脂成分100重量部に対して、通常1〜20重量部の範囲であり、5〜10重量部の範囲であれば好ましい。
【0116】
前記整泡剤としては、例えば、有機ケイ素系界面活性剤等が挙げられる。
前記反応硬化性樹脂成分に対する整泡剤の使用量は、使用する前記反応硬化性樹脂成分により適宜設定されるが、一例を示すとすれば、例えば、前記樹脂成分100重量部に対して、0.01〜5重量部の範囲であれば好ましい。
【0117】
前記発泡剤、整泡剤はそれぞれ一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0118】
本発明に使用する前記反応硬化性樹脂成分は、前記熱膨張耐火材料を発泡した状態で硬化させるため、発泡する機能を有することが好ましく、具体的には、ウレタン樹脂フォーム、イソシアヌレート樹脂フォーム、エポキシ樹脂フォーム、フェノール樹脂フォーム、尿素樹脂フォーム、不飽和ポリエステル樹脂フォーム、アルキド樹脂フォーム、メラミン樹脂フォーム、ジアリルフタレート樹脂フォーム、シリコーン樹脂フォーム等の一種もしくは二種以上を使用することが好ましい。
【0119】
前記熱膨張耐火材料を発泡した状態で硬化させることにより、硬化した前記熱膨張耐火材料に気泡の断熱効果を付与することができ、構造物の開口部等に設置される扉、サッシ等の、熱膨張性耐火材料が注入された建築部材の断熱性を高めることができる。
【0120】
次に前記熱膨張耐火材料の各成分のうち、熱膨張成分について説明する。
前記熱膨張成分は加熱時に膨張するものであるが、かかる熱膨張成分として具体例を挙げるとすれは、例えば、バーミキュライト、カオリン、マイカ、熱膨張性黒鉛等の無機膨張成分、熱膨張性樹脂組成物の成形体粉砕品等を挙げることができる。
【0121】
前記熱膨張性黒鉛は、従来公知の物質であり、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を、濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸と、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等の強酸化剤とで処理してグラファイト層間化合物を生成させたものであり、炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物の一種である。
【0122】
上記のように酸処理して得られた熱膨張性黒鉛は、更にアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等で中和したものを使用するのが好ましい。
【0123】
前記脂肪族低級アミンとしては、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等が挙げられる。
【0124】
前記アルカリ金属化合物および前記アルカリ土類金属化合物としては、例えば、カリウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム等の水酸化物、酸化物、炭酸塩、硫酸塩、有機酸塩等が挙げられる。
【0125】
前記熱膨張性黒鉛の粒度は、20〜200メッシュの範囲のものが好ましい。
【0126】
粒度が20メッシュ以上であると、分散性が向上するため樹脂成分等との混練が容易になる。また、粒度が200メッシュ以下であると、黒鉛の膨張度が大きいため十分な耐火断熱層が得られ易くなる。
【0127】
上記中和された熱膨張性黒鉛の市販品としては、例えば、UCAR CARBON社製の「GRAFGUARD#160」、「GRAFGUARD#220」、東ソー社製の「GREP−EG」等が挙げられる。
【0128】
前記熱膨張性樹脂組成物の成形体粉砕品としては、例えば、市販の熱膨張性耐火シート等を粉砕したもの等を挙げることができる。
かかる成形体粉砕品に使用する熱膨張性耐火シート等の具体例としては、例えば、積水化学工業社製のフィブロック(登録商標。エポキシ樹脂、ゴム樹脂等の樹脂成分、熱膨張性黒鉛等の熱膨張成分、リン化合物、無機充填材等を含む熱膨張性樹脂組成物の成形体)、住友スリーエム社のファイアバリア(クロロプレンゴムとバーキュライトを含有する樹脂組成物からなるシート材料、膨張率:3倍、熱伝導率:0.20kcal/m・h・℃)、三井金属塗料化学社のメジヒカット(ポリウレタン樹脂と熱膨張性黒鉛を含有する樹脂組成物からなるシート材料、膨張率:4倍、熱伝導率:0.21kcal/m・h・℃)等が挙げられる。
【0129】
市販の熱膨張性耐火シート等を裁断機等により細かく切断する等の方法、市販の熱膨張性耐火シート等を粉砕ロールに通して粉砕する等の方法により、熱膨張性樹脂組成物の成形体粉砕品を得ることができる。
前記熱膨張性樹脂組成物の成形体粉砕品は、5〜20メッシュの範囲のものが好ましい。
【0130】
前記熱膨張性樹脂組成物の成形体粉砕品の粒度が5メッシュ以上であると、分散性が向上するため樹脂成分等との混練が容易になる。また、粒度が20メッシュ以下であると、黒鉛の膨張度が大きいため十分な耐火断熱層が得られ易くなる。
【0131】
次に先の熱膨張性耐火材料の各成分のうち、前記無機充填材について説明する。
【0132】
前記無機充填材としては、特に限定されないが、例えば、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーソナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム等のカリウム塩、バーミキュライト、カオリン、マイカ、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セビオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、無機系リン化合物、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、ジルコニア繊維等が挙げられる。
【0133】
これらは、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0134】
前記無機充填材は骨材的役割を果たして、加熱後に生成する膨張断熱層強度の向上や熱容量の増大に寄与する。
【0135】
このため、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛で代表される金属炭酸塩、骨材的役割の他に加熱時に吸熱効果も付与する水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムで代表される含水無機物が好ましく、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及び周期律表IIbの金属炭酸塩又はこれらと前記含水無機物との混合物が好ましい。
【0136】
また、本発明に使用する熱膨張性耐火材料に対し、難燃剤としてリン化合物を添加することもできる。
前記リン化合物は、難燃性を向上させるため、または窒素化合物、アルコール類等と組み合わせて熱膨張性機能を発現するために用いられる。
【0137】
前記リン化合物としては、特に限定されず、例えば、赤リン、
トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート等の各種リン酸エステル、
リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウム等のリン酸金属塩;ポリリン酸アンモニウム類、
下記化学式1で表される化合物等が挙げられる。
【0138】
これらのリン化合物は、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0139】
これらのうち、耐火性の観点から、赤リン、下記の化学式で表される化合物、及び、ポ
リリン酸アンモニウム類が好ましく、性能、安全性、費用等の点においてポリリン酸アンモニウム類がより好ましい。
【0140】
【化1】
上記化学式中、R1及びR3は、水素、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は、炭素数6〜16のアリール基を表す。
【0141】
R2は、水酸基、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基、炭素数6〜16のアリール基、又は、炭素数6〜16のアリールオキシ基を表す。
【0142】
前記化学式で表される化合物としては、例えば、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、2−メチルプロピルホスホン酸、t−ブチルホスホン酸、2,3−ジメチル−ブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジオクチルフェニルホスホネート、ジメチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸、メチルプロピルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジオクチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジエチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス(4−メトキシフェニル)ホスフィン酸等が挙げられる。
【0143】
中でも、t−ブチルホスホン酸は、高価ではあるが、高難燃性の点において好ましい。
【0144】
ポリリン酸アンモニウム類としては、特に限定されず、例えば、ポリリン酸アンモニウム、メラミン変性ポリリン酸アンモニウム等が挙げられるが、難燃性、安全性、コスト、取扱性等の点からポリリン酸アンモニウムが好適に用いられる。
【0145】
市販品としては、例えば、クラリアント社製の「商品名:EXOLIT AP422」及び「商品名:EXOLIT AP462」等が挙げられる。
【0146】
前記リン化合物は、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛等の金属炭酸塩と反応して、金属炭酸塩の膨張を促すと考えられ、特に、リン化合物として、ポリリン酸アンモニウムを使用した場合に、高い膨張効果が得られる。
【0147】
また、有効な骨材として働き、燃焼後に形状保持性の高い残渣を形成する。
【0148】
前記窒素化合物としては、特に限定はないが、メラミン系化合物等であれば好ましい。また前記アルコール類としては、特に限定はないが、ペンタエリスリトール等の多価アルコール等であれば好ましい。
【0149】
本発明に使用する無機充填材が粒状の場合には、その粒径としては、0.5〜200μmの範囲のものが好ましく、より好ましくは、1〜50μmの範囲のものである。
【0150】
無機充填材の添加量が少ないときは、分散性が性能を大きく左右するため、粒径の小さ
いものが好ましいが、粒径0.5μm以上では二次凝集を防ぐことができ、分散性が良好となる。
【0151】
また、無機充填材の添加量が多いときは、高充填が進むにつれて、樹脂組成物の粘度が高くなり成形性が低下するが、粒径を大きくすることによって樹脂組成物の粘度を低下させることができる点から、上記範囲の中でも粒径の大きいものが好ましい。
【0152】
なお、粒径が200μm以下の場合には、成形体の表面性、樹脂組成物の力学的物性が低下することを抑制することができる。
【0153】
前記無機充填材の中でも、特に骨材的役割を果たす炭酸カルシウム、炭酸亜鉛等の金属炭酸塩;骨材的役割の他に加熱時に吸熱効果を付与する水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の含水無機物が好ましい。
【0154】
前記含水無機物及び金属炭酸塩を併用することは、燃焼残渣の強度向上や熱容量増大に大きく寄与すると考えられる。
【0155】
前記無機充填材の中で、特に水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の含水無機物は、加熱時の脱水反応によって生成した水のために吸熱が起こり、温度上昇が低減されて高い耐熱性が得られる点、及び、燃焼残渣として酸化物が残存し、これが骨材となって働くことで燃焼残渣の強度が向上する点で好ましい。
【0156】
また、水酸化マグネシウムと水酸化アルミニウムは、脱水効果を発揮する温度領域が異なるため、併用すると脱水効果を発揮する温度領域が広くなり、より効果的な温度上昇抑制効果が得られることから、併用することが好ましい。
【0157】
前記含水無機物の粒径は、小さくなると嵩が大きくなって高充填化が困難となるので、脱水効果を高めるために高充填するには粒径の大きなものが好ましい。
【0158】
具体的には、粒径が18μmでは、1.5μmの粒径に比べて充填限界量が約1.5倍程度向上することが知られている。
【0159】
さらに、粒径の大きいものと小さいものとを組み合わせることによって、より高充填化が可能となる。
【0160】
前記含水無機物の市販品としては、例えば、水酸化アルミニウムとして、粒径1μmの「商品名:ハイジライトH−42M」(昭和電工社製)、粒径18μmの「商品名:ハイジライトH−31」(昭和電工社製)等が挙げられる。
【0161】
前記炭酸カルシウムの市販品としては、例えば、粒径1.8μmの「商品名:ホワイトンSB赤」(白石カルシウム社製)、粒径8μmの「商品名:BF300」(備北粉化社製)等が挙げられる。
【0162】
冒頭に説明したとおり、本発明に使用する熱膨張性耐火材料としては、上記に説明した反応硬化性樹脂樹脂成分、熱膨張成分、無機充填材等を含む樹脂組成物、さらに上述のリン化合物を含むもの等を挙げることができるが、次にこれらの配合について説明する。
【0163】
前記熱膨張性耐火材料は、反応硬化性樹脂成分100重量部に対し、前記反応硬化性熱膨張成分を10〜150重量部および前記無機充填材を50〜300重量部の範囲で含むものが好ましい。
【0164】
また、前記反応硬化性熱膨張成分および前記無機充填材の合計は、200〜600重量部の範囲が好ましい。
【0165】
かかる熱膨張性耐火材料は火災等の熱によって膨張し熱膨張残渣を形成する。この配合によれば、前記熱膨張性耐材料は火災等の熱によって膨張し、必要な体積膨張率を得ることができ、膨張後は所定の断熱性能を有すると共に所定の強度を有する熱膨張残渣を形成することもでき、安定した耐火性能を達成することができる。
【0166】
前記反応硬化性熱膨成分の量が10重量部以上であると、必要な膨張倍率が得られることから、十分な耐火、防火性能が得らる。
一方、前記熱膨張成分の量が150重量部以下であると、前記熱膨張性耐火材料の25℃における流動性を確保することができる。
【0167】
また前記無機充填材の量が50重量部以上であると、燃焼後の熱膨張残渣の体積減少が少なく、耐火断熱のための熱膨張残渣が得られる。
さらに可燃物の比率が増加するため、難燃性が低下することがある。
【0168】
一方、無機充填材の量が300重量部以下であると、前記熱膨張性耐火材料の25℃における流動性を確保することができる。
【0169】
前記熱膨張性耐火材料における熱膨張成分および無機充填材の合計量は、60重量部以上では燃焼後の熱膨張残渣量が不足せず十分な耐火性能が得られやすく、450重量部以下では機械的物性の低下が小さく、実際の使用に適する。
【0170】
さらに本発明に使用する前記熱膨張性耐火材料は、それぞれ本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、リン酸エステル等の可塑剤、フェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤の他、熱安定剤、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料、粘着付与樹脂等の添加剤、ポリブテン、石油樹脂等の粘着付与剤を含むことができる。
【0171】
本発明に使用する熱膨張性耐火材料の25℃における粘度は、建築部材内部に注入される前の値を基準として、1000〜100000 mPa・sの範囲である。
前記粘度が1000mPa・s以上であれば、建築部材内部の狭い隙間でも前記熱膨張性耐火材料を容易に充填することができる。また建築部材内部に前記熱膨張性耐火材料を注入するための圧力、注入機器の押圧等が必要以上に高くなることがなく、容易に注入を行うことができる。
また前記粘度が100000 mPa・s以下であれば、建築部材内部に前記熱膨張性耐火材料を注入する際に空気を巻き込みにくく所望の充填量を注入することが容易となる。また注入の際に熱膨張性耐火材料の各成分が分離しにくく、不均一となることを防止することができるため、前記建築部材内部で前記熱膨張性耐火材料の組成を均一に保つことができ、所望の耐火性能を発揮することができる。
前記粘度は2000から600000 mPa・sの範囲であれば好ましく、3000〜400000 mPa・sの範囲であればより好ましい。
【0172】
前記熱膨張性耐火材料の粘度の調整は、本発明に使用する熱膨張性耐火材料の反応硬化性樹脂成分の種類等を選択することにより調整することができる。液状の反応硬化性樹脂成分のうち、25℃における粘度が低いものを選択することにより25℃における熱膨張性耐火材料の粘度を小さくすることができる。また逆に液状の反応硬化性樹脂成分のうち、25℃における粘度が高いものを選択することにより25℃における熱膨張性耐火材料の粘度を大きくすることができる。
【0173】
また前記熱膨張性耐火材料の粘度の調整は、前記熱膨張性耐火材料に含まれる熱膨張成分、無機充填材の重量割合を変動させることによっても行うことができる。
例えば、前記熱膨張性耐火材料に含まれる熱膨張成分、無機充填材等の重量割合を減少させると、25℃における熱膨張性耐火材料の粘度を小さくすることができる。加えて、25℃の温度で液状の無機充填材を適宜選択することにより、粘度を小さくすることもできる。
また逆に前記熱膨張性耐火材料に含まれる熱膨張成分、無機充填材等の重量割合を増加させると、25℃における熱膨張性耐火材料の粘度を大きくすることができる。
【0174】
次に前記熱膨張性耐火材料の製造方法について説明する。
前記熱膨張性耐火材料の製造方法に特に限定はないが、例えば、前記熱膨張性耐火材料を有機溶剤に懸濁させたり、加温して溶融させたりして塗料状とする方法、溶剤に分散してスラリーを調製する等の方法、また前記熱膨張性耐火材料に含まれる反応硬化性樹脂成分に25℃の温度において固体である成分が含まれる場合には、前記熱膨張性耐火材料を加熱下に溶融させる等の方法により前記樹脂組成物を得ることができる。
【0175】
前記熱膨張性耐火材料は、前記熱膨張性耐火材料の各成分を単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、混練ロール、ライカイ機、遊星式撹拌機等公知の装置を用いて混練することにより得ることができる。
【0176】
また、イソシアネート基、エポキシ基等の反応性官能基をもつ主剤と硬化剤とをそれぞれ別々に充填材等と共に混練しておき、注入直前にスタティックミキサー、ダイナミックミキサー等で混練して得ることもできる。
さらに触媒を除く前記熱膨張性耐火材料の成分と、触媒とを注入直前に同様に混練して得ることもできる。
【0177】
以上説明した方法により、本発明に使用する前記熱膨張性耐火材料を得ることができる。
【0178】
以上の様に得られた前記反応硬化型熱膨張性樹脂組成物は25℃の温度において流動性を有するため、建築部材の内部に注入することができる。
ここで流動性を有する、とは前記熱膨張性耐火材料を静置したときに一定形状を有しない場合をいい、流動性を有しない、とは前記熱膨張性耐火材料を静置したときに一定形状を有する場合をいう。
【0179】
前記熱膨張性耐火樹脂部材は、火災時などの高温にさらされた際にその膨張層により断熱し、かつその膨張層の強度があるものであれば特に限定されないが、50kW/m2の加熱条件下で30分間加熱した後の体積膨張率が1.1〜6倍のものであれば好ましい。
前記体積膨張率が1.1倍を下回ると、膨張体積が前記樹脂成分の焼失部分を十分に埋めきれず防火性能が低下することがある。また6倍を超えると、膨張層の強度が下がり、火炎の貫通を防止する効果が低下することがある。より好ましくは、体積膨張率が1.2〜5倍の範囲であり、さらに好ましくは1.3〜4倍の範囲である。
【0180】
前記膨張層が自立するためには、前記膨張層は強度の大きいことが必要であり、その強度としては、圧縮試験器にて0.25cm2の圧子を用いて、前記膨張層のサンプルを0.1m/sの圧縮速度で測定した場合の破断点応力が0.05kgf/cm2以上であれば好ましい。破断点応力が0.05kgf/cm2を下回ると、断熱膨張層が自立できなくなり防火性能が低下することがある。より好ましくは、0.1kgf/cm2以上である。
【0181】
次に本発明について図面に基づき実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0182】
実施例1では耐火補強建築部材200を作製して耐火試験を実施した。この試験およびその結果について説明する。
【0183】
図8は本発明の実施例1に係る耐火補強建築部材200の構造を説明するための模式正面図である。また図9は、実施例熱膨張性耐火材料15を注入する前の図8のA−A線に沿う要部断面図であり、図10は、実施例熱膨張性耐火材料15を注入した後の図8のA−A線に沿う要部断面図である。
【0184】
図8に示される通り、ケイ酸カルシウム板からなる耐火性を有する板材201が、長手方向に沿って内部に空洞が形成されている硬質塩化ビニルからなる枠材202により支持されている。
前記板材201と201との間には、前記板材201の外周に沿って框体203が設置されている。
【0185】
また住宅等の構造物の開口部を耐火試験用に再現するために、前記耐火性を有する板材201および前記枠材202の周囲に隙間なくコンクリート成形体204が取り囲んでいいる。
図9に示される通り、前記耐火補強建築部材200の枠材202の内部に長手方向に沿って内部に複数の空洞210〜218が設けられている。
【0186】
次に表1に示した配合に従い、熱膨張性耐火材料15をA成分とB成分とに分けて、それぞれの成分を遊星式攪拌機を用いて攪拌した。
具体的には前記熱膨張性耐火材料としてポリウレタン樹脂を使用した。A成分の樹脂成分としてポリウレタン樹脂の硬化剤としてポリエーテルポリオールを用い、B成分の樹脂成分としてポリウレタン樹脂の主剤としてポリイソシアネート化合物を用いた。
前記ウレタン樹脂の主剤であるポリイソシアネート化合物と硬化剤であるポリエーテルポリオールとを、ポリオール化合物中の活性水素基(OH)とポリイソシアネート化合物中の活性イソシアネート基(NCO)の割合(NCO/OH)が当量比で、1.64:1となる様に調整した。
【0187】
次に図9および図10に示される様に、長手方向に沿って内部に空洞が形成されている硬質塩化ビニルからなる枠材202の空洞のうち、最も外側にある空洞210、211、212、213、214、215の内部に、前記A成分とB成分とを上記の混合比を維持して注入した。
注入された熱膨張性耐火材料15は、空洞210、211、212、213、214、215の内部で発泡しながら硬化して流動性を失い、ウレタン樹脂フォームを形成した。
次に前記耐火補強建築部材200に対してISO834の条件に従い、耐火試験を実施した。耐火試験は炎が前記耐火補強建築部材200を貫通するまで実施した。
【0188】
この耐火試験の結果、加熱面と反対側の面から20分間以上炎の漏出が認められなかった場合を○、20分間未満で炎の漏出が認められた場合を×とした。この結果を表1に合わせて記載する。
【0189】
前記耐火試験を開始と共に加熱面側の熱膨張性耐火材料15が膨張し、熱膨張残渣を形成した。20分経過後も、実施例1の耐火補強建築部材200では炎の漏出が認められなかった。30分経過後に炎の漏出が観察された。
【実施例2】
【0190】
実施例1の場合において、無機充填材、熱膨張成分およびリン化合物の量を表1に示す量に変えたこと、図11に示す通り、長手方向に沿って内部に空洞が形成されている硬質塩化ビニルからなる枠材202の空洞210〜218の全てに対して熱膨張性耐火材料15を注入したこと以外は実施例1の場合と全く同様に耐火試験を実施した。
前記耐火試験を開始と共に加熱面側の熱膨張性耐火材料15が膨張し、熱膨張残渣を形成した。20分経過後も、実施例2の耐火補強建築部材220では炎の漏出が認められなかった。28分経過後に炎の漏出が観察された。
【実施例3】
【0191】
実施例1の場合において、無機充填材、熱膨張成分およびリン化合物の量を表1に示す量に変えたこと以外は実施例1の場合と全く同様に耐火試験を実施した。
前記耐火試験を開始と共に加熱面側の熱膨張性耐火材料15が膨張し、熱膨張残渣を形成した。20分経過後も、実施例2の耐火補強建築部材220では炎の漏出が認められなかった。23分経過後に炎の漏出が観察された。
【実施例4】
【0192】
実施例1の場合において、無機充填材、熱膨張成分およびリン化合物の量を表1に示す量に変えたこと、図11に示す通り、長手方向に沿って内部に空洞が形成されている硬質塩化ビニルからなる枠材202の空洞210〜218の全てに対して熱膨張性耐火材料15を注入したこと以外は実施例1の場合と全く同様に耐火試験を実施した。
前記耐火試験を開始と共に加熱面側の熱膨張性耐火材料15が膨張し、熱膨張残渣を形成した。20分経過後も、実施例2の耐火補強建築部材220では炎の漏出が認められなかった。25分経過後に炎の漏出が観察された。
【0193】
[比較例1]
実施例1の場合において、熱膨張成分を使用しなかったこと、図11に示す通り、長手方向に沿って内部に空洞が形成されている硬質塩化ビニルからなる枠材202の空洞210〜218の全てに対して熱膨張性耐火材料15を注入したこと以外は実施例1の場合と全く同様に耐火試験を実施した。
前記耐火試験を開始と共に加熱面側の熱膨張性耐火材料15はその形状を保持したが徐々に収縮が起こり、熱膨張残渣を形成した。15分経過後に炎の漏出を観察することができた。
【0194】
[比較例2]
実施例1の場合において、リン化合物を使用しなかったこと、図11に示す通り、長手方向に沿って内部に空洞が形成されている硬質塩化ビニルからなる枠材202の空洞210〜218の全てに対して熱膨張性耐火材料15を注入したこと以外は実施例1の場合と全く同様に耐火試験を実施した。
前記耐火試験を開始と共に加熱面側の熱膨張性耐火材料15が膨張し、熱膨張残渣を形成したが、熱膨張残渣の形状保持性が低いため、熱膨張残渣の飛散が見られた。14分経過後に炎の漏出を観察することができた。
【0195】
【表1】
【符号の説明】
【0196】
1、100、200、220 耐火補強建築部材
10、50 開口枠体
11、12、53、54 縦枠体
11a、12a、11b、12b、21a、22a、210〜218 空洞
13、14、51、52 横枠体
15 熱膨張性耐火材料
20、60、201 板材
21、22 縦框体
23、24 横框体
25 窓ガラス
26 ゴムシール材、シーリング剤
30〜33 孔
30a,30b 断面がH字状の鋼材の外面
40 スタッド
41、42 ケイ酸カルシウム板
50、51 ポリ塩化ビニル樹脂製枠材
70 断熱材
80 ドアノブ
202、203 枠材
204 コンクリート成形体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空部を有する建築部材であって、
前記建築部材の内部に熱膨張性耐火材料が注入され、
前記建築部材の内部に注入される前の前記熱膨張性耐火材料の25℃における粘度が、1000〜100000 mPa・sの範囲であり、
前記熱膨張性耐火材料が、前記建築部材の内部に注入された後に、25℃において前記建築部材の内部で流動性を失うことを特徴とする、耐火補強建築部材。
【請求項2】
前記建築部材が、長手方向に沿って内部に空洞が形成されている枠材と、耐火性を有する板材と、を少なくとも有し、
前記耐火性を有する板材が、前記枠材により支持され、、
前記熱膨張性耐火材料が、前記枠材の内部の空洞に注入されている、請求項1記載の耐火補強建築部材。
【請求項3】
前記建築部材が二以上の板材を備え、
前記熱膨張性耐火材料が、互いに向き合う板材同士の間に形成される空間に注入されている、請求項1または2に記載の耐火補強建築部材。
【請求項4】
前記熱膨張性耐火材料が、反応硬化性樹脂成分、熱膨張成分および無機充填材を少なくとも含む、請求項1〜3のいずれかに記載の耐火補強建築部材。
【請求項5】
前記熱膨張性耐火材料に含まれる反応硬化性樹脂成分が、ウレタン樹脂フォーム、イソシアヌレート樹脂フォーム、エポキシ樹脂フォーム、フェノール樹脂フォーム、尿素樹脂フォーム、不飽和ポリエステル樹脂フォーム、アルキド樹脂フォーム、メラミン樹脂フォーム、ジアリルフタレート樹脂フォームおよびシリコーン樹脂フォームからなる群から選ばれる少なくとも一つである、請求項1〜4のいずれかに記載の耐火補強建築部材。
【請求項6】
前記熱膨張性耐火材料に含まれる熱膨張成分が、熱膨張性黒鉛および熱膨張性樹脂組成物の成形体粉砕品の少なくとも一方を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の耐火補強建築部材。
【請求項7】
前記熱膨張性耐火材料が、リン化合物を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の耐火補強建築部材。
【請求項8】
前記熱膨張性耐火材料に含まれる無機充填材が、炭酸カルシウムを含む、請求項1〜7のいずれかに記載の耐火補強建築部材。
【請求項9】
前記熱膨張性耐火材料が、
前記枠材の内部の空洞のうち最も外側にある空洞の内面
および
前記板材同士の間に形成される空間のうち最も外側にある空間の内面
の少なくとも一方に接して注入されている、請求項1〜8のいずれかに記載の耐火補強建築部材。
【請求項10】
前記建築部材が、サッシおよび扉の少なくとも一つである、請求項1〜9のいずれかに記載の耐火補強建築部材。
【請求項11】
前記サッシまたは扉が、それぞれ、合成樹脂材、金属材、木材および無機材からなる群より選ばれる少なくとも一つからなる、請求項1〜10のいずれかに記載の耐火補強建築部材。
【請求項12】
構造物の開口部に設置される建築部材に対する耐火補強方法であって、
25℃における粘度が1000〜100000 mPa・sの範囲である熱膨張性耐火材料を前記建築部材の内部に注入する工程と、
前記熱膨張性耐火材料を前記建築部材内部で反応させて、前記熱膨張性耐火材料の流動性を失わせる工程と、
を少なくとも有することを特徴とする、建築部材の耐火補強方法。
【請求項13】
前記建築部材が、長手方向に沿って内部に空洞が形成されている枠材と、耐火性を有する板材と、を少なくとも有し、
前記耐火性を有する板材が、前記枠材により支持され、
前記熱膨張性耐火材料を、前記枠材の内部の空洞に注入する工程と、
前記熱膨張性耐火材料を、前記枠材の内部の空洞で反応させて、前記熱膨張性耐火材料の流動性を失わせる工程と、
を有する、請求項12に記載の建築部材の耐火補強方法。
【請求項14】
前記建築部材が二以上の板材を備え、
前記熱膨張性耐火材料を、互いに向き合う板材同士の間に形成される空間に注入する工程と、
前記熱膨張性耐火材料を前記空間内部で反応させて、前記熱膨張性耐火材料の流動性を失わせる工程と、
を有する、請求項12または13に記載の建築部材の耐火補強方法。
【請求項15】
前記熱膨張性耐火材料が、反応硬化性樹脂成分、熱膨張成分および無機充填材を少なくとも含む、請求項12〜14のいずれかに記載の建築部材の耐火補強方法。
【請求項16】
前記熱膨張性耐火材料に含まれる反応硬化性樹脂成分が、ウレタン樹脂フォーム、イソシアヌレート樹脂フォーム、エポキシ樹脂フォーム、フェノール樹脂フォーム、尿素樹脂フォーム、不飽和ポリエステル樹脂フォーム、アルキド樹脂フォーム、メラミン樹脂フォーム、ジアリルフタレート樹脂フォームおよびシリコーン樹脂フォームからなる群から選ばれる少なくとも一つである、請求項12〜15のいずれかに記載の建築部材の耐火補強方法。
【請求項1】
中空部を有する建築部材であって、
前記建築部材の内部に熱膨張性耐火材料が注入され、
前記建築部材の内部に注入される前の前記熱膨張性耐火材料の25℃における粘度が、1000〜100000 mPa・sの範囲であり、
前記熱膨張性耐火材料が、前記建築部材の内部に注入された後に、25℃において前記建築部材の内部で流動性を失うことを特徴とする、耐火補強建築部材。
【請求項2】
前記建築部材が、長手方向に沿って内部に空洞が形成されている枠材と、耐火性を有する板材と、を少なくとも有し、
前記耐火性を有する板材が、前記枠材により支持され、、
前記熱膨張性耐火材料が、前記枠材の内部の空洞に注入されている、請求項1記載の耐火補強建築部材。
【請求項3】
前記建築部材が二以上の板材を備え、
前記熱膨張性耐火材料が、互いに向き合う板材同士の間に形成される空間に注入されている、請求項1または2に記載の耐火補強建築部材。
【請求項4】
前記熱膨張性耐火材料が、反応硬化性樹脂成分、熱膨張成分および無機充填材を少なくとも含む、請求項1〜3のいずれかに記載の耐火補強建築部材。
【請求項5】
前記熱膨張性耐火材料に含まれる反応硬化性樹脂成分が、ウレタン樹脂フォーム、イソシアヌレート樹脂フォーム、エポキシ樹脂フォーム、フェノール樹脂フォーム、尿素樹脂フォーム、不飽和ポリエステル樹脂フォーム、アルキド樹脂フォーム、メラミン樹脂フォーム、ジアリルフタレート樹脂フォームおよびシリコーン樹脂フォームからなる群から選ばれる少なくとも一つである、請求項1〜4のいずれかに記載の耐火補強建築部材。
【請求項6】
前記熱膨張性耐火材料に含まれる熱膨張成分が、熱膨張性黒鉛および熱膨張性樹脂組成物の成形体粉砕品の少なくとも一方を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の耐火補強建築部材。
【請求項7】
前記熱膨張性耐火材料が、リン化合物を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の耐火補強建築部材。
【請求項8】
前記熱膨張性耐火材料に含まれる無機充填材が、炭酸カルシウムを含む、請求項1〜7のいずれかに記載の耐火補強建築部材。
【請求項9】
前記熱膨張性耐火材料が、
前記枠材の内部の空洞のうち最も外側にある空洞の内面
および
前記板材同士の間に形成される空間のうち最も外側にある空間の内面
の少なくとも一方に接して注入されている、請求項1〜8のいずれかに記載の耐火補強建築部材。
【請求項10】
前記建築部材が、サッシおよび扉の少なくとも一つである、請求項1〜9のいずれかに記載の耐火補強建築部材。
【請求項11】
前記サッシまたは扉が、それぞれ、合成樹脂材、金属材、木材および無機材からなる群より選ばれる少なくとも一つからなる、請求項1〜10のいずれかに記載の耐火補強建築部材。
【請求項12】
構造物の開口部に設置される建築部材に対する耐火補強方法であって、
25℃における粘度が1000〜100000 mPa・sの範囲である熱膨張性耐火材料を前記建築部材の内部に注入する工程と、
前記熱膨張性耐火材料を前記建築部材内部で反応させて、前記熱膨張性耐火材料の流動性を失わせる工程と、
を少なくとも有することを特徴とする、建築部材の耐火補強方法。
【請求項13】
前記建築部材が、長手方向に沿って内部に空洞が形成されている枠材と、耐火性を有する板材と、を少なくとも有し、
前記耐火性を有する板材が、前記枠材により支持され、
前記熱膨張性耐火材料を、前記枠材の内部の空洞に注入する工程と、
前記熱膨張性耐火材料を、前記枠材の内部の空洞で反応させて、前記熱膨張性耐火材料の流動性を失わせる工程と、
を有する、請求項12に記載の建築部材の耐火補強方法。
【請求項14】
前記建築部材が二以上の板材を備え、
前記熱膨張性耐火材料を、互いに向き合う板材同士の間に形成される空間に注入する工程と、
前記熱膨張性耐火材料を前記空間内部で反応させて、前記熱膨張性耐火材料の流動性を失わせる工程と、
を有する、請求項12または13に記載の建築部材の耐火補強方法。
【請求項15】
前記熱膨張性耐火材料が、反応硬化性樹脂成分、熱膨張成分および無機充填材を少なくとも含む、請求項12〜14のいずれかに記載の建築部材の耐火補強方法。
【請求項16】
前記熱膨張性耐火材料に含まれる反応硬化性樹脂成分が、ウレタン樹脂フォーム、イソシアヌレート樹脂フォーム、エポキシ樹脂フォーム、フェノール樹脂フォーム、尿素樹脂フォーム、不飽和ポリエステル樹脂フォーム、アルキド樹脂フォーム、メラミン樹脂フォーム、ジアリルフタレート樹脂フォームおよびシリコーン樹脂フォームからなる群から選ばれる少なくとも一つである、請求項12〜15のいずれかに記載の建築部材の耐火補強方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−202087(P2012−202087A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66835(P2011−66835)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】
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