説明

耐熱ガスバリアラメラ

シリル化ポリビニルアルコール、コロイドシリカ及び水分散性又は水溶性アミノプラスト樹脂を含んでなる被覆組成物により、基板を無機組成物層で被覆し、ガスバリア薄膜を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素露出の排除又は制限を必要とする、種々の材料とりわけ食品や医薬品の梱包として用いてもよい、ガスバリア特性を有する、単層又は多層の、プラスチックラメラに関する。
【背景技術】
【0002】
取り扱い及び湿気からの保護を必要とする食品又は他の材料の梱包用において、長く合成プラスチック材料が使用されてきた。しかしながら、近年、これに加えて、大気中酸素からの保護が、多くの食品及び他の敏感材料に利することが認められてきた。梱包目的に好適なバリア特性及び他の性能上の特徴を提供するために、多種多様な多層ラミネート構造体が開発されてきた。これらのラミネートは、プラスチック、金属又はセルロース基板の任意の組合せでもよく、1以上のコーティング又は接着層を含んでもよい。金属又は酸化ケイ素等の無機化合物を上に析出した高分子フィルムを含むラミネートは、良好な汎用のバリア特性をもたらすことが見出され、広範に用いられる。しかしながら、その特性は非常に温度依存する傾向にあり、例えば梱包された材料が滅菌又は調理の目的のためにレトルトされる等の高温においては、酸素侵入を防止する特性を全く失ってしまう。さらに、この種のラミネートの無機層は比較的もろく、ラミネートが曲げられると割れ、ガスバリア特性を失う結果となる。
【0003】
その結果、当該目的のために多くの他のラミネートフィルムが提案されてきた。例えば、欧州特許第0878495号は、基剤、無機化合物フィルム薄層及び保護層をこの順にラミネートして含んでなり、当該保護層は、水溶性ポリマー及び少なくとも1の(a)金属アルコキシド又は加水分解物及び(b)塩化スズを含んでなり加熱乾燥した水性コーティング組成物を無機化合物フィルム薄層にコーティングすることにより形成する、ガスバリアラミネート材料を記載し開示している。類似技術を用いる他の特許は、欧州特許第1211295号(JSR)、欧州特許第0960901(Nakato)及び米国特許第6337370を含んでなる。良好な酸素バリヤ性能を達成するにもかかわらず、この技術には多くの欠点がある。この欠点には、加水分解シランプレス側面を有しなければならないこと(長期安定度が劣るため)、加水分解反応が発熱すること、並びにシラン及び塩酸又は他の酸を扱わねばならないことに伴う危険を含んでなる。さらに、このコーティングの耐水性は不十分である可能性がある。
【0004】
米国特許出願公開第2004/0014857(Wacker)は、耐摩耗性コーティング液、特にインクジェット記録材料用コーティング液を達成するためのポリビニルアルコール含有シランを記載している。
【0005】
欧州特許第0123927号は、シリル化ポリビニルアルコール(PVA)の合成及びその耐水性組成物処方を記載しクレームしている。シリル化PVAは、酢酸ビニル及びビニルアルコキシシラン(ビニルトリエトキシシラン等)を共重合した後、酢酸基を加水分解して作られる。このシリル化PVAと、粘度又はシリカ等の無機粒子状物質を混合することにより、耐水性組成物が得られる。これらの組成物は良好な曇り止め特性を有すると言われている。
【0006】
メラミン樹脂とのポリマー混合物を作製することも知られており、生じる混合物がガスバリア特性を有する場合もある当該混合物は、例えば、特開2005−138537号、特開2005−138536号及び特開2005−138535号に記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明者らは、欧州特許第0123927号に開示のこの種の組成物が、驚くべきことに、メラミン/ホルムアルデヒド樹脂等のアミノプラスト樹脂によって強化されると、優れたガスバリア特性を有して、大気からの保護を必要とする食料品、医薬品及び他の材料の梱包材の構成成分として用いうることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従って、本発明は、その最も広い態様において、シリル化ポリビニルアルコール、コロイドシリカ及び水分散性又は水溶性アミノプラスト樹脂、好適にはメラミン/ホルムアルデヒド樹脂を水性ビヒクル中に含んでなるコーティング組成物である。
【0009】
更なる態様において、本発明は、無機化合物を含んでなる第1のコーティング、並びに、水分散性又は水溶性アミノプラスト樹脂、好適にはメラミン/ホルムアルデヒド樹脂を分散させて有するシリル化ポリビニルアルコール、及び100ナノメートルの最大断面ディメンションを有する特定のシリカを含んでなる第2のコーティングで被覆されたフレキシブルなプラスチックフィルムを含んでなる、ガスバリアラメラを提供する。
【0010】
本発明の組成物に用いうる好適なアミノプラスト樹脂の例は、アセトアルデヒドとシアナミド;ホルムアルデヒドとグアナミン;グリオキサールとスルホニルアミド;ブチルアルデヒドとチオ尿素;アセトン又はホルムアルデヒドとトリアジン化合物(メラミンを含むる);並びに、上記のカルボニル化合物のいずれかと尿素、ウレタン及び芳香族アミンの反応で調製される樹脂を含んでなる。当該樹脂の好適な例は、メラミン/ホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミン/ホルムアルデヒド樹脂及び、エチロール、プロピロール及び高級アルキル等の、より高級の相同体を含んでなる。これらのうちでは、メラミン/ホルムアルデヒド及び尿素ホルムアルデヒド樹脂が好適であり、メラミン/ホルムアルデヒド樹脂が最も好適である。
【0011】
メラミン/ホルムアルデヒド(MF)樹脂の具体例は、すべての窒素中心がアルキル化され、−NH基が存在しない、ヘキサキス(メトキシメチル)メラミン(HMMM)型;メチロール基含有量が高く、−N−CHOH基及びアルキル化された基の両者がある部分アルキル化MF樹脂;並びに、例えば次式で表される構造を有する、2級アミノ基含有量が高く、高度にアルキル化されたMF樹脂を含んでなる。
【化1】

式中、各R(同一でもよく互いに異なってもよい)はそれぞれアルキル基を表す。
【0012】
これらの第1及び第3の種類である高度にアルキル化された樹脂は、硬化中に顕著な量のホルムアルデヒド放出がないために好適であり、第3の種類である2級アミノ基を高い含有量で有する高度にアルキル化されたMF樹脂が最も好適である。
【0013】
アミノプラスト樹脂の量は、組成物中の又は第2のコーティング中の重量比で、例えば2〜30%、より好適には5〜20%の広範囲に渡って変化してもよい。
【0014】
本願明細書に用いる用語「シリル化ポリビニルアルコール」は、ビニルアルコールユニット及びシリルユニットを含んでなるポリマーを意味する。加えて、例えば、エチレン又はプロピレン等のオレフィン;アクリル酸メチル又はメタクリル酸エチル等のアクリル酸又はメタクリル酸エステル;酢酸ビニル等の他のビニルモノマ;又はスチレン等のスチレン又はその誘導体等、他のモノマーに由来するユニットを含んでもよい。
【0015】
本発明に用いるシリル化ポリビニルアルコールの性質には、意図したガスバリアコーティングの使用に対して適切であること以外には特に制約はなく、分子内にケイ素原子を有するいかなるポリビニルアルコールであってもよい。このようなシリル化ポリビニルアルコールは、例えば、ヒドロキシ及び/又はカルボキシ基を含むポリビニルアルコール又は修飾ポリビニルアセタートをシリル化するステップ;ビニルエステル共重合体及びシリル基を含むオレフィン様の不飽和モノマーをけん化するステップ;又は末端シリル基を有するポリビニルエステル(シリルメルカプタン存在下でビニルエステルを重合して得てもよい)をけん化するステップ、により調製しうる。さらに一般的には、これらは、欧州特許第0123927号、特開2005−194600A2、特開2005−194471A2、特開2000−290580A2及び米国特許出願公開第2004/0054069号に記載のように調製してもよい。ビニルトリメトキシシラン等のシリル基含有モノマーを有するビニルアルコール(又はその前駆体)の共重合により調製してもよい。
【0016】
シリル化ポリビニルアルコール内のシリル基の割合は、本発明には特に重大ではない。このように、本発明によれば、シリル化ポリビニルアルコールのシリルモノマー含有量は、好適には3.0%以下(シリル化ポリビニルアルコールを形成するモノマー基準)、より好適には少なくとも0.2%である。従って、好適な範囲は0.2〜3.0%ある。さらにより好適には、シリルモノマー含有量は2.0%未満であり、従ってさらに好適には0.2〜2.0%、最も好適には0.4〜2.0%ある。これらの百分率は、全モノマーユニットに対するシリル基含有モノマーユニットの割合として算出する。
【0017】
同様にけん化の程度は、例えば70〜100mol%の広範囲にわたって変化してもよい。
【0018】
シリル化ポリマーの量は、好適には、シリル化ポリビニルアルコール及びシリカを含んでなるコーティングの乾燥重量の少なくとも50%、より好適には少なくとも60%である。好適には、この量は90又は95%以下である。好適な範囲は90〜50%、より好適には90〜60%ある。
【0019】
シリル化ポリビニルアルコール中には粒状シリカを分散する。これは本発明のコーティング組成物においてコロイドシリカとして用いる。使用するシリカの量は、最高の結果をもたらすために重要ではあるが、本発明に特に重大ではない。一方では、存在量が過少であると有益な効果も非常に小さく、あまり実用上の利点がない可能性がある。他方、存在量が過多であると、むしろコーティングされるフィルム特性に悪影響を与える。この量は、好適には、シリル化ポリビニルアルコール及びコロイドシリカを含んでなるコーティングの乾燥重量の50%を超えてはならず、より好適には、シリル化ポリビニルアルコール及び無機化合物を含んでなるコーティングの乾燥重量の40%を超えてはならない。他方、発明者らにおいては、この量がシリル化ポリビニルアルコール及び無機化合物を含んでなるコーティングの乾燥重量の5%を下回らないことが好適である。より好適には、この量は、シリル化ポリビニルアルコール及び無機化合物を含んでなるコーティングの乾燥重量の10〜50%である。コロイドシリカの性質は、本発明に特に重大ではない。例えば、コロイドは酸性でもアルカリ製でもよい。
【0020】
本発明のコーティング組成物が貯蔵中にゲル化しないためには、好適には、固形物含有量は7.5%を超えてはならない。より好適には、少なくとも0.5%であり、好適な範囲は0.5〜7.5%であり、最も好適には1.5〜5.0%w/wである。
【0021】
シリカの粒径は、好適には5〜80nm、より好適には5〜50nm、さらにより好適には5〜40nm、最も好適には10〜30nmである。
【0022】
本発明の方法においては、このコーティング組成物を基板に塗布し、次いで加熱等により水性ビヒクルを除去する。生成するガスバリアラメラは単層ラメラでもよく、1以上の付加的な基板、接着コーティング、インク及びニス等、当業者に周知の多層ラミネート構造体の一部を形成してもよい。本発明のラメラは、さらにフレキシブルなプラスチックシートに接着されることが好適である。
【0023】
フレキシブル基板は好適にはプラスチックフィルムであるが、その性質には特に制約はなく、使用意図に適切な任意の材料を用いてよい。しかしながら、本発明のラメラにより包装される物品が食料品又は医薬品である場合、通常はプラスチックフィルム又は他の基板が食品グレードであることが好適である。適切な材料の例は、ポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタレート又はポリエチレンナフテン酸塩等のポリエステル;ナイロン−6又はナイロン−66等のポリアミド;並びに、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、アクリルポリマー、ポリスチレン、セルロース又はポリ塩化ビニリデン樹脂等の他のポリマーを含んでなる。これらのポリマーを作るために用いられるモノマーと互換性のある任意の2以上の共重合体も使用しうる。発明者らにおいては、特にポリエステルが好適である。
【0024】
さらにプラスチックシートがある場合には、これもフレキシブルである必要があり、前述の段落に例示の任意の材料から選んでもよい。
【0025】
本発明のガスバリアラメラがフレキシブルなプラスチックフィルム上に第1のコーティングを有する場合には、これは無機化合物である。プラスチックフィルムに関し、その性質は本発明のガスバリアラメラの使用意図により決定され、ラメラが食料品又は医薬品用のパッケージに用いる場合には、当該無機化合物は食品グレードでなければならない。この種の化合物の例は、酸化アルミニウム等のアルミニウム化合物、及び酸化ケイ素SiO等のケイ素化合物を含んでなる。
【0026】
この第1のコーティングの厚さは、無機化合物の性質及び連続密着したコーティング層を形成する能力に部分的に依存する。しかしながら、一般的に、発明者らにおいては、コーティングは1nm〜1000nm厚、より好適には20〜100nm厚であるのが好適である。
【0027】
第1のコーティングがある場合、プラスチックフィルム上の第2のコーティングは第1のコーティングと同じ側でもよく、反対側でもよい。前者の場合、第2のコーティングは第1のコーティングの表面上にコーティングする。第2のコーティングは、100nmの最大断面ディメンションを有する粒状の無機化合物を全体に分散させたシリル化ポリビニルアルコールを含んでなる。この第2のコーティングの厚みは、好適には0.05μm〜2.5μm、より好適には0.1μm〜1.0μmである(乾性コートフィルム厚)。
【0028】
本発明は、フレキシブルなプラスチックフィルムに、無機化合物を含む第1のコーティング(使用する場合)及び本発明のコーティング組成物を含んでなる第2のコーティングを塗布するステップ;並びに、生成したコーティングされたフィルムを十分な温度まで加熱してシリル化ポリビニルアルコールを硬化するステップ、を含んでなる、本発明のガスバリアラメラを調製する方法も提供する。
【0029】
第1のコーティング(使用する場合)及び第2のコーティングは任意の順序で塗布してもよく、すなわち第1のコーティングを1番目に塗布して第2のコーティングを2番目に塗布してもよく、若しくは第1のコーティングを2番目に塗布して第2のコーティングを1番目に塗布してもよく、若しくは第1のコーティング及び第2のコーティングを同時に塗布してもよい。また、第2のコーティングでコーティングされたフィルムが、シリル化ポリビニルアルコールを硬化するための加熱の前又は後に、第1のコーティングを塗布してもよい。
【0030】
本発明は、またさらに、パッケージされた大気に敏感な食料品、医薬品又は他の材料を提供し、このパッケージには本発明のガスバリアラメラを含んでなる。
【0031】
以下の非限定的な実施例により、さらに本発明を説明する。
【実施例】
【0032】
これらの実施例において、コートした試料の酸素透過率は、23℃及び相対湿度50%において、Mocon Oxtran 2/21ガス透過試験器で測定した。全ての場合の基板に、酸化アルミニウム表面処理(厚さ約40nm)を有する12μmゲージポリエステル基板(Melinex 800)を用いた。No.2K棒でコーティングを塗布し、空気の暖流により乾燥(ラボプリントはヘアドライヤにより乾燥)した。
【0033】
ラミネートは、予め形成した25μmポリアミド/75μmキャストポリプロピレンのポリアミド表面に接着剤を塗布し、次いで、酸化アルミニウム/ポリエステル基板のコーティングされた表面を前記ポリアミド表面上の接着層に押圧して調製した。使用した接着剤は、Rohm & Hass、 Adcote 811A及びCatalyst 9L10であり、製造メーカーの指示に従って調製し、最終乾燥フィルム重量4gsmとなるよう塗布した。次いで、イソシアネートベースの接着剤の完全硬化を確認するために、ラミネートを10日間、50℃で貯蔵した。
【0034】
次いで、レトルト前後の両方において、ラミネートの結合強度(N/15mm)及び酸素バリアを試験した。レトルト試験は、130℃、30分で行った(高温水蒸気滅菌法)。いかなるはく離の兆候をも評価するため、レトルト後にラミネートの視覚検査も行った。ラミネートに著しいはく離が生じた場合には、必ずしも酸素透過率を測定しなかった。
【0035】
<実施例1(比較)>
(酸化アルミニウム/ポリエステル基板単独)
これは、上述のようにポリアミド/ポリプロピレン層に積層した。
レトルト前、酸素透過率測定は4.5−6.5cm/m/24時間であり、結合強度の試験ではポリエステルフィルム断裂を生じた。レトルト後、酸素透過率測定は10.0−15.0cm/m/24時間であり、ポリエステルフィルムは結合強度試験中に断裂した。
【0036】
<実施例2(比較)>
(欧州特許第0878495号記載の組成物でコーティングした酸化アルミニウム/ポリエステル基板)
テトラエチルオルトシリケート8.9gを、0.1N HCl 0.8gと共に水18.4g及びエタノール18.4gに入れ、30分間かき混ぜた。次いで、12%(w/w)PVA(Celvol 103)3.9gを添加し、後続のコーティングを、約10μmのウェットフィルム厚で酸化アルミニウム/ポリエステル基板に塗布した。次いで、ラミネート調製前に、コーティングを120℃で90分間乾燥した。
【0037】
レトルト前、酸素透過率測定は1.5cm/m/24時間であり、ポリエステルフィルムは結合強度試験中に断裂した。レトルト前、酸素透過率測定は7.1cm/m/24時間であり、ポリエステルフィルムは結合強度試験中に断裂した。
【0038】
<実施例3(比較)>
(4%(w/w)シリル基機能性PVA溶液でコーティングした酸化アルミニウム/ポリエステル基板)
酸化アルミニウム/ポリエステル基板をシリル基機能性PVA(本材料は、モノマー組成全量を基準として1.6%(w/w)のシリルモノマー含有量を有する)でコーティングし、10−12μmのウェットフィルム厚で塗布した。レトルト前、ラミネートの酸素透過率は0.25cm/m/24時間であり、ポリエステルフィルムは結合強度試験中に断裂した。レトルト後、ラミネートは著しい積層はく離を示し、結合強度は0.5N/15mm未満だった。積層はく離のため、正確な酸素透過率の読み取り値は得られなかった。
【0039】
<実施例4(比較)>
(シリル基及びメラミン/ホルムアルデヒド樹脂を含まないPVAでコーティングした酸化アルミニウム/ポリエステル基板)
イソプロピルアルコール4.0gと水25.1g、16.8%(w/w)Celvol 103(反応性シリル基なし)10.7g及びSurface Specialties、Maprenal 920w/75WA製メラミン/ホルムアルデヒド樹脂0.2gを混合し、コーティングを調製した。コーティングを、10−12μmのウェットフィルム厚で、酸化アルミニウム/ポリエステル基板に塗布した。このコーティングした基板から形成したラミネートのレトルト前酸素バリアは0.22cm/m/24時間であり、結合強度試験でポリエステルフィルムに断裂を生じた。レトルト後、ラミネートは著しい積層はく離を示し、酸素透過は1.47cm/m/24時間、結合強度0.5N/15mm未満だった。
【0040】
<実施例5(比較)>
(シリル基及びメラミン/ホルムアルデヒド樹脂を有するPVAでコーティングされた酸化アルミニウム/ポリエステル基板)
イソプロピルアルコール3.0gと水13.0g、実施例3に記載の7.25%(w/w)PVA溶液33.8g、及びMaprenal 920w/75WA 0.25gを混合してコーティングを調製した。このコーティングを、10−12μmのウェットフィルム厚で、酸化アルミニウム/ポリエステル基板に塗布した。ラミネートを通常の方法で形成した。
【0041】
レトルト前、酸素透過率は0.1cm/m/24時間未満であり、結合強度試験によりポリエステルフィルムは断裂を生じた。レトルト後、ラミネートにいくつかの貫通が観察され、結合強度は2.2N/15mmと測定された。レトルトしたラミネートの酸素透過は0.15cm/m/24時間と測定された。
【0042】
<実施例6〜11>
実施例5に記載のシリル化PVAを用い、名目粒度15nmのアルカリ性コロイドシリカ(Bindzil 40/220、ex.EKA)及びメラミン/ホルムアルデヒド(Maprenal MF920w/75WA)でコーティングを調製した。表1に、コーティング処方及び形成したラミネートのレトルト前後での結果を示す。表1においては、シリル化PVA/シリカ組成物中へのメラミン/ホルムアルデヒド樹脂包含の利点が明らかである。
【0043】
表1
【表1】




【0044】
(表1の注記)
酸素通過速度は、23℃、相対湿度50%において純酸素を用い、cm/m/24時間の値で得た。ラミネート結合強度は、Lloyd Instruments社LRX Plus張力テスターで測定した。剥離速度250mm/分でラミネート残部(15mm切片)からポリエステルフィルムを分離するために必要な力として、結果を示す。結合が十分に強力なためにポリエステルフィルムに断裂が発生した場合は、「FT」(Film Tear)と示した。観察:レトルト後のラミネートの目視検査である。
【0045】
<実施例12〜14>
実施例5に記載のシリル化PVAの7.7%溶液、Maprenal 920/75 WAの50%水溶液、及び酸性pH(Nanos AS30、ex. DKSH)を有し、水で固形物含有量を16.5%(w/w)に減じたコロイドシリカである”コロイドシリカB”を用い、コーティング処方を調製した。表2に、レトルトしたラミネートの結果と共に、コーティング組成物を示す。
【0046】
また、成形ラミネートの2辺を加熱し、水充填パウチを形成した。これらのパウチをレトルトし、レトルトしたパウチの目視検査を実施した。表2に、観察結果も含まれる。
【0047】
表2
【表2】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリル化ポリビニルアルコール、コロイドシリカ、及び水分散性又は水溶性アミノプラスト樹脂を水性ビヒクル中に含んでなる、コーティング組成物。
【請求項2】
前記アミノプラスト樹脂はメラミン/ホルムアルデヒド、尿素ホルムアルデヒド又はベンゾグアナミン/ホルムアルデヒド樹脂である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記アミノプラスト樹脂はメラミン/ホルムアルデヒド樹脂である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記アミノプラスト樹脂は、前記組成物中の固形物の2〜30%w/wの量で存在する、請求項1から3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物の固形物含有量は7.5%w/w以下である、請求項1から4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記固形物含有量は少なくとも0.5%w/wである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記固形物含有量は1.5〜5.0%w/wである、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記シリル化ポリビニルアルコールのシリルモノマー含有量は3.0%(シリル化ポリビニルアルコールを形成しているモノマーを基準として)以下である、請求項1から7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記シリル化ポリビニルアルコールのシリルモノマー含有量は少なくとも0.2%である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記シリル化ポリビニルアルコールのシリルモノマー含有量は2.0%未満である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記シリル化ポリビニルアルコールのシリルモノマー含有量は0.4%〜2.0%である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記シリル化ポリビニルアルコールは前記組成物の固形物含有量の少なくとも50%を占める、請求項1から11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
前記シリル化ポリビニルアルコールは前記組成物の固形物含有量の少なくとも60%を占める、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記シリル化ポリビニルアルコールは前記組成物の固形物含有量の50%から90%を占める、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
コロイドシリカの平均粒度は5〜80nmである、請求項1から14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか1項に記載の組成物をフレキシブル基板に塗布するステップ、及び水性ビヒクルを除去するステップを含んでなる、ガスバリアラメラの調製方法。
【請求項17】
無機化合物を含んでなるコーティングも塗布する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記無機化合物は酸化アルミニウムである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記無機化合物は酸化ケイ素である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
シリル化ポリビニルアルコール、コロイドシリカ及びアミノプラスト樹脂を含んでなるコーティングを、無機化合物を含んでなるコーティングに塗布する、請求項17から19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
シリル化ポリビニルアルコール、コロイドシリカ及びアミノプラスト樹脂を含んでなるコーティングを、無機化合物を含んでなるコーティングと反対側の基板に塗布する、請求項17から19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記基板はフレキシブルなプラスチックフィルムである、請求項16から21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
無機化合物を含んでなる第1のコーティング、並びに、水分散性又は水溶性アミノプラスト樹脂を分散させて有するシリル化ポリビニルアルコール、及び100ナノメートルの最大断面ディメンションを有する特定のシリカを含んでなる第2のコーティングで被覆されたフレキシブルなプラスチックフィルムを含んでなる、ガスバリアラメラ。
【請求項24】
前記アミノプラスト樹脂はメラミン/ホルムアルデヒド、尿素ホルムアルデヒド又はベンゾグアナミン/ホルムアルデヒド樹脂である、請求項23に記載のラメラ。
【請求項25】
前記アミノプラスト樹脂はメラミン/ホルムアルデヒド樹脂である、請求項24に記載のラメラ。
【請求項26】
前記アミノプラスト樹脂はラメラ中の固形物の5〜20%w/wの量で存在する、請求項23から25のいずれか1項に記載のラメラ。
【請求項27】
前記シリル化ポリビニルアルコールのシリルモノマー含有量は3.0%(シリル化ポリビニルアルコールを形成しているモノマーを基準として)以下である、請求項23から26のいずれか1項に記載のラメラ。
【請求項28】
前記シリル化ポリビニルアルコールのシリルモノマー含有量は少なくとも0.2%である、請求項27に記載のラメラ。
【請求項29】
前記シリル化ポリビニルアルコールのシリルモノマー含有量は2.0%未満である、請求項28に記載のラメラ。
【請求項30】
前記シリル化ポリビニルアルコールのシリルモノマー含有量は0.4%〜2.0%である、請求項29に記載のラメラ。
【請求項31】
前記シリル化ポリビニルアルコールは前記シリル化ポリビニルアルコール及び前記シリカの全量の少なくとも50%を占める、請求項23から30のいずれか1項に記載のラメラ。
【請求項32】
前記シリル化ポリビニルアルコールは前記シリル化ポリビニルアルコール及び前記シリカの全量の少なくとも60%を占める、請求項31に記載のラメラ。
【請求項33】
前記シリル化ポリビニルアルコールは前記シリル化ポリビニルアルコール及び前記シリカの全量の50〜90%w/wを占める、請求項32に記載のラメラ。
【請求項34】
前記シリカの平均粒度は5〜80nmである、請求項23から33のいずれか1項に記載のラメラ。
【請求項35】
前記基板はポリエステルである、請求項23から34のいずれか1項に記載のラメラ。
【請求項36】
前記第1のコーティングの無機化合物は酸化アルミニウムである、請求項23から35のいずれか1項に記載のラメラ。
【請求項37】
前記第1のコーティングの無機化合物は酸化ケイ素である、請求項23から36のいずれか1項に記載のラメラ。
【請求項38】
前記第2のコーティングは前記第1のコーティング上に塗布されている、請求項23から37のいずれか1項に記載のラメラ。
【請求項39】
前記第2のコーティングは前記第1のコーティングと反対側の前記フレキシブルなプラスチックフィルムに塗布されている、請求項23から38のいずれか1項に記載のラメラ。
【請求項40】
さらに軟質プラスチックシートに接着された、請求項23から39のいずれか1項に記載のラメラを含んでなる多層ラメラ。
【請求項41】
前記さらに軟質プラスチックシートは、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、アクリルポリマー、ポリスチレン、セルロース、塩化ビニリデン樹脂又はこれらのポリマーを生成する任意の互換な2以上のモノマーの共重合体である、請求項40に記載のラメラ。
【請求項42】
請求項23から41のいずれか1項に記載のラメラを含んでなるパッケージ材で形成されたパッケージ。
【請求項43】
パッケージが請求項23から41のいずれか1項に記載のラメラを含んでなる、パッケージされ大気に敏感な食料品、医薬品又は他の材料。

【公表番号】特表2009−513767(P2009−513767A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−537230(P2008−537230)
【出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【国際出願番号】PCT/IB2006/003191
【国際公開番号】WO2007/049147
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(506397202)サン ケミカル ビー.ブイ. (11)
【Fターム(参考)】