説明

耐熱クリープ性に優れた難燃ポリオレフィン系樹脂ターポリン

【課題】 塩素・臭素含有物質を含まずに高い難燃性を有し、しかも接合部の耐熱クリープ性に優れ、必要により高い防汚性を示す大型テント、テント倉庫、日除けテント、建築養生シート、及び内照式サイン看板などに適したポリオレフィン系樹脂製ターポリンの提供。
【解決手段】 ハロゲン非含有難燃付与剤(好ましくは特定の塩基性ヒンダードアミン系化合物)を含むポリオレフィン系樹脂組成中に、環状イミノエーテル側鎖基含有樹脂(好ましくは環状イミノエーテル基がオキサゾリン基)を特定量配合して、繊維性基布の表裏両面上に難燃性・耐熱クリープ性ポリオレフィン系樹脂層を形成し、必要によりその上に光触媒、又は防汚樹脂含有防汚層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐熱クリープ性に優れた難燃ポリオレフィン系樹脂ターポリンに関するものであり、特に、大型テント(パビリオン)、テント倉庫、日除けテント、建築養生シート、及び内照式サイン看板などの用途に用いられる、耐熱クリープ性に優れた難燃ポリオレフィン系樹脂製ターポリンに関するものである。さらに詳しく述べるならば、本発明は、塩素・臭素含有物質を含まずに、優れた難燃性を有し、特にシート接合部の耐熱クリープ性に優れた、膜構造物用ポリオレフィン系樹脂製ターポリンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、中大型テント、日除けテント、テント倉庫などの膜構造物の原反素材、及び建築現場養生シート、建築現場用遮音シートなどの産業資材シート素材には、合成繊維織物の表面を軟質ポリ塩化ビニル樹脂で被覆したターポリンが広く普及している。これらの用途分野では各々高度な耐久性能、及び防炎性能が求められている(日本工業規格、各種工業会規格など)。ポリ塩化ビニル樹脂は性能、加工性、コスト性に優れ、日用雑貨にも大量に使用されている樹脂であるが、昨今の社会状況では、焼却時の有毒ガス、有毒残渣発生の問題、環境保護の観点、また可塑剤として含むフタル酸エステル類に対するホルモン攪乱性の疑いの危惧が指摘されるなどの理由により、極力ポリ塩化ビニル樹脂使用を縮小する動きが活発化しており、中にはポリ塩化ビニル樹脂は単に有害なものであると誤解する人々も少なくない。ポリ塩化ビニル樹脂の代替樹脂としては、ハロゲン非含有樹脂を用いるという観点からポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂などのポリオレフィン系樹脂を用いることが試られ、日用雑貨の多くにおいてポリオレフィン系樹脂製に移行しているが、膜構造物の原反の素材及び産業資材シートの素材の分野では未だ開発途上の段階にある。その理由として、1).易燃性のポリオレフィン系樹脂に実用上十分な防炎性の付与が困難であること及び2).樹脂が替わることによって、日本工業規格、各種工業会規格に不適合となること、などが挙げられる。理由1)は、塩素・臭素非含有物質配合による防炎性付与が前提となるが、ポリ塩化ビニル樹脂並みの防炎性を得るには、多量の塩素・臭素非含有物質の配合を必要とする。これを実行すると得られる樹脂組成物の加工性の悪化、性能低下、コスト高の問題に直面することになる。また理由2)は、元来ポリ塩化ビニル樹脂加工製品を前提にして構築された規格が主であるため、樹脂系変更による規格適合自体が困難であるが、これに塩素・臭素非含有物質配合による防炎性付与技術が加わることによってさらに規格適合が困難なものとなっていたのである。また膜構造物の縫製業者の観点からは軟質ポリ塩化ビニル樹脂加工製品並の風合いと、高周波融着性能が要求されているため、ポリオレフィン系樹脂の中でも軟質で高周波融着性を有するエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)を用いたターポリン開発が行われ、EVAとポリエチレン樹脂とのブレンド、EVAとエチレン-α-オレフィン共重合体樹脂とのブレンド、またはEVAとポリエチレン樹脂の2層化、EVAとエチレン-α-オレフィン共重合体樹脂の2層化、さらにEVAの替わりにエチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂を用いたものが検討されたが、これらのエチレン系共重合体樹脂は、酢酸ビニル成分や、(メタ)アクリル酸(エステル)成分などの共重合成分を含有するため、樹脂強度が低く、しかも融点が低いので、従って耐熱クリープ性が得られず、何れも膜構造物規格に適合することは困難であった。耐熱クリープ性は、膜構造物の接合部の破壊強さを評価するものであり、特に夏場において、50℃以上の灼熱下に曝されると、樹脂が軟化して、合成繊維織物と樹脂被覆層との密着強度が極度に低下することにより、接合部が剥がれたり、接合部の糸抜け破壊するなどのトラブルがあり、これを回避するためには、その耐熱クリープ性の確認試験が必要である。
【0003】
合成繊維織物とポリオレフィン系樹脂被覆層との密着効果を向上させる技術としては、1).エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂とエチレン−α−オレフィン共重合体樹脂のブレンド物に、エチレン−マレイン酸無水物−アクリル酸エチル三元共重合体(接着性樹脂)、及び含水珪酸塩を配合した組成物を被覆層とするターポリン(例えば、特許文献1:特開2003−176387号公報)が提案されている。この方法では常温に限り合成繊維織物とポリオレフィン系樹脂被覆層との密着効果は向上するが、依然接合部の耐熱クリープ性は不十分である。含水珪酸塩と接着性樹脂とが相互作用して加工中の溶融粘度が上昇すると同時に、フィルムが金属熱ロールに貼付くため接着性樹脂を多量に配合することは加工上困難である。またエチレン−マレイン酸無水物−アクリル酸エチル三元共重合体の配合によって得られるターポリンの耐摩耗性が低下する問題がある。また、2).ポリオレフィン系樹脂を電子線架橋する方法、またアクリル基またはアリル基を含有する化合物を含有するポリオレフィン系樹脂を電子線架橋する方法など(例えば、特許文献2:特開平08−1874号公報)が提案されている。この方法ではポリオレフィン系樹脂層自体の耐熱性は向上するが、合成繊維織物とポリオレフィン系樹脂被覆層との密着性向上効果、及び接合部の耐熱クリープ性は得られない。また電子線架橋を施したターポリンでは高周波融着などの熱融着が困難となる。また、3).エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂とエチレン−α−オレフィン共重合体樹脂のブレンド物に、Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O、及びMg4.5Al2(OH)13CO3・3.5H2Oなどの結晶水含有合成吸着剤を配合する方法(特許文献3:特開平05−163390号公報)が提案されている。この方法では、ポリオレフィン系樹脂層自体の耐熱性、及び耐摩耗性は向上するが、合成繊維織物とポリオレフィン系樹脂被覆層との密着向上効果を得ることはできず、また依然接合部の耐熱クリープ性も不十分である。また、4).難燃性を有するターポリンとして、水性デイスパージョン樹脂に、ポリ燐酸アンモニウム化合物、金属水酸化物、オキサゾリン基含有水系架橋剤を配合した難燃剤組成物の塗工による建築工事シート(例えば、特許文献4:特開2002−3690号公報)が提案されている。この方法で得られるシートは、合繊基布やターポリン基布に難燃剤組成物が糸条内部に含浸固着したものであるため風合いが硬く、しかも引裂強度が弱いものであるためテント膜材に用いるには不適切である。またターポリン基布にような粗目織物に液状の難燃剤組成物をいくら含浸塗工しても粗目部分から難燃剤組成物が垂れ落ちてしまい、テント膜材として有用な防水性膜材を得ることは困難である。また、5).難燃性を有するターポリンとして、NOR型光安定剤とメラミンシアヌレートと燐酸エステル化合物とである難燃剤を混合した樹脂混合物より形成された難燃性フィルムを積層してなる難燃性積層体(例えば、特許文献5:特開2004−174869号公報)が提案されている。この方法で得られる積層体は、比較的少ない難燃剤添加量で比較的高い防炎性を得ることができるが、特許文献1〜3と同様に、合成繊維織物とポリオレフィン系樹脂被覆層との密着性向上効果が不十分であるため、依然接合部の耐熱クリープ性を得るまでに至るものではない。また、繊維性基布に接着剤処理(例えば、イソシアネート系化合物併用のポリウレタン系接着剤)したものを用いて、この両面にポリオレフィン系樹脂被覆層を形成する方法なども試みられているが、ポリオレフィン系樹脂層との密着性が不十分であり、またそれと同時に、繊維性基布の風合いが硬くなり、しかも引裂強度が大きく低下するという問題があり、結局は実用的膜構造物に使用し得るものではなかった。また、イソシアネート系化合物、またはカルボジイミド化合物をフィルム中に練り込む方法では、ある程度の接着強度向上効果が期待はできたか、フィルム成形性が極度に低下し、熱成形ロールからフィルムが剥がれ難くなるなどの問題を有しているため、実用されることはなかった。またアイオノマー樹脂を繊維性基布とポリオレフィン系樹脂層との間に介在させて接着性を向上させる方法では、確かに常温時の接着効果は得られるが、50℃以上の温度雰囲気下では接着力が低下するため膜構造物の接合部に不安があった。またこれらのポリオレフィン系樹脂には防炎性付与のために難燃剤の併用が種々行われているが、ポリオレフィン系樹脂の防炎性付与には大量のハロゲン非含有難燃剤を必要とするため、防炎配合による樹脂強度低下の問題が避けられず、加えて接合部強度の信頼性も悪いものであった。よって膜構造物に適した防炎性かつ柔軟性のポリオレフィン系樹脂ターポリン膜材で、接合部の耐熱クリープ性に優れたものは存在していなかったのである。
【0004】
【特許文献1】特開2003−176387号公報
【特許文献2】特開平08−1874号公報
【特許文献3】特開平05−163390号公報
【特許文献4】特開2002−3690号公報
【特許文献5】特開2004−174869号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は大型テント、テント倉庫、日除けテント、建築養生シート、及び内照式サイン看板などの用途に適したポリオレフィン系樹脂製ターポリンを提供しようとするものである。特に本発明は、塩素・臭素含有物質を含まずに、優れた難燃性を有し、しかも接合部の耐熱クリープ性に優れたポリオレフィン系樹脂製ターポリン、さらには防汚性に優れたポリオレフィン系樹脂製ターポリンを提供しようというものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はかかる点を考慮し鋭意検討した結果、ハロゲン非含有難燃付与剤(好ましくは特定の塩基性ヒンダードアミン系化合物)を含むポリオレフィン系樹脂組成物中に、環状イミノエーテル側鎖基含有重合体(好ましくは環状イミノエーテル基がオキサゾリン基)を特定量配合することにより、ポリ塩化ビニル樹脂に匹敵する防炎性を有しながら、耐熱クリープ性に優れたポリオレフィン系樹脂ターポリンが得られること、またその熱融着加工が容易であること、必要に応じてターポリンの表面に光触媒物質を含有する防汚層、またはアクリル系樹脂、アクリル−シリコン樹脂、及びフッ素系樹脂などによる防汚層、またはこれらにシリカ微粒子を含む防汚層を形成することにより長期に渡りテント膜構造物の美観を維持可能であることを見出して本発明を完成させるに至った。
【0007】
本発明の耐熱クリープ性に優れた難燃ポリオレフィン系樹脂ターポリンは、繊維性基布及び、その表裏両面に積層されたポリオレフィン系樹脂層を含む膜材であって、
前記ポリオレフィン系樹脂層が、(1)樹脂成分と、(2)ハロゲン非含有難燃付与剤成分と、(3)耐熱クリープ性向上成分との混練物を含み、
前記樹脂成分(1)が、その主樹脂要素(a)として、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、及びエチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体から選ばれた1種以上のエチレン系共重合体樹脂を含み、
前記耐熱クリープ性向上成分(3)が、下記式(I):
【化1】

〔但し、式(I)において、R1及びR2は、それぞれ、互に独立して、水素原子、又は18個の炭素原子を含む不活性炭化水素基を表し、nは1〜5の正の整数を表す〕
により表される環状イミノエーテル側鎖基を有する少なくとも1種の重合体を含み、前記耐熱クリープ性向上成分(3)の含有量が、前記樹脂成分(1)100質量部に対し、0.5〜30質量部の範囲内にある、ことを特徴とするものである。
本発明の耐熱クリープ性に優れた難燃ポリオレフィン系樹脂ターポリンにおいて、前記樹脂成分(1)が、ブレンド樹脂要素(b)として、ポリエチレン樹脂、エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂、軟質ポリプロピレン樹脂から選ばれた1種以上をさらに含むことが好ましい。
本発明の耐熱クリープ性に優れた難燃ポリオレフィン系樹脂ターポリンにおいて、前記樹脂成分(1)が、追加ブレンド樹脂要素(c)として、A−B−A型スチレンブロック共重合樹脂(但し、Aはスチレン重合体ブロックを表し、Bはブタジエン重合体ブロック、イソプレン重合体ブロック、もしくはビニルイソプレン重合体ブロックを表す。)、A−B型スチレンブロック共重合樹脂(A及びBは、上記と同義である。)、スチレンランダム共重合樹脂、及び前記スチレン系共重合樹脂の水素添加樹脂から選ばれた1種以上を含むことが好ましい。
本発明の耐熱クリープ性に優れた難燃ポリオレフィン系樹脂ターポリンにおいて、前記樹脂成分(1)に含まれる前記主樹脂要素(a)に含まれる酢酸ビニル成分、および/または(メタ)アクリル酸(エステル)成分の合計質量が、前記ポリオレフィン系樹脂層の合計質量(但し前記ハロゲン非含有難燃付与剤成分を除く)に対して、5〜30質量%であることが好ましい。
本発明の耐熱クリープ性に優れた難燃ポリオレフィン系樹脂ターポリンにおいて、前記ポリオレフィン系樹脂層と前記繊維性基布との積層界面において、前記耐熱クリープ性向上成分(3)中の環状イミノエーテル側鎖基開環のよる架橋構造が形成されていることが好ましい。
本発明の耐熱クリープ性に優れた難燃ポリオレフィン系樹脂ターポリンにおいて、前記環状イミノエーテル側鎖基含有樹脂が、オキサゾリン基含有共重合樹脂であることが好ましい。
本発明の耐熱クリープ性に優れた難燃ポリオレフィン系樹脂ターポリンにおいて、前記ハロゲン非含有難燃付与剤成分(2)が、少なくとも1種の塩基性ヒンダードアミン系化合物を含み、この塩基性ヒンダードアミン系化合物を下記式(II):
【化2】

〔但し、式(II)中、R3、R4、R5及びR6は、それぞれ互に独立して、a).水素原子、b).炭素原子数1〜20の直鎖又は分枝アルキル基、c). -O- 、 -S- 、 -SO- 、 -SO2-、 -CO- 、 -COO- 、 -OCO- 、 -CONR- 、 -NRCO- 及び -NR- から選ばれた1個以上を含む、炭素原子数1〜20のアルキル基、d).炭素原子数3〜20のアルケニル基、e).炭素原子数6〜10の未置換アリール基、f).炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数5〜12のシクロアルキル基、及び炭素原子数7〜15のフェニルアルキル基から選択された1〜3個の置換基を有するアリール基を表し、R7 は炭素原子数2〜18のアルキル基、または炭素原子数5〜12のシクロアルキル基を表す〕
により表されるヒンダードアミン構造を有するものであることが好ましい。
本発明の耐熱クリープ性に優れた難燃ポリオレフィン系樹脂ターポリンにおいて、前記表裏両面ポリオレフィン系樹脂層の少なくとも1面上に、酸化チタン(TiO2)、過酸化チタン(ペルオキソチタン酸)、酸化亜鉛(ZnO)、及び酸化錫(SnO2)から選ばれた1種以上の光触媒物質を含有する防汚層が形成されていることが好ましい。
本発明の耐熱クリープ性に優れた難燃ポリオレフィン系樹脂ターポリンにおいて、前記表裏両面ポリオレフィン系樹脂層の少なくとも1面上に、アクリル系樹脂、アクリル−シリコン樹脂、及びフッ素系樹脂から選ばれた1種以上の防汚樹脂、または前記防汚樹脂の1種以上とシリカ微粒子とを含む混合物からなる防汚層が設けられていることも好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明のターポリンは、ポリオレフィン系樹脂による高周波融着が可能な柔軟性シートであり、基布上に形成されたポリオレフィン系樹脂層中には環状イミノエーテル側鎖基含有重合体、特にオキサゾリン基含有共重合樹脂を特定量含むことによってシート接合部の耐熱クリープ性に優れたターポリンを得ることができる。また本発明のターポリンは、そのポリオレフィン系樹脂層中にはハロゲン非含有難燃性付与剤として、特定の塩基性ヒンダードアミン系化合物を特定量含むことができ、この場合には、特に効率的に塩素・臭素非含有防炎を実現することができるため、従って本発明のターポリンは、ポリ塩化ビニル樹脂を使用しない設計の大型テント(パビリオン)、テント倉庫、日除けテント、建築養生シート、及び内照式サイン看板などの構成膜材に好適である。さらに本発明のターポリンのポリオレフィン系樹脂層上には、必要に応じて光触媒物質含有層、またはアクリル系樹脂、アクリル−シリコン樹脂、及びフッ素系樹脂などの防汚樹脂による塗工層、またはこの防汚樹脂にシリカ微粒子を含む塗工層を設けることによって、屋外汚れの付着が少なくできるので、従って本発明のターポリンを膜構造物として用いることによって美観の長期持続が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の耐熱クリープ性に優れた難燃ポリオレフィン系樹脂ターポリン(以下ポリオレフィン系樹脂ターポリンと記す。)は、繊維性基布の表裏両面上にポリオレフィン系樹脂層が積層された膜材であって、前記ポリオレフィン系樹脂層が、樹脂成分(1)とハロゲン非含有難燃付与剤成分(2)と、耐熱クリープ性向上剤成分(3)との混練物を含むものである。樹脂成分(1)は、その主樹脂要素として、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、及びエチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体から選ばれた1種以上のエチレン系共重合体樹脂を含み、前記耐熱クリープ性成分(3)は、環状イミノエーテル側鎖基含有重合体を、前記ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して0.5〜30質量部の割合で含有するものである。ポリオレフィン系樹脂層の樹脂成分(1)には、その主樹脂要素(a)に加えて、必要に応じてポリエチレン樹脂、スチレン−α−オレフィン共重合樹脂及び/又は軟質ポリプロピレン樹脂からなるブレンド樹脂要素(b)及びA−B−A型及びA−B型スチレンブロック共重合体、スチレンランダム共重合体、及びこれらの水素添加樹脂の1種以上からなる追加ブレンド樹脂要素(c)を含んでいてもよい。また、ハロゲン非含有難燃剤成分(2)は、少なくとも1種の塩基性ヒンダードアミン系化合物を含むものであることが好ましい。
【0010】
本発明のターポリンのポリオレフィン系樹脂層に、その主樹脂要素(a)として使用されるエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂及びエチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体は、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体樹脂、エチレン−メタクリル酸共重合体樹脂、エチレン−アクリル酸エステル共重合体樹脂、エチレン−メタアクリル酸エステル共重合体樹脂などのエチレン系共重合体樹脂を包含する。このエチレン系共重合体樹脂は、具体的に、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体共に、密度0.880〜0.960g/cm2、MFR(メルトフロレート:190℃、2.16kg荷重)が、0.3〜10g/minのものであることが好ましい。またエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂の、酢酸ビニル成分量は12〜60重量%であることが好ましく、より好ましくは15〜40質量%であり、エチレン系共重合体樹脂単独使用系では特に15〜28質量%であると、柔軟性と高周波融着性が特に高くなるので好ましい。また、エチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体の(メタ)アクリル酸成分量は、12〜60重量%であることが好ましく、特に15〜40質量%であることがより好ましく、エチレン系共重合体樹脂単独使用系では15〜28質量%であるとき、柔軟性と高周波融着性とが特に高くなるので好ましい。これらのエチレン系共重合体樹脂の、酢酸ビニル成分量または(メタ)アクリル酸成分量、または酢酸ビニル成分と(メタ)アクリル酸成分の総和量が12質量%未満のものでは、得られるターポリンの高周波融着性が不十分となることがある。またそれが60質量%を越えると、得られるターポリンの耐摩耗性が不十分になることがあり、特にそれが80質量%を越えると、得られるターポリンの風合いが過度に硬くなることがある。
【0011】
本発明のポリオレフィン系樹脂ターポリンのポリオレフィン系樹脂層に含むブレンド樹脂要素(b)としては、ポリエチレン樹脂、エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂、ポリプロピレン樹脂アロイ(軟質ポリプロピレン樹脂)から選ばれた1種以上が挙げられる。ポリエチレン樹脂としては、密度0.850〜0.930g/cm2、MFR(メルトフロレート:190℃、2.16kg荷重)が0.5〜20g/minであることが好ましく、エチレン−αオレフィン共重合体樹脂としては、密度0.850〜0.930g/cm2、MFR(メルトフロレート:190℃、2.16kg荷重)0.3〜30g/10minであることが好ましく、より好ましくは1〜20g/10minのものである。エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂としては、エチレンモノマーと炭素数3〜18のα−オレフィンモノマー、特に炭素数4〜10のα−オレフィンモノマーとの重合により得られたものが好ましい。好ましいα−オレフィンとしては、例えばプロピレン、ブテン−1、4−メチルペンテン−1,ヘキセン−1、ヘプテン−1,オクテン−1、ノネン−1,デセン−1などであり、これらのα−オレフィンを2種以上用いて得られたエチレン−α−オレフィン共重合体樹脂を使用することもできる。また特にポリエチレン樹脂及び、エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂のうち、メタロセン触媒の存在下で重合されたものは、機械的強度に優れ、好ましい。軟質ポリプロピレン樹脂としては、密度0.850〜0.930g/cm2、MFR(メルトフローレート:230℃,2.16kg荷重)、0.5〜50g/10minのものが好ましく、より好ましくは1〜20g/10minのものである、軟質ポリプロピレン樹脂はプロピレン単独重合体で特にシンジオタクティツク立体規則性のものであってもよく、或はエチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン・エチレン−プロピレン系共重合エラストマー、プロピレン−エチレン・プロピレン・非共役ジエン系共重合エラストマーなどであってもよい。これらの共重合体はランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。また、これらのポリプロピレン系共重合エラストマーはプロピレン・エチレン成分がポリプロピレン成分にグラフト重合したもの、エチレン・プロピレン・非共役ジエン成分がポリプロピレン成分にグラフト重合したものなどのような、所謂リアクターTPOであることが、その加工性と得られるターポリンの高い柔軟性の観点において好ましい。また、これらのポリプロピレン系樹脂は2種以上を併用して用いることもできる。また、ポリエチレン樹脂、エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂、軟質ポリプロピレン樹脂それぞれにおけるその製造方法・分子量分布などには、特に限定はない。樹脂要素(a)+(b)のポリオレフィン系樹脂における要素(a):(b)ブレンド比率は、(a):(b)=20:80〜80:20であることが好ましく、(a)+(b)の樹脂ブレンド物における酢酸ビニル、および/または(メタ)アクリル酸成分の含有量が、5〜30質量%であることが好ましく、特に10〜20質量%であることがより好ましい。(a)+(b)樹脂ブレンド物における酢酸ビニル、および/または(メタ)アクリル酸成分の含有量が、5質量%未満では、得られるターポリンの高周波融着性が不十分となることがあり、また30質量%を越えると耐候性や耐摩耗性を悪くすることがある。
【0012】
本発明のポリオレフィン系樹脂ターポリンのポリオレフィン系樹脂層の樹脂成分(1)には、得られる膜材の柔軟性付与、耐熱性付与、加工性向上、塗装性向上などの目的で、更にスチレン系共重合体樹脂を追加ブレンド樹脂要素(c)として含むことができる。スチレン系共重合体樹脂とは、A−B−A型スチレンブロック共重合樹脂(Aはスチレン重合体ブロックを表し、Bはブタジエン重合体ブロック、イソプレン重合体ブロック、もしくはビニルイソプレン重合体ブロックを表す。)、A−B型スチレンブロック共重合樹脂(A及びBは、上記と同義である。)、スチレンランダム共重合樹脂及び、これらのスチレン系共重合樹脂の水素添加樹脂から選ばれた1種以上である。これらを具体的に説明すると、A−B−A型スチレンブロック共重合樹脂としては、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合樹脂(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合樹脂(SIS)、スチレン−ビニルイソプレン−スチレンブロック共重合樹脂(SVIS)などが用いられ、A−B−A型水素添加スチレンブロック共重合樹脂としては、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合樹脂の水素添加樹脂であるスチレン−エチレン−ブテン−スチレンブロック共重合樹脂(SEBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合樹脂の水素添加樹脂であるスチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合樹脂(SEPS)などを包含する。またA−B型スチレン共重合樹脂としては、例えば、スチレン−ブタジエンブロック共重合樹脂(SB)及びスチレン−イソプレンブロック共重合樹脂(SI)を包含し、A−B型水素添加ブロック共重合樹脂としては、例えば、スチレン−ブタジエンブロック共重合樹脂の水素添加樹脂であるスチレン−エチレン−ブテンブロック共重合樹脂(SEB)、スチレン−イソプレンブロック共重合樹脂の水素添加樹脂であるスチレン−エチレン−ブテンブロック共重合樹脂(SEP)などが包含される。要素(a)+(c)における要素(a)と(c)とのブレンド比率は、(a):(c)=20:80〜80:20であることが好ましく、(a):(c)の樹脂ブレンド物中の酢酸ビニル、および/または(メタ)アクリル酸成分の含有量は、5〜30質量%であることが好ましく、特に10〜20質量%であることがより好ましい。樹脂要素(a)+(c)ブレンド物における酢酸ビニル、および/または(メタ)アクリル酸成分の含有量が、5質量%未満では、得られるターポリンの高周波融着性が不十分となることがあり、またそれが30質量%を越えると得られるターポリンの耐候性や耐摩耗性を不十分になることがある。また樹脂要素(a)+(b)+(c)ブレンド樹脂における樹脂要素(a)、(b)、(c)のブレンド比率としては、[(a)+(b)]:(c)=20:80〜80:20であることが好ましく、この樹脂ブレンド物における酢酸ビニル、および/または(メタ)アクリル酸成分の含有量が、5〜30質量%であることが好ましく、特に10〜20質量%であることがより好ましい。[(a)+(b)]+(c)の樹脂ブレンド物における酢酸ビニル、および/または(メタ)アクリル酸成分の含有量が、5質量%未満では、得られるターポリンの高周波融着性が不十分となることがあり、またそれが30質量%を越えると耐候性や耐摩耗性が不十分になることがある。上記樹脂要素(c)用スチレン系共重合体樹脂は、有機溶剤に溶かしたものを本発明のポリオレフィン系樹脂ターポリンのプライマー剤として用いることができる。
【0013】
本発明のポリオレフィン系樹脂ターポリンのポリオレフィン系樹脂層に、耐熱クリープ性向上成分(3)として配合混練される環状イミノエーテル側鎖基含有樹脂は、式(I)の環状イミノエーテル基を含有するエチレン性不飽和モノマーの自己重合体、または環状イミノエーテル基含有モノマーと、他のモノマーとの共重合体の何れであってもよい。
環状イミノエーテル基含有モノマーと共重合可能な他のエチレン性不飽和モノマーとしては、環状イミノエーテル基と反応しないモノマーであれば特に制限はないが、特にスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン置換体が好ましい。その他共重合可能なモノマーとしては、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンなどのビニル芳香族類、(メタ)アクリロニトリルなどのシアン化ビニル類、アクリル酸 エステル及びメタアクリル酸 エステルなどのアクリルエステル類、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミドなどの不飽和アクリルアミド類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類、メチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類、エチレン、プロピレンなどのα−オレフィン類、塩化ビニル、塩化ビニリデンなどのハロゲン含有α,β−不飽和モノマーなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上の混合物を用いることができる。環状イミノエーテル側鎖基含有共重合樹脂に含まれる、環状イミノエーテル基を含有するモノマー成分の含有量は、重合用モノマーの仕込比で0.1質量%以上であることが好ましく特に1〜20質量%であることがより好ましい。環状イミノエーテル基含有モノマーの仕込比が0.1質量%未満では、得られる重合体の、高周波融着部の破壊強度及び耐熱クリープ性の向上の効果が希薄となるので多量の環状イミノエーテル側鎖基含有樹脂の配合が必要となる。本発明に用いる環状イミノエーテル側鎖基含有樹脂は、特に環状イミノエーテル基が、下記式(III)で示されるオキサゾリン基(式IにおいてR1=R2=H,n=2)であることが好ましい。
【化3】

オキサゾリン基を含む単量体の具体的として、2−ビニル−2−オキサゾリン、5−メチル−2−ビニル−2−オキサゾリン、4,4−ジメチル−2−ビニル−2−オキサゾリン、4,4−ジメチル−2−ビニル−5,5−ジヒドロ−4H−1,3−オキサゾリン、4,4,6−トリメチル−2−ビニル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、4,4−ジメチル−2−イソプロペニル−2−オキサゾリンなどのビニルオキサゾリン類が挙げられるかこれらに限定されるものではない。上記環状イミノエーテル側鎖基含有樹脂の配合混練量は、ポリオレフィン系樹脂層中の樹脂成分(1)(樹脂要素(a)のみ、樹脂要素(a)+(b)、樹脂要素(a)+(c)及び樹脂要素(a)+(b)+(c)を含む)100質量部に対して、0.5〜30質量部であることが好ましく、より好ましくは2〜20質量部である。前記配合混練量が0.5質量部未満では、得られるターポリンの高周波融着部の破壊強度および耐熱クリープ性の向上効果が不十分であり、またそれが30質量部を越えると、繊維性基布と得られるポリオレフィン系樹脂層との間の接着力が飽和して、寄与効果の増大が無く、却ってポリオレフィン系樹脂層を脆くしたり、ターポリンの柔軟性を硬くすることがある。またカレンダー加工などのフィルム成形性にも悪影響を及ぼすことがある。環状イミノエーテル側鎖基含有重合体は、ペレット状、フレーク状、粉末状の何れの形態で供給されてもよい。環状イミノエーテル側鎖基含有樹脂重合体含有耐熱クリープ性向上成分(3)の配合混練効果は、ポリオレフィン系樹脂層内部に例えばオキサゾリン基の開環による耐熱性の架橋構造を形成すること、と、更にポリオレフィン系樹脂層と繊維性基布との積層界面に、オキサゾリン基の開環のよる架橋接着構造が形成することによって得られ、それによってターポリンの耐熱特性を向上し、特にシート接合部においては耐熱クリープ性を飛躍的に向上させることが可能となる。
【0014】
本発明のポリオレフィン系樹脂ターポリンのポリオレフィン系樹脂層に含むハロゲン非含有難燃付与剤成分(2)には式(II)に示す、ヒンダードアミン構造のN位に、炭素数2〜18のアルコキシ基、または、炭素数5〜12のシクロアルコキシ基から選ばれた1種以上の置換基を有する塩基性ヒンダードアミン系化合物を含むことが好ましく、必要に応じてさらにa).赤リン、金属リン酸塩、金属有機リン酸塩、リン酸誘導体、ポリリン酸アンモニウム、及びポリリン酸アンモニウム誘導体化合物などのリン原子含有化合物、b).(イソ)シアヌレート系化合物、(イソ)シアヌル酸系化合物、グアニジン系化合物、尿素系化合物、及び、これらの誘導体化合物などの窒素原子含有化合物、c).ケイ素化合物、金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩化合物、金属硫酸塩化合物、ホウ酸化合物、及び無機系化合物複合体などの無機系化合物、などの1種以上を併用することができる。本発明において、塩基性ヒンダードアミン系化合物と併用するに好ましいハロゲン非含有難燃付与剤としては、具体的に、リン酸エステル類、(メラミン被覆)ポリリン酸アンモニウム、メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化アンチモン、ホウ酸亜鉛などを用いることができる。(以下これらのハロゲン非含有難燃付与剤を、併用ハロゲン非含有難燃付与剤と記す。)
【0015】
ハロゲン非含有難燃付与剤成分(2)用塩基性ヒンダードアミン系化合物の含有量は、ポリオレフィン系樹脂層を形成する樹脂成分(1)(樹脂要素(a)のみ、樹脂要素(a)+(b)、樹脂要素(a)+(c)、樹脂要素(a)+(b)+(c)を包含する)100質量部に対して0.05〜5質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜3質量部である。塩基性ヒンダードアミン系化合物の含有量が0.05質量部未満であると、得られるターポリンの難燃性が不十分になることがあり、併用ハロゲン非含有難燃付与剤を多量に添加することが必要となることがある。またそれが5質量部を超えると、ポリオレフィン系樹脂層の加工性、特にカレンダー加工性が不十分になることがあり、さらに、難燃性が低下してしまうことがある。併用ハロゲン非含有難燃付与剤の使用は、樹脂成分(1)の合計質量に対して5〜60質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜30質量%である。併用ハロゲン非含有難燃付与剤の含有量が60質量%を超えると、得られるポリオレフィン系樹脂層の加工性が不十分になり、さらに得られるターポリンの接合部強度、耐摩耗性、耐熱クリープ性が不十分になることがある。ハロゲン非含有難燃付与剤成分(2)用塩基性ヒンダードアミン系化合物は、その分子構造中に少なくとも1個以上、特に2個以上の式(II)のヒンダードアミン構造を有するものが好ましく、これらのヒンダードアミン構造のN位には、炭素原子数2〜18のアルコキシ基、または、炭素原子数5〜12のシクロアルコキシ基から選ばれた置換基を有し、1分子当り2個以上の式(II)のヒンダードアミン構造を有するときは、置換基−OR7は互に同一であってもよく、或は互に異なっていてもよい。塩基性ヒンダードアミン系化合物の分子量は好ましくは500以上、より好ましくは900以上、さらに好ましくは1500以上であるとき、得られるポリオレフィン系樹脂層への残留保持性が一層向上する。
本発明の膜材に用いる塩基性ヒンダードアミン系化合物としては、その式(II)により表されるヒンダードアミン構造式中R3、R4、R5及びR6は、全てメチル基であることが特に好ましい。また、R7 は、i).炭素原子数2〜18のアルキル基、すなわち、式(II)のヒンダードアミン構造のN位が、炭素原子数2〜18のアルコキシ基、特に好ましくは炭素数6〜12のアルコキシ基で置換されたもの、ii).炭素原子数5〜12のシクロアルキル基、すなわち式(II)のヒンダードアミン構造のN位が、炭素原子数5〜12のシクロアルコキシ基、好ましくは炭素原子数5、または6、または8のシクロアルコキシ基、特に好ましくはシクロヘキシルオキシ基で置換されたものであることが好ましい。塩基性ヒンダードアミン系化合物は具体的に、ビス(N−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)セバケート、2,4−ビス[(N−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)ブチルアミノ]−6−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−s−トリアジン、2,4−ビス[(N−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)ブチルアミノ]−6−クロロ−s−トリアジンなどである。
【0016】
本発明のポリオレフィン系樹脂ターポリンのポリオレフィン系樹脂層には、その加工性、ターポリン縫製時の作業性(耐ブロッキング性・すべり性)及び高周波誘導発熱性の向上効果を目的に、シリカを添加してもよい。また、ポリオレフィン系樹脂層にはカレンダーによるポリオレフィン系樹脂層製造時の加工性向上のために、滑剤を添加することもできる。シリカとしては、一般的な湿式法又は乾式合成法、又はエアロゲル合成法などの製法によって製造され、平均粒径1〜20μmのものを用いることができ、特に2〜10μmの合成非晶質シリカを用いることが好ましい。シリカの添加量は、樹脂成分(1)の全質量100質量部に対して2〜15質量部であることが好ましい。それが2質量部未満では高周波誘導発熱向上効果が不十分になることがあり、またそれが15質量部を超えると、得られるポリオレフィン樹脂層の加工性、特にカレンダー加工時が不十分になって、フィルム外観が不満足なものになったり、樹脂強度が低下して、得られるターポリンの耐スクラッチ性など、耐久物性に悪影響を及ぼすことがある。滑剤は、リン酸エステル系、脂肪族アミド系、モンタン酸系の滑剤の1種以上を含み、その添加量は樹脂成分(1)の全質量100質量部に対して0.1〜3質量部の範囲内にあることが好ましい。さらにポリオレフィン系樹脂層用添加剤として、顔料、紫外線吸収剤、HALS、酸化防止剤などの1種以上を用途・目的に応じて添加してもよく、これら添加剤は1種または2種以上を適宜混合して使用することもできる。また、その添加量も適宜に設定することができる。
【0017】
本発明のポリオレフィン系樹脂ターポリンのポリオレフィン系樹脂層用フィルムの成形方法としては、公知の成型加工方法、例えばT−ダイス押出法、インフレーション法、カレンダー法などを用いることができる。特に顔料着色フィルムの製造、あるいは色替え作業の多い加工には、カレンダー法を用いるとコンパウンドロスも少なく簡便に実施することができる。カレンダー加工により得られるポリオレフィン系樹脂フィルムの厚さには、特に限定はないが、80〜500μmであることが好ましく、より好ましくは130〜450μmである。フィルムの厚さが80μmよりも薄いと、成型加工が困難でありかつそれを繊維性基布にラミネートした時に繊維性基布の織交点部でフィルムの頭切れを起こし、防水性を損なうことがあり、さらにターポリンの耐久性、及び接合部強度を不十分にすることがある。またそれが500μmよりも厚いと、得られるターポリンが、重く・硬くなってしまい、折りたたみ・持ち運び等の作業性の低下を招くことがある。
【0018】
本発明のポリオレフィン系樹脂ターポリンに使用できる繊維性基布としては、織布、編布のいずれでもよい。織布としては平織、綾織、繻子織などが挙げられるが、特に平織織布を用いると、得られるポリオレフィン系樹脂シートの経・緯物性のバランスが良好になる。繊維性基布の経糸・緯糸の糸条は合成繊維、天然繊維、半合成繊維、無機繊維またはこれらの2種以上から成る混用繊維のいずれであってもよいが、その加工性と汎用性を考慮するとポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、芳香族ポリエステル繊維、ナイロン繊維、芳香族ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリウレタン繊維などの合成繊維糸条を用いることが好ましい。また無機繊維としてガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、炭素繊維などのマルチフィラメント糸条を使用してもよい。また、これらの繊維糸条は、マルチフィラメント糸条、短繊維紡績糸条、モノフィラメント糸条、スプリットヤーン、テープヤーンなどのいずれの形状のものであってもよいが、マルチフィラメント糸条を用いることが好ましい。本発明のポリオレフィン系樹脂ターポリンに使用する繊維織布としては、繊維性基布の経糸・緯糸の糸条と前記ポリオレフィン系樹脂層との積層界面に、環状イミノエーテル基含有樹脂の環状イミノエーテル基(特にオキサゾリン基)の開環のよる架橋接着構造を強固に形成可能な繊維、例えばポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリプロピレン繊維、ビニロン繊維、及びこれらの混用繊維からなるマルチフィラメント繊維糸条による平織織布を用いることが好ましい。
【0019】
本発明の繊維性基布に使用されるマルチフィラメント糸条の種類には制限はないが、139dtex(125デニール)〜2222dtex(2000デニール)のもの、特に278dtex(250デニール)〜1111dtex(1000デニール)のマルチフィラメント糸条を用いることが好ましい。また本発明に使用する繊維性基布は目抜け平織であることが好ましい。繊維性基布用織布の経糸及び緯糸の打込み本数に特に限定はないが、139dtex(125デニール)〜2222dtex(2000デニール)のマルチフィラメント糸条を、経糸・緯糸2.54cm(1インチ)当たり8〜38本打込んで得られる織布、例えば555dtex(500デニール)のマルチフィラメント糸条を用いる場合、2.54cm(1インチ)当たり14〜24本の打ち込み本数で得られる平織織布、また1111dtex(1000デニール)のマルチフィラメント糸条を用いる場合、2.54cm(1インチ)当たり12〜22本程度の打込みで得られる平織織布を用いることができる。また、これらの繊維性基布の空隙率(目抜け)は、5〜30%であることが好ましく、より好ましくは8〜24%である。空隙率が5%未満であると、糸密度が高すぎて得られるターポリンのフレキシブル性が不十分になり、また繊維性基布の表裏面に形成される2枚のポリオレフィン系樹脂フィルム相互のブリッジ融着性または相互のブリッジ融着性を低下させ、動的耐久性を不十分にすることがある。また、空隙率が30%を越えると、得られる基布のフレキシブル性及びフィルムのブリッジ融着性は向上するが、経緯方向の繊維糸条含有量が少ないために、得られるターポリンの寸法安定性が不十分になり、引裂強度も低下することがある。前記空隙率とは繊維性基布の単位面積中に占める繊維糸条の面積の百分率を求め、その数値を100から差し引いた値(%)により表される。空隙率の測定には経方向10cm×緯方向10cmの面積を単位面積として用いることが好ましい。また、繊維性基布には、必要に応じて、予じめ接着剤の塗布、樹脂含浸加工、吸水防止処理、防炎処理などを施しておいてもよい。繊維性基布の接着処理は、例えば前述のスチレン系共重合体樹脂(SBS、SIS、SVIS、SEBS、SEPS、SB、SI、SEP、SEPなど、及びこれらのスチレン系共重合体樹脂とイソシアネート化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物などの架橋剤との併用物)を有機溶剤中に溶かしたもの、又は微分散させたものが使用できる。
【0020】
本発明のポリオレフィン系樹脂ターポリンにおいて、上記繊維性基布の表裏両面に、ポリオレフィン系樹脂フィルムが積層されている。積層の方法としては、ポリオレフィン系樹脂フィルムの成型加工と同時に繊維性基布の片面毎に、熱ラミネートするカレンダートッピング法、またはT−ダイ押出ラミネート法、あるいはカレンダー法、T−ダイ押出法、インフレーション法などによりポリオレフィン系樹脂フィルムを成型加工し、その2枚を、ラミネーターを使用して、繊維性基布の表裏両面上に同時に熱圧着する方法などが挙げられる。本発明のポリオレフィン系樹脂ターポリンの製造には、カレンダー法によって成型加工されたポリオレフィン系樹脂フィルムを繊維性基布に熱圧着する方法を用いると、ポリオレフィン系樹脂層と繊維性基布の積層界面に、環状イミノエーテル側鎖基含有樹脂の環状イミノエーテル基(特にオキサゾリン基)の開環による架橋接着構造の形成が容易かつ高い効率で行われる。このとき、繊維性基布の目抜け空隙部を介して、表裏2枚のポリオレフィン系樹脂フィルムが熱溶融ブリッジする為、ポリオレフィン系樹脂層と繊維性基布との接触表面積が増大し、環状イミノエーテル側鎖基含有樹脂による架橋構造が、糸条の側面にも均一に形成されるのでそれによって、樹脂ブリッジによる接着効果をより高いものとすることが可能となり、本発明の耐熱クリープ性に優れた難燃ポリオレフィン系樹脂ターポリンを得ることができる。
【0021】
本発明のポリオレフィン系樹脂ターポリンが、中大型テント、日除けテント、テント倉庫などの膜構造物の原反素材に用いられる場合、その美観維持のために、特にターポリンの1面以上に防汚層を形成されていてもよい。防汚層としては、i).酸化チタン(TiO2)、過酸化チタン(ペルオキソチタン酸)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化錫(SnO2)から選ばれた1種以上の光触媒物質含有層、または、ii).アクリル系樹脂、アクリル−シリコン樹脂、及びフッ素系樹脂から選ばれた1種以上の防汚樹脂を含む防汚層、または前記防汚樹脂にシリカ微粒子を配合した防汚層を包含する。
【0022】
防汚層に用いられる光触媒物質含有層は、9〜70質量%の光触媒物質と、25〜90質量%の金属酸化物ゲル及び/又は金属水酸化物ゲルとを含むものであることが好ましく、必要によりその合計質量の、1〜20質量%のケイ素化合物とを含むことが好ましく、その厚さは、0.1〜10μmであることが好ましく、前記塗膜はこれらの化合物を含有する塗工組成物をポリオレフィン系樹脂層の表面に塗布、乾燥して形成することができる。このときポリオレフィン系樹脂層と光触媒物質含有層との間に、光触媒物質の活性作用からポリオレフィン系樹脂層を保護するための中間保護層を設けることが好ましい。光触媒物質は酸化チタン(TiO2)、過酸化チタン(ペルオキソチタン酸)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化錫(SnO2)から選ばれた1種以上を使用すればよく、光触媒物質含有層にはPt、Rh、RuO2、Nb、Cu、Sn、NiOなどの金属及び金属酸化物をドープして光触媒活性を高めることもできる。また光触媒物質は、シリカ、(合成)ゼオライト、チタンゼオライト、リン酸ジルコニウム、リン酸カルシウム、ハイドロタルサイト、ヒドロキシアパタイト、シリカアルミナ、ケイ酸カルシウム、ケイソウ土などの平均一次粒子径0.01〜10μm、特に0.05〜5μmの無機系多孔質微粒子に、光触媒物質を担持させたものであってもよい。光触媒担持粒子は、光触媒物質を含有する金属アルコラートによるゾル−ゲル薄膜製造工程を応用した無機系多孔質微粒子への表面処理によって行われる。また金属酸化物ゲル、金属水酸化物ゲルは具体的に、シリカゾル、アルミナゾル、ジルコニアゾル、酸化ニオブゾルなどであり、これらは光触媒物質を塗膜内に固着すると同時に、これらの有する多孔質性によって光触媒活性能を効率化することができる。ケイ素化合物は、ポリシロキサンが使用でき、ゾル−ゲル法によりアルコキシシラン化合物を加水分解、重縮合して得られるものが好ましい。
【0023】
光触媒物質としては酸化チタンを用いることが好ましく、この酸化チタンとしては、酸化チタンゾル、酸化チタンゾルのアルカリ中和物、ペルオキソチタン酸などを用いることが好ましい。また酸化チタンとしては平均結晶子径5〜20nmの塩酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル、硝酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾルなどが使用できる。光触媒含有層中の光触媒の含有量は、10〜70質量%であることが好ましい。光触媒物質含有層の厚さは、前記のように0.1〜10μmであることが好ましく特に1〜5μmであることがより好ましい。光触媒物質含有層の厚さが0.1μmよりも少ないと、本発明のターポリンの防汚性が不十分となり、またそれが10μmを超えると、折り曲げにより防汚層に亀裂を生じ易くなる。また光触媒物質含有層には防汚層の摩耗強さ、及び折り曲げ強さを向上させる目的で、シランカップリング剤(アルコキシシラン化合物)を、光触媒物質含有層の質量に対して好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.1〜5質量%の添加量範囲で併用添加することができ、これによりアルコキシシラン化合物をゾル−ゲル法で加水分解したものを防汚層内部で重縮合させることができる。また光触媒物質含有層とポリオレフィン系樹脂層との間に設ける中間保護層としては、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル−シリコーン共重合体樹脂、フルオロオレフィン−アクリル共重合体樹脂、アクリル系樹脂とフルオロオレフィン樹脂とのブレンド物、オルガノシリケート化合物、またはその低縮合物(例えば、多量化度2〜10のテトラメトキシシラン、またはテトラエトキシシラン)の加水分解物(シラノール基含有シラン化合物)による薄膜などが挙げられ、これらには必要に応じてシリカ、コロイダルシリカなどの親水性微粒子を含むことが光触媒物質含有層との密着性向上の観点において好ましく、さらに塗膜耐久性を改良するためにシランカップリング剤(アルコキシシラン化合物)を添加することができる。これらの中間層の形成は塗工組成物の塗布、乾燥により行うことができる。
【0024】
また防汚層には、アクリル系樹脂、アクリル−シリコン樹脂、及びフッ素系樹脂から選ばれた1種以上からなる防汚樹脂を用いてもよく、この防汚樹脂にはさらに、シリカ微粒子が含まれていてもよい。フッ素系樹脂による防汚層は、フィルムであってもよく、或は塗膜であってもよい。塗膜による防汚層形成には有機溶剤に可溶であるフルオロオレフィン共重合体樹脂、またはフルオロオレフィン共重合体樹脂の水分散体を用いることが好ましい。また、フルオロオレフィン共重合体樹脂としては、硬化剤との併用により架橋部位を生成可能な水酸基を分子構造内に含有するものを用いることが好ましい。フルオロオレフィンモノマーは、具体的に、フッ化ビニル(VF)、ビニリデンフルオライド(VdF)、トリフルオロエチレン(TrEE)、テトラフルオロエチレン(TFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)などのように、フッ素原子を構成単位中に1個以上含有するエチレン、プロピレン、及びα−オレフィンなどのオレフィン骨格を有するモノマーであり、特にVdFを含有するVdF系共重合体樹脂は有機溶剤への溶解性に優れているため、本発明の防汚樹脂として好ましい。これらは具体的にこれらは、VdF−TFE共重合体樹脂、VdF−CTFE共重合体樹脂、TFE−CTFE共重合体樹脂、VdF−TFE−CTFE共重合体樹脂などを包含し、さらに、VF、TrEE、HFPなどの第3成分を含むものであってもよい。特に有機溶剤に可溶なフルオロオレフィン共重合体樹脂は、CF2=CFX(Xは、−H、−F、−CF3)で示されるフルオロオレフィンとビニルモノマーとの共重合体樹脂であることが好ましい。このような塗料型のフッ素系樹脂の市販品としては、商標:ルミフロン(旭硝子(株))、商標:セフラルコート(セントラル硝子(株))、商標:ザフロン(東亜合成(株))、商標:ゼッフル(ダイキン工業(株))、商標:フルオネート(大日本インキ工業(株))、商標:フローレン(日本合成ゴム(株))、商標:カイナー(アトケム)などが挙げられる。これらのフルオロオレフィン共重合体樹脂は、共重合ビニル成分中に有する水酸基、カルボキシル基などの反応性基を、イソシアネート化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、メラミン化合物などの硬化剤(架橋剤)をフルオロオレフィン共重合体樹脂(固形分)に対して、固形分量換算で、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは3〜15質量%用いて反応させることによって、得られる塗膜の耐摩耗性、耐候性などを改善することができる。中でも特にイソシアネート化合物が水酸基との反応性に優れ好ましく、特に脂肪族ポリイソシアネート化合物、及び脂環式ポリイソシアネート化合物が耐候性の観点で好ましい。また有機溶剤に可溶なフルオロオレフィン共重合体樹脂としては、上記フルオロオレフィンモノマーとアクリルモノマーとの共重合体樹脂を用いることができ、このようにして得られるフルオロオレフィン−アクリル共重合体樹脂には、フルオロオレフィン成分が、合計量として好ましくは35〜85モル%、より好ましくは40〜70モル%の割合で含有される。
【0025】
また、防汚層用アクリル系樹脂は、例えば、アルキル基の炭素数が1〜18のアクリル酸アルキルエステル類、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、及びアクリル酸n−ヘキシルの重合体など;アルキル基の炭素数が1〜18のメタアクリル酸アルキルエステル類、例えば、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸n−プロピル、メタアクリル酸n−ブチル、及びメタアクリル酸2−エチルヘキシル、の重合体など、から選ぶことができる。アクリル系樹脂は、前記のモノマーの2種以上の共重合体樹脂であってもよい。また、上記アクリル系樹脂は、アクリル系モノマーと共重合可能な共重合モノマーを、最大30質量%程度まで含んでいても良く、これらは例えば、エチレン性不飽和カルボン酸類、アクリルアミド化合物類、水酸基含有(メタ)アクリル酸類、エポキシ基含有(メタ)アクリル酸類、α−オレフィン類、ビニルエーテル類、アルケニル類、ビニルエステル類、芳香族ビニル化合物類などである。また、上記アクリル系樹脂はフルオロオレフィン共重合体樹脂とブレンドして用いることができ、アクリル系樹脂のブレンド量(固形分量)は、フルオロオレフィン共重合体樹脂(固形分量)100質量部に対して5〜75質量部であることが好ましく、特に10〜50質量部であることがより好ましい。特にアクリル系樹脂には、アクリル系樹脂に対し、0.01〜5質量%の紫外線吸収剤、特にアクリル系共重合体樹脂に紫外線吸収剤がグラフトした高分子化合物、アクリル系化合物に紫外線吸収剤がグラフトした重合性化合物をアクリル系樹脂に対し、1〜5質量%含むことが耐候性の観点において好ましい。またアクリル系樹脂には、シランカップリング剤の加水分解物がグラフトしたアクリル−シリコン樹脂を使用することもできる。
【0026】
防汚層を形成するアクリル系樹脂、アクリル−シリコン樹脂、フッ素系樹脂(フルオロオレフィン共重合体樹脂)、またはフッ素系樹脂(フルオロオレフィン共重合体樹脂)とアクリル系樹脂とのブレンド物に、シリカ微粒子を配合すると、雨筋汚れ抑制の効果が得られて好ましく、特にフッ素系樹脂、またはフッ素系樹脂とアクリル系樹脂とのブレンド物のような疎水性を示す樹脂系に、シリカ微粒子を配合することにより、その表面を親水性に改良することができ、これらは雨筋汚れ抑制に有効である。雨筋汚れ抑制効果は、フッ素系樹脂にシリカ微粒子を配合したものが顕著であるが、ターポリンの重ね合わせ接合、特に高周波融着、熱風融着などの2次加工性においては、フッ素系樹脂とアクリル系樹脂とのブレンド物にシリカ微粒子を配合したものが最も好ましい。フッ素系樹脂とアクリル系樹脂とのブレンド比は、フッ素系樹脂100質量部に対してアクリル系樹脂が5〜75質量部であることが好ましく、より好ましくは10〜50質量部である。またシリカ(SiO2)微粒子は、乾式法により合成された無水シリカ、湿式法により合成された含水シリカなどの非晶質シリカから選ばれる。特に表面にシラノール基(Si−OH基)数を多く有する湿式シリカが親水性付与効果に優れ好ましい。合成シリカは平均凝集粒径(コールカウンター法)が1〜20μm、特に2〜10μm、またBET比表面積が40〜400m2/gであるものが親水性付与効果に優れ好ましい。シリカ微粒子の配合量は、防汚樹脂固形分100質量部に対し、10〜200質量部であることが好ましく特により好ましくは30〜100質量部である。シリカ微粒子の配合量が10質量部未満では、十分な雨筋汚れ抑制効果が得られないことがあり、またこの配合量が200質量部を超えると、得られる防汚層の摩耗強度が不十分になり、ターポリンの耐久性が不十分となることがある。また、ケイ酸ナトリウム溶液を陽イオン交換して得られる水分散媒のシリカゾル、有機系溶剤を分散媒とするBET平均粒子径10〜20nmのシリカゾルなどのコロイダルシリカを使用してもよい。
【0027】
防汚層の形成に際し、ポリオレフィン樹脂層上に形成された、プライマー層を介して形成することが好ましい。プライマー剤としては例えば前述のスチレン系共重合体樹脂(SBS、SIS、SVIS、SEBS、SEPS、SB、SI、SEP、SEPなど、及びこれらのスチレン系共重合体樹脂とイソシアネート化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物などの架橋剤との併用物)を有機溶剤中に溶かした溶液又は微分散させた分散液が使用できる。上述の防汚層形成用塗工剤をターポリンのポリオレフィン系樹脂層(またはプライマー層介在)上に塗布する方法は、例えば、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、コンマコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、バーコート法、フローコート法、スプレーコートなどから選ぶことができる。防汚層の厚さは0.1〜50μm(光触媒物質含有層は0.1〜10μmの塗膜)であることが好ましい。防汚層の厚さが0.1μmよりも薄いと、得られるターポリンの防汚効果が不十分で長続きしないことがあり、また、防汚層の厚さが50μmを超えると、所要塗工回数が増えるばかりで、それに見合う防汚効果が得られないことがある。また防汚層が形成されたターポリンの裏面には、アクリル系樹脂、またはフッ素系樹脂、またはフッ素系樹脂とアクリル系樹脂とのブレンド物による裏面塗工層が形成されていることが好ましく、このようにすると、ターポリンのラップ接合の熱融着性が向上する。裏面塗工層は防汚層と同種の樹脂系の組み合わせが特に好ましい。
【0028】
本発明のポリオレフィン系樹脂ターポリンの接合・縫製には、高周波(ウエルダー)融着法、熱板融着法、熱風融着法、超音波融着法などの熱融着法を用いることが可能であり、特に好ましくは高周波融着法が汎用性が高く、効率的かつ経済的であるため好ましい。また特に高周波融着法や熱融着法では、接合部に集中してポリオレフィン系樹脂層に含まれる環状イミノエーテル側鎖基含有樹脂の開環、架橋接着構造の生成、架橋構造の生成を完了させるための加熱溶融が加わりそれによって、ポリオレフィン系樹脂フィルムと繊維性基布との積層・接触界面、及びポリオレフィン系樹脂層内部の架橋構造が一層緻密化し、更に高レベルの耐熱クリープ性を得ることを可能とする。
【実施例】
【0029】
本発明を下記の実施例及び比較例を挙げて更に説明するが、本発明はこれらの例の範囲に限定されるものではない。
評価方法
≪剪断強力の測定≫
2枚のポリオレフィン系樹脂ターポリンの端末を4cm幅で直線状に重ね合わせ、4cm×30cmのウエルドバー(歯形:凸部は等間隔4cm幅直線状賦型9本/25.4mm,凸部高さ0.5mm:凹部は等間隔4cm幅直線状賦型9本/25.4mm,凹部深さ0.5mm)を装着した高周波ウエルダー融着機(山本ビニター(株)製YF−7000型:出力7KW)を用いてターポリンの高周波融着接合を行った。また融着接合部を含む3cm幅の試料を採取し、融着接合部の剪断試験(JIS規格L1096)を行い、破断強度の測定と、接合部の破壊状態を以下の判定基準によって目視で評価した。
評価基準
○ :本体が破壊する。
△ :接合部が破壊する。
× :接合部が糸抜けにより破壊する。
≪耐熱クリープ試験≫
耐熱クリープ性試験は上記剪断強力測定用同様の、ウエルダー融着シートより重ね合わせ幅4cmを含む、試験片幅3cm、試験片長30cmの試験片を採取し、これを耐熱クリープ試験片とし、クリープ試験機(東洋精機製作所(株)製:100LDR型)を使用して60℃×本体破断強度の1/10荷重で耐熱クリープ性試験を評価した。
評価基準
○ :24時間経過後、接合部の破壊はなく荷重に耐える。〈破断時間を併記〉
△ :24時間未満で接合部が剪断破壊する。〈破断時間を併記〉
× :1時間以内に接合部が剪断破壊する。〈破断時間を併記〉
破壊状況 : 剪断破壊した状態を目視で観察し記録する。(接合部糸抜け破壊,本体破壊等)
≪加工性≫
6インチ径の2本ロール(テストロール)を使用し、ロール間の隙間を1mmに設定し、樹脂混練温度を150℃に設定した。このテストロールに、下記実施例・比較例に用いるポリオレフィン系樹脂コンパウンド100gを投入し、コンパウンドの混練を20分間行い、ロールからの核コンパウンドの離形状態を目視で観察評価した。
≪防炎性≫
防炎性評価方法として、以下の評価方法で評価を行い評価した。
JIS L 1091法
実施例・比較例で得られたサンプルは、質量が450g/m2を越えた為、A−2法(45°メッケルバーナー法 2分加熱・6秒着火)および、膜材料の燃焼性を考慮し、D法(接炎試験)の2種類で評価した。評価基準は以下に示し、A−2法で区分3以上、で区分2以上を防炎性が良好であるとの判断基準とした。
【表1】

【表2】

JIS A 1322法
実施例・比較例で得られたサンプルを用い、JIS A 1322の加熱試験から、30秒加熱・2分加熱を抜粋し評価を実施した。評価基準は以下に示し、防炎2級以上で防炎性が良好であるとの判断基準とした。
【表3】

≪防炎性≫
傾斜角30度、及び垂直の屋外設置試料について、初期の試料を基準とし、屋外曝露6ヶ月後、12ケ月後の試料表面の色差ΔE値を測定し、防汚性を下記のように判定した。(色差ΔE値はJIS Z−8729による)
ΔE= 0〜 5未満:○:汚れが軽微で初期の状態を維持して いる。
ΔE=5〜10未満: △ :汚れ、または雨筋汚れが目立つが水 洗除去可能である。
ΔE=10以上 : × :汚れと雨筋が酷く、水洗除去が困難 である。
上記試験結果を表4〜表8に記す。
【0030】
実施例1
エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(商標:エバテートK2010、MFR 3.0、密度0.950、VA含有量25質量%、住友化学工業(株)製)80質量部と、メタロセン系触媒の存在下重合された直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(商標:カーネルKF270、MFR 2.0、密度0.907、日本ポリケム(株)製)20質量部とからなるポリオレフィン系樹脂ブレンドを調製し、その100質量部に対して、塩基性ヒンダードアミン化合物として(2,4−ビス[(N−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)ブチルアミノ]−6−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−s−トリアジン)を2質量部、メラミン被覆ポリリン酸アンモニウム(重合度n=1000、商標:エクソリットAP462:クラリアントジャパン(株)製)25質量部と、メラミンシアヌレート(商品名:MC640:日産化学(株)製)25質量部からなる難燃付与剤を混合し、さらに、環状イミノエーテル基がオキサゾリン基である環状イミノエーテル側鎖基含有樹脂として、スチレンと2−イソプロペニル−2−オキサゾリンとの共重合体(2−イソプロペニル−2−オキサゾリン共重合比5質量%)5質量部と、合成非晶性シリカ(商標:ニップシールE200A、平均粒子径3μm、日本シリカ工業(株)製)10質量部と、リン酸エステル系滑剤(商標:LTP−2、川研ファインケミカル(株)製)2質量部、ルチル型二酸化チタン顔料5質量部、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤0.2質量部と、及びフェノール系酸化防止剤0.2質量部とを添加し、得られた配合物を、温度150℃設定のテストロール(6インチ径2本ロール:西村製作所(株)製)で5分間混練し、樹脂ブレンド中のVA含有量が20質量%のコンパウンドを得た。得られたコンパウンドを前記テストロール上で、厚さ0.17mmのポリオレフィン系樹脂フィルムをカレンダー成形した。次に、このフィルムをポリエステル平織織布(555.5dtex(500デニール)ポリエステルマルチフィラメント、糸密度経糸21本/2.54cm×緯糸21本/2.54cm、空隙率18%、質量80g/m2)の表裏両面に150℃に設定した熱ロールと圧着ロール対を有するラミネーターを用いて貼り合わせ、厚さ0.43mm、質量480g/m2のハロゲン非含有難燃性ポリオレフィン系樹脂ターポリンを製造した。
【0031】
実施例2
実施例1と同様にしてポリオレフィン系樹脂ターポリンを製造した。但し、実施例1のポリオレフィン系樹脂層用のポリオレフィン樹脂ブレンドにおいて、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(商標:カーネルKF270、日本ポリケム(株)製)20質量部を、EPR−PPリアクター樹脂であるポリプロピレン系樹脂(商標:キャタロイKS−353P:MFR 0.45g/10min/230℃、EPR60質量%、PP40質量%:サンアロマー(株))20質量部に変更した。得られた樹脂ブレンド中のVA含有質量は20質量%であった。また実施例1の塩基性ヒンダードアミン化合物2質量部を、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製の塩基性ヒンダードアミン化合物(商標:FLAMESTAB NOR 116FF)2質量部に変更した。厚さ0.43mm、質量480g/m2のハロゲン非含有難燃性ポリオレフィン系樹脂ターポリンを得た。
【0032】
実施例3
実施例1と同様にして、ポリオレフィン系樹脂ターポリンを製造した。但し、実施例1のポリオレフィン系樹脂層用のポリオレフィン樹脂ブレンドにおいて、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(商標:カーネルKF270、日本ポリケム(株)製)20質量部を、スチレン系共重合体樹脂(商標:ハイブラー7125(HVS−3):スチレン−水素添加ビニルイソプレン−スチレン共重合樹脂:MFR 6.0g/10min/230℃:スチレン含有量20質量%:(株)クラレ製)20質量部に変更した。得られた樹脂ブレンド中のVA含有質量は20質量%であった。厚さ0.43mm、質量480g/m2のハロゲン非含有難燃性ポリオレフィン系樹脂ターポリンを得た。
【0033】
実施例4
実施例1と同様にしてポリオレフィン系樹脂ターポリンを製造した。但し、実施例1のポリオレフィン系樹脂層用のポリオレフィン樹脂ブレンドにおいて、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(商標:エバテートK2010、住友化学工業(株)製)80質量部を、エチレン−メチルメタアクリレート共重合体樹脂(商標:アクリフトWH206、MFR 2.0、密度0.940、MMA含有量20質量%、住友化学工業(株)製)80質量部に変更した。得られた樹脂ブレンド中のMMA含有質量は16質量%であった。厚さ0.43mm、質量480g/m2のハロゲン非含有難燃性ポリオレフィン系樹脂ターポリンを得た。
【0034】
実施例5
実施例1と同様にしてポリオレフィン系樹脂ターポリンを製造した。但し、実施例1のポリオレフィン系樹脂層用のポリオレフィン樹脂ブレンドにおいて、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(商標:エバテートK2010、住友化学工業(株)製)80質量部のうちの40質量部を、実施例4に記載のエチレン−メチルメタアクリレート共重合体樹脂(商標:アクリフトWH206、住友化学工業(株)製)40質量部により置換した。得られた樹脂ブレンド中のVA及びMMA含有質量は18質量%であった。厚さ0.43mm、質量480g/m2のハロゲン非含有難燃性ポリオレフィン系樹脂ターポリンを得た。
【0035】
実施例6
実施例1と同様にしてポリオレフィン系樹脂ターポリンを製造した。但し、実施例1のポリオレフィン系樹脂層用のポリオレフィン樹脂ブレンドにおいて、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(商標:エバテートK2010、住友化学工業(株)製)の使用量を40質量部に減量し、メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(商標:カーネルKF270、日本ポリケム(株)製)の使用量を60質量部に増量した。得られた樹脂ブレンド中のVA含有質量は10質量%であった。厚さ0.43mm、質量480g/m2のハロゲン非含有難燃性ポリオレフィン系樹脂ターポリンを得た。
【0036】
実施例7
実施例1と同様にしてポリオレフィン系樹脂ターポリンを製造した。但し、実施例1のポリオレフィン系樹脂層用のポリオレフィン系樹脂ブレンドの代りに、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(商標:エバテートK2010、住友化学工業(株)製)50質量部、メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(商標:カーネルKF270、日本ポリケム(株)製)30質量部、及び実施例3に記載のスチレン系共重合体樹脂(商標:ハイブラー7125(HVS−3)(株)クラレ製)20質量部からなるポリオレフィン系樹脂ブレンドを用いた。この樹脂ブレンド中のVA含有質量は12.5質量%であった。厚さ0.43mm、質量480g/m2のハロゲン非含有難燃性ポリオレフィン系樹脂ターポリンを得た。
【0037】
実施例8
実施例1と同様にしてポリオレフィン系樹脂ターポリンを製造した。但し、実施例1のポリオレフィン系樹脂層用のポリオレフィン樹脂ブレンドの代りに、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(商標:エバテートK2010、住友化学工業(株)製)50質量部、実施例2に記載のEPR−PPリアクター樹脂であるポリプロピレン系樹脂(商標:キャタロイKS−353P:サンアロマー(株)製)30質量部、及び実施例3に記載のスチレン系共重合体樹脂(商標:ハイブラー7125(HVS−3)(株)クラレ製)20質量部からなるブレンドを用いた。得られた樹脂ブレンド中のVA含有質量は12.5質量%であった。また実施例1の塩基性ヒンダードアミン化合物2質量部の代りに、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製の塩基性ヒンダードアミン化合物(商標:FLAMESTAB NOR 116FF)2質量部を用いた。厚さ0.43mm、質量480g/m2のハロゲン非含有難燃性ポリオレフィン系樹脂ターポリンを得た。
【0038】
実施例9
実施例1と同様にしてポリオレフィン系樹脂ターポリンを製造した。但し、実施例1のポリオレフィン系樹脂層用のポリオレフィン樹脂ブレンドの代りに、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(商標:エバテートK2010、住友化学工業(株)製)30質量部、実施例4に記載のエチレン−メチルメタアクリレート共重合体樹脂(商標:アクリフトWH206、住友化学工業(株)製)20質量部、実施例2に記載のEPR−PPリアクター樹脂であるポリプロピレン系樹脂(商標:キャタロイKS−353P:サンアロマー(株)製)30質量部、及び実施例3に記載のスチレン系共重合体樹脂(商標:ハイブラー7125(HVS−3)(株)クラレ製)20質量部からなる樹脂ブレンドを用いた。この樹脂ブレンド中のMMA及びVA含有質量は11.5質量%であった。また実施例1に用いられた塩基性ヒンダードアミン化合物2質量部を、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製の塩基性ヒンダードアミン化合物(商標:FLAMESTAB NOR 116FF)2質量部に変更した。厚さ0.43mm、質量480g/m2のハロゲン非含有難燃性ポリオレフィン系樹脂ターポリンを得た。
【0039】
実施例10
実施例1に記載のポリエステル平織り織布(555.5dtex(500デニール)ポリエステルマルチフィラメント 糸密度経糸21本/2.54cm×緯糸21本/2.54cm 空隙率18% 質量80g/m2)に下記接着処理を施した。
<接着処理剤>
アイオノマー樹脂ディスパージョン(商標:ケミパールS−3
00:エチレン−メタアクリル酸共重合体の亜鉛塩、固形分35質量
%:三井化学(株)製) 100質量部
オキサゾリン系架橋剤(商標:エポクロスWS-500:固形分
40質量%:日本触媒(株)製) 20質量部
上記接着処理剤浴中に前記ポリエステル平織織布を浸漬し、織布を引き上げると同時にニップロールで絞り、(wet付着質量80g/m2)次にこれに100℃の熱風炉中2分間の乾燥を施した。接着処理後のポリエステル繊維平織物の質量は108.0g/m2であった。この基布の表裏両面上に実施例1と同様にして、ポリオレフィン系樹脂層を形成した。厚さ0.44mm、質量510g/m2のポリオレフィン系樹脂ターポリンを得た。
【0040】
比較例1
実施例1と同様にしてターポリンを製造した。但し、実施例1のポリオレフィン系樹脂層の組成から、塩基性ヒンダードアミン化合物2質量部、メラミン被覆ポリリン酸アンモニウム25質量部、メラミンシアヌレート25質量部、オキサゾリン側鎖基含有樹脂5質量部を省略した。厚さ0.43mm、質量320g/m2のポリオレフィン系樹脂ターポリンを得た。このターポリンは防炎性が不良で、しかも接合部の耐熱クリープ性にも劣るものであった。
【0041】
比較例2
実施例1と同様にしてターポリンを製造した。但し、実施例1のポリオレフィン系樹脂層の組成から、塩基性ヒンダードアミン化合物2質量部、メラミン被覆ポリリン酸アンモニウム25質量部、メラミンシアヌレート25質量部を省略した。厚さ0.43mm、質量340g/m2のポリオレフィン系樹脂ターポリンを得た。このターポリンでは防炎性に劣るものであった。
【0042】
比較例3
実施例1と同様にしてターポリンを製造した。但し、実施例1のポリオレフィン系樹脂層の組成から、塩基性ヒンダードアミン化合物2質量部、オキサゾリン側鎖基含有樹脂5質量部を省略し、メラミン被覆ポリリン酸アンモニウム及び、メラミンシアヌレートの配合量を各々40質量部に変更した。厚さ0.43mm、質量560g/m2のポリオレフィン系樹脂ターポリンを得た。このターポリンは加工性が悪い上に、防炎性が不良で、しかも接合部の耐熱クリープ性にも劣るものであった。
【0043】
比較例4
実施例1と同様にしてターポリンを製造した。但し、実施例1のポリオレフィン系樹脂層の組成からオキサゾリン側鎖基含有樹脂5質量部を省略した。厚さ0.43mm、質量470g/m2のポリオレフィン系樹脂ターポリンを得た。このターポリンは防炎性を有するが接合部の耐熱クリープ性に劣るものであった。
【0044】
比較例5
実施例1と同様にしてターポリンを製造した。但し、実施例1に記載のポリオレフィン系樹脂層のポリオレフィン系樹脂を、実施例1のメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン樹脂100質量部に変更し、また実施例1の組成からオキサゾリン側鎖基含有樹脂5質量部の配合を省略した。厚さ0.43mm、質量480g/m2のポリオレフィン系樹脂ターポリンを得た。このターポリンは高周波融着不能なため単純なヒートシールにより接合片を作製したが、しかし接合部の耐熱クリープ性には劣るものであった。
【0045】
比較例6
実施例8と同様にして、厚さ0.43mm、質量560g/m2のポリオレフィン系樹脂ターポリンを製造した。但し、実施例8のポリオレフィン系樹脂層の組成から、塩基性ヒンダードアミン化合物2質量部、オキサゾリン側鎖基含有樹脂5質量部を省略し、メラミン被覆ポリリン酸アンモニウム及び、メラミンシアヌレートの配合量を、各々40質量部に変更した。このターポリンは加工性が悪い上に、防炎性が不良で、しかも接合部の耐熱クリープ性も不満足なものであった。
【0046】
比較例7
実施例8と同様にして厚さ0.43mm、質量470g/m2のポリオレフィン系樹脂ターポリンを製造した。但し、実施例8のポリオレフィン系樹脂層の組成から、オキサゾリン側鎖基含有樹脂5質量部を省略した。このターポリンは接合部の耐熱クリープ性が不良なものであった。
【0047】
比較例8
実施例4と同様にして厚さ0.43mm、質量560g/m2のポリオレフィン系樹脂ターポリンを製造した。但し、実施例4のポリオレフィン系樹脂層の組成から、塩基性ヒンダードアミン化合物2質量部、オキサゾリン側鎖基含有樹脂5質量部を省略し、メラミン被覆ポリリン酸アンモニウム及び、メラミンシアヌレートの配合量を、各々40質量部に変更した。このターポリンは加工性が不良であって、防炎性も不良で、しかも接合部の耐熱クリープ性も不満足なものであった。
【0048】
比較例9
実施例4と同様にして厚さ0.43mm、質量470g/m2のポリオレフィン系樹脂ターポリンを製造した。但し、実施例4のポリオレフィン系樹脂層の組成から、オキサゾリン側鎖基含有樹脂5質量部を省略した。このターポリンは接合部の耐熱クリープ性が不良なものであった。
【0049】
比較例10
実施例1と同様にしてターポリンを製造しようとした。但し、実施例1のポリオレフィン系樹脂層の組成において、オキサゾリン側鎖基含有樹脂量を50質量部に増量した。テストロールでフィルムを圧延したが熱ロール表面にフィルムが粘着してフィルムを得ることができず、ターポリンを得ることができなかった。
【0050】
比較例11
実施例1と同様にしてターポリンを製造しようとした。但し、実施例8のポリオレフィン系樹脂層の組成において、オキサゾリン側鎖基含有樹脂の配合量を50質量部に増量した。テストロールでフィルムを圧延したが熱ロール表面にフィルムが粘着してフィルムを得ることができず、ターポリンを得ることができなかった。
【0051】
比較例12
実施例1と同様にしてターポリンを製造した。但し、実施例1のポリオレフィン系樹脂層の組成において、オキサゾリン側鎖基含有樹脂5質量部を、カルボジイミド系樹脂(商標:カルボジライトHMV−8CA、日清紡(株))5質量部に変更した。テストロールでフィルムを成形したがカルボジイミド系樹脂が凝集固化しており、また熱ロール表面にフィルムが粘着して加工性の悪いものであった。得られたターポリン(厚さ0.43mm、質量480g/m2)は接合部の耐熱クリープ性が不良であり、一部防炎規格にも適合しないものであった。
【0052】
比較例13
実施例8と同様にしてターポリンを製造した。但し、実施例8のポリオレフィン系樹脂層の組成において、オキサゾリン側鎖基含有樹脂5質量部を、カルボジイミド系樹脂(商標:カルボジライトHMV−8CA、日清紡(株))5質量部に変更した。テストロールでフィルムを成形したがカルボジイミド系樹脂が凝集固化しており、また熱ロール表面にフィルムが粘着して加工性の悪いものであった。得られたターポリン(厚さ0.43mm、質量480g/m2)は、接合部の耐熱クリープ性が不良であって、一部防炎規格にも適合しないものであった。
【0053】
比較例14
実施例8と同様にしてターポリンを製造した。但し、実施例8のポリオレフィン系樹脂層の組成において、オキサゾリン側鎖基含有樹脂5質量部を、Mg,Alを主構成分とした結晶水を含む合成吸着剤(キョーワード500、協和化学工業(株))10質量部に変更した。得られたターポリン(厚さ0.43mm、質量480g/m2)は、接合部の耐熱クリープ性が不良であって、防炎規格にも適合しないものであった。
【0054】
比較例15
実施例1と同様にしてターポリンを製造した。但し、実施例1のポリオレフィン系樹脂層の組成において、オキサゾリン側鎖基含有樹脂5質量部を省略し、その代わりに下記接着処理を施したポリエステル繊維平織物を用いた。厚さ0.44mm、質量510g/m2のポリオレフィン系樹脂ターポリンを得た。このターポリンは接合部の耐熱クリープ性が不良で、一部防炎規格にも適合しないものであった。
<接着処理剤>
アイオノマー樹脂ディスパージョン(商標:ケミパール
S−300:エチレン−メタアクリル酸共重合体の亜鉛塩、固
形分35質量%:三井化学(株)製) 100質量部
イソシアネート系架橋剤(商標:アクアネートAQ10
0:固形分100質量%:日本ポリウレタン工業(株)製) 5質量部
【0055】
比較例16
実施例8と同様にしてターポリンを製造した。但し、実施例8のポリオレフィン系樹脂層の組成において、オキサゾリン側鎖基含有樹脂5質量部を省略し、比較例15に記載の接着処理ポリエステル繊維平織物を用いた。厚さ0.44mm、質量510g/m2のポリオレフィン系樹脂ターポリンを得た。このターポリンは接合部の耐熱クリープ性が不良であり、一部防炎規格にも適合しないものであった。
【0056】
比較例17
実施例1と同様にしてターポリンを製造した。但し、実施例1のポリオレフィン系樹脂層の組成において、オキサゾリン側鎖基含有樹脂5質量部を省略し、下記接着処理を施したポリエステル繊維平織物を用いた。厚さ0.44mm、質量510g/m2のポリオレフィン系樹脂ターポリンを得た。このターポリンは接合部の耐熱クリープ性が不良であり、一部防炎規格にも適合しないものであった。
<接着処理剤>
アイオノマー樹脂ディスパージョン(商標:ケミパールS−
300:エチレン−メタアクリル酸共重合体の亜鉛塩、固形分35
質量%:三井化学(株)製) 100質量部
カルボジイミド系架橋剤(商標:カルボジライトV−02、
固形分40重量%、日清紡(株)) 10質量部
【0057】
比較例18
実施例8と同様にしてターポリンを製造した。但し、実施例8のポリオレフィン系樹脂層の組成において、オキサゾリン側鎖基含有樹脂5質量部を省略し、比較例17に記載の接着処理ずみポリエステル繊維平織物を用いた。厚さ0.44mm、質量510g/m2のポリオレフィン系樹脂ターポリンを得た。このターポリンは接合部の耐熱クリープ性が不良であり、一部防炎規格にも適合しないものであった。
【0058】
比較例19
実施例1と同様にしてターポリンを製造した。但し、実施例1のポリオレフィン系樹脂層の配合において、オキサゾリン側鎖基含有樹脂5質量部を省略し、実施例10に記載の接着処理ポリエステル繊維平織物を用いた。厚さ0.44mm、質量510g/m2のポリオレフィン系樹脂ターポリンを得た。このターポリンは接合部の耐熱クリープ性が不良であって、一部防炎規格にも適合しないものであった。
【0059】
比較例20
実施例8と同様にしてターポリンを製造した。但し、実施例8のポリオレフィン系樹脂層の組成において、オキサゾリン側鎖基含有樹脂5質量部を省略し、実施例10に記載の接着処理ポリエステル繊維平織物を用いた。厚さ0.44mm、質量510g/m2のポリオレフィン系樹脂ターポリンを得た。このターポリンは接合部の耐熱クリープ性が不良であり、一部防炎規格にも適合しないものであった。
【0060】
実施例11
実施例8のターポリンの片表面上に下記組成からなる防汚層を形成した。すなわち、実施例8のターポリンの表面ポリオレフィン系樹脂層の表面に、下記配合1に示すプライマー層用処理液をグラビヤコーターで15g/m2の塗布量で塗布し、100℃で1分間乾燥後冷却して、1.5g/m2のプライマー層を形成し、次にこのプライマー層上に下記配合2に示す組成の接着・保護層用処理液をグラビヤコーターで15g/m2の塗布量で塗布し、100℃で1分間乾燥後冷却して、1.5g/m2の接着・保護層を形成し、次にこの接着・保護層上に、下記配合3に示す組成の光触媒物質含有層形成用塗布液をグラビヤコーターで15g/m2の塗布量で塗布し、100℃で1分間乾燥後冷却して、1.5g/m2の光触媒物質による防汚層を形成した。
<配合1>プライマー層処理液組成
スチレン系共重合体樹脂(商標:ハイブラー7125
(HVS−3):スチレン−水素添加ビニルイソプレン−スチレン
共重合樹脂:MFR 6.0g/10min/230℃:スチレン
含有量20質量%:(株)クラレ) 10質量部
トルエン−メチルエチルケトン(50/50質量比)
溶液 100質量部
<配合2>接着・保護層処理液組成
シリコン含有量3mol%のアクリルシリコン樹脂を8
質量%(固形分)含有するエタノール−酢 酸エチル
(50/50質量比)溶液 100質量部
ポリシロキサンとしてメチルシリケートMS51(コ
ルコート(株))の20%エタノール溶液 8質量部
シランカップリング剤としてγ−グリシドキシプロピ
ルトリメトキシシラン 1質量部
<配合3>光触媒防汚層処理液組成
酸化チタン含有量10質量%に相当する硝酸酸性酸化
チタンゾルを分散させた水−エタノール(50/50
質量比)溶液 50質量部
酸化珪素含有量10重量%に相当する硝酸酸性シリカ
ゾルを分散させた水−エタノール(50/50質量比)
溶液 50質量部
【0061】
実施例12
実施例8のターポリンの表裏両面上に下記組成からなるアクリル樹脂層を形成した。表裏両面のうちの1面は防汚層であり、他の1面はラップ接合用裏面層であった。まずポリオレフィン系樹脂層の両面に、プライマー層用処理液(実施例11の配合1と同一)をグラビヤコーターで各々15g/m2の塗布量で塗布し、100℃で1分間乾燥後冷却して、1.5g/m2のプライマー層を形成し、次にこの表裏プライマー層上にアクリル系樹脂として下記配合4の樹脂組成物の溶剤希釈液を、グラビヤコーターを用いて、塗布量25g/m2で塗布し、120℃で1分間乾燥後冷却し、表裏各々5g/m2のアクリル系樹脂による防汚層及びラップ接合用裏面層を形成した。
<配合4> アクリル系樹脂組成
アクリル系樹脂(三菱レイヨン(株)製、商標:アクリプレン ペレット
HBS001) 20質量部
高分子型紫外線吸収剤(一方社油脂工業(株)製、品番:UCI−635
L、〔2−ヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフ
ェノン〕)とメタクリル酸メチルとの50wt%:50wt%共重合体樹
脂 1質量部
【0062】
実施例13
実施例8に記載のターポリンの片表面上に、下記組成からなる防汚層を形成した。すなわちポリオレフィン系樹脂層の両面に、プライマー層用処理液(実施例11の配合1に同じ)をグラビヤコーターで15g/m2の塗布量で塗布し、100℃で1分間乾燥後冷却して、各々1.5g/m2の表裏プライマー層を形成し、次に表面プライマー層の表面上にフッ素系樹脂(ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合体樹脂)として下記配合5の樹脂組成物の溶剤希釈液を、グラビヤコーターを用いて、塗布量25g/m2で塗布し、120℃で1分間乾燥後冷却し、5g/m2のフッ素系樹脂による防汚層を形成し、さらに裏面ポリオレフィン樹脂層上には配合4のアクリル系樹脂組成物の溶剤希釈液を、グラビヤコーターを用いて、塗布量25g/m2で塗布し、120℃で1分間乾燥後冷却し、3g/m2のアクリル系樹脂による裏面処理層を形成した。
<配合5> フッ素系樹脂組成
ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合体樹脂(エルフ
・アトケム・ジャパン(株)製、商標:カイナー7201) 20質量部
希釈溶剤(メチルエチルケトン) 80質量部
【0063】
実施例14
実施例8に記載のターポリンの片表面上に、下記組成からなる防汚層を形成した。すなわちポリオレフィン系樹脂層の両面に、プライマー層用処理液(実施例11の配合1に同じ)をグラビヤコーターで15g/m2の塗布量で塗布し、100℃で1分間乾燥後冷却して、各々1.5g/m2の表裏プライマー層を形成し、次に表面プライマー層上に、シリカ微粒子を25質量%含有する、フッ素系樹脂とアクリル樹脂とのブレンド物(フッ素系樹脂:アクリル系樹脂比は3:1)として下記配合6の樹脂組成物の溶剤希釈液を、グラビヤコーターを用いて、塗布量25g/m2で塗布し、120℃で1分間乾燥後冷却し、5g/m2のシリカ微粒子を含有する防汚層を形成し、さらに裏面ポリオレフィン系樹脂層上には前記配合4のアクリル系樹脂組成物の溶剤希釈液を、グラビヤコーターを用いて、塗布量25g/m2で塗布し、120℃で1分間乾燥後冷却し、3g/m2のアクリル系樹脂による裏面処理層を形成した。
<配合6> シリカ微粒子を含有するフッ素系樹脂とアクリル系樹脂のブレンド組成
アクリル系樹脂(三菱レイヨン(株)製、商標:アクリプレン ペレット
HBS001) 4質量部
フッ素系樹脂(ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合体
樹脂、(エルフ・アトケム・ジャパン(株)製、商標:カイナー7201) 12質量部
高分子型紫外線吸収剤(一方社油脂工業(株)製、品番:UCI−635L
)〔2−ヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノ
ン〕とメタクリル酸メチルとの50wt%:50wt%共重合体樹脂 1質量部
シリカ微粒子(湿式法非晶質シリカ、日本シリカ工業(株)製、商標:ニッ
プシールE−220、平均粒子径2μm、BET比表面積130m2/g) 4質量部
希釈溶剤(トルエン−メチルエチルケトン 50/50質量比) 80質量部
【0064】
実施例15
実施例8に記載のターポリンの片表面上に下記組成からなる防汚層を設けた。すなわちポリオレフィン系樹脂層の表裏両面に、プライマー層用処理液(実施例11の配合1に同じ)をグラビヤコーターで15g/m2の塗布量で塗布し、100℃で1分間乾燥後冷却して、各々1.5g/m2の表裏プライマー層を形成し、次に表面プライマー層上に、ポリビニリデンフルオライド(PVdF)樹脂/アクリル系樹脂構成の多層フィルム(呉羽化学(株)製、品番:KFCフィルムST−50Y、厚さ50μm)を160℃で熱ラミネートし、フッ素系樹脂層を最外層に有する50g/m2のフィルム防汚層を形成し、さらに裏面ポリオレフィン系樹脂層には前記配合4と同一のアクリル系樹脂組成物の溶剤希釈液を、グラビヤコーターを用いて、塗布量25g/m2で塗布し、120℃で1分間乾燥後冷却し、3g/m2のアクリル系樹脂による裏面処理層を形成した。
【0065】
【表4】

【0066】
【表5】

【0067】
【表6】

【0068】
【表7】

【0069】
【表8】

【0070】
表4〜7の評価結果から、ハロゲン非含有難燃付与剤(好ましくは特定の塩基性ヒンダードアミン系化合物)を含むポリオレフィン系樹脂組成中に環状イミノエーテル側鎖基含有樹脂を特定量配合して得たポリオレフィン系樹脂フィルムを繊維性基布に積層して得られたターポリン(実施例1〜10)は、ポリ塩化ビニル樹脂に匹敵する防炎性を有しながら、耐熱クリープ性に優れていること、またその高周波融着加工が容易であることが確認された。また表8の評価結果から、ターポリンの表面に光触媒物質を含有する防汚層、またはアクリル系樹脂、アクリル−シリコン樹脂、及びフッ素系樹脂などによる防汚層、またはこれらにシリカ微粒子を含む防汚層を形成すること(実施例11〜15)によりテント膜構造物の美観を維持可能であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明によって得られるポリオレフィン系樹脂ターポリンは、塩化ビニル樹脂製ターポリン並みの防炎性を塩素・臭素非含有設計で可能とし、しかも従来困難とされていたポリオレフィン系樹脂ターポリンの耐熱クリープ性を格段に向上させ、さらに高周波融着性にも優れているので、塩化ビニル樹脂製ターポリンと同様の取り扱いが可能である。また本発明のポリオレフィン系樹脂ターポリンの最外層に光触媒物質を含有する防汚層、またはアクリル系樹脂、アクリル−シリコン樹脂、及びフッ素系樹脂などによる防汚層、またはこれらにシリカ微粒子を含む防汚層を設けることによってテント膜構造物の美観を維持することが可能である。
従って、本発明のポリオレフィン系樹脂ターポリンは、大型テント(パビリオン)、テント倉庫、日除けテント、建築養生シート、及び内照式サイン看板などの用途に塩ビ代替として用いることが可能であって、火災時に高い防炎性を示し、かつ燃えても塩素・臭素化水素ガス、その他有毒物質を排出することがなく、また可塑剤などの含有も無いため、その廃棄物処理も塩化ビニル樹脂製品に比較して容易である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維性基布及び、その表裏両面に積層されたポリオレフィン系樹脂層を含む膜材であって、
前記ポリオレフィン系樹脂層が、(1)樹脂成分と、(2)ハロゲン非含有難燃付与剤成分と、(3)耐熱クリープ性向上成分との混練物を含み、
前記樹脂成分(1)が、その主樹脂要素(a)として、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、及びエチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体から選ばれた1種以上のエチレン系共重合体樹脂を含み、
前記耐熱クリープ性向上成分(3)が、下記式(I):
【化1】

〔但し、式(I)において、R1及びR2は、それぞれ、互に独立して、水素原子、又は18個の炭素原子を含む不活性炭化水素基を表し、nは1〜5の正の整数を表す〕
により表される環状イミノエーテル側鎖基を有する少なくとも1種の重合体を含み、前記耐熱クリープ性向上成分(3)の含有量が、前記樹脂成分(1)100質量部に対し、0.5〜30質量部の範囲内にある、ことを特徴とする、耐熱クリープ性に優れた難燃ポリオレフィン系樹脂ターポリン。
【請求項2】
前記樹脂成分(1)が、ブレンド樹脂要素(b)として、ポリエチレン樹脂、エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂、軟質ポリプロピレン樹脂から選ばれた1種以上をさらに含む、請求項1に記載の耐熱クリープ性に優れた難燃ポリオレフィン系樹脂ターポリン。
【請求項3】
前記樹脂成分(1)が、追加ブレンド樹脂要素(c)として、A−B−A型スチレンブロック共重合樹脂(但し、Aはスチレン重合体ブロックを表し、Bはブタジエン重合体ブロック、イソプレン重合体ブロック、もしくはビニルイソプレン重合体ブロックを表す。)、A−B型スチレンブロック共重合樹脂(A及びBは、上記と同義である。)、スチレンランダム共重合樹脂、及び前記スチレン系共重合樹脂の水素添加樹脂から選ばれた1種以上を含む、請求項1又は2に記載の耐熱クリープ性に優れた難燃ポリオレフィン系樹脂ターポリン。
【請求項4】
前記樹脂成分(1)に含まれる前記主樹脂要素(a)に含まれる酢酸ビニル成分、および/または(メタ)アクリル酸(エステル)成分の合計質量が、前記ポリオレフィン系樹脂層の合計質量(但し前記ハロゲン非含有難燃付与剤成分を除く)に対して、5〜30質量%である、請求項1〜3の何れか1項に記載の耐熱クリープ性に優れた難燃ポリオレフィン系樹脂ターポリン。
【請求項5】
前記ポリオレフィン系樹脂層と前記繊維性基布との積層界面において、前記耐熱クリープ性向上成分(3)中の環状イミノエーテル側鎖基の開環のよる架橋構造が形成されている、請求項1〜4の何れか1項に記載の耐熱クリープ性に優れた難燃ポリオレフィン系樹脂ターポリン。
【請求項6】
前記環状イミノエーテル側鎖基含有樹脂が、オキサゾリン基含有共重合樹脂である、請求項1〜5の何れか1項に記載の耐熱クリープ性に優れた難燃ポリオレフィン系樹脂ターポリン。
【請求項7】
前記ハロゲン非含有難燃付与剤成分(2)が、少なくとも1種の塩基性ヒンダードアミン系化合物を含み、この塩基性ヒンダードアミン系化合物を下記式(II):
【化2】

〔但し、式(II)中、R3、R4、R5及びR6は、それぞれ互に独立して、a).水素原子、b).炭素原子数1〜20の直鎖又は分枝アルキル基、c). -O- 、 -S- 、 -SO- 、 -SO2-、 -CO- 、 -COO- 、 -OCO- 、 -CONR- 、 -NRCO- 及び -NR- から選ばれた1個以上を含む、炭素原子数1〜20のアルキル基、d).炭素原子数3〜20のアルケニル基、e).炭素原子数6〜10の未置換アリール基、f).炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数5〜12のシクロアルキル基、及び炭素原子数7〜15のフェニルアルキル基から選択された1〜3個の置換基を有するアリール基を表し、R7 は炭素原子数2〜18のアルキル基、または炭素原子数5〜12のシクロアルキル基を表す〕
により表されるヒンダードアミン構造を有する、請求項1〜6の何れか1項に記載の耐熱クリープ性に優れた難燃ポリオレフィン系樹脂ターポリン。
【請求項8】
前記表裏両面ポリオレフィン系樹脂層の少なくとも1面上に、酸化チタン(TiO2)、過酸化チタン(ペルオキソチタン酸)、酸化亜鉛(ZnO)、及び酸化錫(SnO2)から選ばれた1種以上の光触媒物質を含有する防汚層が形成されている、請求項1〜7の何れか1項に記載の耐熱クリープ性に優れた難燃ポリオレフィン系樹脂ターポリン。
【請求項9】
前記表裏両面ポリオレフィン系樹脂層の少なくとも1面上に、アクリル系樹脂、アクリル−シリコン樹脂、及びフッ素系樹脂から選ばれた1種以上の防汚樹脂、または前記防汚樹脂の1種以上とシリカ微粒子とを含む混合物からなる防汚層が設けられている、請求項1〜7の何れか1項に記載の耐熱クリープ性に優れた難燃ポリオレフィン系樹脂ターポリン。

【公開番号】特開2006−44155(P2006−44155A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−231136(P2004−231136)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【出願人】(000239862)平岡織染株式会社 (81)
【Fターム(参考)】