説明

耐熱フィルタおよび耐熱フィルタの製造方法

【課題】耐熱用シリコーン樹脂を用いて製造作業効率を向上できる耐熱フィルタおよび耐熱フィルタの製造方法を提供する。
【解決手段】フィルタパック3の第1端部11とフィルタ枠2の間に配置される第1シール層4と、フィルタパック3の第1端部11とは反対側の第2端部12とフィルタ枠2の間に配置される第2シール層5を備え、第1シール層4と第2シール層5は、耐熱シリコーン樹脂のシール剤9を予め塗布してあるシート状の基材8と、基材8とフィルタ枠2の間に配置されるシート状の耐熱用の緩衝材10により構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば乾燥機等の循環空気清浄用や、焼却炉の排ガス処理用等の高温域での使用ができる耐熱フィルタおよび耐熱フィルタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常のHEPAフィルタを製造する際には、2液性のウレタン樹脂シール剤を上下枠に流して、フィルタパックをその上下枠内のシール剤に浸漬して乾燥固化する。しかし、耐熱フィルタを製造する場合には、製造時に耐熱性のシール材を配置する必要があることから、ウレタン樹脂シール剤に代えてシリコーン樹脂を、作業者が手作業でフィルタパックの端部に塗り付けてから、フィルタパックをフィルタ枠に枠組みを行う場合がある。
さらに、シリコーン樹脂を用いずに無機系接着剤と、高密度シート状シール材と、低密度シート状クッション材をフィルタパックの端部に配置した構造が提案されている。この種の耐熱フィルタは特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4283705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、フィルタパックを仮組みしたその一方上下枠内にウレタン樹脂シール剤を流し込み、次に反転して他方上下枠内にウレタン樹脂シール剤を流し込み、フィルタパックの端部を浸漬して乾燥固化する方法では、シール剤の耐熱性がないため使用できない問題がある。
また、シリコーン樹脂を用いてフィルタパックをフィルタ枠に枠組みを行う方法では、150℃耐熱フィルタでは作業者が二液性シリコーン樹脂シール剤を仮組みしたその一方上下枠内に流し込み、次に反転して他方上下枠内に二液性シリコーン樹脂シール剤を流し込みフィルタパックの端部を浸漬して乾燥固化する方法で、シール作業性も良くシール剤の塗りむらも特に問題はない。
ところが250℃耐熱フィルタでは作業者が一液性シリコーン樹脂をフィルタパックの端部に対して刷毛を用いて手作業により塗り付けるのであるが、耐熱性を持たせるためにシリコーン樹脂の粘性を高くしてあるので、フィルタの組み立て製造現場において手作業でシリコーン樹脂を塗り付ける作業には時間がかかり、現場での作業性が非常に悪い。しかも、シリコーン樹脂を塗り付ける作業を作業者が手作業で行うので、塗り付けるシリコーン樹脂量が多くなり易い。もし、シリコーン樹脂の使用量を減らそうとすると、シリコーン樹脂の塗りむらが生じることから耐熱フィルタにおいて空気のリーク不良が生じる問題がある。
【0005】
さらに、シリコーン樹脂を用いずに無機系接着剤と、高密度シート状シール材と、低密度シート状クッション材をフィルタパックの端部に配置する方法では、作業者がフィルタパックのジグザグ状の端面に対して手作業で無機系接着剤を塗布して、この無機系接着剤を手作業で塗布した後であって無機系接着剤が乾く前に、高密度シート状シール材と、低密度シート状クッション材を順番に積層する必要があるので、フィルタの製造時の手作業が面倒であり作業性が悪い。
そこで、本発明は、耐熱用シリコーン樹脂を用いて製造作業効率を向上できる耐熱フィルタおよび耐熱フィルタの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の耐熱フィルタは、折り畳まれたろ紙と、前記ろ紙の折り畳み空間内に配置されたセパレータとから構成されるフィルタパックと、前記フィルタパックの周囲部分を保持するフィルタ枠を有する耐熱フィルタであって、前記フィルタパックの第1端部と前記フィルタ枠の間に配置される第1シール層と、前記フィルタパックの前記第1端部とは反対側の第2端部と前記フィルタ枠の間に配置される第2シール層を備え、前記第1シール層と前記第2シール層は、耐熱シリコーン樹脂のシール剤を予め塗布してあるシート状の基材と、前記基材と前記フィルタ枠の間に配置されるシート状の耐熱用の緩衝材により構成されていることを特徴とする。
上記構成によれば、耐熱用シリコーン樹脂を用いて製造作業効率を向上できる。すなわち、耐熱フィルタを組み立てて製造する際に、粘性を上げてある耐熱シリコーン樹脂を基材に対して予め塗布してあるので、耐熱フィルタの製造現場においてフィルタ耐熱シリコーン樹脂を基材に塗り付ける時間のかかる面倒な手作業が不要となるので、耐熱フィルタを製造する際の作業効率が向上する。
【0007】
好ましくは、前記基材は、前記フィルタパックの前記ろ紙と同じ材質のろ紙により作られていることを特徴とする。
上記構成によれば、使用する材料の種類を統一できるので、コストダウンが図れる。
【0008】
好ましくは、前記耐熱用の緩衝材は、耐熱用のガラス繊維シートであることを特徴とする。
上記構成によれば、ガラス繊維シートを基材の上に配置するだけで、フィルタパックの一端部と他端部の耐熱性を保持でき、しかもフィルタ枠が、雰囲気温度により膨張あるいは収縮しても、この緩衝材がその膨張あるいは収縮に追従することで、フィルタパックとフィルタ枠との間のシール性を保持することができる。
【0009】
本発明の耐熱フィルタの製造方法は、折り畳まれたろ紙と、前記ろ紙の折り畳み空間内に配置されたセパレータとから構成されるフィルタパックと、前記フィルタパックの4つの周囲部分を保持するフィルタ枠を有する耐熱フィルタの製造方法であって、前記フィルタパックの第1端部と前記フィルタ枠の間に、耐熱シリコーン樹脂のシール剤を予め塗布してあるシート状の基材と、前記基材と前記フィルタ枠の間に配置されるシート状の耐熱用の緩衝材を配置することで第1シール層を設定し、前記フィルタパックの前記第1端部とは反対側の第2端部と前記フィルタ枠の間に、耐熱シリコーン樹脂のシール剤を予め塗布してあるシート状の基材と、前記基材と前記フィルタ枠の間に配置されるシート状の耐熱用の緩衝材を配置することで第2シール層を設定することを特徴とする。
上記構成によれば、耐熱用シリコーン樹脂を用いて製造作業効率を向上できる。すなわち、耐熱フィルタを組み立てて製造する際に、粘性を上げてある耐熱シリコーン樹脂を基材に対して予め塗布してあるので、耐熱フィルタの製造現場においてフィルタ耐熱シリコーン樹脂を基材に塗り付ける時間のかかる面倒な手作業が不要となるので、耐熱フィルタを製造する際の作業効率が向上する。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、耐熱用シリコーン樹脂を用いて製造作業効率を向上できる耐熱フィルタおよび耐熱フィルタの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の耐熱フィルタの好ましい実施形態を示す斜視図。
【図2】図1に示すフィルタパックと第1シール層と第2シール層の構成例を示す分解斜視図。
【図3】図1に示す耐熱フィルタの製造方法を説明する図。
【図4】図3に続いて図1に示す耐熱フィルタの製造方法を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。 図1は、本発明の耐熱フィルタの好ましい実施形態を示す斜視図である。
図1に示す耐熱フィルタ1は、高温域で使用できる高温フィルタであり、例えば250℃で使用される耐熱HEPAフィルタである。このHEPAフィルタ(High Efficiency Particulate Air Filter)とは、空気中からゴミ、塵埃などを取り除き、清浄空気にする目的で使用されるフィルタであり、例えば乾燥機等の循環空気清浄用や、焼却炉の排ガス処理用等に使用されるが、この耐熱フィルタ1は、こられの用途に限定されるものではなく、他の高温域の用途で使用できる。
【0013】
図1に示すように、耐熱フィルタ1は、耐熱フィルタ枠2と、耐熱フィルタパック3と、シート状の第1シール層4と、そしてシート状の第2シール層5を有している。耐熱フィルタ枠2は、正方形状あるいは長方形状で、耐熱性を有する例えばアルミニウムやステンレスのような金属製の枠体である。
この耐熱フィルタ枠2は、第1枠板2A、第2枠板2B、第3枠板2C、第4枠板2Dにより構成され、第1枠板2A、第2枠板2B、第3枠板2C、第4枠板2Dは、耐熱フィルタパック3の4つの周囲部分を保持しかつ保護している。第1枠板2A、第2枠板2B、第3枠板2C、第4枠板2Dの厚みは、例えば15mmである。この耐熱フィルタ枠2は、耐熱フィルタパック3を、第1シール層4と第2シール層5を介して気密状態で収容している。
【0014】
図2は、図1に示す耐熱フィルタパック3と第1シール層4と第2シール層5の構成例を示す斜視図である。
図2を参照して、まず耐熱フィルタパック3の構成を説明すると、耐熱フィルタパック3は、シート状のろ紙(耐熱ろ紙ともいう)6と、複数枚の波形セパレータ7により構成されている。ろ紙6は、有機系バインダにより無機質繊維同士を結合して形成された無機質繊維製のろ紙であり、耐熱性を有している。ろ紙6は、ジグザグ状に折り曲げることにより平面部6Aと湾曲した折り曲げ部6Bを有しており、ろ紙6の隣接する平面部6A、6Aの間は、折り畳み空間6Cになっている。この折り畳み空間6Cには、それぞれ波形セパレータ7が配置されている。波形セパレータ7は、例えばアルミニウムやステンレス等の耐熱性の金属箔を波形に折り曲げることにより作られている。
【0015】
図2に示すように、第1シール層4は、耐熱フィルタパック3のろ紙6の第1端部11側に配置され、図1に示すように、第1シール層4は、ろ紙6の第1端部11と第1枠板2Aとの間に配置されて、ろ紙6の第1端部11と第1枠板2Aとの間をシールしている。同様にして、図2に示すように、第2シール層5は、耐熱フィルタパック3のろ紙6の第2端部12側に配置され、図1に示すように、第2シール層5は、ろ紙6の第2端部12と第2枠板2Bとの間に配置されて、ろ紙6の第2端部12と第2枠板2Bとの間をシールしている。
第1シール層4は、シール剤9を予め塗布してあるシート状の基材8と、シート状の耐熱用の緩衝材10とを有している。シート状の基材8とシート状の耐熱用の緩衝材10は、ろ紙6の第1端部11の形状に合わせて長方形状に形成されている。
同様にして、第2シール層5は、シール剤9を予め塗布したシート状の基材8と、シート状の耐熱用の緩衝材10とを有している。シート状の基材8とシート状の耐熱用の緩衝材10は、ろ紙6の第2端部12の形状に合わせて長方形状に形成されている。
このように、シール剤9は、シート状の基材8に対して予め例えばシール剤塗布機を用いて、予め塗布して所定の厚み、例えば好ましくは1.5mmになるように均一に形成されることで用意されている。このシール剤9の厚みの範囲としては、好ましくは略0.5mm〜3mmである。シール剤9の厚みが0.5mmよりも薄いと、リーク不良発生の可能性が大きくなるので好ましくなく、3mmよりも厚いと、シール剤が過剰となり、コストアツプやフィルタ重量増加するから好ましくない。
【0016】
シール剤9として用いられるのは、耐熱用のシリコーン樹脂であり、このシリコーン樹脂の性状はペースト状である。
【0017】
シート状の基材8としては耐熱性のろ紙を採用することができ、シート状の基材8のろ紙の材質は例えば耐熱フィルタパック3のろ紙6と同じ材質のものを用いている。これにより、シート状の基材8と耐熱フィルタパック3のろ紙6は、同じろ紙を用いることができ、使用する材料の種類を統一できるので、コストダウンが図れることになる。基材8の厚みとしては、例えば0.4mmである。
シール剤9は、シート状の基材8の一方の面8Aに対して予め塗布されている。シール剤9の耐熱用シリコーン樹脂は、例えば250℃以上に対して耐熱できるようにするために、粘性を上げてありペースト状になっている。このように、粘性を上げてある耐熱用シリコーン樹脂であるシール剤9が、シート状の基材8の一方の面8Aに対して予め塗布されているもの用意しておく。
【0018】
このように、耐熱フィルタ1を組み立てて製造する際に、粘性を上げてある耐熱シリコーン樹脂であるシール剤9をシート状の基材8に対して予め塗布してあるので、耐熱フィルタ1の製造現場において、耐熱シリコーン樹脂であるシール剤9をシート状の基材8に塗り付ける時間のかかる面倒な手作業が不要となる。これにより、耐熱フィルタを製造する際の作業効率が向上する。
すなわち、耐熱フィルタ1を組み立てて製造する現場において、粘性を上げてある耐熱シリコーン樹脂であるシール剤9をシート状の基材8に対して塗り付ける時間のかかる面倒な手作業が不要となるので、耐熱フィルタ1を製造する際の作業効率が優れ、耐熱用シリコーン樹脂の塗りむらが無くなり、耐熱用シリコーン樹脂の使用量が少なくできるので、耐熱フィルタ1の軽量化が図れる
なお、シール剤9の耐熱用シリコーン樹脂は、耐熱フィルタパック3の第1端部11と第2端部12に対して湿潤することは無い。
【0019】
シート状の基材8の一方の面8Aに塗布されるシール剤9の厚みは、0.5mm〜3mmであり、特に好ましくは1.5mmである。シール剤9の厚みが、0.5mmよりも小さいと、ろ紙6A、6Bの平面バラツキをカバーできずシール不良となり、リーク発生の可能性が大きくなる問題がある。また、セパレータがシール剤に浸らないためフィルタパックを保持できない問題があるので好ましくなく、シール剤6の厚みが、3mmよりも大きいと、必要以上のシール剤を使用することになり、コストアップやフィルタ重量増加となるので好ましくない。
【0020】
耐熱用シリコーン樹脂であるシール剤9としては、例えば信越シリコーン社製シール剤KE−3418を採用することができる。この耐熱用シリコーンは、少なくとも200℃以上の耐熱性と、密閉性を有している。
この耐熱用シリコーン樹脂は、「一液型RTV(Room Temperature Valcanizable)ゴム」であり、液状ゴムで室温流動性を持ち、常温で硬化するためにシール作業が容易にできる。液状ゴムは、流動性を持つポリマーであって、適当な化学処理により三次元網目構造をとり、通常の架橋ゴムと同じような物理的特性を示すものである。なお、ジエン系ゴム (ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、二トリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム )、ウレタン系ゴム等があるが、これらのゴムは、耐熱用シリコーン樹脂に比べて耐熱性が低いので、シール剤9としては好ましくない。
【0021】
耐熱用シリコーン樹脂は、常温硬化型で一液縮合反応型であり、脱オキシムタイプはオキシムガス (メチルエチルケトオキシム MEKO)発生の問題があるので、脱アセトンタイプが超耐熱性を有するので、シール剤9としては最適である。この耐熱用シリコーン樹脂は、容器から押し出すだけで作業ができ、硬化後はゴム弾性体になり、硬化と同時に図2に示す耐熱フィルタパック3の一端部11と他端部12に良く接着する。
耐熱用シリコーン樹脂は、「低分子シロキサン低減品」である。低分子シロキサンとは、反応性のない環状ジメチルポリシロキサンのことで(一般的にはD3〜D10)、揮発性のために、硬化時及び硬化後も大気中に揮散する。低分子シロキサンは、半導体製造で不具合(電気接点障害)を起こすために、耐熱用シリコーン樹脂としては低分子シロキサン低減品が要求される。
【0022】
次に、図2に示すシート状の緩衝材10は、基材8の他方の面8B側に配置される耐熱性のガラス繊維シートである。緩衝材10は、250℃以上でも耐えられる耐熱性を有しており、しかも基材8の他方の面8Bと図1に示す第1枠板2Aの内面の間に配置されている。緩衝材10の厚みとしては、例えば2mmである。
これにより、シート状の緩衝材10は、耐熱フィルタ枠2内の耐熱フィルタパック3の一端部11と他端部12を熱から守り、しかも図1に示す金属製の耐熱フィルタ枠2が、雰囲気温度により膨張あるいは収縮しても、このシート状の緩衝材10がその膨張あるいは収縮に追従することで、耐熱フィルタパック3と耐熱フィルタ枠2との間のシール性を保持することができる。
さらに、熱を受けた金属製の複数枚の波形セパレータ7が、ろ紙6の第1端部11と第2端部12に向かう方向であるZ方向に伸びたとしても、波形セパレータ7の伸びは、このシート状の緩衝材10が吸収できるので、耐熱フィルタパック3の損傷を防ぐことができる。
【0023】
次に、図3と図4を参照して、図1に示す耐熱フィルタ1の製造方法を説明する。図3と図4は、耐熱フィルタ1の製造方法の手順を示す図である。
図3(A)は、耐熱フィルタパック3を製造する工程を示している。
図3(A)において、ろ紙ロール50から長尺でシート状のろ紙6が繰り出されると、このろ紙6がジグザグ状に折り曲げられることにより、ろ紙6には平面部6Aと折り曲げ部6Bが形成される。そして、ろ紙6の隣接する平面部6A、6Aの間の折り畳み空間6C内には、それぞれ波形セパレータ7が、Z方向とは垂直なX方向に沿って挿入して配置されることで、ろ紙6がナイフ44により切断されて、耐熱フィルタパック3が製造される。図3(A)においては、耐熱フィルタパック3のZ方向は、図面垂直方向である。
【0024】
次に、図3(B)は、図3(A)に示した耐熱フィルタパック3を3枚の第2枠板2B、第3枠板2C、そして第4枠板2Dの間に配置された状態を示しており、第1枠板2Aはすでに取り除かれている。
このように耐熱フィルタパック3が、3枚の第2枠板2B、第3枠板2C、そして第4枠板2Dの間に配置されると、ろ紙6はZ方向に配置されており、ろ紙6の第2端部12が第2枠板2Bの内面の上に載せられ、ろ紙6の第1端部11の上には枠板は配置されておらず、ろ紙6の第1端部11は露出している。3枚の第1枠板2B、第3枠板2C、そして第4枠板2Dは、例えばネジを用いて仮組されている。
【0025】
図3(C)では、ろ紙6の第1端部11の上には、第1シール層4が配置される。まず、第1シール層4を構成するシール剤9が予め塗布してあるシート状の基材8を、ろ紙6の第1端部11の上に置くが、シート状の基材8のシール剤9がろ紙6の第1端部11に直接接触するように下向き側に配置される。さらに、基材6の上にはシート状の耐熱用の緩衝材10が重ねて配置される。これにより、第1シール層4がろ紙6の第1端部11の上に配置されることになる。
図4(A)では、第1シール層4の上に、第1枠板2Aが配置されて、この第1枠板2Aは第3枠板2Cと第4枠板2Dの端面に対して例えばネジを用いて本固定されて、耐熱フィルタ1の組み立て体1Rが得られる。
【0026】
次に、図4(B)は、ろ紙6の第2端部12の上に第2シール層5が配置される様子を示している。
この場合には、図4(A)に示す耐熱フィルタ1の組み立て体1Rを上下逆にして置いて、耐熱フィルタパック3の第2端部12側を上にし、第1端部11側を下にする。第2枠板2Bは、第3枠板2Cと第4枠板2Dからいったん取り外して、耐熱フィルタパック3の第2端部12を露出させる。
そして、ろ紙6の第2端部12の上には第1シール層4が配置される。まず、第1シール層4を構成するシール剤9を予め塗布してあるシート状の基材8をろ紙6の第2端部12の上に置くが、シート状の基材8のシール剤9がろ紙6の第2端部12に直接接触するように下向きに配置される。さらに、シート状の基材6の上にはシート状の耐熱用の緩衝材10が重ねて配置される。
その後、図4(C)に示すように、第2シール層5の上には、第2枠板2Bが配置されて、この第2枠板2Bは第3枠板2Cと第4枠板2Dの端面に対して例えばネジを用いて本固定される。
以上のような製造工程を経て、図4(C)と図1に示す耐熱フィルタ1の製造が完了する。
【0027】
従来では、シリコーン樹脂をフィルタパックの端部に塗り付けてから、フィルタパックをフィルタ枠に枠組みを行うので、作業者がシリコーン樹脂をフィルタパックの端部に塗り付けるのが、耐熱性を持たせるためにシリコーン樹脂の粘性が高いことから、シリコーン樹脂の塗り付け作業時間がかかり作業性が悪い。しかも、シリコーン樹脂量が多く、シリコーン樹脂の使用量を減らそうとすると塗りむらが生じてリーク不良が生じる問題がある。
また、従来のように、シリコーン樹脂を用いずに無機系接着剤と、高密度シート状シール材と、低密度シート状クッション材をフィルタパックの端部に配置する方法では、フィルタパックのジグザグ状の端面に対して無機系接着剤をうまく塗布して、そして無機系接着剤を塗布した後に、無機系接着剤が乾く前に、高密度シート状シール材と、低密度シート状クッション材を順番に積層する必要があるので、フィルタの製造時の作業が面倒であり、作業性が悪い。
【0028】
これに対して、本発明の実施形態の耐熱フィルタ1を製造する際には、粘性を上げてある耐熱用シリコーン樹脂であるシール剤9が、シート状の基材8の一方の面8Aに対して予め塗布されているものを用いることにより、耐熱フィルタ1を組み立てて製造する際に、粘性を上げてある耐熱シリコーン樹脂であるシール剤9を基材8に対して予め塗布してあるので、耐熱フィルタ1の製造現場において耐熱シリコーン樹脂であるシール剤9を基材8に塗り付ける時間のかかる面倒な手作業が不要となる。このため、耐熱フィルタを製造する際の作業効率が向上する。
【0029】
ところで、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明は様々な修正と変更が可能であり、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変形が可能である。
図1と図2に示すろ紙6の折り畳み数や波形セパレータ7の枚数は、特に限定されない。シール剤9、基材8、緩衝材10、そして耐熱フィルタ枠2の各厚みは、仕様に応じて任意に選択できる。
【符号の説明】
【0030】
1・・・耐熱フィルタ、2・・・耐熱フィルタ枠(フィルタ枠)、2A・・・第1枠板、2B・・・第2枠板、3・・・耐熱フィルタパック(フィルタパック)、4・・・第1シート層、5・・・第2シート層、6・・・ろ紙、7・・・波形セパレータ、8・・・シート状の基材、9・・・シール剤(耐熱シリコーン樹脂)、10・・・シート状の緩衝材(耐熱用の緩衝材)、11・・・耐熱フィルタパックの第1端部、12・・・耐熱フィルタパックの第2端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り畳まれたろ紙と、前記ろ紙の折り畳み空間内に配置されたセパレータとから構成されるフィルタパックと、前記フィルタパックの周囲部分を保持するフィルタ枠を有する耐熱フィルタであって、
前記フィルタパックの第1端部と前記フィルタ枠の間に配置される第1シール層と、前記フィルタパックの前記第1端部とは反対側の第2端部と前記フィルタ枠の間に配置される第2シール層を備え、
前記第1シール層と前記第2シール層は、耐熱シリコーン樹脂のシール剤を予め塗布してあるシート状の基材と、前記基材と前記フィルタ枠の間に配置されるシート状の耐熱用の緩衝材により構成されていることを特徴とする耐熱フィルタ。
【請求項2】
前記基材は、前記フィルタパックの前記ろ紙と同じ材質のろ紙により作られていることを特徴とする請求項1に記載の耐熱フィルタ。
【請求項3】
前記耐熱用の緩衝材は、耐熱用のガラス繊維シートであることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の耐熱フィルタ。
【請求項4】
折り畳まれたろ紙と、前記ろ紙の折り畳み空間内に配置されたセパレータとから構成されるフィルタパックと、前記フィルタパックの4つの周囲部分を保持するフィルタ枠を有する耐熱フィルタの製造方法であって、
前記フィルタパックの第1端部と前記フィルタ枠の間に、耐熱シリコーン樹脂のシール剤を予め塗布してあるシート状の基材と、前記基材と前記フィルタ枠の間に配置されるシート状の耐熱用の緩衝材を配置することで第1シール層を設定し、
前記フィルタパックの前記第1端部とは反対側の第2端部と前記フィルタ枠の間に、耐熱シリコーン樹脂のシール剤を予め塗布してあるシート状の基材と、前記基材と前記フィルタ枠の間に配置されるシート状の耐熱用の緩衝材を配置することで第2シール層を設定することを特徴とする耐熱フィルタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−91071(P2012−91071A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237874(P2010−237874)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(000232760)日本無機株式会社 (104)
【Fターム(参考)】