説明

耐熱フレキシブル層形成用塗布液及びそれを用いて作製した硬化物

【課題】耐熱性及び耐薬品性等の高い信頼性を有する耐熱フレキシブル層形成用塗布液及びそれを用いて作製したフレキシブルシート等の硬化物を提供する。
【解決手段】耐熱フレキシブル層形成用塗布液であって、Ml+(ORl−m(式中、MはSi、Al、Zr及びTiからなる群から選択されるいずれか1種類の金属元素であり;lはMの価数を表し;Rは炭素数1〜5の炭化水素基、アルコキシアルキル基又はアシル基であり;Rはビニル、アミノ、イミノ、エポキシ、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ、フェニル、メルカプト及びアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種を含む有機基であり;mはOR基の数を表し;l及びmはいずれも整数である。)で表される化合物の加水分解・重縮合物と官能基末端ポリシロキサン化合物を含むものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膜形成液を含む耐熱フレキシブル層形成用塗布液及びそれを用いて作製したフレキシブルシート等の硬化物に関するものであって、特に、電気電子部品に用いられる半導体封止材、絶縁材、接着剤等の様々な分野の構成部材へ応用展開できるものに関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は絶縁性、耐熱性、機械特性等に優れているため、電気電子部品に幅広く利用されている。しかしながら、電気電子部品の幅広い分野への適用により、さらに高度な耐久性が要求されてきている。
例えば、特許文献1には、高耐久性のあるエポキシ樹脂が記載されている。
また、特許文献2では、透明性及び耐熱性の優れるシリコーン樹脂が記載されている。
更に、特許文献3では、シラン材料とエポキシ樹脂のハイブリット化により、高耐久性を有した材料が記載されている。
【特許文献1】特開2005−120357
【特許文献2】特開2004−123936
【特許文献3】特開2004−323619
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記特許文献1においては、耐熱性に関して高温域での熱処理によって着色等の劣化が生じてしまうという問題があった。加えて、150℃以上、特に200℃以上の高温では、エポキシ樹脂の黄変劣化等により、エポキシ樹脂の性能劣化が生じてしまう。
前記特許文献2においては、優れた透明性及び耐熱性を有しているが、出発原料として塩素を含有した材料及び反応中に使用される有機溶剤として環境負荷が高い物質が使用されているため、環境への負荷が高いという問題があった。
前記特許文献3においては、特許文献1と同様に250℃以上、特に300℃以上の高温での熱処理により、エポキシ樹脂成分の劣化により性能劣化を生じてしまうことが懸念されるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記問題点を解決するため、本発明は、皮膜形成液を含んでなる耐熱フレキシブル層形成用塗布液とした。この皮膜形成液には、好ましくは、Ml+(ORl−m(式中、MはSi、Al、Zr及びTiからなる群から選択されるいずれか1種類の金属元素であり;lはMの価数を表し;Rは炭素数1〜5の炭化水素基、アルコキシアルキル基又はアシル基であり;Rはビニル、アミノ、イミノ、エポキシ、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ、フェニル、メルカプト及びアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種を含む有機基であり;mはOR基の数を表し;l及びmはいずれも整数である。)で表される化合物の加水分解・重縮合物と官能基末端ポリシロキサン化合物(末端の官能基がシラノール、エポキシ、カルボキシル及びカルビノール基からなる群から選択される少なくとも1種類を含む有機基)が含まれる。
また、本発明は、この耐熱フレキシブル層形成用塗布液から作製される硬化物及びフレキシブルシート、並びにタック感及び柔軟性に富む半硬化フレキシブルシートとした。
【0005】
(皮膜形成液)
本発明において用いられる皮膜形成液には、式(1)で表される化合物の加水分解・重縮合物と官能基末端ポリシロキサン化合物とを含んでなる皮膜形成液が含まれる。
本発明において、皮膜形成液とは、硬化の際に、有機−無機連結層を形成する有機−無機系化合物とを含む液体を意味し、出発原料として塩素等のハロゲン物質並びに環境に負荷の高いものは使用しない。
この皮膜形成液を用いて作製された硬化物は、有機−無機系皮膜から構成されるため、有機の柔軟性と無機の耐熱性を兼ね備え、更に、シロキサン結合骨格から構成されるので、耐薬品性も有した構造となる。また、出発原料として塩素等のハロゲン物質並びに環境に負荷の高いものを使用しないため、環境への負荷を低減した組成となっている。
皮膜形成液は柔軟性を与える有機基と耐熱性及び耐薬品性を与える無機系の結合骨格を有する。
【0006】
式(1)で表される化合物は、
l+(ORl−m (1)
(式中、MはSi、Al、Zr及びTiからなる群から選択されるいずれか1種の元素であり;lはMの価数を表し;Rは炭素数1〜5の炭化水素基、アルコキシアルキル基又はアシル基であり;Rはビニル、アミノ、イミノ、エポキシ、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ、フェニル、メルカプト及びアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種類を含む有機基であり;mはOR基の数を表し;l及びmはいずれも整数である。)である。
【0007】
上記Ml+(ORl−mで表される化合物のうち、MがSiである化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、β−シアノエチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどが挙げられ、MがAlである化合物としては、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムn−ブトキシド、アルミニウムトリt−ブトシキド、アルミニウムトリエトキシドなどが挙げられ、MがZrである化合物としては、ジルコニウムn−プロポキシド、ジルコニウムn−ブトキシド、ジルコニウムi−ブトキシド、ジルコニウムt−ブトキシド、ジルコニウムジメタクリレートジブトキシドなどが挙げられ、MがTiである化合物としては、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラn−ブトキシド、チタンテトラi−ブトキシド、チタンメタクリレートトリイソプロポキシド、チタンテトラメトキシプロポキシド、チタンテトラn−プロポキシド、チタンテトラエトキシドなどが挙げられる。これらの化合物のうち1種類だけを用いてよいが、二種類以上を混合してもかまわない。
【0008】
式(1)の化合物の加水分解・重縮合反応は、例えば特開2001−214093に記載されているような公知の方法によって行うことができる。
加水分解・重縮合反応を行うために添加する水の量は、式(1)の化合物1モルに対して0.1モル以上が好ましい。
式(1)の化合物を加水分解・縮重合する際には、既知の触媒などを添加して加水分解・縮重合を促進しても良い。この場合、添加する触媒としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸などの有機酸や、硝酸、塩酸、リン酸、硫酸などの無機酸を用いることができる。
上記Ml+(ORl−mの加水分解・重縮合物は、好ましくは液状である。Mは好ましくはSi、Al及びTiであり、より好ましくはSi及びTiである。
【0009】
また、本発明において用いられる皮膜形成液には、官能基末端ポリシロキサン化合物も含まれる。この官能基末端ポリシロキサン化合物は、末端の官能基がシラノール、エポキシ、カルボキシル及びカルビノール基からなる群から選択される少なくとも1種類の有機基であれば、特に限定されるものではない。本発明で使用する官能基末端ポリシロキサン化合物について、また、式(1)で表される化合物の加水分解・重縮合物に対して官能基末端ポリシロキサン化合物を重量比で0.01〜10の割合で混合するのが好ましい。更に、式(1)で表される化合物の加水分解・重縮合物に対して官能基末端ポリシロキサン化合物を重量比で0.2〜2の割合で混合するのが好ましい。
【0010】
末端の官能基がシラノール基のシラノール基末端ポリシロキサン化合物としては、例えば、末端の官能基以外の官能基が1価の炭化水素基からなるシラノール基末端ポリシロキサン化合物及び末端の官能基以外の官能基が1価の炭化水素基からなるコポリマーがあり、好ましくは、シラノール基末端ポリアルキルフェニルシロキサン、シラノール基末端ジアルキルシロキサン−ジアルキルシロキサンコポリマー若しくはシラノール基末端ジアルキルシロキサン−ジフェニルシロキサンコポリマーがあり、特に好ましくは、シラノール基末端ポリメチルフェニルシロキサン、シラノール基末端ポリジフェニルシロキサン、シラノール基末端ジメチルシロキサン−ジフェニルシロキサンコポリマーがある。
末端の官能基がエポキシ基のエポキシ基末端ポリシロキサン化合物としては、例えば、末端の官能基以外の官能基が1価の炭化水素基からなるエポキシ基末端ポリシロキサン化合物及び末端の官能基以外の官能基が1価の炭化水素基からなるコポリマーがあり、好ましくは、エポキシ基末端ポリアルキルフェニルシロキサン、エポキシ基末端ジアルキルシロキサン−ジアルキルシロキサンコポリマー若しくはエポキシ基末端ジアルキルシロキサン−ジフェニルシロキサンコポリマーがあり、特に好ましくは、エポキシ基末端ポリメチルフェニルシロキサン若しくはエポキシ基末端ポリジフェニルシロキサン、エポキシ基末端ジメチルシロキサン−ジフェニルシロキサンコポリマーがある。
末端の官能基がカルボキシル基のカルボキシル基末端ポリシロキサン化合物としては、例えば、末端の官能基以外の官能基が1価の炭化水素基からなるカルボキシル基末端ポリシロキサン化合物及び末端の官能基以外の官能基が1価の炭化水素基からなるコポリマーがあり、好ましくは、カルボキシル基末端ポリアルキルフェニルシロキサン、カルボキシル基末端ジアルキルシロキサン−ジアルキルシロキサンコポリマー若しくはカルボキシル基末端ジアルキルシロキサン−ジフェニルシロキサンコポリマーがあり、特に好ましくは、カルボキシル基末端ポリメチルフェニルシロキサン若しくはカルボキシル基末端ポリジフェニルシロキサン、カルボキシル基末端ジメチルシロキサン−ジフェニルシロキサンコポリマーがある。
末端の官能基がカルビノール基のカルビノール基末端ポリシロキサン化合物としては、例えば、末端の官能基以外の官能基が1価の炭化水素基からなるカルビノール基末端ポリシロキサン化合物及び末端の官能基以外の官能基が1価の炭化水素基からなるコポリマーがあり、好ましくは、カルビノール基末端ポリアルキルフェニルシロキサン、カルビノール基末端ジアルキルシロキサン−ジアルキルシロキサンコポリマー若しくはカルビノール基末端ジアルキルシロキサン−ジフェニルシロキサンコポリマーがあり、特に好ましくは、カルビノール基末端ポリメチルフェニルシロキサン若しくはカルビノール基末端ポリジフェニルシロキサン、カルビノール基末端ジメチルシロキサン−ジフェニルシロキサンコポリマーがある。
【0011】
皮膜形成液の式(1)で表される化合物の加水分解・重縮合物と官能基末端ポリシロキサン化合物は、5℃から150℃の範囲の温度で、式(1)で表される化合物の加水分解・重縮合物に対して官能基末端ポリシロキサン化合物を重量比で0.01〜10の割合で混合するのが好ましい。更に常温から80℃の範囲の温度で、式(1)で表される化合物の加水分解・重縮合物に対して官能基末端ポリシロキサン化合物を重量比で0.2〜2の割合で混合するのがより好ましい。
【0012】
(硬化物及びフレキシブルシート)
上記の塗布液を用いて、塗布方法、乾燥温度や乾燥時間等を変化させると、シート状等の形態の硬化物や封止材や絶縁材等に適した機能性を持つ硬化物、或いは半硬化状態の硬化物が得られる。具体的には以下の通りである。
上記の塗布液を用いて、スクリーン印刷、バーコート等の様々な塗布方法により塗布し、50〜200℃で乾燥することにより耐熱フレキシブルシートを製造することができる。
このフレキシブルシートは、乾燥温度と乾燥時間を変えることによって、タック感を有した半硬化状態で熱可塑性のフレキシブルシートが製造可能であり、更なる熱処理で完全硬化させることによって、タック感の無い熱硬化性のフレキシブルシートとなる。
半硬化フレキシブルシートは形成した基材から容易に剥離可能で、フレキシブルシート単体を取り扱うことができる。また、この半硬化フレキシブルシートは、柔軟性に富んでおり、簡単に3次元形状に加工することができ、その後熱処理することによって、完全硬化させ、付与した形状を維持することができる。そのため、複雑な形状に対しても追従した形状を容易に形成することができる。
また、この半硬化フレキシブルシートを更なる熱処理で完全硬化する過程で、基材同士を接着することも可能であり、接着シートとしても利用ができる。
更には、このフレキシブルシートは塗布及び熱処理の工程のみで製造可能なため、量産性に優れ、また、様々な塗布方法に対応可能であるため、パターニング及びロール化も可能である。
また、基材は特に制限は無く、ガラス、各種樹脂材料等の様々な基材上へ塗布でき、多層化も容易にできる。
本発明の耐熱フレキシブル層形成用塗布液には、無機材料粒子を混入しても流動性を保つことが可能であるため、無機材料粒子を添加してもよい。この無機材料粒子の粒径は、特に限定されるものではないが、数nm〜数十μmとすることが分散性等を考慮すると好ましい。粒子形状は特に限定されるものではない。無機材料粒子は複数の種類を併用することもできる。
また、機能性を有する無機材料粒子を選定することにより、フレキシブルシートに機能性を付与することができる。例えば、熱伝導性のよいダイヤモンド、窒化アルミニウム若しくはボロンカーバイト等の粒子を添加することにより、高熱伝導フレキシブルシートを作製できる。
【0013】
上記塗布液を用いて、ディスペンサ等により塗布することにより、シート形状だけでなく封止材若しくは絶縁材として利用することができる。
もちろん、シート形状で記載したように無機材料粒子を混入しても流動性を保つことが可能であるため、蛍光体の他に無機材料粒子を添加してもよい。この無機材料粒子の粒径は、特に限定されるものではないが、数nm〜数十μmとすることが、分散性等を考慮すると好ましい。粒子形状は特に限定されるものではない。無機材料粒子は複数種類を併用することもできる。
また、機能性を有する無機材料粒子を選定することにより、塗布液の硬化物に機能性付与することができる。例えば、熱伝導性のよいダイヤモンド、窒化アルミニウム若しくはボロンカーバイド等の粒子を添加することにより熱伝導率が高く、絶縁性を示す硬化物を作製できるため、ワイヤボンディング用途やCPUの封止剤としての利用が有用である。
また、透明で耐熱性に優れているため、光半導体分野での封止剤としても利用可能である。
【0014】
本発明の硬化物形成用塗布液の流動性は、前記塗布液及び無機材料粒子との混合比、若しくは、増粘剤等の助剤を加えることにより、適宜調整が可能である。また、有機溶媒を適量加えることでも調整可能である。この際、使用する有機溶剤に関しても、環境に優しいアルコール系溶媒等も選定可であり、環境負荷の面でも対応可能である。
また、本発明の硬化物形成用塗布液の硬化物を300℃で熱処理しても、外観の変化が見られず、また、光透過率に関しても劣化が非常に小さい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に実施例を挙げるが、それらは本発明の説明を目的とするものであって、本発明をこれらの態様に限定することを意図するものではない。
本発明は、皮膜形成液を含んでなる耐熱フレキシブル層形成用塗布液である。この皮膜形成液には、好ましくは、Ml+(ORl−m(式中、MはSi、Al、Zr及びTiからなる群から選択されるいずれか1種類の金属元素であり;lはMの価数を表し;Rは炭素数1〜5の炭化水素基、アルコキシアルキル基又はアシル基であり;Rはビニル、アミノ、イミノ、エポキシ、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ、フェニル、メルカプト及びアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種を含む有機基であり;mはOR基の数を表し;l及びmはいずれも整数である。)で表される化合物の加水分解・重縮合物と官能基末端ポリシロキサン化合物(末端の官能基がシラノール、エポキシ、カルボキシル及びカルビノール基からなる群から選択される少なくとも1種類を含む有機基)が含まれる。
また、本発明は、この耐熱フレキシブル層形成用塗布液から作製される硬化物及びフレキシブルシート、並びにタック感及び柔軟性に富む半硬化フレキシブルシートである。
【0016】
(実施例1)
フェニルトリメトキシシラン10gに水1.82gと酢酸0.3g及びシラノール基末端メチルフェニルポリシロキサン10gを加え、室温で24時間攪拌した。その後、水及び酢酸を除去するため、加熱攪拌した。
このようにして得られた塗布液を用いてアプリケータによりPETフィルム上に耐熱フレキシブルシートを作製し、150℃で1時間熱処理した。そのフレキシブルシートをPETフィルムから剥離して、ガラス上に貼り付け、200℃で1時間硬化させた。このようにして得られたフレキシブルシート付きガラスは、ガラスとフレキシブルシートが強固に接着されており、更に光透過率を測定したところ、可視領域で90%以上の透過率を示していた(図1を参照)。また、このフレキシブルシート付きガラスを300℃で5時間熱処理したところ、フレキシブルシートの外観に変化は見られず、光透過率についても可視領域で未だ90%以上の透過率を示していた。また、硬化物について熱分析(TG/DTA測定)を実施したところ、5%重量損失温度が430℃で、10%重量損失温度が485℃であった(図2を参照)。
【0017】
(実施例2)
メチルトリエトキシシラン16gに水3.6gと酢酸0.6g及びシラノール基末端ポリジメチルシロキサン10gを加え、室温で24時間攪拌した。その後、エバポレータを使用し、水及び酢酸を除去した。
このようにして得られた塗布液を封止剤として、ディスペンサによって発光素子のパッケージ内に塗布し、200℃で1時間加熱処理した。その封止剤は、リフロー工程及び熱衝撃試験後でもクラック及び外観変化が無いものであった。
【0018】
(実施例3)
実施例1と同様の方法で塗布液を作製し、アプリケータによりPETフィルム上に耐熱フレキシブルシートを作製し、150℃で1時間熱処理した。そのフレキシブルシートをPETフィルムから剥離してガラスと金属(SUS304)の間及びガラスとガラスの間に挟み込み200℃で1時間熱処理を施したところ、ガラスと金属及びガラスとガラスが強固に接着されており、300℃で熱処理を施しても接着されていることが確認できた。
【0019】
(実施例4)
実施例2と同様の方法で塗布液を作製し、その塗布液に熱伝導性のよい窒化アルミニウムを30wt%添加した。その塗布液を用いてディスペンサによってワイヤの上へ塗布した。その後、200℃で1時間熱処理し、ワイヤボンディング用途で用いたところ、熱伝導性がよいため、放熱機能が有り、更に絶縁性を有しているため、ワイヤボンディング材として優れた性能を有していることが確認できた。
【0020】
(比較例1)
実施例1と同様にシリコーン樹脂を用いてシリコーン樹脂シートを作製した。そのシリコーン樹脂シートを300℃で1時間熱処理を施した。このシリコーン樹脂シートでは300℃で1時間熱処理するとシートが破損してしまった。また、このシリコーン樹脂について熱分析を実施したところ、5%重量損失温度が394℃であり、10%重量損失温度が415℃であった。
【0021】
(比較例2)
実施例2と同様にエポキシ樹脂を用いて、ディスペンサによって発光素子のパッケージ内に塗布し、150℃で4時間熱処理した。その封止剤はリフロー工程及び熱衝撃試験後では、クラックが発生し、更に変色してしまった。
【0022】
(発明の効果)
本発明の耐熱フレキシブル層形成用塗布液は、好ましくは、Ml+(ORl−m(式中、MはSi、Al、Zr及びTiからなる群から選択されるいずれか1種類の金属元素であり;lはMの価数を表し;Rは炭素数1〜5の炭化水素基、アルコキシアルキル基又はアシル基であり;Rはビニル、アミノ、イミノ、エポキシ、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ、フェニル、メルカプト及びアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種を含む有機基であり;mはOR基の数を表し;l及びmはいずれも整数である。)で表される化合物の加水分解・重縮合物と官能基末端ポリシロキサン化合物(末端の官能基がシラノール、エポキシ、カルボキシル及びカルビノール基からなる群から選択される少なくとも1種類を含む有機基)が含まれ、前記耐熱フレキシブル層形成用塗布液から製造できる耐熱フレキシブルシート及び硬化物は柔軟性を有し、耐熱性及び耐薬品性等の高い信頼性を兼備している。
また、シート形状において熱処理条件によって半硬化フレキシブルシートとすることでタックの付与及び更に柔軟性に富むフレキシブルシートを製造できる。タックを付与することで、基板上に設置若しくは基材で挟み込み、熱処理するだけで接着剤を使用することなく、容易に接着することを可能にした。
また、富んだ柔軟性を有することで3次元形状への容易な加工を可能にした。これらの半硬化蛍光体シートは更なる熱処理を施すことでタックの消失及び3次元形状の保持をすることができる。
更に、本発明のフレキシブルシートは、塗布工程及び熱処理工程で製造でき、高い量産性を有し、例えばフィルム上へ塗布及び熱処理を施すことで、フレキシブルシートのロール化も可能にした。塗布工程においては、様々な塗布方法に対応可能でフレキシブルシートのパターニング、膜厚制御が容易である。
また、予め大面積のフレキシブルシートを作製しておき、そのフレキシブルシートから打ち抜き、切断等の加工により寸法精度良く、所望の形状のフレキシブルシートが量産性高く作製できるという効果も得られた。
また、シート形状に拘わらず、ディスペンサ等により塗布することにより、形状に指定の無い箇所への適用も可能である。例えば、凹形状中への流し込みや平面状への滴下などにより、耐熱フレキシブル層を形成できる。
また、耐熱フレキシブル層形成用塗布液中へ機能性粒子を添加することにより、フレキシブルシート及び硬化物に機能付与することができるため、更に幅広い分野への適用も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1はフレキシブルシートの熱処理による光透過率の変化を示す。
【図2】図2は熱分析(TG/DTA)の評価結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膜形成液を含んでなる耐熱フレキシブル層形成用塗布液。
【請求項2】
皮膜形成液が、
l+(ORl−m
(式中、MはSi、Al、Zr及びTiからなる群から選択されるいずれか1種類の金属元素であり;lはMの価数を表し;Rは炭素数1〜5の炭化水素基、アルコキシアルキル基又はアシル基であり;Rはビニル、アミノ、イミノ、エポキシ、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ、フェニル、メルカプト及びアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種を含む有機基であり;mはOR基の数を表し;l及びmはいずれも整数である。)
で表される化合物の加水分解・重縮合物と、
末端の官能基がシラノール、エポキシ、カルボキシル及びカルビノール基からなる群から選択される少なくとも1種類を含む有機基である、官能基末端ポリシロキサン化合物と、
を含んでなる、請求項1に記載の塗布液。
【請求項3】
請求項1に記載の耐熱フレキシブル層形成用塗布液から作製される硬化物。
【請求項4】
請求項1に記載の耐熱フレキシブル層形成用塗布液から作製されるフレキシブルシート。
【請求項5】
請求項1に記載の耐熱フレキシブル層形成用塗布液から作製されるタック感及び柔軟性に富む半硬化フレキシブルシート。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−91987(P2007−91987A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−286651(P2005−286651)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000150774)株式会社槌屋 (56)
【Fターム(参考)】