説明

耐熱劣化性難燃剤の合成樹脂への使用

【課題】樹脂の難燃剤として使用した場合、耐熱劣化性に優れた水酸化マグネシウム粒子よりなる難燃剤を提供する。
【解決手段】(i)レーザー回折散乱法で測定された平均2次粒子径が2μm以下であり、
(ii)BET法による比表面積が1〜10m/gであり、且つ
(iii)鉄化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、クロム化合物、銅化合物、バナジウム化合物およびニッケル化合物の合計含有量が、金属に換算して0.01重量%以下である、
水酸化マグネシウム粒子よりなることを特徴とする耐熱劣化性難燃剤の合成樹脂への使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の性状を有する水酸化マグネシウム粒子よりなる耐熱劣化性難燃剤の合成樹脂への使用に関する。さらに詳しくは、合成樹脂の加熱成形加工時における熱劣化が殆ど無く、樹脂に対して卓越した耐熱劣化性および難燃性を付与できる特定性状の水酸化マグネシウム粒子よりなる難燃剤の使用に関する。
さらに具体的には、本発明は、難燃剤として水酸化マグネシウム粒子を比較的多量配合した樹脂組成物および成形品において、成形時または使用時に熱に対して樹脂の熱劣化による物理的強度の低下が少なく、また樹脂の熱分解による成形品の白化が殆ど起こらない難燃剤の合成樹脂の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂に対する難燃性の要求は、年々増加し、且つ厳しくなっている。このような難燃化の要求に応えるべく、従来有機ハロゲン化物と三酸化アンチモンとを併用する難燃剤が提案され、巾広く実施されてきた。しかし、この難燃剤は、成形加工時に一部分解してハロゲンガスを発生し、このため加工および成形機を腐食させる、作業者に対し毒性がある、樹脂およびゴムの耐熱性あるいは耐候性に対し悪影響を及ぼす、用済み後の成形品の燃焼時に有害ガスを含む多量の煙を発生する等の種々の問題を有していた。
このため、上記問題を有しない非ハロゲン系難燃剤に対する要求が強まり、例えば水酸化アルミニウム粒子や水酸化マグネシウム粒子等が注目されるようになった。
しかし、水酸化アルミニウムは、約190℃の温度から脱水を開始して成形品に発泡トラブルを生ずるため、成形温度を190℃未満に保持する必要があり、このため適用できる樹脂の種類が限定されるという問題点を有している。
【0003】
一方、水酸化マグネシウム粒子は、脱水開始温度が約340℃であるため、殆どの樹脂に適用できるという利点を有している。さらに、特許文献1では、良く結晶成長させた新しい水酸化マグネシウム粒子の合成法が開発されたため、これを使用して良好な成形品を得ることができるようになった。
すなわち、前記特許文献1には、従来の水酸化マグネシウム粒子に比べて、構造上の歪が小さく、粒子の二次凝集が少なく、また水分子および空気の残留が小さい特定性状の水酸化マグネシウム粒子が提案されている。この公報には、この水酸化マグネシウム粒子は、ポリオレフィン等の樹脂との親和性がよく、成形時にシルバー・ストリークの発生がなく、外観の優れた成形品を得ることができること、およびUL規格94VEにおいて、V−0を満足する難燃性のポリプロピレン樹脂成形品を得ることができること等が記載されている。
【特許文献1】特開昭52−115799号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記水酸化マグネシウム粒子は、樹脂に配合して難燃性成形品として適した性質を有しているが、最近の要求特性の増大と共に、なお解決すべき問題があることが判明してきた。
すなわち、合成樹脂に水酸化マグネシウム粒子を配合し、UL−94難燃規格で、厚さ1/8インチから1/16インチでV−0の基準に合格するためには、樹脂100重量部に対し、水酸化マグネシウム粒子を約150〜250重量部配合する必要がある。このような比較的多量の水酸化マグネシウム粒子の配合は、成形時の加熱や使用時の加熱による成形品の劣化を促進し、成形品本来の物性、殊にアイゾット衝撃強度、伸び、引張強度等を低減させるという問題を生ずることになる。
【0005】
本発明は、特定粒子性状からなる新しい水酸化マグネシウム粒子の使用によって上記問題を解決することおよびその水酸化マグネシウム粒子よりなる新しい優れた耐熱劣化性難燃剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記目的を達成するために、水酸化マグネシウム粒子の純度および物性について研究を重ねた。
その結果、水酸化マグネシウム粒子中の不純物としての特定金属化合物の量、平均2次粒子径の値および比表面積の値が、相互に樹脂の熱劣化性に影響を与えていることが判明し、これらを或る特定値とすることにより優れた耐熱劣化性を有する難燃剤となりうることを見出し、本発明に到達した。
【0006】
水酸化マグネシウム粒子は、その製造過程において、主としてその原料中に種々の不純物を含有しており、その不純物が水酸化マグネシウム粒子中に固溶体あるいは夾雑物として混入している。
本発明者らの研究によれば、種々の不純物中、鉄化合物およびマンガン化合物が微量存在すると、それらが夾雑物としてばかりでなく、固溶体として含有されている場合でも、樹脂の熱劣化に影響を与えることが見出された。
かくして本発明者らの研究によれば、不純物としての鉄化合物およびマンガン化合物を主とする特定金属の化合物を、一定量以下含む高純度の水酸化マグネシウム粒子であって、かつ平均2次粒子径の値を2μm以下とし(すなわち、このことは殆どの粒子は2次凝集していない1次粒子であることを意味する)、さらに、比表面積の値を1〜10m/gとすることによって、熱劣化による物性低下の少ない樹脂組成物および成形品が得られることが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、前記本発明の目的は、
(i)レーザー回折散乱法で測定された平均2次粒子径が2μm以下であり、
(ii)BET法による比表面積が1〜10m/gであり、且つ
(iii)鉄化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、クロム化合物、銅化合物、バナジウム化合物およびニッケル化合物の合計含有量が、金属に換算して0.01重量%以下である、水酸化マグネシウム粒子よりなることを特徴とする耐熱劣化性難燃剤の合成樹脂への使用により達成される。
【0008】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0009】
本発明における水酸化マグネシウム粒子は、レーザー回折散乱法で測定された平均2次粒子径が2μm以下、好ましくは0.4〜1.0μmであり、2次凝集が殆どないかあるいは少ないものである。また、水酸化マグネシウム粒子のBET法による比表面積は1〜10m/gである。
本発明の水酸化マグネシウム粒子は、鉄化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、クロム化合物、銅化合物、バナジウム化合物およびニッケル化合物の金属として(Fe+Mn+Co+Cr+Cu+V+Ni)合計含有量が0.01重量%以下である。
【0010】
水酸化マグネシウム粒子中の鉄化合物およびマンガン化合物などの前記金属化合物の含有量が多い程、配合した樹脂の熱安定性を著しく低下させる原因となる。しかし、鉄化合物およびマンガン化合物などの前記金属化合物の合計量が前記範囲を満足するのみで樹脂の熱安定性が優れ、樹脂の物性低下が損なわれないというわけではなく、その上に、前記平均2次粒子径および比表面積がそれぞれ前記範囲を満足することが必要である。粒子の平均2次粒子径が大きくなる程、樹脂との接触面が減り熱安定性は良くなるが、機械的強度が低下したり、外観不良という問題が生じてくる。
前記したように、水酸化マグネシウム粒子は、(i)平均2次粒子径、(ii)比表面積および(iii)鉄化合物およびマンガン化合物などの前記金属化合物の合計量が、前記範囲であれば、樹脂との相溶性、分散性、成形および加工性、成形品の外観、機械的強度および難燃性等の諸特性を満足する樹脂組成物が得られる。
【0011】
本発明における前記水酸化マグネシウム粒子は、前記(i)、(ii)および(iii)の要件を満足する限り、その調製法は特に制限を受けない。
前記(i)の平均2次粒径および(ii)の比表面積を満足する水酸化マグネシウム粒子は、例えば特開昭52−115799号公報に記載された方法および条件を基本的に採用することにより製造することができる。すなわち、塩化マグネシウムまたは硝酸マグネシウムと水酸化アルカリ金属、アンモニア、酸化マグネシウム等のアルカリ物質とを原料とし、これらを水性媒体中、加圧条件下(好ましくは5〜30kg/cm)加熱することによって製造することができる。その際、原料中の不純物、殊に鉄化合物およびマンガン化合物(さらに必要ならば他の前記金属化合物)を含まないかあるいは極めて含有量の少ないものを選択することによって、前記(iii)の要件を満足する水酸化マグネシウム粒子を得ることができる。
必要ならば、原料としての塩化マグネシウムまたは硝酸マグネシウムおよび前記アルカリ性物質をその中の鉄化合物およびマンガン化合物などの前記金属化合物の含有量を低下させるために精製処理を施すことは好ましいことである。
【0012】
本発明の水酸化マグネシウム粒子は、耐熱劣化性の難燃剤としてそのまま樹脂に配合することができるが、表面処理剤で処理して使用することができる。かかる表面処理剤としては、例えば高級脂肪酸、アニオン系界面活性剤、リン酸エステル、カップリング剤(シラン系、チタネート系、アルミニウム系)および多価アルコールと脂肪酸のエステル類からなる群から選ばれた少なくとも1種が挙げられる。
【0013】
表面処理剤として好ましく用いられるものを例示すれば次のとおりである。ステアリン酸、エルカ酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ベヘニン酸等の炭素数10以上の高級脂肪酸類;前記高級脂肪酸のアルカリ金属塩;ステアリルアルコール、オレイルコール等の高級アルコールの硫酸エステル塩;ポリエチレングリコールエーテルの硫酸エステル塩、アミド結合硫酸エステル塩、エステル結合硫酸エステル塩、エステル結合スルホネート、アミド結合スルホン酸塩、エーテル結合スルホン酸塩、エーテル結合アルキルアリールスルホン酸塩、エステル結合アルキルアリールスルホン酸塩、アミド結合アルキルアリールスルホン酸塩等のアニオン系界面活性剤類;オルトリン酸とオレイルアルコール、ステアリルアルコール等のモノまたはジエステルまたは両者の混合物であって、それらの酸型またはアルカリ金属塩またはアミン塩等のリン酸エステル類;ビニルエトキシシラン、ビニル−トリス(2−メトキシ−エトキシ)シラン、ガンマーメタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ガンマーアミノプロピルトリメトキシシラン、ベーター(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ガンマーグリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ガンマーメルカプトプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤類;イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロフォスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルホニルチタネート等のチタネート系カップリング剤類;アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等のアルミニウム系カップリング剤類;グリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレエート等の多価アルコールと脂肪酸のエステル類。
【0014】
前記した表面処理剤を使用して、水酸化マグネシウム粒子の表面コーティング処理をするには、それ自体公知の湿式または乾式法により実施できる。例えば湿式法としては、水酸化マグネシウムのスラリーに該表面処理剤を液状またはエマルジョン状で加え、約100℃までの温度で機械的に十分混合すればよい。乾式法としては、水酸化マグネシウムの粉末をヘンシェルミキサー等の混合機により、十分撹拌下で表面処理剤を液状、エマルジョン状、固形状で加え、加熱または非加熱下に十分に混合すればよい。表面処理剤の添加量は、適宜選択できるが、該水酸化マグネシウム粒子の重量に基づいて、約10重量%以下とするのが好ましい。
【0015】
表面処理をした水酸化マグネシウム粒子は、必要により、例えば水洗、脱水、造粒、乾燥、粉砕、分級等の手段を適宜選択して実施し、最終製品形態とすることができる。
本発明の水酸化マグネシウム粒子は、樹脂との合計重量に対して15〜80重量%、好ましくは20〜70重量%の割合で樹脂に配合される。
【0016】
本発明の水酸化マグネシウム粒子が配合される合成樹脂は、通常、成形品として使用されるものであればよく、その例としてはポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレン共重合体、ポリブテン、ポリ・4−メチルペンテン−1等の如きC〜Cオレフィン(α−オレフィン)の重合体もしくは共重合体、これらオレフィンとジエンとの共重合体類、エチレン−アクリレート共重合体、ポリスチレン、ABS樹脂、AAS樹脂、AS樹脂、MBS樹脂、エチレン/塩ビ共重合樹脂、エチレン酢ビコポリマー樹脂、エチレン−塩ビ−酢ビグラフト重合樹脂、塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、塩ビプロピレン共重合体、酢酸ビニル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、メタクリル樹脂等の熱可塑性樹脂が例示できる。
【0017】
これらの熱可塑性樹脂のうち好ましい例としては、水酸化マグネシウム粒子による難燃効果、熱劣化防止効果および機械的強度保持特性の優れたポリオレフィンまたはその共重合体であり、具体的には、ポリプロピレンホモポリマー、エチレンプロピレン共重合体の様なポリプロピレン系樹脂、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、EVA(エチレンビニルアセテート樹脂)、EEA(エチレンエチルアクリレート樹脂)、EMA(エチレンアクリル酸メチル共重合樹脂)、EAA(エチレンアクリル酸共重合樹脂)、超高分子量ポリエチレンの様なポリエチレン系樹脂、およびポリブテン、ポリ4−メチルペンテン−1等のC〜Cのオレフィン(α−エチレン)の重合体もしくは共重合体である。
さらに、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、尿素樹脂等の熱硬化性樹脂およびEPDM、ブチルゴム、イソプレンゴム、SBR、NBR、クロロスルホン化ポリエチレン、NIR、ウレタンゴム、ブタジエンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の合成ゴムを例示することができる。
【0018】
本発明の難燃剤を使用した樹脂組成物は、前記(a)合成樹脂および(b)水酸化マグネシウム粒子より実質的に形成されるが、さらに難燃助剤(c)を少割合配合することができる。この難燃助剤(c)を配合することにより、(b)水酸化マグネシウム粒子の配合割合を少なくすることができるし、また難燃効果を増大することができる。
【0019】
難燃助剤(c)としては、赤リン、炭素粉末あるいはこれらの混合物であることが好ましい。赤リンとしては、難燃剤用の通常の赤リンの他に、例えば熱硬化性樹脂、ポリオレフィン、カルボン酸重合体、酸化チタンあるいはチタンアルミ縮合物で表面被覆した赤リンが使用しうる。また、炭素粉末としては、カーボンブラック、活性炭あるいは黒鉛が挙げられ、このカーボンブラックとしては、オイルファーネス法、ガスファーネス法、チャンネル法、サーマル法またはアセチレン法のいずれの方法によって調製されたものであってもよい。
【0020】
難燃助剤(c)を配合する場合、その割合は、(a)熱可塑性樹脂および(b)水酸化マグネシウム粒子の合計重量に対して0.5〜20重量%、好ましくは1〜15重量%の範囲が適当である。
前記樹脂組成物は、前記した割合で前記(a)合成樹脂および(b)水酸化マグネシウム粒子、必要により(c)難燃助剤とを、それ自体公知の手段に従って混合すればよい。
【0021】
耐熱劣化性および難燃性を有する樹脂組成物は、上記成分以外にも慣用の他の添加剤を配合してもよい。このような添加剤としては、例えば酸化防止剤、帯電防止剤、顔料、発泡剤、可塑剤、充填剤、補強剤、有機ハロゲン難燃剤、架橋剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤等を例示できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、多量に熱可塑性樹脂に配合した場合、熱劣化せず、分散性が良好でしかも白化を起こさない難燃剤が得られる。
【0023】
従って、ハロゲン系難燃剤を含有しない樹脂組成物および成形品が提供でき、また加工性に優れ、成形品の燃焼にも有害ガスを発生しないという利点も得られる。
【実施例】
【0024】
以下、実施例に基づき、本発明をより詳細に説明する。%は全て重量%を意味する。ただし、酸化防止剤の配合割合は、(a)合成樹脂、(b)水酸化マグネシウム粒子および(c)難燃助剤の合計重量に対する割合(%)である。
なお、実施例において、水酸化マグネシウム粒子の(a)平均2次粒子径および(b)BET比表面積は、以下に記載する測定法によって測定された値を意味する。
【0025】
(1)水酸化マグネシウム2次粒子の平均2次粒子径
MICROTRAC粒度分析計SPAタイプ[LEEDS & NORTHRUP INSTRUMENTS 社製]を用いて測定決定する。
試料粉末700mgを70mlの水に加えて、超音波(NISSEI 社製、MODEL US-300、電流300μA)で3分間分散処理した後、その分散液の2−4mlを採って、250mlの脱気水を収容した上記粒度分析計の試料室に加え、分析計を作動させて8分間その懸濁液を循環した後、粒度分布を測定する。合計2回の測定を行い、それぞれの測定について得られた50%累積2次粒子径の算術平均値を算出して、試料の平均2次粒子径とする。
(2)水酸化マグネシウム粒子のBET法比表面積
液体窒素の吸着法により測定した。
(3)アイゾット衝撃強度
JIS K7110に準じて測定した。
(4)引張り強度
JIS K7113に準じて測定した。
(5)難燃性
UL 94VE法に準じて測定した。
酸素指数はJIS K7201に準じて測定した。
(6)重金属の分析
ICP−MS法(Inductively Coupled Plasma-Mass Spectrometry)または原子吸光法により測定した。
【0026】
実施例1(水酸化マグネシウム粒子の性状)
テストされる各種水酸化マグネシウム粒子の平均2次粒子径、比表面積および重金属含有量を測定し、下記表1に示した。%は重量%で示した。
【0027】
【表1】

【0028】
実施例2(樹脂組成物の熱安定性および物性の評価)
前記実施例1の表1に示した各種水酸化マグネシウムを使用し、下記配合組成でテストピースを作成した。
60% 水酸化マグネシウム粒子(ただし、水酸化マグネシウム粒子に対して3重量%ステアリン酸で表面処理がなされている)
40% ポリプロピレン(MFI 2g/10分の耐衝撃グレード)
0.1% 酸化防止剤(チバガイギー製 イルガノックス1010)
0.1% 酸化防止剤(吉富製薬製 DLTP)
【0029】
(i)テストピース作成法
表面処理された各試料の水酸化マグネシウム粒子を、付着水分をとるため105℃×16hrs、さらに120℃×2hrsの前処理乾燥後、樹脂(ポリプロピレン)および酸化防止剤と共に二軸押出機で230℃で混練し、そのサンプルを再び120℃×2hrs乾燥を行い、射出成型機で230℃で成型した。
二軸押出機:プラスチック工学研究所製
BT−30−S2−30−L
射出成型機:日精樹脂工業(株)製
FS 120S 18A SE
射出成型によって得られた各テストピースを、それぞれ下記のとおりとする。
テストピースA−I・・・試料A−Iの水酸化マグネシウム粒子配合品
テストピースA−II・・・試料A−IIの水酸化マグネシウム粒子配合品
テストピースB−I・・・試料B−Iの水酸化マグネシウム粒子配合品
テストピースB−II・・・試料B−IIの水酸化マグネシウム粒子配合品
テストピースB−III・・・試料B−IIIの水酸化マグネシウム粒子配合品
【0030】
(ii)熱安定性の測定
装置:タバイエスペック製ギアオーブンGPHH−100
設定条件:150℃、ダンパー開度50%
試験片2本を1組として上部を紙で挟んで金属製クリップでとめ、回轉リングに吊るし、経時的に抜き取る。
テストピース:1/12インチ
判定:テストピースに白化が認められるまでの時間を熱劣化の目安とした。また、150℃におけるテストピースの10%重量が減少するまでの時間も調べた。
【0031】
(iii)評価結果
評価を下記表2に示した。
【0032】
【表2】

【0033】
実施例3
平均2次粒子径の異なる種々水酸化マグネシウム粒子を使用し、実施例2と同様のテストをした。その結果を下記表3に示す。表3中、“重金属の総含量(%)”は、金属として(Fe+Mn+Co+Cr+Cu+V+Ni)の合計含有量を示す。
【0034】
【表3】

【0035】
実施例4
下記組成の樹脂組成物を調製した。
100重量部 エチレン・酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル41%含有)
150重量部 水酸化マグネシウム粒子(A−IIまたはB−I;ただし、表面処理は100重量部の水酸化マグネシウムに対し0.25重量部のオレイン酸ソーダでなされている)
2重量部 DCP(ディ・クミル・パーオキサイド)
1重量部 シランカップリング剤(NUC A−172)
1重量部 酸化防止剤(チバガイギー社製 イルガノックス1010)
【0036】
テストピース作成法
単軸混練押出機で120℃で混練。
圧縮成型機で120℃で5分予備成形後、180℃で15分架橋して2mmおよび3mmの板を得た。
【0037】
熱安定性の測定
耐熱性:厚さ2mmの架橋された板より幅25mm、長さ50mmのテストピースを得て、実施例1と同様にして耐熱試験を行った。
引張り強度:JIS7113の2号試験片のテストピースを得て、試験速度200mm/minで測定した。
【0038】
評価結果
測定した結果を下記表4に示した。
【0039】
【表4】

【0040】
実施例5
下記組成の樹脂組成物を調製した。
70% 水酸化マグネシウム粒子(A−IIまたはB−III;ただし、水酸化マグネシウム粒子に対して3重量%ステアリン酸で表面処理されている)
30% ポリプロピレン(MFI 2g/10分の耐衝撃グレード)
0.1% 酸化防止剤(チバガイギー製 イルガノックス1010)
0.1% 酸化防止剤(吉富製薬製 DLTP)
前記樹脂組成物を実施例2と同様にして、テストピースを作成し、熱安定性および難燃性を評価した。その結果を下記表5に示した。
【0041】
【表5】

【0042】
実施例6
下記組成の樹脂組成物を調製した。
【0043】
30% 水酸化マグネシウム粒子(A−IIまたはB−III;ただし、水酸化マグネシウム粒子に対して3重量%ステアリン酸で表面処理されている)

7% 赤リン(燐化学工業製;ノーバエクセル140)
3% カーボンブラック(オイルファーネス法 FEF)
60% ポリプロピレン(MFI 2g/10分の耐衝撃グレード)
0.1% 酸化防止剤(チバガイギー製 イルガノックス1010)
0.1% 酸化防止剤(吉富製薬製 DLTP)

前記樹脂組成物を実施例2と同様にして、テストピースを作成し、熱安定性および難燃性を評価した。その結果を下記表6に示した。
【0044】
【表6】

【0045】
実施例7
下記(1)〜(3)の樹脂組成物を調製し、実施例2と同様にテストピースを作成し、それぞれの難燃性を評価した。ただし、ナイロン6の場合、混練および射出成形は250℃で行った。その結果、いずれのテストピースもUL94−VE1/16インチの難燃性はV−0であった。
(1)
65% 水酸化マグネシウム粒子(A−II)
35% ナイロン6(比重1.14の射出成形グレード)
0.2% 酸化防止剤(チバガイギー製 イルガノックス1098)
(2)
68% 水酸化マグネシウム粒子(A−II)
32% 高密度ポリエチレン(MFI 5.0g/10分の射出成形グレード)
0.1% 酸化防止剤(チバガイギー製 イルガノックス1010)
0.1% 酸化防止剤(吉富製薬製 DLTP)
(3)
20% 水酸化マグネシウム粒子(A−II)
7% 赤リン(燐化学工業製;1−バエクセル140)
5% カーボンブラック(オイルファーネス法 FEF)
63% ABS樹脂(MFI 25g/10分の耐衝撃グレード)
5% ナイロン6(比重1.14の射出成形グレード)
0.2% 酸化防止剤(チバガイギー製 イルガノックス1010)
【0046】
実施例8
下記組成物を調製し、オープンロールで70℃で素練りを行い、それを1日後に160℃で30分間加硫を行い、厚さ1/8インチの板を得た。得られた板よりUL94−VE試験用の厚さ1/8インチのテストピースを作成した。このテストピースについて、UL94VEの試験を行った。試験の結果、難燃性はV−1であった。
【0047】
組成
100重量部 EPDMゴム(エチレン/プロピレン比=50/50モル)
170重量部 水酸化マグネシウム粒子(A−II)
3重量部 ディクミルパーオキサイド
0.5重量部 ポリ(2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン)
1重量部 シランカップリング剤(日本ユニカ製 A−172)
1重量部 ステアリン酸
1重量部 イオウ
【0048】
実施例9
下記組成物を調製し、約30℃でニーダーで混練し、混練されたものを90℃で15分硬化させ、厚さ1/8インチの板を得た。得られた板によりUL94−VE試験用の厚さ1/8インチテストピースを作成した。このテストピースについて、UL94VEの試験を行った。試験の結果、難燃性はV−0であった。
【0049】
組成
100重量部 エポキシ樹脂(比重1.17)
100重量部 水酸化マグネシウム粒子(A−II)
5重量部 赤リン(燐化学製 ノーバエクセル140)
1重量部 カーボンブラック(オイルファーネス法 FEF)
10重量部 硬化剤(チバガイギー製 HY951)
1重量部 ステアリン酸
0.2重量部 イルガノックス1010

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)レーザー回折散乱法で測定された平均2次粒子径が2μm以下であり、
(ii)BET法による比表面積が1〜10m/gであり、且つ
(iii)鉄化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、クロム化合物、銅化合物、バナジウム化合物およびニッケル化合物の合計含有量が、金属に換算して0.01重量%以下である、
水酸化マグネシウム粒子よりなることを特徴とする難燃剤の合成樹脂への使用。
【請求項2】
水酸化マグネシウム粒子は、レーザー回析散乱法で測定された平均2次粒子径が0.4〜1.0μmである請求項1記載の使用。
【請求項3】
該水酸化マグネシウム粒子が、高級脂肪酸類、アニオン系界面活性剤、リン酸エステル類、カップリング剤および多価アルコールと脂肪酸のエステル類よりなる群から選ばれた少なくとも1種の表面処理剤により、表面処理されている請求項1記載の使用。
【請求項4】
該合成樹脂がポリオレフィンまたはその共重合体である請求項1記載の使用。
【請求項5】
請求項1記載の水酸化マグネシウム粒子よりなる合成樹脂用難燃剤。

【公開番号】特開2006−104487(P2006−104487A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−8319(P2006−8319)
【出願日】平成18年1月17日(2006.1.17)
【分割の表示】特願2003−274425(P2003−274425)の分割
【原出願日】平成8年11月27日(1996.11.27)
【出願人】(000162489)協和化学工業株式会社 (66)
【Fターム(参考)】