説明

耐熱性ネガ型フォトレジスト組成物および感光性基材、ならびにネガ型パターン形成方法

【目的】 感光性を有する樹脂成分がいかなる構造であっても、充分に対応でき、しかも感度や解像度に優れた耐熱性ネガ型フォトレジスト組成物、およびこの組成物を用いてなる感光性基材ならびにパターン形成方法を提供する。
【構成】 特定構造を有するポリイミド前駆体からなる樹脂成分に、特定の構造を有し、活性光線の照射によって塩基性を呈する4−(2’−ニトロフェニル)−1,4−ジヒドロピリジン類を含有させることによって、活性光線の照射によって耐熱性の良好なネガ型のパターンとなるフォトレジスト組成物を得ることができる。また、現像速度を速めるために特定の溶解促進剤を併存させることもできる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は耐熱性ネガ型フォトレジスト組成物および感光性基材、ならびにネガ型パターン形成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から耐熱性を有するものとして一般に実用化されている感光性ポリイミドもしくはその前駆体は、活性光線を照射することによって該ポリイミドもしくは前駆体の現像液に対する溶解性を減少させ、各種基板上に目的とするレリーフ像を形成するというネガ型のものが主流となっている。
【0003】このような基板上に活性光線の照射部分が残存するネガ型の感光性ポリイミドまたはその前駆体を用いた耐熱性フォトレジストやその用途は多く提案されており、例えば■ポリイミド前駆体にエステル結合またはイオン結合を介してメタクリロイル基を導入する方法(特開昭49−11541号公報、特開昭50−40922号公報、特開昭54−145794号公報、特開昭56−38038号公報など)、■光重合性オレフィンを有する可溶性ポリイミド(特開昭59−108031号公報、特開昭59−220730号公報、特開昭59−232122号公報、特開昭60−6729号公報、特開昭60−72925号公報、特開昭61−57620号公報など)、■ベンゾフェノン骨格を有し、かつ窒素原子が結合する芳香環のオルソ位にアルキル基を有する自己増感型ポリイミド(特開昭59−219330号公報、特開昭59−231533号公報など)などが提案されている。
【0004】しかしながら、上記従来のネガ型フォトレジストではその機能上、解像度に問題があったり用途によっては製造時の歩留まり低下を招くなどの問題もある。例えば、上記■のものではエステル結合型の合成が難しく、イオン結合型ではイミド化の際の熱硬化時に収縮が起きたり、また、現像時にも膜減りが起きて現像、熱硬化後の残存膜厚は初期のものの50%程度になり、寸法安定性に問題を有するものである。さらに、上記■および■のものでは用いるポリマーの骨格構造が限定されるために、最終的に得られる皮膜の物性が限定されてしまい、多種多用な要求特性に対して柔軟に対応できず、多目的用途には不向きなものである。
【0005】一方、ポリイミド前駆体にN−メチロールアクリルアミドを配合してなる感光材についても報告されている(Polymer Preprint Japan,39(8),2397(1990))が、上記と同様、残存膜厚が50%であり、寸法安定性の点で問題を有する他、プリベークに長時間を要するなどの問題点を有するものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は従来からのネガ型フォトレジストが有する課題を解決し、レジスト形成物質としての耐熱性を付与する樹脂であるポリイミド前駆体の構造が比較的限定されず、しかも感度や解像度も良好であり、かつ実用的な製造プロセスに適応できる耐熱性ネガ型フォトレジスト組成物を提供することを目的とする。
【0007】また、他の目的は上記耐熱性ネガ型フォトレジスト組成物を用いてなる感光性基材ならびにネガ型パターン形成方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記ネガ型フォトレジスト組成物について、さらに検討を重ねた結果、活性光線を照射することで塩基性を呈する特定の化合物をポリイミド前駆体からなる樹脂成分に配合することによって、上記目的を達成できるネガ型フォトレジスト組成物が得られることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0009】即ち、本発明は下記式(化4)にて示される構造単位を有する樹脂成分と、
【0010】
【化4】


【0011】(但し、式中の矢印の結合は異性化によって置換可能な結合を示し、R1 およびR2 はそれぞれ4価および2価の芳香族または脂肪族炭化水素残基である。)
下記式(化5)にて示される活性光線の照射にて塩基性を呈する化合物と、
【0012】
【化5】


【0013】(但し、式中、R3 およびR4 は水素原子もしくは炭素数1〜3のアルキル基、R5 およびR6 は炭素数1〜4のアルキル基もしくはアルコキシル基、アニリノ基、トルイジノ基、ベンジルオキシ基、アミノ基、ジアルキルアミノ基から選ばれる一種であり、X1 〜X4 はそれぞれ水素原子、フッ素原子、ニトロ基、メトキシ基、ジアルキルアミノ基、アミノ基、シアノ基、フッ素化アルキル基から選ばれる一種である。)を含有してなる耐熱性ネガ型フォトレジスト組成物を提供するものである。
【0014】また、本発明は上記耐熱性ネガ型フォトレジスト組成物に、さらに下記式(化6)にて示される溶解促進剤を含有させてなる耐熱性ネガ型フォトレジスト組成物を提供するものである。
【0015】
【化6】


【0016】(但し、式中、R7 およびR8 は水素原子もしくは炭素数1〜3のアルキル基、R9 およびR10は水素原子、シアノ基、アセチル基、アミド基、COOR11基(R11は炭素数1〜5のアルキル基もしくはアルコキシル基、アニリノ基、トルイジノ基、ベンジルオキシ基から選ばれる一種である。)から選ばれる一種であり、X5 は水素原子、フッ素原子、炭素数1〜3のアルキル基、フッ素化アルキル基、フェニル基から選ばれる一種である。)
さらに、本発明は支持体の表面に上記耐熱性ネガ型フォトレジスト組成物を塗設してなる感光性基材を提供するものである。
【0017】また、本発明は上記耐熱性ネガ型フォトレジスト組成物から得られたフィルムに、フォトマスクを介して活性光線の照射を行い、さらに加熱処理を行なったのち、塩基性現像液にて未露光部分を除去することを特徴とするネガ型パターン形成方法を提供するものである。
【0018】本発明の耐熱性ネガ型フォトレジスト組成物に用いられる樹脂成分は、レジスト形成の骨格物質として作用するものであって、上記(化4)に示す構造単位を有するポリイミド前駆体である。上記(化4)で示される構造単位中のR1 は、具体的にはベンゼン、ナフタレン、ペリレン、ジフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルホン、ジフェニルプロパン、ジフェニルヘキサフルオロプロパン、ベンゾフェノン、ブタン、シクロブタンなどの骨格を有する4価の芳香族または脂肪族炭化水素残基が典型的な例として例示されるが、これらに限定されるものではない。好ましい基としてはベンゼン、ジフェニルおよびベンゾフェノンである。なお、必要に応じてR1 として上記にて例示した基の二種類以上を含有させることもできる。
【0019】また、R2 としては、具体的にはジフェニルエーテル、ジフェニルチオエーテル、ベンゾフェノン、ジフェニルメタン、ジフェニルプロパン、ジフェニルヘキサフルオロプロパン、ジフェニルスルホキシド、ジフェニルスルホン、ビフェニル、ピリジン、ベンゼンなどの骨格を有する2価の芳香族または脂肪族炭化水素残基が典型的な例として例示されるが、これらに限定されるものではない。好ましい基としてはジフェニルエーテル、ジフェニルスルホン、およびベンゼンである。なお、必要に応じてR2 として上記にて例示した基の二種類以上を含有させることもできる。
【0020】このような構造単位を有する樹脂成分は、例えば上記R1 を分子内に有する芳香族もしくは脂肪族テトラカルボン酸二無水物と、上記R2 を分子内に有する芳香族もしくは脂肪族ジアミンの略等モル量を、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミドなどの有機溶媒中にて反応させることによって得ることができる。
【0021】本発明の耐熱性ネガ型フォトレジスト組成物の第1は、上記(化4)にて示される構造単位を有する樹脂成分に、上記(化5)で示される感光性を有する化合物を含有させてなることを特徴とする。つまり、該組成物には上記(化5)にて示される活性光線の照射によって塩基性を呈する感光性の化合物が配合されており、必要に応じて公知の増感剤とが組み合わされて配合される。上記感光性を有する化合物(化5)は、(化4)にて示される樹脂成分100重量部に対して5〜50重量部、好ましくは10〜40重量部の範囲で配合することが望ましい。配合量が少ない場合は露光部の溶解阻止能が悪くなって溶解性コントラストが不鮮明になりやすい。また、配合量が多い場合は溶液状態で保存する際に固形分の析出が生じ、溶液保存性やパターン形成性に悪影響を与え、さらに、ネガ型パターン形成後に熱処理を施すと膜減りが大きくなって機械的強度も低下させることがある。
【0022】本発明において前記化合物(化5)は、活性光線に曝されると、分子構造が分子内転移を経てピリジン骨格を有する構造に変化して塩基性を呈するようになり、その後の熱処理によってさらに化学反応が進行して、その結果、前記(化4)にて示される構造単位を有する樹脂成分との間で、もしくは単独で何らかの相互作用が生じてアルカリ溶解性が低下し、良好なネガ型パターン形成ができるものと推測される。
【0023】このような(化5)として好適な化合物としては、例えば2,6−ジメチル−3,5−ジシアノ−4−(2’−ニトロフェニル)−1,4−ジヒドロピリジン、2,6−ジメチル−3,5−ジアセチル−4−(2’−ニトロフェニル)−1,4−ジヒドロピリジン、2,6−ジメチル−3,5−ジアセチル−4−(2’,4’−ジニトロフェニル)−1,4−ジヒドロピリジンなどが挙げられる。
【0024】(化5)にて示される化合物は、例えば置換ベンズアルデヒドと2倍モル量のアミノクロトニトリルとを氷酢酸中で、還流させながら反応させたり、置換ベンズアルデヒドと2倍モル量のアセチルアセトンと等モル量のアンモニアとをメタノール中で反応させたり、例えば一般的な1,4−ジヒドロピリジン誘導体の合成法(例えば、J.Chem.Soc.,1931,1835,1931) に従って得ることができる。
【0025】また、本発明の耐熱性ネガ型フォトレジスト組成物の第2は、上記(化4)にて示される構造単位を有する樹脂成分に、上記(化5)で示される感光性を有する化合物を含有させてなる組成物に、さらに上記(化6)にて示される溶解促進剤を含有させてなることを特徴とする。該組成物に含有させる(化6)にて示される溶解促進剤は活性光線の照射に対しては全く不活性であるが、現像時において未露光部の溶解速度を促進する効果を有するので、現像速度を向上させて実用上有用な組成物とすることができる。
【0026】このような(化6)として好適な化合物としては、例えば2,6−ジメチル−3,5−ジシアノ−4−メチル−1,4−ジヒドロピリジンや、2,6−ジメチル−3,5−ジシアノ−1,4−ジヒドロピリジンなどが挙げられる。
【0027】上記溶解促進剤として含有させる化合物(化6)は、(化4)にて示される樹脂成分100重量部に対して5〜50重量部、好ましくは5〜15重量部の範囲で配合することが望ましい。配合量が少ない場合は現像時に未露光部の樹脂成分の溶解速度を速めることが期待できず、また、多く配合した場合は最終的な加熱キュアーののちに膜減りが大きくなったり、露光部分の溶解阻止能が低下したりする恐れがあるので好ましくない。
【0028】次に、本発明の耐熱性ネガ型フォトレジスト組成物を用いて画像を形成する方法の一例を示す。
【0029】まず、前記(化4)にて示した樹脂成分と、前記(化5)または(化5)と(化6)にて示す化合物を、前記有機溶剤に溶解して感光液を調製する。次いで、この感光液を基材上に乾燥後の膜厚が1〜30μm、好ましくは10〜20μmとなるように塗布する。
【0030】塗布した塗膜を乾燥(80℃、10分程度)した後に通常のフォトマスクを通して露光を行ない、露光後、後加熱(150〜200℃、好ましくは170℃以上で10分程度)を行ったのち、未照射部分を除去すべく浸漬法やスプレー法などを用いて現像処理を行う。現像処理に用いる現像液としては、露光膜の未照射部を適当な時間内で完全に溶解除去できるものが好ましく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機アルカリ性水溶液、またはプロピルアミン、ブチルアミン、モノエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、コリンなどの有機アルカリ性水溶液などを単独もしくは二種以上混合して用いる。また、このアルカリ性水溶液には必要に応じてアルコール類などの有機溶剤や、各種界面活性剤を含有させることもできる。
【0031】現像したのち、リンス液で洗浄することにより所望のネガ型パターンを有する樹脂画像が形成される。
【0032】以上のようにして得られた画像は、最終的に高温加熱処理(約200〜450℃)をすることによって、ポリイミド前駆体が脱水閉環してイミド化し、耐熱性を有するポリイミド画像となるのである。
【0033】
【実施例】以下に本発明の実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。
【0034】実施例1ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とパラフェニレンジアミンの略等モル量を、ジメチルアセトアミド中にてモノマー濃度20重量%で室温下、24時間反応させて(化4)にて示されるポリイミド前駆体溶液を得た。
【0035】上記にて得たポリイミド前駆体溶液の固形分100重量部に対して、(化5)中、R3 およびR4 がメチル基で、X1 、X2 、X3 およびX4 が水素原子である化合物(以下、o−NCNという)を30重量部を添加し、均一に溶解した。
【0036】この溶液をシリコンウエハ上にスピンコーターを用いて回転数2200rpm/20secでスピンコートして、80℃のホットプレート上で10分間予備乾燥を行い、乾燥膜厚約18μmの塗膜を形成した。そののち、ガラスマスクを通して250W超高圧水銀灯にガラスフィルターをかけた436nmの波長の活性光線を用い、光源から30cmのところで3分間、真空密着露光を行った。
【0037】露光後、185℃で10分間加熱したのち、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド3重量%水溶液/メチルアルコール(体積比2/1)からなる現像液で4分間現像、水でリンスしたところ、光照射部のみが鮮明に基板上に残存するネガ型パターンを得た。
【0038】このパターンは高温加熱(400℃/2時間)してイミド化した場合、残存膜厚率は約75%であった。なお、最終的に得られたポリイミドフィルムは茶色状であって、実用レベルの諸特性を充分に備えるものであった。
【0039】実施例2実施例1においてポリイミド前駆体を調製する際の有機溶媒を、ジメチルアセトアミドからN−メチル−2−ピロリドンに変えた以外は、実施例1と同様にしてネガ型パターンを形成した。
【0040】このとき予備乾燥に100℃を必要としたが、その他は実施例1と同様、良好なパターンが得られた。
【0041】実施例3実施例1においてo−NCNの代わりに、(化5)中、R3 およびR4 がメチル基で、X1 、X3 およびX4 が水素原子で、X2 がニトロ基である化合物(以下、2,4−NCNという)を同量用いた以外は、実施例1と同様にしてネガ型パターンを形成した結果、実施例1と同様、良好なパターンが得られた。
【0042】比較例1実施例1においてo−NCNの代わりに、(化5)中、R3 およびR4 がメチル基で、X1 、X3 およびX4 が水素原子で、X2 がニトロ基で、1,4−ジヒドロピリジン環の3,5位のシアノ基の代わりに−COOCH3 基である化合物(以下、2,4−NEという)を同量用い、露光後の加熱を165℃で10分とした以外は、実施例1と同様にしてパターンを形成したが、得られたパターンは未照射部が基板上に残存するポジ型パターンであった。
実施例4実施例1においてo−NCNの代わりに、(化6)中、R3 、R4 、R5 およびR6 がメチル基で、X1 、X2 、X3 およびX4 が水素原子である化合物(以下、2,4−NAという)を同量用いた以外は、実施例1と同様にしてネガ型パターンを形成した結果、実施例1と同様、良好なパターンが得られた。
【0043】実施例5実施例4においてポリイミド前駆体を調製する際の有機溶媒を、ジメチルアセトアミドからN−メチル−2−ピロリドンに変えた以外は、実施例4と同様にしてネガ型パターンを形成した。
【0044】このとき予備乾燥に100℃を必要としたが、その他は実施例4と同様、良好なパターンが得られた。
【0045】実施例6実施例4においてo−NAの代わりに、(化6)中、R3 、R4 、R5 およびR6 がメチル基で、X1 、X3 およびX4 が水素原子で、X2 がニトロ基である化合物(以下、2,4−NAという)を同量用いた以外は、実施例4と同様にしてネガ型パターンを形成した結果、実施例4と同様、良好なパターンが得られた。
【0046】比較例2実施例4においてo−NAの代わりに、比較例1にて用いた2,4−NEを同量用い、露光後の加熱を165℃で10分とした以外は、実施例4と同様にしてパターンを形成したが、得られたパターンは未照射部が基板上に残存するポジ型パターンであった。
実施例7実施例1にて得たポリイミド前駆体溶液の固形分100重量部に対して、(化5)中、R3 およびR4 がメチル基で、X1 、X2 、X3 、X4 が水素原子、R5 、R6 がメチル基である化合物(以下、DAcという)を20重量部、(化6)中、X5 がメチル基、R7 およびR8 がメチル基、R9 およびR10がシアノ基である化合物(以下、CH3 −CNという)を10重量部添加して、均一に溶解した。
【0047】この溶液を用いた以外は実施例1と同様にしてネガ型パターンを形成した。このパターンは高温加熱(400℃/2時間)してイミド化した場合、残存膜厚率は約75%であり、また現像速度は実施例1の場合と比べて速く、約1.5〜2倍程度であった。なお、最終的に得られたポリイミドフィルムは茶色状であり、実用レベルの諸特性を充分に備えるものであった。
【0048】実施例8実施例7においてDAcの代わりに、(化5)中のR3 およびR4 がメチル基で、X1 、X3 およびX4 が水素原子、X2 がニトロ基で、R5 、R6 がメトキシ基である化合物(以下、2,4−DEsという)を同量用いた以外は、実施例1と同様にしてネガ型パターンを形成した結果、実施例7と同様、良好なパターンが得られた。
【0049】実施例9実施例7においてDAcの代わりに、(化5)中のR3 およびR4 がメチル基で、X1 、X3 およびX4 が水素原子、X2 がニトロ基で、1,4−ジヒドロピリジン環の3,5位がメチル基である化合物(以下、2,4−DAcという)を同量用い、露光後の加熱を200℃で10分間とした以外は、実施例7と同様にしてネガ型パターンを形成した。
【0050】その結果、実施例7と同様に良好なパターンが得られた。
【0051】実施例10実施例7において露光後の加熱を130℃で10分間行い、さらに200℃で10分間行った以外は、実施例7と同様にしてネガ型パターンを形成した。
【0052】このパターンを360℃で2時間高温加熱してイミド化して得られるポリイミドフィルムの物性は、実施例7のものよりも機械的強度の点で優れたものであった。
【0053】実施例11実施例7においてプリベークを90℃で30分間とした以外は、実施例7と同様にしてネガ型のパターンを形成した。このパターンを実施例10と同様にして高温加熱してイミド化してポリイミドフィルムとした結果、このフィルムの物性は実施例7のものよりも機械的強度の点で優れたものであった。
【0054】
【発明の効果】本発明の耐熱性ネガ型フォトレジスト組成物は、含有する特定の感光性化合物が主に光吸収する波長の活性光線を照射することによって、照射部分のアルカリ溶解性が低下して照射部分と未照射部分でのアルカリ性現像液に対する大きな溶解速度差が生じ、高感度、高解像度の実用に耐えうるネガ型パターンの形成が可能となる。また、特定の溶解促進剤を併存させることによって、実用的な溶解時間でパターン形成を行うことができるものである。
【0055】さらに、比較的簡単にしかも安価に所望のパターン形成が行え、高品質の製品供給が可能となるものである。さらに、高温加熱処理して得られる最終物は耐熱性や電気的特性、機械的特定に優れるので、半導体工業における固体素子や、回路基板の保護膜、絶縁膜を形成するための材料としても好適なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 下記式(化1)にて示される構造単位を有する樹脂成分と、
【化1】


(但し、式中の矢印の結合は異性化によって置換可能な結合を示し、R1 およびR2 はそれぞれ4価および2価の芳香族または脂肪族炭化水素残基である。)
下記式(化2)にて示される活性光線の照射にて塩基性を呈する化合物と、
【化2】


(但し、式中、R3 およびR4 は水素原子もしくは炭素数1〜3のアルキル基、R5 およびR6 は炭素数1〜4のアルキル基もしくはアルコキシル基、アニリノ基、トルイジノ基、ベンジルオキシ基、アミノ基、ジアルキルアミノ基から選ばれる一種であり、X1 〜X4 はそれぞれ水素原子、フッ素原子、ニトロ基、メトキシ基、ジアルキルアミノ基、アミノ基、シアノ基、フッ素化アルキル基から選ばれる一種である。)を含有してなる耐熱性ネガ型フォトレジスト組成物。
【請求項2】 請求項1記載の耐熱性ネガ型フォトレジスト組成物に、さらに下記式(化3)にて示される溶解促進剤を含有させてなる耐熱性ネガ型フォトレジスト組成物。
【化3】


(但し、式中、R7 およびR8 は水素原子もしくは炭素数1〜3のアルキル基、R9 およびR10は水素原子、シアノ基、アセチル基、アミド基、COOR11基(R11は炭素数1〜5のアルキル基もしくはアルコキシル基、アニリノ基、トルイジノ基、ベンジルオキシ基から選ばれる一種である。)から選ばれる一種であり、X5 は水素原子、フッ素原子、炭素数1〜3のアルキル基、フッ素化アルキル基、フェニル基から選ばれる一種である。)
【請求項3】 支持体の表面に請求項1または2記載の耐熱性ネガ型フォトレジスト組成物を塗設してなる感光性基材。
【請求項4】 請求項1〜3の何れかに記載の耐熱性ネガ型フォトレジスト組成物から得られたフィルムに、フォトマスクを介して活性光線の照射を行い、さらに加熱処理を行なったのち、塩基性現像液にて未露光部分を除去することを特徴とするネガ型パターン形成方法。
【請求項5】 加熱処理の温度が170℃以上である請求項4記載のネガ型パターン形成方法。