説明

耐熱性フィルムの製造方法及び製造装置

【課題】直鎖状の重合性化合物の分子鎖を延伸処理を行うことなく高度に配向させることができるので、低い線熱膨張係数を有する耐熱性に優れた樹脂フィルムを製造することができる。
【解決手段】直鎖状の重合性化合物を有機溶剤に溶解又は分散させたドープを、走行する流延バンド24上に膜状に流延する流延工程と、流延された流延膜34を流延バンド24上で乾燥する乾燥工程と、乾燥した流延膜34を流延バンド24から剥離してフィルムを形成する剥離工程と、を備えた耐熱性フィルムの製造方法であって、乾燥工程は、流延膜34の膜面温度を有機溶剤の沸点−30℃〜沸点−10℃の範囲に設定して、流延膜34がゲル化するまで乾燥風の風速を1m/sec以下で該流延膜中の溶剤を飛ばすゲル化乾燥工程と、ゲル化した流延膜34を、−40℃〜10℃の膜面温度で低温乾燥し、且つ乾燥風の風速を5m/sec以上で急速乾燥する低温急速乾燥工程と、から成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性フィルムの製造方法及び製造装置に係り、特にフィルムの配向を制御することにより、線熱膨張係数の低い耐熱性フィルムを製造する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
無機ガラス材料は、透明性及び耐熱性に優れ、かつ光学異方性も小さいことから、透明材料として広く使用されている。しかし、無機ガラスは、成型しにくいことや、比重が大きく且つ脆いため、成型されたガラス製品は重く、破損し易い等の欠点を有している。このため、無機ガラス材料に代替えする樹脂材料の開発が盛んに行われている。
【0003】
近年、ディスプレイ基板をガラスから樹脂へ代替えすることが検討されており、特に、ITO(酸化インジウムスズ)をのせることができるような樹脂基板等が求められている。基板材料をガラスから樹脂にすることで、軽量化、耐衝撃性、薄型化ができる等の様々なメリットがある。しかし、基板材料をガラスから樹脂に変更するには、耐熱性(約150〜250℃)の特性を有する樹脂であることが要求される。例えば、樹脂を加熱しながらディスプレイ基板を製造する場合、特に樹脂にITOをのせてからアニール処理する場合には寸法安定性に優れた高い耐熱性が必要であることから、樹脂をフィルム化した際に低い線熱膨張係数を有することが要求される。
【0004】
耐熱性を有する樹脂フィルムの製造方法としては、二軸延伸技術を用いて配向を制御することが行われている。しかし、そのための延伸装置を設備しなくてはならず、装置コストがかかってしまうという問題がある。また、耐熱性を有するフィルムの製造のための延伸は応力が大きくなってしまうため、ガラス転移温度の高い樹脂材料を用いる必要があり、材料設計や原料コストの面で非常に不利になる。また、延伸を行うことによる熱履歴、フィルム損傷の影響も避けられない。
【0005】
このことから、延伸処理を行わずにフィルムの配向を行って耐熱性を有する樹脂フィルムを製造することができれば、設備コスト面のみならずフィルム品質の向上に寄与する。
【0006】
耐熱性を目的としたものではないが、延伸を行わずにフィルムを配向させる技術としては、特許文献1がある。特許文献1では、ポリマーの溶剤溶液を流延支持体上に流延し、これを乾燥させて光学用フィルムを製造するに際し、該溶液を流延した後、フィルム中の溶剤含有量が35〜10重量%になるまで、流延支持体上で−40℃から10℃の温度で乾燥を行う。これにより、フィルムの面方向と厚み方向のうち厚み方向のみに光学異方性が存在するようにフィルムを配向させることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−304048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の製造方法で樹脂フィルムを製造した場合、本発明の課題である優れた耐熱性を有する樹脂フィルムを製造することができないだけでなく、フィルム面に顕著な面荒れが発生してしまうという問題が分かった。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、直鎖状の重合性化合物の分子鎖を延伸処理を行うことなく高度に配向させることができるので、低い線熱膨張係数を有する耐熱性に優れた樹脂フィルムを製造することができ、これにより設備コスト面のみならずフィルム品質の向上を図ることができる耐熱性フィルムの製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の耐熱性フィルムの製造方法は前記目的を達成するために、直鎖状の重合性化合物を有機溶剤に溶解又は分散させたドープを、走行する流延支持体上に膜状に流延する流延工程と、前記流延された流延膜を前記流延支持体上で乾燥する乾燥工程と、前記乾燥した流延膜を前記流延支持体から剥離してフィルムを形成する剥離工程と、を備えた耐熱性フィルムの製造方法であって、前記乾燥工程は、前記流延膜の膜面温度を前記有機溶剤の沸点−30℃〜沸点−10℃の範囲に設定して、前記流延膜に乾燥応力が働き初めてゲル化するまで乾燥風の風速1m/sec以下で前記流延膜中の溶剤を飛ばすゲル化乾燥工程と、前記ゲル化した流延膜を、−40℃〜10℃の膜面温度で低温乾燥し、且つ乾燥風の風速を5m/sec以上で急速乾燥する低温急速乾燥工程と、から成ることを特徴とする。
【0011】
ここで、流延膜のゲル化とは、流延膜が流動性を失って乾燥応力が働き始めることを言い、乾燥応力が働き初める瞬間をゲル化点と称することとする。また、流延膜がゲル化点に達したか否かは歪みゲージを用いて判定することができる。
【0012】
発明者は、直鎖状の重合性化合物を有機溶剤に溶解又は分散させたドープを走行する流延支持体上に流延した流延膜を、乾燥応力が発現するゲル化状態まで溶剤を飛ばした後、流延膜に含有される重合性化合物の分子運動性が低下する低温状態で急速乾燥することにより、従来のようにフィルムに延伸処理を施さなくても乾燥応力を利用することで、フィルムを高度に配向することができ、低い線熱膨張係数を有する耐熱性フィルムを製造できるとの新規な知見を得た。
【0013】
また、発明者は、流延膜を最初から重合性化合物の分子運動性が低下する低温状態で乾燥すると、結露による流延膜中への水分の混在が起きてしまうとの知見を得た。更には、流延膜を乾燥応力が働き始めてゲル化する前に急速乾燥すると、製造されたフィルム面に面荒れや泣きだし等の面状欠陥が発生し、光学フィルムとしての性能が損なわれるという知見も得た。
【0014】
具体的には、ゲル化乾燥工程では、流延膜の膜面温度が有機溶剤の沸点−30℃〜沸点−10℃になるように設定すると共に、乾燥風の風速1m/sec以下で乾燥し、ゲル化するまで流延膜中の有機溶剤を飛ばす。この乾燥温度であれば、乾燥温度が高過ぎてゲル化しにくいという問題がない。更には結露による流延膜中への水分の混入も防ぐことができる。また、乾燥風の風速1m/sec以下であれば、流延膜中に溶剤がだ多く含まれる状態のゲル化乾燥であっても、乾燥風速が強過ぎて、流延膜の膜面が波立つこともない。
【0015】
また、低温急速乾燥工程では、ゲル化した流延膜を−40℃〜10℃の膜面温度で低温乾燥し、且つ乾燥風の風速を5m/sec以上にして急速乾燥する。これにより、流延膜に大きな乾燥応力を付与することができるので、直鎖状の重合性化合物の分子鎖を高度に配向させることができる。更には、流延膜をゲル化した後で急速乾燥するので、製造されたフィルムの面荒れや泣きだしを防止できる。
【0016】
なお、乾燥風の風速の上限を設けなかったが、流延膜の膜面が乱れない程度まで風速を速くすることができる。
【0017】
また、乾燥風の風速以外に低温急速乾燥工程での急速乾燥の規定方法としては、流延膜の溶剤含有率が15質量%以下になるまでの乾燥時間で規定してもよく、その場合には数十分以内に流延膜の溶剤含有率が15質量%以下になるように急速乾燥することが好ましい。したがって、ゲル化した流延膜の溶剤含有率を数十分以内に15質量%以下にすることができるのであれば、乾燥風による乾燥以外の乾燥方法を適用することが可能である。
【0018】
したがって、本発明によれば、直鎖状の重合性化合物の分子鎖を延伸処理を行うことなく高度に配向させることができるので、低い線熱膨張係数を有する耐熱性に優れたフィルムを製造することができる。また、延伸処理を必要としないので、設備コストを削減できるだけでなく、延伸によるフィルム面への損傷を回避できるので、フィルムの平面平滑性の向上も図ることができる。
【0019】
本発明の製造方法においては、前記低温急速乾燥工程では、前記膜面温度が−20℃〜0℃であることが好ましい。
【0020】
本発明においては、前記製造された耐熱性フィルムは、線膨張係数が50ppm/K以下であることが好ましい。
【0021】
線膨張係数(CTE)が50ppm/K以下の耐熱性フィルムであれば、ディスプレイ基板、特にITO(酸化インジウムスズ)をのせることができるような樹脂基板として要望されている線膨張係数を満足する。即ち、CTEが50ppm/K以下であれば、フィルム上に無機薄膜を積層した場合、加熱時に膨張率の差によるクラックの発生、フィルムのそりを抑制できる。
【0022】
耐熱性フィルムの線熱膨張係数(CTE)は、20ppm/Kを超えて40ppm/K以下であることがより好ましく、20ppm/K以下であることが特に好ましい。
【0023】
本発明の製造方法においては、前記ゲル化乾燥工程の乾燥速度は、前記低温急速乾燥工程の前記乾燥速度よりも遅いことが好ましい。これは、ゲル化乾燥工程における流延膜は有機溶剤含有量が高く粘度が低いため、乾燥速度を速くするために例えば乾燥風の風速を大きくすると、流延膜面が波立ち易くなり、製造されるフィルムの平面平滑性が損なわれる恐れがある。
【0024】
したがって、ゲル化乾燥工程での前記流延膜面上での風速が0.01〜1m/秒の低風速であることが好ましい。乾燥風の風速の下限を0.01m/秒としたのは、全くの無風では流延膜をゲル化させるための乾燥に時間がかかり過ぎ、生産性が顕著に低下してしまうためである。
【0025】
本発明の製造方法においては、上記直鎖状の重合性化合物は、ポリアリレート樹脂であることが好ましく、下記一般式(1)で表される構造及び下記一般式(2)で表される構造を有することが好ましい。
【0026】
【化1】

【0027】
(一般式(1)中、R11〜R14はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、R15〜R18はそれぞれ独立に置換基を表す。)
【0028】
【化2】

【0029】
(一般式(2)中、R21〜R26はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、前記R21〜R26のうち少なくとも一つは置換基を表す。)
上記構造を有する直鎖状の重合性化合物は、原料自体が低い線熱膨張係数を有すると共に乾燥応力により配向し易いので、本発明のための原料として好適である。
【0030】
また、本発明の製造方法においては、前記一般式(1)において、前記R15〜R18がそれぞれ独立にフッ素原子、塩素原子、臭素原子、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基またはメトキシ基であることが更に好ましい。
【0031】
また、前記一般式(2)において、前記R21〜R26がそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基またはアルコキシ基であることが更に好ましい。
【0032】
前記一般式(2)において、前記R21〜R26がそれぞれ独立に水素原子、フッ素原子、臭素原子、塩素原子、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基またはメトキシ基であることが更に好ましい。
【0033】
また、前記ポリアリレート樹脂は、更に下記一般式(3)で表される構造を含有することが好ましい。
【0034】
【化3】

【0035】
(一般式(3)中、R31〜R38はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。Xは置換基を有していてもよく、環構造の一部でもよい連結基を表し、その場合はR31〜R34の少なくとも一つ結合して環構造を形成してもよい。)
ポリアリレート樹脂が上記一般式(1)、(2)、(3)を有するときには、下記の関係を満足することが一層好ましい。
【0036】
即ち、0.2 ≦ (a+b)/(a+b+c) ≦ 0.9
(式(A)中、aはポリエステル樹脂における前記一般式(1)で表される構造の含有率(単位:モル%)を表し、bはポリエステル樹脂における前記一般式(2)で表される構造の含有率(単位:モル%)を表し、cはポリエステル樹脂における前記一般式(3)で表される構造の含有率(単位:モル%)を表す。)
また、前記ポリアリレート樹脂は、更に下記一般式(4)で表される構造を含有することが更に好ましい。
【0037】
【化4】

【0038】
(一般式(4)中、R41はそれぞれ独立に置換基を表し、mは0〜3の整数を表す。)
また、前記ポリアリレート樹脂は、更に下記一般式(5)で表される構造を含有することが更に好ましい。
【0039】
【化5】

【0040】
(一般式(5)中、R51およびR52はそれぞれ独立に置換基を表し、nおよびkはそれぞれ独立に0〜3の整数を表す。)
本発明の耐熱性フィルムの製造装置は前記目的を達成するために、直鎖状の重合性化合物を有機溶剤に溶解したドープを、走行する流延支持体上に膜状に流延する流延ダイと、前記流延された流延膜を前記流延支持体上で乾燥する乾燥装置と、前記乾燥した流延膜を前記流延支持体から剥離してフィルムを形成する剥離手段と、を備えた耐熱性フィルムの製造装置であって、前記乾燥装置は、前記流延ダイから前記剥離手段との間で前記流延支持体上に設けられたトンネル状の乾燥ゾーンと、前記乾燥ゾーンを前記流延ダイ側からゲル化乾燥ゾーンと低温急速乾燥ゾーンとに仕切る仕切板と、前記ゲル化乾燥ゾーンを通る前記流延膜の膜面温度を検出する第1温度センサーと、前記第1温度センサーの検出温度に基づいて前記ゲル化乾燥ゾーンに供給する乾燥風温度を制御すると共に、前記流延膜の乾燥速度を制御して前記流延膜をゲル化するゲル化乾燥制御手段と、前記低温急速乾燥ゾーンを通る前記流延膜の膜面温度を検出する第2温度センサーと、前記第2温度センサーの検出温度に基づいて前記低温急速乾燥ゾーンに供給する乾燥風温度を制御すると共に、前記流延膜の乾燥速度を制御して、前記ゲル化した流延膜に乾燥応力を付与する低温急速乾燥制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0041】
本発明の製造装置によれば、走行する流延支持体上に流延した流延膜の乾燥を、ゲル化乾燥ゾーンと低温急速乾燥ゾーンの乾燥条件の異なる2つの乾燥ゾーンで行うようにし、流延膜の膜面温度の検出結果に基づいて、それぞれのゾーンに供給する乾燥風温度及び乾燥速度を制御する制御手段を設けた。そして、ゲル化乾燥ゾーンでは流延膜をゲル化させ、低温急速乾燥ゾーンでは流延膜を低温状態に維持し急速乾燥することで、流延膜に大きな乾燥応力を付与するようにした。
【0042】
これにより、直鎖状の重合性化合物の分子鎖を延伸処理を行うことなく高度に配向させることができるので、低い線熱膨張係数を有する耐熱性に優れたフィルムを製造することができる。また、延伸処理を必要としないので、設備コストを削減できるだけでなく、延伸によるフィルム面への損傷を回避できるので、フィルムの平面平滑性の向上も図ることができる。
【0043】
本発明の製造装置においては、前記ゲル化乾燥制御手段には、前記流延膜がゲル化するまでの乾燥時間が入力されていると共に、該乾燥時間中の前記前記流延膜の膜面温度を前記有機溶剤の沸点−30℃〜沸点−10℃の範囲で、且つ乾燥風の風速を1m/sec以下に制御し、前記低温急速乾燥制御手段は、前記ゲル化した流延膜を、−40℃〜10℃の膜面温度で、且つ乾燥風の風速を5m/sec以上に制御することを特徴とする。
【0044】
また、本発明の製造装置においては、前記低温急速乾燥ゾーンには、前記流延膜の膜面に平行で且つ流延膜の幅方向一方端側から他方端側に一方向流れの乾燥風を供給する乾燥風供給手段が設けられていることが好ましい。このような流延膜の膜面に対して平行で、且つ流延膜の幅方向一方端側から他方端側に一方向流れの乾燥風を供給することで、乾燥風速を大きくしても膜面が波立ちにくいので、急速乾燥のための風速を大きくできる。
【発明の効果】
【0045】
本発明の耐熱性フィルムの製造方法及び製造装置によれば、延伸処理を行うことなく直鎖状の重合性化合物の分子鎖を高度に配向させることができるので、低い線熱膨張係数を有し、耐熱性に優れた樹脂フィルムを製造することができる。これにより設備コスト面のみならずフィルム品質の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本実施の形態の耐熱性フィルムの製造装置の概念図
【図2】本発明における低温急速乾燥ゾーンでの乾燥風供給方法の別態様を示した説明図
【図3A】本発明を満足する場合の試験結果を示す表図
【図3B】本発明を満足しない場合の試験結果を示す表図
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明の耐熱性フィルムの製造方法及び製造装置の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0048】
以下に、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明はここに挙げる実施形態に限定されるものではない。
【0049】
[直鎖状の重合性化合物]
本発明において使用される直鎖性の重合性化合物としては、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド、アクリル、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等があり、特に製膜性及び耐熱性(線熱膨張係数)の点からポリアリレートが好ましい。
【0050】
ポリアリレートの分子量は、40000以上であれば、線熱膨張係数を低くする点で一層好ましい。
【0051】
ポリアリレートとしては、例えば、ビスフェノールフルオレンとイソフタル酸及びテレフタル酸とから誘導されるポリアリレート、あるいはアルキル置換されたビスフェノールフルオレンとイソフタル酸及びテレフタル酸とから誘導されるポリアリレート等があるが、特に、下記一般式(1)で表される構造及び下記一般式(2)で表される構造を有することが好ましい。
【0052】
【化1】

【0053】
(一般式(1)中、R11〜R14はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、R15〜R18はそれぞれ独立に置換基を表す。)
【0054】
【化2】

【0055】
(一般式(2)中、R21〜R26はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、前記R21〜R26のうち少なくとも一つは置換基を表す。)
上記構造を有するポリアリレートは、従来のポリアリレートよりも低い線熱膨張係数を有する。
【0056】
また、前記一般式(1)において、前記R15〜R18がそれぞれ独立にフッ素原子、塩素原子、臭素原子、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基またはメトキシ基であることが更に好ましい。前記一般式(2)において、前記R21〜R26がそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基またはアルコキシ基であることが更に好ましい。
【0057】
更には、前記一般式(2)において、前記R21〜R26がそれぞれ独立に水素原子、フッ素原子、臭素原子、塩素原子、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基またはメトキシ基であることが更に好ましい。
【0058】
また、前記ポリアリレート樹脂は、更に下記一般式(3)で表される構造を含有することが好ましい。
【0059】
【化3】

【0060】
(一般式(3)中、R31〜R38はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。Xは置換基を有していてもよく、環構造の一部でもよい連結基を表し、その場合はR31〜R34の少なくとも一つ結合して環構造を形成してもよい。)
また、前記ポリアリレート樹脂は、更に下記一般式(4)で表される構造を含有することが更に好ましい。
【0061】
【化4】

【0062】
(一般式(4)中、R41はそれぞれ独立に置換基を表し、mは0〜3の整数を表す。)
また、前記ポリアリレート樹脂は、更に下記一般式(5)で表される構造を含有することが更に好ましい。
【0063】
【化5】

【0064】
(一般式(5)中、R51およびR52はそれぞれ独立に置換基を表し、nおよびkはそれぞれ独立に0〜3の整数を表す。)
(一般式(5)で表される構造)
本発明のポリエステル樹脂は、下記一般式(5)で表される構造を含有することが、Tgを高める方向に微調整し、より溶融製膜性を良好にする観点から好ましい。
【0065】
【化5】

【0066】
(一般式(5)中、R51およびR52はそれぞれ独立に置換基を表し、nおよびkはそれぞれ独立に0〜3の整数を表す。)
また、一般式(5)中のR51およびR52が表す好ましい置換基としては、アルキル基(炭素数1〜10が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基など)、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など)、アリール基(炭素数6〜20が好ましく、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基など)、アルコキシ基(炭素数1〜10が好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基など)、アシル基(炭素数2〜10が好ましく、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基など)、アシルアミノ基(炭素数1〜10が好ましく、例えば、ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基など)、ニトロ基、シアノ基などが挙げられる。より好ましくはアルキル基、ハロゲン原子、アリール基、アルコキシ基、ニトロ基であり、特に好ましくは、アルキル基、ハロゲン原子である。
【0067】
一般式(5)において、カルボニル基が連結する位置は、ナフタレン環のどの炭素でもよく、一つの環に二つのカルボニル基が連結していてもよい。カルボニル基の連結位置として好ましくは、2位または3位に一つと、6位または7位とに一つ結合することが好ましく、2位と6位とに一つずつ結合することがさらに好ましい。
【0068】
また、nおよびkはそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、nとしては0〜2の整数が好ましく、kとしては0〜2の整数が好ましい。
【0069】
以下に一般式(5)で表される構造の具体例を示すが、本発明で用いることができる一般式(5)で表される構造はこれらに限定されるものではない。
【0070】
【化6】

【0071】
(一般式(6)で表される構造)
本発明のポリエステル樹脂は、一般式(6)で表される構造を含有することが好ましい。
【0072】
【化6】

【0073】
前記一般式(6)中、R61〜R64はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。)
前記R61〜R64で表される好ましい置換基は、上記R11〜R18で表される好ましい置換基と同様である。前記R61〜R64は水素原子であることが好ましい。
【0074】
(その他の構造)
本発明のポリエステル樹脂は、芳香族ジオールまたは2価カルボン酸由来の構造として、本発明の趣旨に反しない限りにおいて前記一般式(1)〜前記一般式(6)で表される構造以外の構造を有していてもよい。なお、本明細書中、前記芳香族ジオール由来の構造とは、例えば前記一般式(1)で表される構造、前記一般式(2)で表される構造、前記一般式(3)で表される構造などを含む。本明細書中、前記ジカルボン酸由来の構造とは、例えば前記一般式(4)で表される構造、前記一般式(5)で表される構造および前記一般式(6)で表される構造などを含む。
【0075】
また、本発明の樹脂中には、エステル結合以外に、エーテル結合、カーボネート結合、スルホン結合、ケトン結合、イミド結合、アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合を単種もしくは複数種含有していてもよい。これらの結合を形成するその他の構造としては、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、ポリエステル樹脂に含有させることができることが知られている公知の構造を挙げることができる。
【0076】
(樹脂中の各構造の割合)
本発明のポリエステル樹脂は、芳香族ジオール成分が下記式(A)を満たすことが、線熱膨張係数を下げる観点から好ましい。
【0077】
0.2 ≦ (a+b)/(a+b+c) ≦ 0.9 ・・・(A)
(式(A)中、aはポリエステル樹脂における前記一般式(1)で表される構造の含有率(単位:モル%)を表し、bはポリエステル樹脂における前記一般式(2)で表される構造の含有率(単位:モル%)を表し、cはポリエステル樹脂における前記一般式(3)で表される構造の含有率(単位:モル%)を表す。)
特に前記Xがジメチル置換の炭素原子である場合には、(a+b)/(a+b+c)≧0.2とすることで線熱膨張係数を低くすることができる傾向にあり、好ましい。(a+b)/(a+b+c)の下限値は0.4以上であることがより好ましく、0.5以上であることが特に好ましい。
【0078】
また、(a+b)/(a+b+c)の上限値は透明性・延伸性の観点から0.9以下であることが好ましく、0.8以下であることがより好ましく、0.75以下であることが特に好ましい。
【0079】
一方、本発明のポリエステル樹脂は、ビフェノール由来の構造と一般式(4)、(5)で表される構造(好ましくはテレフタル酸由来の構造)が以下の式(B)を満たすことも線熱膨張係数を下げる観点から好ましいという知見が経験的に得られた。
【0080】
A+B+0.5×D+0.5×E ≧ 80 ・・・(B)
(式(B)中、Aはポリエステル樹脂中に含まれる全ての芳香族ジオール由来の構造に対する前記一般式(1)で表される芳香族ジオール由来の構造の含有率(単位:モル%)を表し、Bはポリエステル樹脂中に含まれる全ての芳香族ジオール由来の構造に対する前記一般式(2)で表される芳香族ジオール由来の構造の含有率(単位:モル%)を表し、Dはポリエステル樹脂中に含まれる全てのジカルボン酸由来の構造に対する前記一般式(4)で表されるジカルボン酸由来の構造の含有率(単位:モル%)を表し、Eはポリエステル樹脂中に含まれる全てのジカルボン酸由来の構造に対する前記一般式(5)で表されるジカルボン酸由来の構造のうち2位と6位に連結位置を持つものの含有率(単位:モル%)を表す。)
以下、前記式(B)の左辺、すなわちA+B+0.5×D+0.50×Eの値を直線成分量とも言う。
【0081】
前記直線成分量の式(B)の数式的な意味は、一軸延伸して得られたフィルムの線熱膨張係数と関係がある。
【0082】
前記直線成分量、すなわち前記式(B)の左辺の値は、80〜120であることがより好ましく、90〜120であることが特に好ましい。
【0083】
本発明のポリエステル樹脂は、前記一般式(4)で表される構造(好ましくはテレフタル酸由来の構造)の重量が前記一般式(6)で表される構造(好ましくはイソフタル酸由来の構造)の重量よりも大きいことが好ましい。
【0084】
前記一般式(4)で表される構造と前記一般式(6)で表される構造の重量比は、55:45〜85:15であることが好ましく、55:45〜75:25であることがより好ましく、60:40〜75:25であることが特に好ましい。前記一般式(4)で表される構造と前記一般式(6)で表される構造の重量比が55:45〜85:15であると、線熱膨張係数が低くなるため、好ましい。
【0085】
特に、前記一般式(4)で表される構造と前記一般式(6)で表される構造の重量比が55:45以上であれば線熱膨張係数が小さくなり好ましく、85:15以下であれば溶融温度が高くなり過ぎず、溶融が容易となり、溶融後に得られるフィルムは白濁しにくくなるため好ましい。
【0086】
一方、本発明のポリエステル樹脂は、前記一般式(4)で表される構造の重量が前記一般式(6)で表される構造の重量と等しいまたは小さい場合は、前記一般式(1)で表される構造と前記一般式(2)で表される構造の含有率の合計が高いことも好ましい。
【0087】
そして、直鎖性の重合性化合物を有機溶剤に溶解又は分散させる濃度としては、1.0質量%〜70質量%の範囲が好ましい。
【0088】
(樹脂の製造方法)
本実施形態の樹脂は、一般にモノマーとしてビフェノール誘導体、ジカルボン酸および/またはその誘導体を用いて合成することができる。また、好ましくは、ビスフェノール誘導体などを用いて共重合体として合成してもよい。
【0089】
置換基を有するビフェノール誘導体の一般的合成法として、Macromolecules誌、1996, 29, 3727-3735頁、繊維化学雑誌、第84巻、第2号(1963)143-145頁に記載の方法を挙げることができる。
【0090】
ジカルボン酸誘導体は、ジアルキルナフタレンに置換基を導入し、アルキル基を酸化する方法に類似の方法で合成することができる。ジアルキルナフタレンに置換基を導入する一般的方法としては、Journal of Organic Chemistry誌、2003年、68(22)、8373-8378頁;Hetreroatom Chemistry誌, 2001年、12(4)、287-292頁;Journal of the Chemical Society, Perkin Transactions 1 : Organic and Bio-Organic Chemistry、1981年、(3)746-750頁;Journal of the Chemical Society [Section] D:Chemical Communications,(24)、1487頁、1969年に記載の方法を挙げることができる。
【0091】
ナフタレンに置換したアルキル基を酸化する一般的方法としては、Journal of organicChemistry, 50(22), 4211-4218頁、1985年に記載の方法を挙げることができる。
【0092】
上記モノマーを用いたポリアリレートの一般的合成法として、新高分子実験学3 高分子の合成・反応(2)、共立出版(87項〜95項)に記載の方法を挙げることができる。
【0093】
また、合成時に各モノマー成分を添加する順番については特に制限はなく、全てのモノマー成分を同時に添加しても、ビフェノールとビスフェノールのみを先に重合させた後でジカルボン酸誘導体を重合させてもよい。
【0094】
また二価カルボン酸ハライドと二価フェノールを有機溶剤中にて反応させる溶液重合、二価のカルボン酸と二価のフェノールをジアリルカーボネートもしくは無水酢酸の存在下で反応させる溶融重縮合により合成してもよい。
【0095】
(樹脂の具体例)
以下に本発明のポリエステル樹脂の具体例を示すが、本発明で用いることができるポリエステル樹脂はこれらに限定されるものではない。なお、P−1〜P−9中、カッコ右下の数字はポリエステル樹脂中の各構造のモル%を表す。
【0096】
【化7】

【0097】
【化8】

【0098】
(樹脂の特性)
本実施の形態のポリエステル樹脂は共重合体である。その重合形式はランダム十号であっても、ブロック共重合であっても、その他の重合形式であってもよい。
【0099】
本実施の形態のポリエステル樹脂は、170℃〜270℃のガラス転移温度(Tg)を有し、好ましくは180℃〜260℃のガラス転移温度を有し、より好ましくは190℃〜260℃のガラス転移温度を有する。
【0100】
本実施の形態のポリエステル樹脂が上述の温度範囲のガラス転移温度を有するので、このポリエステル樹脂かられるフィルムは高い透明性を有する。また、本実施形態のポリエステル樹脂のガラス転移温度が170℃以上である。したがって、この樹脂を利用した樹脂基板の上に高温プロセスでITOを積層した場合でも、樹脂基板の寸法安定性を高めることができる。
【0101】
(溶解性)
本発明において、直鎖性の重合性化合物を溶解する溶媒としては、直鎖性の重合性化合物を溶解することが可能で、且つ低温乾燥条件下でも容易に蒸発できる低沸点有機溶媒が好ましい。具体的には、ハロゲン化炭化水素(塩化メチレン、ジクロロメタン、クロロホルム等)、アルコール(メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール等)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン等)、エステル(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル等)、及びエーテル等を好適に使用できる。
【0102】
これらの中でも炭素原子数1〜7のハロゲン化炭化水素が好ましく用いられ、ジクロロメタンが最も好ましく用いられる。直鎖性重合性化合物の溶解性、流延膜の流延支持体からの剥ぎ取り性、フィルムの機械的強度など及びフイルムの光学特性などの物性の観点から、ジクロロメタンのほかに炭素原子数1〜5のアルコールを1種ないし数種類混合することが好ましい。アルコールの含有量は、溶媒全体に対して2質量%〜25質量%であることが好ましく、5質量%〜20質量%であることがより好ましい。
【0103】
[耐熱性フィルムの製造装置]
先ず、直鎖性の重合性化合物を有機溶剤に溶解又は分散させてドープを製造する。
【0104】
製造されたドープは、図1に示すように、フィルム製造装置10のストックタンク12へ送られる。ストックタンク12には、モータで回転する攪拌機14が取り付けられ、ストック中のドープの濃度のバラツキを防止する。ストックタンク14のドープは、送液ポンプ16により送液配管18を流れ、濾過装置20を介して流延ダイ22に送られる。流延ダイ22に送られたドープは、流延ダイ22のスリット22Aから回転走行する流延バンド24(流延支持体)上に薄膜状に流延される。流延バンド24は、無端状に形成されたバンドであり、水平方向に離間された一対の回転ローラ26、28に掛け渡される。回転ローラ26、28のうち回転ローラ28は、駆動装置30に接続されると共に、駆動装置30は回転駆動制御装置32に接続される。これにより、流延バンド24の回転走行速度が制御される。流延バンド24の走行速度としては、10m/分以上200m/分の範囲が好ましく、15m/分以上150m/分以下の範囲であることがより好ましく、20m/分以上120m/分以下の範囲であることが最も好ましい。走行速度が10m/分未満の場合には、製造されるフィルムの生産性が落ちる。逆に、200m/分を超えた場合には、流延ダイ22から吐出されたドープが流延バンド24との間で架橋される流延ビード34Aが安定して形成されず、流延膜34の面状が悪化する虞がある。
【0105】
流延バンド24の幅は、特に限定されるものではないが、流延膜34の流延幅の1.1倍以上2.0倍の範囲であることが好ましい。また、流延バンド24の長さは、流延バンド24の走行速度にもよるが、20m以上200m以下の範囲であることが好ましい。また、流延バンド24の厚みは0.5mm以上2.5mm以下の範囲であることが好ましく、その表面粗さ(Ra)は0.05μm以下となるように研磨されていることが好ましい。流延バンド24は、ステンレス製であって、十分な耐腐食性と強度を有するSUS316製であることが好ましい。流延バンド24の全体の厚みムラは、0.5%以下であることが好ましい。流延バンド24の表面欠陥は、最小限に抑える必要があり、具体的には、30μm以上のピンホールが無く、10μm以上30μm未満のピンホールは1個/mであり、10μm未満のピンホールは、2個/mであることが好ましい。
【0106】
さらに、流延ダイ22には減圧チャンバ25が取り付けられおり、この減圧チャンバ25は、上記した流延ビード34Aの背面部を減圧し、これにより流延ビード34Aを安定させる。なお、減圧チャンバ25は省略してもよい。
【0107】
また、流延ダイ22、流延バンド24などは流延室36に配置されている。流延室36には、その内部温度を所定の温度に保持する温調設備(図示せず)と、揮発している有機溶媒を凝縮回収するコンデンサ(図示せず)とが設けられている。
【0108】
そして、流延ダイ22に近い回転ローラ28の近傍には、流延膜34を流延バンド24から剥離する剥離ローラ38が設けられる。
【0109】
次に、流延ダイ22から流延バンド24に流延された流延膜34を乾燥するための乾燥装置40について説明する。
【0110】
乾燥装置40は、流延ダイ22と剥離ローラ38との間の流延バンド24上を覆うケーシング42によって、トンネル状の乾燥ゾーン44が形成されると共に、乾燥ゾーン44は仕切板46によって乾燥前半のゲル化乾燥ゾーン44Aと乾燥後半の低温急速乾燥ゾーン44Bとに区画される。
【0111】
ゲル化乾燥ゾーン44Aには、乾燥風を吹き出して流延膜34を乾燥する複数のノズル48が流延バンド24の走行方向に沿って複数設けられる。これらのノズル48はエア配管50によって第1の温度調整器52及び第1送風ファン54に接続される。これにより、第1の温度調整器52で所定温度に調整された乾燥風がノズル48から流延膜34に向けて吹き出される。そして、第1の送風ファン54を調整することにより、流延膜34を乾燥する乾燥風の風速を制御する。
【0112】
また、流延膜34上には、膜面温度を計測する非接触式の第1温度センサー56が設けられ、計測された膜面温度はゲル化乾燥制御手段58に送られる。非接触式の第1温度センサー56としては、例えば放射型膜面温度計(例えば堀場製作所製、IT540S)を好適に使用することができる。
【0113】
ゲル化乾燥制御手段58は、第1温度センサー56からの膜面温度情報に基づいて流延膜34の膜面温度が所定温度範囲に設定されるように第1の温度調整器52で乾燥風温度を制御すると共に、送風ファンの風量を調整することにより、流延膜34を乾燥する乾燥速度を制御する。
【0114】
また、流延バンド24を挟んでゲル化乾燥ゾーン44Aの反対側面には、内部に温水を循環させた温度調整プレート60を配置し、流延膜34の膜面温度が上記所定温度になるように流延バンド24自体を加熱又は冷却することが好ましい。
【0115】
同様に、低温急速乾燥ゾーン44Bには、乾燥風を吹き出して流延膜34を乾燥する複数のノズル62が流延バンド24の走行方向に沿って複数設けられる。これらのノズル62はエア配管64によって第2の温度調整器66及び第2の送風ファン68に接続される。これにより、第2の温度調整器66で所定温度に調整された乾燥風がノズル62から流延膜34に向けて吹き出される。
【0116】
また、流延膜34上には、膜面温度を計測する非接触式の第2温度センサー70が設けられ、計測された膜面温度は低温急速乾燥制御手段72に送られる。なお、低温急速乾燥ゾーン44Bの乾燥路長は、ゲル化乾燥ゾーン44Aの乾燥路長よりも一般的に長いため、第2温度センサー70は複数箇所に設置することが好ましい。非接触式の温度センサーとしては、上記したのと同様である。そして、低温急速乾燥制御手段72は、第2温度センサー70からの膜面温度情報に基づいて流延膜34の膜面温度が所定温度範囲に設定されるように第2の温度調整器66で乾燥風温度を制御すると共に、第2の送風ファン68を調整することにより、流延膜34を乾燥する乾燥風の風速を制御する。
【0117】
また、流延バンド24を挟んで低温急速乾燥ゾーン44Bの反対側面には、内部に冷媒を循環させた冷却用プレート74を配置し、流延膜34の膜面温度が上記所定温度になるように流延バンド24自体を冷却することが好ましい。
【0118】
なお、本実施形態では、流延支持体として流延バンド24を用いたが、回転ドラム式の流延支持体を用いることもできる。この回転ドラムは、その回転ムラが0.2mm以下となるように高精度で回転できるものが好ましい。回転ドラム45の表面の平均粗さRaは、0.01μm以下であることが好ましい。回転ドラムの表面は、十分な硬度と耐久性を持たせるために、クロムメッキ処理されていることが好ましい。回転ドラムの表面欠陥は、本実施形態における流延バンド24の条件と同様であることが好ましい。
【0119】
次に、上記の如く構成された耐熱性フィルムの製造装置10を用いて、耐熱性フィルムを製造する方法を説明する。
【0120】
流延ダイ22から流延バンド24上にドープを薄膜状に流延することにより、流延膜34は流延バンド24の走行によって図1の反時計周りに移動し、ゲル化乾燥ゾーン44A及び低温急速乾燥ゾーン44Bを通って乾燥された後、剥離ローラ38によって流延バンド24から剥離される。
【0121】
かかる流延膜34の乾燥において、ゲル化乾燥ゾーン44Aでは、流延膜34の膜面温度を有機溶剤の沸点−30℃〜沸点−10℃の範囲の一定温度に設定して、流延膜34がゲル化するまで乾燥風の風速を1m/sec以下で該流延膜34中の溶剤を飛ばす(ゲル化乾燥工程)。これにより、ゲル化乾燥ゾーン44Aでは、流延膜34に乾燥応力が発現するゲル化状態が形成される。ゲル化乾燥工程における流延膜34は有機溶剤の含有量が高く粘度が低いため、乾燥風の風速を1m/秒を超えて大きくすると、流延膜34の膜面が波立ち易くなり、製造されるフィルムの平面平滑性が損なわれる虞がある。
【0122】
ここで、流延膜34のゲル化とは、流延膜が流動性を失って乾燥応力が働き始めることを言い、乾燥応力が働き始める瞬間をゲル化点と称することとする。
【0123】
流延膜34がゲル化点に達したか否かは、流延膜34の歪みを歪みゲージで計測することができる。
【0124】
したがって、ゲル化点における流延膜34中の溶剤含有量と、設定した乾燥条件で流延膜34を乾燥したときにゲル化点の溶媒含有量になるまでの乾燥時間との関係を予備試験等に予め求めおけば、乾燥時間に基づいてゲル化点を知ることができる。
【0125】
そして、流延膜34がゲル化点に達するまでの乾燥時間を確保できるように、ゲル化乾燥ゾーン44Aの乾燥路長を設定するか、あるいは回転駆動制御装置32により流延バンド24の走行速度を制御する。
【0126】
次に、ゲル化した流延膜34は、低温急速乾燥ゾーン44Bにおいて低温急速乾燥される。即ち、流延膜34の膜面温度を−40℃〜10℃の範囲の一定の低温度に設定し、且つ乾燥速度5m/min以上で急速乾燥する。なお、ゲル化乾燥ゾーン44Aから低温急速乾燥ゾーン44Bに移動した直後は膜面温度が−40℃〜10℃にならなくても、低温急速乾燥ゾーン44Bにおける平均膜面温度が−40℃〜10℃に入ればよい。
【0127】
低温急速乾燥ゾーン44Bでは膜面を冷却しなくてはならず乾燥風の温度を高くして乾燥速度を上げることはできない。これにより、乾燥風の温度を低温とし、風速を5m/sec以上に上げて急速乾燥する。したがって、ドープを調製する有機溶剤としてできるだけ沸点の低い溶剤を使用することが好ましく、乾燥風を予め除湿して乾いた乾燥風を供給することが好ましい。
【0128】
また、乾燥風の風速以外に低温急速乾燥工程での急速乾燥の規定方法としては、流延膜の溶剤含有率が15質量%以下になるまでの乾燥時間で規定してもよく、その場合には数十分以内に流延膜の溶剤含有率が15質量%以下になるように急速乾燥することが好ましい。したがって、ゲル化した流延膜の溶剤含有率を数十分以内に15質量%以下にすることができるのであれば、乾燥風による乾燥以外の乾燥方法を適用することが可能である。
【0129】
このとき、風速の大きな乾燥風を流延膜34の膜面に向けて吹くと膜面が波立つ恐れがある場合には、図2に示すように、流延膜34の膜面に平行で且つ流延膜34の幅方向一方端側から他方端側に一方向流れの乾燥風を供給する一方向乾燥風供給手段76を設けるとよい。
【0130】
即ち、図2に示すように、低温急速乾燥ゾーン44Bを形成するケーシング42の一方側の側面には、流延バンド24の走行方向に沿って複数の吹出ノズル78が設けられ、吹出ノズル78はエア配管64(図1参照)を介して第2の温度調整器66及び第2の送風ファン68に接続される。また、ケーシング42の他方側の側面には、吹出ノズル78に対向して吸引ノズル80が設けられ、吸引配管82を介して吸引装置(図示せず)に接続される。これにより、吹出ノズル78から吹き出された−40℃〜10℃の乾燥風は、流延膜34の膜面上を幅方向に流れて吸引ノズル80から吸引される。これにより、同じ風速であっても、膜面に向けて乾燥風を吹く場合よりも膜面が波立ちにくくなるので、急速乾燥のための風速を上げることができる。
【0131】
なお、一方向乾燥風供給手段76を低温急速乾燥ゾーン44Bに設ける例で説明したが、ゲル化乾燥ゾーン44Aにも設けてもよい。
【0132】
このように、乾燥応力が発現するゲル化状態の流延膜34の膜面温度を−40℃〜10℃の範囲の低温状態にすることで、流延膜34を構成する直鎖状の重合性化合物の分子運動性を著しく低下させることができる。そして、低温状態にある流延膜34を乾燥速度5m/min以上で急速乾燥することにより、流延膜34に対して大きな乾燥応力を付与することができる。したがって、延伸処理を行ったと同様の力が流延膜34に作用するので、直鎖状の重合性化合物の分子鎖が高度に配向する。これにより、低い線熱膨張係数を有し、耐熱性に優れたフィルムを製造することができる。
【0133】
また、延伸処理を行うための延伸ローラやテンター装置を必要としないので、耐熱性フィルム製造装置の設備コストを削減できる。更には、延伸ローラにフィルム面が接触することによる傷等の発生についても心配なくなるので、耐熱性フィルムの面質向上を図ることができる。
【0134】
(製造された耐熱性フィルムの線膨張係数)
製造された耐熱性フィルムは、線膨張係数が50ppm/K以下であることが好ましい。
【0135】
線膨張係数(CTE)が50ppm/K以下の耐熱性フィルムであれば、ディスプレイ基板、特にITO(酸化インジウムスズ)をのせることができるような樹脂基板として要望されている線膨張係数を満足する。即ち、CTEが50ppm/K以下であれば、フィルム上に無機薄膜を積層した場合、加熱時に膨張率の差によるクラックの発生、フィルムのそりを抑制できる。
【0136】
(製造された耐熱性フィルムの機能層及び用途等)
(機能層)
製造された耐熱性フィルム表面には、用途に応じて他の層を形成してもよい。また他の部品との密着性を高める目的で、フィルム表面上にケン化、コロナ処理、火炎処理、グロー放電処理等の処理を行ってもよい。さらに、フィルム表面にアンカー層を設けてもよい。
【0137】
〈ガスバリア層〉
耐熱性フィルムは、ガス透過性を抑制するために、少なくとも片面にガスバリア層を積層することもできる。好ましいガスバリア層としては、例えば、珪素、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、ジルコニウム、チタン、イットリウムおよびタンタルからなる群から選ばれる1種または2種以上の金属を主成分とする金属酸化物、珪素、アルミニウム、ホウ素の金属窒化物またはこれらの混合物で形成された膜を挙げることができる。この中でも、ガスバリア性、透明性、表面平滑性、屈曲性、膜応力、コスト等の点から珪素原子数に対する酸素原子数の割合が1.5〜2.0の珪素酸化物を主成分とする金属酸化物で形成された膜が良好である。これら無機化合物からなるガスバリア層は、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法、Cat−CVD法等の気相中より材料を堆積させて膜形成する気相堆積法により作製できる。中でも、特に優れたガスバリア性が得られるスパッタリング法およびCat−CVD法が好ましい。またガスバリア層を設けている間に50〜250℃に昇温してもよい。
【0138】
前記ガスバリア層の厚みは、10〜300nmであることが好ましく、30〜200nmであることがさらに好ましい。
【0139】
前記ガスバリア層は、後述する透明導電層と同じ側、反対側いずれに設けてもよい。
【0140】
耐熱性フィルムのガスバリア性能は、40℃、相対湿度90%で測定した水蒸気透過度が0〜5g/m2・dayであることが好ましく、0〜3g/m2・dayであることがより好ましく、0〜2g/m2・dayであることがさらに好ましい。また、40℃、相対湿度90%で測定した酸素透過度は、0〜1ml/m2・day・atm(0〜1×105ml/m2・day・Pa)であることが好ましく、0〜0.7ml/m2・day・atm(0〜0.7×105ml/m2・day・Pa)であることがより好ましく、0〜0.5ml/m2・day・atm(0〜0.5×105ml/m2・day・Pa)であることがさらに好ましい。ガスバリア性能が前記範囲内であれば、例えば有機EL表示装置や液晶表示装置に用いた場合、水蒸気および酸素によるEL素子の劣化を実質的になくすことができるため好ましい。
【0141】
ガスバリア性能を向上させる目的で、ガスバリア層と隣接して欠陥補償層を形成することが好ましい。欠陥補償層としては、例えば、(1)米国特許第6171663号明細書、特開2003−94572号公報記載のようにゾルゲル法を用いて作製した無機酸化物層、(2)米国特許第6413645号明細書に記載の有機物層を用いることができる。これらの欠陥補償層は、真空下で蒸着後、紫外線または電子線で硬化させる方法、または塗布した後、加熱、電子線、紫外線等で硬化させることにより作製することができる。欠陥補償層を塗布方式で作製する場合には、従来の種々の塗布方法、例えば、スプレーコート、スピンコート、バーコート等の方法を用いることができる。
【0142】
耐熱性フィルムには、耐薬品性付与を目的として無機バリア層、有機バリア層、有機−無機ハイブリッドバリア層などを設けてもよい。
【0143】
〈透明導電層〉
耐熱性フィルムの少なくとも片面側には、透明導電層を積層してもよい。透明導電層としては、公知の金属膜、金属酸化物膜等を適用できる。中でも、透明性、導電性、機械的特性に優れた金属酸化物膜を透明導電層とすることが好ましい。金属酸化物膜は、例えば、不純物としてスズ、テルル、カドミウム、モリブテン、タングステン、フッ素、亜鉛、ゲルマニウム等を添加した酸化インジウム、酸化カドミウムまたは酸化スズの金属酸化物膜;不純物としてアルミニウムを添加した酸化亜鉛、酸化チタン等の金属酸化物膜が挙げられる。中でも酸化スズから主としてなり、酸化亜鉛を2〜15質量%含有した酸化インジウムの薄膜が、透明性、導電性が優れており、好ましく用いられる。
【0144】
これら透明導電層の成膜方法は、目的の薄膜を形成できる方法であれば、いかなる方法でもよい。例えば、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法、Cat−CVD法等の気相中より材料を堆積させて膜形成する気相堆積法などが適しており、特許第3400324号公報、特開2002−322561号公報、特開2002−361774号公報記載の方法で成膜することができる。中でも、特に優れた導電性・透明性が得られるという観点から、スパッタリング法が好ましい。
【0145】
スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、またはプラズマCVD法の好ましい真空度は0.133mPa〜6.65Pa、好ましくは0.665mPa〜1.33Paである。透明導電層を形成する前に、プラズマ処理(逆スパッタ)、またはコロナ処理のように基材フィルムに表面処理を加えることが好ましい。また透明導電層を設けている間に50〜200℃に昇温してもよい。
【0146】
このようにして得られた透明導電層の膜厚は、20〜500nmであることが好ましく、50〜300nmであることがさらに好ましい。
【0147】
透明導電層の25℃、相対湿度60%で測定した表面電気抵抗は、0.1〜200Ω/□であることが好ましく、0.1〜100Ω/□であることがより好ましく。0.5〜60Ω/□であることがさらに好ましい。また、透明導電層の光透過性は、80%以上であることが好ましく、83%以上であることがより好ましく、85%以上であることがさらに好ましい。
【0148】
[画像表示装置]
以上説明した本実施の形態の耐熱性フィルムは、画像表示装置に用いることができる。ここで、画像表示装置の種類は特に限定されず、従来知られているものを挙げることができる。また、本発明のフィルムを基板として用いて表示品質に優れたフラットパネルディスプレイを作製することができる。前記フラットパネルディスプレイとしては液晶表示装置、プラズマディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス(EL)、無機エレクトロルミネッセンス、蛍光表示管、発光ダイオード、電界放出型などが挙げられ、これら以外にも従来ガラス基板が用いられてきたディスプレイ方式のガラス基板に代わる基板として用いることができる。さらに、本発明のフィルムは、フラットパネルディスプレイ以外にも太陽電池、タッチパネルなどの用途にも応用が可能である。タッチパネルは、例えば、特開平5−127822号公報、特開2002−48913号公報等に記載のものに応用することができる。
【0149】
また、耐熱性フィルムに薄膜トランジスタTFTを作製することができる。TFTは、特開平11−102867号公報、特表平10−512104号公報、特開2001−68681号公報に開示されている公知の方法で作製することができる。さらに、これらの基板はカラー表示のためのカラーフィルターを有していてもよい。カラーフィルターは、いかなる方法を用いて作製してもよいが、フォトリソグラフィー手法を用いて作製することが好ましい。
【0150】
作製するTFTはアモルファスシリコンTFTでもよく、多結晶シリコンTFTでもよい。アモルファスシリコンの多結晶化にはレーザー照射によるアニール法が好ましく用いられる。
【0151】
TFTの半導体層のシリコンを製膜する方法として、スパッタリング法、プラズマCVD法、ICP−CVD法、Cat−CVD法などが挙げられるが、スパッタリング法が好ましい。スパッタリング法で作製することでシリコン薄膜中の水素濃度を低減することができ、多結晶化のためのレーザー照射によるシリコン層の剥がれを防ぐことができる。
【0152】
耐熱性フィルム上にTFT作製に必要な真性シリコン薄膜、不純物シリコン薄膜、窒化ケイ素薄膜、酸化ケイ素薄膜などはプラズマCVDで製膜できるが、その際の基板温度は250℃以下であることが好ましい。
【0153】
画素電極にはITO、IZOをスパッタ法にて作製することができる。抵抗率を下げるための熱処理温度は250℃以下であることが好ましい。
【0154】
作製するTFTの構造はチャネルエッチング型、エッチングストッパ型、トップゲート型、ボトムゲート型などいずれの構造であってもよい。
【0155】
耐熱性フィルムを基板として液晶表示装置用途などで使用する場合、光学的均一性を達成するために、フィルムを構成する樹脂組成物は非晶性ポリマーであることが好ましい。さらに、レタデーション(Re)、およびその波長分散を制御する目的で、固有複屈折の符号が異なる樹脂を組み合わせたり、波長分散の大きい(あるいは小さい)樹脂を組み合わせたりすることができる。
【0156】
耐熱性フィルムは、レターデーション(Re)を制御し、ガス透過性や力学特性を改善する観点からは、異種樹脂組成物を組み合わせて積層等することが好ましい。異種樹脂組成物の好ましい組み合わせは特に制限はなく、前記したいずれの樹脂組成物も使用可能である。
【0157】
反射型液晶表示装置は、下から順に、下基板、反射電極、下配向膜、液晶層、上配向膜、透明電極、上基板、λ/4板、および偏光膜の構成を一般に有している。このうち本発明のフィルムは、透明電極および/または上基板として用いることができる。カラー表示の場合には、さらにカラーフィルター層を反射電極と下配向膜との間、または上配向膜と透明電極との間に形成することが好ましい。
【0158】
透過型液晶表示装置は、下から順に、バックライト、偏光板、λ/4板、下透明電極、下配向膜、液晶層、上配向膜、上透明電極、上基板、λ/4板、および偏光膜の構成を一般に有している。このうち本発明のフィルムは上透明電極および/または上基板として用いることができる。カラー表示の場合には、さらにカラーフィルター層を下透明電極と下配向膜との間、または上配向膜と透明電極との間に設けることが好ましい。
【0159】
液晶層(液晶セル)の種類は特に限定されないが、TN(Twisted Nematic)、IPS(In-Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti-ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensated Bend)、STN(Super Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)、およびHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。また、前記表示モードを配向分割した表示モードも提案されている。本発明のフィルムは、表示モードの液晶表示装置に用いることも有効である。また、透過型、反射型、半透過型のいずれの液晶表示装置に用いても有効である。
【0160】
液晶セルおよび液晶表示装置については、特開平2−176625号公報、特公平7−69536号公報、MVA(SID97,Digestof tech. Papers
(予稿集)28(1997)845)、SID99, Digest of tech. Papers(予稿集)30(1999)206)、特開平11−258605号公報、SURVAIVAL(月刊ディスプレイ、第6巻、第3号(1999)14)、PVA(Asia Display 98,Proc.of the−18th−Inter. Display res.Conf.(予稿集)(1998)383)、Para−A(LCD/PDP International99)、DDVA(SID98, Digest of tech. Papers(予稿集)29(1998)838)、EOC(SID98,Digest of tech. Papers(予稿集)29(1998)319)、PSHA(SID98, Digestof tech. Papers(予稿集)29(1998)1081)、RFFMH(AsiaDisplay 98, Proc.of the−18th−Inter. Displayres.Conf. (予稿集)(1998)375)、HMD(SID98, Digest of tech. Papers (予稿集)29(1998)702)、特開平10−123478号公報、国際公開
第98/48320号パンフレット、特許第3022477号公報、および国際公開第00/65384号パンフレット等に記載されている。
【0161】
耐熱性フィルムは、有機EL表示用途に好適に使用できる。有機EL表示装置の具体的な層構成としては、陽極/発光層/透明陰極、陽極/発光層/電子輸送層/透明陰極、陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/透明陰極、陽極/正孔輸送層/発光層/透明陰極、陽極/発光層/電子輸送層/電子注入層/透明陰極、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/透明陰極等が挙げられる。
【0162】
耐熱性フィルムが使用できる有機EL表示装置は、前記陽極と前記陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2〜40V)、または直流電流を印加することにより、発光を得ることができる。これら発光素子の駆動については、例えば、特開平2−148687号、同6−301355号、同5−29080号、同7−134558号、同8−234685号、同8−241047号等の各公報、米国特許5828429号、同6023308号の各明細書、日本特許第2784615号公報等に記載の方法を利用することができる。
【0163】
有機EL表示装置のフルカラー表示方式としては、カラーフィルター方式、3色独立発光方式、色変換方式などいずれの方式を用いてもよい。
【0164】
液晶表示措置、有機EL表示装置の駆動方式としてはパッシブマトリックス、アクティブマトリックスのいずれでもよい。
【0165】
耐熱性フィルムは、光学フィルム、位相差フィルム、偏光板保護フィルム、透明導電フィルム、表示装置用基板、フレキシブルディスプレイ用基板、フラットパネルディスプレイ用基板、太陽電池用基板、タッチパネル用基板、フレキシブル回路用基板、光ディスク保護フィルムなどに用いることができる。
【0166】
[実施例1]
次に本発明の耐熱性フィルムの製造方法の具体的な実施例を説明する。
【0167】
(ポリマーの合成)
攪拌装置を備えた合成タンクに、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4'−ビスヒドロキシビフェニル 1.056t、3,3’−ジメチル−4,4'−ビスヒドロキシビフェニル 0.468t、ビスフェノールA 0.996t、ハイドロサルファイトナトリウム36Kg、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロライド160Kg、塩化メチレン39m、および水45mを添加し、窒素気流下攪拌し溶解した。該溶液中に、テレフタル酸クロライド 1.78t、2,6−ナフタレンジカルボン酸クロライド 0.536tを塩化メチレン18mに溶解した溶液を添加した。
【0168】
さらに2mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液11.4mおよび水3mの混合液を15〜20℃で1時間かけて滴下した。滴下終了後3時間攪拌した後、反応液を別の合成タンクに移し、酢酸0.18mおよび酢酸エチル180mをゆっくり添加した。得られたポリマー粉体を濾取したのち、酢酸エチル100m、水100m、メタノール100mで順次洗浄し乾燥することにより、ポリエステル樹脂3.64t得た。
【0169】
GPC(THF溶媒;ポリスチレン換算(東ソー(株)製、HLC−8120GPC)による測定の結果、重量平均分子量は105000であった。また得られたポリマーを塩化メチレンに溶解し、ガラス板上に流延後、乾燥して得られた厚さ100μmのフィルムについてTMA8310(理学電気株式会社製、Thermo Plusシリーズ)を用いてガラス転移温度を測定したところ260℃であった。
【0170】
(フィルム作成)
合成したポリマーを、塩化メチレンに9.5質量%濃度となるように溶解し、ドープを調製した。このドープを均一に攪拌した後、濾過装置を通して流延ダイに送液し、流延バンド上に薄膜状に流延した。
【0171】
そして、流延バンド上に流延した流延膜を、下記の各乾燥条件で乾燥した後、剥離ローラにより流延バンドから剥離した。
【0172】
各乾燥条件は、A〜Dの条件を全て満足する場合と、A〜Dの条件の少なくとも1つを満足しない場合であり、得られたフィルムについて、「線熱膨張係数(CTE)」、「表面平滑性」及び「透明性」の3項目について評価した。
【0173】
・乾燥条件A…ゲル化乾燥ゾーンにおいて流延膜をゲル化させる膜面温度T1が塩化メチレンの沸点(40℃)−30℃〜沸点−10℃であること。即ち膜面温度T1が10℃〜30℃であること。
【0174】
・乾燥条件B…ゲル化乾燥ゾーンにおいて乾燥風の風速が1m/sec以下であること。
【0175】
・乾燥条件C…低温急速乾燥ゾーンにおける流延膜の膜面温度T2が−40℃〜10℃の範囲内であること。
【0176】
・乾燥条件D…低温急速乾燥ゾーンにおける乾燥風の風速が5m/sec以上であること。
【0177】
(実施例の乾燥条件…図3A)
・試験1…ゲル化乾燥における流延膜の膜面温度T1が30℃で乾燥風速が0.01m/sec、低温急速乾燥における流延膜の膜面温度T2が−20℃、乾燥風速が20m/secであり、乾燥条件A、B、C,Dの全てを満足する。
【0178】
・試験2…ゲル化乾燥における流延膜の膜面温度T1が30℃で乾燥風速が0.1m/sec、低温急速乾燥における流延膜の膜面温度T2が0℃、乾燥風速が15m/secであり、乾燥条件A、B、C、Dの全てを満足する。
【0179】
・試験3…ゲル化乾燥における流延膜の膜面温度T1が30℃で乾燥風速が0.1m/sec、低温急速乾燥における流延膜の膜面温度T2が10℃、乾燥風速が5m/secであり、乾燥条件A、B、C、Dの全てを満足する。
【0180】
・試験4…ゲル化乾燥における流延膜の膜面温度T1が20℃で乾燥風速が0.01m/sec、低温急速乾燥における流延膜の膜面温度T2が−20℃、乾燥風速が15m/secであり、乾燥条件A、B、C、Dの全てを満足する。
【0181】
・試験5…ゲル化乾燥における流延膜の膜面温度T1が20℃で乾燥風速が1m/sec、低温急速乾燥における流延膜の膜面温度T2が−10℃、乾燥風速が15m/secであり、乾燥条件A、B、C、Dの全てを満足する。
【0182】
・試験6…ゲル化乾燥における流延膜の膜面温度T1が20℃で乾燥風速が1m/sec、低温急速乾燥における流延膜の膜面温度T2が0℃、乾燥風速が10m/secであり、乾燥条件A、B、C、Dの全てを満足する。
【0183】
・試験7…ゲル化乾燥における流延膜の膜面温度T1が20℃で乾燥風速が0.01m/sec、低温急速乾燥における流延膜の膜面温度T2が10℃、乾燥風速が5m/secであり、乾燥条件A、B、C、Dの全てを満足する。
【0184】
・試験8…ゲル化乾燥における流延膜の膜面温度T1が20℃で乾燥風速が0.1m/sec、低温急速乾燥における流延膜の膜面温度T2が0℃、乾燥風速が20m/secであり、乾燥条件A、B、C、Dの全てを満足する。
【0185】
・試験9…ゲル化乾燥における流延膜の膜面温度T1が30℃で乾燥風速が1m/sec、低温急速乾燥における流延膜の膜面温度T2が0℃、乾燥風速が15m/secであり、乾燥条件A、B、C、Dの全てを満足する。
【0186】
・試験10…ゲル化乾燥における流延膜の膜面温度T1が10℃で乾燥風速が0m/sec、低温急速乾燥における流延膜の膜面温度T2が−20℃、乾燥風速が10m/secであり、乾燥条件A、B、C、Dの全てを満足する。
【0187】
・試験11…ゲル化乾燥における流延膜の膜面温度T1が10℃で乾燥風速が0.01m/sec、低温急速乾燥における流延膜の膜面温度T2が−10℃、乾燥風速が5m/secであり、乾燥条件A、B、C、Dの全てを満足する。
【0188】
・試験12…ゲル化乾燥における流延膜の膜面温度T1が10℃で乾燥風速が0.1m/sec、低温急速乾燥における流延膜の膜面温度T2が0℃、乾燥風速が20m/secであり、乾燥条件A、B、C、Dの全てを満足する。
【0189】
(比較例の乾燥条件…図3B)
・試験13…ゲル化乾燥における流延膜の膜面温度T1が30℃で乾燥風速が2m/sec、低温急速乾燥における流延膜の膜面温度T2が0℃、乾燥風速が3m/secであり、乾燥条件A、Cを満足するが乾燥条件B、Dを満足しない。
【0190】
・試験14…ゲル化乾燥における流延膜の膜面温度T1が0℃で乾燥風速が0.01m/sec、低温急速乾燥における流延膜の膜面温度T2が−20℃、乾燥風速が10m/secであり、乾燥条件B、C、Dを満足するが乾燥条件Aを満足しない。
【0191】
・試験15…ゲル化乾燥における流延膜の膜面温度T1が0℃で乾燥風速が1m/sec、低温急速乾燥における流延膜の膜面温度T2が−10℃、乾燥風速が15m/secであり、乾燥条件B、C、Dを満足するが乾燥条件Aを満足しない。
【0192】
・試験16…ゲル化乾燥における流延膜の膜面温度T1が−10℃で乾燥風速が0m/sec、低温急速乾燥における流延膜の膜面温度T2が−20℃、乾燥風速が5m/secであり、乾燥条件B、C、Dを満足するが乾燥条件Aを満足しない。
【0193】
・試験17…ゲル化乾燥における流延膜の膜面温度T1が−10℃で乾燥風速が0.01m/sec、低温急速乾燥における流延膜の膜面温度T2が−10℃、乾燥風速が15m/secであり、乾燥条件B、C、Dを満足するが乾燥条件Aを満足しない。
【0194】
・試験18…ゲル化乾燥における流延膜の膜面温度T1が−10℃で乾燥風速が0.1m/sec、低温急速乾燥における流延膜の膜面温度T2が−20℃、乾燥風速が10m/secであり、乾燥条件B、C、Dを満足するが乾燥条件Aを満足しない。
【0195】
・試験19…ゲル化乾燥における流延膜の膜面温度T1が−10℃で乾燥風速が1m/sec、低温急速乾燥における流延膜の膜面温度T2が−20℃、乾燥風速が5m/secであり、乾燥条件B、C、Dを満足するが乾燥条件Aを満足しない。
【0196】
・試験20…ゲル化乾燥における流延膜の膜面温度T1が30℃で乾燥風速が0m/sec、低温急速乾燥における流延膜の膜面温度T2が20℃、乾燥風速が5m/secであり、乾燥条件A、B、Dを満足するが乾燥条件Cを満足しない。
【0197】
・試験21…ゲル化乾燥における流延膜の膜面温度T1が20℃で乾燥風速が0.1m/sec、低温急速乾燥における流延膜の膜面温度T2が20℃、乾燥風速が10m/secであり、乾燥条件A、B、Dを満足するが乾燥条件Cを満足しない。
【0198】
・試験22…ゲル化乾燥における流延膜の膜面温度T1が20℃で乾燥風速が0m/sec、低温急速乾燥における流延膜の膜面温度T2が50℃、乾燥風速が5m/secであり、乾燥条件A、B、Dを満足するが乾燥条件Cを満足しない。
【0199】
・試験23…流延膜のゲル化工程を行わずに、流延膜の乾燥開始から終了まで膜面温度T2を10℃とし、乾燥風の風速を5m/secで乾燥した場合。
【0200】
・試験24…流延膜のゲル化工程を行わずに、流延膜の乾燥開始から終了まで流延膜の乾燥開始から終了まで膜面温度を−10℃とし、乾燥風の風速を3m/secで乾燥した場合。
【0201】
・試験25…流延膜のゲル化を行わずに、流延膜の乾燥開始から終了まで膜面温度を−20℃とし、乾燥風の風速を15m/secで乾燥した場合。
【0202】
・試験26…流延膜のゲル化工程を行わずに、流延膜の乾燥開始から終了まで膜面温度を20℃とし、乾燥風の風速を10m/secで乾燥した場合。
【0203】
・試験27…流延膜のゲル化工程を行わずに、流延膜の乾燥開始から終了まで膜面温度を30℃とし、乾燥風の風速を5m/secで乾燥した場合。
【0204】
・試験28…流延膜のゲル化工程を行わずに、流延膜の乾燥開始から終了まで膜面温度を50℃とし、乾燥速度を0m/secで乾燥した場合。
【0205】
(フィルムの評価)
試験1〜試験28で製造されたフィルムについて、「線熱膨張係数(CTE)」、「表面平滑性」及び「透明性」の3項目について評価した。
【0206】
〈フィルムの線熱膨張係数(CTE)〉
試験1〜試験28で製造されたフィルムから、フィルムサンプル(19mm×5mm)を作製し、TMA(理学電機(株)製、TMA8310)を用いて測定した。測定速度は、3℃/分とした。測定は3サンプルを行い、その平均値を用いた。測定は25℃から300℃の温度範囲で行い、線熱膨張係数は昇温時の25℃〜200℃の範囲で計算した。そして、次のように評価し、△〜◎の範囲を合格とした。なお、より好ましい合格範囲は○〜◎の範囲である。
【0207】
◎…線熱膨張係数が20ppm/K以下
○…線熱膨張係数が20ppm/Kを超えて40ppm/K以下
△…線熱膨張係数が40ppm/Kを超えて50ppm/K以下
×…線熱膨張係数が50ppm/Kを超える
〈フィルム表面の平滑性〉
試験1〜試験28で製造されたフィルムの表面について、AFM(原子間力顕微鏡)により平滑性を測定した。そして、平滑性が10μmの測定で、表面粗さRaが1nm以下の場合を○とし、それ以上の場合を×とした。
【0208】
〈フィルムの透明性〉
フィルムの透明性は分光測定装置により行い、透過率が85%以上の場合を○とし、85%未満の場合を×とした。
【0209】
[試験結果]
図3Aの表の結果から分かるように、乾燥条件A、B,C、Dの全てを満足する試験1〜12は、フィルムの線熱膨張係数が△以上で50ppm/K以下であり、低い線熱膨張係数を有する耐熱性フィルムを製造することができた。また、表面平滑性及び透明性についても○であり、良い結果であり、総合評価も△以上であった。特に、試験1と試験4は、線熱膨張係数が◎であり、顕著に低い線熱膨張係数を有する耐熱性フィルムを製造することができた。
【0210】
これに対して、図3Bの表の結果から分かるように、乾燥条件A、B,C、Dの1つでも満足しない試験13〜22は線熱膨張係数が全て50ppm/K超えて×の評価であり、50ppm/K以下を満足しなかった。また、表面平滑性及び透明性についても、試験13、20、21、22以外は×の評価であった。
【0211】
また、流延膜のゲル化乾燥工程を行わない場合には、試験23、25のように、低温急速乾燥工程での乾燥条件がC、Dを満足していても線熱膨張係数が全て×の評価で50ppm/Kを超えており、50ppm/K以下を満足しなかった。その他のゲル化乾燥工程を行わない試験24、26、27、28についても線熱膨張係数が全て×の評価であった。
【符号の説明】
【0212】
10…耐熱性フィルムの製造装置、12…ストックタンク、14…攪拌機、16…送液ポンプ、18…送液配管、20…濾過装置、22…流延ダイ、24…流延支持体、25…減圧チャンバ、26、28…回転ローラ、30…駆動装置、32…回転駆動制御装置、34…流延膜、36…流延室、38…剥離ローラ、40…乾燥装置、42…ケーシング、44…乾燥ゾーン、44A…ゲル化乾燥ゾーン、44B…低温急速乾燥ゾーン、46…仕切板、48…ノズル、50…エア配管、52…第1の温度調整器、54…第1の送風ファン、56…第1温度センサー、58…ゲル化乾燥制御手段、60…温度調整プレート、62…ノズル、64…エア配管、66…第2の温度調整器、68…第2の送風ファン、70…第2温度センサー、72…低温急速乾燥制御手段、74…冷却用プレート、76…乾燥風供給手段、78…吹出ノズル、80…吸引ノズル、82…吸引配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直鎖状の重合性化合物を有機溶剤に溶解又は分散させたドープを、走行する流延支持体上に膜状に流延する流延工程と、前記流延された流延膜を前記流延支持体上で乾燥する乾燥工程と、前記乾燥した流延膜を前記流延支持体から剥離してフィルムを形成する剥離工程と、を備えた耐熱性フィルムの製造方法であって、
前記乾燥工程は、
前記流延膜の膜面温度を前記有機溶剤の沸点−30℃〜沸点−10℃の範囲に設定して、前記流延膜に乾燥応力が働き初めてゲル化するまで乾燥風の風速1m/sec以下で前記流延膜中の溶剤を飛ばすゲル化乾燥工程と、
前記ゲル化した流延膜を、−40℃〜10℃の膜面温度で低温乾燥し、且つ乾燥風の風速を5m/sec以上で急速乾燥する低温急速乾燥工程と、から成ることを特徴とする耐熱性フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記低温急速乾燥工程では、前記膜面温度が−20℃〜0℃であることを特徴とする請求項1に記載の耐熱性フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記ゲル化乾燥工程の乾燥速度は、前記低温急速乾燥工程の前記乾燥速度よりも遅いことを特徴とする請求項1又は2に記載の耐熱性フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記製造された耐熱性フィルムは、線膨張係数が50ppm/K以下であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1に記載の耐熱性フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記製造された耐熱性フィルムは、線膨張係数が40ppm/K以下であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1に記載の耐熱性フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記直鎖状の重合性化合物はポリアリレート樹脂であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1に記載の耐熱性フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記ポリアリレート樹脂は、下記一般式(1)で表される構造及び下記一般式(2)で表される構造を有することを特徴とする請求項6に記載の耐熱性フィルムの製造方法。
【化1】

(一般式(1)中、R11〜R14はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、R15〜R18はそれぞれ独立に置換基を表す。)
【化2】

(一般式(2)中、R21〜R26はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、前記R21〜R26のうち少なくとも一つは置換基を表す。)
【請求項8】
前記一般式(1)において、前記R15〜R18がそれぞれ独立にフッ素原子、塩素原子、臭素原子、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基またはメトキシ基であることを特徴とする請求項7に記載の耐熱性フィルムの製造方法。
【請求項9】
前記一般式(2)において、前記R21〜R26がそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基またはアルコキシ基であることを特徴とする請求項7又は8に記載の耐熱性フィルムの製造方法。
【請求項10】
前記一般式(2)において、前記R21〜R26がそれぞれ独立に水素原子、フッ素原子、臭素原子、塩素原子、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基またはメトキシ基であることを特徴とする請求項7又は8に記載の耐熱性フィルムの製造方法。
【請求項11】
前記ポリアリレート樹脂は、更に下記一般式(3)で表される構造を含有することを特徴とする請求項7〜10のいずれか1に記載の耐熱性フィルムの製造方法。
【化3】

(一般式(3)中、R31〜R38はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。Xは置換基を有していてもよく、環構造の一部でもよい連結基を表し、その場合はR31〜R34の少なくとも一つ結合して環構造を形成してもよい。)
【請求項12】
下記式(A)を満たすことを特徴とする請求項11に記載の耐熱性フィルムの製造方法。
0.2 ≦ (a+b)/(a+b+c) ≦ 0.9
(式(A)中、aはポリエステル樹脂における前記一般式(1)で表される構造の含有率(単位:モル%)を表し、bはポリエステル樹脂における前記一般式(2)で表される構造の含有率(単位:モル%)を表し、cはポリエステル樹脂における前記一般式(3)で表される構造の含有率(単位:モル%)を表す。)
【請求項13】
前記ポリアリレート樹脂は、更に下記一般式(4)で表される構造を含有することを特徴とする請求項7〜10のいずれか1に記載の耐熱性フィルムの製造方法。
【化4】

(一般式(4)中、R41はそれぞれ独立に置換基を表し、mは0〜3の整数を表す。)
【請求項14】
前記ポリアリレート樹脂は、更に下記一般式(5)で表される構造を含有することを特徴とする請求項7〜10のいずれか1に記載の耐熱性フィルムの製造方法。
【化5】

(一般式(5)中、R51およびR52はそれぞれ独立に置換基を表し、nおよびkはそれぞれ独立に0〜3の整数を表す。)
【請求項15】
直鎖状の重合性化合物を有機溶剤に溶解したドープを、走行する流延支持体上に膜状に流延する流延ダイと、前記流延された流延膜を前記流延支持体上で乾燥する乾燥装置と、前記乾燥した流延膜を前記流延支持体から剥離してフィルムを形成する剥離手段と、を備えた耐熱性フィルムの製造装置であって、
前記乾燥装置は、
前記流延ダイから前記剥離手段との間で前記流延支持体上に設けられたトンネル状の乾燥ゾーンと、
前記乾燥ゾーンを前記流延ダイ側からゲル化乾燥ゾーンと低温急速乾燥ゾーンとに仕切る仕切板と、
前記ゲル化乾燥ゾーンを通る前記流延膜の膜面温度を検出する第1温度センサーと、
前記第1温度センサーの検出温度に基づいて前記ゲル化乾燥ゾーンに供給する乾燥風温度を制御すると共に、前記流延膜の乾燥速度を制御して前記流延膜をゲル化するゲル化乾燥制御手段と、
前記低温急速乾燥ゾーンを通る前記流延膜の膜面温度を検出する第2温度センサーと、
前記第2温度センサーの検出温度に基づいて前記低温急速乾燥ゾーンに供給する乾燥風温度を制御すると共に、前記流延膜の乾燥速度を制御して、前記ゲル化した流延膜に乾燥応力を付与する低温急速乾燥制御手段と、を備えたことを特徴とする耐熱性フィルムの製造装置。
【請求項16】
前記ゲル化乾燥制御手段には、前記流延膜がゲル化するまでの乾燥時間が入力されていると共に、該乾燥時間中の前記前記流延膜の膜面温度を前記有機溶剤の沸点−30℃〜沸点−10℃の範囲で、且つ乾燥風の風速を1m/sec以下に制御し、前記低温急速乾燥制御手段は、前記ゲル化した流延膜を、−40℃〜10℃の膜面温度で、且つ乾燥風の風速を5m/sec以上に制御することを特徴とする請求項15に記載の耐熱性フィルムの製造装置。
【請求項17】
前記低温急速乾燥ゾーンには、前記流延膜の膜面に平行で且つ前記流延膜の幅方向一方端側から他方端側に一方向流れの乾燥風を供給する乾燥風供給手段が設けられていることを特徴とする請求項15又は16に記載の耐熱性フィルムの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【公開番号】特開2012−196808(P2012−196808A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61202(P2011−61202)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】