説明

耐熱性ポリ乳酸コンパウンド

ポリ乳酸(PLA)の使用の重大な不都合は、PLAコンパウンドの熱たわみ温度において予期しない上昇を引き起こすスチレン無水マレイン酸コポリマー(SMAC)の使用によって克服され、この上昇は、ブレンドされたコンパウンドを使用前に本質的に乾燥する場合に、ASTM D648を用いて66psiにおいて測定したとき、PLA単独の熱たわみ温度に対する5℃のデルタ改善を上回る。そのコンパウンドはまた多くの場合、熱たわみ温度における65℃の閾値を超える。相溶化剤および衝撃改質剤の使用は、耐熱性PLAコンパウンドの産業的多用途性をさらに改善する。あるいは、耐熱性PLAコンパウンドにおける炭酸カルシウムの使用も、産業的に価値がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権の主張)
本出願は、2008年4月24日に出願された代理人事件番号12008011を有する米国仮特許出願番号第61/047,460号、および、2009年3月20日に出願された代理人事件番号12009006を有する米国仮特許出願番号第61/161,902号からの優先権を主張し、上記米国仮特許出願番号第61/047,460号および米国仮特許出願番号第61/161,902号は、いずれも参照として援用される。
【0002】
(本発明の分野)
本発明は、使用中のポリ乳酸コンパウンドの構造的完全性を改善するための耐熱性改質剤を有するポリ乳酸コンパウンドに関連する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
プラスチックは、粉々になったり、さび付いたり、腐敗したりしないように作り得るので、プラスチック製品は、ガラス、金属、および木製品に取って代わった。プラスチック製品の耐久性はまた、処分のジレンマを引き起こしている。また、多くのプラスチック樹脂が石油化学製品から作られ、それは長期の供給およびコストの問題を有する。
【0004】
従って、熱可塑性樹脂(好ましくは処分のジレンマも解決するために分解するかまたは堆肥になるもの)の生物学的由来かつ持続可能な供給源を見出すために、相当な努力が進行中である。
【0005】
ポリラクチドまたはPLAとしても公知であるポリ乳酸は、石油化学的起源の樹脂に取って代わり得る、生物学的で持続可能な起源由来の熱可塑性樹脂として調査されてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
(発明の概要)
ポリ乳酸は、3つの最も広く普及した(調査されている)生物由来樹脂のうちのおそらく1つであるが、それは取って代わるはずの化石由来の樹脂と比較した場合、低い熱たわみ温度を有するという明確な不都合を有する。
【0007】
熱たわみ温度(heat deflection temperature(HDT))は、ASTM D648のプロトコールを用いた、曲げ荷重下のサンプルのたわみの測定である。曲げ荷重は、2つの設定のいずれかであり得る。本発明の目的のために、66ポンド/平方インチ(psi)または455キロパスカル(kPa)を、熱たわみの比較測定のために使用する。
【0008】
ポリ乳酸の問題は、約55℃または131°Fの、455kPaの曲げ荷重下の熱たわみ温度を有することである。言い換えると、アリゾナの夏の日の自動車の中で、PLAは、車室内の部品へ成形する熱可塑性樹脂として、シートにおいてある手持ちサイズの電子装置のケースとして、または自動車内の床にある食料品袋の中の、生鮮食品を含む包装の一部として使用するために十分頑丈ではない。
【0009】
PLAの問題は、多くのよくあるプラスチック製品において現在使用されている、化石由来の熱可塑性樹脂の実用的な置換として考えることを可能にするほど十分な耐熱性を有さないことである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、PLAと組み合わせて、普遍的に使用し得るようにPLAの耐熱性を上昇させる耐熱性改質剤を発見および使用することによって、この問題を解決する。
【0011】
当該分野は、この耐熱性問題を解決する必要性を長く感じてきた。PLAの主な製造会社である、NatureWorks,LLCの、公開された文献は、50重量%程度のポリメタクリル酸メチル(PMMA)をPLAへ加えて、50/50 PLA−PMMAコンパウンドを作製することは、純粋なPLAポリマー樹脂のHDTより、HDTをわずか4℃改善することを報告している(63℃対59℃)。
【0012】
さらに、当該分野は、この耐熱性問題を解決する必要性を長く感じており、そしていくつかの産業において、生物学的に持続可能な起源であり、かつ実用的に商業的に使用される実用的な熱可塑性コンパウンドであるには、PLAコンパウンドは、好ましくは66psiで少なくとも65℃のHDTを有するべきであると一般に特徴付けられた。ついに、本発明が、66psiで65℃のゴールを達成し、さらにそれを超える、適当な組み合わせも発見した。
【0013】
当該分野は、PLAの実際のHDT値を上昇させるための手段と同時に、できたコンパウンドを主に有意にPLAコンパウンドとして保持することも必要とする。
【0014】
本発明の目的のために、PLAは「重要成分」(significant component)のままでなければならず、それは、PLAがコンパウンドの少なくとも約30重量パーセント(30%)存在することを意味する。
【0015】
主に生物再生可能な物質(bio−renewable material)でできたコンパウンド(compound)から作られたプラスチック製品を販売することが望ましい状況に関して、PLAは「主成分」(principal component)として存在し得、それは、使用された全ての材料(ingredient)の中で、コンパウンドの最も高い重量パーセントまたは最も高いものと同等の重量パーセントを有することを意味する。例えば、PLAは、コンパウンド全体の50%またはそれ以上の重量パーセントを有する場合、2材料のコンパウンドにおいて「主成分」である。PLAはまた、あらゆる他の材料を超える大きな重量パーセントを有する場合、3つまたはそれより多い材料のコンパウンドにおいて、例えばそれぞれ33重量パーセントを有する2つの他の材料を有するコンパウンドにおける34%のPLAは、「主成分」である。PLAはまた、4材料のコンパウンドにおいて、30(PLA)−30−20−20(他の材料)におけるように、その重量パーセントが1つの他の材料の重量パーセントと同等なら、本発明に関して「主成分」である。
【0016】
予期せず、スチレン無水マレイン酸コポリマーが、PLA単独のHDTよりも、PLAコンパウンドのHDTを少なくとも5℃上昇させ得ることが発見された。PLAおよびスチレン無水マレイン酸コポリマーのブレンドはまた、好ましくは65℃より高いHDTを有し得る。
【0017】
本発明の1つの局面は、(a)ポリ乳酸および(b)スチレン無水マレイン酸コポリマーのブレンドを含む、耐熱性ポリ乳酸コンパウンドであり、ここでそのコンパウンドは重要成分としてポリ乳酸を有し;ここでポリ乳酸とスチレン無水マレイン酸コポリマーとは、2.3:1.0またはそれより小さい重量比を有し;およびここでそのブレンドされたコンパウンドをプラスチック製品へ成形する前に本質的に乾燥するならば、プラスチック製品へ成形した後のブレンドされたコンパウンドは、いずれもASTM D648のプロトコールを用いて66ポンド/平方インチで測定した場合、ポリ乳酸単独の熱たわみ温度よりも、少なくとも5℃の熱たわみ温度の上昇を有する。
【0018】
あるいは、その耐熱性ポリ乳酸コンパウンドはまた、ポリ乳酸とスチレン無水マレイン酸コポリマー(SMAC)とのブレンドを助けるために、任意の結晶化度のポリメタクリル酸メチル(PMMA)のような、相溶化剤を含む。
【0019】
必要に応じて、その耐熱性ポリ乳酸コンパウンドはまた、そのコンパウンドから作られるプラスチック製品の衝撃抵抗性または強さを増強するために、PLA、SMAC、およびPMMAと共に、スチレンブタジエンゴム(SBR)のような、弾性衝撃改質剤を含む。
【0020】
相溶化剤の使用の選択肢の代わりとして、衝撃改質剤と共にまたは衝撃改質剤を伴わずに、その耐熱性ポリ乳酸コンパウンドは、炭酸カルシウム(CaCO)のような充填材を含み得、そしてまた66psiにおける5℃のHDTの差異のゴールを達成する。
【0021】
好ましくは、本発明のコンパウンドのHDTは、66psiにおける5℃のHDTの差異を有するだけでなく、少なくとも65℃のHDTを有する。
【0022】
本発明のコンパウンドの特徴および利点を、予期しない結果を示す実施態様および実施例を参照してさらに説明する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(発明の実施態様)
(ポリ乳酸)
PLAは、以下の単量体反復基を有する、周知の生体高分子である:
【0024】
【化1】

【0025】
PLAは、ポリ−D−ラクチド、ポリ−L−ラクチドのいずれか、またはその両方の組み合わせであり得る。PLAは、世界の全ての製造地域に位置する、NatureWorks,LLCから市販で入手可能である。任意のグレードのPLAが、本発明における使用のための候補である。PLAの数平均分子量は、現在市販のグレードで入手可能なもの、または将来発売されるものの何れかであり得る。プラスチック製品の現在の最終用途が、PLAで作られていることから、および本発明のコンパウンドの耐熱性を有することから利益を得ることができる限り、その適当なPLAが本発明のコンパウンドを構築するための開始点となるべきである。
【0026】
(スチレン無水マレイン酸コポリマー)
SMACは、以下のコモノマー反復基を有するコポリマーである:
【0027】
【化2】

【0028】
本発明のためのSMACの候補は、2つの異なる因子:無水マレイン酸の含有パーセンテージおよび分子量の組み合わせに基づき得る。
【0029】
候補の1セットは、無水マレイン酸部分に対するスチレン部分の低いモル比およびSMACの低い分子量に依存する。このセットの候補SMACは、約4:1から約1:1の範囲の、そして好ましくは約1:1の、スチレン部分対無水マレイン酸部分のモル比を有し得る。また、そのような候補は、約1000から約50,000、そして好ましくは約2000から約10,000の範囲の数平均分子量を有するべきである。最も好ましくは、そのSMACは2000の数平均分子量を有する。
【0030】
この最初のセットの候補のSMACは、Exton、PA、USAのSartomer Companyから、SMACのSMA(登録商標)ブランド下で、多くのグレードで、市販で入手可能である。それらのうち、SMA(登録商標)1000が好ましい。
【0031】
2番目のセットの候補は、無水マレイン酸部分に対するスチレン部分の高いモル比およびSMACの高い分子量に依存する。このセットの候補SMACは、約20:1から約5:1の範囲の、そして好ましくは約10:1の、スチレン部分対無水マレイン酸部分のモル比を有し得る。また、そのような候補は、約75,000から約250,000、そして好ましくは約100,000から約200,000の範囲の数平均分子量を有するべきである。最も好ましくは、そのSMACは150,000の数平均分子量を有する。
【0032】
この2番目のセットの候補のSMACは、Pittsburgh、PA、USAのNova Chemicalsから、SMACのDylark(登録商標)ブランド下で、多くのグレードで、市販で入手可能である。それらのうち、Dylark(登録商標)FG7300およびFG2500が好ましい。別の供給源は、80,000〜180,000のMn、および4.54:1〜2.94:1のスチレン/無水マレイン酸部分比の範囲を有し、多くのグレードのXiran(登録商標)ブランドを有する、Roermond、the NetherlandsのPolyscope Polymers BV由来である。現在、Xiran SZ22110およびXiran SZ26080グレードが好ましい。
【0033】
現在、高い分子量のSMACおよび低いスチレン/無水マレイン酸部分比の両方を有する、市販で入手可能なSMAC候補のセットは存在しない。存在する場合、その候補のセットも有用であり得る。
【0034】
(必要に応じた相溶化剤)
PLAとSMACとのブレンドを助けるために、相溶化剤を使用し得る。ラクチド部分およびスチレン部分または無水物部分のいずれかに親和性を有する、任意の二重親和性コンパウンドまたは分子が、相溶化剤として使用するための候補であり得る。
【0035】
可能性のある候補のうち、合成の適合性および柔軟性のために、任意の結晶化度のポリ(メタ)アクリレートが望ましい。それらのうち、再利用の可能性、バイオマスから作られる可能性、世界的に入手可能であること、およびより低いコストのために、ポリメタクリル酸メチルが好ましい。
【0036】
(必要に応じた衝撃改質剤)
任意の従来の衝撃改質剤が、本発明のコンパウンドにおいて使用するための候補である。コア/シェル衝撃改質剤、弾性衝撃改質剤等が適当である。
【0037】
(必要に応じた充填材)
任意の従来の充填材が、本発明のコンパウンドにおいて使用するための候補である。充填材は、そのコンパウンドの物理的性質に有害な影響を与えずに、質量を上昇させる。Specialty Minerals、New York CityのMineral Technologies,Inc.のビジネスユニットからEmforce(登録商標)として販売されている、沈降炭酸カルシウムが、本発明において使用するために適当であることが見出された。
【0038】
(他の必要に応じた添加物)
本発明のコンパウンドは、コンパウンドに関する望ましい加工または性能特性を得るために十分な量で、他の従来のプラスチック添加物を含み得る。その量は、添加物の無駄にならないようにすべきであり、コンパウンドの加工または性能に有害とならないようにすべきである。熱可塑性コンパウンディングの業者は、過度の実験無しで、しかしPlastics Design Library(www.williamandrew.com)のPlastics Additives Database(2004)のような専門書を参照して、本発明のコンパウンドに含めるために、多くの異なる型の添加物から選択し得る。
【0039】
必要に応じた添加物の制限しない例は、接着促進因子;殺生物剤(抗菌薬、殺菌剤、および防かび剤)、曇り防止剤;帯電防止剤;結合剤、発泡剤、および消泡剤;分散剤;防火材および難燃剤ならびに発煙抑制剤;開始剤;潤滑剤;顔料(pigment)、着色剤および染料(dye);可塑剤;加工助剤;離型剤;滑剤およびブロッキング防止剤;安定剤;ステアリン酸塩;紫外線光吸収剤;粘性調節剤;ワックス;ならびにその組み合わせを含む。
【0040】
表1は、本発明において有用な材料の、許容可能であり、望ましくかつ好ましい範囲を示し、全てコンパウンド全体の重量パーセント(wt.%)で表す。
【0041】
【表1】

【0042】
(加工)
本発明のコンパウンドの調製は、単純である。本発明のコンパウンドを、バッチまたは継続的な操作で作製し得る。
【0043】
継続的工程における混合は、典型的には、押出し成形機内で起こり、押出し成形機は、押出し成形機の先頭または押出し成形機の下流のいずれかにおける固体材料添加物の添加を伴う、ポリマーマトリックスを溶解するのに十分な温度に上げられる。押出し成形機の速度は、1分あたり約50から約500回転(rpm)、そして好ましくは約100から約300rpmの範囲であり得る。典型的には、押出し成形機からの産出物を、後のポリマー製品への押出し成形または成型のためにペレット化する。
【0044】
バッチ工程における混合は、典型的にはBanburyミキサー中で起こり、Banburyミキサーもまた、固体材料添加物の添加を可能にするために、ポリマーマトリックスを溶解するために十分な温度に上げられる。混合スピードは、60から1000rpmの範囲であり、そして混合の温度は環境温度であり得る。また、ミキサーからの産出物を、後のポリマー製品への押出し成形または成型のために、より小さいサイズに砕く。
【0045】
必要に応じて、バッチまたは継続的ブレンドの前に、ブレンド容器中での水分によって活性化される分解または反応の可能性を抑制するのを助けるために、材料を乾燥し得る。あるいは、分解の可能性を抑制するために、水分捕捉剤または乾燥剤を処方中に含むこと、ブレンド容器中に減圧をかけること等のような、他の方法を使用し得る。あらゆるこれらの技術、または技術の組み合わせは、ブレンド前またはブレンド中に、材料の乾燥を引き起こす。下記の実施例において見られるように、材料が乾燥していないセットを押出し成形し得、そして後に、66psiの曲げ荷重において少なくとも5℃のHDTの差異および好ましくは65℃のHDTのゴールを達成するプラスチック製品に成型し得ることが見出されたので、これらは必要に応じた技術である。
【0046】
続く押出し成形または成型技術は、熱可塑性ポリマーエンジニアリングの業者に周知である。過度の実験無しに、しかし、全てPlastics Design Library(www.williamandrew.com)によって出版された「Extrusion,The Definitive Processing Guide and Handbook」;「Handbook of Molded Part Shrinkage and Warpage」;「Specialized Molding Techniques」;「Rotational Molding Technology」;および「Handbook of Mold,Tool and Die Repair Welding」のような参考文献によって、本発明のコンパウンドを用いてあらゆる考え得る形および外見の製品を作り得る。
【0047】
乾燥またはブレンド中の他の技術に関わらず、成型の前にブレンドしたコンパウンドを乾燥させることは、熱たわみ温度を含む性能特性に直接的な影響を有することが見出された。下記の実施例が示すように、乾燥の量は、成型の前に、本質的に乾燥したブレンドされたコンパウンド、すなわち0.1%より少ない水分含有量を有するブレンドされたコンパウンドを得るために、約4時間よりも約48時間により近くあるべきである。65℃の熱たわみ温度に近い温度で乾燥する可能性を減らすために、その温度は減圧無しで約60℃までであり得る。実際、過度の実験無しに、成型または押出し成形製品としてのコンパウンドの性能を劣化させるかまたはそうでなければ性能に影響を与える温度に近づくことなく、乾燥の量を最大にしながら、乾燥時間を減少させるために、一番良い時間、温度、および気圧の組み合わせを同定し得る。
【0048】
(本発明の有用性)
あらゆるプラスチック製品が、本発明のコンパウンドを使用するための候補である。PLAの熱耐久性が現在達成され、少なくとも5℃のHDTの差異(および好ましくは66psiにおいて少なくとも65℃のHDT)を必要とする、以前は化石由来ポリマーで作られた、全ての型のプラスチック製品を、今や持続可能なPLAポリマーコンパウンドから作り得る。
【0049】
本発明のコンパウンドからできたプラスチック製品を、輸送、アプライアンス、エレクトロニクス、ビルディングおよび建造物、生物医学、包装、ならびに消費者マーケットにおいて使用するために、成型または押出し成形によって形作り得る。
【0050】
例えば、食品包装は今や本発明のPLAコンパウンドから作り得、そして60℃に近い温度における保存または輸送に耐えるために十分な耐熱性を保持する。本発明のコンパウンドから作られたプラスチック製品は、その構造的完全性を、PLA単独よりも少なくとも5℃高く、そして好ましくは65℃より下の温度で保持する。
【0051】
実施例は、本発明の予期しない性質を証明する。
【実施例】
【0052】
(実施例)
(比較例A〜Dおよび実施例1〜19)
純PLA樹脂を得て、そして18個の異なるコンパウンドを調製した。
【0053】
比較例Aは、比較例B〜Dおよび実施例1〜19と同じ押出し成形および成型熱履歴を経た純PLA樹脂である。比較例Bは、66psiにおける5℃のデルタHDTも65℃のHDTも、PLAを架橋する試みによって達成できないであろうことを示す。すなわち、HDTを改善している明白なアプローチがうまくいかない。
【0054】
実施例1〜19の全ては、>5℃のデルタHDTのゴールを満たし、さらに超え、そしてそれらの多くは65℃のHDTのゴールを超える。意外なことに、初めて、耐熱性改質剤としてSMACを使用したために、PLAがコンパウンド中で主成分のままで、66psiの曲げ荷重において5℃に達するかまたは超えるデルタHDTを有する、そしてまた多くの場合65℃のHDTに達するかまたは超えるデルタHDTを有する、PLAを合成し得る。
【0055】
表2は、使用された未加工の物質材料を示す。
【0056】
【表2】

【0057】
表3(2つの部分)は、コンパウンドの配合表を示す。表4(2つの部分)は、後の成型のためのペレットを産生する、押出し成形条件を示す。表5(2つの部分)は、HDT試験のために必要な成型製品を産生するための成型条件を示す。表6(2つの部分)は、各実施例および比較例の4つの異なるサンプルを用いたHDTの結果の平均を示し、標準偏差を提供する。
【0058】
表3において、比較例Bならびに実施例3〜8および15〜17は、以下の技術を用いて、押出し成形が始まる前に樹脂を乾燥させた:全てのポリマー樹脂を、減圧をかけないで、対流式オーブンで80℃において一晩乾燥させた。他の比較例および実施例は、押出し成形の前に乾燥しなかった。
【0059】
表4に示すように、全ての実施例および比較例の押出し成形条件は、非常に類似していた。表5に示すように、全ての実施例および比較例の成型条件は、非常に類似していた。加工の変動は最小限であった。
【0060】
表6は、ASTM D648のプロトコールによって、66psiの曲げ荷重下で、摂氏で測定したHDT結果から生じる、本発明のいくつかの特徴を示す。
【0061】
【表3−1】

【0062】
【表3−2】

【0063】
【表4−1】

【0064】
【表4−2】

【0065】
【表5−1】

【0066】
【表5−2】

【0067】
【表5−3】

【0068】
【表5−4】

【0069】
【表6】

【0070】
表6は、本発明を理解するためのいくつかの比較を提供する。全ての実施例は、HDTにおいて少なくとも9%の改善を示し、そしていくつかはPLAを主成分として保持しながら、62%と高い改善を示した。
【0071】
比較例B、PLAの架橋の試みはうまくいかなかった。平均HDTはより悪く、比較例A、純PLA樹脂よりよくなかった。従って、比較例Bは、試みることが明白であったことがうまくいかないことを証明した。
【0072】
比較例B以外は全て、「成形の前に本質的に乾燥した」。本発明の目的のために、「成形の前に本質的に乾燥した」は、水分を0.1%より少なく減少させるために十分な継続期間の、上昇した温度での、乾燥の継続期間を意味する。上昇した温度は、40℃より高く、そして約60℃までであり得る。いくつかの場合において、継続期間は、より高く上昇した温度を使用する場合、4時間と短くあり得る。よりありそうには、その継続期間は6時間を超え、望ましくは12〜24時間の間であり、そして完全に徹底するためには40〜48時間の長さである。当業者は、過度の実験無しに、ブレンドされたコンパウンドにおいて見出される特定の配合に関して、そのブレンドされたコンパウンドがプラスチック製品への「成形の前に本質的に乾燥している」ように、0.1%より少ない水分含有量まで十分な乾燥を達成するために必要な時間量を決定し得る。
【0073】
比較例Aと実施例1および2との比較は、HDTにおける少なくとも5℃の上昇、PLAを主成分として保持しながら有意な進歩を示す。実際、PLAを主成分として保持しながら、PLAと共に40重量パーセントのSMACを使用することは、HDTにおいて17.8%の改善を生じ、一方30重量パーセントの使用は、10.8%の改善を生じた。実施例1および2はまた、60℃の乾燥温度上限における、4時間と少ない成型前乾燥が、水分含有量を0.1%より少なく減少させるために十分であることを示した。
【0074】
実施例16〜19の実際の値は得なかったが、実施例3〜19ならびに比較例CおよびDは全て、成型前に本質的に乾燥したサンプルを有していた(0.1%より低い水分含有量)。
【0075】
実施例3〜19を比較例CおよびDと区別するものは、PLA:SMACの比であり、比較例CおよびDは2.3:1.0を超える比を有する。
【0076】
従って、PLAが主成分であるコンパウンドが、5℃のHDTのゴールを達成するための2つの必要条件は、2.3:1.0またはそれより小さいPLA:SMACの重量比、および成形の前に本質的に乾燥したコンパウンドである。
【0077】
実施例1〜19の間のバリエーションは、相溶化剤は必要に応じたものであること、衝撃改質剤は必要に応じたものであること、および樹脂の押出し成形前の乾燥は必要に応じたものであることを示す。従って、過度の実験無しに、および示された確固とした選択肢を認識して、当業者は、純PLA樹脂より5℃またはそれより高くHDTを改善し、そして多くの場合少なくとも65℃さらに90℃(ほぼ華氏200度であって、任意の時間の間、居住可能条件を超える)に近づくHDTを有する、様々な修飾PLAコンパウンドを構築し得る。
【0078】
表6はまた、実施例および比較例それぞれの、異なるサンプルに対する4つのHDTテストの標準偏差を報告する。実施例5〜12および16〜19はまた、PMMAを相溶化剤として含んでいた。これらの実施例における相溶化剤の存在は、試験した各実施例の4つのサンプルの性能の変動を抑制した。標準偏差はより小さくなり、創意に富むが商業的な産生が許容し得るより大きな変動を受ける実施例14ではなく、実施例10のような配合に対する現在の選択を生じた。
【0079】
本発明のコンパウンド、実施例1〜19は、66psiにおける少なくとも5℃のデルタHDTの上昇および好ましくは65℃のHDTという、以前は達成できなかったゴールを予期せず大きく超えた。
【0080】
(実施例20〜25)
表7は、使用された未加工の物質材料を示す。
【0081】
【表7】

【0082】
表8は、コンパウンドの配合表を示す。表9は、後の成型のためのペレットを産生するための押出し成形条件を示す。表10は、HDT試験に必要な成型製品を産生するための成型条件を示す。表11は、各実施例の4つの異なるサンプルを用いたHDT結果の平均を示す。
【0083】
【表8】

【0084】
【表9】

【0085】
【表10】

【0086】
【表11】

【0087】
実施例20〜25は、SMAC候補の最初のセットからのSMACの使用を示す実施例5と比較した場合、候補の2番目のセットを用いて、ほとんど同じ、またはさらに良いHDT特性が可能であることを示す。Dylark2500は衝撃グレードのSMACであるので、実施例23は、このセットの他の実施例より低い。しかし実施例24で見られるように、いくらかのXiranSZ26080をDylark2500と組み合わせることで、HDTの目的のためにこのセットの実施例の最高のものを生じる。
【0088】
本発明は、上記に実施態様に制限されない。特許請求の範囲が続く。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱性ポリ乳酸コンパウンドであって、
(a)ポリ乳酸および
(b)スチレン無水マレイン酸コポリマー;
のブレンドを含み、ここで、該コンパウンドは、ポリ乳酸を重要成分として有し;
ここで、ポリ乳酸とスチレン無水マレイン酸コポリマーとは、2.3:1.0またはそれより小さい重量比を有し;そして
ここで、該ブレンドされたコンパウンドがプラスチック製品へと成形される前に本質的に乾燥されるならば、該プラスチック製品へと成形された後の該ブレンドされたコンパウンドは、いずれもASTM D648のプロトコールを使用して66ポンド/平方インチで測定した場合に、該ポリ乳酸単独の熱たわみ温度よりも少なくとも5℃高い熱たわみ温度の上昇を有する、コンパウンド。
【請求項2】
前記ブレンドされたコンパウンドがプラスチック製品へと成形される前に本質的に乾燥されるならば、該プラスチック製品へと成形された後の該ブレンドされたコンパウンドは、ASTM D648のプロトコールを用いて66ポンド/平方インチにおいて少なくとも65℃の熱たわみ温度を有する、請求項1に記載のコンパウンド。
【請求項3】
ポリ(メタ)アクリレートの相溶化剤をさらに含む、請求項1または請求項2に記載のコンパウンド。
【請求項4】
前記ポリ乳酸および前記スチレン無水マレイン酸コポリマーが一緒にブレンドされる前またはブレンドされる間に乾燥される、請求項1または請求項2に記載のコンパウンド。
【請求項5】
衝撃改質剤をさらに含む、請求項1または請求項2または請求項3に記載のコンパウンド。
【請求項6】
炭酸カルシウムをさらに含む、請求項1または請求項2に記載のコンパウンド。
【請求項7】
スチレン無水マレイン酸コポリマーの量が、前記コンパウンド全体の約7重量パーセント〜約54重量パーセントの範囲に及び、そしてここで、ポリ乳酸とスチレン無水マレイン酸コポリマーとが、1.9:1.0またはそれより小さい重量比を有する、請求項1または請求項2に記載のコンパウンド。
【請求項8】
スチレン無水マレイン酸コポリマーの量が、前記コンパウンド全体の約7重量パーセント〜約54重量パーセントの範囲に及び、そしてここで、ポリ乳酸とスチレン無水マレイン酸コポリマーとが、1.9:1.0またはそれより小さい重量比を有する、請求項3〜6のいずれかに記載のコンパウンド。
【請求項9】
前記本質的に乾燥された後のブレンドされたコンパウンドが、0.1%未満の水分含量を有し、そしてここで、前記ポリ乳酸は、該コンパウンドの主成分である、請求項1または請求項2に記載のコンパウンド。
【請求項10】
前記本質的に乾燥された後のブレンドされたコンパウンドが、0.1%未満の水分含量を有し、そしてここで、前記ポリ乳酸は、該コンパウンドの主成分である、請求項3〜7のいずれかに記載のコンパウンド。
【請求項11】
請求項1または請求項2に記載のブレンドされたコンパウンドから成形された、プラスチック製品。
【請求項12】
前記製品が、成型または押出し成形され、そしてここで、該製品は、輸送、アプライアンス、エレクトロニクス、ビルディングおよび建造物、包装または消費者マーケットにおける使用のために成形される、請求項11に記載の製品。
【請求項13】
請求項3〜10のいずれかに記載のブレンドされたコンパウンドから成形されたプラスチック製品であって、ここで、該プラスチック製品は、いずれもASTM D648のプロトコールを用いて66ポンド/平方インチにて測定した場合にポリ乳酸単独から製造したプラスチック製品の熱たわみ温度よりも少なくとも5℃高い熱たわみ温度の上昇を有する、製品。
【請求項14】
前記製品が、成型または押出し成形され、そしてここで、該製品は、輸送、アプライアンス、エレクトロニクス、ビルディングおよび建造物、包装または消費者マーケットにおける使用のために成形される、請求項13に記載の製品。
【請求項15】
請求項1または請求項2のいずれかに記載のコンパウンドを製造する方法であって、
(a)ポリ乳酸およびスチレン無水マレイン酸コポリマーを含む材料を集める工程、ならびに
(b)これらをブレンドして、輸送、アプライアンス、エレクトロニクス、ビルディングおよび建造物、包装または消費者マーケットにおいて使用するために成形されるプラスチック製品へとその後成型または押出し成形するためのコンパウンドにする工程
を包含する、方法。
【請求項16】
(c)前記ブレンドされたコンパウンドを0.1%未満の水分含量まで乾燥させる工程、および
(d)該ブレンドされたコンパウンドを、輸送、アプライアンス、エレクトロニクス、ビルディングおよび建造物、包装または消費者マーケットにおいて使用するためのプラスチック製品へと成形する工程
をさらに包含する、請求項15に記載のコンパウンドを製造する方法。

【公表番号】特表2011−518918(P2011−518918A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506369(P2011−506369)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【国際出願番号】PCT/US2009/040904
【国際公開番号】WO2009/131903
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(502387566)ポリワン コーポレイション (5)
【Fターム(参考)】