説明

耐熱性半芳香族ポリアミド複合構造およびその作製方法

本発明は、複合構造およびその作製方法の分野に関し、特に耐熱性ポリアミド複合構造の分野に関する。複合構造は、少なくとも一部が表面樹脂組成物で作製された表面を有し、かつ、マトリックス樹脂組成物を含浸させた、不織構造、織物、繊維の詰め物およびそれらの組合せからなる群から選択される繊維材料を含む。表面樹脂組成物およびマトリックス樹脂組成物は、a)半芳香族ポリアミド樹脂から選択される1種以上のポリアミド樹脂と、b)3つ以上のヒドロキシル基を有する1種以上の多価アルコールとを含むポリアミド組成物で作製される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合構造およびその作製方法の分野に関し、特に耐熱性半芳香族ポリアミド複合構造の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
同等またはより優れた機械的性能を有しながら、軽量化およびコスト削減のために金属部品の代わりに用いるために、繊維材料を含有するポリマーマトリックスを含む複合材料をベースとする構造が開発されている。この関心の高まりとともに、繊維材料とポリマーマトリックスとの組合せから得られるその優れた物理的特性のために、繊維強化プラスチック複合構造が設計されており、様々な最終使用用途に用いられている。複合構造の特性を最適化するためにポリマーマトリックスによる繊維材料の含浸を向上させるための製造技術が開発されている。例えば自動車および航空宇宙用途の構造用部品などの非常に要求が厳しい用途において、軽量、高強度および温度耐性の独特の組合せのために複合材料が必要とされている。
【0003】
ポリマーマトリックスとして熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を用いて高性能の複合構造を得ることができる。熱可塑性複合構造は、例えば、熱および圧力を加えることによって、それらが二次形成または再加工され得ること;硬化工程が不要であるため複合構造を作製するのに必要な時間が短縮されること;およびそのリサイクルの可能性が高いことなど、熱硬化性複合構造に勝るいくつかの利点を示す。実際に、熱硬化性樹脂の架橋(硬化)の化学反応にかかる時間は、熱可塑性プラスチックの加工の際には不要である。
【0004】
熱可塑性樹脂の中でも、ポリアミド樹脂が、複合構造を製造するのに特によく適している。熱可塑性ポリアミド組成物は、その良好な機械的特性、耐熱性、耐衝撃性および耐薬品性のため、ならびにそれらが好都合にかつ柔軟に成形されて様々な複雑度および緻密度の様々な物品になり得るため、自動車、電気/電子部品、家庭電化製品および家具に用いられる部品を含む広範囲の用途に用いるのに望ましい。
【0005】
米国特許第4,255,219号明細書には、複合物を形成する際に有用な熱可塑性シート材料が開示されている。開示された熱可塑性シート材料は、ポリアミド6および二塩基性カルボン酸またはその無水物もしくはエステルで作製されており、ガラス長繊維の少なくとも1つの強化マットとこのシートを重ね、加圧下で加熱することによって、複合物に成形される。しかしながら、ポリアミド6で作製された複合物は、例えば−40℃〜+120℃などの典型的な最終使用用途温度範囲にわたって、その機械的特性の低下を示すことがある。
【0006】
複合構造の製造を改良し、繊維材料のより容易で、短時間でかつ均一な含浸を可能にするために、ポリマーマトリックスの溶融粘度を低下させるためのいくつかの方法が開発されている。溶融粘度をできるだけ低くすることによって、ポリマー組成物がより速く流れ、ひいてはより処理し易くなり、繊維材料の含浸がより速くかつより良好に行われる。ポリマーマトリックスの溶融粘度を低下させることによって、所望の程度の含浸に達するのに必要とされる制限的な含浸時間が短縮され得ることで全体の製造速度が上がり、ひいては構造の製造の生産性の向上およびより短いサイクル時間に付随するエネルギー消費の低減につながり、これは環境問題にも有益である。
【0007】
仏国特許第2,158,422号明細書には、低分子量ポリアミドマトリックスおよび強化繊維で作製された複合構造が開示されている。ポリアミドの低分子量のため、ポリアミドは低粘度を有する。ポリアミドマトリックスの低粘度は、強化繊維の効率的な含浸を可能にする。しかしながら、低分子量ポリアミドの使用は、複合構造の低い機械的特性と関連し得る。
【0008】
米国特許第7,323,241号明細書には、強化繊維と星形構造を有する分枝状ポリアミド樹脂とで作製された複合構造が開示されている。星形構造を有する開示されたポリアミドは、溶融状態で高い流動性を示すことが記載されており、このため、良好な機械的特性を有する複合構造を形成するように強化繊維の良好な含浸が可能になる。
【0009】
繊維材料の含浸を向上または加速させるための、非常に流動性のポリアミド組成物を用いた既存の技術は、例えば自動車分野などの非常に要求が厳しい用途に理想的でない複合構造をもたらす。実際に、自動車分野において、例えば高温耐性構造を有することが現在および一般に求められている。このような高温耐性構造は、自動車のボンネットの下の領域において達することが多い温度などの、120℃より高いかあるいは200℃より高い温度に曝されるときにその機械的特性を保持し、または長期間の曝露の間、例えば90℃などの中間温度でその機械的特性を維持する必要がある。プラスチック部品が時間および温度のこのような組合せに曝されるとき、ポリマーの熱酸化により機械的特性が低下する傾向があるのはよくある現象である。この現象は熱老化と呼ばれる。
【0010】
残念ながら、既存の技術では、ポリマーによる繊維材料の含浸の速度についての容易かつ効率的な加工性、良好な耐熱性および長期間の高温曝露に対する機械的特性の良好な保持を兼ね備えることはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
良好な溶融レオロジーを有するマトリックス樹脂組成物を容易に、迅速にかつ効率的に含浸することが可能な繊維材料を含み、長期間の高温曝露に対する良好な耐性を示す複合構造が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題が、少なくとも一部が表面樹脂組成物で作製された表面を有し、かつ、マトリックス樹脂組成物を含浸させた、不織構造、織物、繊維の詰め物(fibrous batting)およびそれらの組合せからなる群から選択される繊維材料を含む複合構造であって、表面樹脂組成物およびマトリックス樹脂組成物が、a)半芳香族ポリアミド樹脂から選択される1種以上のポリアミド樹脂と、b)3つ以上のヒドロキシル基を有する1種以上の多価アルコールとを含むポリアミド組成物である複合構造によって克服することができることが分かった。
【0013】
第2の態様において、本発明は、複合構造を作製するための方法を提供する。上述した複合構造を作製するための方法は、i)繊維材料にマトリックス樹脂組成物を含浸する工程を含み、複合構造の表面の少なくとも一部は表面樹脂組成物で作製される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る複合構造は、良好な耐熱性、長期間の高温曝露の際の機械的特性の良好な保持を示し、繊維材料を含浸させるのに用いられるマトリックス樹脂の最適な溶融レオロジーのため、効率的にかつより低いコストで製造可能である。
【0015】
本明細書全体を通して使用される際の語句「約」および「〜または約〜」は、当該量または値が、指定される値またはおよそ同じ何らかの他の値であってもよいことを意味することが意図される。この語句は、同様の値が本発明にしたがって同等の結果または効果を促すことを伝えることが意図される。
【0016】
本明細書において使用される際の用語「長期間の高温曝露」は、曝露要因、すなわち時間および温度の組合せを指す。実験室条件下または自動車のボンネットの下の領域において達する温度などのポリマーの耐用期間の条件下(例えば、120℃以上の温度、好ましくは160℃以上の温度、より好ましくは180℃以上の温度、さらにより好ましくは200℃以上の温度、老化または曝露は、500時間以上、好ましくは1000時間以上である)で熱老化性能を示すポリマーが、はるかに長期間の老化または曝露の間、より低い温度で同様の性能を呈することが示され得る。ポリマー分解の速度定数の温度依存性は、例えばJournal of Materials Science、1999、34、843〜849などの文献から知られており、アレニウスの法則によって説明され;一例として、180℃における500時間にわたる老化は、80℃における12年間にわたる老化におおよそ相当する。
【0017】
本発明は、複合構造およびその作製方法に関する。本発明に係る複合構造は、マトリックス樹脂組成物を含浸させた繊維材料を含む。複合構造の表面の少なくとも一部は、表面樹脂組成物で作製される。マトリックス樹脂組成物および表面樹脂組成物は、同じであってもまたは異なっていてもよい。
【0018】
本明細書において使用される際の用語「マトリックス樹脂組成物を含浸させた繊維材料」は、マトリックス樹脂組成物が、マトリックス樹脂組成物によって実質的に囲まれた繊維材料の染み込んだ網目構造を形成するように、繊維材料を封入し、組み込むことを意味する。本明細書における趣旨では、用語「繊維」は、その長さに垂直なその断面積にわたる幅に対する長さの比率が高い、肉眼で見て均一な物体と定義される。繊維の断面は任意の形状であり得るが、通常円形である。繊維材料は、当業者に公知の任意の好適な形態であってもよく、不織構造、織物、繊維の詰め物およびそれらの組合せからなる群から選択されるのが好ましい。不織構造は、ランダムな繊維配向または整列された繊維構造から選択され得る。ランダムな繊維配向の例としては、以下に限定はされないが、マット、ニードルドマットまたはフェルトの形態であり得る細断された材料および連続した材料が挙げられる。整列された繊維構造の例としては、以下に限定はされないが、一方向繊維ストランド、二方向ストランド、多方向ストランド、多軸織物が挙げられる。織物は、織物形態、編物、組みひもおよびそれらの組合せからなる群から選択され得る。繊維材料は形態が連続または不連続であり得る。複合構造の最終使用用途および所要の機械的特性に応じて、いくつかの同じ繊維材料または異なる繊維材料の組合せのいずれかを用いることによって2つ以上の繊維材料を用いることができ、すなわち本発明に係る複合構造は、1つ以上の繊維材料を含んでいてもよい。異なる繊維材料の組合せの一例は、例えば中心層として設置される平面状のランダムマットなどの不織構造および外層として設置される1つ以上の連続した織物繊維材料を含む組合せである。このような組合せにより、複合構造の処理の向上および複合構造の均一性の向上が可能になり、ひいては機械的特性が向上される。材料または材料の混合物がマトリックス樹脂組成物および表面樹脂組成物による含浸の際に用いられる処理条件に耐える限り、繊維材料は任意の好適な材料または材料の混合物で作製されていてもよい。
【0019】
好ましくは、繊維材料は、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、グラファイト繊維、金属繊維、セラミック繊維、天然繊維またはそれらの混合物を含み;より好ましくは、繊維材料は、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、天然繊維またはそれらの混合物を含み;さらにより好ましくは、繊維材料は、ガラス繊維、炭素繊維およびアラミド繊維またはそれらの混合物を含む。天然繊維とは、植物由来または動物由来の材料のいずれかを意味する。使用される際、天然繊維は、例えば種子毛(例えば綿)、茎植物(例えば麻、亜麻、竹;靱皮繊維および芯繊維の両方)、葉植物(例えばサイザル麻およびマニラ麻)、農産物繊維(例えば、穀物のわら、トウモロコシの穂軸、もみ殻およびヤシの毛)またはリグノセルロース系繊維(例えば木材、木質繊維、木粉、紙および木材関連材料)などの植物供給源に由来するのが好ましい。上述したように、2つ以上の繊維材料を用いることができる。例えばガラス繊維または天然繊維で作製された1つ以上の中心層および炭素繊維またはガラス繊維で作製された1つ以上の表面層を含む複合構造などの異なる繊維で作製された繊維材料の組合せを用いることができる。好ましくは、繊維材料は、織物構造、不織構造またはそれらの組合せから選択され、ここで、前記構造は、ガラス繊維で作製され、ガラス繊維は、8〜30μmの直径、好ましくは10〜24μmの直径を有するEガラスフィラメントである。
【0020】
繊維材料は、熱可塑性材料および上述した材料をさらに含有していてもよく、例えば繊維材料は、混繊糸もしくは交織糸または後に織物もしくは不織物の形態に加工するのに適した熱可塑性材料で作製された粉末を含浸された繊維材料、または一方向材料として使用するための混合物の形態であってもよい。
【0021】
好ましくは、複合構造における繊維材料とポリマー材料との比率、すなわち、マトリックス樹脂組成物および表面樹脂組成物と組み合わされた繊維材料は、少なくとも30%の繊維材料、より好ましくは40〜60%の繊維材料であり、この百分率は、複合構造の全体積を基準にした体積パーセントである。
【0022】
表面樹脂組成物およびマトリックス樹脂組成物は、a)1種以上のポリアミド樹脂と、b)3つ以上のヒドロキシル基を有する1種以上の多価アルコールとを含むポリアミド組成物である。1種以上のポリアミド樹脂は、半芳香族ポリアミド樹脂から選択されるのが好ましい。表面樹脂組成物およびマトリックス樹脂組成物は、同一であってもまたは異なっていてもよい。表面樹脂組成物およびマトリックス樹脂組成物が異なっているとき、構成要素a)、すなわち1種以上のポリアミド樹脂、および/または構成要素b)、すなわち3つ以上のヒドロキシル基を有する1種以上の多価アルコールが同じでないか、および/または表面樹脂組成物およびマトリックス樹脂組成物における構成要素a)およびb)の量が異なっていることを意味する。
【0023】
ポリアミド樹脂は、1種以上のジカルボン酸および1種以上のジアミン、および/または1種以上のアミノカルボン酸の縮合生成物、ならびに/あるいは1種以上の環状ラクタムの開環重合生成物である。用語「半芳香族」は、脂肪族カルボン酸モノマーおよび脂肪族ジアミンモノマーを含むポリアミド樹脂を表す「完全に脂肪族」と比較して、少なくともいくつかの芳香族カルボン酸モノマーおよび脂肪族ジアミンモノマーを含むポリアミド樹脂を表す。
【0024】
半芳香族ポリアミド樹脂は、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、またはより高次のポリマーであり、ここで、酸モノマーの少なくとも一部は、1種以上の芳香族カルボン酸から選択される。1種以上の芳香族カルボン酸は、テレフタル酸またはテレフタル酸の混合物ならびに、イソフタル酸、例えば2−メチルテレフタル酸などの置換フタル酸およびナフタレンジカルボン酸の非置換または置換異性体のような1種以上の他のカルボン酸であり得、ここで、カルボン酸成分は、好ましくは少なくとも55モル%のテレフタル酸(モル%は、カルボン酸混合物を基準にしている)を含有する。好ましくは、1種以上の芳香族カルボン酸は、テレフタル酸、イソフタル酸およびそれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは、1種以上のカルボン酸は、テレフタル酸とイソフタル酸との混合物であり、ここで、混合物は、好ましくは少なくとも55モル%のテレフタル酸を含有する。さらに、1種以上のカルボン酸は、アジピン酸;ピメリン酸;スベリン酸;アゼライン酸;セバシン酸およびドデカン二酸のような1種以上の脂肪族カルボン酸(アジピン酸が好ましい)と混合され得る。より好ましくは、半芳香族ポリアミド樹脂の1種以上のカルボン酸の混合物に含まれるテレフタル酸とアジピン酸との混合物は、少なくとも25モル%のテレフタル酸を含有する。半芳香族ポリアミド樹脂は、以下に限定はされないが、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、2−エチルテトラメチレンジアミン、2−メチルオクタメチレンジアミン;トリメチルヘキサメチレンジアミン、ビス(p−アミノシクロヘキシル)メタン;m−キシリレンジアミン;p−キシリレンジアミンおよび/またはそれらの混合物を含む4つ以上の炭素原子を有するジアミンの中から選択され得る1種以上のジアミンを含む。半芳香族ポリアミド樹脂の好適な例としては、ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド6,T)、ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド9,T)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド10,T)、ポリ(ドデカメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド12,T)、ヘキサメチレンアジパミド/ヘキサメチレンテレフタルアミドコポリアミド(ポリアミド6,T/6,6)、ヘキサメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンイソフタルアミド(6,T/6,I)、ポリ(m−キシリレンアジパミド)(ポリアミドMXD,6)、ヘキサメチレンアジパミド/ヘキサメチレンテレフタルアミドコポリアミド(ポリアミド6,T/6,6)、ヘキサメチレンテレフタルアミド/2−メチルペンタメチレンテレフタルアミドコポリアミド(ポリアミド6,T/D,T)、ヘキサメチレンアジパミド/ヘキサメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンイソフタルアミドコポリアミド(ポリアミド6,6/6,T/6,I);ポリ(カプロラクタム−ヘキサメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド6/6,T)ならびにそれらのコポリマーおよびブレンドが挙げられる。本明細書に記載のポリアミド組成物に含まれる半芳香族ポリアミド樹脂の好ましい例としては、PA6,T;PA6,T/6,6、PA6,T/6,I;PAMXD,6;PA6,T/D,Tならびにそれらのコポリマーおよびブレンドが挙げられる。
【0025】
ポリアミド組成物は、1種以上の完全脂肪族ポリアミドをさらに含んでいてもよい。完全脂肪族ポリアミド樹脂は、ジアミン、ジカルボン酸、ラクタム、アミノカルボン酸、およびそれらの反応同等物(reactive equivalent)などの脂肪族および脂環式モノマーから形成される。好適なアミノカルボン酸は11−アミノドデカン酸を含む。本発明の文脈において、用語「完全脂肪族ポリアミド樹脂」は、2種以上のこのようなモノマーおよび2種以上の完全脂肪族ポリアミド樹脂のブレンドから誘導されるコポリマーも指す。直鎖状、分枝状、および環状のモノマーを用いてもよい。
【0026】
完全脂肪族ポリアミド樹脂に含まれるカルボン酸モノマーとしては、以下に限定はされないが、例えばアジピン酸(C6)、ピメリン酸(C7)、スベリン酸(C8)、アゼライン酸(C9)、セバシン酸(C10)、ドデカン二酸(C12)およびテトラデカン二酸(C14)などの脂肪族カルボン酸が挙げられる。ジアミンは、以下に限定はされないが、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、2−エチルテトラメチレンジアミン、2−メチルオクタメチレンジアミン;トリメチルヘキサメチレンジアミンおよび/またはそれらの混合物を含む4つ以上の炭素原子を有するジアミンの中から選択され得る。完全脂肪族ポリアミド樹脂の好適な例としては、PA6;PA6,6;PA4,6;PA6,10;PA6,12;PA6,14;P 6,13;PA 6,15;PA6,16;PA11;PA 12;PA10;PA 9,12;PA9,13;PA9,14;PA9,15;P 6,16;PA9,36;PA10,10;PA10,12;PA10,13;PA10,14;PA12,10;PA12,12;PA12,13;12,14ならびにそれらのコポリマーおよびブレンドが挙げられる。完全脂肪族ポリアミド樹脂の好ましい例としては、PA6、PA11、PA12、PA4,6、PA6,6、PA,10;PA6,12;PA10,10ならびにそれらのコポリマーおよびブレンドが挙げられる。
【0027】
マトリックス樹脂組成物および表面樹脂組成物は、3つ以上のヒドロキシル基を有する1種以上の多価アルコールを含むポリアミド組成物である。好ましくは、1種以上の多価アルコールは、0.25質量%または約0.25質量%〜15質量%または約15質量%、より好ましくは0.5質量%または約0.5質量%〜10質量%または約10質量%、さらにより好ましくは0.5質量%〜5質量%または約5質量%の量で独立して本明細書に記載のポリアミド組成物中に存在し、質量パーセントは、ポリアミド組成物の総質量を基準にしている。
【0028】
1種以上の多価アルコールは、独立して、3つ以上のヒドロキシル基を含有する脂肪族ヒドロキシル化合物、3つ以上のヒドロキシル基を含有する脂肪族−脂環式化合物、3つ以上のヒドロキシル基を含有する脂環式化合物、およびさらに2つのヒドロキシル基を有する糖類からなる群から選択され得る。
【0029】
多価アルコール中の脂肪族鎖は、炭素原子だけでなく、例えば、窒素、酸素および硫黄原子から選択され得る1つ以上のヘテロ原子も含み得る。多価アルコール中に存在する脂環式環が、単環式または二環もしくは多環系の一部であり得、炭素環式または複素環式であってもよい。多価アルコール中に存在する複素環は、単環式または二環もしくは多環系の一部であり得、例えば、窒素、酸素および硫黄原子から選択され得る1つ以上のヘテロ原子を含み得る。1種以上の多価アルコールは、エーテル基、カルボン酸基、カルボン酸アミド基またはカルボン酸エステル基などの1つ以上の置換基を含有していてもよい。
【0030】
3つ以上のヒドロキシル基を含有する多価アルコールの例としては、以下に限定はされないが、グリセロール、トリメチロールプロパン、2,3−ジ−(2’−ヒドロキシエチル)−シクロヘキサン−1−オール、ヘキサン−1,2,6−トリオール、1,1,1−トリス−(ヒドロキシメチル)エタン、3−(2’−ヒドロキシエトキシ)−プロパン−1,2−ジオール、3−(2’−ヒドロキシプロポキシ)−プロパン−1,2−ジオール、2−(2’−ヒドロキシエトキシ)−ヘキサン−1,2−ジオール、6−(2’−ヒドロキシプロポキシ)−ヘキサン−1,2−ジオール、1,1,1−トリス−[(2’−ヒドロキシエトキシ)−メチル]−エタン、1,1,1−トリス−[(2’−ヒドロキシプロポキシ)−メチル]−プロパン、1,1,1−トリス−(4’−ヒドロキシフェニル)−エタン、1,1,1−トリス−(ヒドロキシフェニル)−プロパン、1,1,3−トリス−(ジヒドロキシ−3−メチルフェニル)−プロパン、1,1,4−トリス−(ジヒドロキシフェニル)−ブタン、1,1,5−トリス−(ヒドロキシフェニル)−3−メチルペンタン、ジ−トリメチロールプロパン、トリメチロールプロパンエトキシレート、またはトリメチロールプロパンプロポキシレートなどのトリオール;ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、およびトリペンタエリトリトールなどのポリオール;ならびにシクロデキストリン、D−マンノース、グルコース、ガラクトース、スクロース、フルクトース、キシロース、アラビノース、D−マンニトール、D−ソルビトール、D−もしくはL−アラビトール、キシリトール、イジトール、タリトール、アリトール、アルトリトール、グリトール(guilitol)、エリトリトール、トレイトール、およびD−グロン酸γ−ラクトンなどのさらに2つのヒドロキシル基を有する糖類が挙げられる。
【0031】
好ましい多価アルコールは、少なくとも1つの原子によって互いに分けられるそれぞれの炭素原子に結合される1対のヒドロキシル基を有するものを含む。特に好ましい多価アルコールは、1対のヒドロキシル基が、単一の炭素原子によって互いに分けられるそれぞれの炭素原子に結合されるものである。
【0032】
好ましくは、本明細書に記載のポリアミド組成物に含まれる1種以上の多価アルコールは、独立して、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、トリペンタエリトリトール、ジ−トリメチロールプロパン、D−マンニトール、D−ソルビトール、キシリトールおよびそれらの混合物からなる群から選択される。より好ましくは、本明細書に記載のポリアミド組成物に含まれる1種以上の多価アルコールは、独立して、ジペンタエリトリトール、トリペンタエリトリトール、ペンタエリトリトールおよびそれらの混合物からなる群から選択される。さらにより好ましくは、本明細書に記載のポリアミド組成物に含まれる1種以上の多価アルコールは、ジペンタエリトリトールおよび/またはペンタエリトリトールである。
【0033】
表面樹脂組成物および/またはマトリックス樹脂組成物は、1種以上の衝撃改質剤、1種以上の熱安定剤、1種以上の酸化安定剤、1種以上の強化剤、1種以上の紫外線安定剤、1種以上の難燃剤またはそれらの混合物をさらに含んでいてもよい。
【0034】
好ましい衝撃改質剤は、カルボキシル置換ポリオレフィン、アイオノマーおよび/またはそれらの混合物を含む、ポリアミド組成物に通常用いられるものを含む。カルボキシル置換ポリオレフィンは、ポリオレフィン主鎖自体または側鎖のいずれかにおいて、カルボン酸部分が結合されたポリオレフィンである。「カルボン酸部分」とは、ジカルボン酸、ジエステル、ジカルボン酸モノエステル、酸無水物、ならびにモノカルボン酸およびエステルのうちの1つ以上などのカルボン酸基を意味する。有用な衝撃改質剤は、ジカルボキシル置換ポリオレフィンを含み、これは、ポリオレフィン主鎖自体または側鎖のいずれかにおいて、ジカルボン酸部分が結合されたポリオレフィンである。「ジカルボン酸部分」とは、ジカルボン酸、ジエステル、ジカルボン酸モノエステル、および酸無水物のうちの1つ以上などのジカルボン酸基を意味する。衝撃改質剤は、例えばエチレン/オクテンなどのエチレン/α−オレフィンポリオレフィンをベースとしていてもよい。1,4−ブタジエン;1,4−ヘキサジエン;またはジシクロペンタジエンなどのジエンモノマーが、ポリオレフィンの調製に用いられてもよい。好ましいポリオレフィンは、エチレン−プロピレン−ジエン(EPDM)およびスチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン(SEBS)ポリマーを含む。より好ましいポリオレフィンは、エチレン−プロピレン−ジエン(EPDM)を含み、ここで、用語「EPDM」は、エチレンのターポリマー、3〜10個の炭素原子を有するα−オレフィン、および5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエンなどの共重合性非共役ジエンを意味する。当業者に理解されるであろうように、衝撃改質剤には、1つ以上のカルボキシル部分が結合されていてもまたは結合されていなくてもよい。カルボキシル部分は、不飽和カルボキシル含有モノマーを用いて共重合することによって、ポリオレフィンの調製の際に導入され得る。エチレンと無水マレイン酸モノエチルエステルとのコポリマーが好ましい。カルボキシル部分はまた、酸、エステル、二酸、ジエステル、酸エステル、または無水物などのカルボキシル部分を含有する不飽和化合物でポリオレフィンをグラフト化することによって導入され得る。好ましいグラフト化剤は無水マレイン酸である。ポリエチレン、ポリプロピレン、およびEPDMポリマーなどのポリオレフィンと、カルボキシル部分を含有する不飽和化合物でグラフト化されたポリオレフィンとのブレンドは、衝撃改質剤として用いられ得る。衝撃改質剤は、アイオノマーをベースとしてもよい。「アイオノマー」とは、亜鉛、ナトリウム、またはリチウムなどの金属カチオンで中和または部分的に中和されたカルボキシル基含有ポリマーを意味する。アイオノマーの例は、米国特許第3,264,272号明細書および同第4,187,358号明細書に記載されている。好適なカルボキシル基含有ポリマーの例としては、以下に限定はされないが、エチレン/アクリル酸コポリマーおよびエチレン/メタクリル酸コポリマーが挙げられる。カルボキシル基含有ポリマーは、以下に限定はされないが、アクリル酸ブチルなどの1つ以上のさらなるモノマーからも誘導され得る。亜鉛塩が好ましい中和剤である。アイオノマーは、E.I.du Pont de Nemours and Co.(Wilmington、DE)からSurlyn(登録商標)という商品名で市販されている。1種以上の衝撃改質剤が存在する場合、衝撃改質剤は、最大で30質量%または約30質量%、または好ましくは3質量%または約3質量%〜25質量%または約25質量%、またはより好ましくは5質量%または約5質量%〜20質量%または約20質量%を占め、質量パーセントは、場合により表面樹脂組成物またはマトリックス樹脂組成物の総質量を基準にしている。
【0035】
表面樹脂組成物および/またはマトリックス樹脂組成物は、1種以上の熱安定剤をさらに含んでいてもよい。1種以上の熱安定剤は、好ましくは銅塩および/またはその誘導体、ヒンダードアミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤およびそれらの混合物、より好ましくは銅塩および/またはハロゲン化物化合物と組み合わせた誘導体、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤およびそれらの混合物からなる群から選択される。銅塩および/またはその誘導体の例としては、以下に限定はされないが、ハロゲン化銅または酢酸銅;二価マンガン塩および/またはその誘導体ならびにそれらの混合物が挙げられる。好ましくは、銅塩および/または誘導体は、ハロゲン化物化合物および/またはリン化合物と組み合わせて用いられ、より好ましくは銅塩は、ヨウ化物または臭化物化合物、さらにより好ましくは、ヨウ化カリウムまたは臭化カリウムと組み合わせて用いられる。1種以上の熱安定剤が存在する場合、熱安定剤は、0.1質量%または約0.1質量%〜3質量%または約3質量%、または好ましくは0.1質量%または約0.1質量%〜1質量%または約1質量%、またはより好ましくは0.1質量%または約0.1質量%〜0.7質量%または約0.7質量%の量で存在し、質量パーセントは、場合により表面樹脂組成物またはマトリックス樹脂組成物の総質量を基準にしている。1種以上の熱安定剤の添加により、複合構造の製造中のその熱安定性(すなわち減少された分子量低下が得られる)ならびに使用および時間に対するその熱安定性がさらに向上される。熱安定性の向上に加えて、1種以上の熱安定剤の存在は、複合構造の含浸の際に用いられる温度の上昇を可能にし、ひいては本明細書に記載のマトリックス樹脂および/またはポリアミド組成物の溶融粘度を低下させ得る。マトリックス樹脂および/またはポリアミド表面樹脂組成物の溶融粘度が低下される結果として、含浸速度が上昇され得る。
【0036】
表面樹脂組成物および/またはマトリックス樹脂組成物は、例えばリン系酸化防止剤(例えば亜リン酸塩または亜ホスホン酸塩安定剤)、ヒンダードフェノール安定剤、芳香族アミン安定剤、チオエステル、および高温付加が用いられる場合に熱に誘発されるポリマーの酸化を抑制するフェノール系酸化防止剤などの1種以上の酸化安定剤をさらに含有していてもよい。1種以上の酸化安定剤が存在する場合、酸化安定剤は、0.1質量%または約0.1質量%〜3質量%または約3質量%、または好ましくは0.1質量%または約0.1質量%〜1質量%または約1質量%、またはより好ましくは0.1質量%または約0.1質量%〜0.7質量%または約0.7質量%を占め、質量パーセントは、場合により表面樹脂組成物またはマトリックス樹脂組成物の総質量を基準にしている。
【0037】
表面樹脂組成物および/またはマトリックス樹脂組成物は、ガラス繊維、ガラスフレーク、炭素繊維、雲母、珪灰石、炭酸カルシウム、タルク、焼成粘土、カオリン、硫酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、炭酸ナトリウムアルミニウム、バリウムフェライト、およびチタン酸カリウムなどの1種以上の強化剤をさらに含有していてもよい。1種以上の強化剤が存在する場合、強化剤は、1質量%または約1質量%〜60質量%または約60質量%、好ましくは1質量%または約1質量%〜40質量%または約40質量%、またはより好ましくは1または約1質量%〜35質量%または約35質量%の量で存在し、質量パーセントは、場合により表面樹脂組成物またはマトリックス樹脂組成物の総質量を基準にしている。
【0038】
表面樹脂組成物および/またはマトリックス樹脂組成物は、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)、カーボンブラック、置換レゾルシノール、サリチル酸塩、ベンゾトリアゾール、およびベンゾフェノンなどの1種以上の紫外線安定剤をさらに含有していてもよい。
【0039】
表面樹脂組成物および/またはマトリックス樹脂組成物は、金属酸化物(ここで、金属は、アルミニウム、鉄、チタン、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、亜鉛、モリブデン、コバルト、ビスマス、クロム、スズ、アンチモン、ニッケル、銅およびタングステンであり得る)、金属粉末(ここで、金属は、アルミニウム、鉄、チタン、マンガン、亜鉛、モリブデン、コバルト、ビスマス、クロム、スズ、アンチモン、ニッケル、銅およびタングステンであり得る)、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムおよび炭酸バリウム、金属ホスフィン酸塩(ここで、金属は、アルミニウム、亜鉛およびカルシウムであり得る)などの金属塩、デカブロモジフェニルエーテルのようなハロゲン化有機化合物、ポリ(ブロモスチレン)および臭素化ポリスチレンなどのハロゲン化ポリマー、ピロリン酸メラミン、シアヌル酸メラミン、ポリリン酸メラミン、赤リンなどの1種以上の難燃剤をさらに含有していてもよい。
【0040】
マトリックス樹脂組成物の溶融粘度をさらに低下させるために、本明細書に記載のマトリックス樹脂組成物は、超分岐ポリマー(樹枝状ポリマーまたは高分岐ポリマー、樹枝状高分子または樹木状ポリマーとしても知られている)、分子鎖切断剤およびそれらの混合物からなる群から選択される1種以上のレオロジー調整剤をさらに含んでいてもよい。超分岐ポリマーは、樹状構造を有する三次元高分岐分子である。超分岐ポリマーは、1つ以上の分岐コモノマー単位を含む高分子である。分岐単位は、分岐層および場合により核(コアとしても知られている)、1つ以上の間隔層および/または連鎖停止分子(chain terminating molecule)の層を含む。分岐層の連続した反復により、他の分子と比較して増加した分岐の多様性、分岐密度、および増加した数の末端官能基が得られる。好ましい超分岐ポリマーは、超分岐ポリエステルを含む。超分岐ポリマーの好ましい例は、米国特許第5,418,301号明細書、米国特許出願公開第2007/0173617号明細書に記載されるものである。熱可塑性樹脂におけるこのような超分岐ポリマーの使用は、米国特許第6,225,404号明細書、米国特許第6,497,959号明細書、米国特許第6,663,966号明細書、国際公開第2003/004546号パンフレット、欧州特許第1424360号明細書および国際公開第2004/111126号パンフレットに開示されている。この文献には、超分岐ポリマーポリエステル高分子を熱可塑性組成物に添加すると、組成物の溶融粘度の低下により向上したレオロジー特性および機械的特性が得られ、ひいては、熱可塑性組成物の向上した加工性が得られることが教示されている。1種以上の超分岐ポリマーが存在する場合、超分岐ポリマーは、0.05質量%または約0.05質量%〜10質量%または約10質量%、またはより好ましくは0.1質量%または約0.1質量%〜5質量%または約5質量%を占め、質量パーセントは、マトリックス樹脂組成物の総質量を基準にしている。分子鎖切断剤の例としては、以下に限定はされないが、脂肪族ジカルボン酸および芳香族ジカルボン酸が挙げられる。その具体例は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸およびフタル酸の異性体である。1種以上の分子鎖切断剤が存在する場合、分子鎖切断剤は、0.05質量%または約0.05質量%〜5質量%または約5質量%、またはより好ましくは0.1質量%または約0.1質量%〜3質量%または約3質量%を占め、質量パーセントは、マトリックス樹脂組成物の総質量を基準にしている。
【0041】
表面樹脂組成物および/またはマトリックス樹脂組成物は、以下に限定はされないが、流動促進添加剤、潤滑剤、帯電防止剤、着色剤(染料、顔料、カーボンブラックなどを含む)、難燃剤、成核剤、結晶化促進剤およびポリマー配合の技術分野で公知の他の加工助剤を含む改質剤および他の成分をさらに含んでいてもよい。
【0042】
上述した充填剤、改質剤および他の成分は、当該技術分野で周知の量および形態で存在してもよく、形態は、いわゆるナノ材料の形態(粒子の寸法の少なくとも1つが1〜1000nmの範囲である)を含む。
【0043】
好ましくは、表面樹脂組成物および/またはマトリックス樹脂組成物は溶融混合されたブレンドであり、ここで、ブレンドが全体的にまとまるように、ポリマー成分の全てが、互いの中でよく分散され、非ポリマー成分の全てが、中でよく分散され、ポリマーマトリックスによって結合される。本発明のポリマー成分と非ポリマー成分とを組み合わせるのに任意の溶融混合方法が用いられ得る。例えば、ポリマー成分および非ポリマー成分は、例えば、1軸もしくは2軸押出機;ブレンダー;1軸もしくは2軸混練機;またはバンバリーミキサーなど溶融ミキサーに、一工程の添加で一度に全てを、または段階的に添加され、次に溶融混合され得る。ポリマー成分および非ポリマー成分を段階的に添加するとき、ポリマー成分および/または非ポリマー成分の一部がまず添加され、後から添加される残りのポリマー成分および非ポリマー成分と溶融混合され、十分に混合された組成物が得られるまでさらに溶融混合される。
【0044】
最終使用用途に応じて、本発明に係る複合構造は、任意の形状を有し得る。好ましい実施形態において、本発明に係る複合構造は、シート構造の形態である。第1の構成要素は、可撓性であってもよく、その場合、第1の構成要素は圧延され得る。
【0045】
別の態様において、本発明は、上述した複合構造を作製するための方法およびその得られる複合構造に関する。表面を有する複合構造を作製するための方法は、i)繊維材料にマトリックス樹脂組成物を含浸する工程を含み、複合構造の表面の少なくとも一部は表面樹脂組成物で作製される。好ましくは、繊維材料には、熱プレス加工によってマトリックス樹脂が含浸される。熱プレス加工の際、繊維材料、マトリックス樹脂組成物および表面樹脂組成物には、樹脂組成物を溶融させ、繊維材料に浸透させ、それによって前記繊維材料に含浸させるために、熱および圧力がかけられる。
【0046】
通常、適切な含浸を可能にするために、2〜100バール、より好ましくは10〜40バールの圧力およびマトリックス樹脂組成物および表面樹脂組成物の融点より高い温度、好ましくは融点より少なくとも約20℃高い温度で熱プレス加工は行われる。加熱は、接触加熱、放射ガス加熱、赤外線加熱、対流もしくは強制対流空気加熱、誘導加熱、マイクロ波加熱またはそれらの組合せを含む様々な手段によって行われ得る。
【0047】
ポリアミド組成物に3つ以上のヒドロキシル基を有する1種以上の多価アルコールを添加することによって得られる向上した熱安定性により、複合構造の含浸の際に用いられる温度は、3つ以上のヒドロキシル基を有する多価アルコールを含まないポリアミド樹脂と比べて上昇され得る。この温度の上昇によって得られるマトリックス樹脂の溶融粘度の低下により、含浸時間が短縮され、ひいては複合構造の全体製造速度が向上される。
【0048】
静的プロセスまたは連続プロセス(動的プロセスとしても知られている)によって含浸圧力を加えることができ、連続プロセスが速度の理由で好ましい。含浸プロセスの例としては、以下に限定はされないが、真空成形、インモールドコーティング、クロスダイ式押出、引き抜き成形、電線被覆式プロセス、積層、スタンピング加工、ダイヤフラム成形またはプレス成形が挙げられ、積層が好ましい。積層の際、熱および圧力が、加熱領域における対向する加圧ローラーまたはベルトを介して、繊維材料、マトリックス樹脂組成物および表面樹脂組成物に加えられ、好ましくはその後、圧密を完了させ、含浸された繊維材料を冷却するために、加圧手段によって冷却領域に圧力が連続して加えられる。積層技術の例としては、以下に限定はされないが、カレンダー加工、平台積層および二重ベルトプレス積層が挙げられる。積層が含浸プロセスとして用いられるとき、好ましくは二重ベルトプレスが積層に用いられる。
【0049】
マトリックス樹脂組成物および表面樹脂組成物は、例えば粉体コーティング、フィルム積層、押出コーティングまたはそれらの2つ以上の組合せなどの従来の手段によって繊維材料に被着され、ただし、表面樹脂組成物は、複合構造の表面の少なくとも一部に被着され、この表面は複合構造の環境に曝される。
【0050】
粉体コーティングプロセスの際、従来の粉砕方法によって得られたポリマー粉末が繊維材料に被着される。粉末は、分散、散布、噴霧、溶射もしくはフレーム溶射、または流動床コーティング方法によって、繊維材料に被着され得る。粉体コーティングプロセスは、繊維材料における粉末の焼結後工程を含む工程をさらに含んでいてもよい。複合構造の表面の少なくとも一部が表面樹脂組成物で作製されるように、マトリックス樹脂組成物および表面樹脂組成物は繊維材料に被着される。その後、粉体コーティングされた繊維材料に熱プレス加工が行われ、その際、加圧領域の外部において粉体コーティングされた繊維材料は予熱されてもよい。
【0051】
フィルム積層の際、例えばインフレーションフィルム押出、キャストフィルム押出およびキャストシート押出などの当該技術分野で公知の従来の押出方法によって得られた、マトリックス樹脂組成物で作製された1つ以上のフィルムおよび表面樹脂組成物で作製された1つ以上のフィルムは、例えば層化によって繊維材料に被着される。その後、マトリックス樹脂組成物で作製された1つ以上のフィルムおよび表面樹脂組成物で作製された1つ以上のフィルムおよび1つ以上の繊維材料を含む組立体に熱プレス加工が行われる。得られる複合構造において、フィルムは溶融し、繊維材料の周囲のポリマー連続体として繊維材料の周りに浸透する。押出コーティングの際、マトリックス樹脂組成物で作製されたペレットおよび/または粒状物質(granulate)および表面樹脂組成物で作製されたペレットおよび/または粒状物質は、1つ以上の溶融カーテンを形成するように1つ以上の平板ダイを通して溶融押出しされ、次に、1つ以上の溶融カーテンは、それを敷くことによって繊維材料に被着される。その後、マトリックス樹脂組成物、表面樹脂組成物および1つ以上の繊維材料を含む組立体に熱プレス加工が行われる。
【0052】
最終使用用途に応じて、工程i)で得られる複合構造は、所望の幾何学形状もしくは形態に成形されるか、またはシート形態で用いられ得る。本発明に係る複合構造を作製するための方法は、複合構造を成形する工程ii)をさらに含んでいてもよく、前記工程は、含浸工程i)の後に行われる。工程i)で得られる複合構造を成形する工程は、圧縮成形、スタンピング加工、射出成形機における直接成形、または熱および/または圧力を用いた任意の技術によって行われ得る。圧力が油圧成形プレスを用いることによって加えられるのが好ましい。圧縮成形またはスタンピング加工の際、複合構造は、加熱手段によって表面樹脂組成物の溶融温度を超える温度に予熱され、最終的な所望の幾何学形状の型穴を有する金型を含む成形プレスなどの形成または成形手段に移送され、それによって所望の形態に成形され、その後、表面樹脂組成物の溶融温度未満の温度、好ましくはマトリックス樹脂組成物の溶融温度未満の温度に冷却された後、プレスまたは金型から取り出される。
【0053】
別の実施形態によれば、本発明は、複合構造の長期間の高温曝露に対する耐性を向上させるための方法を提供する。この方法は、a)1種以上のポリアミド樹脂と、b)3つ以上のヒドロキシル基を有する1種以上の多価アルコールとを混合して、本明細書に記載のポリアミド組成物を形成する工程と、本明細書に記載の繊維材料に本明細書に記載のポリアミド組成物から選択されるマトリックス樹脂組成物を含浸して、少なくとも一部が本明細書に記載の表面樹脂組成物で作製された表面を有する複合構造を形成する工程とを含む。
【0054】
別の実施形態によれば、本発明は、高温用途のための本明細書に記載の複合構造の使用を提供する。
【0055】
本発明に係る複合構造は、例えば、自動車、トラック、民間航空機、航空宇宙、鉄道、家庭電化製品、コンピュータハードウェア、携帯用デバイス、娯楽およびスポーツのための構成要素、機械の構造用部品、建物の構造用部品、太陽光発電もしくは風力エネルギー設備の構造用部品または機械デバイスの構造用部品などの多種多様な用途に用いられ得る。
【0056】
自動車用途の例としては、以下に限定はされないが、座席の構成要素および座席のフレーム、エンジンカバーブラケット、エンジン取付台、サスペンションアームおよび取付台、スペアタイヤウェル、シャーシ補強、フロアパン、フロントエンドモジュール、ステアリングコラムのフレーム、インストルメントパネル、ドアシステム、車体パネル(水平方向の車体パネルおよびドアパネルなど)、後部ドア、ハードトップフレーム構造、コンバーチブルトップフレーム構造、屋根構造、エンジンカバー、トランスミッション用の筐体および電源供給構成要素、オイルパン、エアバッグの筐体容器、自動車の内部衝撃構造、エンジン支持ブラケット、クロスカービーム、バンパービーム、歩行者安全ビーム、防火壁、リヤパーセルシェルフ、車両の横方向隔壁(cross vehicle bulkhead)、冷媒ボトルおよび消火器およびトラックの圧縮空気ブレーキ装置容器などの圧力容器、内燃機関/電気のハイブリッド車または電気自動車のバッテリートレー、自動車サスペンションウィッシュボーンおよび制御アーム、サスペンションスタビライザーリンク、板ばね、車輪、レクリエーショナルビークルおよびオートバイのスイングアーム、フェンダー、屋根のフレームおよびタンクフラップが挙げられる。
【0057】
家庭電化製品の例としては、以下に限定はされないが、洗濯機、乾燥機、冷蔵庫、空調および暖房装置が挙げられる。娯楽およびスポーツの例としては、以下に限定はされないが、インラインスケートの構成要素、野球用バット、ホッケー用スティック、スキーおよびスノーボードのビンディング、リュックサックの裏面およびフレーム、ならびに自転車のフレームが挙げられる。機械の構造用部品の例としては、例えば携帯用電子デバイス用、コンピュータ用の筐体などの電気/電子部品が挙げられる。
【実施例】
【0058】
本発明および比較例にしたがって複合構造を作製するのに以下の材料を用いた。
【0059】
材料
以下の材料が、実施例および比較例に用いられる組成物を構成する。
【0060】
ポリアミド:
テレフタル酸およびヘキサメチレンジアミンからなるモノマー(A)ならびにアジピン酸およびヘキサメチレンジアミンからなるモノマー(B)で作製されたコポリアミドであり、ここで、モノマー(A)は、25モルパーセントの量で存在し、モノマー(B)は、75モルパーセントの量で存在し、質量パーセントは、コポリアミドを基準にしている。
【0061】
多価アルコール:
Perstorp Speciality Chemicals AB(Perstorp、スウェーデン)からDi−Penta 93として市販されているジペンタエリトリトール。
【0062】
フィルムの作製
約280℃のバレル設定、約350rpm、295kg/時間の処理量で動作する58mmの2軸押出機中で成分を溶融混合することによって、表1に列挙した組成物を調製した。押出機を出る際、組成物を冷却し、ペレット化した。配合された混合物をひもまたはストランドの形態に押し出し、水浴中で冷却し、細かく切断して顆粒にし、水分を取り込まないように密封されたアルミニウムで裏打ちしたバッグに入れた。材料が0.2%未満の水分レベルに確実に保たれるように、冷却および切断条件を調節した。
【0063】
表1に列挙した組成物を、80インチ幅のフィルムダイおよび鋳造ロールを装備した2軸押出機を用いて鋳造して約100μmのフィルムにした。フィルムを、約280℃の溶融温度および約60℃の鋳造ロール温度を用いて、約90〜95フィート/分のライン速度および約400〜450kg/時間の処理量で処理した。
【0064】
複合構造の作製
表1に列挙した組成物で作製された8層および織られた連続ガラス繊維織物の3層(単位面積当たりの質量が600g/m2で2/2ツイル(綾織り(balanced weave))に織られた、17μmの直径、0.4%のシランベースのサイズ剤および1200g/kmの公称ロービングテックス(nominal roving tex)を有するEガラス繊維)を以下の順序で積層することによって、複合構造C1およびE1を作製した:表1に列挙した組成物で作製された2層の層、織られた連続ガラス繊維織物の1層、表1に列挙した組成物で作製された2層の層、織られた連続ガラス繊維織物の1層、表1に列挙した組成物で作製された2層の層、織られた連続ガラス繊維織物の1層および表1に列挙した組成物で作製された2層の層。表1に列挙した複合構造は、約1.5mmの全厚を有していた。
【0065】
反転式鋼ベルトを備えた定圧複動プレス機械(両方ともHeld GmbHによって供給される)を用いて複合構造を作製した。異なるフィルムを、予め規定された積層順序で巻出機から定圧複動プレス機械に入れた。加熱領域は約2000mmの長さであり、冷却領域は約1000mmの長さであった。圧力を解放せずに加熱および冷却を保った。以下の条件で複合構造を作製した:
積層速度:1m/分、
機械の最高温度:360℃、および
積層圧力:40バール。
【0066】
物理的特性
溶融粘度
溶融粘度の測定の前に、表1に列挙した組成物の顆粒を、0.2パーセント未満の水分レベルを有するように、真空乾燥機中で6時間100℃で乾燥させた。溶融粘度を、1000秒-1のせん断速度および290℃でISO 11443に準拠して測定した。KAYENESS Capillary Rheometer(Dynisco、MA)ならびに0.04インチの直径および15のL/Dを有するキャピラリーダイを粘度測定に用いた。組成物をレオメータバレルに導入した後、溶融粘度を5分間(=ホールドアップ時間(HUT))測定した。5つの試験片から得られる溶融粘度の平均値を表1に示す。
【0067】
曲げ強度
曲げ強度は、試料の断面積に対する試料を曲げるのに必要な加えられる力の比率を指し、材料が曲げられたときに負荷に耐える(または持ちこたえる)能力の指標として一般的に用いられる。
【0068】
表1に列挙した複合構造(C1〜C2およびE1〜E2)を、CNCウォータージェット切断機を用いて、約20mm×約60mmの矩形バーの形状を有する試験片に切断し、曲げ強度を測定した。
【0069】
曲げ試験を、以下の条件でISO 178に準拠して行った:20mm/分の試験速度、23mmの径間長(L)、5mm±0.1mmの前縁半径(R1)2mm±0.2mmの支持体半径(R2)、10Nの予備負荷、および10mm/分の予備負荷速度。
【0070】
ISO 2578に詳述される手順にしたがって、試験片を循環空気オーブン中、210℃で熱老化させた。次に、ISO 178に準拠して曲げ試験を行った。様々な熱老化時間において、試験片をオーブンから取り出し、室温まで冷まし、試験の準備ができるまでアルミニウムで裏打ちされたバッグ中に密封した。5つの試験片から得られる平均値を表1に示す。曲げ強度の保持率は、熱老化されていない試験片の値を100%とみなすのと比較した、255時間または500時間にわたる熱老化の後の曲げ強度の百分率に相当する。保持率の結果を表1に示す。
【0071】
【表1】

()内の値は標準偏差の値を指す。
【0072】
表1は、半芳香族ポリアミドと多価アルコールとを含む組成物が、ポリアミドポリマーのみを含む組成物の溶融粘度と比較してより低い溶融粘度を示したことを示す。このようなより低い溶融粘度は、多価アルコールを組み込むことで、ポリアミド組成物の溶融レオロジーが向上されることを示す。上述したように、溶融粘度をできるだけ低くすることによって、ポリアミド組成物がより速く含浸され、ひいてはより処理しやすくなった。
【0073】
表1に示されるように、本発明に係る複合構造(E1)、すなわち、表面樹脂組成物およびマトリックス樹脂組成物が、ポリアミド樹脂と、3つ以上のヒドロキシル基を有する多価アルコールとを含んでいた複合構造は、比較例の複合構造C1およびC2の曲げ強度が低下したのに対し、熱老化後に曲げ強度を保持していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が表面樹脂組成物で作製された表面を有し、かつ、マトリックス樹脂組成物を含浸させた、不織構造、織物、繊維の詰め物およびそれらの組合せからなる群から選択される繊維材料を含む複合構造であって、前記表面樹脂組成物および前記マトリックス樹脂組成物が、
a)半芳香族ポリアミドから選択される1種以上のポリアミド樹脂と、
b)3つ以上のヒドロキシル基を有する1種以上の多価アルコールと
を含むポリアミド組成物である複合構造。
【請求項2】
前記1種以上の多価アルコールが、0.25質量%または約0.25質量%〜15質量%または約15質量%の量で独立して前記ポリアミド組成物中に存在し、前記質量パーセントが、前記ポリアミド組成物の総質量を基準にしている、請求項1に記載の複合構造。
【請求項3】
前記1種以上の多価アルコールが、0.5質量%または約0.5質量%〜10質量%または約10質量%の量で独立して存在し、前記質量パーセントが、前記ポリアミド組成物の総質量を基準にしている、請求項2に記載の複合構造。
【請求項4】
前記1種以上の多価アルコールが、独立して、ジペンタエリトリトール、トリペンタエリトリトール、ペンタエリトリトールおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の複合構造。
【請求項5】
前記半芳香族ポリアミド樹脂が、独立して、PA6T;PA6I/6T;PA6,T/6,6、PAMXD6;PA10,10;PA6T/DTならびにそれらのコポリマーおよびブレンドからなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の複合構造。
【請求項6】
前記繊維材料が、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、天然繊維またはそれらの混合物を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の複合構造。
【請求項7】
前記繊維材料がガラス繊維を含む、請求項6に記載の複合構造。
【請求項8】
前記表面樹脂組成物および/または前記マトリックス樹脂組成物が、1種以上の衝撃改質剤、1種以上の熱安定剤、1種以上の酸化安定剤、1種以上の強化剤、1種以上の紫外線安定剤、1種以上の難燃剤またはそれらの混合物をさらに含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の複合構造。
【請求項9】
自動車、トラック、民間航空機、航空宇宙、鉄道、家庭電化製品、コンピュータハードウェア、携帯用デバイス、娯楽およびスポーツのための構成要素、機械の構造用部品、建物の構造用部品、太陽光発電もしくは風力エネルギー設備の構造用部品または機械デバイスの構造用部品の形態にある、請求項1〜8のいずれか一項に記載の複合構造。
【請求項10】
表面を有する複合構造を作製するための方法であって、
i)不織構造、織物、繊維の詰め物およびそれらの組合せからなる群から選択される繊維材料にマトリックス樹脂組成物を含浸する工程を含み、
前記複合構造の表面の少なくとも一部が表面樹脂組成物で作製され、
前記表面樹脂組成物および前記マトリックス樹脂組成物が、a)半芳香族ポリアミド樹脂から選択される1種以上のポリアミド樹脂と、b)3つ以上のヒドロキシル基を有する1種以上の多価アルコールとを含むポリアミド組成物である方法。
【請求項11】
前記1種以上の多価アルコールが、0.25質量%または約0.25質量%〜15質量%または約15質量%の量で独立して前記ポリアミド組成物中に存在し、前記質量パーセントが、前記ポリアミド組成物の総質量を基準にしている、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記1種以上の多価アルコールが、独立して、ジペンタエリトリトール、トリペンタエリトリトール、ペンタエリトリトールおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記繊維材料が、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、天然繊維またはそれらの混合物を含む、請求項10〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記含浸が、真空成形、インモールドコーティング、クロスダイ式押出、引き抜き成形、電線被覆式プロセス、積層、スタンピング加工、ダイヤフラム成形またはプレス成形によって行われる、請求項10〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記複合構造を成形する工程をさらに含み、前記成形する工程が、前記含浸する工程の後に行われる、請求項10〜14のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2013−501101(P2013−501101A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523086(P2012−523086)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【国際出願番号】PCT/US2010/043901
【国際公開番号】WO2011/014770
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】