説明

耐熱性放熱シート

【課題】250〜300℃の高温で使用しても劣化が殆どなく、かつ十分な柔軟性を維持できる耐熱性放熱シートを提供する。
【解決手段】耐熱性放熱シートは、フッ素化ポリエーテル骨格を主鎖とするゴム状弾性体からなるバインダー、及び熱伝導性充填剤を含む。耐熱性放熱シートは、液状フッ素化ポリエーテル及び熱伝導性充填剤を混合した後に反応硬化させることにより製造され、かつ、該シートの10%圧縮荷重は100N/cm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の発熱部品と放熱機器との間に介在させる耐熱性放熱シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電気機器や産業機器の小型化に伴う高性能化、高機能化により、機器の消費電力が増加するとともに機器内の発熱部品の発熱量も増大している。このような熱を放散させるために、例えばヒートシンク等の放熱機器を発熱部品に取り付ける方法が知られている。さらに、発熱部品と放熱機器との間の隙間を埋めるために、柔軟かつ高い熱伝導性を有するシートを介在させ、効率良く熱を伝える方法が用いられている。
【0003】
ところが、電子部品の高密度化に伴い発熱部品の温度は更に上昇する傾向にあり、例えば、プロジェクターにおけるランプとその周辺部は250℃以上の高温に達する。しかし、従来の高分子ゴムやシリコーンゴムからなるシートは、そのような高温での使用に耐え得る十分な耐熱性を有していない。そのため、高い耐熱性を有するシート材料の開発が求められている。例えば特許文献1には、金属アルコキシド及び有機ケイ素化合物から有機無機ハイブリット材料を形成する技術が開示されている。この有機無機ハイブリット材料は弾性に優れ、200℃を超える耐熱性を有している。その一方で、300℃程度の高温で長時間使用すると硬く脆くなるという問題があった。
【0004】
特許文献2には、高い耐熱性及び熱伝導性を有する耐熱性放熱シート材料として、フッ素化芳香族ポリマー及び熱伝導性の無機充填剤を含有する熱伝導性組成物が開示されている。しかし、骨格に芳香族を有するポリマーは一般に剛直で硬い性質を有するため、被接着体との密着性が低く、優れた放熱効果を発揮することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−81669
【特許文献2】特開2005−272814
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、250〜300℃の高温で使用しても劣化が殆どなく、かつ十分な柔軟性を維持できる耐熱性放熱シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、フッ素化ポリエーテル骨格を主鎖とするゴム状弾性体からなるバインダー、及び熱伝導性充填剤を含む耐熱性放熱シートであって、液状フッ素化ポリエーテル及び熱伝導性充填剤を混合した後に反応硬化させることにより製造され、かつ、10%圧縮荷重値が100N/cm以下であることを要旨とする。
【0008】
この構成によれば、バインダーとして耐熱性の高いフッ素化ポリエーテルを主鎖とするゴム状弾性体を用いるため、250〜300℃の高温で使用しても劣化が殆どなく、かつ柔軟な耐熱性放熱シートを得ることができる。また、液状のバインダーを熱伝導性充填剤と混合することで、熱伝導性充填剤を多量に配合することができるとともに、反応硬化させた後も10%圧縮荷重が100N/cm以下という、柔軟性の高いシートを形成することができる。そのため、発熱部品及び放熱機器等の被接着体に対し、前記シートを隙間なく密着させることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、空気中300℃で24時間熱処理したときの10%圧縮荷重値の変化率の絶対値が3.6%以下であることを要旨とする。
【0010】
この構成によれば、250〜300℃の高温で使用しても、被接着体に対する密着性が殆ど低下しない耐熱性放熱シートを得ることができる。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、空気中300℃で24時間熱処理したときの重量減少率が0.1%以下であることを要旨とする。
【0011】
この構成によれば、250〜300℃の高温での使用による劣化が殆どない耐熱性放熱シートを得ることができる。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか1項に記載の発明において、空気中300℃で24時間熱処理したときの引張破断強度の低下率が5.8%以下であり、かつ引張破断伸度の低下率が3.7%以下であることを要旨とする。
【0012】
この構成によれば、250〜300℃の高温で使用しても、機械的物性が殆ど低下しない耐熱性放熱シートを得ることができる。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れか1項に記載の発明において、10%圧縮荷重が38.7〜98.0N/cmであることを要旨とする。
【0013】
この構成によれば、より高い柔軟性を維持する耐熱性放熱シートを得ることができる。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5の何れか1項に記載の発明において、液状フッ素化ポリエーテルの粘度が0.01〜100Pa・sであることを要旨とする。
【0014】
この構成によれば、バインダーの粘度が低いため多量の熱伝導性充填剤を混合しやすくなり、形成される耐熱性放熱シートの熱伝導性を更に高めることができる。
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6の何れか1項に記載の発明において、熱伝導性充填剤が、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物から選ばれる1種またはこれらの混合物であることを要旨とする。
【0015】
この構成によれば、250〜300℃の高温で使用しても熱伝導性充填剤の変性が起こらないため、熱伝導性充填剤に起因する耐熱性放熱シートの特性の低下を防ぐことができる。
【0016】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7の何れか1項に記載の発明において、熱伝導性充填剤が、液状フッ素化ポリエーテル100重量部に対し、350重量部以上840重量部以下の割合で混合されていることを要旨とする。
【0017】
この構成によれば、より良好な熱伝導性を有する耐熱性放熱シートを得ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、250〜300℃の高温で使用しても劣化が殆どなく、かつ十分な柔軟性を維持できる耐熱性放熱シートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本願発明に用いるバインダーは、主鎖にフッ素化ポリエーテル構造を有している。フッ素化構造は主鎖の原子間の結合エネルギーを高めるため、高温環境下でも酸化されにくい。さらに、低粘度のポリエーテル骨格がバインダーに十分な柔軟性を付与するため、高温での使用において柔軟性低下の要因となり得る可塑剤を添加する必要がない。従って、フッ素化ポリエーテル構造を主鎖とするバインダーによれば、250〜300℃の高温での使用によって引き起こされるバインダーの酸化による劣化を軽減し、かつ柔軟性を維持できる耐熱性放熱シートを形成することができる。さらに後述するように、フッ素化ポリエーテルを含有する本発明の耐熱性放熱シートは、300℃、24時間の熱処理後における引張破断強度の低下率を5.8%以下に、かつ引張破断伸度の低下率を3.7%以下に抑えることができる。即ち、300℃の高温で使用しても機械的物性が殆ど低下しないことが判明した。
【0020】
本発明による耐熱性放熱シートの10%圧縮荷重は100N/cm以下である。10%圧縮荷重とは、厚みを10%圧縮するのに要する荷重の大きさを意味する。一般に、硬質樹脂は殆ど圧縮することができず、1%程度の圧縮でも荷重が100N/cm以上と大きくなってしまう。即ち、シートの圧縮荷重が小さい程その柔軟性は高く、10%圧縮荷重が100N/cm以下であれば、放熱シートの柔軟性として十分である。
【0021】
前記耐熱性放熱シートは、常温で液状のフッ素化ポリエーテル及び熱伝導性充填剤を混合した後、反応硬化させることにより製造される。常温で固体のバインダーと比較すると、常温で液状のバインダーは粘度が低く、熱伝導性充填剤を多量に配合できる。そのため、高い熱伝導性及び柔軟性を両立する耐熱性放熱シートを形成することができる。
【0022】
前記液状フッ素化ポリエーテルの粘度は、0.01〜100Pa・sであることが好ましい。この範囲の粘度であれば、機械的物性及び熱伝導性に優れる耐熱性放熱シートを形成することができる。粘度が0.01Pa・sより低い液状フッ素化ポリエーテルでは分子量が小さすぎるため、形成されるシートの機械的物性が低下する。一方、粘度が100Pa・sより高いと、熱伝導性充填剤を多量に配合することが困難となり、十分な熱伝導性を有するシートを形成することができない。
【0023】
液状フッ素化ポリエーテルは、その主鎖の末端に反応性官能基を有し、硬化剤あるいは重合開始剤により反応硬化するものであることが好ましい。例えば、末端の官能基がアルケニル基であれば、ヒドロシリル基および触媒によるヒドロシリル化反応で硬化させることができる。また、末端官能基がイソシアネート基であれば、アミノ基あるいはヒドロキシル基などと反応硬化させることができる。液状フッ素化ポリエーテルの具体例として、例えば信越化学工業株式会社製の商品名「SIFEL(登録商標)」シリーズが挙げられる。
【0024】
熱伝導性充填剤は、一般的に使用されているものを用いることができ、特に限定されない。
熱伝導性充填剤として、例えば高い熱伝導性を有するとともに電気絶縁性である金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物などの金属化合物粉末が挙げられる。具体的には、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
その他に、例えば高い熱伝導性かつ導電性を有する炭素繊維やダイヤモンド、黒鉛等の粉末を用いてもよい。
また、これらの熱伝導性充填剤は単独で用いてもよいし、複数の種類を混合して用いてもよい。さらに、絶縁性の付与や劣化の抑制のためのコーティングを充填剤に施してもよい。コーティングは、耐熱性の観点からシリカコートが好ましい。
【0026】
熱伝導性充填剤の配合量は、バインダー100重量部に対して350重量部以上840重量部以下が好ましい。熱伝導性充填剤の配合量が350重量部より少ないと充分な熱伝導性が得られず、840重量部より多いと、過剰な熱伝導性充填剤によりシートが硬く脆くなってしまうためである。
【0027】
熱伝導性充填剤の形状も特に限定されるものではなく、例えば、片鱗状、針状、粒状等が挙げられるが、バインダー中に均一かつ高濃度で配合する観点から粒状が好ましい。
粒状の熱伝導性充填剤の粒径は0.1μm以上100μm以下であることが好ましく、3μm以上50μm以下であることがより好ましい。粒径が0.1μmよりも小さいと、バインダー及び熱伝導性充填剤の混合物の粘度が上昇してシートの成形が困難になり、粒径が100μmより大きいとシートが硬くなるためである。さらに、熱伝導性充填剤をより高密度で混合するために、2種類の異なる平均粒径を有する熱伝導性充填剤を混合することが好ましい。
【実施例】
【0028】
(実施例1)
末端にシリコーン架橋反応基を有し、粘度が3Pa・sの液状フッ素化ポリエーテル(信越化学工業株式会社製SIFEL(登録商標)8370)100g、熱伝導性充填剤として第1の酸化アルミニウム粉末(電気化学工業株式会社製DAM45、平均粒径40μm)400g、第2の酸化アルミニウム粉末(電気化学工業株式会社製DAM03、平均粒径3μm)160gを均一に混合した。次に、得られた混合物をコンプレッション成形により厚み500μmのシート状に成形し、120℃で1時間加熱して硬化させ、耐熱性放熱シート(試料1)を作製した。
【0029】
(実施例2)
熱伝導性充填剤の配合量を、第1の酸化アルミニウム粉末(電気化学工業株式会社製DAM45、平均粒径40μm)600g、第2の酸化アルミニウム粉末(電気化学工業株式会社製DAM03、平均粒径3μm)240gに変更したこと以外は実施例1と同様の方法で、耐熱性放熱シート(試料2)を作製した。
【0030】
(実施例3)
末端にシリコーン架橋反応基を有し、粘度が50Pa・sの液状フッ素化ポリエーテル(信越化学工業株式会社製SIFEL(登録商標)3590)を使用し、熱伝導性充填剤として第1の酸化アルミニウム粉末(電気化学工業株式会社製DAM45、平均粒径40μm)300gと第2の酸化アルミニウム粉末(電気化学工業株式会社製DAM03、平均粒径3μm)120gとを混合したこと以外は、実施例1と同様の方法で耐熱性放熱シート(試料3)を作製した。
【0031】
(実施例4)
熱伝導性充填剤の配合量を、第1の酸化アルミニウム粉末(電気化学工業株式会社製DAM45、平均粒径40μm)250g、第2の酸化アルミニウム粉末(電気化学工業株式会社製DAM03、平均粒径3μm)100gに変更したこと以外は実施例1と同様の方法で、耐熱性放熱シート(試料4)を作製した。
【0032】
(比較例1)
液状フッ素化ポリエーテルの代わりに付加型液状シリコーン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製XE14−B5778、粘度14Pa・s)を用いた以外は実施例2と同様の方法で放熱シート(試料5)作製した。
【0033】
(比較例2)
メチルトリエトキシシラン5重量部及び0.4%リン酸水溶液4重量部を混合し、10℃で3時間攪拌した。次に、この混合液にエタノール4重量部を加え、さらに水酸化ナトリウム水溶液で中和した。その後、50重量部のトルエンを加え、混合液中からエタノールと水を留去した。トルエン及び反応物の混合溶液に、ピリジン10重量部、トリメチルクロロシラン1.5重量部を添加して、室温で30分攪拌した。次に、末端水酸基で部分的にフェニル基が導入されたポリジメチルオルガノシロキンサン(重量平均分子量=50,000)を100重量部添加して、室温で4時間反応させた。得られた混合物をイオン交換水で洗浄し、ピリジン塩酸塩を除いた。この状態における樹脂組成物の粘度は15Pa・sであった。さらに、熱伝導性充填剤として第1の酸化アルミニウム粉末(電気化学工業株式会社製DAM45、平均粒径40μm)400g、及び第2の酸化アルミニウム粉末(電気化学工業株式会社製DAM03、平均粒径3μm)を加え、振動攪拌器で均一に分散させてから、80℃で45分、120℃で45分、160℃で45分、200℃で45分、250℃で30分加熱して反応硬化させ、放熱シート(試料6)を作製した。
【0034】
(比較例3)
熱伝導性充填剤の配合量を第1の酸化アルミニウム粉末(電気化学工業株式会社製DAM45、平均粒径40μm)650g及び第2の酸化アルミニウム粉末(電気化学工業株式会社製DAM03、平均粒径3μm)400gに変更したこと以外は実施例1と同様の方法で放熱シート(試料7)を作製した。
【0035】
(比較例4)
粘度が600Pa・sの液状フッ素化ポリエーテル(信越化学工業株式会社製SIFEL3790)を用いて実施例1と同様に耐熱性放熱シートの作製を試みたが、粘度が過剰に高く、熱伝導性充填剤を均一に混合することができなかった。
(評価方法)
上記実施例及び比較例で得られた試料1〜7について以下の項目の測定を行った。次に各試料を空気中300℃で24時間熱処理した後、再び同項目の測定を行い、熱処理前の測定値と比較することにより試料1〜7の耐熱性を評価した。
<引張破断強度及び引張破断伸度>
日本工業規格であるJIS K 6251:2004に従い、試料1〜6について熱処理前後の引張破断強度及び引張破断伸度を測定した。具体的には、試料1〜6をダンベル状(縦6mm×横35mm、厚み1mm)に成形し、ダンベル状試料の棒状部に、10mmの間隔を空けて2本の標線を付した。次に、試料の両端部に一定条件下で引張力を加え、試料が破断した時の引張力、及び標線間の伸びを測定し、それぞれ下記式(1)及び(2)に適用して引張破断強度及び引張破断伸度を算出した。
【0036】
引張破断強度TS(MPa)=破断時引張力F(N)/試験片の初期断面積S(mm) …(1)
引張破断伸度E(%)={破断時の標線間距離L(mm)−標線間距離L(mm)}/L×100 …(2)
また、熱処理前後の引張破断強度及び引張破断伸度から、これらの変化率を計算した。
<重量減少率>
熱処理前後の試料1〜7の重量を測定し、その変化率を計算した。
<熱抵抗値>
発熱基板(発熱量:25W)上に試料1〜6(縦10mm×横10mm、厚み500μm)を配置した。各試料の上にヒートシンク(株式会社アルファ製のFH60−30)を設置し、一定の荷重(98kPa(1kgf/cm))で圧接した。ヒートシンクの上部にファン(風量:0.01kg/sec、風圧:49Pa)を取り付け、ヒートシンクおよび発熱基板に温度センサを接続した。この状態で発熱基板に通電した。通電から5分が経過した後、発熱基板の温度(θj1)およびヒートシンクの温度(θj0)を測定し、それらの測定値を下記式(3)に適用して熱抵抗を算出した。さらに、熱処理前後の熱抵抗から変化率を計算した。
【0037】
熱抵抗(℃/W)=(θj1−θj0)/発熱量Q …(3)
<10%圧縮荷重>
試料1〜6を縦10mm×横10mmの大きさに切り出し、荷重をかけ、厚みを10%圧縮したときの荷重値を測定した。熱処理前後の測定値から変化率を計算した。
(結果)
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

表1を参照すると、実施例1〜4の試料では熱処理後の重量減少率は0.1%以下、10%圧縮荷重の変化率の絶対値は3.6%以内に維持された。また、引張破断強度及び引張破断伸度の低下率も、それぞれ5.8%以内及び3.7%以内であった。なお、実施例1及び2の試料の引張破断強度及び引張破断伸度が熱処理後に上昇した理由は、熱処理によりバインダー中の未反応部位が架橋し、強度が向上したためであると考えられる。実施例1〜4の試料の熱抵抗値の増加率は7.0%以下であった。
【0040】
それらに対し、表2を参照すると、フッ素化ポリエーテル以外の樹脂をバインダーに用いた比較例1及び2の試料では、熱処理により重量は0.9%以上減少し、10%圧縮荷重は78%以上増加した。また、引張破断強度の低下率は60%以上、引張破断伸度の低下率は28%であり、熱抵抗値は55%以上増加した。フッ素化ポリエーテルをバインダーに用いた比較例3の試料では、過剰量の熱伝導性充填剤を混合したため、形成されたシートは非常に硬く、100Nの力で厚みを10%圧縮させることができなかった。
【0041】
以上より、実施例1〜4の試料は、比較例1及び2の試料に比べ、熱処理による引張破断強度及び引張破断伸度の低下率が著しく小さく、その他の測定項目においても変化率が極めて小さいことが判明した。その理由として、実施例1〜4の試料では、バインダーであるフッ素化ポリエーテルの耐熱性が高いことから高温で処理しても殆ど劣化せず、かつ柔軟性が維持されたため、非接着体への密着性低下による熱抵抗値の上昇が抑制されたことが考えられる。一方、比較例1及び2の試料ではバインダーの耐熱性が不十分であり、熱処理によりバインダーが劣化するとともに柔軟性が大きく低下したことにより、非接着体への密着性が低下し、熱抵抗値が上昇したものと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素化ポリエーテル骨格を主鎖とするゴム状弾性体からなるバインダー、及び熱伝導性充填剤を含む耐熱性放熱シートであって、
液状フッ素化ポリエーテル及び熱伝導性充填剤を混合した後に反応硬化させることにより製造され、かつ、
10%圧縮荷重が100N/cm以下であることを特徴とする耐熱性放熱シート。
【請求項2】
空気中300℃で24時間熱処理したときの10%圧縮荷重値の変化率の絶対値が3.6%以下であることを特徴とする請求項1に記載の耐熱性放熱シート。
【請求項3】
空気中300℃で24時間熱処理したときの重量減少率が0.1%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の耐熱性放熱シート。
【請求項4】
空気中300℃で24時間熱処理したときの引張破断強度の低下率が5.8%以下であり、かつ引張破断伸度の低下率が3.7%以下であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の耐熱性放熱シート。
【請求項5】
10%圧縮荷重が38.7〜98.0N/cmであることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の耐熱性放熱シート。
【請求項6】
前記液状フッ素化ポリエーテルの粘度が0.01〜100Pa・sであることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の耐熱性放熱シート。
【請求項7】
前記熱伝導性充填剤が、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物から選ばれる1種またはこれらの混合物であることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の耐熱性放熱シート。
【請求項8】
熱伝導性充填剤が、液状フッ素化ポリエーテル100重量部に対し、350重量部以上840重量部以下の割合で混合されていることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の耐熱性放熱シート。

【公開番号】特開2010−232535(P2010−232535A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−80232(P2009−80232)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000237020)ポリマテック株式会社 (234)
【Fターム(参考)】