説明

耐熱性樹脂組成物及び塗料

【課題】 水溶性でかつ高強度の塗膜を形成できる耐熱性樹脂組成物を提供することにある。
【解決手段】 (A)極性溶媒中で、3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’ジイソシアネートと芳香族三塩基酸無水物とを反応させて得られるポリアミドイミド樹脂と(B)塩基性化合物と(C)水とを配合してなる耐熱性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐熱性樹脂組成物および塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保全面、安全衛生面、経済性及び塗装作業性等の面から有機溶剤に代わり媒体に水を使用する水性樹脂溶液が注目され、樹脂末端に残存するカルボキシル基と塩基性化合物を作用させるポリアミドイミド樹脂の水溶化方法が報告されており(例えば、特許文献1)、様々な用途に適用されている。
【0003】
この水溶性ポリアミドイミド樹脂が様々な用途へと展開していくにつれ、用途に応じて様々な特性が要求され始めている。例えば、高強度の塗膜を形成できる、高温焼成時に高密着性を有する等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3491624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の水溶性ポリアミドイミド樹脂は、ポリアミドイミド樹脂骨格中のほとんどは疎水性であり、水溶性にするために構造、モノマ配合量及び数平均分子量が限定されてきた。そのため、差別化できる特性を有する水溶性ポリアミドイミド樹脂は困難とされてきた。本発明の目的は、水溶性でかつ高強度の塗膜を形成できる耐熱性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の水溶性でかつ高強度の塗膜を形成できる耐熱性樹脂組成物に関して検討した結果、ポリアミドイミド樹脂に対し特定のモノマを含有させ適正な分子量を持たせる事及び水溶化する際の塩基性化合物及び水を適正量配合する事により、従来の水系ポリアミドイミド樹脂から得られた塗膜と比較して水溶性でかつ高強度の塗膜を形成する事が可能であることを見出して本発明に至った。
すなわち本発明は、以下に関する。
1. (A)極性溶媒中で、3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’ジイソシアネートと芳香族三塩基酸無水物とを反応させて得られるポリアミドイミド樹脂と(B)塩基性化合物と(C)水とを配合してなる耐熱性樹脂組成物。
2. (A)ポリアミドイミド樹脂の数平均分子量が10,000〜35,000で、かつカルボキシル基及び酸塩基酸無水物基を開環させてカルボキシル基を合わせた酸価が20〜60である項1に記載の耐熱性樹脂組成物。
3. (B)成分の配合量が、(A)ポリアミドイミド樹脂中に含まれるカルボキシル基及び開環させた酸無水物基を合わせた酸価に対して、3〜10当量である項1又は2のいずれかに記載の耐熱性樹脂組成物。
4. (C)成分の水の含有量が(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計量に対して、30〜80重量%である項1〜3のいずれかに記載の耐熱性樹脂組成物。
5. 項1〜4のいずれかに記載の耐熱性樹脂組成物を塗膜成分としてなる塗料。
6. 項1〜5のいずれかに記載の耐熱性樹脂組成物を塗布、硬化させた基材。
【発明の効果】
【0007】
本発明の耐熱性樹脂組成物を用いることで、従来の耐熱性樹脂組成物から得られた塗膜と比較して高強度の塗膜を得ることが可能となる。これらは、塗膜硬度を要求される様々な用途向けに、多大な有益性を有している。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(A)極性溶媒中で、3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’ジイソシアネートと芳香族三塩基酸無水物とを反応させて得られるポリアミドイミド樹脂と(B)塩基性化合物と(C)水とを含む事を特徴とする。上記のような組成にする事で、水溶性でかつ高強度の塗膜を形成する事が可能となる。
【0009】
本発明で用いる(A)ポリアミドイミド樹脂の重合に使用される極性溶媒としては、N‐メチル‐2‐ピロリドン、γ‐ブチロラクトン、ジメチルアセトアミド又はジメチルホルムアミドなどを用いることが出来るが、アミドイミド化反応を高温で短時間に行うためには、N‐メチル‐2‐ピロリドンなどの高沸点溶媒を用いることが好ましい。また、溶媒の使用量には得に制限はないが、イソシアネート成分又はアミン成分と酸成分の総量100重量部に対して50〜500重量部とすることが樹脂の溶解性の観点から好ましい。ポリアミドイミド樹脂の合成条件は多様であり、一概に特定できないが、通常、80〜180℃の温度で行われ、空気中の水分の影響を低減するため、窒素などの雰囲気下で行うことが好ましい。
【0010】
(A)ポリアミドイミド樹脂の重合に使用されるイソシアネート成分として、3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’ジイソシアネートに加えて他のジイソシアネート化合物、例えば4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、3,3′−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3′−ジメトキシビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリレンジイソシアレート等を併用しても良い。この場合、本発明のポリアミドイミド樹脂の特性を損なわないように、全イソシアネート成分の90当量%以下とする事が好ましい。
【0011】
芳香族三塩基酸無水物としては、例えばトリメリット酸無水物等が挙げられる。本発明においては、ポリアミドイミド樹脂を合成する際に、ジカルボン酸、テトラカルボン酸二無水物等をポリアミドイミド樹脂の特性を損なわない範囲で同時に反応させる事が出来る。
ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸等が挙げられ、テトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0012】
前記ジイソシアネート化合物と三塩基酸無水物と必要に応じて使用するジカルボン酸及びテトラカルボン酸二無水物の使用量は、生成されるポリアミドイミド樹脂の分子量、架橋度の観点から酸成分の総量1.0モルに対してジイソシアネート化合物を0.8〜1.1モルとすることが好ましく、0.95〜1.08モルとすることがより好ましく、特に、1.0〜1.08モル使用されることが好ましい。
【0013】
また、酸成分中、ジカルボン酸及びテトラカルボン酸二無水物は、ポリアミドイミド樹脂の特性を保つ観点から、これらの総量が0〜50モル%の範囲で使用されるのが好ましい。
【0014】
本発明で用いる(A)ポリアミドイミド樹脂は、数平均分子量が10,000から35,000のものが好ましい。数平均分子量が10,000未満では塗膜の強度が低下する傾向があり、35,000を超えると水への溶解性が低下する傾向がある。これらの観点から、ポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は20,000から30,000とすることが好ましく、23,000から27,000とすることがより好ましい。
【0015】
なお、(A)ポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は、樹脂合成時にサンプルリングしてゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により、標準ポリスチレンの検量線を用いて測定し、目的の数平均分子量になるまで合成を継続することにより上記範囲に管理される。
【0016】
本発明で用いる(A)ポリアミドイミド樹脂は、カルボキシル基及び酸無水物基を開環させたカルボキシル基を合わせた酸価が20〜60mgKOH/gであることが好ましい。20mgKOH/g以上であると塩基性化合物と反応するカルボキシル基が十分となり、水溶化が容易になる傾向にある。また、60mgKOH/g以下であると最終的に得られる耐熱性樹脂組成物が経日にてゲル化しにくくなる。これらの観点から、カルボキシル基及び酸無水物基を開環させたカルボキシル基を合わせた酸価が25〜40mgKOH/gとすることがより好ましい。
【0017】
なお、(A)ポリアミドイミド樹脂のカルボキシル基及び酸無水物基を開環させたカルボキシル基を合わせた酸価は、以下の方法で得ることができる。まず、(A)ポリアミドイミド樹脂を約0.5gとり、これに1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンを約0.15g加え、さらにN−メチル−2−ピロリドンを約60g及びイオン交換水を約1ml加え、(A)ポリアミドイミド樹脂が完全に溶解するまで攪拌する。これを0.05モル/lエタノール性水酸化カリウム溶液を使用して電位差滴定装置で滴定し、ポリアミドイミド樹脂のカルボキシル基及び酸無水物基を開環させたカルボキシル基を合わせた酸価を得る。
【0018】
本発明において(B)塩基性化合物としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、トリエチレンジアミン、N−メチルモルフォリン、N,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N′,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N′,N′−トリメチルアミノエチルピペラジン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、エチルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン等のアルキルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、シクロヘキサノールアミン、N−メチルシクロヘキサノールアミン、N−ベンジルエタノールアミン等のアルカノールアミン類が適している。上記の塩基性化合物以外に、例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の苛性アルカリ又はアンモニア水等を併用してもよい。
【0019】
また、(B)塩基性化合物は、(A)ポリアミドイミド樹脂中に含まれるカルボキシル基及び開環させた酸無水物基を合わせた酸価に対して、3〜10当量用いると好ましい。3当量以上では樹脂の水溶化が容易となり、10当量以下であると塗膜の強度が向上する傾向にある。これらの観点から、カルボキシル基及び酸無水物基を開環させたカルボキシル基を合わせた酸価に対して、4〜8当量とすることが好ましい。
【0020】
(B)塩基性化合物は、(A)ポリアミドイミド樹脂の末端にあるカルボキシル基と塩を形成して親水性基となる。塩形成する手法としては(A)成分、(B)成分及び後述の(C)水を、10℃〜150℃にて混ぜ合わせても良いし、(A)成分、(B)成分を混ぜ合わせた後に上記温度にて後述の(C)水を加えても良い。塩を形成させる温度は30℃〜100℃がより好ましい。
【0021】
本発明の耐熱性樹脂組成物としては(C)を含有するが、(C)としてはイオン交換水が好ましく用いられる。(C)成分の配合量は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計量に対して、30〜80重量%が好ましい。この配合量が30重量%以上では含有する水が十分である事から水溶性が向上し、80重量%以下ではゲル化もしくは濁り等を生じにくくなる傾向がある。これらの観点から、40〜60重量%とすることがより好ましい。
【0022】
この様にして得られた耐熱性樹脂組成物は使用する際に必要に応じて適当な濃度に希釈される。希釈溶剤としてはN‐メチル‐2‐ピロリドン、γ‐ブチロラクトン、ジメチルスルフォキシド、ジメチルアセトアミド又はジメチルホルムアミド等の極性溶媒の他に、助溶媒として、アニソール、ジエチルエーテル、エチレングリコール等のエーテル化合物類やアセトフェノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン化合物類、エタノール、2−プロパノール等のアルコール類を用いても良い。
【0023】
本発明による耐熱性樹脂組成物又はこの耐熱性樹脂組成物を塗膜成分としてなる塗料は、被塗物に塗布し硬化させて被塗物表面に塗膜を形成する。特に本発明による耐熱性樹脂組成物は、従来の耐熱性樹脂組成物と比較して高強度の塗膜を形成することが可能であることから、家電、厨房器具及びOA部材のように塗膜に耐久性が要求される様々な用途向けに、多大な有益性を有している。また水を含有しているため、水系、溶剤系いずれの材料とも容易に混合する事ができ、塗膜形成の際に系外に揮発する有機溶剤量を低減できる事からも本発明による耐熱性樹脂組成物の有益性は高い。
【0024】
次に本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、発明の主旨に基づいたこれら以外の多くの実施態様を含むことは言うまでもない。
【実施例1】
【0025】
無水トリメリット酸518.7g、3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’ジイソシアネート713.6g、N−メチル−2−ピロリドン1848.5gを温度計、攪拌機、冷却管を備えたフラスコに入れ、乾燥させた窒素気流中で攪拌しながら2時間かけて徐々に昇温して140℃まで上げた。反応により生ずる炭酸ガスの急激な発泡に注意しながら140℃を保持し、このまま6時間加熱を続けた後反応を停止させ、ポリアミドイミド樹脂溶液を得た。
【0026】
このポリアミドイミド樹脂溶液の不揮発分(200℃−2h)は40重量%で、粘度(30℃)は85.4Pa・sであった。また、ポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は20,000で、カルボキシル基及び酸無水物基を開環させたカルボキシル基を合わせた酸価は45であった。なお、数平均分子量は次の条件にて測定した。
機種:日立 L6000
検出器:日立 L4000型UV
波長:270nm
データ処理機:ATT 8
カラム:Gelpack GL−S300MDT−5×2
カラムサイズ:8mmφ×300mm
溶媒:DMF/THF=1/1(リットル)+リン酸0.06M+臭化リチウム0.06M 試料濃度:5mg/1ml
注入量:5μl
圧力:49kgf/cm(4.8×10Pa)
流量:1.0ml/min
【0027】
このポリアミドイミド樹脂溶液2,500gを温度計、攪拌機、冷却管を備えたフラスコに入れ、乾燥させた窒素気流中で攪拌しながら徐々に昇温して70℃まで上げた。70℃に達したところでトリエチルアミンを324.7g(4当量)添加し、70℃に保ちながら十分に攪拌した後、攪拌しながら徐々にイオン交換水を加えた。最終的にイオン交換水が1502.2g(溶剤比50重量%)となるまで加えて、透明で均一な耐熱性樹脂組成物を得た。
【実施例2】
【0028】
無水トリメリット酸960.6g、3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’ジイソシアネート800.8g、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート505.5g、N−メチル−2−ピロリドン2770.7gを温度計、攪拌機、冷却管を備えたフラスコに入れ、乾燥させた窒素気流中で攪拌しながら1時間かけて徐々に昇温して90℃まで上げた。反応により生ずる炭酸ガスの急激な発泡に注意しながら90℃を保ち、加熱開始から8時間加熱を続けた後反応を停止させ、ポリアミドイミド樹脂溶液を得た。
このポリアミドイミド樹脂溶液の不揮発分(200℃−2h)は45重量%で、粘度(30℃)は130.0Pa・sであった。また、ポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は27,000で、カルボキシル基及び酸無水物基を開環させたカルボキシル基を合わせた酸価は38であった。
このポリアミドイミド樹脂溶液3,200gを温度計、攪拌機、冷却管を備えたフラスコに入れ、乾燥させた窒素気流中で攪拌しながら徐々に昇温して90℃まで上げた。90℃に達したところでN,N−ジメチルエタノールアミンを521.6g(6当量)添加し、90℃に保ちながら十分に攪拌した後、攪拌しながら徐々にイオン交換水を加えた。最終的にイオン交換水が1174.5g(溶剤比50重量%)となるまで加えて、透明で均一な耐熱性樹脂組成物を得た。
【実施例3】
【0029】
無水トリメリット酸379.6g、3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’ジイソシアネート156.8g、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート352.6g、N−メチル−2−ピロリドン1217.8gを温度計、攪拌機、冷却管を備えたフラスコに入れ、乾燥させた窒素気流中で攪拌しながら1時間かけて徐々に昇温して120℃まで上げた。反応により生ずる炭酸ガスの急激な発泡に注意しながら徐々に昇温して130℃まで上げ、加熱開始から5時間加熱を続けた後反応を停止させ、ポリアミドイミド樹脂溶液を得た。
このポリアミドイミド樹脂溶液の不揮発分(200℃−2h)は42重量%で、粘度(30℃)は120.6Pa・sであった。また、ポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は35,000で、カルボキシル基及び酸無水物基を合わせた酸価は30であった。
このポリアミドイミド樹脂溶液800gを温度計、攪拌機、冷却管を備えたフラスコに入れ、乾燥させた窒素気流中で攪拌しながら徐々に昇温して50℃まで上げた。50℃に達したところでN,N−ジエチルエタノールアミンを168.5g(8当量)添加し、50℃に保ちながら十分に攪拌した後、攪拌しながら徐々にイオン交換水を加えた。最終的にイオン交換水が695.3g(溶剤比60重量%)となるまで加えて、透明で均一な耐熱性樹脂組成物を得た。
【0030】
比較例1
無水トリメリット酸1106.2g、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート1455.8g、N−メチル−2−ピロリドン2562.0gを温度計、攪拌機、冷却管を備えたフラスコに入れ、乾燥させた窒素気流中で攪拌しながら2時間かけて徐々に昇温して130℃まで上げた。反応により生ずる炭酸ガスの急激な発泡に注意しながら130℃を保持し、このまま6時間加熱を続けた後反応を停止させ、ポリアミドイミド樹脂溶液を得た。
このポリアミドイミド樹脂溶液の不揮発分(200℃−2h)は50重量%で、粘度(30℃)は85.0Pa・sであった。また、ポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は17000で、カルボキシル基及び酸無水物基を開環させたカルボキシル基を合わせた酸価は40であった。
このポリアミドイミド樹脂溶液2,700gを温度計、攪拌機、冷却管を備えたフラスコに入れ、乾燥させた窒素気流中で攪拌しながら徐々に昇温して50℃まで上げた。50℃に達したところでトリエチルアミンを447.1g(4当量)添加し、50℃に保ちながら十分に攪拌した後、攪拌しながら徐々にイオン交換水を加えた。最終的にイオン交換水が1348.8g(溶剤比50重量%)となるまで加えて、透明で均一な耐熱性樹脂組成物を得た。
【0031】
試験例
実施例1、2及び3ならびに比較例1で得られた耐熱性樹脂組成物をガラス基板の上に塗布して、機械的特性を測定した。
【0032】
鉛筆硬度
実施例1、2及び3ならびに比較例1で得られた耐熱性樹脂組成物を塗布した基板を80℃で10分間予備乾燥させた後、270℃で30分間加熱硬化し、塗膜厚が5ヶ所の平均値が20μmの塗膜を得た。この塗膜を鉛筆で削り、傷発生時の鉛筆の硬さを記録した。
[機械的特性]
実施例1、2及び3ならびに比較例1で得られた耐熱性樹脂組成物を塗布した基板を80℃で10分間予備乾燥させた後、270℃で30分間加熱硬化し、塗膜厚が5ヶ所の平均値が20μm、幅10mm、長さが60mmの塗膜を得た。得られた塗膜を、引張試験機(島津製作所製オートグラフAGS−5kG)を用いてチャック間長さ20mm、引張速度5mm/分の条件で引張試験を行い、機械的特性を求めた。
【0033】
結果を表1に示す。
【表1】

【0034】
表1より実施例1、2及び3で得られた耐熱性樹脂組成物から作製された塗膜は、比較例1で得られた耐熱性樹脂組成物から作製された塗膜と比較して、硬化後の強度が大きく向上していることが分かった。本結果より、本発明の耐熱性樹脂組成物を用いることで、従来の水溶性耐熱性樹脂組成物と比較して、強度に優れる塗膜を得ることが可能となることが分かる。このことから、家電、厨房器具及びOA部材のように塗膜に耐久性が要求される様々な用途向けに、多大な有益性を有していることは明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)極性溶媒中で、3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’ジイソシアネートと芳香族三塩基酸無水物とを反応させて得られるポリアミドイミド樹脂と(B)塩基性化合物と(C)水とを配合してなる耐熱性樹脂組成物。
【請求項2】
(A)ポリアミドイミド樹脂の数平均分子量が10,000〜35,000で、かつカルボキシル基及び酸塩基酸無水物基を開環させてカルボキシル基を合わせた酸価が20〜60である請求項1に記載の耐熱性樹脂組成物。
【請求項3】
(B)成分の配合量が、(A)ポリアミドイミド樹脂中に含まれるカルボキシル基及び開環させた酸無水物基を合わせた酸価に対して、3〜10当量である請求項1又は2のいずれかに記載の耐熱性樹脂組成物。
【請求項4】
(C)成分の水の含有量が(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計量に対して、30〜80重量%である請求項1〜3のいずれかに記載の耐熱性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の耐熱性樹脂組成物を塗膜成分としてなる塗料。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の耐熱性樹脂組成物を塗布、硬化させた基材。

【公開番号】特開2011−236385(P2011−236385A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111059(P2010−111059)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】