説明

耐熱性繊維布地とその着色方法

【課題】柔軟で伸縮性に富み、高い耐熱性を有し、また着色が容易な耐熱性繊維布地とその着色方法を提供する。
【解決手段】耐熱性繊維12により形成された生地の表面に、焼き付け塗装を行う塗料を塗布し、焼き付け乾燥により塗装を施して成る。生地は、耐熱性繊維12により編まれた編物や、織物でも良い。耐熱性繊維12は、例えばフッ素樹脂繊維である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、耐熱性を有した繊維から形成され、耐熱服などに用いられる耐熱性繊維布地とその着色方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、耐熱性を有した耐熱服は、アラミド繊維織物の外表面に、アルミニウムなどの金属を蒸着したフッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂などの合成樹脂フィルムを積層したものがあった。その他、前記合成樹脂フィルムに代えて、織物の外表面に直接にアルミ箔を耐熱性接着剤などによって接着したものや、アルミニウムを蒸着したものなどがあった。
【0003】
耐熱性を有した耐熱服として、特許文献1には、上衣の裾付近を取り囲む帯状の防炎帯を内面に具備した、消防士が着用する耐熱服が開示されている。また、特許文献2には、耐熱性の糸により織られた耐熱性布帛が開示され、その耐熱性布帛を用いて形成された耐熱性防護服が開示されている。
【特許文献1】特開平11−188115号公報
【特許文献2】特開2004−197259号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の技術のうち生地に耐熱性フィルムを貼付して耐熱性を付与したもの、及び金属箔を接着または金属蒸着したものの場合、耐熱服の柔軟性が乏しい上、生地が伸縮し難いため動き易い服でなかった。また、一般に生地や糸を着色するには、染色液に浸して染色するが、ケブラー(登録商標)等の耐熱性繊維は撥水性を有し、任意の色に着色することができず、任意の色の布地を形成したものは無かった。
【0005】
特許文献1に開示された消防服も、布地の表面に耐熱フィルム等を貼付して形成した耐熱服のため、柔軟性に乏しく動き難いものであった。特許文献2に開示された布帛は、上述の通り伸縮性に乏しいため、動き易くなかった。しかも、任意の色に着色できるものではなかった。
【0006】
この発明は、上記従来技術の問題に鑑みて成されたもので、柔軟で伸縮性に富み、高い耐熱性を有し、また着色が容易な耐熱性繊維布地とその着色方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、耐熱性繊維を撚糸して形成された糸により編まれ、伸縮自在に形成された耐熱性繊維布地である。
【0008】
またこの発明は、耐熱性繊維により形成された生地の表面に、焼き付け塗装を行う塗料を塗布し、焼き付け乾燥により塗装を施して着色した耐熱性繊維布地である。さらに、前記生地は、耐熱性繊維により編まれた編物や、織物でも良い。前記耐熱性繊維は、例えばフッ素樹脂繊維である。
【0009】
またこの発明は、耐熱性繊維により形成された生地の表面に、焼き付け塗装を行う塗料を塗布し、焼き付け乾燥により塗装を施して着色する耐熱性繊維布地の着色方法。
【発明の効果】
【0010】
この発明の耐熱性繊維布地とその着色方法によれば、任意の色や模様の耐熱性衣服等を容易に形成することができる。また、編物により布地を形成した場合、生地が柔軟で伸縮性に富み、これにより形成された耐熱服等は動きやすいものである。
【0011】
また、耐熱性繊維布地であるため、吹き付けなどにより焼き付け塗装を施すことができ、容易に任意の着色が可能であり、様々な色や模様の耐熱性衣服等を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、この発明の耐熱性繊維布地とその着色方法の一実施形態について、図1を基にして説明する。この実施形態の耐熱性繊維布地は、図1に示すように、耐熱性繊維12から成る糸により布地11が編まれた耐熱服である。この布地11は、柔軟で伸縮可能な横編みや縦編み等の適宜な編み方により、上着などの衣服10を形成している。そして、この衣服10は、任意の色に着色されている。
【0013】
耐熱性繊維12は、例えば、フッ素樹脂繊維などから形成されている。フッ素樹脂繊維の素材となるフッ素樹脂は、PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、FEP(テトラフルオトエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、またはETFE(エチレン−テトラフルオロチレン共重合体)などがある。このフッ素樹脂繊維は、比重が2前後で、耐熱性が150℃〜260℃であり、酸からアルカリまでの耐薬品性がある。さらに、フッ素樹脂と同様に、耐溶剤性、耐熱性、非粘着性、撥水性、底摩擦性、電気絶縁性、難燃性を有する。フッ素樹脂繊維は、適宜の太さに形成可能であるが、例えば、径が約20μmの繊維に形成されている。そして、衣服10を構成する糸は、このフッ素樹脂繊維を撚り合わせて適当な太さの糸に形成される。このフッ素樹脂繊維としては、例えば、東洋ポリマー株式会社製のハステックス(商品名)がある。
【0014】
次に、この実施形態の着色方法について説明する。着色方法は、耐熱性繊維12による生地や衣服10に、例えば、焼き付け塗装用の任意の色のメタリック塗料を、吹き付けガンなどにより吹き付ける。吹き付けに用いる塗料は、吹き付けし易い粘度に、専用の希釈液で適度に希釈しておくとよい。そして、生地や衣服10全体に塗料の吹き付けを終えた後、焼き付け乾燥を行う。焼き付け乾燥は、電熱器などで塗装面を照らして行う。このときの乾燥温度は、例えば約70℃、約30分である。ここで用いる塗料は、例えば日本ペイント株式会社製のホワイトメタリック(商品名)等である。続いて、表面処理を施す。例えば、透明な2液型アクリルウレタン樹脂塗料を、吹き付けガンなどで吹き付けて塗布し、再度、電熱器などで塗装面を照らして、焼き付け乾燥させる。表面処理に用いる塗料は、日本ペイント株式会社製のマルチエコ15クリヤー(商品名)等である。
【0015】
この実施形態の耐熱性繊維布地とその着色方法によれば、耐熱性繊維12により形成された糸により衣服10が編まれて形成されているため、柔軟で伸縮性に富み、動き易いものである。また、耐熱性繊維12を用いたことにより、焼き付け塗装を施して着色可能なため、任意の色に容易に着色できるものである。また、耐熱性繊維12を形成するフッ素樹脂繊維により、汚れが付着し難く、衣服の撥水性能もクリーニングなどにより、低下しないものである。
【0016】
なお、この発明の耐熱性繊維布地とその着色方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、繊維は、焼き付け塗装に耐え得る耐熱性を有していれば良いため、耐熱性繊維の素材は適宜選択可能なものである。耐熱性繊維は上記の他、ケブラー(登録商標)等のアラミド繊維、ポリベンゾイミダゾール繊維、ポリイミド繊維、ポリアミドイミド繊維、ポリエーテルイミド繊維、ポリアリレート繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、ノボロイド繊維、難燃アクリル繊維、ポリクラール繊維、難燃ポリエステル繊維等、適宜焼き付け乾燥可能な繊維を選択することができる。さらに、塗装方法は、吹き付けの他、インクジェットにより、任意の絵柄を形成しても良く、塗装方法は問わない。また、焼き付け温度は、使用する耐熱性繊維の耐熱温度範囲内であれば、適宜設定可能なものであり、高温で焼き付け可能であれば、焼き付け乾燥時間を短くすることができる。編物の編み方は、適宜な伸縮性と柔軟性を有していればよく、適宜選択可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の一実施形態の耐熱性繊維による衣服を示す概略正面図である。
【符号の説明】
【0018】
10 衣服
11 布地
12 耐熱性繊維

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱性繊維を撚糸して形成された糸により編まれ、伸縮自在に形成されたことを特徴とする耐熱性繊維布地。
【請求項2】
耐熱性繊維により形成された生地の表面に、焼き付け塗装を行う塗料を塗布し、焼き付け乾燥により塗装を施して着色したことを特徴とする耐熱性繊維布地。
【請求項3】
前記生地は、耐熱性繊維により編まれた編物であることを特徴とする請求項2記載の耐熱性繊維布地。
【請求項4】
前記耐熱性繊維は、フッ素樹脂繊維により形成されたことを特徴とする請求項1,2または3記載の耐熱性繊維布地。
【請求項5】
耐熱性繊維により形成された生地の表面に、焼き付け塗装を行う塗料を塗布し、焼き付け乾燥により塗装を施して着色することを特徴とする耐熱性繊維布地の着色方法。



【図1】
image rotate


【公開番号】特開2008−88617(P2008−88617A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−274122(P2006−274122)
【出願日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(506336832)
【Fターム(参考)】