説明

耐熱性重合体組成物

【課題】卓越した耐傷性と耐熱性を有する重合体組成物の提供。
【解決手段】架橋性ゴム状重合体(A)と、オレフィン系樹脂及び/またはスチレン系樹脂である熱可塑性樹脂(B)とからなる架橋された熱可塑性架橋ゴム組成物に、ポリフェニレンエーテル(C)を配合した重合体組成物、及び架橋された熱可塑性架橋ゴム組成物が、更にスチレン系共重合体(D)を含有した重合体組成物、及び架橋された熱可塑性架橋ゴム組成物に、更にスチレン系共重合体(D)を配合した重合体組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体組成物に関するものである。更に詳しくは、耐傷性と耐熱性に優れた重合体組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ラジカル架橋性エラストマーとPP等のラジカル架橋性のない樹脂とをラジカル開始剤の存在下、押出機中で溶融混練させながら架橋する、いわゆる動的架橋による熱可塑性エラストマー組成物は、既に公知の技術であり、自動車部品等の用途に広く使用されている。
【0003】
このようなエラストマー組成物として、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)またはメタロセン触媒により製造されたオレフィン系エラストマー(下記特許文献1,2参照)を用いる技術が知られている。しかしながら、上記組成物は耐傷性と耐熱性が必ずしも充分でないために、実用的使用に耐えるゴム系組成物が求められている。
【特許文献1】特開平8−120127号公報
【特許文献2】特開平9−137001号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような現状に鑑み、上記のような問題点のない、即ち優れた耐傷性を有する耐熱性重合体組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、耐傷性と耐熱性に優れた重合体組成物を鋭意検討した結果、熱可塑性架橋ゴム組成物とポリフェニレンエーテルとを組み合わせることにより、驚くべきことに、該組成物の耐傷性を保持しつつ、耐熱性を飛躍的に向上せしめる事を見出し、本発明を完成した。
【0006】
即ち本発明は、架橋性ゴム状重合体(A)と、オレフィン系樹脂及び/またはスチレン系樹脂である熱可塑性樹脂(B)とからなる架橋された熱可塑性架橋ゴム組成物に、ポリフェニレンエーテル(C)を配合した重合体組成物、及び架橋された熱可塑性架橋ゴム組成物が、更にスチレン系共重合体(D)を含有した重合体組成物、及び架橋された熱可塑性架橋ゴム組成物に、更にスチレン系共重合体(D)を配合した重合体組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の重合体組成物は耐熱性と耐傷性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明に関して具体的に説明する。
【0009】
本発明の重合体組成物は、架橋性ゴム状重合体(A)とオレフィン系樹脂及び/またはスチレン系樹脂である熱可塑性樹脂(B)を必須成分として、必要に応じてスチレン系ブロック共重合体(D)を配合してなる架橋された熱可塑性架橋ゴム組成物と、ポリフェニレンエーテル(C)を必須成分として、必要に応じて上記(D)を配合した重合体組成物である。
【0010】
ここで、(A)と(B)が、熱可塑性を維持しつつ、架橋することが重要である。上記成分が架橋することにより、高せん断下においても安定したモルフォロジーを維持するために耐熱性と耐傷性に優れる。
【0011】
そして、(C)を熱可塑性架橋ゴム組成物に添加する場合には耐熱性が向上するが、更に(D)が存在する場合には耐傷性が著しく向上することを見出し、本発明を完成した。
【0012】
以下に本発明の各成分について詳細に説明する。
(A)成分
本発明において、架橋性ゴム状重合体(A)は、例えば、ポリブタジエン、ポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(アクリロニトリル−ブタジエン)等のジエン系ゴム及び該ジエン系ゴムを水素添加した飽和重合体ゴム(水素添加共重合体ゴム)、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系ゴム、エチレン−プロピレ共重合体、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−プロピレンン−ジエンモノマー三元共重合体(EPDM)等のエチレン・α―オレフィン共重合体等の架橋ゴムまたは非架橋ゴム、並びに上記ゴム成分を含有する熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。
【0013】
また(A)は、ガラス転移温度(Tg)が−10℃以下であることが好ましい。
【0014】
そして、(A)の100℃で測定したムーニー粘度(ML)(ISO 289−1985(E)準拠)は、20〜150が好ましく、更に好ましくは50〜120である。
【0015】
本発明において(A)架橋性ゴム状重合体の中で好ましい重合体の一つはエチレン・α−オレフィン共重合体であり、エチレンおよび炭素数が3〜20のα−オレフィンとの共重合体が更に好ましい。α−オレフィンとして、例えばプロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、ノネン−1、デセン−1、ウンデセン−1、ドデセン−1等が挙げられる。中でもヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1が好ましく、特に好ましくは炭素数3〜12のα−オレフィンであり、とりわけプロピレン、ブテン−1、オクテン−1が最も好ましい。
【0016】
また、(A)架橋性ゴム状重合体は必要に応じて、不飽和結合を有する単量体を含有することができ、例えば、ブタジエン、イソプレン等の共役ジオレフィン、1,4−ヘキサジエン等の非共役ジオレフィン、ジシクロペンタジエン、ノルボルネン誘導体等の環状ジエン化合物、及びアセチレン類が挙げられる。とりわけエチリデンノルボルネン(ENB)、ジシクロペンタジエン(DCP)が最も好ましい。
【0017】
本発明において(A)の好ましい共重合体の一つであるエチレン・α−オレフィン共重合体(以下、(A)のエチレン・α−オレフィン共重合体(A−1)という。)は、公知のメタロセン系触媒を用いて製造することが好ましい。
【0018】
一般にはメタロセン系触媒は、チタン、ジルコニウム等のIV族金属のシクロペンタジエニル誘導体と助触媒からなり、重合触媒として高活性であるだけでなく、チーグラー系触媒と比較して、得られる重合体の分子量分布が狭く、共重合体中のコモノマーである炭素数3〜20のα−オレフィンの分布が均一である。
【0019】
本発明において用いられる(A)のエチレン・α−オレフィン共重合体(A−1)は、α−オレフィンの共重合比率が1〜60重量%であることが好ましく、更に好ましくは10〜50重量%、最も好ましくは20〜45重量%である。α−オレフィンの共重合比率は組成物の硬度、引張強度等の観点から60重量%以下が好ましく、一方、柔軟性、機械的強度の観点から1重量%以上が好ましい。
【0020】
(A)のエチレン・α−オレフィン共重合体(A−1)の密度は、0.8〜0.9g/cmの範囲にあることが好ましい。この範囲の密度を有するエチレン・α−オレフィン共重合体を用いることにより、柔軟性に優れ、硬度の低い本発明の熱可塑性エラストマー組成物を得ることができる。
【0021】
本発明にて用いられる(A)のエチレン・α−オレフィン共重合体(A−1)は、長鎖分岐を有していることが望ましい。長鎖分岐が存在することで、機械的強度を落とさずに、共重合されているα−オレフィンの比率(重量%)に比して、密度をより小さくすることが可能となり、低密度、低硬度、高強度のエチレン・α−オレフィン共重合体を得ることができる。長鎖分岐を有するエチレン・α−オレフィン共重合体としては、米国特許明細書第5278272号明細書等に記載されている。
【0022】
また、(A)のエチレン・α−オレフィン共重合体(A−1)は、室温以上に熱天秤(DSC)の融点ピークを有することが望ましい。融点ピークを有するとき、融点以下の温度範囲では形態が安定しており、取扱い性に優れ、ベタツキも少ない。
【0023】
また、本発明にて用いられる(A)のエチレン・α−オレフィン共重合体(A−1)のメルトインデックスは、0.01〜100g/10分(190℃、2.16kg荷重(0.212Pa))の範囲のものが好ましく用いられ、更に好ましくは0.2〜10g/10分である。本発明の熱可塑性エラストマー組成物の架橋性の観点から100g/10分以下が好ましく、また、流動性、加工性の観点から0.01g/10分以上が好ましい。
【0024】
本発明において、(A)のもう一つの好ましい共重合体である上記水素添加共重合体(A−2)は、少なくとも一種の共役ジエン系単量体の単独重合体ゴム、または共役ジエン系単量体と芳香族ビニル単量体とからなる共重合体ゴムであって、ランダム共重合体の全二重結合の水素添加率が50%以上である水素添加共重合体ゴムが好ましく、とりわけ主鎖および側鎖に二重結合を有する重合体及び/または共重合体からなる不飽和重合体ゴムの全オレフィン性二重結合の50%以上が水素添加された水素添加共重合体ゴムであることが好ましい。
【0025】
上記水素添加共重合体ゴムにおいて、必要に応じて、例えば、オレフィン系、メタクリル酸エステル系、アクリル酸エステル系、不飽和ニトリル系、塩化ビニル系単量体等の共役ジエンと共重合可能な単量体(以下、共重合可能な単量体という。)を共重合することができる。
【0026】
上記共役ジエン系単量体としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1、3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1、3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、クロロプレン等を挙げることができ、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエンが好ましく、1,3−ブタジエン、イソプレンが最も好ましい。
【0027】
また、前記芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルピリジン等を挙げることができ、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。上記芳香族単量体は一種または二種以上併用することができる。芳香族ビニル単量体含有量は、0〜80重量%が好ましく、更に好ましくは0〜50重量%、最も好ましくは0〜30重量%である。
【0028】
(A)としての水素添加共重合体において、水素添加前の共役ジエン単量体部分のビニル結合は、分子内に均一に存在していても、分子鎖に沿って増大あるいは減少してもよいし、また、ビニル結合含有量の異なった、複数個のブロックを含んでいてもよい。そして、芳香族ビニル単量体および/または共重合可能な単量体を含む場合は、共役ジエン単量体と芳香族ビニル単量体および/または共重合可能な単量体とはランダムに結合することが好ましいが、ブロック状の芳香族ビニル単量体および/またはブロック状の共重合可能な単量体を含んでもよい。ブロック状の芳香族ビニル重合体の含有率は、全芳香族ビニル単量体中の20重量%以下が好ましく、更に好ましくは10重量%以下である。
【0029】
上記水素添加共重合体ゴム中の全オレフィン性二重結合は、50%以上、好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上が水素添加され、そして主鎖の残存二重結合が5%以下、側鎖の残存二重結合が5%以下である。このような水素添加共重合体ゴムの具体例としては、ポリブタジエン、ポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(アクリロニトリル−ブタジエン)、ポリイソプレン、ポリクロロプレン等のジエン系ゴムを部分的または完全に水素添加したゴム状重合体を挙げることができ、特に水素添加ブタジエン系または水素添加イソプレン系ゴムが好ましい。
【0030】
このような水素添加共重合体ゴムは、上述のジエン系ゴムを公知の水素添加方法で部分水素添加することにより得られる。例えば、F.L.Ramp,etal,J.Amer.Chem.Soc.,83,4672(1961)記載のトリイソブチルボラン触媒を用いて水素添加する方法、HungYuChen,J.Polym.Sci.Polym.Letter Ed.,15,271(1977)記載のトルエンスルフォニルヒドラジドを用いて水素添加する方法、あるいは特公昭42−8704号公報に記載の有機コバルトー有機アルミニュウム系触媒あるいは有機ニッケルー有機アルミニュウム系触媒を用いて水素添加する方法等を挙げることができる。
【0031】
ここで、特に好ましい水素添加の方法は、低温、低圧の温和な条件下で水素添加が可能な触媒を用いる特開昭59−133203号、特開昭60−220147号の各公報あるいは不活性有機溶媒中にて、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウム化合物と、ナトリウム原子、カリウム原子、ルビジウム原子またはセシウム原子を有する炭化水素化合物とからなる触媒の存在下に水素と接触させる特開昭62−207303号公報に示される方法である。
【0032】
また、水素添加共重合体ゴムの25℃における5重量%スチレン溶液粘度(5%SV)は、20〜300センチポイズ(cps)の範囲にあることが好ましい。特に好ましい範囲は25〜150cpsである。
【0033】
そして、水素添加共重合体ゴムは結晶性を有することが好ましく、その結晶性の指標である吸熱ピーク熱量の制御は、テトラヒドロフラン等の極性化合物の添加または重合温度の制御により行う。吸熱ピーク熱量の低下は、ゴム状重合体製造時に極性化合物を増量するか、または重合温度を低下させて、1,2−ビニル結合を増大させることにより達成される。
【0034】
本発明にて用いられる(A)架橋性ゴム状重合体は、複数の種類のものを混合して用いても良い。そのような場合には、加工性のさらなる向上を図ることが可能となる。
【0035】
本発明において、(A)架橋性ゴム状重合体中に占めるポリスチレン換算分子量が15万以下の該重合体の割合が30重量%以下であることが好ましく、より好ましくは25%以下、更に好ましくは20%以下、最も好ましくは15%以下、極めて好ましくは10%以下である。上記割合が30%以下の場合には架橋性が著しく高まり、機械的強度、外観、感触、耐磨耗性及び耐油性が向上する。
【0036】
本発明において(A)架橋性ゴム状重合体中に占めるポリスチレン換算分子量が15万以下の該重合体の割合を制御する方法として、分子量が15万以下の部分が30%以下になるように全体の分子量を高める方法、または分子量15万以下の部分を抽出等の操作で除去する方法、あるいは重合触媒等により選択的に分子量15万以下が生成しない重合方法等が挙げられる。
【0037】
本発明において架橋された熱可塑性架橋ゴム組成物のキシレン不溶分から得られた架橋度が10%以上であることが好ましく、更に好ましくは30%、最も好ましくは70%である。上記範囲内にある場合は、優れた射出成形性、柔軟性及び耐傷性が発現する。
なお、本発明において、架橋度は以下のように算出する。組成物の重量W0をキシレン100ml中で20時間リフラックスし、溶液をフィルターで濾過する。次いで、濾過後のキシレン不溶分を100℃で真空乾燥後、重量(W1)を測定する。このようにして、架橋度を以下のように算出する。
架橋度=(W1/W0)×100(%)
(B)成分
本発明において、(B)の熱可塑性樹脂はオレフィン系樹脂及び/またはスチレン系樹脂である。
【0038】
上記オレフィン系樹脂は、例えばエチレン系またはプロピレン系樹脂等の炭素数2〜20であるエチレン及び/またはα−オレフィンの単独もしくは二種以上を含有する共重合樹脂が挙げられ、特にプロピレン系樹脂が更に好ましい。
【0039】
本発明で最も好適に使用されるプロピレン系樹脂を具体的に示すと、ホモのアイソタクチックポリプロピレン、プロピレンとエチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1等の他のα−オレフィンとのアイソタクチック共重合樹脂(ブロック、ランダムを含む。)等が挙げられる。
【0040】
本発明において、オレフィン系樹脂の中でも、架橋型オレフィン系樹脂であるエチレンとプロピレンとのランダム共重合樹脂等のプロピレン系ランダム共重合樹脂(B−1)及び/または、分解型オレフィン系樹脂であるプロピレン系ブロック共重合体樹脂またはホモポリプロピレン系樹脂(B−2)が好ましく、特に両者との組み合わせが好ましい。このような架橋型オレフィン系樹脂と分解型オレフィン系樹脂の二種のオレフィン系樹脂を組み合わせることにより、外観と機械的強度が更に向上する。
【0041】
(B−1)として、例えばエチレンとプロピレンのランダム共重合樹脂を挙げることができ、エチレン成分がポリマー主鎖中に存在する場合は、それが架橋反応の架橋点となり、架橋型オレフィン系樹脂の特性を示す。
【0042】
(B−2)はα−オレフィンが主成分であり、ポリマー主鎖中にエチレン単位を含まないことが好ましい。但し、プロピレン系ブロック共重合樹脂のようにエチレン−αオレフィン共重合体が分散相として存在する場合は、分解型オレフィン系樹脂の特性を示す。
【0043】
オレフィン系樹脂は複数個の(B−1)、(B−2)成分の組み合わせでも良い。
【0044】
(B−1)の中で最も好ましいプロピレンを主体としたα−オレフィンとのランダム共重合樹脂は、高圧法、スラリー法、気相法、塊状法、溶液法等で製造することができ、重合触媒としてZiegler-Natta触媒、シングルサイト、メタロセン触媒が好ましい。特に狭い組成分布、分子量分布が要求される場合には、メタロセン触媒を用いたランダム共重合法が好ましい。
【0045】
ランダム共重合樹脂の具体的製造法は、欧州特許0969043A1または米国特許5198401に開示されており、液状プロピレンを攪拌機付き反応器に導入した後に、触媒をノズルから気相または液相に添加する。次いで、エチレンガスまたはα−オレフィンを反応器の気相または液相に導入し、反応温度、反応圧力をプロピレンが還流する条件に制御する。重合速度は触媒濃度、反応温度で制御し、共重合組成はエチレンまたはα−オレフィンの添加量により制御する。
【0046】
また、本発明にて好適に用いられるオレフィン系樹脂のメルトインデックスは、0.1〜100g/10分(230℃、2.16kg荷重(0.212Pa))の範囲のものが好ましく用いられる。熱可塑性エラストマー組成物の耐熱性、機械的強度の観点から100g/10分以下であることが好ましく、また、流動性、成形加工性の観点から0.1g/10分以上が好ましい。
【0047】
本発明において、(A)とオレフィン系樹脂からなる該組成物は、別個の(A)とオレフィン系樹脂を押出機で溶融混合したものであっても良いし,また(A)とオレフィン系樹脂を重合時に製造した重合型オレフィン系組成物であっても良い。このような重合型オレフィン系組成物は、オレフィン系ゴムの分散相とオレフィン系樹脂の連続相からなる重合法によって製造された熱可塑性エラストマーである。通常は多段重合法により製造される。
【0048】
本発明において、多段重合法とは、重合が1回で終了するのではなく、2段階以上の多段重合を行うことにより、複数の種類のポリマーを連続して製造することができる重合法を意味し、機械的な手法を用いて異種類のポリマーからなる混合樹脂を得るところの通常のポリマーブレンド法とは異なる手法である。
【0049】
多段重合法によって得られるオレフィン系架橋性ゴム組成物は、反応器中で(1)ハードセグメントと、(2)ソフトセグメントとが二段階以上で多段重合されてなる共重合体である。(1)ハードセグメントとしては、プロピレン単独重合体ブロックや、あるいはプロピレンとα−オレフィンとの共重合体ブロックが代表的であり、例えばプロピレン/エチレン、プロピレン/1−ブテン、プロピレン/エチレン/1−ブテン等の二元または三元共重合体ブロックが挙げられる。また(2)ソフトセグメントとしては、エチレン単独重合体ブロックおよびエチレンとα−オレフィンとの共重合体ブロックが代表的であり、例えばエチレン/プロピレン、エチレン/1−ブテン、エチレン/プロピレン/1−ブテン等の二元または三元共重合体ブロックが挙げられる。
【0050】
本発明の(B)成分の中のスチレン系樹脂は、ゴム変性スチレン系樹脂及び/または、ゴム非変性スチレン系樹脂である。
【0051】
このようなゴム変性スチレン系樹脂は、ビニル芳香族系重合体よりなるマトリックス中にゴム状重合体が粒子状に分散してなる重合体をいい、ゴム状重合体の存在下に芳香族ビニル単量体及び必要に応じ、これと共重合可能なビニル単量体を加えて単量体混合物を公知の塊状重合、塊状懸濁重合、溶液重合、または乳化重合することにより得られる。
【0052】
このような樹脂の例としては、耐衝撃性ポリスチレン、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)、AAS樹脂(アクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン共重合体)、AES樹脂(アクリロニトリル−エチレンプロピレンゴム−スチレン共重合体)等が挙げられる。
【0053】
ここで、前記ゴム状重合体は、ガラス転移温度(Tg)が−30℃以下であることが必要であり、−30℃を越えると耐衝撃性が低下する。
【0054】
このようなゴム状重合体の例としては、ポリブタジエン、ポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(アクリロニトリル−ブタジエン)等のジエン系ゴム及び上記ジエンゴムを水素添加した飽和ゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系ゴム及びエチレン−プロピレン−ジエンモノマー三元共重合体(EPDM)等を挙げることができ、特にジエン系ゴムが好ましい。
(C)成分
本発明において、ポリフェニレンエーテル(C)は、たとえばポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体等が好ましく、中でもポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)が好ましい。かかる(C)の製造方法は特に限定されるものではなく、例えば、米国特許第3,306,874号明細書記載の方法による第一銅塩とアミンのコンプレックスを触媒として用い、例えば2,6キシレノールを酸化重合することにより容易に製造でき、そのほかにも米国特許第3,3061075号明細書、米国特許第3,257,357号明細書、米国特許3,257,358号明細書、及び特公昭52−17880号公報、特開昭50−51197号公報に記載された方法で容易に製造できる。本発明にて用いる上記PPEの還元粘度ηsp/C(0.5g/dl、クロロホルム溶液、30℃測定)は、0.20〜0.70dl/gの範囲にあることが好ましく、0.30〜0.60dl/gの範囲にあることがより好ましい。
【0055】
本発明における(C)成分は耐熱性を付与するための成分であり、全組成物中に占める(C)成分は1〜99重量%が好ましく、更に好ましくは5〜90重量%、最も好ましくは10〜80重量%である。
(D)成分
本発明におけるスチレン系共重合体(D)は、(A)(B)(C)成分の相容化のための成分であり、スチレン系ランダム共重合体及び/またはスチレン系ブロック共重合体である。その代表例の一つとして、(A)成分の中に開示されているランダム状の芳香族ビニル単位を主体とするスチレン系ランダム状共重合体であり、もう一つの代表例として、芳香族ビニルブロックと共役ジエンブロックを有する共重合体またはその水素添加物が挙げられ、具体的には水素添加スチレンブタジエンブロック共重合体である。
【0056】
このようなブロック共重合体は、芳香族ビニル単位と共役ジエン単位からなるブロック共重合体、または上記共役ジエン単位部分が部分的に水素添加または、必要に応じて、不飽和カルボン酸またはその無水物あるいはエポキシ変性されたブロック共重合体である。
【0057】
上記ブロック共重合体中の芳香族ビニル単位は、好ましくは50〜90重量%、より好ましくは50〜80重量%、最も好ましくは60〜80重量%である。
【0058】
また上記ブロック構造は、芳香族ビニル単位からなる重合体ブロックをSで表示し、共役ジエン及び/またはその部分的に水素添加された単位からなる重合体ブロックをBで表示する場合、SB、S(BS)n、(但し、nは1〜3の整数)、S(BSB)n、(但し、nは1〜2の整数)のリニア−ブロック共重合体や、(SB)n X(但し、nは3〜6の整数。Xは四塩化ケイ素、四塩化スズ、ポリエポキシ化合物等のカップリング剤残基。)で示され、B部分を結合中心とする星状(スタ−)ブロック共重合体であることが好ましい。なかでもSBの2型、SBSの3型、SBSBの4型のリニア−ブロック共重合体が好ましい。
【0059】
上記ブロック共重合体を構成する芳香族ビニル単量体は、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、p−クロロスチレン、p−ブロモスチレン、2,4,5−トリブロモスチレン等であり、スチレンが最も好ましいが、スチレンを主体に上記他の芳香族ビニル単量体を共重合してもよい。
【0060】
また、上記ブロック共重合体を構成する共役ジエン単量体は、イソプレン、ブタジエン、ヘキサジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ブンタジエン等を挙げることができ、特に1,3−ブタジエン及び/またはイソプレンが好ましい。
【0061】
本発明において、(A)、(B)及び(C)からなる組成物100重量部に対して、(D)は、1〜99重量部が好ましく、更に好ましくは1〜70重量部、最も好ましくは1〜30重量部である。
また、(D)は、(A)、(B)に配合してからこれらを架橋した、架橋された熱可塑性架橋ゴム組成物に含有されていてもよく、あるいは(A),(B)を架橋して、架橋された熱可塑性架橋ゴム組成物に対して配合されてもよい。
【0062】
(E)成分
本発明の重合体中の熱可塑性架橋ゴム組成物は、(E)架橋剤で架橋されることが好ましい。
(E)架橋剤は、(E−1)架橋開始剤を必須成分とし、必要に応じて(E−2)多官能単量体、(E−3)単官能単量体を含有する。上記(E)架橋剤は、(A)と(B)の合計100重量部に対し0.001〜10重量部、好ましくは0.005〜3重量部の量で用いられる。上記範囲内では架橋のレベルが高まり、組成物の耐磨耗性が向上する。 ここで、(E−1)架橋開始剤は、有機過酸化物、有機アゾ化合物等のラジカル開始剤等が挙げられ、その具体的な例として、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート等のパーオキシケタール類;ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンおよび2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等のジアルキルパーオキサイド類;アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイドおよびm−トリオイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウリレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、およびクミルパーオキシオクテート等のパーオキシエステル類;ならびに、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイドおよび1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類を挙げることができる。
【0063】
これらの化合物の中では、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンおよび2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3が好ましい。
【0064】
上記(E−1)は、(E)成分中で好ましくは1〜80重量%、更に好ましくは10〜50重量%の量が用いられる。架橋性の観点から1重量%以上が好ましく、機械的強度の観点から80重量%以下が好ましい。
【0065】
本発明において、(E)架橋剤に必要に応じて含まれる(E−2)多官能単量体は、官能基としてラジカル重合性の官能基が好ましく、とりわけビニル基が好ましい。官能基の数は2以上であるが、(E−3)との組み合わせで特に3個以上の官能基を有する場合には有効である。具体例としては、ジビニルベンゼン、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ダイアセトンジアクリルアミド、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジイソプロペニルベンゼン、P−キノンジオキシム、P,P’−ジベンゾイルキノンジオキシム、フェニルマレイミド、アリルメタクリレート、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、ジアリルフタレート、テトラアリルオキシエタン、1,2−ポリブタジエン等が好ましく用いられる。特にトリアリルイソシアヌレートが好ましい。これらの多官能単量体は複数のものを併用して用いてもよい。
【0066】
上記(E−2)は、(E)成分中で好ましくは1〜80重量%、更に好ましくは10〜50重量%の量が用いられる。架橋性の観点から1重量%以上が好ましく、機械的強度の観点から80重量%以下が好ましい。
【0067】
本発明において用いられる前記(E−3)は、ビニル系単量体であり、ラジカル重合性のビニル系単量体が好ましく、芳香族ビニル単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル単量体、アクリル酸エステル単量体、メタクリル酸エステル単量体等のエステル系単量体、アクリル酸単量体、メタクリル酸単量体等の不飽和カルボン酸単量体、無水マレイン酸単量体等の不飽和カルボン酸無水物、N−置換マレイミド単量体等の低分子量単量体、あるいは重合体の片末端にメタクリロイル基等のビニル基が置換されたマクロモノマー等を挙げることができる。
【0068】
上記(E−3)は、(E)成分中で好ましくは1〜80重量%、更に好ましくは10〜50重量%の量が用いられる。架橋性の観点から1重量%以上が好ましく、機械的強度の観点から80重量%が好ましい。
【0069】
本発明において、最も好ましい(E)架橋剤の組み合わせについては、架橋開始剤として、日本油脂社製、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(商品名パーヘキサ25B)または日本油脂社製、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシンー3と、多官能単量体として、日本化成(株)製、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)との組み合わせが、機械的強度、後述の軟化剤が存在するときの軟化剤の保持性が優れている。
(F)成分
本発明において、必要に応じて軟化剤、250℃で溶融しない粉末状化合物、ポリオルガノシロキサン、樹脂系ワックスから選ばれる剤(F)を添加することができる。
【0070】
上記軟化剤は、パラフィン系、ナフテン系、芳香族系などの炭化水素からなるプロセスオイルが好ましい。とりわけ、パラフィン系炭化水素主体またはゴムとの相容性の観点からナフテン系炭化水素主体のプロセスオイルが好ましい。熱・光安定性の観点から、プロセスオイル中の芳香族系炭化水素の含有量については、ASTM D2140−97規定の炭素数比率で10%以下であることが好ましく、更に好ましくは5%以下、最も好ましくは1%以下である。
【0071】
これらの軟化剤は、(A)と(B)の合計100重量部に対して、5〜500重量部、好ましくは10〜150重量部用いる。上記範囲内では分散性、柔軟性と耐ブリード性のバランスが優れる。
【0072】
本発明において、耐磨耗性が要求される場合には、必要に応じて、ポリオルガノシロキサンを添加することができ、JIS−K2410規定の25℃における動粘度が5000センチストークス(5×10−3/sec)以上であるポリオルガノシロキサンが好ましい。
【0073】
上記ポリオルガノシロキサンは、粘調な水飴状からガム状の様態であり、アルキル、ビニル及び/またはアリール基置換シロキサン単位を含むポリマーであれば特に制約されない。その中でもポリジメチルシロキサンが最も好ましい。
【0074】
本発明に用いられるポリオルガノシロキサンの動粘度(25℃)は、5000CS(5×10−3/sec)以上であり、更に好ましくは、1万CS(1×10−2/sec)以上1000万(10m/sec)未満、最も好ましくは5万CS(0.05m/sec)以上200万(2m/sec)未満である。
【0075】
本発明において、前記ポリオルガノシロキサンの添加量は、(A)と(B)との合計100重量部に対して、0.001〜20重量部であることが好ましく、更に好ましくは0.1〜10重量部、最も好ましくは0.5〜5重量部である。
【0076】
また、本発明において、その特徴を損ねない程度にその他の無機フィラー、可塑剤、有機・無機顔料、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃剤、シリコンオイル、発泡剤、帯電防止剤、抗菌剤を含有することが可能である。
【0077】
本発明の重合体組成物の製造には、通常の樹脂組成物、エラストマー組成物の製造に用いられるバンバリーミキサー、ニーダー、単軸押出機、2軸押出機等の一般的な方法を採用することが可能である。とりわけ効率的に動的架橋を達成するためには2軸押出機が好ましく用いられる。2軸押出機は、(A)と(B)とを均一かつ微細に分散させ、さらに他の成分を添加させて、架橋反応を生じせしめ、本発明の組成物を連続的に製造するのに、より適している。
【0078】
本発明の重合体組成物は、まず(A)と(B)とからなる熱可塑性架橋ゴム組成物を製造した後に、(C)を添加して溶融混合しても良いし、同一押出機を用い前段で(A)と(B)からなる熱可塑性架橋ゴム組成物を製造し、サイドフィーダーで(C)を添加し、溶融混合しても良い。
【0079】
上記熱可塑性架橋ゴム組成物は、好適な具体例として、次のような加工工程を経由して製造することができる。すなわち、(A)((A−1)および(A−2))と(B)とをよく混合し、押出機のホッパーに投入する。この際(A−1)と(A−2)を押し出し機に同時に添加し、溶融混練することが好ましい。(E)を、(A)と(B)とともに当初から添加してもよいし、押出機の途中から添加してもよい。また軟化剤を押出機の途中から添加してもよいし、当初と途中とに分けて添加してもよい。(A)と(B)の一部を押出機の途中から添加してもよい。
【0080】
また特に好ましい溶融押出法としては、原料添加部を基点としてダイ方向に長さLを有し、かつL/Dが5から100(但しDはバレル直径)である二軸押出機を用いる場合である。二軸押出機は、その先端部からの距離を異にするメインフィ−ド部とサイドフィ−ド部の複数箇所の供給用部を有し、複数の上記供給用部の間及び上記先端部と上記先端部から近い距離の供給用部との間にニ−ディング部分を有し、上記ニ−ディング部分の長さが、それぞれ3D〜10Dであることが好ましい。
【0081】
また本発明において用いられる製造装置の一つの二軸押出機は、二軸同方向回転押出機でも、二軸異方向回転押出機でもよい。また、スクリュ−の噛み合わせについては、非噛み合わせ型、部分噛み合わせ型、完全噛み合わせ型があり、いずれの型でもよい。低いせん断力をかけて低温で均一な樹脂を得る場合には、異方向回転・部分噛み合わせ型スクリュ−が好ましい。やや大きい混練を要する場合には、同方向回転・完全噛み合わせ型スクリュ−が好ましい。さらに大きい混練を要する場合には、同方向回転・完全噛み合わせ型スクリュ−が好ましい。
【0082】
本発明の熱可塑性架橋ゴム組成物の最も好ましい製造法は、(A)と(B)及び必要に応じて(D)とを均一溶融混合後、(E)により架橋する方法である。
【実施例】
【0083】
以下、本発明を実施例、比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、これら実施例および比較例において、各種物性の評価に用いた試験法は以下の通りである。
1.耐熱性(TMA法)
セイコー電子工業(株)製 TMA100、SSC5000を用い、荷重20g/mm2における直径1mmのプローブが100μm浸入する温度(℃)を軟化温度とし、耐熱性の指標とする。
2. 耐傷性
先端が長さ10mm、幅1mmの長方形で、重さが500gのくさびを高さ5cmからシートに落下させてできた、シートの傷を目視で以下の基準で評価を行なう。
【0084】
◎ 極めて良好
○ 良好
△ 良好であるが、傷が目立つ
× 傷つきが著しい
尚、◎○等のように二つの記号が併用されている場合は、その中間を示す。
【0085】
また同時にシートの傷をレーザー光で走査して傷深さを測定する。
【0086】
実施例、比較例で用いる各成分は以下のものを用いる。
(A)架橋性ゴム状重合体
1)エチレン・プロピレン・エチリデンノルボルネン(ENB)共重合体(TPE−1)
特開平3ー163088号公報に記載のメタロセン触媒を用いた方法により製造する。共重合体のエチレン/プロピレン/ENBの組成比は、72/24/4(重量比)であり、ムーニー粘度は100である。(TPE−1と称する)
2)エチレン・プロピレン・エチリデンノルボルネン(ENB)共重合体(TPE−2)通常のチーグラー触媒を用いた方法により製造する。共重合体のエチレン/プロピレン/ENBの組成比は、72/24/4(重量比)であり、ムーニー粘度は105である。(TPE−2と称する)
3)エチレンとオクテン−1との共重合体(TPE−3)
特開平3−163088号公報に記載のメタロセン触媒を用いた方法により製造した。共重合体のエチレン/オクテン−1の組成比は、72/28(重量比)であり、ムーニー粘度は100である。(TPEー3と称する)
4)水素添加ブタジエン重合体
WO01/48079号公報に記載の方法に基づき、ブタジエン重合体を水素添加することにより製造する。ムーニー粘度は100である。(HーBRと称する)
5)水素添加スチレン・ブタジエンランダム共重合体
WO01/48079号公報に記載の方法に基づき、スチレン・ブタジエンランダム共重合体を水素添加することにより製造する。前駆体の共重合体のスチレン/ブタジエンの組成比は、70/30(重量比)であり、ムーニー粘度は100である。(H−SBRと称する)
6)水素添加スチレン・ブタジエンブロック共重合体
市販のSEBS(スチレン/エチレン・ブチレン=70/30重量比)(SEBS−1と称する)
市販のSEBS(スチレン/エチレン・ブチレン=30/70重量比)(SEBS−2と称する)
市販のSEPS(スチレン/エチレン・プロピレン=30/70重量比)(SEPSと称する)
(B)熱可塑性樹脂
1)ポリプロピレン
アイソタクチックホモポリプロピレン(PPと称する) MFR:0.5g/10分(230℃、2.16kg荷重)
2)ポリスチレン
ゴム非変性ポリスチレン(PSと称する) MFR:0.5g/10分(230℃、2.16kg荷重)
(C)ポリフェニレンエーテル
ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)(PPEと称する)還元粘度ηsp/C(0.5g/dl、クロロホルム溶液、30℃測定)は、0.50dl/g
(E)架橋剤
1)架橋開始剤(E−1)
2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(POXと称する)
2)多官能単量体(E−2)
トリアリルイソシアヌレート(TAICと称する)
[実施例1〜17および比較例1〜5]
2軸押出機を用いて、表1に記載の組成物を溶融押出する際に、前段で熱可塑性架橋ゴム組成物を溶融混練した後に、ポリフェニレンエーテル組成物をサイドフィーダーで添加することにより最終組成物を製造する。
【0087】
このようにして得られた組成物をTダイ押出機を用いて、2mm厚のシートを作製し、各種評価を行なう。その結果を表1、2に示した。
【0088】
【表1】

【表2】

表1、2によると、動的架橋する際にPPEと共に架橋するよりも、まず架橋体を製造してからPPEを配合する方が耐熱性及び耐傷性に優れていることが分かる。また(A)がメタロセン系触媒を用いて製造された共重合体ゴム及び/またはランダム状に結合した水素添加ゴムであり、相容化剤として芳香族ビニル単位が50重量%以上のスチレン系ブロック共重合体を用いる場合には、更に優れた上記特性が著しく向上することが分かる。また上記スチレン系ブロック共重合体は、熱可塑性架橋ゴム組成物に添加するほうが、後添加するポリフェニレンエーテル組成物に添加するより好ましいことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の耐熱性重合体組成物は、自動車用部品、自動車用内装材、エアバッグカバー、機械部品、電気部品、ケーブル、ホース、ベルト、玩具、雑貨、日用品、建材、シート、フィルム等を始めとする用途に幅広く使用可能であり、産業界に果たす役割は大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋性ゴム状重合体(A)と、オレフィン系樹脂及び/またはスチレン系樹脂である熱可塑性樹脂(B)とからなる架橋された熱可塑性架橋ゴム組成物に、ポリフェニレンエーテル(C)を配合した重合体組成物。
【請求項2】
架橋された熱可塑性架橋ゴム組成物が、更にスチレン系共重合体(D)を含有した請求項1に記載の重合体組成物。
【請求項3】
架橋された熱可塑性架橋ゴム組成物に、更にスチレン系共重合体(D)を配合した請求項1に記載の重合体組成物。
【請求項4】
(A)がエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンを含有する、メタロセン触媒を用いて製造されたエチレン・αーオレフィン共重合体(A−1)、または主鎖および側鎖に二重結合を有する単独重合体及び/または共重合体からなる不飽和ゴムの全オレフィン性二重結合の50%以上が水素添加された水素添加ゴム(A−2)から選ばれる一種以上の架橋性ゴム状重合体である請求項1〜3のいずれかに記載の重合体組成物。
【請求項5】
(B)のオレフィン系樹脂がポリプロピレン系樹脂である請求項1〜4のいずれかに記載の重合体組成物。
【請求項6】
(D)の芳香族ビニル単位が50〜90重量%である請求項2〜5のいずれかに記載の重合体組成物。
【請求項7】
(D)がスチレン系ブロック共重合体である請求項2〜6のいずれかに記載の重合体組成物。
【請求項8】
熱可塑性架橋ゴム組成物が架橋剤(E)により架橋してなる請求項1〜7のいずれかに記載の重合体組成物。
【請求項9】
更に軟化剤、250℃で溶融しない粉末状化合物、ポリオルガノシロキサン、樹脂系ワックスから選ばれる剤(F)を含有した請求項1〜8のいずれかに記載の重合体組成物。

【公開番号】特開2008−7589(P2008−7589A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−177931(P2006−177931)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】