説明

耐熱性鉱物充填ポリアセタール組成物を製造する方法

本発明は、ポリアセタール組成物およびこれらの成形品を製造する方法であって、混合されて組成物になる前に前もって被覆されていない少なくとも1種の鉱物充填剤を含む方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアセタール組成物およびこれらから成形品を製造する方法であって、混合されて組成物になる前に前もって被覆されていない少なくとも1種の鉱物充填剤を含む方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアセタール(ポリオキシメチレン、POMとも呼ばれる)樹脂は、耐疲労性、自滑性、耐薬品性および成形性などのみでなく、引張強度、剛性などの優れた機械的特性および物理的特性を示す。これらの樹脂は、自動車および家庭電化製品を含む種々の用途において、建設工業において、機械工業において、ならびに工具工業、エレクトロニクス工業および消費者商品工業においてエンジニアリングプラスチック材料として広く用いられている。優れた機械的特性および物理的特性に加えて、ポリアセタール樹脂は、良好な内部潤滑性および耐摩耗性示すことが知られ、他の部品に接触する可動部を有する用途のために用いられてきた。
【0003】
ポリアセタール樹脂は、アドオン特性を提供するために様々に改質されてきた。樹脂改質の例は、組成物の殆ど無限の範囲を提供して工学的用途の広い範囲に適合させるための充填剤の添加を含む。それにもかかわらず、ポリアセタール組成物中の添加剤または充填剤は、組成物の加工性および特に成形性、押出性、機械的特性および熱安定性に悪影響を及ぼすことが多い。
【0004】
劣化および低い熱安定性は、高温で空気の存在下で本質的に不安定であり、物品の加工または出荷中に分解してホルムアルデヒドを生成するポリアセタール樹脂の共通の欠点である。ホルムアルデヒドは、次に、化学的に活性であり、そして高分子鎖を分解できるとともにポリアセタール樹脂の耐熱性に悪影響を及ぼす蟻酸に容易に酸化できる。
【0005】
米国特許出願公報第2006/0111473号明細書は、少なくとも1種の表面被覆鉱物を含むとともに、改善された熱安定性を有すると言われる高密度ポリアセタール組成物を開示している。こうした高密度ポリアセタール樹脂を製造する方法は少なくとも2つの工程を含む。第1は、適切な塗布剤で鉱物を表面被覆する工程である。次に、被覆された鉱物を樹脂と溶融混合する工程である。現在の製造方法の複雑さは、これらのポリアセタール樹脂の生産を時間がかかるようにし、高いプロセス生産性を妨げる。
【0006】
ポリアセタール組成物の分解を回避するとともに、維持または改善された耐熱性および維持または改善された機械的特性の両方を示すポリアセタール組成物をもたらす、ポリアセタール組成物に鉱物充填剤を導入するより単純且つより効果的な方法が必要とされ続けている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
ポリアセタール組成物に少なくとも1種の鉱物充填剤を導入することによりポリアセタール組成物を製造する方法であって、
i)前記ポリアセタール組成物の全重量を基準にして20重量%または約20重量%〜84.5重量%または約84.5重量%のポリアセタール樹脂と、
ii)前記ポリアセタール組成物の全重量を基準にして15重量%または約15重量%〜80重量%または約80重量%の少なくとも1種の鉱物充填剤と、
iii)前記少なくとも1種の鉱物充填剤の重量を基準にして0.5重量%または約0.5重量%〜6重量%または約6重量%の、脂肪酸エステル、脂肪酸アミドおよびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の成分と、
を混合する工程を含み、前記少なくとも1種の鉱物充填剤が前もって被覆されていないことを特徴とする方法が本明細書において記載されている。
【0008】
成形ポリアセタール組成物を製造する方法であって、
a)i)前記ポリアセタール組成物の全重量を基準にして20重量%または約20重量%〜84.5重量%または約84.5重量%のポリアセタール樹脂と、
ii)前記ポリアセタール組成物の全重量を基準にして15重量%または約15重量%〜80重量%または約80重量%の少なくとも1種の鉱物充填剤と、
iii)前記少なくとも1種の鉱物充填剤の重量を基準にして0.5重量%または約0.5重量%〜6重量%または約6重量%の、酸エステルおよび/または脂肪酸アミドと、
を混合してポリアセタール組成物を得る工程と、
b)a)の前記ポリアセタール組成物を成形する工程と、
を含み、前記少なくとも1種の鉱物充填剤が前もって被覆されていないことを特徴とする方法も本明細書において記載されている。
【0009】
ポリアセタール組成物から製造されたコンベヤベルト用の部品であって、該部品が、
i)ポリアセタール組成物の全重量を基準にして20重量%または約20重量%〜84.5重量%または約84.5重量%のポリアセタール樹脂と、
ii)前記ポリアセタール組成物の全重量を基準にして15重量%または約15重量%〜80重量%または約80重量%の、硫酸バリウム、酸化ランタニド、酸化亜鉛およびこれらの混合物から選択される少なくとも1種の鉱物充填剤と、
iii)前記少なくとも1種の鉱物充填剤の重量を基準にして0.5重量%または約0.5重量%〜6重量%または約6重量%の、脂肪酸エステル、脂肪酸アミドおよびこれらの混合物から選択される少なくとも1種の成分と、
を含み、前記少なくとも1種の鉱物充填剤が前もって被覆されていないことを特徴とする、コンベヤベルト用の部品も本明細書において記載されている。
【0010】
コンベヤシステムによって輸送された摂取可能製品中のコンベヤシステム材料の存在を検出する方法であって、
a)ポリアセタール組成物を含む少なくとも1個のコンベヤシステム部品を製造する工程であって、前記ポリアセタール組成物が、
i)ポリアセタール組成物の全重量を基準にして20重量%または約20重量%〜84.5重量%または約84.5重量%のポリアセタール樹脂と、
ii)前記ポリアセタール組成物の全重量を基準にして15重量%または約15重量%〜80重量%または約80重量%の少なくとも1種のX線不透過性鉱物充填剤と、
iii)前記少なくとも1種の鉱物充填剤の重量を基準にして0.5重量%または約0.5重量%〜6重量%または約6重量%の、脂肪酸エステル、脂肪酸アミドおよびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の成分と、
を混合する工程を含む方法によって製造され、前記少なくとも1種のX線不透過性鉱物充填剤が前もって被覆されていないことを特徴とする、少なくとも1個のコンベヤシステム部品を製造する工程と、
b)工程a)によって製造された前記少なくとも1個のコンベヤシステム部品を含むコンベヤシステムによって前記摂取可能製品を輸送する工程と、
c)X線を前記摂取可能製品に照射する工程と、
d)X線不透過性鉱物充填剤の存在を検出する工程と
を含む、コンベヤシステム材料の存在を検出する方法も本明細書において記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
定義
以下の定義は、特許請求の範囲において挙げられ、本明細書において用いられる用語を解釈するために用いられるべきである。
【0012】
本明細書において用いられる「about」および「at or about」という句は、問題の量または値が指定された値またはおよそ同じ他のある値であってもよいことを意味する。この句は、似た値が本発明による同等の結果または効果を増進することを伝達することを意図している。
【0013】
本明細書において用いられる「単一混合イベント」または「単一混合工程」は、全部一緒にまたは成分i)、ii)およびiii)を同時に混合した組成物をもたらすために同じ溶融混合装置内で1つまたは2つの成分を添加してもよく、その後、第2の成分または第3の成分を添加してもよいような段階的方式で逐次的にかのいずれかでの[上の[発明の概要]において列挙された]成分i)、ii)およびiii)の混合または添加を意味する。
【0014】
本明細書において用いられる「摂取する」は、消化または吸収のために口によって体に取り込むことを意味する。「摂取可能」は、消化または吸収のために口によって体に取り込むことができるあらゆる物を意味し、特に食料品、食品、飲料、栄養食品および医薬品の優良性である。
【0015】
本明細書において用いられる「コンベヤシステム」は、材料を1つの場所から他の場所に移動させる機械的処理装置の共通的部分である。コンベヤは、重いかまたは嵩ばった材料の輸送を必要とする用途において特に有用であり、多様な材料のために迅速で効率的な輸送を可能にする。コンベヤシステムの多くのタイプは入手可能であり、様々な工業の種々のニーズに従い用いられる。コンベヤシステムには、ベルトコンベヤ、ベルト駆動ラインローラー、マルチフレックスチェインコンベヤおよびラインシャフトローラーコンベヤが挙げられるが、それらに限定されない。
【0016】
本明細書において用いられる時、鉱物充填剤の特性説明としての「前もって被覆された」は、被覆された鉱物充填剤をポリアセタール組成物中で混合する時点で、脂肪酸エステル、脂肪酸アミドおよびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の成分を含む被膜を有するとして鉱物充填剤を認識できる状況を意味する。
【0017】
被覆は、当業者に公知の方法、例えば、溶液により湿らせ乾燥することによる方法またはドライ混合による方法によって実施することが可能である。
【0018】
鉱物充填剤は、鉱物充填剤をポリアセタール組成物中で用いる時点で、鉱物充填剤の重量を基準にして、脂肪酸エステルまたは脂肪酸アミドまたはこれらの混合物の被膜を鉱物充填剤が全くもたないか、0.5重量%未満しかもたない場合、前もって被覆されていないとして(混合してポリアセタール組成物になる時点で)認識できる。
【0019】
本明細書において記載された方法によって製造されたポリアセタール組成物は、コンベヤシステムの種々のタイプにおいて特にベルト、チェーン、ローラーおよびO−リングを製造するために適する場合がある。
【0020】
ポリアセタール組成物を製造する方法
少なくとも1種の鉱物充填剤をポリアセタール組成物に導入することによりポリアセタール組成物を製造する方法であって、ポリアセタール組成物の全重量を基準にして20重量%または約20重量%〜84.5重量%または約84.5重量%のポリアセタール樹脂、前記ポリアセタール組成物の全重量を基準にして15重量%または約15重量%〜80重量%または約80重量%の前もって被覆されていない少なくとも1種の鉱物充填剤および前記少なくとも1種の鉱物充填剤の重量を基準にして0.5重量%または約0.5重量%〜6重量%または約6重量%の、脂肪酸エステル、脂肪酸アミドおよびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の成分を混合することを含む方法が本明細書において記載されている。
【0021】
被覆された鉱物を含むとともに従来の方法によって製造された耐熱性ポリアセタール組成物と比較すると、本明細書において記載された方法によって製造されたポリアセタール組成物は、良好な機械的特性をしばしば維持しつつ、同等またはより高い熱安定性を示すことが可能であり、より安いコストで製造することが可能である。
【0022】
本明細書において記載された方法は、少なくとも1種の鉱物充填剤を前もって被覆する追加の工程を含まない単一混合イベントにおいてi)ポリアセタール樹脂、ii)少なくとも1種の鉱物充填剤およびiii)1種以上の脂肪酸エステル、脂肪酸アミドおよびこれらの混合物を混合することを含む。組成物は溶融混合されたブレンドであり、ここで、ポリアセタール樹脂i)、少なくとも1種の鉱物充填剤ii)および1種以上の脂肪酸エステル、脂肪酸アミドおよび/またはこれらの混合物iii)は、互いの中によく分散され、成分原料ii)およびiii)は、ブレンドが一体化した全体を形成するようにポリマー樹脂によく分散され、ポリマー樹脂によって結合される。
【0023】
本発明の高分子成分および非高分子成分原料を組み合わせ且つ混合するために、いかなる溶融混合方法も用いてもよい。例えば、[上の[発明の概要]において記載された]成分i)、ii)およびiii)は、単一工程添加を通して全部一緒に、またはi)を添加し、ii)の一定量およびiii)の一定量を最初に添加し、そして溶融混合し、後でii)およびiii)の残りを逐次的に添加する段階的方式で、一軸スクリュー押出機または二軸スクリュー押出機、ブラベンダー、一軸スクリュー混練機または二軸スクリュー混練機またはバンバリーミキサーなどの溶融ミキサーに添加してもよく、そして更に溶融混合してもよい。
【0024】
ポリアセタール組成物の成分
i)ポリアセタール樹脂
本明細書において記載された方法において用いられるポリアセタール樹脂(ポリオキシメチレンまたはPOMとも呼ばれる)は、1種以上のホモポリマー、コポリマーまたはこれらの混合物であってもよい。アセタールホモポリマーは、ホルムアルデヒドまたはその末端基が化学反応により末端封止されて、エステル基またはエーテル基、好ましくは、それぞれアセテート基またはメトキシ基を形成するホルムアルデヒドの環式オリゴマー(例えば、トリオキサンおよびテトラオキサン)のホモポリマーを含む。好ましいアセタールホモポリマーは、その末端ヒドロキシル基が末端封止されたアセタールホモポリマーを含む。末端封止は、一般に、ポリアセタールが特に高温で「非閉」であることを防ぐために一般に実施される。
【0025】
アセタールコポリマーは、ホルムアルデヒドのコポリマーまたはホルムアルデヒドと、それらのコポリマーの末端基がヒドロキシル末端であることが可能であるか、またはエステル化またはエーテル化によって末端封止されることが可能である主鎖中に少なくとも2個の隣接炭素原子を有するオキシアルキレン基をもたらす他のモノマーの環式オリゴマーのコポリマーを含むか、またはこうしたホモポリマーとコポリマーの混合物であることが可能である。アセタールコポリマーは少なくとも1種のコモノマーを含む。アセタールコポリマーを調製する際に一般に用いられるコモノマーは、炭素原子数2〜12のアルキレンオキシドおよびホルムアルデヒドとのそれらの環式付加生成物を含む。コモノマーの量は、ポリアセタール樹脂の全重量を基準にして一般に約20重量%以下、好ましくは約15重量%以下、最も好ましくは約2重量%である。エチレンオキシドが最も好ましい。
【0026】
本明細書において記載された方法において用いられるポリアセタール樹脂は分岐または線状であってもよく、一般に約10,000〜100,000、好ましくは約20,000〜90,000の範囲内の平均分子量数を有する。これらのポリアセタールの分子量は、組成物から製造された成形品における物理的特性の最も望まれる組合せを有するこうした組成物に溶融ブレンドされるべき種々の成分原料の良好な混合の最適バランスを提供するために好ましい。しかし、より高い分子量平均またはより低い分子量平均を有するポリアセタールは、望まれる物理的特性および加工特性に応じて用いてもよい。ポリアセタールの分子量は、60オングストロームおよび1,000オングストロームの公称孔サイズを有するDuPont PSM二頂カラムキットを用いて160℃でm−クレゾール中でゲル透過クロマトグラフィーによって便利に測定できる。分子量は、ASTMD1238またはISO1133を用いてメルトフローを決定することにより測定することも可能である。
【0027】
ポリアセタール樹脂のメルトフローは、射出成形の目的のために好ましくは2〜70g/分、より好ましくは2〜50g/分、なおより好ましくは2〜40g/分の範囲内である。本明細書において記載された方法において用いるために適するポリアセタール樹脂は、E.I.du Pont de Nemours and Company(Wilmington,Delaware)から登録商標DELRIN(登録商標)で市販されている。
【0028】
ポリアセタール樹脂は、ポリアセタール組成物の全重量を基準にして、20重量%または約20重量%〜84.5重量%または約84.5重量%、好ましくは30重量%または約30重量%〜80重量%または約80重量%、より好ましくは35重量%または約35重量%〜75重量%または約75重量%で存在する。
【0029】
ii)鉱物充填剤
本明細書において記載された方法は、少なくとも1種の鉱物充填剤とポリアセタール組成物の他の成分原料とを同時に、すなわち、前もって被覆する工程なしで、混合することを含む。ポリアセタール組成物は鉱物充填剤の存在下で劣化して、溶融加工性を喪失するか、または十分に耐熱性である物品を製造するために不適になることが知られている。この理由で、本発明の方法は、高価な前処理を回避しつつ従来の加工条件およびコンパウンディング条件下でポリアセタール樹脂を分解させる鉱物充填剤を導入するために特に適する。
【0030】
鉱物充填剤の例には、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、遷移金属カチオン、ランタニドカチオン、アクチニドカチオンに基づく充填剤、アルミナ、シリカおよびカオリン粘土が挙げられる。好ましくは、少なくとも1種の鉱物充填剤は、水酸化マグネシウムなどのマグネシウムカチオンに基づく充填剤、炭酸カルシウムなどのカルシウムカチオンに基づく充填剤、例えば酸化亜鉛などの亜鉛カチオンに基づく充填剤、例えば二酸化チタンおよびチタネートなどのチタニウムカチオンに基づく充填剤、酸化ランタニドなどのランタニドカチオンに基づく充填剤、硫酸バリウムなどのバリウムカチオンに基づく充填剤、アルミナ、シリカおよびカオリン粘土から選択される。
【0031】
本明細書において記載された方法によって製造されたポリアセタール組成物は、組成物中で用いられる鉱物充填剤が重金属に基づく鉱物充填剤にようにX線不透過性である時に特に有用である場合がある。こうした鉱物充填剤は、X線照射によって組成物の検出を容易にする。重金属の例には、ランタニド、亜鉛およびバリウムが挙げられる。好ましくは、少なくとも1種の鉱物充填剤は、酸化ランタニド、バリウム塩、亜鉛塩またはこれらの混合物である。バリウム塩の例には、限定せずに、硫酸バリウム、六臭化バリウム、亜クロム酸バリウム、フルオ没食子酸バリウム、トリ−オルトリン酸バリウム、メタケイ酸バリウム、チタン酸バリウムおよびジルコン酸バリウムが挙げられる。より好ましくは、少なくとも1種の鉱物充填剤は、硫酸バリウム、酸化亜鉛および/またはこれらの混合物であり、なおより好ましくは硫酸バリウムである。
【0032】
少なくとも1種の鉱物充填剤は、ポリアセタール組成物の全重量を基準にして、15重量%または約15重量%〜80重量%または約80重量%、好ましくは、15重量%または約15重量%〜60重量%または約60重量%、より好ましくは、20重量%または約20重量%〜50重量%または約50重量%の量でポリアセタール樹脂に添加される。
【0033】
iii)脂肪酸エステル、脂肪酸アミドおよびこれらの混合物
本明細書において記載された方法によって製造されたポリアセタール組成物は、少なくとも1種の脂肪酸エステル、脂肪酸アミドまたはこれらの混合物を含む。脂肪酸は、一般に、約2〜約80個の炭素原子を含むとともに末端メチル基および末端カルボキシル基を有するアルキル基の鎖を含む。脂肪酸は、飽和、不飽和または多−不飽和であってもよい。用いるために適する脂肪酸の例には、カプロン酸(C6)、カプリル酸(C8)、ペラルゴン酸(C9)、カプリン酸(C10)、ラウリン酸(C12)、ミリスチン酸(C14)、パルミチン酸(C16)、マルガリン酸(C17)、ステアリン酸(C18)、オレイン酸(C18)、アラキジン酸(C20)、ベヘン酸(C22)、リグノセリン酸(C24)、セロチン酸(C26)、モンタン酸(C28)およびメリシン酸(C30)が挙げられるが、それらに限定されない。不飽和脂肪酸エステルおよび脂肪酸アミドも用いてもよい。完全にエポキシド化されたまたは部分的にエポキシド化された不飽和脂肪酸エステルおよび脂肪酸アミドを用いてもよい。これらの方法において用いられる少なくとも1種の脂肪酸エステル、脂肪酸アミドおよびこれらの混合物は、好ましくは約10〜約40個の炭素原子、より好ましくは約10〜30個の炭素原子および末端エステル基または末端アミド基を含むアルキル基の鎖を含む。
【0034】
脂肪酸アミドは、単一アミド基、すなわち、モノアミド、または2個のアミド基、すなわち、ビスアミドのいずれかを有するあらゆる化合物を含み、脂肪酸アミドは、モノアミン、ジアミンまたはポリアミンであることが可能であるアミンと脂肪酸から誘導される。モノアミドは、カプリン酸アミド、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、アラキン酸アミド、ベヘン酸アミドまたはモンタイン酸アミド、ステアリルステアリン酸アミドまたはステアリルオレイン酸アミドを含んでよい。ビスアミドは、エチレンジアミン−ジステアリン酸アミド(エチレンビスステアリルアミド)、ヘキサメチレンジアミン−ジステアリン酸アミド、エチレンジアミン−ジオレイン酸アミドおよびエチレンジアミン−ジエルカ酸アミドなどのC1〜C6アルキレンジアミンを有する脂肪酸のビスアミドを含んでよい。
【0035】
脂肪酸エステルは、一価アルコール、多価アルコールまたはアルキレングリコールのポリマーであることが可能であるアルコールと脂肪酸から誘導される。好ましくは、少なくとも1種の脂肪酸エステルは、本明細書において記載された方法において用いられる。これらの方法において用いられる少なくとも1種の脂肪酸エステルは、多価アルコール、より好ましくはエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、エリトリトール、マニトール、ソルビトールまたはキシリトール、なおより好ましくは、グリセロールから誘導される。好ましくは、少なくとも1種の脂肪酸エステルは、モノラウレート、モノパルミテート、モノステアレート、モノベヘネート、モノモンタネート、モノオレェート、モノリノレート、ジラウレート、ジパルミテート、ジステアレート、ジベヘネート、ジモンタネート、ジオレェートおよび/またはジリノレートと多価アルコールから誘導され、より好ましくは、多価アルコールはグリセロールである。より好ましくは、1種以上の脂肪酸エステルは、グリセロールのモノステアレート、グリセロールのモノオレェートおよびそれらの混合物である。なおより好ましくは、1種以上の脂肪酸エステルはグリセロールのモノステアレート(モノステアリン酸グリセリンとしても知られている)である。
【0036】
1種以上の脂肪酸エステル、脂肪酸アミドおよびこれらの混合物は、少なくとも1種の鉱物充填剤の重量%を基準にして、0.5重量%または約0.5重量%〜6重量%または約6重量%、好ましくは1重量%または約1重量%〜6重量%または約6重量%、より好ましくは1または約1重量%〜5重量%または約5重量%の量でポリアセタール樹脂に添加される。
【0037】
他の成分
本発明の方法により製造されたポリアセタール組成物は、熱安定剤、充填剤、調節剤、酸化安定剤、潤滑剤、耐衝撃性改良剤、紫外[UV]線安定剤および強化剤などの1種以上の成分を場合により含んでよい。以下で記載された安定剤、強化剤、調節剤および他の成分原料は、少なくとも1つの粒子寸法が1〜1000ナノメートルの範囲内であるいわゆるナノ材料の形態で含む当業者に公知の量および形態で組成物中に存在してもよい。
【0038】
熱安定剤
熱安定剤は、成形温度および押出温度などの高温で、本明細書において記載された方法によって製造された組成物を安定化するように作用する。好ましくは、1種以上の熱安定剤は、ポリマー鎖上の側基としてホルムアルデヒド反応性窒素基を有するポリマー、ヒドロキシ含有ポリマーまたはオリゴマー、ポリアミド、側基としてエポキシ基を有するポリマーおよびこれらの混合物である。
【0039】
ポリマー鎖上の側基としてホルムアルデヒド反応性窒素基を有するポリマー
ホルムアルデヒド反応性窒素基は、1個または好ましくは2個の水素原子に結合された窒素を含む、ポリマー鎖上の側基である。こうした側基を有するポリマーは、ホモポリマーまたはコポリマーであってもよく、好ましくは、5,000超、より好ましくは、10,000超の重量平均分子量を有する。ポリマー鎖上の側基としてホルムアルデヒド反応性窒素基を有するポリマー中のホルムアルデヒド反応性窒素基の数は、好ましくは、ホルムアルデヒド反応性基が直接的または間接的のいずれかで結合されている主鎖中の原子が、20個以下の鎖原子よって互いから離れている(すなわち、互いに接続されている)ような数である。好ましくは、これらの側基を有するポリマーは、ポリマーの主鎖中の各20炭素原子当たり少なくとも1個のホルムアルデヒド反応性窒素基を含む。より好ましくは、ホルムアルデヒド反応性窒素基対主鎖中の炭素原子の比は、1:2〜1:10、なおより好ましくは1:2〜1:5である。
【0040】
ホルムアルデヒド反応性窒素基は、ポリアクリルアミドおよびポリメタクリルアミドを形成するような、例えば、アクリルアミドおよびメタクリルアミドなどの適切な窒素含有モノマーを用いることによりポリマーに導入してもよい。これらの側基を有するポリマーは、好ましくは、アクリルアミドモノマーまたはメタクリルアミドモノマーのラジカル重合によって調製され、従って、アクリルアミドまたはメタクリルアミドから誘導された少なくとも75モル%の単位からなる。こうしたポリマーは、少なくとも90モル%、より好ましくは少なくとも95モル%、なおより好ましくは少なくとも99モル%の上述した単位からなる。
【0041】
ポリマー鎖上の側基としてホルムアルデヒド反応性窒素基を有するポリマーは、1種を上回るモノマーから重合される点でコポリマーであってもよい。コモノマーは、ホルムアルデヒド反応性窒素基を含んでよいか、または含まなくてもよい。従って、導入してもよい他のモノマーの例には、スチレン、エチレン、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、N−ビニルピロリドンおよびアクリロニトリルが挙げられる。コモノマーは、好ましくは、高分子安定剤グラム当たりのホルムアルデヒド反応性基のモル数を過度に最少化しないように添加されるべきである。さらに、コモノマーは、高分子安定剤グラム当たりのホルムアルデヒド反応性サイトの数を過度に最少化するべきでない。コポリマーである特定の好ましい安定剤には、ヒドロキシプロピルメタクリレートとアクリルアミド、メタクリルアミドまたはジメチルアミノエチルメタクリレートのコポリマーが挙げられる。
【0042】
ヒドロキシ含有ポリマーまたはオリゴマー
ヒドロキシ含有ポリマーおよびオリゴマーは、米国特許第4,766、168号明細書において記載されている。この特許明細書は参照により本明細書に援用される。用いられるヒドロキシ含有ポリマーおよびオリゴマーのヒドロキシ基は、ポリマー主鎖またはオリゴマー主鎖に直接的に結合されてもよいか、または側基上に存在してもよいか、もしくは両方であってもよい。好ましくは、ヒドロキシ含有ポリマーおよびオリゴマーは、ポリマー主鎖またはオリゴマー主鎖中の各20炭素原子当たり平均で少なくとも1個のヒドロキシ基および主鎖中の炭素原子当たり1個以下のヒドロキシ基を含む。適するヒドロキシ含有ポリマーまたはオリゴマーの例には、エチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)、ポリ(ビニルアルコール)、ビニルアルコール/メチルメタクリレートコポリマーおよびポリ(メタ)アクリレートのヒドロキシエステルが挙げられる。
【0043】
ポリアミド
熱安定剤としてのポリアミドは、好ましくは、例えば脂肪族ポリアミドであり、ポリアミド6およびポリアミド6,6、ならびにポリアミド6/6,12およびポリアミド6/6,6などのコポリアミドならびにポリアミド6,6/6,10/6などのターポリアミドを含むことが可能である。脂肪族ポリアミドは、好ましくは、約210℃未満の融点を有する。ポリアミドは、エチレン/メタクリル酸コポリマー、部分中和エチレン/メタクリル酸コポリマー(例えば、イオノマー)または熱可塑性ポリウレタンなどのキャリア樹脂に前もって分散させてもよい。
【0044】
側基としてエポキシ基を有するポリマー
熱安定剤として側基としてエポキシ基を有するポリマーは、好ましくはエチレンエポキシドコポリマーである。エチレンエポキシドコポリマーは、エポキシ基で官能化されているエチレンコポリマーである。本明細書において用いられる「官能化されている」は、基が有機官能基によりグラフトされる、および/または共重合されることを意味する。コポリマーを官能化するために用いられるエポキシドの例は、グリシジル(メタ)アクリレート(GMA)、アリルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテルおよびグリシジルイタコネートなどの炭素原子数4〜11の不飽和エポキシドであり、ここで、「(メタ)アクリレート」は、アルキルアクリレートおよび/またはアルキルメタクリレートを意味する。
【0045】
好ましくは、コポリマーを官能化するために用いられるエポキシドはグリシジル(メタ)アクリレートである。エチレン/グリシジル(メタ)アクリレートコポリマーは、炭素原子数1〜6のアルキル(メタ)アクリレートおよび炭素原子数1〜8のα−オレフィンの共重合単位をさらに含んでよい。代表的なアルキル(メタ)アクリレートには、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、またはこれらの2種以上の組合せが挙げられる。エチレンブチルアクリレートグリシジルメタクリレートターポリマー(EBAGMA)を形成するようなエチルアクリレートおよびブチルアクリレートは注目される。
【0046】
好ましくは、1種以上の熱安定剤は、ポリアクリルアミド、エチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)およびこれらの混合物から選択される。本明細書において記載された方法によって製造されたポリアセタール組成物中に含まれる時、1種以上の熱安定剤は、ポリアセタール組成物の全重量%を基準にして、好ましくは、0.005重量%または約0.005重量%〜4.00重量%または約4.00重量%の間、より好ましくは、0.05重量%または約0.05重量%〜1.50重量%または約1.50重量%の間、より好ましくは0.20〜約0.20重量%〜1.00重量%または約1.00重量%の量で存在する。
【0047】
酸化安定剤
本明細書において記載された方法によって製造されたポリアセタール組成物は、ヒンダードフェノール安定剤を含む1種以上の酸化安定剤(酸化防止剤)を場合により含んでよい。本明細書において記載された方法によって製造されたポリアセタール組成物中に含まれる時、1種以上の酸化安定剤は、ポリアセタール組成物の全重量を基準にして、好ましくは、0.05重量%または約0.05重量%〜1重量%または約1重量%の間の量で存在する。
【0048】
潤滑剤
本明細書において記載された方法によって製造されたポリアセタール組成物中で用いるために適する潤滑剤の例には、ジメチルポリシロキサンおよびそれらの誘導体などのシリコーン潤滑剤、アルキル酸アミド、N,N’−エチレンビスステアラミドなどのビス−脂肪酸アミド、非イオン界面活性剤潤滑剤、炭化水素ワックス、クロロ炭化水素、フッ化炭化水素、オキシ−脂肪酸、脂肪酸のより低級のアルコールエステルなどのエステル、およびポリグリコールおよびポリグリセロールなどの多価アルコールが挙げられる。本明細書において記載された方法によって製造されたポリアセタール組成物中に含まれる時、1種以上の潤滑剤は、ポリアセタール組成物の全重量を基準にして、好ましくは、0.1重量%または約0.1重量%〜5重量%または約5重量%の間、好ましくは、0.5重量%または約0.5重量%〜2重量%または約2重量%の間の量で存在する。
【0049】
耐衝撃性改良剤
本明細書において記載された方法によって製造されたポリアセタール組成物中で用いるために適する耐衝撃性改良剤の例には、熱可塑性ポリウレタン、ポリエステルポリエーテルエラストマーおよびコア−シェルアクリレートポリマーが挙げられる。これらのポリアセタール組成物中にそのように含まれる時、1種以上の耐衝撃性改良剤は、ポリアセタール組成物の全重量を基準にして、好ましくは、5または約5重量%〜40重量%または約40重量%の間、好ましくは、10重量%または約10重量%〜30重量%または約30重量%の間の量で存在する。
【0050】
紫外(UV)線安定剤
本明細書において記載された方法によって製造されたポリアセタール組成物中で用いるために適するUV線安定剤の例には、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)、カーボンブラック、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、芳香族ベンゾエート、シアノアクリレートおよびシュウ酸アニリドが挙げられる。本明細書において記載された方法によって製造されたポリアセタール組成物中に含まれる時、1種以上のUV線安定剤は、ポリアセタール組成物の全重量を基準にして、好ましくは、0.05重量%または約0.05重量%〜2重量%または約2重量%の間、好ましくは、0.1重量%または約0.1重量%〜1.5重量%または約1.5重量%の間の量で存在する。
【0051】
強化剤
本明細書において記載された方法によって製造されたポリアセタール組成物は、例えば、適するガラス繊維、ガラスフレーク、炭素繊維、タルク、ウォラストナイト、焼成粘土、アラミドおよびマイカなどの1種以上の強化剤を場合により含んでよい。これらのポリアセタール組成物中にそのように含まれる時、強化剤は、樹脂組成物の全重量を基準にして、1重量%または約1重量%〜60重量%または約60重量%、好ましくは、1重量%または約1重量%〜40または約40重量%、より好ましくは、1重量%または約1重量%〜35重量%または約35重量%の量で存在する。
【0052】
上で記載された他の成分を場合により含む他に、これらのポリアセタール組成物は、流動強化添加剤、帯電防止剤、着色剤、難燃剤、核剤、可塑剤、結晶促進剤およびポリマーコンパウンディング技術分野において公知の他の加工助剤などの他の任意の成分原料をさらに含んでよい。
【0053】
ポリアセタール組成物を成形する方法
本明細書において記載された方法は、成形されているポリアセタール組成物の製造も含む。これらの方法は、ポリアセタール組成物を得るためおよびその後ポリアセタール組成物を成形するために、上で記載された成分;
i)前記ポリアセタール組成物の全重量を基準にして20重量%または約20重量%〜84.5重量%または約84.5重量%のポリアセタール樹脂、
ii)前記ポリアセタール組成物の全重量を基準にして15重量%または約15重量%〜80重量%または約80重量%の少なくとも1種の鉱物充填剤および
iii)前記少なくとも1種の鉱物充填剤の重量を基準にして0.5重量%または約0.5重量%〜6重量%または約6重量%の、脂肪酸エステルおよび/または脂肪酸アミド
を混合する同じ工程を用いる。成形ポリアセタール組成物は、1種以上の上述した任意の成分をさらに含んでよい。
【0054】
本明細書において用いられる「成形」は、本明細書において記載された方法によって製造されたポリアセタール組成物を成形して物品をもたらす押出、射出成形、圧縮成形、ブロー成形、熱成形、回転成形および溶融キャスティングなどのあらゆる技術を意味する。
【0055】
成形品
ポリアセタール組成物は、電気/電子機器、自動車部品、精密機械部品、特に、ベアリング、ギア、カム、ローラー、滑り板、プーリー、レバー、ガイドなどの他の部品に接触して移動する機械部品中の構造部品および機能部品、ならびに摩耗ストリップ、ガードレールおよびコンベヤベルト部品などのコンベヤシステム部品に限定されないが、それらを含むいかなる成形品にも成形してもよい。
【0056】
本明細書において記載されたポリアセタール組成物から製造されたコンベヤベルト用の部品が本明細書において記載されている。好ましくは、コンベヤベルト用の部品は、少なくとも1種の鉱物充填剤がX線不透過性であり、硫酸バリウム、酸化ランタニド、酸化亜鉛およびこれらの混合物から選択されるポリアセタール組成物から製造される。これらのコンベヤベルト部品はX線検出可能であってもよい。
【0057】
さらに、本明細書において記載された方法によって製造されたポリアセタール組成物から製造された他のいかなる成形品もX線検出可能であってもよい。こうしたX線検出可能部品には、玩具および医療機器、特に外科用移植材料および外科用機器が挙げられる。こうした物品中にX線検出可能組成物を用いる主たる利点は、正確な位置を確認し除去を容易にするために移植または摂取後に身体中で物品を検出できることである。
【0058】
輸送された摂取されるべき材料の中のコンベヤベルト部品を検出する方法
本明細書において記載された方法によって製造されたポリアセタール組成物から製造された他の成形品は、摂取可能製品を輸送するために用いられるコンベヤシステムの部品を含む。これらの物品を用いることは、食品工業、栄養工業および医薬品工業において用いるために特に適する、輸送された製品中のコンベヤシステム部品を検出する方法を容易にする。特に、こうした成形品を用いることは、食料品、飲料、栄養食品、医薬品などのすべての種類を含む、輸送された摂取されるべき材料中のコンベヤシステム材料のX線検出の利点を提供する。こうしたコンベヤシステム材料は、断片が分離されて輸送された摂取可能物質になり得る破壊されたコンベヤベルトおよび他のコンベヤシステム部品のゆえに輸送される物質を汚染する場合がある。従って、コンベヤベルトシステムを製造するために本明細書において記載された方法によって製造されたポリアセタール組成物を用いることは、X線照射食品中のコンベヤベルト部品の検出を容易にする。
【0059】
コンベヤシステムによって輸送された摂取可能製品中のコンベヤシステム材料の存在を検出する方法であって、
a)ポリアセタール組成物を含む少なくとも1個のコンベヤシステム部品を製造する工程であって、
前記ポリアセタール組成物が、
i)ポリアセタール組成物の全重量を基準にして20重量%または約20重量%〜84.5重量%または約84.5重量%のポリアセタール樹脂と、
ii)前記ポリアセタール組成物の全重量を基準にして15重量%または約15重量%〜80重量%または約80重量%の少なくとも1種のX線不透過性鉱物充填剤と、
iii)前記少なくとも1種の鉱物充填剤の重量を基準にして0.5重量%または約0.5重量%〜6重量%または約6重量%の、脂肪酸エステル、脂肪酸アミドおよびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の成分と、
を混合する工程を含む方法によって製造され、
前記少なくとも1種の鉱物充填剤が前もって被覆されていないことを特徴とする、少なくとも1個のコンベヤシステム部品を製造する工程と、
b)工程a)によって製造された前記少なくとも1個のコンベヤシステム部品を含むコンベヤシステムによって前記摂取可能製品を輸送する工程と、
c)X線を前記摂取可能製品に照射する工程と、
d)X線不透過性鉱物充填剤の存在を検出する工程と
を含むコンベヤシステム材料の存在を検出する方法も本明細書において記載されている。
【実施例】
【0060】
これらの実施例は、本発明をさらに例示するが、本発明を限定しない。
【0061】
本発明により製造されたポリアセタール組成物および比較方法により製造された組成物を調製するために以下の材料を用いた。
【0062】
ポリアセタール樹脂コポリマー:商標Ultraform(登録商標)S2320でBASFにより供給されたポリアセタールコポリマー
【0063】
ポリアセタール樹脂ホモポリマー:約47,000の数平均分子量を有するとともに0.1重量%の酸化防止剤(エチレンビス(オキシエチレン)ビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルヒドロシアナメート))および0.875重量%のポリエチレングリコールを含む熱安定化(エチレンビニルアルコールコポリマー0.15重量%およびポリアクリルアミド0.625重量%)ポリアセタールホモポリマー
【0064】
熱安定剤:MAP1070としてNisson Gossiにより供給されたポリアクリルアミド
【0065】
鉱物充填剤:Blanc Fixe NとしてSolvay S.A.により供給された1.7マイクロメートルの平均粒度を有する硫酸バリウム
【0066】
脂肪酸エステル:商標Drewmulse(登録商標)200kでStepan Companyにより供給されたモノステアリン酸グリセリン
本発明によるポリアセタール組成物および比較組成物は表1に示されている。
【0067】
コンパウンディング方法
40mmBerstorf二軸スクリュー押出機内でコンパウンディングすることによりポリアセタール組成物を調製した。ポリアセタール樹脂ペレットを押出機の後方(バレル1)に添加し、鉱物および脂肪酸エステルをバレル5に側方供給した。バレル温度を組成物および押出機速度およびスクリューのrpmに応じて250℃以下の溶融温度をもたらす190〜200℃で設定した。押出機を出ると、組成物を冷却し、ペレット化した。
【0068】
比較コンパウンディング方法
a)第1の工程は、脂肪酸エステルにより鉱物充填剤を被覆することを含んでいた。硫酸バリウム(Blanc Fixe(登録商標)N)を4重量%のモノステアリン酸グリセリンで被覆した。60℃で30分にわたり機械的攪拌下でモノステアリン酸グリセリンを添加する前に、被覆を60℃で硫酸バリウムを加熱することにより行った。
【0069】
b)第2の工程は、ポリアセタール樹脂、被覆された鉱物および熱安定剤のコンパウンディングを含んでいた。高分子組成物を40mmBerstorf二軸スクリュー押出機内でコンパウンディングすることにより調製した。ポリアセタール樹脂ペレットを押出機械の後方(パレル1)に添加し、被覆された鉱物をバレル5に側方供給した。バレル温度は、組成物および押出機械速度およびスクリューのrpmに応じて250℃以下の溶融温度をもたらす190〜200℃で設定した。押出機を出ると、組成物を冷却し、ペレット化した。
【0070】
熱安定性の決定
組成物の熱安定性を220℃の温度で約30分にわたり組成物のペレットを加熱することにより決定した。加熱工程中に発生したホルムアルデヒドを窒素のストリームによって亜硫酸ナトリウム溶液を含有する滴定容器に取り除き、容器内でホルムアルデヒドを亜硫酸ナトリウムと反応させて水酸化ナトリウムを発生させた。発生した水酸化ナトリウムを塩酸で連続的に滴定して元のpHを維持した。用いられた酸の全体積を時間の関数としてプロットした。30分で消費された酸の全体積は、加熱されたポリアセタール組成物によって発生したホルムアルデヒドに比例し、熱安定性の定量的な指標であった。%熱安定性(TFT−Tと呼ばれる)を式TFT−T(%)=(V30×N×3.003)/Sによって計算した。式中、
30=30分で消費された酸のmLにおける全体積
N=酸の規定度
3.003=(30.03(ホルムアルデヒドの分子量)×100%)/(1000mg/g)
S=グラムにおけるサンプル重量
結果を「TFT−T」の見出で表1において示す。
【0071】
機械的特性
機械的引張特性、すなわち、引張弾性率、破断点応力および破断点歪をISO527−1/2に準拠して測定した。ISO527に準拠して試験片厚さ2mmおよび幅4mmの射出成形ISO引張バーR60サンプル(溶融温度=210±5℃、型温度90〜120℃、保持圧力100MPa)で測定を行った。試験片を成形時乾燥状態(DAM)で測定した。
【0072】
本発明により製造されたポリアセタール組成物の作られた10個の試験片(E1〜E2)および現時点での最高技術水準により製造されたポリアセタール組成物の作られた10個の試験片(C1〜C2)に対して機械的特性を測定し、結果はそれらの平均である。「引張弾性率」、「破断点応力」および「破断点歪」の見出で結果を表1において示している。
【0073】
【表1】

【0074】
比較組成物C0、すなわち、脂肪酸エステルなしで鉱物充填剤を含むか、または脂肪酸エステルで前もって被覆されなかった鉱物充填剤を含むポリアセタール組成物は、コンパウンディング中に二軸スクリュー押出機内でひどく劣化したので、押出機を出ると、このポリアセタール組成物をペレット化することが可能ではなかった。従って、試験片を調製することが可能でなかったので、物理的特性および熱安定性をこの組成物に対して測定できなかった。
【0075】
ポリアセタール組成物の耐熱性を%熱安定性(TFT−T)により定量化した。表1に示した通り、本明細書において記載された方法、すなわち、すべての成分原料を同時に組み合わせる単一工程を含む方法によって製造されたポリアセタール組成物(E1〜E2)は、現時点での最高技術水準、すなわち、鉱物充填剤を脂肪酸エステルで被覆する第1の工程と被覆された鉱物充填剤とポリアセタール樹脂を組み合わせる第2の工程の2工程を含む方法により製造されたポリアセタール組成物(C1〜C2)に似たTFT−T値(E1)またはこうした2工程を含む方法により製造されたポリアセタール組成物より低い(E2)TFT−T値によって示された同等の熱安定性(E1)または改善された(E2)熱安定性を示した。
【0076】
評価することを目指して、引張特性、すなわち、引張弾性率、破断点応力および歪を本明細書において記載された方法によるポリアセタール組成物(E1〜E2)および当該技術分野における従来法によって製造されたポリアセタール組成物(C1〜C2)に対して測定した。機械的引張特性のより高い値は、より良好な機械的特性を意味する。表1は、本明細書において記載された方法により製造されたポリアセタール組成物(E1〜E2)が、従来法によって製造されたポリアセタール組成物(C1〜C2)と同等の機械的引張特性を示したことを示している。
【0077】
従来法により製造されたポリアセタール組成物と比較した場合、本明細書において記載された方法により製造されたポリアセタール組成物は、同等の熱安定性または改善された熱安定性、同等の機械的特性または改善された機械的特性を示し、そして前もって被覆する工程の除去のおかげで、より効率的に且つより安いコストで製造することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアセタール組成物を製造する方法であって、
i)前記ポリアセタール組成物の全重量を基準にして20重量%または約20重量%〜84.5重量%または約84.5重量%のポリアセタール樹脂と、
ii)前記ポリアセタール組成物の全重量を基準にして15重量%または約15重量%〜80重量%または約80重量%の少なくとも1種の鉱物充填剤と、
iii)前記少なくとも1種の鉱物充填剤の重量を基準にして0.5重量%または約0.5重量%〜6重量%または約6重量%の、脂肪酸エステル、脂肪酸アミドおよびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の成分と、
を混合する工程を含み、
前記少なくとも1種の鉱物充填剤が、前もって被覆されていないことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記選択される少なくとも1種の成分が1種以上の脂肪酸エステルである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記選択される少なくとも1種の成分がモノステアリン酸グリセリンを含む請求項1〜2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1種の鉱物充填剤が、硫酸バリウム、酸化ランタニド、酸化亜鉛またはこれらの混合物である請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1種の鉱物充填剤が硫酸バリウムである請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリアセタール組成物が、前記ポリアセタール組成物の全重量を基準にして0.005重量%または約0.005重量%〜4重量%または約4重量%の1種以上の熱安定剤をさらに含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記1種以上の熱安定剤が、ポリアクリルアミド、エチレンビニルアルコールコポリマーおよびそれらの混合物から選択される請求項6に記載の方法。
【請求項8】
成形ポリアセタール組成物を製造する方法であって、
a)i)前記ポリアセタール組成物の全重量を基準にして20重量%または約20重量%〜79.5重量%または約79.5重量%のポリアセタール樹脂と、
ii)前記ポリアセタール組成物の全重量を基準にして20重量%または約20重量%〜80重量%または約80重量%の少なくとも1種の鉱物充填剤と、
iii)前記少なくとも1種の鉱物充填剤の重量を基準にして0.5重量%または約0.5重量%〜5重量%または約5重量%の、脂肪酸エステル、脂肪酸アミドおよびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の成分と、
を混合してポリアセタール組成物を得る工程と、
b)a)の前記ポリアセタール組成物を成形する工程と
を含み、前記少なくとも1種の鉱物充填剤が前もって被覆されていないことを特徴とする方法。
【請求項9】
前記成形の工程b)が射出成形によって行われる請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記成形ポリアセタール組成物が、ベアリング、ギア、カム、ローラー、滑り板、プーリー、レバー、ガイドまたはコンベヤシステム部品である請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
ポリアセタール組成物を含むコンベヤベルト用の部品であって、
前記ポリアセタール組成物が、
i)ポリアセタール組成物の全重量を基準にして20重量%または約20重量%〜84.5重量%または約84.5重量%のポリアセタール樹脂と、
ii)前記ポリアセタール組成物の全重量を基準にして15重量%または約15重量%〜80重量%または約80重量%の、硫酸バリウム、酸化ランタニド、酸化亜鉛およびこれらの混合物からなる群から選択された少なくとも1種の鉱物充填剤と、
iii)前記少なくとも1種の鉱物充填剤の重量を基準にして0.5重量%または約0.5重量%〜6重量%または約6重量%の、脂肪酸エステル、脂肪酸アミドおよびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の成分と、
を混合する工程を含む方法によって製造され、
前記少なくとも1種の鉱物充填剤が、前もって被覆されていないことを特徴とする、コンベヤベルト用の部品。
【請求項12】
コンベヤシステムによって輸送された摂取可能製品中のコンベヤシステム材料を検出する方法であって、
a)ポリアセタール組成物を含む少なくとも1個のコンベヤシステム部品を製造する工程であって、
前記ポリアセタール組成物が、
i)ポリアセタール組成物の全重量を基準にして20重量%または約20重量%〜84.5重量%または約84.5重量%のポリアセタール樹脂と、
ii)前記ポリアセタール組成物の全重量を基準にして15重量%または約15重量%〜80重量%または約80重量%の少なくとも1種のX線不透過性鉱物充填剤と、
iii)前記少なくとも1種の鉱物充填剤の重量を基準にして0.5重量%または約0.5重量%〜6重量%または約6重量%の、脂肪酸エステル、脂肪酸アミドおよびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の成分と、
を混合する工程を含む方法によって製造され、前記少なくとも1種のX線不透過性鉱物充填剤が、前もって被覆されていないことを特徴とする、
少なくとも1個のコンベヤシステム部品を製造する工程と、
b)工程a)によって製造された前記少なくとも1個のコンベヤシステム部品を含むコンベヤシステムによって前記摂取可能製品を輸送する工程と、
c)X線を前記摂取可能製品に照射する工程と、
d)X線不透過性鉱物充填剤の存在を検出する工程と、
を含むコンベヤシステム材料を検出する方法。

【公表番号】特表2012−511085(P2012−511085A)
【公表日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539672(P2011−539672)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際出願番号】PCT/US2009/066483
【国際公開番号】WO2010/065687
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】