説明

耐熱断熱材、電磁調理器用断熱板、および電磁調理器用断熱構造

【課題】耐熱性を満足し、熱伝導率が低く優れた断熱作用を有し、しかも強度が強く、さらには所望の形状に容易に成型可能な耐熱断熱材を提供する。
【解決手段】本発明の耐熱断熱材は、全体100重量部に対し、アクリル樹脂16.18重量%、無機質充填材40〜50重量%、シリカ10〜20重量%、および水20〜30重量%を含むパテ状混合物(A)25〜60重量部と、アモルファスシリカ31〜33重量%、マイカ21〜23重量%、および水45〜47重量%を含むペースト状混合物(B)10〜65重量部と、無機中空体(C)16.7〜40重量部と、水(D)0〜10重量部とが攪拌混合された混合物が常温で硬化した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所望の形状に成型が可能で、熱に強く熱伝導率が低い耐熱断熱材に関する。
【背景技術】
【0002】
熱に強い硬化性組成物としては従来、例えば、特開2005−206632号公報(特許文献1)や特開2005−290243号公報(特許文献2)に記載のごときものが知られている。しかしながら特許文献1および特許文献2に記載の硬化性組成物は、強度が小さく、荷重が作用すると変形し、甚だしくは破断してしまう。また、熱伝導率に改善の余地があった。
【0003】
熱伝導率が低い壁材料であって、無機化合物の主材を樹脂バインダーで接合して板状に成型した高温耐熱の断熱材として特開2007−302855号公報(特許文献3)に記載のごときものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−206632号公報
【特許文献2】特開2005−290243号公報
【特許文献3】特開2007−302855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献3のような断熱材にあっては、強度に改善の余地があった。また流動性および成型し易さについては不明である。
【0006】
本発明は、上述の実情に鑑み、耐熱性を満足し、熱伝導率が低く優れた断熱作用を有し、しかも強度が強く、さらには所望の形状に容易に成型可能な耐熱断熱材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的のため本発明による耐熱断熱材は、全体100重量部に対し、アクリル樹脂16.18重量%、無機質充填材40〜50重量%、シリカ10〜20重量%、および水20〜30重量%を含むパテ状混合物25〜60重量部と、アモルファスシリカ31〜33重量%、マイカ21〜23重量%、および水45〜47重量%を含むペースト状混合物10〜65重量部と、無機中空体16.7〜40重量部と、水0〜10重量部とが攪拌混合された混合物が常温で硬化したものである。
【0008】
かかる本発明によれば、耐熱性を満足し、熱伝導率が低く優れた断熱作用を有し、しかも強度が強く、さらには所望の形状に容易に成型可能な耐熱断熱材が得られる。なお常温とは大気温をいい、おおむね5〜35℃程度であると理解されたい。
【0009】
パテ状混合物とペースト状混合物との比率(重量部)は特に限定されないが、パテ状混合物がペースト状混合物よりも多すぎると曲げ強度が小さくなる。反対に少なすぎると、混合物が硬化するまでに長時間を要し、脱枠が困難になったり、表面にむらが発生して外観が悪くなる。そこで、好ましい実施形態として、混合物は、ペースト状混合物をパテ状混合物の1〜2倍含む。これにより、耐熱断熱材の強度を確保しつつ、硬化した耐熱断熱材を容易に脱枠することができる。
【0010】
無機中空体とパテ状混合物との比率(重量部)は特に限定されないが、無機中空体がペースト状混合物よりも多すぎると混合物の流動性が悪くなって成型が困難になる。また外観が悪くなる。反対に少なすぎると、断熱性能が損なわれ、硬化の際に収縮して出来上がり寸法精度が悪くなる。そこで、好ましい実施形態として、混合物は、無機中空体を前記パテ状混合物の半分以下含む。
【0011】
水を添加しない場合に耐熱断熱材の強度が大きくなるが、流動性が悪かったり、外観が悪かったりする場合がある。水を添加すると混合物の流動性が良くなって成型が容易になる。また外観が良くなるが、硬化に長時間を要し、強度が小さくなる。そこで好ましい実施形態として、水0〜1.5重量部含む。かかる範囲であれば、強度低下が問題とならない。より好ましい実施形態として、水1.3〜1.5重量部含むことにより、曲げ強度を確保しつつ外観が改善する。
【0012】
本発明の耐熱断熱材は250℃までの温度に長時間十分耐えることができ、数十分間程度であれば600℃までの温度にも耐えることができる。しかしながら約320℃近辺で加熱されると、異臭が発生する。そこで好ましい実施形態として、常温で硬化した後、310℃以上の温度で熱処理される。かかる実施形態によれば、熱処理によって異臭の原因が取り除かれる。しかも曲げ強度は熱処理前と比較して大差ない。
【0013】
本発明の耐熱断熱材は、数十分間程度であれば600℃までの温度にも耐えることができるが、約470℃近辺で加熱されると、異臭が発生する。そこで好ましい実施形態として、常温で硬化した後、450℃以上の温度で熱処理される。かかる実施形態によれば、熱処理によって異臭の原因が取り除かれる。
【0014】
本発明の耐熱断熱材は磁気を適度に透過することから、電磁誘導加熱装置の分野で用いることができる。本発明の電磁調理器用断熱板は、電磁調理器のトッププレートと、トッププレート上で電磁誘導加熱される被加熱物体との間に置かれる断熱板であって、板状に成型された本発明の耐熱断熱材を断熱部として有する。かかる実施形態によれば、電磁調理器の内部が高温になることを防止することができ、被加熱物体の加熱効率を向上させることができる。
【0015】
あるいは本発明による耐熱断熱材は、全体100重量部に対し、アクリル樹脂16.18重量%、無機質充填材40〜50重量%、シリカ10〜20重量%、および水20〜30重量%を含むパテ状混合物35.7〜47.6重量部と、アモルファスシリカ31〜33重量%、マイカ21〜23重量%、および水45〜47重量%を含むペースト状混合物21.4〜36.4重量部と、無機中空体14.3〜19重量部と、水4.8〜28.6重量部とが攪拌混合された混合物が55℃〜65℃の雰囲気温度で硬化したものである。
【0016】
かかる本発明によれば、耐熱性を満足し、熱伝導率が低く優れた断熱作用を有し、しかも強度が強く、さらには所望の形状に容易に成型可能な耐熱断熱材が得られる。
【0017】
本発明の耐熱断熱材は磁気を適度に透過することから、電磁誘導加熱装置の分野で用いることができる。本発明の電磁調理器用断熱構造は、電磁調理器のトッププレート下面に設けられ、板状に成型された本発明の耐熱断熱材を断熱部として有するかかる実施形態によれば、電磁調理器の内部が高温になることを防止することができ、被加熱物体の加熱効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
このように本発明の耐熱断熱材は、耐熱性を満足し、熱伝導率が低く優れた断熱作用を有し、しかも強度が強く、さらには所望の形状に容易に成型可能である。また本発明の電磁調理器用断熱板は、電磁誘導加熱する際、トッププレートを熱から保護することができる。そして被加熱物体を効率よく加熱することができる。また本発明の電磁調理器用断熱構造は、電磁調理器の内部が高温になることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態になる耐熱断熱材を示す拡大断面図である。
【図2】断熱試験の結果を示すグラフである。
【図3】断熱試験の結果を示すグラフである。
【図4】本発明の他の実施例になる電磁調理器用断熱板を示す平面図である。
【図5】本発明のさらに他の実施例になる電磁調理器用断熱板を示す断面図である。
【図6】本発明のさらに他の実施例になる電磁調理器用断熱構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。本実施形態の耐熱断熱材は、有機化合物である熱可塑性樹脂ないし熱硬化性樹脂と、無機化合物である無機中空体を含む。樹脂は金属よりも熱伝導率が低く、無機中空体は気泡を含むことから熱伝導率が低く、これにより本実施形態の耐熱断熱材は断熱性能に優れる。
【0021】
熱可塑性樹脂は例えば、アクリル樹脂(PMMA)、ポリアミド(PA)、ポイブチレンテレフタレート(PBT)、フッ素樹脂(PTFE)・ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリサルホン(PSU)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリスルホン(PSF)、液晶ポリマー(LCP)、あるいはこれらの混合物である。
【0022】
熱硬化性樹脂は例えば、シリコーン樹脂(SI)、変性シリコーン樹脂(MS)、フェノール樹脂(PF)、メラミン樹脂(MF)、ユリア樹脂(UF)、エポキシ樹脂(EP)、不飽和ポリエステル樹脂(UP)、あるいはこれらの混合物である。
【0023】
無機中空体は、多孔質の固体粒子であり、気泡を含み軽量である。また無機化合物であることから、不燃性であり熱に強い。無機中空体の一例として、パーライト、シラスバルーン、ガラスバルーン、フィライト、あるいはこれらの混合物である。無機中空体の粒子寸法は特に限定されない。ただし無機中空体の粒子寸法が大きすぎると耐熱断熱材がもろくなり、曲げ強度が低下する。また後述する中間状態の混合物において流動性が悪化し、成型が困難になる。そこで粒子寸法の上限値として、呼び寸法(JIS Z 8801)2.00[mm]のふるいを通過することが好ましい。あるいは無機中空体の粒子寸法が小さすぎると気泡が小さくなってしまい、低い熱伝導率を確保できないと考えられる。そこで粒子寸法の上限値として、呼び寸法(JIS Z 8801)300[μm]のふるいを通過しないことが好ましい。
【0024】
本実施形態の耐熱断熱材は、以下の手順で作製される。まず出発材料として、流体の熱可塑性樹脂ないし熱硬化性樹脂を含む流体混合物を用意する。流体混合物は水よりも粘性が高く、ある程度自立して形状を保持することができるパテ状ないしペースト状の混合物である。水のように粘性度が低いと、折角攪拌混合して作製した混合物が分離してしまうためである。
【0025】
また出発材料として、多数の固体粒子である無機中空体を用意する。また必要に応じて粘度を調整するための水を用意する。
【0026】
次に流体混合物と、多数の固体粒子である無機中空体を攪拌混合して、中間状態である不定形の混合物を作製する。必要であれば水も攪拌混合する。次に、かかる中間状態の混合物を所望の形状に成型し所定の条件で硬化させる。硬化は例えば、必要量の硬化剤も攪拌混合してもよく、化学反応や乾燥により常温で硬化させる。これにより、任意の形状の耐熱断熱材が完成する。
【0027】
好ましい実施形態について以下に説明する。
【0028】
出発材料は、アクリル樹脂を含み、またシリカ( SiO2 )を含み、また体積を得るための無機質充填材、例えばマイカ(雲母)、を含む。好ましい実施形態では、出発材料を、パテ状混合物(A)およびペースト状混合物(B)の2液型とし、これに無機中空体(C)を加えて攪拌混合する3種混合型とする。さらに必要に応じて水も加えて攪拌混合する4種混合型とする。
【0029】
パテ状混合物(A)は、アクリル樹脂16.18重量%、無機質充填材40〜50重量%、シリカ10〜20重量%、および水20〜30重量%を含む。パテ状混合物(A)は常温で大気中に放置されると硬化して水に不溶である。このため隙間充填剤として用いることができる。詳しくは試験体1として後述するが、パテ状混合物(A)のみからなる硬化体は耐熱性を有し、1100℃まで加熱されても燃えたり変質したりしない。そこでパテ状混合物(A)は、無機中空体(C)の固体粒子同士を接着し、硬化して耐熱断熱材としての形状を保持する。
【0030】
ペースト状混合物(B)は、アモルファスシリカ31〜33重量%、マイカ21〜23重量%、および水45〜47重量%を含み、物体同士を接着する接着剤として用いることができる。ペースト状混合物(B)は常温で大気中に放置されると硬化する。詳しくは試験体3として後述するが、薄く延ばされない塊状のペースト状混合物(B)では乾燥硬化に膨大な時間を要する。このように、ペースト状混合物(B)のみからなる硬化体は乾燥硬化に膨大な時間を要し実用的でないため、パテ状混合物(A)と混合され、パテ状混合物(A)に更なる接着性を付与する。そして硬化した耐熱断熱材に、更なる曲げ強度を付与する。
【0031】
パテ状混合物(A)に対しペースト状混合物(B)が相対的に多いと、硬化が遅くなる。あるいはパテ状混合物(A)に対しペースト状混合物(B)が相対的に少ないと、耐熱断熱材の強度が弱くなる。そこでペースト状混合物(B)は、多すぎず少なすぎず適正な範囲で添加されなければならない。
【0032】
なお好ましい実施形態におけるパテ状混合物およびペースト状混合物とは、単に成分を区別するために便宜上に名付けたものであって、どちらか一方が残る他方よりも粘性度が大きいことを意図するものではなく、同じ粘性度であってもよいというよう理解されたい。
【0033】
無機中空体(C)の例として、安価で容易に入手可能で、粒子寸法のばらつきが少なく、粒子形状が球形に近い発泡体である発泡パーライト(Expanded Perlite)を用いる。無機中空体(C)が多いほど、耐熱断熱材内部に多数の気泡を形成することができることから、耐熱断熱材の断熱性能が向上する。また硬化の際の収縮を抑え、出来上がりの寸法精度が良くなる。しかしながら、上述したパテ状混合物(A)が相対的に不足してしまい、耐熱断熱材の表面にむらが生じたり、耐熱断熱材の曲げ強度が低下したりする。これに対し無機中空体(C)が少ないほど、耐熱断熱材内部の気泡が少なくなり、断熱性能が低下する。またパテ状混合物(A)およびペースト状混合物(B)が相対的に多くなり、硬化の際に収縮して、出来上がりの寸法精度が悪くなる。このため、無機中空体(C)は後述するように、適正な範囲で添加されなければならない。無機中空体(C)の重量部に対し相対関係にあるパテ状混合物(A)の重量部も同様に、適正な範囲で添加されなければならない。具体的には、パテ状混合物(A)を無機中空体(C)の1.5倍以上かつ3倍以下の重量部加えるのが好ましい。より好ましくは、重量部で無機中空体(C)の1.8倍以上かつ2.2倍以下のパテ状混合物(A)を加える。さらに好ましくは無機中空体(C)の略2倍のパテ状混合物(A)を加える。
【0034】
水(D)を加えなくてもよいが、水(D)を任意で加えることにより、耐熱断熱材の中間状態である(A)+(B)+(C)+(D)混合物の流動性が良くなって成型が容易になる。ただし多量の水を添加すると、硬化が遅くなり、耐熱断熱材の曲げ強度が低下するため、適正な範囲で添加されなければならない。
【0035】
そこでパテ状混合物(A)、ペースト状混合物(B)、無機中空体(C)、および水(D)の適正な範囲を、後述する試験に基づき定めた。すなわち、出発材料の配合比は、全体100重量部に対し、パテ状混合物(A)25〜60重量部と、ペースト状混合物(B)10〜65重量部と、無機中空体(C)16.7〜40重量部と、水(D)0〜10重量部である。
【0036】
ここで付言すると、好ましい水の添加量は0〜5重量部であり、より好ましい水の添加量は0〜1.5重量部であり、一層好ましい水の添加量は1.3〜1.5重量部である。また好ましい水(D)の添加量はペースト状混合物(B)の0%以上4%以下の範囲である。
【0037】
上述した(A)〜(C)の3種ないし(A)〜(D)の4種の出発材料を、均一になるまで攪拌混合し、中間状態の混合物を調製する。次に、中間状態の混合物を乾燥硬化させる。これにより耐熱断熱材が完成する。図1は好ましい実施形態の耐熱断熱材を示す拡大断面図である。多数の無機中空体(C)を含む耐熱断熱材は、独立した多数の気泡Cvを有することがわかる。
【0038】
上述した好ましい実施形態に係る実施例および比較例につき、以下に説明する。パテ状混合物(A)としてセメダイン株式会社製の商品名:耐火パテ、を使用した。ペースト状混合物(B)としてグランデックス株式会社製の商品名:FJ523無機接着剤(平面接着タイプ)を使用した。無機中空体(C)として昭和化学工業社製の商品名:B−03を使用した。水(D)として清浄な水道水を使用した。表1、表2に示すように、各種の粉体材料および液体材料を攪拌混合して複数の試験体を作製した。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
そして、<E1>流動性試験、<E2>外観試験、<E3>曲げ強度試験、<E4>耐熱試験、<E5>断熱試験、<E6>耐水性試験を行った。
【0042】
まず<E1>流動性試験において、(A)(B)(C)あるいは(A)(B)(C)(D)を均一になるまで十分に攪拌混合した直後の未だ乾燥硬化していない中間状態の混合物(以下、中間混合物という)につき、混合物の流動性を目視で確認し、粘度が小さすぎず大きすぎず流動性の良い試験体を○と評価し、粘度が小さすぎたり大きすぎたり分離したりする試験体を×と評価した。
【0043】
次に各試験体の混合物を型枠に流し込み、特に注釈がある場合を除き原則として常温(15℃〜35℃)で大気中に2日間放置し乾燥硬化させた後脱型し、厚さ0.5cm、直径9cmの円板形状の硬化体(以下、試験体または耐熱断熱材ともいう)を作製した。かかる最終状態の硬化体につき、次の<E2>外観試験において、外観を目視で確認し、外観の良い試験体を○と評価し、僅かなひび割れが認められる外観の略良い試験体を△と評価し、顕著なひび割れ、波打ちムラ、反り、脱型不良など外観の悪い試験体を×と評価した。
【0044】
また<E3>曲げ強度試験において、硬化した円板形状の試験体につき、直径方向に離隔した両縁部を把持して曲げ応力を与え、強度を測定した。把持面積はそれぞれ縦1cm横1cmずつである。1.0kgに耐える曲げ強度を有する試験体を○と評価し、屈曲による塑性変形、亀裂ないし破断した試験体を×と評価した。
【0045】
さらに、幾つかの試験体につき、<E4>耐熱試験、<E5>断熱試験、および<E6>耐水性試験を行った。
【0046】
<E4>耐熱試験において、電磁誘導加熱器上に発熱体を載置し、これら電磁誘導加熱器と発熱体との間に硬化した円板形状の試験体を介挿する。そして、発熱体を加熱して、200℃で10分間保持した。次に、発熱体をさらに加熱して、400℃で10分間保持した。次に、発熱体をさらに加熱して、600℃で10分間保持した。このように段階的に加熱する場合における試験体の外観を観察した。また必要に応じて加熱後につき曲げ強度を確認した。そして加熱前と加熱後を比較して、外観および曲げ強度がほとんど損なわれていない試験体を○と評価し、外観または曲げ強度が少し損なわれた試験体を△と評価し、外観および曲げ強度が大きく損なわれた試験体を×と評価した。
【0047】
<E5>断熱試験において、上述した段階的に加熱する場合における試験体上面の加熱側温度(発熱体の温度)と、試験体下面の非加熱側温度を測定した。この試験により、両面の温度が一定に達したとき下面温度が上面温度との差が60%以下の試験体を断熱性が良いとして○と評価し、60%を越える試験体を断熱性が悪いとして×と評価した。例えば加熱側温度が200℃で一定のとき、非加熱側温度が120℃で一定であれば断熱試験○である。
【0048】
<E6>耐水性試験において、硬化した円板形状の試験体を水中に3日間浸漬した後、外観を目視で確認し、外観に変化の生じなかった試験体を○と評価し、試験体からの成分の溶出が認められた試験体を△と評価し、ひび割れが生じた試験体を×と評価した。
【0049】
試験体1はパテ状混合物(A)単体が硬化したものであり、全体100重量部に対し、パテ状混合物(A)を100重量部含む。試験結果は、<E1>流動性試験×、<E2>外観試験×、<E3>曲げ強度試験×であった。なお、<E4>耐熱試験については行っていないが、商品に添付された取り扱い説明書によれば、常温で乾燥硬化したものと、常温で乾燥硬化後1100℃まで熱処理したものを比較しても性状・物性に変化がないという。
【0050】
試験体2は無機中空体(C)の粒子間をパテ状混合物(A)のみで結合したものであり、全体100重量部に対し、パテ状混合物(A)を83.3重量部と、無機中空体(C)を16.7重量部含む。試験結果は、<E1>流動性試験×、<E2>外観試験×、<E3>曲げ強度試験×であった。
【0051】
試験体3は、全体100重量部に対し、ペースト状混合物(B)を84.1重量部、無機中空体(C)15.9重量部含む。試験結果は、<E1>流動性試験○、<E2>外観試験○、<E3>曲げ強度試験○、ペースト状混合物(B)は有機化合物を含まず無機化合物のみの混合物であり、無機中空体(C)は不燃性の無機物であることから250〜260℃の耐熱性を有すると思われる。なお試験体3は、乾燥硬化に2日間よりも長い時間を要した。
【0052】
試験体4は、全体100重量部に対し、パテ状混合物(A)33.3重量部、ペースト状混合物(B)50重量部、無機中空体(C)16.7重量部含む。試験結果は、<E1>流動性試験○、<E2>外観試験○、<E3>曲げ強度試験○、<E4>耐熱試験○であった。また図2のグラフで示されるように、<E5>断熱試験○、<E6>耐水性試験△であった。
【0053】
試験体5〜試験体7では、常温ではなく、型枠に充填された中間混合物を高温(60℃)で養生して急激に乾燥硬化させた。そして試験体5から試験体7に向かってパテ状混合物(A)を減らしつつペースト状混合物(B)を増やした。
【0054】
試験体5は、全体100重量部に対し、パテ状混合物(A)25重量部、ペースト状混合物(B)58.3重量部、無機中空体(C)16.7重量部含む。試験結果は、<E1>流動性試験○、<E2>外観試験△であった。
【0055】
試験体6は、全体100重量部に対し、パテ状混合物(A)16.7重量部、ペースト状混合物(B)66.7重量部、無機中空体(C)16.7重量部含む。試験結果は、<E1>流動性試験○、<E2>外観試験×であった。
【0056】
試験体7は、全体100重量部に対し、パテ状混合物(A)8.3重量部、ペースト状混合物(B)75重量部、無機中空体(C)16.7重量部含む。試験結果は、<E1>流動性試験○、<E2>外観試験×であった。
【0057】
試験体5〜試験体7の試験結果より、パテ状混合物(A)に対するペースト状混合物(B)の割合を、2.3倍未満にするとよいと思われる。
【0058】
試験体8〜試験体10では、原則どおり常温で養生して乾燥硬化させた。そして試験体8から試験体10に向かってパテ状混合物(A)を減らしつつペースト状混合物(B)を増やした。
【0059】
試験体8は、全体100重量部に対し、パテ状混合物(A)25重量部、ペースト状混合物(B)58.3重量部、無機中空体(C)16重量部含む。試験結果は、<E1>流動性試験○、<E2>外観試験△であった。
【0060】
試験体9は、全体100重量部に対し、パテ状混合物(A)16.7重量部、ペースト状混合物(B)66.7重量部、無機中空体(C)16.7重量部含む。試験結果は、<E1>流動性試験○、<E2>外観試験×であった。
【0061】
試験体10は、全体100重量部に対し、パテ状混合物(A)8.3重量部、ペースト状混合物(B)75重量部、無機中空体(C)16.7重量部含む。試験結果は、<E1>流動性試験○、<E2>外観試験×であった。
【0062】
試験体8〜試験体10の試験結果より、パテ状混合物(A)に対するペースト状混合物(B)の割合を、2.3倍未満にするとよいと思われる。
【0063】
試験体11から試験体12に向かってパテ状混合物(A)を減らしつつ水(D)を増やした。
【0064】
試験体11は、全体100重量部に対し、パテ状混合物(A)36.1重量部、ペースト状混合物(B)36.1重量部、無機中空体(C)18.1重量部、水(D)9.6重量部含む。試験結果は、<E1>流動性試験○、<E2>外観試験○、<E3>曲げ強度試験△であった。
【0065】
試験体12は、全体100重量部に対し、パテ状混合物(A)27.3重量部、ペースト状混合物(B)31.8重量部、無機中空体(C)18.2重量部、水(D)22.7重量部含む。試験結果は、無機中空体(C)であるパーライトが分離したため<E1>流動性試験×、<E2>外観試験○であった。
【0066】
試験体11および試験体12の試験結果より、水(D)10重量部以下にするとよいと思われる。水(D)10重量部以下を添加することにより、流動性が改善することがわかった。また曲げ強度は若干落ちるが、曲げ強度の大きな部材と組み合わせることによりこの問題は克服される。
【0067】
試験体13は、試験体8よりもパテ状混合物(A)を増やしつつペースト状混合物(B)を減らした。試験体13は、全体100重量部に対し、パテ状混合物(A)38.9重量部、ペースト状混合物(B)44.4重量部、無機中空体(C)16.7重量部含む。試験結果は、<E1>流動性試験○、側面ひびわれが大きく<E2>外観試験×、<E3>曲げ強度試験○であった。
【0068】
試験体14は、全体100重量部に対し、パテ状混合物(A)33.3重量部、ペースト状混合物(B)44.4重量部、無機中空体(C)22.2重量部含む。試験結果は、<E1>流動性試験○、側面ひびわれが小さく<E2>外観試験△、<E3>曲げ強度試験○であった。
【0069】
試験体13および試験体14の試験結果より、無機中空体(C)を22重量部以上添加することにより、無機中空体(C)16重量部以下の試験体よりも側面ひびわれを目立たなくすることがわかった。
【0070】
試験体15は、全体100重量部に対し、パテ状混合物(A)35.3重量部、ペースト状混合物(B)47.1重量部、無機中空体(C)17.6重量部含む。試験結果は、<E1>流動性試験○、<E2>外観試験△、<E3>曲げ強度試験○であった。
【0071】
試験体16は、全体100重量部に対し、パテ状混合物(A)37.5重量部、ペースト状混合物(B)43.8重量部、無機中空体(C)18.8重量部含む。試験結果は、<E1>流動性試験○、<E2>外観試験△、<E3>曲げ強度試験○であった。
【0072】
試験体17は、全体100重量部に対し、パテ状混合物(A)40重量部、ペースト状混合物(B)40重量部、無機中空体(C)20重量部含む。試験結果は、<E1>流動性試験○、<E2>外観試験△、<E3>曲げ強度試験○であった。
【0073】
試験体18は、全体100重量部に対し、パテ状混合物(A)39.7重量部、ペースト状混合物(B)39.7重量部、無機中空体(C)19.9重量部、水(D)0.7重量部含む。試験結果は、<E1>流動性試験○、<E2>外観試験△、<E3>曲げ強度試験○であった。
【0074】
試験体19は、全体100重量部に対し、パテ状混合物(A)39.5重量部、ペースト状混合物(B)39.5重量部、無機中空体(C)19.7重量部、水(D)1.3重量部含む。試験結果は、<E1>流動性試験○、<E2>外観試験○、<E3>曲げ強度試験○、<E4>耐熱試験○、<E5>断熱試験○であった。
【0075】
試験体20は、全体100重量部に対し、パテ状混合物(A)35.3重量部、ペースト状混合物(B)35.3重量部、無機中空体(C)17.6重量部、水(D)11.8重量部含む。試験結果は、<E1>流動性試験○、<E2>外観試験×であった。また<E6>耐水性試験×であった。
【0076】
試験体21は、全体100重量部に対し、パテ状混合物(A)39.4重量部、ペースト状混合物(B)39.4重量部、無機中空体(C)19.7重量部、水(D)1.5重量部含む。試験結果は、<E1>流動性試験○、<E2>外観試験○、<E3>曲げ強度試験○、<E4>耐熱試験○であった。また図3のグラフで示されるように、<E5>断熱試験○であった。また<E6>耐水性試験○であった。
【0077】
試験体11〜試験体21の試験結果より、水(D)の適正な範囲が0〜10重量部であることがわかった。大きな曲げ強度を得るために水(D)は少ない程好ましく、0重量部がより好ましいが、特に試験体19および試験体21で水(D)1.3〜1.5重量部を添加すると曲げ強度を確保しつつ外観が改善することがわかった。
【0078】
試験体21から試験体23に向かって、ペースト状混合物(B)を減らしつつ無機中空体(C)を増やした。また水も適宜増やした。
【0079】
試験体22は、全体100重量部に対し、パテ状混合物(A)36.7重量部、ペースト状混合物(B)36.7重量部、無機中空体(C)22.9重量部、水(D)3.7重量部含む。試験結果は、<E1>流動性試験×、<E2>外観試験○、<E3>曲げ強度試験○であった。
【0080】
試験体23は、全体100重量部に対し、パテ状混合物(A)39.2重量部、ペースト状混合物(B)29.4重量部、無機中空体(C)29.4重量部、水(D)2.0重量部含む。試験結果は、<E1>流動性試験×、<E2>外観試験×であった。これは、(A)(B)(C)(D)の攪拌混合が困難であり、無機中空体(C)(パーライト)が分離するためである。
【0081】
試験体21〜試験体23の試験結果より、無機中空体(D)を、パテ状混合物(A)の半分以下となるよう添加するのが理想的であることがわかった。
【0082】
流動性試験のための試験体24は試験体2よりもパテ状混合物を減らしつつ無機中空体(C)を増やした。試験体24は、無機中空体(C)の粒子間をパテ状混合物(A)のみで結合したものであり、全体100重量部に対し、パテ状混合物(A)を66.7重量部と、無機中空体(C)を33.3重量部含む。試験結果は、<E1>流動性試験×であった。試験体24の(A)(C)混合物は、ぼそぼそしておりもろかった。
【0083】
試験体25は、全体100重量部に対し、パテ状混合物(A)を含まず、ペースト状混合物(B)65重量部、無機中空体(C)32.5重量部、水(D)2.4重量部含む。試験結果は、<E1>流動性試験×、<E2>外観試験×、<E3>曲げ強度試験×であった。試験体25の外観は湿った砂のようであり、ほとんど強度がなかった。
【0084】
試験体26は試験体25よりもペースト状混合物(B)を減らしつつ無機中空体(C)を減らしつつ水(D)を増やした。試験体26は、全体100重量部に対し、パテ状混合物(A)を含まず、ペースト状混合物(B)63.1重量部、無機中空体(C)31.5重量部、水(D)5.4重量部含む。試験結果は、<E1>流動性試験×、<E2>外観試験×であった。試験体26は乾燥硬化に2日間よりも長い時間を要した。外観は表面に波打ちむらが生じた。
【0085】
試験体24〜試験体26の試験結果より、無機中空体(D)を、パテ状混合物(A)およびペースト状混合物(B)の合計の半分とするだけでは不十分であることがわかった。そして、試験体4〜試験体26の試験結果より、パテ状混合物(A)をペースト状混合物(B)と略同じか少なく添加するのがよいことがわかった。つまり、ペースト状混合物(B)をパテ状混合物(A)の1〜2倍含むのがよいことがわかった。
【0086】
試験体27は試験体17よりもパテ状混合物(A)を減らしつつペースト状混合物(B)を増やした。試験体27から試験体30に向かっても同様に増減した。
【0087】
試験体27は、全体100重量部に対し、パテ状混合物(A)35重量部、ペースト状混合物(B)45重量部、無機中空体(C)20重量部含む。試験結果は、<E1>流動性試験○、<E2>外観試験△、<E3>曲げ強度試験○であった。
【0088】
試験体28は、全体100重量部に対し、パテ状混合物(A)30重量部、ペースト状混合物(B)50重量部、無機中空体(C)20重量部含む。試験結果は、<E1>流動性試験○、<E2>外観試験△、<E3>曲げ強度試験○であった。
【0089】
試験体29は、全体100重量部に対し、パテ状混合物(A)25重量部、ペースト状混合物(B)55重量部、無機中空体(C)20重量部含む。試験結果は、<E1>流動性試験○、<E2>外観試験×、<E3>曲げ強度試験○であった。ただし、乾燥硬化した耐熱断熱材が型枠に固着してしまい、脱枠が困難であった。
【0090】
試験体30は、全体100重量部に対し、パテ状混合物(A)20重量部、ペースト状混合物(B)60重量部、無機中空体(C)20重量部含む。試験結果は、<E1>流動性試験○、<E2>外観試験×、<E3>曲げ強度試験○であった。ただし、乾燥硬化した耐熱断熱材が型枠に固着してしまい、脱枠が困難であった。
【0091】
試験体27〜試験体30の試験結果より、パテ状混合物(A)がペースト状混合物(B)に対して少なすぎると脱枠が困難になる。そこで、ペースト状混合物(B)をパテ状混合物(A)の1〜2倍添加することが理想的であることがわかった。
【0092】
試験体31では水(D)を増やし流動性および外観を確認した。試験体31は、全体100重量部に対し、パテ状混合物(A)36.4重量部、ペースト状混合物(B)36.4重量部、無機中空体(C)18.2重量部、水(D)9.1重量部含む。試験結果は、<E1>流動性試験○、<E2>外観試験×であった。ただし、試験体31は乾燥硬化に2日間よりも長い時間を要した。また、耐熱断熱材の上部と下部を比較して下部の方がパーライト(無機中空体(C))が多く、分離ぎみあった。水の添加量は少ない方がいいと思われる。
【0093】
試験体32ではパテ状混合物(A)を増やし流動性および外観を確認した。試験体32は、全体100重量部に対し、パテ状混合物(A)49.3重量部、ペースト状混合物(B)29.6重量部、無機中空体(C)19.7重量部、水(D)1.5重量部含む。試験結果は、<E1>流動性試験△、<E2>外観試験○であった。ただし、試験体32の中間混合物は試験体31の中間混合物よりも粘度が高かった。
【0094】
試験体33は、全体100重量部に対し、パテ状混合物(A)33.3重量部、ペースト状混合物(B)50重量部、無機中空体(C)16.7重量部含む。試験結果は、<E1>流動性試験○、<E2>外観試験○、<E3>曲げ強度試験○、<E4>耐熱試験○、<E5>断熱試験○であった。
【0095】
試験体34は、全体100重量部に対し、パテ状混合物(A)39.3重量部、ペースト状混合物(B)39.3重量部、無機中空体(C)19.9重量部、水(D)1.5重量部含む。試験結果は、<E1>流動性試験○、<E2>外観試験○、<E3>曲げ強度試験○、<E4>耐熱試験○、<E5>断熱試験○であった。
【0096】
本実施例の試験体は約320℃の高温に達すると異臭を発生する。そこで以下の加熱処理および実験をさらに行い、物性を追加確認した。
【0097】
試験体33および試験体34の耐熱断熱材を310℃〜330℃の炉内で異臭がなくなるまで熱処理した。この熱処理は約1時間であった。この後、各試験を行った、試験結果は、試験体33が、<E2>外観試験○、<E3>曲げ強度試験○、<E4>耐熱試験○、<E5>断熱試験○であった。試験体34が、<E2>外観試験○、<E3>曲げ強度試験○、<E4>耐熱試験○、<E5>断熱試験○であった。熱処理された試験体33および試験体34によれば、熱処理されない試験体よりも、異臭の発生を防止することができる。
【0098】
310℃〜330℃で熱処理された試験体33および試験体34の耐熱断熱材は、450℃までの温度条件で使用される場合において異臭は発生しないが、470℃近辺の高温に達すると異臭を発生する。そこで以下の加熱処理および実験をさらに行い、物性を追加確認した。
【0099】
試験体33および試験体34の耐熱断熱材を450℃〜490℃の炉内で異臭がなくなるまで熱処理した。この熱処理は約1時間であった。この後、各試験を行った、試験結果は、試験体33が、<E2>外観試験○、<E3>曲げ強度試験×、<E4>耐熱試験○、<E5>断熱試験○であった。試験体34が、<E2>外観試験○、<E3>曲げ強度試験×、<E4>耐熱試験○、<E5>断熱試験○であった。熱処理された試験体33および試験体34によれば、熱処理されない試験体よりも、異臭の発生を防止することができる。
【0100】
試験体35は、全体100重量部に対し、パテ状混合物(A)60重量部、ペースト状混合物(B)30重量部、無機中空体(C)10重量部含む。試験結果は、<E1>流動性試験○、<E2>外観試験○、<E3>曲げ強度試験×であった。試験体35の試験結果より、パテ状混合物(A)がペースト状混合物(B)に対して多いと曲げ強度が低下することがわかった。
【0101】
試験体36は、全体100重量部に対し、パテ状混合物(A)60重量部、ペースト状混合物(B)10重量部、無機中空体(C)30重量部含む。試験結果は、<E1>流動性試験×、<E2>外観試験×であった。
【0102】
試験体37は、全体100重量部に対し、パテ状混合物(A)50重量部、ペースト状混合物(B)20重量部、無機中空体(C)30重量部含む。試験結果は、<E1>流動性試験×、<E2>外観試験×であった。
【0103】
試験体35〜試験体37の試験結果より、パテ状混合物(A)がペースト状混合物(B)に対して更に多すぎると、流動性が良くなく、外観も良くないことがわかった。
【0104】
試験体38は、全体100重量部に対し、パテ状混合物(A)20重量部、ペースト状混合物(B)70重量部、無機中空体(C)10重量部含む。試験結果は、<E1>流動性試験○、ひびわれが発生したため<E2>外観試験△であった。試験体38は、前述した試験体30と同様、乾燥硬化した耐熱断熱材が型枠に固着してしまい、脱枠が困難であった。
【0105】
試験体39および試験体40ではパーライト(無機中空体(C))添加量を少なくした。
【0106】
試験体39は、全体100重量部に対し、パテ状混合物(A)45重量部、ペースト状混合物(B)50重量部、無機中空体(C)5重量部含む。試験結果は、<E1>流動性試験○、ひびわれが発生したため<E2>外観試験△であった。
【0107】
試験体40は、全体100重量部に対し、パテ状混合物(A)40重量部、ペースト状混合物(B)50重量部、無機中空体(C)10重量部含む。試験結果は、<E1>流動性試験○、ひびわれが発生したため<E2>外観試験△であった。
【0108】
試験体35、試験体38、試験体39、および試験体40ではパーライト(無機中空体(C))が少なすぎて断熱性能が悪かった。また外観は良かったものの、出来上がった耐熱断熱材を定規で測定してみたところ硬化の際に収縮して、出来上がりの寸法精度が悪くなることがわかった。これはパテ状混合物(A)およびペースト状混合物(B)が相対的に多くなったからと考えられる。これに対し無機中空体(C)16,7重量部を含む試験体5〜試験体10では断熱性能が悪くなかったとから、無機中空体(C)の下限値は15重量部、好ましくは20重量部であることがわかった。
【0109】
試験体41は、全体100重量部に対し、パテ状混合物(A)30重量部、ペースト状混合物(B)40重量部、無機中空体(C)30重量部含む。試験結果は、<E1>流動性試験○、<E2>外観試験×であった。
【0110】
試験体42は、全体100重量部に対し、パテ状混合物(A)25重量部、ペースト状混合物(B)35重量部、無機中空体(C)40重量部含む。試験結果は、<E1>流動性試験×、<E2>外観試験×であった。
【0111】
試験体41および試験体42によれば、無機中空体(C)が多くなるほど、流動性が低くなった。このことから、無機中空体(C)の上限値は40重量部、好ましくは30重量部であることがわかった。
【0112】
試験体43から試験体46では、水(D)の配合比を変化させたものであり、攪拌混合した中間混合物を55℃〜65℃の雰囲気温度で乾燥硬化させて耐熱断熱材を作製した。
【0113】
試験体43は試験体31と同一の配合比であり、全体100重量部に対し、パテ状混合物(A)36.4重量部、ペースト状混合物(B)36.4重量部、無機中空体(C)18.2重量部、水(D)9.1重量部含む。試験結果は、<E1>流動性試験△、<E2>外観試験○、<E3>曲げ強度試験○であった。
【0114】
試験体44は、全体100重量部に対し、パテ状混合物(A)47.6重量部、ペースト状混合物(B)28.6重量部、無機中空体(C)19重量部、水(D)4.8重量部含む。試験結果は、<E1>流動性試験△、<E2>外観試験○、<E3>曲げ強度試験○であった。
【0115】
試験体45は、全体100重量部に対し、パテ状混合物(A)41.7重量部、ペースト状混合物(B)25重量部、無機中空体(C)16.7重量部含む。試験結果は、<E1>流動性試験○、<E2>外観試験○、<E3>曲げ強度試験○であった。
【0116】
試験体46は、全体100重量部に対し、パテ状混合物(A)35.7重量部、ペースト状混合物(B)21.4重量部、無機中空体(C)14.3重量部、水(D)28.6重量部含む。試験結果は、<E1>流動性試験○、<E2>外観試験○、<E3>曲げ強度試験○であった。
【0117】
試験体43〜試験体46の試験結果より、水(D)を4.8重量部以上含む場合であっても、55℃〜65℃で乾燥硬化させることにより、外観が向上することがわかった。なお、試験体43〜試験体46の曲げ強度は、水を全く含まないか水を4.8重量部未満含む耐熱断熱材よりもやや小さい。そこで、強度を有する部材に貼り合わせて利用するなどして、曲げ強度を担保するとよい。
【0118】
本実施例の耐火断熱材は耐火性能、断熱性能、および強度が大きいことから、工場で板材製品にされて、建物の壁材や、天井材や、床材として利用することができる。
【0119】
また、予め施工現場で出発材料を用意し、施工現場で出発材料を攪拌混合して中間混合物を製造し、中間混合物を建物の壁、天井、床などの施工対象箇所に塗工することにより、施工現場の形状および用途に合った耐火断熱材を製造することができる。
【0120】
また、耐火断熱材は、鉄分を含まず、磁気を適度に透過させることから、いわゆる家庭用のIHクッキングヒーターに代表される、電磁誘導加熱装置(以下、電磁調理器という)の分野において好適に用いられる。そして、以下に述べるような優れた効果を発揮する。
【0121】
1例として、トッププレートの下側に耐熱断熱材からなる層が形成される。これにより、トッププレートの上面に置かれて電磁誘導加熱される鍋などの被加熱物からトッププレート下方に配置されたコイルへ熱が伝導することを抑制することが可能となり、コイルを熱から保護することができる。
【0122】
他の実施例として耐火断熱材は、板材に形成され、被加熱物とトッププレート上面との間に敷かれる電磁調理器用断熱板として利用される。図4に示すように電磁調理器用断熱板は耐熱断熱材を断熱部11として有することから、被加熱物からトッププレートへ熱が伝導することを抑制することが可能となり、トッププレートを熱から保護することができる。また被加熱物を冷め難くして、電磁誘導加熱装置の加熱効率を向上させることができる。
【0123】
さらに他の実施例として、図5に示すように電磁調理器用断熱板の上面に鉄板などの発熱部12を取り付ける。電磁調理器用断熱板の下面には、断熱部11が配置される。かかる例によれば電磁調理器用断熱板を焼肉プレートとして利用することができる。
【0124】
また電磁誘導加熱装置は、コイルなどを含む装置内部を高温から防止するための保護回路を備え、センサー検出温度が上昇して所定温度に達すると、コイルへの通電を自動的に遮断して電磁誘導加熱を自動停止する。また自動停止中にセンサー検出温度が下降して所定温度に達すると、コイルへの通電を自動的に再開して電磁誘導加熱を自動的に開始する。かかるコイル回路の遮断器の自動開閉は、スイッチングという。頻繁なスイッチングは電磁調理装置に悪影響を与える。
【0125】
本実施例の電磁調理器用断熱板によれば、被加熱物からトッププレートへの熱移動を抑制することから、センサー検出温度が上昇して所定温度に達することを好適に防止して、電磁誘導加熱装置のスイッチングが生じない。
【0126】
さらに他の実施例として、図6に示すように電磁調理器のトッププレート13の下面に断熱部11を設ける。乾燥硬化前の混合物は、ガラス部材に対する貼着力を有するため、混合物を適切な厚みでトッププレート13に塗布し、その後乾燥硬化させて、耐熱断熱材からなる断熱部11付きのトッププレート13を製造するとよい、かかる例によれば電磁調理器用断熱構造を提供し得て、トッププレート13上に載置された鍋などの発熱体からの熱伝導がトッププレート13側で遮断される。したがって電磁調理器の内部のコイルおよび電子回路を高熱から保護することができる。
【0127】
また、本実施例の耐火断熱材は、工夫次第で様々な用途に用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0128】
この発明になる耐熱断熱材は、建築施工、建材、および電磁調理器において有利に利用される。
【符号の説明】
【0129】
11 断熱部、12 発熱部、13 トッププレート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体100重量部に対し、
アクリル樹脂16.18重量%、無機質充填材40〜50重量%、シリカ10〜20重量%、および水20〜30重量%を含むパテ状混合物25〜60重量部と、
アモルファスシリカ31〜33重量%、マイカ21〜23重量%、および水45〜47重量%を含むペースト状混合物10〜65重量部と、
無機中空体16.7〜40重量部と、
水0〜10重量部とが攪拌混合された混合物が常温で硬化した、耐熱断熱材。
【請求項2】
前記混合物は、前記ペースト状混合物を前記パテ状混合物の1〜2倍含む、請求項1に記載の耐熱断熱材。
【請求項3】
前記混合物は、前記無機中空体を前記パテ状混合物の半分以下含む、請求項1または2に記載の耐熱断熱材。
【請求項4】
前記混合物は、前記水0〜1.5重量部含む、請求項1〜3のいずれかに記載の耐熱断熱材。
【請求項5】
前記常温で硬化した後、310℃以上の温度で熱処理された、請求項1〜4のいずれかに記載の耐熱断熱材。
【請求項6】
前記常温で硬化した後、450℃以上の温度で熱処理された、請求項1〜5のいずれかに記載の耐熱断熱材。
【請求項7】
電磁調理器のトッププレートと、前記トッププレート上で電磁誘導加熱される被加熱物体との間に置かれる断熱板であって、
板状に成型された請求項1〜6のいずれかに記載の耐熱断熱材を断熱部として有する、電磁調理器用断熱板。
【請求項8】
全体100重量部に対し、
アクリル樹脂16.18重量%、無機質充填材40〜50重量%、シリカ10〜20重量%、および水20〜30重量%を含むパテ状混合物35.7〜47.6重量部と、
アモルファスシリカ31〜33重量%、マイカ21〜23重量%、および水45〜47重量%を含むペースト状混合物21.4〜36.4重量部と、
無機中空体14.3〜19重量部と、
水4.8〜28.6重量部とが攪拌混合された混合物が55℃〜65℃の雰囲気温度で硬化した、耐熱断熱材。
【請求項9】
電磁調理器のトッププレート下面に設けられ、板状に成型された請求項1〜6、8のいずれかに記載の耐熱断熱材を断熱部として有する、電磁調理器用断熱構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−177461(P2012−177461A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41915(P2011−41915)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(509008053)サンライズ産業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】