説明

耐熱樹脂組成物及びこれを用いたアルミニウム基材

【課題】 耐熱性、耐薬品性および耐溶剤性に優れ、且つアルミニウム基材に対して密着性を向上させるための表面処理を行わずに優れた密着性を有する塗膜を形成するポリアミドイミド系の耐熱性樹脂組成物およびこの組成物を用いたアルミニウム基材を提供する。
【解決手段】 数平均分子量が10,000〜50,000のポリアミドイミド樹脂100質量部にポリブタジエンを0.1〜10質量部、及びトリアジンチオール誘導体を0.01〜1質量部とを含む耐熱性樹脂組成物。エポキシ樹脂を更に含むと好ましい。アルミニウム基材上に、前記の耐熱性樹脂組成物を形成したアルミニウム基材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアルミニウム基材に優れた密着性を有する塗膜を形成する耐熱性樹脂組成物に関し、さらに詳しくはアルミニウム基材の絶縁皮膜、保護コートなどに好適な耐熱性樹脂組成物およびこの組成物を用いたアルミニウム基材に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミドイミド樹脂は、耐熱性、耐薬品性および耐溶剤性が優れているため、各種基材のコート剤としてエナメル線用ワニス、耐熱塗料などに広く使用されている。一方、自動車部品、食品関係の器具等には軽量で熱放散性に優れるアルミニウム基材が用いられる例が増大している。ポリアミドイミド樹脂系の耐熱塗料をアルミニウム基材に適用する場合、塗膜とアルミニウム基材の密着性に難があり、一般に密着性を向上させるためアルミニウム基材を物理的(研磨など)、化学的(酸、アルカリなどによるエッチング)な方法により表面処理し、基材表面に凸凹を形成させたり、あるいはリン酸塩処理やクロメート処理等を施し化成皮膜を形成させ塗装している。
また、トリアジンチオール誘導体を電解重合で表面処理したり(特許文献1参照)、ポリカーボネート樹脂やABS樹脂にエポキシ系、ポリスチレン系ゴム成分またはトリアジンチオール類を混合し射出成形して樹脂とアルミニウムの複合体を得ている(特許文献2参照)。
これらは、塗装工程の複雑化、コストアップ、廃材の処理に関する公害対策などの問題があり、アルミニウム基材の表面処理を省略化したいとのニーズが高まりつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−109363号公報
【特許文献2】特開平08−025409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、耐熱性、耐薬品性および耐溶剤性に優れ、且つアルミニウム基材に対して密着性を向上させるための表面処理を行わずに優れた密着性を有する塗膜を形成するポリアミドイミド系の耐熱性樹脂組成物およびこの組成物を用いたアルミニウム基材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、数平均分子量が10,000〜50,000のポリアミドイミド樹脂100質量部にポリブタジエンを0.1〜10質量部、及びトリアジンチオール誘導体を0.01〜1質量部とを含む耐熱性樹脂組成物に関する。
また、本発明の耐熱性樹脂組成物は、エポキシ樹脂を更に含むと好ましい。
さらに、本発明は、前記の耐熱性樹脂組成物を形成したアルミニウム基材に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明になる耐熱性樹脂組成物によれば、耐熱性、耐薬品性及び耐溶剤性に優れ、且つアルミニウム基材に表面処理を行わずに優れた密着性を有する塗膜が作製でき、各種の耐熱塗料用途に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、数平均分子量が10,000〜50,000のポリアミドイミド樹脂100質量部にポリブタジエンを0.1〜10質量部、及びトリアジンチオール誘導体を0.01〜1質量部とを含む耐熱性樹脂組成物である。以下に、本発明で用いる各成分について説明する。
本発明に用いられるポリアミドイミド樹脂は、一般式(I)で示される構造を有する。
【0008】
【化1】

(一般式(I)中、Rは、ポリイミド樹脂の製造に用いられるジアミンの残基である。なお、残基とは、原料成分から結合に供された官能基を除いた部分の構造をいう。nは、正の整数を示す。)
【0009】
本発明で用いるポリアミドイミド樹脂の製造法には、特に制限はないが、代表的な製造法としては、(1)ジイソシアネートと三塩基酸無水物を反応させる方法、(2)ジアミンと三塩基酸無水物を反応させる方法および(3)ジアミンと三塩基酸無水物クロライドを反応させる方法がある。
【0010】
代表的な材料としてはジイソシアネートとして、芳香族ジイソシアネートでは、トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′−ジフエニルエーテルジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、3,3′−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3′−ジメチル−4,4′−ジイソシアナトビフェニル、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート等が挙げられ、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソフオロンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート及びこれらの三量化物、上記した芳香族ジイソシアネートの三量化反応によって得られるイソシアヌレート環含有ポリイソシアネート、ポリフエニルメチルポリイソシアネート、例えばアニリンとフオルムアルデヒドとの縮合物をフオスゲン化したものなどを併用することができる。
ジアミンとして、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、3,3′−ジアミノジフェニルスルホン、キシリレンジアミン、フェニレンジアミン等が挙げられる。
三塩基酸無水物として、酸無水物基を有する3価以上のポリカルボン酸又はその誘導体が挙げられ、イソシアネート基又はアミノ基と反応する酸無水物基を有する3価以上のポリカルボン酸又はその誘導体であればよく、特に制限はないが、例えば、一般式(II)または一般式(III)
【0011】
【化2】

(一般式(II)、(III)中、Rは水素、アルキル基、フェニル基又はハロゲンを示し、Yは−CH2−、−CO−、−SO2−又は−O−を示す。)
で表される化合物を使用することができる。耐熱性、コスト面等を考慮すれば、トリメリット酸無水物が特に好ましい。
【0012】
三塩基酸無水物としてトリメリット酸無水物、三塩基酸無水物クロライドとして、トリメリット酸クロライドなどが挙げられ、三塩基酸として、トリメシン酸、トリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレートなどが挙げられる。
併用可能な材料としては、例えばジカルボン酸として、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、コハク酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等が挙げられ、テトラカルボン酸二無水物としてピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフエニル)エーテル二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、エチレングリコールビストリメリテート二無水物、2,2′−ビス(3,4−ジカルボキシフエニル)プロパン二無水物、2,2′,3,3′−ジフエニルテトラカルボン酸二無水物、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフエニル)スルホン二無水物等の芳香族四塩基酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、エチレンテトラカルボン酸、ビシクロ−〔2,2,2〕−オクト−(7)−エン−2:3、5:6−テトラカルボン酸等の脂肪族系および脂環族系四塩基酸などの四塩基酸二無水物が挙げられる。
【0013】
上記の合成条件は多様であり、一概に特定できないが、例えば最も代表的なジイソシアネートと三塩基酸無水物を反応させる方法については、特開平4−39323号公報などに例示されている。
また、ポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は、10,000〜50,000の範囲とされる。数平均分子量が10,000未満では、造膜性が低下し、50,000を超えると、最終的に得られる耐熱性樹脂組成物の粘度が高くなり塗装時の作業性が劣る。ポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は、樹脂合成時に樹脂をサンプリングしてゲルパーミエイションクロマトグラフ(GPC)などの分析機器を用いて測定し、目的の数平均分子量になるまで合成を継続することにより上記の範囲に管理される。
【0014】
本発明に用いられるポリブタジエンは天然ゴムなどが使用でき、ステアリン酸を0.01質量%添加すると反応性が増加する。
ポリブタジエンには、「1,4−繰り返し単位」又は「1,2−繰り返し単位」を有する化合物がある。ここで、ポリブタジエンにおける、「1,4−繰り返し単位」とは、下記化学式(1t)又は(1c)で表されるような繰り返し単位であり、「1,2−繰り返し単位」とは、下記化学式(1d)で表されるような繰り返し単位である。
【0015】
【化3】


また、これらのポリブタジエンは、両末端に水酸基を有するポリブタジエンジオール、両末端にカルボキシル基を有するポリブタジエンジカルボン酸等を用いることもできる。ポリアミドイミド樹脂との相溶性の観点からは、ポリブタジエンジオール又はポリブタジエンジカルボン酸が好ましい。
1,2−繰り返し単位を主に有するポリブタジエンジオールとしては、下記一般式(1)で表される化合物が例示され、具体的には、G−1000、G−2000,G−3000(日本曹達株式会社製、商品名)が挙げられる。また、1,2−繰り返し単位を主に有するポリブタジエンジカルボン酸としては、例えば、C−1000(日本曹達株式会社製、商品名)が挙げられる。
1,4−繰り返し単位を主に有するポリブタジエンジオールとしては、下記一般式(2)で表される化合物が例示され、具体的には、Poly bd R−45HT、Poly bd R−15HT(出光興産株式会社製、商品名)が挙げられる(1,4−繰り返し単位が全体の約80%)。
また、下記一般式(3)で表されるブタジエンとアクリロニトリルを共重合して得られるブタジエン−アクリロニトリル共重合体をポリブタジエン成分として用いても良い。
【0016】
【化4】


[一般式(1)中、n1は1〜60の整数を示す。]
【0017】
【化5】

[一般式(2)中、n2は1〜30の整数を示し、x及びyはそれぞれ独立に1以上の整数を示す。xとyの比(x/y)は、1/99〜25/75である。]
【0018】
【化6】

一般式(3)中、mは5〜50の整数を示し、a及びbはそれぞれ独立に1以上の整数を示す。aとbの比(a/b)は、95/5〜50/50であることが好ましい。
【0019】
本発明に用いるポリブタジエンの数平均分子量は、1,000〜5,000が好ましく、1,000〜3,000がより好ましい。
本発明で用いるポリブタジエンは、アルミニウム基材への優れた密着性の観点から、1,4−繰り返し単位を主に有するポリブタジエンがより好ましい。
【0020】
本発明で用いるトリアジンチオール誘導体としては、例えば、2,4,6−トリメルカプト−s−トリアジン、2−ジブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、2−アニリノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン等が挙げられる。これらの化合物の市販品としては、三協化成株式会社製の「ジスネットF」(商品名:2,4,6−トリメルカプト−s−トリアジン)、「ジスネットDB」(商品名:2−ジブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン)、「ジスネットAF」(商品名:2−アニリノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン)等が挙げられる。
トリアジンチオール誘導体の含有量は、接着性の観点から、ポリアミドイミド樹脂100質量部に対して0.01〜1質量部の範囲とされ、0.05〜0.08質量部が好ましい。0.01質量部未満では硬化性やポリアミドイミド樹脂とポリブタジエンが分離しやすくなり、1質量部を超えると溶液の粘度安定性が低下する。
【0021】
ポリブタジエンの使用量は、ポリアミドイミド樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部の範囲とされ、好ましくは1〜5質量部とされる。ポリブタジエンの使用量が0.1質量部未満では、柔軟性が得られず、塗膜の密着性、基材への追従性が低下し、10質量部を超えると耐熱性が劣る。
ポリブタジエンのポリアミドイミド樹脂への添加法について特に制限はないが、例えばポリブタジエンをポリアミドイミド樹脂の溶液に添加する方法や合成前に添加する方法がある。
本発明になる耐熱性樹脂組成物は、N−メチル−2−ピロリドン、N,N′−ジメチルホルムアミド等の極性溶媒、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、γ−ブチロラクトン等のケトン類などの溶媒で希釈され、適当な粘度に調整して用いられる。本発明になる耐熱性樹脂組成物は、アルミニウム系基材に塗布、硬化される。
【0022】
本発明では、上記の耐熱性樹脂組成物に更にエポキシ樹脂を含む耐熱性樹脂組成物とすることができる。
エポキシ樹脂としては、硬化可能な1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であれば特に制限はなく、電子部品用樹脂組成物に一般に使用されているエポキシ樹脂を用いることができる。たとえば、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂や、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、ナフタレンジオール、水添ビスフェノールA等とエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂をはじめとするフェノール類とアルデヒド類とを縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したノボラック型エポキシ樹脂、フタル酸、ダイマー酸等の多塩基酸とエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等のポリアミンとエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂などが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
エポキシ樹脂を用いる場合、その硬化剤としてエポキシ樹脂の硬化剤として一般に使用されているものを用いることができる。
たとえば、フェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、チオジフェノール、アミノフェノール、α−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のフェノール類とホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂、フェノール類とジメトキシパラキシレン又はビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるフェノール・アラルキル樹脂、ナフトール・アラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂、フェノールノボラック構造とフェノール・アラルキル構造がランダム、ブロック又は交互に繰り返された共重合型フェノール・アラルキル樹脂、パラキシリレン及び/又はメタキシリレン変性フェノール樹脂、メラミン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、シクロペンタジエン変性フェノール樹脂、多環芳香環変性フェノール樹脂などが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組合せて用いてもよい。
【0024】
エポキシ樹脂を用いる場合、硬化促進剤を含有してもよい。硬化促進剤としては、エポキシ樹脂に一般に使用されているもので特に制限はない。たとえば、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5、5,6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7等のシクロアミジン化合物などが挙げられ、これらの1種を単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0025】
エポキシ樹脂とポリアミドイミド樹脂の比率は、5/95〜90/10(質量部)であり、好ましくは10/90〜90/10(質量部)であり、さらに好ましくは10/90〜85/15(質量部)である。エポキシ樹脂とポリアミドイミド樹脂の比率がこの範囲以外だと耐熱性に劣る傾向がある。
【0026】
また、本発明の耐熱性樹脂組成物には、必要に応じて、染料、顔料、可塑剤、及び二酸化チタン、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の充填剤、消泡剤、安定剤、密着性付与剤、レベリング剤、カップリング剤(シラン、チタネート、アルミニウム、ジルコニュウム系など)、酸化防止剤、香料或いはイメージング剤などを含有させることができる。これらの成分は、耐熱性樹脂組成物中の含有量として、各々0.01〜20質量%程度含有させることが好ましい。また、上記の成分は、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
更に、本発明の耐熱性樹脂組成物は、必要に応じて、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の溶剤又はこれらの混合溶剤に溶解し、固形分30〜70質量%程度の溶液として塗布することができる。
【実施例】
【0028】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
(実施例1)
4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート257.5g(1.03モル)、無水トリメリット酸192.0g(1.00モル)およびN−メチル−2−ピロリドン660gを2リットルのフラスコに仕込み、撹拌しながら約3時間で温度を130℃に上昇し、この温度で6時間保温して数平均分子量20,000のポリアミドイミド樹脂溶液を得た。次に、得られたポリアミドイミド樹脂溶液100質量部(樹脂分濃度30質量%)にポリブタジエンジオール(Poly bd 、出光興産株式会社製)18g質量部、2,4,6−トリメルカプト−s−トリアジン(三協化成株式会社製)0.02g(0.05質量部)を配合し、耐熱性樹脂組成物を得た。
【0029】
(実施例2)
4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート257.5g(1.03モル)、無水トリメリット酸192.1g(1.00モル)、N−メチル−2−ピロリドン904gおよびポリブタジエンジオール(Poly bd 、出光興産株式会社製)40.0g質量部、を2リットルのフラスコに仕込み、撹拌しながら約2時間で温度を130℃に上昇し、この温度で6時間保温してポリアミドイミド樹脂溶液を得た。得られたポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は23,000であった。次に、得られたポリアミドイミド樹脂溶液100質量部(樹脂分濃度25質量%)に2,4,6−トリメルカプト−s−トリアジン(三協化成株式会社製)0.02g(0.05質量部)を配合し、耐熱性樹脂組成物を得た。
【0030】
(比較例1)
4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート257.5g(1.03モル)、無水トリメリット酸192.0g(1.00モル)およびN−メチル−2−ピロリドン660gを2リットルのフラスコに仕込み、撹拌しながら約3時間で温度を130℃に上昇し、この温度で4時間保温してポリアミドイミド樹脂溶液(ポリアミドイミド樹脂組成物)を得た。得られたポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は18,000であった。
【0031】
[試験例]
実施例1、2及び比較例1で得られた耐熱性樹脂組成物またはポリアミドイミド樹脂組成物を基材(アルミニウム板JIS H 4000、厚み1mm、未研摩)に塗布した後270℃で30分間焼付けて膜厚約13μmの塗膜板を作製し、初期の密着性を測定した。
(1)密着性は旧JIS K 5400に準じて測定した(%、クロスカット残率)。
(2)塗膜の追従性は、アルミニウム板を曲げていき、剥離又は割れる角度を測定した。
(3)機械的特性(引張り破断強度び破断伸び率の測定)耐熱性樹脂組成物またはポリアミドイミド樹脂組成物を200℃で30分加熱硬化し、膜厚が約20μm、幅10mm、長さが60mmの塗膜を形成した。得られた塗膜を、引張試験機を用いて、チャック間長さ20mm、引張速度5mm/分の条件で引張試験を行い、機械的特性を求めた。
(4)熱特性塗膜硬化条件:80℃のホットプレートで30分硬化させ、熱風箱型乾燥機中240℃で30分硬化させ、膜厚約35μmの塗膜を得た。5質量%質量減少温度をTG−DTA測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社)で空気気流下、10℃/minで昇温し、初期から5%質量減少した温度を測定した。それらの測定結果をまとめて表1に示した。
【0032】
【表1】

【0033】
表1から、実施例1、2で得られた耐熱性樹脂組成物から得られる塗膜は比較例1のポリアミドイミド樹脂溶液から得られる塗膜と比較して柔軟性が著しく優れていることが示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
数平均分子量が10,000〜50,000のポリアミドイミド樹脂100質量部にポリブタジエンを0.1〜10質量部、及びトリアジンチオール誘導体を0.01〜1質量部とを含む耐熱性樹脂組成物。
【請求項2】
エポキシ樹脂を更に含む請求項1に記載の耐熱性樹脂組成物。
【請求項3】
アルミニウム基材上に、請求項1又は2に記載の耐熱性樹脂組成物を形成したアルミニウム基材。

【公開番号】特開2012−241052(P2012−241052A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110278(P2011−110278)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】