説明

耐熱遮光フィルムとその製造方法、及びそれを用いた絞り又は光量調整装置

【課題】デジタルカメラやレンズシャッターなどのシャッター羽根、絞り羽根やプロジェクタの光量調整用絞り装置の絞り羽根などの光学機器部品として用いられ、遮光性、耐熱性、摺動性、低光沢性、導電性に優れた耐熱遮光フィルムとその製造方法を提供。
【解決手段】200℃以上の耐熱性を有する樹脂フィルム基材(A)と、その片面もしくは両面にスパッタリング法で形成された50nm以上の膜厚を有するN系金属膜(B)、及びチタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム、珪素、スズ、インジウム、ガリウム及びセリウムから選ばれた元素を含有する低反射性の酸化物膜(C)の積層膜とからなり、かつ積層膜の表面粗さが0.1〜0.7μmである耐熱遮光フィルムにより提供。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱遮光フィルムとその製造方法、及びそれを用いた絞り又は光量調整装置に関し、より詳しくは、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラの絞りやレンズシャッターなどのシャッター羽根または絞り羽根や、プロジェクタの絞りや光量調整装置(オートアイリスともいう)の絞り羽根などの光学機器部品として用いられ、遮光性、耐熱性、摺動性、低光沢性、導電性に優れた耐熱遮光フィルムとその製造方法、及びそれを用いた絞り又は光量調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、カメラ用のシャッター羽根や絞り羽根は、シャッタースピードが高速化し、極めて短時間に動作と停止を行うので、軽量化かつ高摺動性である必要がある。また、フィルムなどの感光材、CCDなどの撮像素子の前面を覆って光を遮るものなので、基本的に遮光性を必要とする。更に、光学機器用の羽根は、複数枚が互いに重なり合って動作するので滑らかな動作のために潤滑性が必要となる。また、各羽根間の漏れ光を防ぐために表面の反射率は低いことが望まれる。使用環境によっては、カメラ内部が高温となる場合があり、耐熱性が求められている。
一方、プレゼンテーション、ホームシアターなどの映像観賞用の投影装置である液晶プロジェクタの光量調整用絞り羽根として使用される遮光フィルムにおいても、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラと同様な特性が求められ、特に耐熱性に関しては、カメラ以上の特性が求められている。
【0003】
一般的に、上記遮光フィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのプラスチックフィルムやSUS、SK材、Al等の金属薄板を基材としたものが実用化されている。カメラのレンズシャッターにおいて、金属薄板の遮光フィルムをシャッター羽根、絞り羽根として用いる場合、羽根材を開閉する際に、金属板同士が擦れあって大きな騒音が発生する。また、液晶プロジェクタでは、映像が変化するときに光量調整用絞り装置の羽根を高速で移動させて各画像の輝度変化を和らげる必要があるが、金属薄板の遮光フィルムを絞り羽根に用いた場合、羽根同士が擦れの騒音を繰り返し発生する。また、この騒音を低減するためには羽根を低速で動作することになり、この場合、画像の変化に光量調整が追いつかず、画像が不安定となるという問題があった。
前記問題や軽量化の観点から、近年の遮光フィルムの構成は、金属薄板でなくプラスチックフィルムを基材に用いることが主流となってきている。更に、絶縁性のプラスチックフィルムを遮光羽根に用いると、静電気の帯電によるゴミ付着の問題が生じるため、プラスチック基材を用いた遮光フィルムには導電性も求められている。上記の事情から、遮光フィルムの必要特性は、高遮光性、耐熱性、低光沢性、摺動性、導電性、低発塵性であるとされている。このような遮光フィルムの特性を満足するために、従来からさまざまな材料、フィルム構造を用いたものが提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、遮光性、低光沢性、導電性の点からランプ光源等から発せられる光を吸収させるためにカーボンブラック、チタンブラック等の導電性黒色微粒子をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどの樹脂フィルムに含浸させ遮光性及び導電性を持たせ、更に遮光フィルムの片面または両面をマット処理し、低光沢性とした遮光フィルムが開示されている。
特許文献2では、樹脂フィルム表面上に、遮光性と導電性を有するカーボンブラックなどの黒色顔料や潤滑剤、艶消し剤を含有した熱硬化性樹脂層を塗布し、遮光性、導電性、潤滑性、低光沢性を付与した遮光フィルムが開示されている。
特許文献3では、アルミニウム合金などの金属製羽根材料の表面に硬質炭素膜を形成した遮光材が開示されている。
特許文献4では、遮光羽根の剛性を高めるためプラスチック基材の両面に炭素繊維を含有する熱硬化性樹脂のプリプレグシートで強化した遮光羽根の構造が開示されている。
【0005】
遮光フィルムは、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、液晶プロジェクタ等の光学機器用遮光羽材として広く使用されている。近年、液晶プロジェクタではリビングルームといった明るい環境下でも鮮やかなハイコントラストな映像が楽しめるように高画質化の要求が高まっている。したがって、画質の高輝度化によりランプ光源が高出力となるため、光量調整用の絞り装置内の温度が高くなる傾向にある。光量を調整する遮光フィルムへ高出力な光が照射されるため、遮光フィルムが加熱されて熱変形しやすい環境となっている。
【0006】
遮光フィルムの基材、例えばポリエチレンテレフタレートを基材とした遮光フィルムは、比重も軽いので広く使用されているが、ランプ光源が高出力となる場合、ポリエチレンテレフタレートは熱変形温度が低く、引張弾性率などの機械的強度が弱いため、走行中もしくは制動時に発生する振動や衝撃などで遮光羽根が歪んでしまう可能性がある。
また、遮光フィルムで低光沢性や摺動性を発揮させるためにサンドブラスト法によるマット処理が行われている。この処理は、更に、入射光を散乱させ表面の光沢性を低下させ、視認性を向上させる効果がある。上記処理により、遮光フィルムが接触しても遮光フィルム同士の接触面積が大きくならず摺動性の低下も防止できるものと考えられる。
【0007】
デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、液晶プロジェクタでは、遮光フィルムをシャッター羽根、絞り羽根等として必ず複数枚近接し、かつ重なり合って使用するようになってきているため、有機成分の遮光材、潤滑剤、艶消し剤を使用している遮光フィルムでは、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラや液晶プロジェクタが暴露される温度、湿度といった使用環境がより厳しくなっている。特に、液晶プロジェクタでは、上記したように、近年の画像の高輝度化に伴うランプ光源の高出力化により、装置(光量調整用装置、絞り装置)内の温度が200℃付近まで上昇するようになってきている。このような厳しい環境下で、上記のような従来の遮光フィルムを使用すると、変形したり、変色したりするなど、耐久性の面で好ましくなく、実用上問題があった。
さらに、遮光フィルムの200℃以上での高熱環境下での熱変形が大きくなると、遮光フィルム同士の接触により、高速の動作ができなくなるなど摺動性が劣化し、前記表面に微細な凹凸構造を有する低光沢性遮光フィルムであっても、このような遮光フィルム同士の接触によって擦れる度合いが多くなると低光沢性の劣化が起こるなどして、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、液晶プロジェクタ本来の機能が得られなくなってしまう可能性もあった。
【0008】
また、特許文献1では、低光沢性を発現させるためにサンドブラストによるマット処理で表面凹凸を形成した遮光フィルムが提案されている。しかし、サンドブラスト法では、フィルムの表面粗さはショット材の材質、粒度、吐出圧力等に依存し、粒径の大きいショット材は、水洗浄やブラッシング等の洗浄でフィルム表面から除去できるが、粒径が1μm未満と小さい粒子は洗浄後においてもフィルム表面上に残存してしまい、完全には除去しきれない。ショット材が残存すると、遮光フィルムが晒される高熱環境下では、ショット材と基材であるプラスチックフィルムとで熱膨張係数が異なるため、熱応力の差により、ショット材がフィルムから脱落してしまい、粉塵の発生源となってしまい、その周囲の光学部品に悪影響を及ぼしてしまうという問題も発生する。
【特許文献1】特開平1−120503号公報
【特許文献2】特開平4−9802号公報
【特許文献3】特開平2−116837号公報
【特許文献4】特開2000−75353号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、200℃以上の高温に晒される液晶プロジェクタの光量調整装置の絞り羽根や、組み込みの際に加熱工程が必要とされるカメラのシャッター装置のシャッター羽根として用いることができる、耐熱性に優れた遮光フィルム、また、導電性、低反射性(低光沢性)、軽量性を兼ね備えており、200℃以上の高温下で長時間使用しても、これらの特性が劣化せず、粉塵の発生や変形のない耐熱性遮光フィルム、更に、この耐熱性遮光フィルムを絞り羽根に用いた、軽量で駆動時の消費電力が低い光量調整用絞り装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上述した従来の技術の課題を解決するため、表面に微細な凹凸を有する耐熱性の樹脂フィルムを基材として用い、その上に必要によりガスバリア膜を形成してから、スパッタリング法で特定の厚さを有するNi系金属(B)の遮光膜を形成した後、このNi系金属膜上に、スパッタリング法でチタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム、珪素、スズ、インジウム、ガリウム及びセリウムからなる群より選ばれた1種類以上の元素を含有する低反射性の金属酸化物膜(C)を積層することで、200℃程度の高熱環境下でも変形せず、遮光性、低光沢性、摺動性、色味、低反射性が維持できる耐熱遮光フィルムが得られ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、液晶プロジェクタなどの絞りの部材として利用できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、200℃以上の耐熱性を有する樹脂フィルム基材(A)と、樹脂フィルム基材(A)の片面もしくは両面にスパッタリング法で形成された50nm以上の膜厚を有するNi系金属膜(B)、及びNi系金属膜(B)上にスパッタリング法で形成された、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム、珪素、スズ、インジウム、ガリウム及びセリウムからなる群より選ばれた1種類以上の元素を含有する低反射性の酸化物膜(C)の積層膜とからなり、かつ上記積層膜の表面粗さが0.1〜0.7μm(算術平均高さRa)であることを特徴とする耐熱遮光フィルムが提供される。
【0012】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、樹脂フィルム基材(A)が、ポリイミド、アラミド、ポリフェニレンサルファド、又はポリエーテルサルフォンから選ばれた1種類以上の有機樹脂で構成され、かつ表面粗さが0.2〜0.8μm(算術平均高さRa)であることを特徴とする耐熱遮光フィルムが提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、Ni系金属膜(B)が、ニッケルを主成分として、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム及び珪素からなる群より選ばれた1種類以上の添加元素を含有するニッケル系合金膜であることを特徴とする耐熱遮光フィルムが提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、Ni系金属膜(B)の膜厚が50〜250nmであり、また、前記酸化物膜(C)の膜厚が5〜240nmであることを特徴とする耐熱遮光フィルムが提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、前記積層膜の表面抵抗値が1×10Ω/□以下であることを特徴とする耐熱遮光フィルムが提供される。
さらに、本発明の第6の発明によれば、第1〜5の発明において、前記積層膜の光反射率が、波長380〜780nmにおいて5%以下であることを特徴とする耐熱遮光フィルムが提供される。
また、本発明の第7の発明によれば、第1〜6のいずれかの発明において、樹脂フィルム基材(A)の両面に、Ni系金属膜(B)と酸化物膜(C)からなる積層膜が形成されており、フィルム基板を中心として対称の構造であることを特徴とする耐熱遮光フィルムが提供される。
【0013】
また、本発明の第8の発明によれば、第1〜7のいずれかの発明において、樹脂フィルム基材(A)と前記金属膜(B)の界面に、スパッタリング法で形成された金属酸化物膜がガスバリア膜(D)として介在することを特徴とする耐熱遮光フィルムが提供される。
さらに、本発明の第9の発明によれば、第8の発明において、前記ガスバリア膜が、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、二オブ、鉄、アルミニウム、珪素、及びニッケルからなる群より選ばれる1種類以上の元素を主成分とする酸化物膜であることを特徴とする耐熱遮光フィルムが提供される。
また、本発明の第10の発明によれば、第8又は9の発明において、樹脂フィルム基材(A)の両面に形成されるガスバリア膜(D)同士、金属膜(B)同士、及び酸化物膜(C)同士は、実質的に同じ金属元素組成であることを特徴とする耐熱遮光フィルムが提供される。
また、本発明の第11の発明によれば、第8〜10のいずれかの発明において、樹脂フィルム基材(A)の両面に形成されるガスバリア膜(D)同士、金属膜(B)同士、及び酸化物膜(D)同士は、実質的に同じ金属元素組成であることを特徴とする耐熱遮光フィルムが提供される。
一方、本発明の第12の発明によれば、第1〜7のいずれかの発明において、片面もしくは両面の表面粗さが0.2〜0.8μm(算術平均高さRa)の凹凸表面を有する樹脂フィルム基材(A)をスパッタリング装置に供給し、金属膜形成用ターゲットを用いて、スパッタリングにより樹脂フィルム基材(A)の凹凸表面上に、Ni系金属膜(B)を形成し、次に、酸化物膜形成用ターゲットを用いて、スパッタリングガスに酸素ガスを導入した反応性スパッタリングにより、Ni系金属膜(B)上に、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム、珪素、スズ、インジウム、ガリウム及びセリウムからなる群より選ばれた1種類以上の元素を含有する酸化物膜(C)を形成することを特徴とする耐熱遮光フィルムの製造方法が提供される。
【0014】
また、本発明の第13の発明によれば、第8の発明において、スパッタリングガス圧が、0.2〜1.0Paであることを特徴とする耐熱遮光フィルムの製造方法が提供される。
また、本発明の第14の発明によれば、第12又は13の発明において、スパッタリング時の樹脂フィルム基材温度が、180℃以上であることを特徴とする耐熱遮光フィルムの製造方法が提供される。
また、本発明の第15の発明によれば、第12〜14のいずれかの発明において、前記Ni系金属膜(B)及び前記酸化物膜(C)が形成された耐熱遮光フィルムを、さらに、スパッタリング装置に供給し、スパッタリングによって樹脂フィルム基材(A)の裏面にNi系金属膜(B)、及びチタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム、珪素、スズ、インジウム、ガリウム及びセリウムからなる群より選ばれた1種類以上の元素を含有する酸化物膜(C)を順次形成することを特徴とする耐熱遮光フィルムの製造方法が提供される。
また、本発明の第16の発明によれば、第12の発明において、片面もしくは両面の表面粗さが0.2〜0.8μm(算術平均高さRa)の凹凸表面を有する樹脂フィルム基材(A)をスパッタリング装置に供給し、ガスバリア膜形成用ターゲットを用いて、スパッタリングにより樹脂フィルム基材(A)の凹凸表面上に、まずガスバリア膜(D)を形成した後、金属膜(B)及び前記酸化物膜(C)を順次形成することを特徴とする耐熱遮光フィルムの製造方法が提供される。
また、本発明の第17の発明によれば、第16の発明において、前記ガスバリア膜形成用ターゲットと前記金属膜形成用ターゲット、又は前記ガスバリア膜形成用ターゲットと前記酸化物膜形成用ターゲットがそれぞれ同一のものを用い各膜を形成することを特徴とする耐熱遮光フィルムの製造方法が提供される。
また、本発明の第18の発明によれば、第12〜17のいずれかの発明において、樹脂フィルム基材(A)が、ロール状に巻き取られてスパッタリング装置のフィルム搬送部にセットされることを特徴とする耐熱遮光フィルムの製造方法が提供される。
さらに、本発明の第19の発明によれば、第12〜17のいずれかの発明において、成膜中の樹脂フィルム基材が冷却されずに、成膜室内でフローティングの状態でスパッタリング成膜されることを特徴とする耐熱遮光フィルムの製造方法が提供される。
一方、本発明の第20の発明によれば、第1〜11のいずれかに記載の耐熱遮光フィルムを加工して製造された耐熱性に優れた絞りが提供される。
さらに、本発明の第21の発明によれば、第1〜11のいずれかの発明の耐熱遮光フィルムを羽根材として用いてなる光量調整装置が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の耐熱遮光フィルムは、200℃以上の耐熱性を有する耐熱性の樹脂フィルム基材上に、スパッタリング法により特定厚さのNi系金属膜(以下、単に金属膜ともいう)と、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム、珪素、スズ、インジウム、ガリウム及びセリウムからなる群より選ばれた1種類以上の元素を含有する低反射性の酸化物膜(以下、単に酸化物膜ともいう)が形成される。よって、耐熱性を有する遮光性の金属膜と低反射性の酸化物膜が緻密な膜組織を形成しているため、従来の塗膜工程で得られる遮光フィルムに比べ、表面の磨耗性、摩擦性、導電性に優れている。
この耐熱遮光フィルムでは、最表面層となる低反射性の酸化物膜を金属膜上に積層するので金属膜の高い反射率を減少することができ、さらに積層膜の表面粗さが0.1〜0.7μm(算術平均高さRa)であることも寄与して、波長380〜780nmにおける光反射率は5%以下の低反射(低光沢性)となる。
本発明の耐熱遮光フィルムは、従来の金属箔板に耐熱塗料を施した耐熱遮光フィルムを使用した遮光羽根に比べ、樹脂フィルムを基材として使用しているので軽量化され、絞り羽根等に搭載された時の摺動性が向上し、更には駆動モーターの小型化が可能となり、低コストに繋がる。
更に、樹脂フィルム基材の片面にのみ金属膜及び酸化物膜を形成し、金属膜及び酸化物膜が形成されていない樹脂フィルム面側に粘着材を塗布した耐熱遮光フィルムとして使用することも可能であり、カメラやプロジェクタなどの鏡筒などにおいて、低反射性や低光沢性が必要不可欠な部材の壁面に貼り付けることによって低反射面を形成することができる。
また、前記金属膜及び酸化物膜のスパッタリング成膜に際し、耐熱性樹脂フィルムを中心に対称型である膜構造とすることができ、成膜時の膜応力による遮光フィルムの変形を生じないので生産性に優れている。
また、本発明の遮光性の金属膜及び低反射性の酸化物膜のスパッタリング法による成膜条件を最適化すれば、前記膜を緻密で高密着な膜とすることができ、200℃程度の高熱環境下に晒されても前記膜は剥がれることはない。前記緻密で硬質な最表面の酸化物膜が覆われているので該耐熱遮光フィルムの動作時に膜の剥がれがない。基材フィルムのマット処理、具体的には、サンドブラスト法によるフィルム表面処理の際にショット材が除去できずにフィルム表面に残存していても、その上に高温下でも高密着性を維持できる上記の緻密な積層膜が覆われているので、高温下でもショット材の脱落や膜剥がれ等による粉塵は起こらない。
したがって、本発明の耐熱遮光フィルムは、耐熱性が求められている液晶プロジェクタの光量調整装置の絞り羽根材として特に有用であり、また、取り付けの際に加熱工程を有する、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラなどのシャッター装置のシャッター羽根材としても、使用できるため、工業的に極めて有用である。
さらに、本発明の耐熱遮光フィルムを絞り羽根材として用いた光量調整装置は、金属薄板を羽根材料に用いた従来の耐熱性光量調整用絞り装置と比べて、絞り羽根材が軽量であるため絞り羽根を駆動する際の消費電力の低減が実現できる。よって、駆動モーターの小型化が可能となり、光量調整用絞り装置自体の小型化を実現することができるなどのメリットも有するため、工業的に極めて有用といえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の耐熱遮光フィルムとその製造方法、及びそれを用いた絞り又は光量調整装置について、図1を参照しながら説明する。
【0017】
1.耐熱遮光フィルム
本発明の耐熱遮光フィルムは、200℃以上の耐熱性を有する樹脂フィルム基材(A)と、樹脂フィルム基材(A)の片面もしくは両面にスパッタリング法で形成された50nm以上の膜厚を有するNi系金属膜(B)と、Ni系金属膜(B)上にスパッタリング法で形成された、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム、珪素、スズ、インジウム、ガリウム及びセリウムからなる群より選ばれた1種類以上の元素を含有する低反射性の酸化物膜(C)の積層膜とからなり、かつ上記積層膜の表面粗さが0.1〜0.7μm(算術平均高さRa)であることを特徴とする。
【0018】
図1は、本発明にかかる耐熱遮光フィルムの一例の構成を示す模式的な図である。本発明の遮光フィルムは、基材としての樹脂フィルム1と、その表面に形成されたNi系金属膜2と、その上に形成されたチタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム、珪素、スズ、インジウム、ガリウム及びセリウムからなる群より選ばれた1種類以上の元素を含有する低反射性の酸化物膜3との積層膜から構成されている。
そして、その積層膜は、表面粗さが0.1〜0.7μm(算術平均高さRa)、より好ましくは、0.2〜0.7μm、最も好ましくは、0.3〜0.6μmである。積層膜の表面粗さが0.1μm未満であると低光沢性が得られず、また、積層膜の表面粗さが0.7μmを超えると積層膜の表面欠陥が付きやすく十分な遮光性(透過率0%)を得られないという点で好ましくない。
【0019】
樹脂フィルム1の厚みは、特に限定されるわけではないが、例えば10〜125μmの範囲であることが望ましい。10μmより薄いものでは、遮光フィルムの製造時にフィルム自体のハンドリングが悪く、フィルムに傷や折れ目などの表面欠陥が付きやすくなり歩留まり高く製造することが難しい。125μmより厚いと小型化が進むシャッター装置や光量調整用絞り装置へ遮光羽根を複数枚搭載することができないからである。
【0020】
遮光性のNi系金属膜(金属膜)は、厚みが50nm以上である。厚みが50nm未満であると、膜の光通過が生じて十分な遮光機能を持たないので好ましくない。ただし、膜厚が厚くなると遮光性が良くなるが、250nmを超えると、材料コストや成膜時間の増加による製造コスト高につながり、また膜の応力も大きくなって変形しやすくなる。十分な遮光性(透過率0%)と低膜応力、低製造コストを考慮すると、前記金属膜の膜厚は50〜250nmが好ましい。低反射性のチタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム、珪素、スズ、インジウム、ガリウム及びセリウムからなる群より選ばれた1種類以上の元素を含有する金属酸化物膜(酸化物膜)は、膜厚を5〜240nmとすることで可視域の反射率を低減することができる。
【0021】
上記Ni系金属膜とチタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム、珪素、スズ、インジウム、ガリウム及びセリウムからなる群より選ばれた1種類以上の元素を含有する低反射性の前記酸化物膜は、樹脂フィルム基板の片面に形成されていてもよいが、両面に形成されている方が好ましい。両面に形成される場合は、フィルム基板を中心として各面の金属膜同士及び酸化物膜同士の組成及び膜厚が対称の構造であることが、より好ましい。基板の上に形成された薄膜は、基板に対して応力を与えるため、変形の要因となる。応力による変形は成膜直後でも見られる場合があるが、特に200℃程度に加熱されると変形が大きくなり顕著となりやすい。しかし、上記のように基板の両面に形成する前記金属膜と低反射性の前記酸化物膜の材質を同じにして、基板を中心として対称の構造にすることで、加熱条件下でも応力のバランスが維持され、フラットな耐熱遮光フィルムを実現しやすい。
【0022】
(A)樹脂フィルム基材
本発明の耐熱遮光フィルムの基材である樹脂フィルムは、その表面に算術平均高さRaが0.2〜0.8μm、特に0.3〜0.7μmの微細な凹凸構造を有することが好ましい。算術平均高さとは、算術平均粗さとも言われ、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけ抜き取り、この抜き取り部分の平均線から測定曲線までの偏差の絶対値を合計して平均した値である。Raが0.2μmより小さいと、フィルム表面に形成した金属膜の密着性が得られず、十分な低光沢性や低反射性も得られない。また、Raが0.8μmを超えると、フィルム表面の凹凸が大きすぎて凹部で金属膜の成膜ができず、フィルム表面を被覆し十分な遮光性を得ようとすれば金属膜の膜厚が厚くなってしまうためコスト高となり好ましくない。
【0023】
基材として用いる樹脂フィルムは、透明樹脂で構成されていても顔料を練り込んだ着色樹脂で構成されていても構わないが、200℃以上の耐熱性を有するものでなければならない。ここで、200℃以上の耐熱性を有するフィルムとは、ガラス転移点が200℃以上であるフィルムであり、またガラス転移点の存在しない材料については、200℃以上の温度にて変質しないことを意味する。樹脂材料の材質としては量産性を考慮した場合、スパッタリングによるロールコーティングが可能となるような可撓性を有する材料であることが望ましい。
【0024】
耐熱性の樹脂フィルムには、ポリイミド(PI)、アラミド(PA)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、又はポリエーテルサルフォン(PES)から選択される1種類以上の有機樹脂材料で構成されているフィルムが好ましいが、200℃以上の耐熱性を有していればこれらに限定されない。その中でもポリイミドフィルムは、最も耐熱温度が高く、特に好ましいフィルムである。
【0025】
樹脂フィルム表面は、フィルム表面を表面処理して凹凸を形成する。ここで表面処理とは、例えば、ナノインプリンティング加工やショット材に砂を使用したマット処理加工を行って得ることができるが、このような処理法に限定されない。ショット材を用いたマット処理加工は、フィルムを搬送しながらフィルム表面に凹凸を形成することができるが、最適なRa値の凹凸は、マット処理中のフィルム搬送速度とショット材の種類、大きさに依存するので、これらの条件を最適化してフィルム表面の算術平均高さRa値が0.2〜0.8μmとなるように表面処理を行う。マット処理後のフィルムは、洗浄してショット材を除去した後、乾燥する。フィルムの両面に金属膜と低反射性の酸化物膜を形成する場合は、フィルムの両面をマット処理する。
【0026】
(B)金属膜
本発明の耐熱遮光フィルムは、200℃の高熱環境下でも耐えうる耐熱性を有していることが特徴である。それは、スパッタリング法で上記温度以上で得た金属膜と低反射性の酸化物膜が高緻密性で耐酸化性が良く、フィルムと金属膜との密着性が良いことによる。
【0027】
一般に金属膜は酸化されると透明度が増加するため、遮光膜となる金属膜の耐酸化性は重要である。また金属膜は、金属の種類によっては200〜250℃で溶融してしまう材料もあるため、遮光膜となる金属膜は300℃以上の高融点材料であることが重要である。本発明の耐熱遮光フィルムに用いる金属膜の材料は、耐酸化性に優れたニッケル系材料が好ましい。具体的には、前記金属膜は、純粋なニッケルでもよいが、ニッケルを主成分としてチタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム、及び珪素からなる群より選ばれた1種類以上の元素が添加されているニッケル系合金膜であることが好ましい。上記元素が添加された金属膜は、純ニッケルに比べて酸化されにくい。
これらの元素を含有するNi系金属膜は、スパッタリング法でポリイミドなどの樹脂フィルムに成膜すると、高い密着性を得ることができる。また、上記元素のNi系金属膜は、耐熱性や耐食性を更に向上させるため、上記金属元素以外の元素を添加して合金としたもの、或いは金属間化合物としたものを使用しても構わない。
【0028】
また、ニッケル系ターゲットを用いたスパッタリング成膜での成膜速度は、他の金属ターゲットを用いたスパッタリング成膜と比べて速いことが特徴であり、この面でも生産性に有利である。例えば、ニッケルターゲットを用いた直流スパッタリングによるニッケル膜の成膜速度は、チタンターゲットを用いた同一条件のチタン膜の成膜速度と比べて1.5〜2倍ほど速い。
なお、Ni系金属膜の材料には上記の金属元素の他、炭素、窒素が含まれていても構わない。Ni系金属膜への炭素、窒素を導入するには、それぞれ、金属膜を成膜する時のスパッタリングガス中に炭化水素ガス、窒素ガスなどの添加ガスを導入してスパッタリング成膜することで可能であるが、上記のような添加ガスを用いなくても、ターゲット中に炭素、窒素を含有させることでも、これらの元素を導入することができる。特に上記金属膜に炭素、窒素が含まれると耐熱性を更に改善することができるため有用である。
【0029】
よって、本発明の耐熱遮光フィルムのニッケル系金属膜材料には、上記の方法で作製されたニッケルチタン炭化物、ニッケルタンタル炭化物、ニッケルタングステン炭化物、ニッケルモリブデン炭化物、ニッケルニオブ炭化物、ニッケル鉄炭化物、ニッケル銅炭化物、ニッケルアルミニウム炭化物、ニッケル珪素炭化物、ニッケルチタン窒化物、ニッケルタンタル窒化物、ニッケルタングステン窒化物、ニッケルモリブデン窒化物、ニッケルニオブ窒化物、ニッケル鉄窒化物、ニッケル銅窒化物、ニッケルアルミニウム窒化物、ニッケル珪素窒化物などの炭化物や窒化物も、十分な遮光性と耐熱性を発揮する金属膜材料であり、樹脂フィルムに対する高密着性も発揮するため含まれる。さらに本発明の耐熱遮光フィルムのニッケル系金属膜材料には、これらの炭化物と窒化物の固溶体や化合物、これら炭化物および/または窒化物と上記金属元素との固溶体や化合物も同様の理由から含まれる。また、本発明の金属膜には、酸素はなるべく含まないほうが、樹脂フィルムとの高い密着性や高い遮光性を維持するためには好ましい。しかし、スパッタリングガス中に残留する酸素などが成膜時に金属膜中に取り込まれて含有したり、或いは、フィルムに含有した酸素や水分が拡散して金属膜中に取り込まれても、金属性や高い遮光性や樹脂フィルムとの高い密着性を損なわない程度であれば構わない。金属膜中の酸素の含有量は、樹脂フィルムとの密着性を維持するために、金属元素に対して5原子%以下、特に3原子%以下が望ましい。
また、本発明の耐熱遮光フィルムの金属膜は、組成(金属元素の含有量や種類、炭素含有量、窒素含有量、酸素含有量)の異なった複数種類の金属膜の積層膜で構成されていてもかまわない。
【0030】
上記金属膜の膜厚は、50nm以上、好ましくは50〜250nmとすることができる。膜厚が50nm未満であると遮光性が不十分となり、またフィルムとの密着性が不十分になる場合があり、250nmを超えると、フィルムとの密着性や酸化物膜の積層性は十分なものとなるが経済性の面で好ましくない。
【0031】
密着性については、元来、有機物である樹脂フィルム基材と無機物である金属膜との間では高い密着性を得ることが難しい。これは、樹脂フィルム基材と金属膜の界面の密着性が不十分である場合、200℃の高熱環境下で、樹脂フィルム基材と金属膜の熱膨張差により膜剥離が生じやすいからである。
このような熱膨張差による膜剥離を回避するには、樹脂フィルム基材と膜の高密着性を維持する必要があるが、本発明の金属膜は、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム、及び珪素からなる群より選ばれた1種類以上の添加元素を含有するニッケル系の金属膜とすることが有効である。樹脂フィルムの表面は、酸素の官能基を有しており、本発明の金属膜中には適量のチタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム、及び珪素などの酸素と結合しやすい元素が含まれており、フィルム表面の酸素の官能基と化学結合が生じて、フィルムと金属膜間の密着性が強化される。
また、上記金属材料の金属膜と樹脂フィルムとの界面に、密着性を損なわない程度に、他の材質の薄膜が極薄(例えば1〜10nm)に存在していても構わない。
【0032】
(C)酸化物膜
また、本発明の耐熱遮光フィルムは、低反射性の酸化物膜を有している。樹脂フィルム基材に形成された金属膜は反射率が高いが、金属膜の上に低反射性の酸化物膜を積層することで、耐熱遮光フィルムの波長380〜780nmにおける反射率を7%以下にまで減少させることができる。低反射性の酸化物膜は、単層でも酸素含有量や構成元素の種類及び含有量の異なる層で構成されても構わない。また、金属膜上に積層する低反射性の酸化物膜は、着色したものでもよい。
【0033】
本発明の低反射性の酸化物膜は、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム、珪素、スズ、インジウム、ガリウム及びセリウムからなる群より選ばれた1種類以上の元素を含有する酸化物膜であることが好ましい。前記酸化物膜は、高熱環境下での耐熱性、他耐食性に優れている。具体的には、前記酸化物膜は、金属成分がチタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム、珪素、スズ、インジウム、ガリウム及びセリウムからなる群より選ばれた1種類の元素のみからなる酸化物であってもよいが、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム、珪素、スズ、インジウム、ガリウム及びセリウムからなる群より選ばれた2種類以上の元素を含有した酸化物膜であってもよい。またこれらの酸化物膜と金属膜との界面には、これら膜の成分の一部もしくは全てが含まれた化合物層が形成されていても構わない。
この酸化物膜は、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム、珪素、スズ、インジウム、ガリウム及びセリウムからなる群より選ばれた1種類以上の元素を含有しており、これらの元素は不動態を形成しやすいため耐熱性の他、耐食性に優れているからである。また、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム、珪素、スズ、インジウム、ガリウム及びセリウムなどの元素を含む酸化物膜は、耐熱性に優れているとともに、耐摩耗性、靭性が高いことから遮光羽根として動作する上でも利点がある。
【0034】
前記酸化物膜には、上記の金属元素の他、炭素、窒素が含まれていても構わない。酸化物膜に炭素、窒素を含ませると屈折率を調整することができて低反射性を実現しやすくなる。また、前記酸化物膜には、金属膜とならない程度に酸素欠損をなるべく導入して、可視域での透過率の低い(例えば単膜で透過率が10〜60%)酸化物材質を使用すると、低反射性を実現しやすくなるため好ましい。このような酸化物膜を用いた本発明の耐熱遮光フィルムは、光反射が波長380〜780nmにおいて2%以下、或いは1%以下や0.5%以下とすることができる。前記酸化物膜には、組成(酸素含有量、炭素含有量、窒素含有量、金属元素の含有量)の異なった複数種類の酸化物膜の積層膜で構成されていても構わない。組成が異なって屈折率と消衰係数の異なった酸化物膜の積層膜を用いることで、より強い反射防止効果が発現して低反射性を実現することもでき、黒色度のより高い耐熱遮光フィルムを得ることができる。
【0035】
上記酸化物膜の膜厚は、特に制限されないが、膜厚を5〜240nm、好ましくは20〜240nm、より好ましくは30〜200nmとすることで可視域の反射率を低減することができる。膜厚が5nm未満であると反射率、光沢度を十分に低下できない場合があり、240nmを超えると表面抵抗が大きくなるだけでなく経済性の面でも好ましくない。
【0036】
また本発明の耐熱遮光フィルムは、熱線光の照射による温度上昇をなるべく回避させるために、熱線光の高反射特性を持たせることも可能である。この場合、前記酸化物膜には、上記とは逆に、可視域〜近赤外域の透過率がなるべく高い酸化物材質を使用して、酸化物膜内での熱線の吸収をなるべく抑制し、金属膜による熱線の高反射特性を利用するのである。また、そのような酸化物膜の屈折率を加味して、酸化物膜の膜厚を最適化し、酸化物膜/金属膜界面での近赤外の反射光と、外界/酸化物界面での近赤外の反射光が強め合って、高反射特性を実現させるとより好ましい。以上のような構成の熱線の高反射特性を持たせた耐熱遮光フィルムは、可視域での最大反射率が3〜7%と適度な反射率を示すことができる。反射率が高く10%以上であると、反射光が迷光となり悪影響を及ぼすため、7%以下が好ましい。このような構成の耐熱遮光フィルムは、黒色度は劣るが、反射光の波長バランスに応じて、赤色、紫色、青色、黄土色などを呈する。
また、樹脂フィルムの両面に金属膜と酸化物膜が積層されている本発明の耐熱遮光フィルムにおいて、各面で透過率の異なる酸化物膜を用いて、黒色度と反射率が両面で異なった構成をもたせることも有効である。例えば、本発明の耐熱遮光フィルムをプロジェクタ用のランプに近い場所での羽根材として用いる場合には、ランプ光の照射されるフィルム面側は、光照射による温度上昇の回避を最重要視するため、可視〜近赤外光の高反射特性の面を対面させ、ランプ側と逆面はレンズユニットに向いているため可視光の反射が迷光となって嫌うことから、黒色度の高い可視域の低反射性を有する面を向けることが有効になる。その場合、ランプ側に黒色度が低くて反射率の高い面を向けて、ランプと反対側に黒色度の高い低反射性の面を向けた利用法が有効である。
ここで、プラスチックフィルムは、一般に絶縁性のため静電気が発生しやすいが、仮に絶縁性の遮光フィルムを用いて遮光羽根として動作した場合には、静電気が発生して、羽根同士が静電吸着する場合がある。羽根同士が吸着しないためには、遮光フィルムに導電性が必要といえる。
【0037】
本発明の耐熱遮光フィルムに用いる膜の材料は、具体的な金属膜としては、ニッケルを主成分として、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム、及び珪素からなる群より選ばれた1種類以上の元素を添加されているニッケル系合金膜であり、酸化物膜としては、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム、珪素、スズ、インジウム、ガリウム及びセリウムからなる群より選ばれた1種類以上の元素を含有する酸化物膜であるため、導電性を有しており、表面抵抗値が1013Ω/□(オーム・パー・スクエアと読む)以上である樹脂塗膜系などの遮光フィルムに比べ、表面抵抗値を1×10Ω/□以下と小さくすることができる。
【0038】
本発明の耐熱遮光フィルムでは金属膜に導電性に優れたニッケル系材料を、酸化物膜に導電性の高い材料(例えば、酸化チタン、酸化タングステン、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ニオブ、酸化鉄、酸化銅、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウム、酸化ガリウム、酸化セリウムなど)を選択することで表面抵抗値を800Ω/□以下、好ましくは100Ω/□以下、更には10Ω/□以下にすることができる。
【0039】
なお、本発明の耐熱遮光フィルムは、上記酸化物膜の表面に、潤滑性や低摩擦性を有する他の薄膜(例えば、フッ素含有の有機膜や、炭素膜、ダイヤモンドライクカーボン膜など)を薄く塗布して利用しても、本発明の特徴を損なわなければ構わない。
本発明の耐熱遮光フィルムにおいては、積層膜の光反射率が、波長380〜780nmにおいて5%以下とすることができる。光反射率が、波長380〜780nmにおいて5%を超えるものではシャッター装置や光量調整用絞り装置の絞り羽根として好ましく使用できない。
【0040】
(D)ガスバリア膜
通常、ポリイミドなどの樹脂フィルム基材には、酸素や水分が多く含まれる。ポリイミド中のこれらのガスは、成膜前に加熱処理等を行って除去する。しかし、十分に除去できずに、金属膜と酸化物膜を形成して製造された耐熱遮光フィルムは、250℃前後の高熱環境下におかれると、樹脂フィルムから酸素や水分が放出されて金属膜内の一部に酸素が進入する。酸素が進入した金属膜は光学定数が異なるため、耐熱遮光フィルムの色味の変化が生じてしまう。また、成膜前に十分にガス抜きを行って製造された耐熱遮光フィルムでも、恒温恒湿試験(例えば、85℃、90%RH、1000時間)の環境下に耐熱遮光フィルムを配置すると、樹脂フィルムの側面から水や酸素が進入して、金属膜の樹脂フィルム側の一部に酸素が進入して、同様の要因で色味が変わってしまう。このような色味変化を回避するため、本発明では、樹脂フィルム基材と前記金属膜の界面に、ガスバリア膜として金属酸化物膜をスパッタリング法で形成することを提案している。
【0041】
ガスバリア膜は、例えば、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、二オブ、鉄、アルミニウム、珪素、ニッケルからなる群より選ばれる1種類以上の元素を主成分とする酸化物膜が有効である。これらのガスバリア膜は、化学量論組成よりも酸素欠損を有する膜の方が、膜の緻密性が高いため、フィルムから放出されるガスの通過を、より効果的に阻止できる。ガスバリア膜は5〜30nmほど形成されていれば効果的である。
【0042】
2.耐熱遮光フィルムの製造方法
本発明の耐熱遮光フィルムの製造方法は、算術平均高さRaが0.2〜0.8μmの表面粗さを有する樹脂フィルム基材(A)をスパッタリング装置に供給し、金属膜形成用ターゲットを用いて、不活性ガス雰囲気下、フィルム基材温度180℃以上でスパッタリングして、樹脂フィルム基材(A)上にNi系金属膜(B)を形成し、次に、酸化物膜形成用ターゲットを用いて、不活性ガス雰囲気に酸素ガスを導入しながらスパッタリングして、前記Ni系金属膜(B)上にチタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム、珪素、スズ、インジウム、ガリウム及びセリウムからなる群より選ばれた1種類以上の元素を含有する酸化物膜(C)を形成して耐熱遮光フィルムを得ることを特徴とする。
【0043】
本発明の耐熱遮光フィルムは、上記樹脂フィルム基材の表面に、スパッタリング法でNi系金属膜が形成され、前記Ni系金属膜上に、低反射性のチタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム、珪素、スズ、インジウム、ガリウム及びセリウムからなる群より選ばれた1種類以上の元素を含有する酸化物膜がスパッタリングで形成されている。上記酸化物膜は、反射防止効果を発揮する膜厚に設定されているとより好ましい。すなわち耐熱遮光フィルムの表面に入射する可視光は、酸化物膜と空気との界面と、金属膜と酸化物膜の界面で反射するが、これらの反射光が大気に出たときに互いに干渉して打ち消しあうような位相差が生じるような酸化物膜の膜厚であると、著しく低反射性が実現するため好ましい。本発明では、前記金属膜および低反射性の前記酸化物膜がスパッタリング法で形成されているため、インクの塗布法や真空蒸着法と比べて膜の緻密性がよく、下地(基板や膜)との密着性が良好であるという特徴がある。
この性質は、耐熱遮光フィルムを200℃の高熱環境下で使用したときに顕著である。インクの塗布法や真空蒸着法で形成したときは、膜剥がれや、膜の酸化による色味の変化が見られるが、本発明のようにスパッタリング法で膜を形成した場合はこのような恐れがない。
【0044】
本発明において、耐熱遮光フィルムは、上述のようにスパッタリング法で樹脂フィルム基材上に遮光性の金属膜と低反射性の酸化物膜を形成して製造される。スパッタリング法は、蒸気圧の低い材料の膜を基材上に形成する場合や精密な膜厚制御が必要となる時に有効な薄膜形成方法である。一般的に、アルゴンなどのスパッタリングガス圧(約10Pa以下)のもとで、基材を陽極とし、膜の原料となるスパッタリングターゲットを陰極として、この間にグロー放電を起こさせてアルゴンプラズマを発生させ、プラズマ中のアルゴン陽イオンを陰極のスパッタリングターゲットに衝突させてスパッタリングターゲット成分の粒子を弾き飛ばし、この粒子を基材上に堆積させて成膜する方法である。
【0045】
上記スパッタリング法は、アルゴンプラズマの発生方法で分けられ、高周波プラズマを用いるものは高周波(RF)スパッタリング法、直流プラズマを用いるものは直流(DC)スパッタリング法である。また、マグネトロンスパッタリング法は、スパッタリングターゲットの裏側に磁石を配置し、アルゴンプラズマをスパッタリングターゲット直上に集中させ、低ガス圧でもアルゴンイオンの衝突効率を上げて成膜する方法である。
【0046】
金属膜と酸化物膜を成膜するには、例えば、図2に示した巻き取り式スパッタリング装置を用いることができる。この装置は、ロール状の樹脂フィルム基材1が巻き出しロール4にセットされ、ターボ分子ポンプ等の真空ポンプ5で真空槽6内を排気した後、巻き出しロール4から搬出されたフィルム1が途中、冷却キャンロール7の表面を通って、巻き取りロール8で巻き取られていく構成をとる。冷却キャンロール7の表面の対向側にはマグネトロンカソード9が設置され、このカソードには膜の原料となるターゲット10が取り付けてある。なお、巻き出しロール4、冷却キャンロール7、巻き取りロール8などで構成されるフィルム搬送部は、隔壁11でマグネトロンカソード8と隔離されている。
【0047】
ターゲットとしては、金属膜形成用ターゲットと酸化物膜形成用ターゲットとを用いる。金属膜形成用ターゲットとは、Ni金属又はNi系合金の金属製ターゲットである。また金属膜中に炭素および/または窒素を含ませるために、金属膜形成用の金属製ターゲットには炭素および/または窒素を含ませてもよく、上記金属の炭化物や窒化物の金属製ターゲットを用いても構わない。一方、酸化物膜形成用ターゲットとは、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム、珪素、スズ、インジウム、ガリウム及びセリウムからなる群より選ばれた1種類以上の元素を含有する金属製ターゲット又は酸化物製ターゲットである。また酸化物膜中に炭素および/または窒素を含ませるために、酸化物形成用の金属製ターゲットもしくは酸化物ターゲットには炭素および/または窒素を含ませてもよく、上記金属の炭化物や窒化物の金属ターゲットを用いても構わない。
【0048】
まず、ロール状の樹脂フィルム基材1を巻き出しロール4にセットし、ターボ分子ポンプ等の真空ポンプ5で真空槽6内を排気する。その後、巻き出しロール4から樹脂フィルム基材1を供給し、途中、冷却キャンロール7の表面を通って、巻き取りロール8で巻き取られていくようにしながら、冷却キャンロール7とカソード間で放電させて、冷却キャンロール表面に密着搬送されている樹脂フィルム基材1に成膜する。なお、樹脂フィルム基材は、スパッタリング前に200℃以上の温度で加熱し、乾燥しておくことが望ましい。また、片面もしくは両面の表面粗さが0.2〜0.8μm(算術平均高さRa)の凹凸表面を有する樹脂フィルム基材(A)をスパッタリング装置に供給し、ガスバリア膜形成用ターゲットを用いて、スパッタリングにより樹脂フィルム基材(A)の凹凸表面上に、まずガスバリア膜(D)を形成しておくことが好ましい。
【0049】
本発明の耐熱遮光フィルムにおいて、金属膜層は、例えばアルゴン雰囲気中において、Ni金属又はNi系合金のスパッタリングターゲットを使用した高周波(RF)または直流(DC)マグネトロンスパッタリング法により樹脂フィルム基材上に成膜形成される。
【0050】
純ニッケル材は、通常、強磁性体であるため上記金属膜層を直流マグネトロンスパッタリング法で成膜する場合、スパッタリングターゲットと基材間のプラズマに作用するためのスパッタリングターゲット裏面に配置した磁石からの磁力がニッケルターゲット材で遮蔽されて表面に漏洩する磁界が弱くなり、プラズマを集中させて効率よく成膜することが困難となる。これを回避するためには、スパッタリングターゲット裏側に配置する磁石の磁力を強くしたカソードを用い、ニッケルスパッタリングターゲットを通過する磁界を強めてスパッタリングし成膜することが望ましい。
【0051】
ただし、このような方法を採った場合でも生産時には以下に述べるような別の問題が生じる。すなわち、ニッケルターゲットの連続使用に伴ってスパッタリングターゲットの厚みが減少していくと、スパッタリングターゲットの厚みが薄くなった部分では、プラズマ空間の漏洩磁界が強くなっていく。プラズマ空間の漏洩磁界が強くなると、放電特性が変化して成膜速度が変化する。つまり、生産時に同一のニッケルターゲットを連続して長時間使用するとニッケルターゲットの消耗に伴い、ニッケル膜の成膜速度が変化する問題が生じる。
そこで、このような場合は、前記したニッケルを主成分としてチタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム及び珪素から選択された1種類以上の元素が添加されたNi系合金材料をターゲットとすることにより、強磁性が弱められ、上記問題を回避することができ、上記組成の金属合金膜として成膜することができる。
【0052】
金属膜を成膜する時の成膜時のガス圧は、装置の種類などによっても異なるので一概に規定できないが、1.0Pa以下、例えば、0.2〜1.0Paにすることが好ましい。これにより、ショット材が樹脂フィルム基材上に微量残存していても、200℃の高熱環境下でショット材、金属膜、低反射性の酸化物膜の熱膨張差によっても膜が剥がれなくなる。成膜時のガス圧が1.0Paを超えた場合では、金属膜の粒が粗くなり、高緻密な膜質でなくなるので樹脂フィルム基材との密着力が弱くなり、膜が剥がれてしまう。また、成膜時のガス圧が0.2Pa未満であると、ガス圧が低いためスパッタリング法でのアルゴンプラズマが不安定となり、成膜した膜の膜質が悪くなることがある。
【0053】
さらに、成膜時の樹脂フィルム基材温度は、少なくとも180℃以上、特に180〜220℃とすることが望ましい。これにより200℃以上の耐熱性を有するフィルムとの密着性の優れた、緻密な膜質の耐熱遮光フィルムが得られる。成膜時の樹脂フィルム基材温度が180℃未満では、200℃以上での耐熱試験における金属膜と樹脂フィルムとの密着性が悪化するので好ましくない。ただし、このような耐熱性が要求されない場合には、金属膜を180℃未満で成膜できる。なお、金属膜の膜厚は、成膜時のフィルムの搬送速度とターゲットへの投入電力で制御される。
また、成膜中には樹脂フィルム基材はプラズマから自然加熱される。ガス圧とターゲットへの投入電力やフィルム搬送速度を調整することで、自然加熱によって成膜中の基板の温度を180℃以上に維持することは容易である。ガス圧は低いほど、投入電力は高いほど、フィルム搬送速度は遅いほどプラズマからの自然加熱による加熱温度は高くなる。成膜中の基材の温度は、放射温度計で測定することも可能であり、また予めフィルム表面にサーモラベルを貼り付けておいて、成膜後にラベルの色の変化を見て達した温度を知ることができる。
【0054】
金属膜が成膜された後、この金属膜上にチタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム、珪素、スズ、インジウム、ガリウム及びセリウムからなる群より選ばれた1種類以上の元素を含有する酸化物膜を形成する。低反射性の酸化物層は、例えば、酸化物膜中の金属成分の金属ターゲットを用いて、アルゴン及び酸素ガス雰囲気中で高周波(RF)又は直流(DC)マグネトロンスパッタリング法により形成することができる。また、前記のとおり、酸化物膜の金属成分を含む酸化物ターゲットを用いて、アルゴンガス雰囲気もしくはアルゴンと酸素の混合ガス雰囲気を用いて高周波(RF)又は直流(DC)マグネトロンスパッタリング法により形成することができる。いずれのターゲットを用いる場合でも、アルゴンと酸素の混合ガス雰囲気を用いた反応性スパッタリングによることが好ましい。スパッタリングガス中の酸素ガスの含有量は特に制限されないが、例えば、不活性ガスに対して1〜10%、好ましくは2〜6%混合することができる。
【0055】
酸化物膜を成膜する時の成膜時のガス圧は、装置の種類などによっても異なるので一概に規定できないが、1.0Pa以下、例えば、0.2〜1.0Paにすることが好ましい。成膜時のガス圧が1.0Paを超えた場合では、酸化物膜の粒が粗くなり、高緻密な膜質でなくなるので金属膜との密着力が弱くなり、膜が剥がれてしまう。また、成膜時のガス圧が0.2Pa未満であると、ガス圧が低いためスパッタリング法でのアルゴンプラズマが不安定となり、成膜した膜の膜質が悪くなることがある。また、成膜時の樹脂フィルム基材温度は、少なくとも180℃以上、特に180〜220℃とすることが望ましい。これにより緻密な酸化物膜を有する耐熱遮光フィルムが得られる。樹脂フィルム基材温度が180℃未満では、緻密な酸化膜が形成できないので好ましくない。なお、酸化物膜の膜厚は、成膜時のフィルムの搬送速度とターゲットへの投入電力で制御される。
【0056】
これにより、基材フィルムの片面に金属膜と酸化物膜が形成された耐熱遮光フィルムを得ることができる。両面に、金属膜と酸化物膜が形成された耐熱遮光フィルムを得るには、さらに、上記スパッタリング装置に供給し、同様にして、スパッタリングによって樹脂フィルム基材の裏面に金属膜、及び酸化物膜を順次形成する。すなわち、樹脂フィルム基材(A)の片面に前記金属膜(B)及び前記酸化物膜(C)が形成された耐熱遮光フィルムを、裏返した状態でスパッタリング装置に供給し、スパッタリングによって樹脂フィルム基材(A)の表面に金属膜(B)及び酸化物膜(C)を順次形成する。
ターゲットとしては、上記したように、ガスバリア膜形成用ターゲット、金属膜形成用ターゲットと酸化物膜形成用ターゲットとを用いることとなるが、前記ガスバリア膜形成用ターゲットと前記金属膜形成用ターゲット、又は前記ガスバリア膜形成用ターゲットと前記酸化物膜形成用ターゲットはそれぞれ同一のターゲットを用いて、ガス雰囲気を変えるなどして膜を形成することができる。真空槽内にターゲットを3種類配置することを行わずに済み、真空装置を簡略化できコスト低減することができる。
【0057】
なお、金属膜と酸化物膜を成膜するのに、フィルム巻き取り式スパッタリング装置を例示し、連続的に成膜する方法について詳述したが、本発明は、これに限定されることなく、ロール状で無くシート状の樹脂フィルム基板を、ターゲットの対向面に静止固定或いは通過移動させて、金属膜と酸化物膜を成膜する方法でも作製可能である。ただし、この場合は、雰囲気ガスの切り替え、フィルム搬入・停止という操作が加わり煩雑となる。さらに、基材フィルムはロール状のものでなくとも、所定の大きさに切断された状態で装置に固定してもよい。
【0058】
3.耐熱遮光フィルムの用途
本発明の耐熱遮光フィルムは、デジタルカメラの絞りやシャッター装置の羽根、デジタルビデオカメラの絞りや光量調整装置(オートアイリス)の絞り羽根や、液晶プロジェクタの絞りや光量調整装置の絞り羽根として用いることができる。特に、耐熱性が要求されるプロジェクタ用途の絞りや光量調整装置(オートアイリス)の絞り羽根材として有用である。
【0059】
耐熱遮光フィルムを絞りや光量調整装置(オートアイリス)の絞り羽根材とするには、端面クラックが生じない打ち抜き加工をすればよい。絞りには、予め絞り開口径を規定した孔を設けた1枚の耐熱遮光板とし、この耐熱遮光板を投影光路に出入り自在に設けた機構のものとして用いることができる。また、光量調整装置(オートアイリス)の絞り羽根には、複数の絞り羽根として用い、それらの絞り羽根を可動させ、絞り開口径を可変して光量の調整が可能となる機構のものとして用いることができる。
図3は、打ち抜き加工を施した耐熱遮光羽根12を搭載した光量調整装置の絞り機構を示す模式的な図である。耐熱遮光羽根12には、ガイド孔13、駆動モーターと係合するガイドピン14と遮光羽根の稼働位置を制御するピン15を設けた基板16に取り付けるための孔17を設けている。また、基板16の中央にはランプ光が通過する開口部18があるが、絞り装置の構造により遮光羽根は、さまざまな形状であってもよい。本発明の耐熱遮光フィルムは、樹脂フィルムを基材としているので、軽量化でき、遮光羽根を駆動する駆動部材の小型化と消費電力の低減が可能となる。
【実施例】
【0060】
次に、本発明について、実施例、比較例を用いて具体的に説明する。なお、得られた耐熱遮光フィルムの評価は以下の方法で行った。
【0061】
(光学濃度、反射率)
分光光度計を使用し、波長380nm〜780nmの可視光域の遮光性と反射率を測定した。遮光性は、分光光度計で測定される透過率(T)を用いて次式により換算した。
光学濃度=Log(1/T)
シャッター装置や光量調整用絞り装置の絞り羽根では光学濃度は4以上、最大反射率は5%以下であることが必要である。
(表面光沢度)
表面光沢度は、光沢度計を用いてJIS Z8741に基づき測定した。表面光沢度は、3%未満であれば光沢性が良好である。
(摩擦係数)
静摩擦係数及び動摩擦係数は、JIS D1894に基づき測定した。静摩擦係数及び動摩擦係数が0.3以下の場合は良好(○)とし、0.3を超えるものは不十分(×)とした。
(表面粗さ)
得られた耐熱遮光フィルムの算術平均高さRaを表面粗さ計で測定した。
(耐熱性)
得られた耐熱遮光フィルムの耐熱特性を以下の手順で評価した。220℃に加熱セットしたオーブン(アドバンテック社製)に、作製した耐熱遮光フィルムを24時間放置した後、取り出した。評価は、反りや膜の変色が無い場合は良好(○)とし、反りもしくは膜の変色がある場合は不十分(×)とした。
(密着性)
耐熱試験後の膜の密着性をJIS C0021に基づき評価した。評価は膜剥がれがない場合は良好(○)とし、膜剥がれがあるものは不十分(×)とした。
(導電性)
得られた耐熱遮光フィルムの表面抵抗値をJIS K6911に基づき測定した。
【0062】
(実施例1)
図2に示した巻き取り式スパッタリング装置を用いて遮光性の金属膜と低反射性の酸化物膜の成膜を行った。まず、冷却キャンロール7の表面の対向側にマグネトロンカソード9が設置された装置のカソードに膜の原料となるターゲット10を取り付けた。巻き出しロール4、冷却キャンロール7、巻き取りロール8などで構成されるフィルム搬送部は、隔壁11でマグネトロンカソード9と隔離されている。次に、ロール状の樹脂フィルム基材1を巻き出しロール4にセットした。ポリイミド(PI)フィルムは、サンドブラストによる表面加工を行い、算術平均高さRaが0.5μmとして、得られたポリイミド(PI)フィルムをスパッタリング前に200℃以上の温度で加熱し、乾燥した。
次に、ターボ分子ポンプ等の真空ポンプ5で真空槽6内を排気した後、冷却キャンロール7とカソード間で放電させて、樹脂フィルム基材1を冷却キャンロール表面に密着搬送しながら成膜を行った。
まず、Ni−Wターゲットをカソードに設置し、このカソードから直流スパッタリング法で金属膜を成膜した。金属膜はスパッタリングガスに純アルゴンガス(純度99.999%)を用いて成膜を行った。成膜時のスパッタガス圧は、0.4〜1.0Paにて実施した。成膜時のフィルムの搬送速度とターゲットへの投入電力を制御することで金属膜の膜厚を制御した。巻き出しロール4から搬出された樹脂フィルム基材1は、途中、冷却キャンロール7の表面を通って、巻き取りロール8で巻き取った。
次に、Tiターゲットをカソードに設置し、金属膜が形成された上記ロールをセットし、装置に供給し、このカソードから直流スパッタリング法で金属膜上に低反射金属酸化物膜を成膜した。低反射性の酸化物膜はスパッタリングガスに酸素ガスを2〜6%混合したアルゴンガスを用いて成膜を行った。成膜時のスパッタガス圧は、0.4〜1.0Paにて実施した。成膜時のフィルムの搬送速度とターゲットへの投入電力を制御することで酸化物膜の膜厚を制御した。巻き出しロール4から搬出されたフィルム1は、途中、冷却キャンロール7の表面を通って、巻き取りロール8で巻き取った。
スパッタリング時のフィルムの表面温度を赤外線放射温度計で、巻き取り式スパッタリング装置の石英ガラスののぞき窓から測定すると180〜220℃の温度であった。また、成膜前に予めフィルム表面に貼り付けてあったサーモラベル(アイビー技研製、型番:101−8−176)を用いて成膜中の最高加熱温度をチェックしても同様の結果であった。
得られた金属膜の組成は、ICP発光分析およびEPMA定量分析から、ターゲット組成とほぼ同じであることを確認した。また、低反射性の酸化物膜として、ターゲット金属の酸化物膜が得られていることを確認した。また金属膜、酸化物膜の膜厚は、断面TEM観察から測定し、所定の膜厚になっていることを確認した。
こうして厚み75μmのポリイミド(PI)フィルムの両面に、膜厚100nmの金属膜と膜厚50nmの酸化物膜を順に、スパッタリング成膜して、耐熱遮光フィルムを作製した。このポリイミド(PI)フィルムの表面は、所定の吐出時間、吐出圧力、搬送速度でサンドブラスト加工してあり、両面とも算術平均高さがRa0.5μmの微細な凹凸が形成されている。フィルムの片面ずつ両面にこのような成膜を実施して、ポリイミド(PI)フィルム基材を中心に対称構造の遮光フィルムを製造した。
次に、作製した耐熱遮光フィルムを前記の方法で評価した。この結果、光学濃度は4以上、最大反射率は1%以下であった。光沢度は、2%以下となり光沢性は良好であった。静摩擦係数及び動摩擦係数は、0.3以下となり、良好であった。また、表面抵抗値は、300Ω/□であり、表面の算術平均高さは、0.4μmであった。加熱後の耐熱遮光フィルムには、反りは発生せず、変色もなかった。また、膜剥がれはなく、良好であった。また、JIS K5600−5−4に基づいて引っかき硬度試験(鉛筆法)を行ったところ、十分な硬度レベルのH以上であった。遮光性、反射特性、光沢度、摩擦係数も加熱前と変化なかった。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
得られた耐熱遮光フィルムは、光学濃度、反射率、表面光沢度、耐熱性、摩擦係数、導電性のすべてについて良好であり、よって、このような耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができることがわかる。
【0063】
(実施例2)
金属膜の膜厚のみを50nmに変えた以外は実施例1と全く同じ条件で耐熱遮光フィルムを作製した。
作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。実施例1と同様の方法でスパッタリング時のフィルムの表面温度を測定すると180〜220℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
その結果、光学濃度、反射率、光沢度などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。また、表面抵抗値は、300Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは、0.4μmであることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
よって、このような耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0064】
(実施例3)
金属膜の膜厚のみを150nmに変えた以外は実施例1と全く同じ条件で耐熱遮光フィルムを作製した。
作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。実施例1と同様の方法でスパッタリング時のフィルムの表面温度を測定すると180〜220℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
その結果、光学濃度、反射率、光沢度などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。また、表面抵抗値は、200Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは、0.3μmであることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
よって、このような耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0065】
(実施例4)
ポリイミドフィルムのサンドブラストによる表面加工の条件のみを変えて遮光フィルムを作製した。すなわち、算術平均高さRaが0.2μmのポリイミドフィルムを使った以外は実施例1と全く同じ条件で、同じ膜構成の耐熱遮光フィルムを作製した。ただし、ポリイミドの種類、厚みは実施例1と同じである。
実施例1と同様の方法でスパッタリング時のフィルムの表面温度を測定すると180〜220℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。
その結果、光学濃度、反射率、光沢度などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。また、表面抵抗値は、300Ω/□で、表面の算術平均高さRaは、0.1μmであることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
よって、このような耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0066】
(実施例5)
サンドブラストによる表面加工の条件を変えて作製した、算術平均高さRaが0.8μmのポリイミドフィルムを使った以外は実施例1と全く同じ条件で耐熱遮光フィルムを作製した。ただし、ポリイミドの種類、厚みは実施例1と同じである。
実施例1と同様の方法でスパッタリング時のフィルムの表面温度を測定すると180〜220℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。その結果、光学濃度、反射率、光沢度などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。また、表面抵抗値は、300Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは0.7μmであることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
よって、このような耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0067】
(実施例6)
フィルムの両面でなく片面にのみサンドブラスト処理を行って金属遮光膜と低反射金属酸化物膜を成膜した以外は実施例1と全く同じ条件で耐熱遮光フィルムを作製した。
実施例1と同様の方法でスパッタリング時のフィルムの表面温度を測定すると180〜220℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。その結果、光学濃度、反射率、光沢度などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。また、表面抵抗値は、300Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは、0.4μmであることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価を行ったが、膜剥がれはなく、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。反りについては、加熱試験によって、若干生じており、5cm角に形状加工したサンプルを平坦な面に置いて、最大2mmの反りが生じていた。これは片面にのみ成膜したことによって生じた膜応力による影響であるが、この程度の反りであれば、絞りとして利用する際、支持基材に複数箇所、接着固定することで使用することができる。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
よって、このような遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
また、この耐熱遮光フィルムは、非成膜面側に粘着材を塗布しておけば、鏡筒などの低反射性・低光沢性が要求される光学部材の壁面に貼って、低反射・低光沢面を形成することができる。
【0068】
(実施例7)
金属膜を作製する際に、Ni−Tiターゲットを用いて、低反射性の酸化物膜を作製する際に、Tiターゲットを用いて、実施例1と同様の要領で、遮光性のニッケルチタン膜と低反射性の酸化チタン膜を両面に成膜して耐熱遮光フィルムを試作した。フィルムの種類及びフィルムのマット処理条件は実施例1と同じである。膜厚については表1に示した。
実施例1と同様の方法でスパッタリング時のフィルムの表面温度を測定すると180〜220℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
得られた遮光フィルムを実施例1と同様の方法で評価すると、光学濃度4以上、波長380〜780nmでの最大反射率4%、光沢度3%以下の遮光フィルムが得られていることがわかった。また耐熱性についても同様に評価を行ったが、実施例1と全く同じ結果であった。また、表面抵抗値は、400Ω/□以下であり、表面の算術平均高さRaは0.4μmであることを確認した。
よって、このような耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0069】
(実施例8)
金属酸化物膜の膜厚を20nmに変えた以外は実施例7と同様の要領で、耐熱遮光フィルムを試作した。
実施例1と同様の方法でスパッタリング時のフィルムの表面温度を測定すると180〜220℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
得られた遮光フィルムを実施例1と同様の方法で評価すると、光学濃度4以上、波長380〜780nmでの最大反射率5%、光沢度3%以下の遮光フィルムが得られていることがわかった。また耐熱性についても同様に評価を行ったが、実施例1と全く同じ結果であった。また、表面抵抗値は、400Ω/□以下であり、表面の算術平均高さRaは0.4μmであることを確認した。
よって、このような耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0070】
(実施例9)
金属酸化物膜の膜厚を140nmに変えた以外は実施例7と同様の要領で、耐熱遮光フィルムを試作した。
実施例1と同様の方法でスパッタリング時のフィルムの表面温度を測定すると180〜220℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
得られた遮光フィルムを実施例1と同様の方法で評価すると、光学濃度4以上、波長380〜780nmでの最大反射率5%、光沢度3%以下の遮光フィルムが得られていることがわかった。また耐熱性についても同様に評価を行ったが、実施例1と全く同じ結果であった。また、表面抵抗値は、400Ω/□以下であり、表面の算術平均高さRaは0.4μmであることを確認した。
よって、このような耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0071】
(実施例10)
遮光性の金属膜を作製する際に、Ni−Taを用いて、低反射性の酸化物膜を作製する際に、Tiターゲットを用いて、実施例1と同様の要領で、遮光性のニッケルタンタル膜と低反射性の酸化チタン膜を両面に成膜して耐熱遮光フィルムを作製した。フィルムの種類及びフィルムのマット処理条件は実施例1と同じである。膜厚については表1に示した。
実施例1と同様の方法でスパッタリング時のフィルムの表面温度を測定すると180〜220℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。その結果、光学濃度4以上、波長380〜780nmでの最大反射率2%、光沢度2%以下の遮光フィルムが得られていることがわかった。また、実施例1と同条件の場合は、表面抵抗値は、800Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは0.3μmであることを確認した。また、220℃で24時間の加熱試験後に膜の密着性を評価したが、反りや膜剥がれはなく、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。
よって、このような耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0072】
(実施例11)
金属酸化物膜の膜厚を20nmに変えた以外は実施例10と同様の要領で、耐熱遮光フィルムを試作した。
実施例1と同様の方法でスパッタリング時のフィルムの表面温度を測定すると180〜220℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。その結果、光学濃度4以上、波長380〜780nmでの最大反射率2%、光沢度2%以下の遮光フィルムが得られていることがわかった。また、実施例1と同条件の場合は、表面抵抗値は、800Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは0.3μmであることを確認した。また、220℃で24時間の加熱試験後に膜の密着性を評価したが、反りや膜剥がれはなく、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。
よって、このような耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0073】
(実施例12)
金属酸化物膜の膜厚を140nmに変えた以外は実施例10と同様の要領で、耐熱遮光フィルムを試作した。
実施例1と同様の方法でスパッタリング時のフィルムの表面温度を測定すると180〜220℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。その結果、光学濃度4以上、波長380〜780nmでの最大反射率2%、光沢度2%以下の遮光フィルムが得られていることがわかった。また、実施例1と同条件の場合は、表面抵抗値は、1×10Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは0.3μmであることを確認した。また、220℃で24時間の加熱試験後に膜の密着性を評価したが、反りや膜剥がれはなく、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。
よって、このような耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0074】
(実施例13)
金属膜を作製する際に、Ni−Moターゲットを用いて、低反射性の酸化物膜を作製する際に、Tiターゲットを用いて、実施例1と同様の要領で、遮光性のニッケルモリブデン膜と低反射性の酸化チタン膜を両面に成膜して耐熱遮光フィルムを試作した。フィルムの種類及びフィルムのマット処理条件は実施例1と同じである。
実施例1と同様の方法でスパッタリング時のフィルムの表面温度を測定すると180〜220℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
得られた遮光フィルムを実施例1と同様の方法で評価すると、光学濃度4以上、波長380〜780nmでの最大反射率4%、光沢度3%以下の遮光フィルムが得られていることがわかった。また耐熱性についても同様に評価を行ったが、実施例1と全く同じ結果であった。また、表面抵抗値は、300Ω/□以下であり、表面の算術平均高さRaは0.4μmであることを確認した。
よって、このような耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0075】
(実施例14)
金属酸化物膜の膜厚を20nmに変えた以外は実施例13と同様の要領で、耐熱遮光フィルムを試作した。
実施例1と同様の方法でスパッタリング時のフィルムの表面温度を測定すると180〜220℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
得られた遮光フィルムを実施例1と同様の方法で評価すると、光学濃度4以上、波長380〜780nmでの最大反射率4%、光沢度3%以下の遮光フィルムが得られていることがわかった。また耐熱性についても同様に評価を行ったが、実施例1と全く同じ結果であった。また、表面抵抗値は、200Ω/□以下であり、表面の算術平均高さRaは0.4μmであることを確認した。
よって、このような耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0076】
(実施例15)
金属酸化物膜の膜厚を140nmに変えた以外は実施例13と同様の要領で、耐熱遮光フィルムを試作した。
実施例1と同様の方法でスパッタリング時のフィルムの表面温度を測定すると180〜220℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
得られた遮光フィルムを実施例1と同様の方法で評価すると、光学濃度4以上、波長380〜780nmでの最大反射率4%、光沢度3%以下の遮光フィルムが得られていることがわかった。また耐熱性についても同様に評価を行ったが、実施例1と全く同じ結果であった。また、表面抵抗値は、500Ω/□以下であり、表面の算術平均高さRaは0.4μmであることを確認した。
よって、このような耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0077】
(実施例16)
遮光性の金属膜を作製する際に、Ni−Nbターゲットを用いて、低反射性の酸化物膜を作製する際に、Tiターゲットを用いて、実施例1と同様の要領で、遮光性のニッケルニオブ膜と低反射性の酸化チタン膜を両面に成膜して耐熱遮光フィルムを作製した。フィルムの種類及びフィルムのマット処理条件は実施例1と同じである。膜厚については表1に示した。
実施例1と同様の方法でスパッタリング時のフィルムの表面温度を測定すると180〜220℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。その結果、光学濃度4以上、波長380〜780nmでの最大反射率1%、光沢度2%以下の遮光フィルムが得られていることがわかった。また、実施例1と同条件の場合は、表面抵抗値は、800Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは0.3μmであることを確認した。また、220℃で24時間の加熱試験後に膜の密着性を評価したが、反りや膜剥がれはなく、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。
よって、このような耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0078】
(実施例17)
金属酸化物膜の膜厚を20nmに変えた以外は実施例16と同様の要領で、耐熱遮光フィルムを試作した。
実施例1と同様の方法でスパッタリング時のフィルムの表面温度を測定すると180〜220℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。その結果、光学濃度4以上、波長380〜780nmでの最大反射率1%、光沢度2%以下の遮光フィルムが得られていることがわかった。また、実施例1と同条件の場合は、表面抵抗値は、700Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは0.3μmであることを確認した。また、220℃で24時間の加熱試験後に膜の密着性を評価したが、反りや膜剥がれはなく、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。
よって、このような耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0079】
(実施例18)
金属酸化物膜の膜厚を140nmに変えた以外は実施例16と同様の要領で、耐熱遮光フィルムを試作した。
実施例1と同様の方法でスパッタリング時のフィルムの表面温度を測定すると180〜220℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。その結果、光学濃度4以上、波長380〜780nmでの最大反射率1%、光沢度2%以下の遮光フィルムが得られていることがわかった。また、実施例1と同条件の場合は、表面抵抗値は、1×10Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは0.3μmであることを確認した。また、220℃で24時間の加熱試験後に膜の密着性を評価したが、反りや膜剥がれはなく、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。
よって、このような耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0080】
(実施例19)
金属膜を作製する際に、Ni−Coターゲットを用いて、低反射性の酸化物膜を作製する際に、Tiターゲットを用いて、実施例1と同様の要領で、遮光性のニッケルモリブデン膜と低反射性の酸化チタン膜を両面に成膜して耐熱遮光フィルムを試作した。フィルムの種類及びフィルムのマット処理条件は実施例1と同じである。膜厚については表1に示した。
実施例1と同様の方法でスパッタリング時のフィルムの表面温度を測定すると180〜220℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
得られた遮光フィルムを実施例1と同様の方法で評価すると、光学濃度4以上、波長380〜780nmでの最大反射率3%、光沢度3%以下の遮光フィルムが得られていることがわかった。また耐熱性についても同様に評価を行ったが、実施例1と全く同じ結果であった。また、表面抵抗値は、200Ω/□以下であり、表面の算術平均高さRaは0.3μmであることを確認した。
よって、このような耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0081】
(実施例20)
金属酸化物膜の膜厚を20nmに変えた以外は実施例19と同様の要領で、耐熱遮光フィルムを試作した。
実施例1と同様の方法でスパッタリング時のフィルムの表面温度を測定すると180〜220℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
得られた遮光フィルムを実施例1と同様の方法で評価すると、光学濃度4以上、波長380〜780nmでの最大反射率3%、光沢度3%以下の遮光フィルムが得られていることがわかった。また耐熱性についても同様に評価を行ったが、実施例1と全く同じ結果であった。また、表面抵抗値は、200Ω/□以下であり、表面の算術平均高さRaは0.3μmであることを確認した。
よって、このような耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0082】
(実施例21)
金属酸化物膜の膜厚を140nmに変えた以外は実施例19と同様の要領で、耐熱遮光フィルムを試作した。
実施例1と同様の方法でスパッタリング時のフィルムの表面温度を測定すると180〜220℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
得られた遮光フィルムを実施例1と同様の方法で評価すると、光学濃度4以上、波長380〜780nmでの最大反射率3%、光沢度3%以下の遮光フィルムが得られていることがわかった。また耐熱性についても同様に評価を行ったが、実施例1と全く同じ結果であった。また、表面抵抗値は、300Ω/□以下であり、表面の算術平均高さRaは0.3μmであることを確認した。
よって、このような耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0083】
(実施例22)
金属膜を作製する際に、Ni−Feターゲットを用いて、低反射性の酸化物膜を作製する際に、Tiターゲットを用いて、実施例1と同様の要領で、遮光性のNi−Fe膜と低反射性の酸化チタン膜を両面に成膜して耐熱遮光フィルムを試作した。フィルムの種類及びフィルムのマット処理条件は実施例1と同じである。膜厚については表1に示した。
実施例1と同様の方法でスパッタリング時のフィルムの表面温度を測定すると180〜220℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
得られた遮光フィルムを実施例1と同様の方法で評価すると、光学濃度4以上、波長380〜780nmでの最大反射率3%、光沢度3%以下の遮光フィルムが得られていることがわかった。また耐熱性についても同様に評価を行ったが、実施例1と全く同じ結果であった。また、表面抵抗値は、200Ω/□以下であり、表面の算術平均高さRaは0.4μmであることを確認した。
よって、このような耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0084】
(実施例23)
金属酸化物膜の膜厚を20nmに変えた以外は実施例22と同様の要領で、耐熱遮光フィルムを試作した。
実施例1と同様の方法でスパッタリング時のフィルムの表面温度を測定すると180〜220℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
得られた遮光フィルムを実施例1と同様の方法で評価すると、光学濃度4以上、波長380〜780nmでの最大反射率3%、光沢度3%以下の遮光フィルムが得られていることがわかった。また耐熱性についても同様に評価を行ったが、実施例1と全く同じ結果であった。また、表面抵抗値は、200Ω/□以下であり、表面の算術平均高さRaは0.4μmであることを確認した。
よって、このような耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0085】
(実施例24)
金属酸化物膜の膜厚を140nmに変えた以外は実施例22と同様の要領で、耐熱遮光フィルムを試作した。
実施例1と同様の方法でスパッタリング時のフィルムの表面温度を測定すると180〜220℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
得られた遮光フィルムを実施例1と同様の方法で評価すると、光学濃度4以上、波長380〜780nmでの最大反射率3%、光沢度3%以下の遮光フィルムが得られていることがわかった。また耐熱性についても同様に評価を行ったが、実施例1と全く同じ結果であった。また、表面抵抗値は、300Ω/□以下であり、表面の算術平均高さRaは0.4μmであることを確認した。
よって、このような耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0086】
(実施例25)
金属膜を作製する際に、純Niターゲットを用いて、低反射性の酸化物膜を作製する際に、Tiターゲットを用いて、実施例1と同様の要領で、遮光性のNi膜と低反射性の酸化チタン膜を両面に成膜して耐熱遮光フィルムを試作した。フィルムの種類及びフィルムのマット処理条件は実施例1と同じである。膜厚については表1に示した。
実施例1と同様の方法でスパッタリング時のフィルムの表面温度を測定すると180〜220℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
その結果、得られた遮光フィルムを実施例1と同様の方法で評価すると、光学濃度4以上、波長380〜780nmでの最大反射率2%、光沢度2%以下の遮光フィルムが得られていることがわかった。また、表面抵抗値は、500Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは0.4μmであることを確認した。耐熱性についてはわずかに膜剥がれが見られた。剥がれた箇所を走査型電子顕微鏡で観察すると、金属膜とポリイミドフィルムの界面で剥離していることがわかった。よって、このような耐熱遮光フィルムは、多くの光学系用途に利用できるものの、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材としては不適であることがわかった。
【0087】
(実施例26)
金属膜を作製する際に、Ni−Wターゲットを用いて、低反射性の酸化物膜を作製する際に、Wターゲットを用いて、実施例1と同様の要領で、遮光性のNi−W膜と低反射性の酸化タングステン膜を両面に成膜して耐熱遮光フィルムを試作した。
実施例1と同様の方法でスパッタリング時のフィルムの表面温度を測定すると180〜220℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
その結果、得られた遮光フィルムを実施例1と同様の方法で評価すると、光学濃度4以上、波長380〜780nmでの最大反射率2%、光沢度2%以下の遮光フィルムが得られていることがわかった。また耐熱性についても同様に評価を行ったが、実施例1と全く同じ結果であった。また、表面抵抗値は、400Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは0.4μmであることを確認した。
よって、このような耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0088】
(実施例27)
低反射性の酸化膜を作製する際に、Taターゲットに変えた以外は、実施例26と同様の要領で、耐熱遮光フィルムを試作した。
実施例1と同様の方法でスパッタリング時のフィルムの表面温度を測定すると180〜220℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
その結果、得られた遮光フィルムを実施例1と同様の方法で評価すると、光学濃度4以上、波長380〜780nmでの最大反射率2%、光沢度2%以下の遮光フィルムが得られていることがわかった。また耐熱性についても同様に評価を行ったが、実施例1と全く同じ結果であった。また、表面抵抗値は、700Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは0.4μmであることを確認した。
よって、このような耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0089】
(実施例28)
低反射性の酸化膜を作製する際に、Vターゲットに変えた以外は、実施例26と同様の要領で、耐熱遮光フィルムを試作した。実施例1と同様の方法でスパッタリング時のフィルムの表面温度を測定すると180〜200℃の温度であった。
作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。その結果、光学濃度、反射率、光沢度などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。また、表面抵抗値は、6×10Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは、0.4μmであることを確認した。
よって、このような耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0090】
(実施例29)
低反射性の酸化膜を作製する際に、Moターゲットに変えた以外は、実施例26と同様の要領で、耐熱遮光フィルムを試作した。
実施例1と同様の方法でスパッタリング時のフィルムの表面温度を測定すると180〜220℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。その結果、反射率、光沢度などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。光学濃度は2であり僅かに光を透過するが実用上問題ないことを確認した。また、表面抵抗値は、100Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは0.3μmであることを確認した。220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
よって、このような耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0091】
(実施例30)
低反射性の酸化膜を作製する際に、Coターゲットに変えた以外は、実施例26と同様の要領で、耐熱遮光フィルムを試作した。
実施例1と同様の方法でスパッタリング時のフィルムの表面温度を測定すると180〜220℃の温度であった。
実施例1と同等の方法、条件で評価した結果、光学濃度、反射率、光沢度、耐熱性などの諸特性は実施例1と同等のものが得られていた。また、表面抵抗値は、100Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは、0.4μmであることを確認した。220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
よって、このような耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0092】
(実施例31)
低反射性の酸化膜を作製する際に、Nbターゲットに変えた以外は、実施例26と同様の要領で、耐熱遮光フィルムを試作した。フィルムの種類及びフィルムのマット処理条件は実施例1と同じである。
実施例1と同様の方法でスパッタリング時のフィルムの表面温度を測定すると180〜220℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
得られた遮光フィルムを実施例1と同様の方法で評価すると、光学濃度4以上、波長380〜780nmでの最大反射率1%、光沢度2%以下の遮光フィルムが得られていることがわかった。また耐熱性についても同様に評価を行ったが、実施例1と全く同じ結果であった。また、表面抵抗値は、400Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは0.4μmであることを確認した。
よって、このような耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0093】
(実施例32)
低反射性の酸化膜を作製する際に、Fe系ターゲットに変えた以外は、実施例26と同様の要領で、耐熱遮光フィルムを試作した。フィルムの種類及びフィルムのマット処理条件は実施例1と同じである。実施例1と同様の方法でスパッタリング時のフィルムの表面温度を測定すると180〜220℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
得られた遮光フィルムを実施例1と同様の方法で評価すると、光学濃度4以上、波長380〜780nmでの最大反射率5%、光沢度3%以下の遮光フィルムが得られていることがわかった。また耐熱性についても同様に評価を行ったが、実施例1と全く同じ結果であった。また、表面抵抗値は、900Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは0.4μmであることを確認した。
よって、このような耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0094】
(実施例33)
低反射性の酸化膜を作製する際に、Alターゲットに変えた以外は、実施例26と同様の要領で、耐熱遮光フィルムを試作した。フィルムの種類及びフィルムのマット処理条件は実施例1と同じである実施例1と同様の方法でスパッタリング時のフィルムの表面温度を測定すると180〜220℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
得られた遮光フィルムを実施例1と同様の方法で評価すると、光学濃度4以上、波長380〜780nmでの最大反射率5%、光沢度3%以下の遮光フィルムが得られていることがわかった。また耐熱性についても同様に評価を行ったが、実施例1と全く同じ結果であった。また、表面抵抗値は、3×10Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは0.4μmであることを確認した。
よって、このような耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0095】
(実施例34)
低反射性の酸化膜を作製する際に、Si−Cターゲットに変えた以外は、実施例26と同様の要領で、耐熱遮光フィルムを試作した。酸化炭化シリコン膜(Si−C−O膜)は酸素ガスをスパッタリングガスに導入した反応性スパッタリングにより作製した。フィルムの種類及びフィルムのマット処理条件は実施例1と同じである。
実施例1と同様の方法でスパッタリング時のフィルムの表面温度を測定すると180〜220℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
得られた遮光フィルムを実施例1と同様の方法で評価すると、光学濃度4以上、波長380〜780nmでの最大反射率5%、光沢度3%以下の遮光フィルムが得られていることがわかった。また耐熱性についても同様に評価を行ったが、実施例1と全く同じ結果であった。また、表面抵抗値は、1×10Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは0.4μmであることを確認した。
よって、このような耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0096】
(実施例35)
低反射性の酸化膜を作製する際に、3%Ga添加ZnOターゲットに変えた以外は、実施例26と同様の要領で、耐熱遮光フィルムを試作した。フィルムの種類及びフィルムのマット処理条件は実施例1と同じである。実施例1と同様の方法でスパッタリング時のフィルムの表面温度を測定すると180〜220℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
得られた遮光フィルムを実施例1と同様の方法で評価すると、光学濃度4以上、波長380〜780nmでの最大反射率4%、光沢度3%以下の遮光フィルムが得られていることがわかった。また耐熱性についても同様に評価を行ったが、実施例1と全く同じ結果であった。また、表面抵抗値は、10Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは0.4μmであることを確認した。
よって、このような耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0097】
(実施例36)
低反射性の酸化膜を作製する際に、炭化チタンターゲットに変えた以外は、実施例26と同様の要領で、膜厚50nmの低反射性の炭素を含む酸化チタン膜(酸化炭化チタン膜、Ti−C−O膜)は、高周波スパッタ法で酸素ガスをスパッタリングガスに導入した反応性スパッタリングにより作製した。実施例1と同様の方法でスパッタリング時のフィルムの表面温度を測定すると180〜220℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
EPMAで定量分析を行い、酸化炭化チタン膜が得られていることを確認した。得られた遮光フィルムを実施例1と同様の方法で評価すると、光学濃度4以上、波長380〜780nmでの最大反射率4%、光沢度3%以下の遮光フィルムが得られていることがわかった。また耐熱性についても同様に評価を行ったが、実施例1と全く同じ結果であった。また、表面抵抗値は、4×10Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは0.4μmであることを確認した。
よって、このような耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0098】
(実施例37)
低反射性の酸化膜を作製する際に、ITOターゲット(10wt%酸化スズ添加酸化インジウムターゲット)に変えた以外は、実施例26と同様の要領で、耐熱遮光フィルムを試作した。ITO膜は直流スパッタ法で成膜し、ITO膜はスパッタガスとしてアルゴンと酸素の混合ガスを用いた。フィルムの厚みは75μmのものを用いたが、フィルムの種類及びフィルムのマット処理条件は実施例1と同じである。
実施例1と同様の方法でスパッタリング時のフィルムの表面温度を測定すると180〜220℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
得られた遮光フィルムを実施例1と同様の方法で評価すると、光学濃度4以上、波長380〜780nmでの最大反射率4%、光沢度3%以下の遮光フィルムが得られていることがわかった。また耐熱性についても同様に評価を行ったが、実施例1と全く同じ結果であった。また、表面抵抗値は、20Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは0.4μmであることを確認した。
よって、このような耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0099】
(実施例38)
低反射性の酸化膜を作製する際に、酸化ガリウムターゲットに変えた以外は、実施例26と同様の要領で、耐熱遮光フィルムを試作した。酸化ガリウム膜は高周波スパッタリングで、スパッタガスとしてアルゴンと酸素の混合ガスを用いた。フィルムの厚みは75μmのものを用いたが、フィルムの種類及びフィルムのマット処理条件は実施例1と同じである。
実施例1と同様の方法でスパッタリング時のフィルムの表面温度を測定すると180〜220℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
得られた遮光フィルムを実施例1と同様の方法で評価すると、光学濃度4以上、波長380〜780nmでの最大反射率4%、光沢度3%以下の遮光フィルムが得られていることがわかった。また耐熱性についても同様に評価を行ったが、実施例1と全く同じ結果であった。また、表面抵抗値は、80Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは0.4μmであることを確認した。
よって、このような耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0100】
(実施例39)
遮光性の金属膜を作製する際にNi−Wターゲットを用いて、低反射性の酸化物膜を作製する際にチタンターゲットを用いて、実施例1と同様の要領で、膜厚50nmの炭素を含む遮光性の炭素を含むニッケルタングステン膜(Ni−W―C)と、膜厚80nmの低反射性の酸化チタン膜を両面に成膜して耐熱遮光フィルムを試作した。フィルムの厚みは50μmのものを用いたが、フィルムの種類及びフィルムのマット処理条件は実施例1と同じである。
各膜の組成はEPMAで定量分析を行い、炭化ニッケルタングステン膜、酸化チタン膜が得られていることを確認した。
実施例1と同様の方法でスパッタリング時のフィルムの表面温度を測定すると180〜220℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
得られた遮光フィルムを実施例1と同様の方法で評価すると、光学濃度4以上、波長380〜780nmでの最大反射率5%、光沢度3%以下の遮光フィルムが得られていることがわかった。また耐熱性についても同様に評価を行ったが、実施例1と全く同じ結果であった。また、表面抵抗値は、800Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは0.4μmであることを確認した。
よって、このような耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0101】
(実施例40)
遮光性の金属膜を作製する際にNi−Wターゲットを用いて、低反射性の酸化物膜を作製する際にTiターゲットを用いて、実施例1と同様の要領で、Arガスに窒素ガスを導入して膜厚100nmの遮光性の窒素を含むNi−W膜と、膜厚55nmの低反射性の酸化チタン膜を両面に成膜して耐熱遮光フィルムを試作した。フィルムの厚みは75μmのものを用いたが、フィルムの種類及びフィルムのマット処理条件は実施例1と同じである。
実施例1と同様の方法でスパッタリング時のフィルムの表面温度を測定すると180〜220℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
得られた遮光フィルムを実施例1と同様の方法で評価すると、光学濃度4以上、波長380〜780nmでの最大反射率5%、光沢度3%以下の遮光フィルムが得られていることがわかった。また耐熱性についても同様に評価を行ったが、実施例1と全く同じ結果であった。また、表面抵抗値は、500Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは0.4μmであることを確認した。
よって、このような耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0102】
(実施例41)
遮光性の金属膜を作製する際にNi−Wターゲットを用いて、低反射性の酸化物膜を作製する際に酸化セリウムターゲットを用いて、実施例1と同様の要領で、膜厚100nmの遮光性のNi−W膜と、膜厚55nmの低反射性の酸化セリウム膜を両面に成膜して耐熱遮光フィルムを試作した。Ni−W膜は直流スパッタ法で成膜し、酸化セリウム膜は高周波スパッタ法で成膜した。フィルムの種類及びフィルムのマット処理条件は実施例1と同じである。
実施例1と同様の方法でスパッタリング時のフィルムの表面温度を測定すると180〜220℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
得られた遮光フィルムを実施例1と同様の方法で評価すると、光学濃度4以上、波長380〜780nmでの最大反射率5%、光沢度3%以下の遮光フィルムが得られていることがわかった。また耐熱性についても同様に評価を行ったが、実施例1と全く同じ結果であった。また、表面抵抗値は、15Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは0.4μmであることを確認した。
よって、このような耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0103】
(実施例42)
樹脂フィルム基材を厚みが12.5μmのポリイミドフィルムに変えた以外は実施例41と同様の要領で、耐熱遮光フィルムを試作した。ポリイミドフィルムの表面粗さは実施例41と同じである。
実施例1と同様の方法でスパッタリング時のフィルムの表面温度を測定すると180〜220℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
得られた遮光フィルムを実施例1と同様の方法で評価すると、光学濃度4以上、波長380〜780nmでの最大反射率5%、光沢度3%以下の遮光フィルムが得られていることがわかった。また耐熱性についても同様に評価を行ったが、実施例1と全く同じ結果であった。また、表面抵抗値は、15Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは0.4μmであることを確認した。
またポリイミドフィルムの厚みのみを、25μm、38μmに変えても、同等の特性の耐熱遮光フィルムを得ることがわかった。
よって、このような耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0104】
(実施例43)
遮光性の金属膜を作製する際にNi−Wターゲットを用いて、低反射性の酸化物膜を作製する際にTiターゲットを用いて、スパッタリングガス圧を0.2Paに変えた以外は、実施例1と同様の要領で、膜厚100nmの遮光性のNi−W膜と膜厚50nmの低反射性の酸化チタン膜を両面に成膜して耐熱遮光フィルムを試作した。フィルムの種類及びフィルムのマット処理条件は実施例1と同じである。
実施例1と同様の方法でスパッタリング時のフィルムの表面温度を測定すると180〜220℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
得られた遮光フィルムを実施例1と同様の方法で評価すると、光学濃度4以上、波長380〜780nmでの最大反射率1%、光沢度3%以下の遮光フィルムが得られていることがわかった。また耐熱性についても同様に評価を行ったが、実施例1と全く同じ結果であった。また、表面抵抗値は、300Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは0.4μmであることを確認した。
よって、このような耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
また、成膜時のガス圧のみを0.5Pa、0.7Pa、又は1.0Paとした場合も同様の結果が得られた。
【0105】
(実施例44)
遮光性の金属膜を作製する際にNi−Wターゲットを用いて、低反射性の酸化物膜を作製する際にTiターゲットを用いて、スパッタリングガス圧を1.2Paに変えた以外は、実施例1と同様の要領で、膜厚100nmの遮光性のNi−W膜と膜厚50nmの低反射性の酸化チタン膜を両面に成膜して耐熱遮光フィルムを試作した。フィルムの種類及びフィルムのマット処理条件は実施例1と同じである。
実施例1と同様の方法でスパッタリング時のフィルムの表面温度を測定すると180〜220℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
得られた遮光フィルムを実施例1と同様の方法で評価すると、光学濃度4以上、波長380〜780nmでの最大反射率1%、光沢度3%以下と実施例1と同等の遮光フィルムが得られていることがわかった。また、表面抵抗値は、300Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは0.4μmであったが、耐熱試験後の密着試験では、膜がわずかに剥がれた。
よって、このような耐熱遮光フィルムは、多くの光学用途に利用できるものの、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材としては不適であることがわかった。
【0106】
(実施例45)
遮光性の金属膜を作製する際にNi−Cuターゲットを用いて、低反射性の酸化膜を作製する際にCuターゲットを用いて、実施例1と同様の要領で、遮光性のNi−Cu膜と低反射性の酸化銅膜を両面に成膜して耐熱遮光フィルムを試作した。フィルムの種類及びフィルムのマット処理条件は実施例1と同じである。
実施例1と同様の方法でスパッタリング時のフィルムの表面温度を測定すると180〜220℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
得られた遮光フィルムを実施例1と同様の方法で評価すると、光学濃度4以上、波長380〜780nmでの最大反射率1%、光沢度3%以下の遮光フィルムが得られていることがわかった。また耐熱性についても同様に評価を行ったが、実施例1と全く同じ結果であった。また、表面抵抗値は、100Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは0.4μmであることを確認した。
よって、このような耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0107】
(比較例1)
ポリイミドフィルムのサンドブラストによる表面加工の条件を変えて遮光フィルムを作製した。すなわち、算術平均高さRaが0.1μmのポリイミドフィルムを使った以外は実施例1と全く同じ条件で、同じ膜構成の耐熱遮光フィルムを作製した。ただし、ポリイミドの種類、厚みは実施例1と同じである。
実施例1と同様の方法でスパッタリング時のフィルムの表面温度を測定すると180〜220℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。その結果、光学濃度は実施例1と同じ4以上のものが得られたが、波長380〜780nmにおける光反射率は最大で8%、光沢度は6%を示し、実施例1と比べて反射率と光沢度の大きい耐熱遮光フィルムであった。また、表面抵抗値は、500Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは、0.1μm未満であることを確認した。220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価では、反りや膜剥がれはなかった。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
このような反射率や光沢度の値の大きい耐熱遮光フィルムを、シャッター羽根などに用いようとしても表面反射の影響を受けるため利用は困難である。
【0108】
(比較例2)
サンドブラストによる表面加工の条件を変えて作製した算術平均高さRaが1.0μmのポリイミドフィルムを使った以外は実施例1と全く同じ条件で同じ膜構成の耐熱遮光フィルムを作製した。ただし、ポリイミドの種類、厚みは実施例1と同じである。
実施例1と同様の方法でスパッタリング時のフィルムの表面温度を測定すると180〜220℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。その結果、反射率は1%以下で光沢度は2%以下であり、実施例2と同じものが得られたが、光学濃度は2を示し、実施例1と比べて光学濃度の少ない耐熱遮光フィルムであった。また、表面抵抗値は、500Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは、0.9μmであることを確認した。220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価では、反りや膜剥がれはなかった。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
よって、このような光学濃度の低い耐熱遮光フィルムは、実施例と比べてかなり光を通すため、液晶プロジェクタの絞りの部材だけでなく多くの光学系遮光用途に利用できない。
【0109】
(比較例3)
Ni−Wターゲットを用いて、樹脂フィルムとしてPETフィルムをマット処理を行わずに使用した以外は実施例1と同様の条件、構成で遮光フィルムを作製した。実施例1と同様の方法でスパッタリング時のフィルムの表面温度を測定すると180〜220℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
得られた遮光フィルムは、光学濃度は3、反射率は最大で12%、光沢度は90%となり、また、表面抵抗値は、400Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは、0.5μmであることを確認した。表面のうねり、しわが発生して、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶用プロジェクタの絞りなどの羽根部材としては不適であることがわかった。
また、樹脂フィルムとしてPENフィルムやPCフィルムを使用した場合も同様な結果であった。
【0110】
(比較例4)
成膜時のフィルム基材温度が180℃未満となるよう、成膜中のフィルム基材を冷却するキャンロールの冷却温度を50℃とし、ターゲットへの投入電力を実施例1の50%とした以外は実施例1と同等の方法、構造で耐熱遮光フィルムを作製した。実施例1と同様の方法でスパッタリング時のフィルムの表面温度を測定すると140〜160℃の温度であった。
作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。その結果、光学濃度は2、反射率は最大で6%、光沢度は7%を示した。また、表面抵抗値は、600Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは、0.5μmであることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価では、反りが大きく、膜の密着性は非常に悪い結果であった。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
よって、このような光学濃度、反射率、光沢度、密着性の悪い耐熱遮光フィルムは、光学濃度、反射率、光沢度といった光学特性が悪く、密着性がないため、液晶プロジェクタの絞りの部材だけでなく多くの光学系用途に利用できない。
【0111】
(比較例5)
遮光性の金属膜を作製する際にNi−Wターゲットを用いて、低反射性の酸化物膜を作製する際にTiターゲットを用いて、実施例1と同様の要領で、膜厚30nmの遮光性のNi−W膜と、膜厚55nmの低反射性の酸化チタン膜を両面に成膜して耐熱遮光フィルムを試作した。Ni−W膜、酸化チタン膜は直流スパッタ法で成膜した。Ni−W膜はスパッタガスとしてアルゴンのみを用い、酸化チタン膜はスパッタガスとしてアルゴンと酸素の混合ガスを用いた。フィルムの厚みは75μmのものを用いたが、フィルムの種類及びフィルムのマット処理条件は実施例1と同じである。
実施例1と同様の方法でスパッタリング時のフィルムの表面温度を測定すると180〜220℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
得られた遮光フィルムを実施例1と同様の方法で評価すると、波長380〜780nmでの最大反射率5%、光沢度3%以下であったが、光学濃度が2であり、僅かに光を透過することを確認した。また耐熱性については同様に評価を行ったが、実施例1と全く同じ結果であった。また、表面抵抗値は、15Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは0.4μmであることを確認した。
よって、このような光学濃度の低い耐熱遮光フィルムは、僅かに光を通すため、液晶プロジェクタの絞りなどの部材としては好ましくない。
【0112】
(比較例6)
酸化物膜を形成せずに金属膜のみを形成した以外は実施例1と同様の方法で耐熱遮光フィルムを作製した。実施例1と同様に金属膜のスパッタリング時、フィルムの表面温度を赤外線放射温度計で巻き取り式スパッタリング装置の石英ガラスののぞき窓から測定すると180〜220℃の温度であった。
得られた耐熱遮光フィルムは、表面の算術平均高さRaは、0.4μmであり、光学濃度は4以上であり、表面抵抗値は210Ω/□であり、十分な遮光性と導電性を有していた。しかし、最大反射率は12%、光沢度は16%と高かった。これは、表面が高反射性の金属膜であるからである。反射率が高いため、レンズユニットの光学部材として利用すると反射光が迷光となり好ましくない。
また、JIS K5600−5−4に基づいて引っかき硬度試験(鉛筆法)を行ったところ、HBレベルであり、上述の全て実施例(H以上)と比べて硬度は劣っていた。比較例6では表面が金属膜であるが実施例では硬度のある酸化物膜であるからである。よって、光量調整装置やシャッターの羽根材として用いると、羽根材同士が擦れて膜に傷が入り、次第に遮光性が悪化する要因となる。
また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価では、顕著に膜剥離が観察された。これは金属膜が酸化されたためである。膜剥離が生じた後の光学濃度は3であり、摩擦係数は不良であった。
このような耐熱遮光フィルムは、常温で使用する遮光部材としても利用できず、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶用プロジェクタの絞りなどの羽根部材としても、当然ながら不適である。
【0113】
(実施例46)
厚みが38μmで、両面の算術平均高さがRa0.5μmであるポリイミドフィルムを用い、ガスバリア膜として膜厚20nmの酸化ニッケル膜を形成し、その上に遮光性の金属膜として、膜厚120nmのニッケル系金属膜を形成し、さらに低反射性の酸化物膜には酸化チタン膜を用いて耐熱遮光フィルムを試作した。
実施例1と同じ成膜装置を用いて、ガスバリア膜と金属膜は、Niを主成分としてWを6.9原子%含むNi系合金ターゲットを用い、酸化チタン膜は金属Tiターゲットを用いて成膜した。
実施例1と同様の方法でスパッタリング時のフィルムの表面温度を測定すると180〜220℃の温度となり、実施例1と同等のフィルム温度であった。
得られた遮光フィルムを実施例1と同様の方法で評価すると、光学濃度4以上、波長380〜780nmでの最大反射率2%、最小反射率1.5%、光沢度3%以下の遮光フィルムが得られていることがわかった。また耐熱性についても同様に評価を行ったが、実施例1と全く同じ結果であった。また、表面抵抗値は、300Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは0.4μmであることを確認した。
また、この耐熱遮光フィルムを、85℃、90%RHで1000時間の恒温恒湿試験を行ったが、色味の変化はなかった。波長380〜780nmでの分光測定を行うと、最大反射率、最小反射率はともに変化していなかった。
よって、このような耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
また、この耐熱遮光フィルムを、85℃、90%RHで1000時間の恒温恒湿試験を行ったが、反射率、色味、表面抵抗は変化無かった。
【0114】
(実施例47)
樹脂フィルム基板と金属膜の間にガスバリア膜を未挿入にした以外は実施例46と同等の方法、構造で耐熱遮光フィルムを作製した。実施例1と同様の方法でスパッタリング時のフィルムの表面温度を測定すると180〜220℃の温度であった。
得られた遮光フィルムを実施例1と同様の方法で評価すると、光学濃度4以上、波長380〜780nmでの最大反射率2%、最小反射率1.5%、光沢度3%以下の遮光フィルムが得られていることがわかった。また耐熱性についても同様に評価を行ったが、実施例1と全く同じ結果であった。また、表面抵抗値は、300Ω/□であり、表面の算術平均高さRaは0.4μmであることを確認した。
よって、このような耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
また、この耐熱遮光フィルムを、85℃、90%RHで1000時間の恒温恒湿試験を行ったところ、若干の色味の変化がみられ、黒色から暗い濃紺色へ変化した。波長380〜780nmでの分光測定を行うと、最大反射率は5%まで上昇し、最小反射率は0.2%まで低下していることがわかった。試験後の耐熱遮光フィルムの断面TEM観察およびEDXによる局所組成分析をおこなうと、金属膜の樹脂フィルム側の一部の領域に酸素が3%ほど進入していることがわかった。このように金属膜が光学特性の異なる二層構造となっていることから上述のような反射率の変化がみられたものと考えられる。
この様な色味の変化があっても最大反射率は5%以下であり、十分に利用することができるが、色味変化を嫌うような用途としては実施例47に示したようにガスバリア膜を挿入することが有用である。
【0115】
(実施例48)
実施例46において挿入したガスバリア膜として、酸化シリコン膜(膜厚30nm)のスパッタ膜に変えて、耐熱遮光フィルムを試作し、85℃、90%RHで1000時間の恒温恒湿試験を実施したところ、色味や反射率の変化はなく、ガスバリア膜として有効に機能することがわかった。ガスバリア膜を酸化タンタル(膜厚10nm)、酸化タングステン(膜厚10nm)、酸化バナジウム(膜厚30nm)、酸化モリブデン(膜厚20nm)、酸化コバルト(膜厚10nm)、酸化ニオブ(膜厚10nm)、酸化鉄(膜厚10nm)、酸化アルミニウム(膜厚30nm)、又は酸化チタン膜(膜厚5nm、30nm)とした場合も同様であった。
【0116】
(実施例49)
実施例1〜48で作製した耐熱遮光フィルムに打ち抜き加工を施し、20mm×30mmの遮光羽根を作製した。遮光羽根1枚の重量は、0.007〜0.02gとなった。遮光羽根2枚を絞り装置に搭載し、耐久試験を行った。
耐久試験では、ランプ光を照射しながら遮光羽根の作動範囲での最大及び最小の開口径となる範囲を数万回繰り返して遮光羽根を稼動し、その時に遮光羽根の耐熱性、耐摩耗性を評価した。
試験による磨耗による遮光羽根の外観変化はなく、絞り装置内に磨耗による異物の付着は見られなかった。したがって、摩擦、磨耗や騒音が小さいこと、及び樹脂フィルムを基材とすることで軽量化され、遮光羽根を駆動するモーターの駆動トルクを小さくすることができ、摺動性が良好であった。
【0117】
(比較例7)
遮光羽根を、厚みが50μm、75μm、150μmの金属製のSUS薄板に変えた以外は、実施例49と同じように遮光フィルムを打ち抜き加工し、SUS薄板を基材とした20mm×30mmの遮光羽根を作製し、実施例49と同様の評価を実施した。遮光羽根の重量は、0.2〜0.6gであり、実施例49の本発明の耐熱遮光フィルムを用いた同一形状の遮光羽根の重量と比べて重かった。
試験による磨耗による遮光羽根の外観変化はなく、絞り装置内に磨耗による異物の付着は見られなかった。しかし、遮光羽根の重量が大きいので、遮光羽根を駆動するモーターの駆動トルクが大きくなり、摺動性が悪かった。
【0118】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本発明の耐熱遮光フィルムの断面図である。
【図2】本発明の耐熱遮光フィルムを製造するのに用いる巻き取り式スパッタリング装置の一例を示す模式図である。
【図3】本発明の耐熱遮光フィルムを使用した光量調整用絞り装置の絞り機構を示す模式図である。
【符号の説明】
【0120】
1 樹脂フィルム基材
2 遮光性の金属膜
3 低反射性の酸化物膜
4 巻き出しロール
5 真空ポンプ
6 真空槽
7 冷却キャンロール
8 巻き取りロール
9 マグネトロンカソード
10 ターゲット
11 隔壁
12 耐熱遮光羽根
13 ガイド孔
14 ガイドピン
15 ピン
16 基板
17 孔
18 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
200℃以上の耐熱性を有する樹脂フィルム基材(A)と、樹脂フィルム基材(A)の片面もしくは両面にスパッタリング法で形成された50nm以上の膜厚を有するNi系金属膜(B)、及びNi系金属膜(B)上にスパッタリング法で形成された、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム、珪素、スズ、インジウム、ガリウム及びセリウムからなる群より選ばれた1種類以上の元素を含有する低反射性の酸化物膜(C)の積層膜とからなり、かつ積層膜の表面粗さが0.1〜0.7μm(算術平均高さRa)であることを特徴とする耐熱遮光フィルム。
【請求項2】
樹脂フィルム基材(A)が、ポリイミド、アラミド、ポリフェニレンサルファド、又はポリエーテルサルフォンから選ばれた1種類以上の有機樹脂で構成され、表面粗さが0.2〜0.8μm(算術平均高さRa)であることを特徴とする請求項1に記載の耐熱遮光フィルム。
【請求項3】
Ni系金属膜(B)が、ニッケルを主成分として、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム、及び珪素からなる群より選ばれた1種類以上の添加元素を含有するニッケル系合金膜であることを特徴とする請求項1に記載の耐熱遮光フィルム。
【請求項4】
Ni系金属膜(B)の膜厚が50〜250nmであり、また、前記酸化物膜(C)の膜厚が5〜240nmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の耐熱遮光フィルム。
【請求項5】
前記積層膜の表面抵抗値が1×10Ω/□以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の耐熱遮光フィルム。
【請求項6】
前記積層膜の光反射率が、波長380〜780nmにおいて5%以下であることを特徴とする請求項1〜5に記載の耐熱遮光フィルム。
【請求項7】
樹脂フィルム基材(A)の両面に、Ni系金属膜(B)と酸化物膜(C)からなる積層膜が形成されており、フィルム基板を中心として対称の構造であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の耐熱遮光フィルム。
【請求項8】
樹脂フィルム基材(A)と前記金属膜(B)の界面に、スパッタリング法で形成された金属酸化物膜がガスバリア膜(D)として介在することを特徴とする請求項1〜7に記載の耐熱遮光フィルム。
【請求項9】
前記ガスバリア膜(D)が、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、二オブ、鉄、アルミニウム、珪素、及びニッケルからなる群より選ばれる1種類以上の元素を主成分とする酸化物膜であることを特徴とする請求項8に記載の耐熱遮光フィルム。
【請求項10】
樹脂フィルム基材(A)の両面に、ガスバリア膜(D)と金属膜(B)と酸化物膜(C)からなる積層膜が形成されており、フィルム基板を中心として対称の構造であることを特徴とする請求項8又は9に記載の耐熱遮光フィルム。
【請求項11】
樹脂フィルム基材(A)の両面に形成されるガスバリア膜(D)同士、金属膜(B)同士、及び酸化物膜(C)同士は、実質的に同じ金属元素組成であることを特徴とする請求項10に記載の耐熱遮光フィルム。
【請求項12】
片面もしくは両面の表面粗さが0.2〜0.8μm(算術平均高さRa)の凹凸表面を有する樹脂フィルム基材(A)をスパッタリング装置に供給し、金属膜形成用ターゲットを用いて、スパッタリングにより樹脂フィルム基材(A)の凹凸表面上に、Ni系金属膜(B)を形成し、次に、酸化物膜形成用ターゲットを用いて、スパッタリングガスに酸素ガスを導入した反応性スパッタリングにより、Ni系金属膜(B)上に、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム、珪素、スズ、インジウム、ガリウム及びセリウムからなる群より選ばれた1種類以上の元素を含有する酸化物膜(C)を形成することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の耐熱遮光フィルムの製造方法。
【請求項13】
スパッタリングガス圧が、0.2〜1.0Paであることを特徴とする請求項12に記載の耐熱遮光フィルムの製造方法。
【請求項14】
スパッタリング時の樹脂フィルム基材温度が、180℃以上であることを特徴とする請求項12又は13に記載の耐熱遮光フィルムの製造方法。
【請求項15】
前記Ni系金属膜(B)及び前記酸化物膜(C)が形成された耐熱遮光フィルムを、さらに、スパッタリング装置に供給し、スパッタリングによって樹脂フィルム基材(A)の裏面にNi系金属膜(B)及びチタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム、珪素、スズ、インジウム、ガリウム及びセリウムからなる群より選ばれた1種類以上の元素を含有する酸化物膜(C)を順次形成することを特徴とする請求項12〜14のいずれかに記載の耐熱遮光フィルムの製造方法。
【請求項16】
片面もしくは両面の表面粗さが0.2〜0.8μm(算術平均高さRa)の凹凸表面を有する樹脂フィルム基材(A)をスパッタリング装置に供給し、ガスバリア膜形成用ターゲットを用いて、スパッタリングにより樹脂フィルム基材(A)の凹凸表面上に、まずガスバリア膜(D)を形成した後、前記金属膜(B)及び前記酸化物膜(C)を順次形成することを特徴とする請求項12に記載の耐熱遮光フィルムの製造方法。
【請求項17】
前記ガスバリア膜形成用ターゲットと前記金属膜形成用ターゲット、又は前記ガスバリア膜形成用ターゲットと前記酸化物膜形成用ターゲットがそれぞれ同一のものを用い各膜を形成することを特徴とする請求項16に記載の耐熱遮光フィルムの製造方法。
【請求項18】
樹脂フィルム基材(A)が、ロール状に巻き取られてスパッタリング装置のフィルム搬送部にセットされることを特徴とする請求項12〜17のいずれかに記載の耐熱遮光フィルムの製造方法。
【請求項19】
成膜中の樹脂フィルム基材が冷却されずに、成膜室内でフローティングの状態でスパッタリング成膜されることを特徴とする請求項12〜17のいずれかに記載の耐熱遮光フィルムの製造方法。
【請求項20】
請求項1〜11のいずれかに記載の耐熱遮光フィルムを加工して製造された耐熱性に優れた絞り。
【請求項21】
請求項1〜11のいずれかに記載の耐熱遮光フィルムを羽根材として用いてなる光量調整装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate