説明

耐熱電線

【課題】耐熱性に優れるとともに、高温下でも良好な絶縁性能を有する耐熱電線を提供する。
【解決手段】耐熱電線は、(A)フッ素含有量40〜70質量%のテトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体60〜90質量%、および(B)エチレン系ポリマー10〜40質量%からなるベースポリマー100質量部に対し、(C)平均二次粒径が0.01〜1.00μmの層状シリケート0.1〜15.0質量部を含有する電気絶縁性組成物からなる被覆12を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温下での絶縁性能の低下を抑制した耐熱電線に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、ガス器具や電子レンジのモータ線などの用途に、耐熱性と難燃性を併せ持つ絶縁電線のニーズが増大している。具体的には、電気用品の技術基準に基づく耐熱温度130℃以上の耐熱性と、米国UL規格の垂直燃焼試験(UL1581 VW−1)に合格する難燃性を有する絶縁電線である。
【0003】
この種の絶縁電線としては、例えばエチレン系共重合体に特定の難燃剤を組み合わせて配合した組成物を被覆材料として用いた絶縁電線が知られている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、上記要求特性を十分に満足するものではなく、特に、耐熱性が十分ではなかった。
【0004】
一方、テトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体に代表されるフッ素ゴムを絶縁材料として用いた電線が知られている。フッ素ゴムは、耐熱性、耐油性、耐薬品性、耐老化性、耐候性などに優れており、これを用いた電線は高い耐熱性を備えている。
【0005】
しかし、従来のフッ素ゴムからなる絶縁材料は、温度が高くなると絶縁抵抗が低下するという問題があり、これを用いた耐熱電線は高温使用時の絶縁性能が不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−119515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような従来の事情に対処してなされたもので、耐熱性に優れるとともに、高温下でも良好な絶縁性能を有する耐熱電線を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様である耐熱電線は、(A)フッ素含有量40〜70質量%のテトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体60〜90質量%、および(B)エチレン系ポリマー10〜40質量%からなるベースポリマー100質量部に対し、(C)平均二次粒径が0.01〜1.00μmの層状シリケート0.1〜15.0質量部を含有する電気絶縁性組成物からなる被覆を有するものである。
【0009】
本発明の第2の態様は、第1の態様の耐熱電線において、前記ベースポリマーは、(A)テトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体65〜80質量%、および(B)低密度ポリエチレン20〜35質量%からなるものである。
【0010】
本発明の第3の態様は、第1の態様または第2の態様の耐熱電線において、前記ベースポリマー100質量部に対し、前記(C)成分を0.1〜5.0質量部含有するものである。
【0011】
本発明の第4の態様は、第1の態様乃至第3の態様のいずれかの態様の耐熱電線において、前記(B)成分が、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、およびエチレン・酢酸ビニル共重合体から選択される少なくとも1種であるものである。
【0012】
本発明の第5の態様は、第1の態様乃至第4の態様のいずれかの態様の耐熱電線において、前記被覆が、次式で求められる絶縁抵抗の温度依存指数(Q)が1.0以下であるものである。
Q=[log(R20)]−[log(R90)]
(式中、R20は20℃における絶縁抵抗(MΩ・km)、R90は90℃における絶縁抵抗(MΩ・km)である。)
【発明の効果】
【0013】
本発明の耐熱電線によれば、耐熱性に優れるとともに、高温下でも良好な絶縁性能を具備することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の耐熱電線の一実施形態を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0016】
まず、本発明の耐熱電線に使用される電気絶縁性組成物について説明する。
【0017】
本発明で使用される電気絶縁性組成物のベースポリマーを構成する(A)成分のテトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体(FEPM)は、代表的には下記式で示す基本骨格を有するポリマーであり、例えば、テトラフルオロエチレンとプロピレンを低温乳化重合することにより得られる。
【化1】

(式中、mおよびnは、それぞれ1以上の整数を表す)
【0018】
このテトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体は、第3成分として、共重合可能なモノマー、例えば、エチレン、イソブチレン、アクリル酸およびそのアルキルエステル、メタクリル酸およびそのアルキルエステル、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロペン、クロロエチルビニルエーテル、クロロトリフルオロエチレン、パーフルオロアルキルビニルエーテルなどの1種以上を適当量含んでいてもよい。
【0019】
本発明においては、このようなテトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体のうち、フッ素含有量が40〜70質量%、好ましくは50〜60質量%のものを使用する。フッ素含有量が40質量%未満では耐熱性が低下し、70質量%を超えると機械的強度が低下する。
【0020】
(A)成分として使用される、フッ素含有量40〜70質量%のテトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体の市販品を例示すると、例えば旭硝子(株)製のAFLAS 150CS(比重:1.55、フッ素含有量:57%、ムーニー粘度ML1+10(100℃):140)、同AFLAS 150E(比重:1.55、ムーニー粘度ML1+10(100℃):60、ムーニー粘度ML1+10(121℃):45)(以上、商品名)などが挙げられる。なお、(A)成分のテトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0021】
本発明で用いられる(B)成分のエチレン系ポリマーとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)などのポリエチレン;エチレンに、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、4−メチル−1−ペンテンなどのα−オレフィンを共重合させたエチレン・α−オレフィン共重合体;エチレンに、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、パーサティック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニル、シクロヘキサカルボン酸ビニルなどのビニルエステルを共重合させたエチレン・ビニルエステル共重合体;エチレンに、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸‐2‐エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸イソブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチルなどの不飽和カルボン酸エステルを共重合させたエチレン・アクリル酸エステル共重合体などが挙げられる。これらのエチレン系ポリマーは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0022】
(B)成分のエチレン系ポリマーとしては、上述したもののなかでも、耐熱性や機械的特性などの観点から、密度(JIS K 6748)が0.940〜0.960g/cmの範囲の高密度ポリエチレン(HDPE)、同密度が0.910〜0.930g/cmの範囲の低密度ポリエチレン(LDPE)、同密度が0.910〜0.925g/cmの範囲の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン・アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)が好ましい。
【0023】
本発明で使用される電気絶縁性組成物のベースポリマーにおける上記(A)成分および(B)成分の混合割合は、(A)成分のテトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体が60〜90質量%、(B)成分のエチレン系ポリマーが10〜40質量%である。(A)成分の割合が60質量%未満では、耐熱性が低下し、(A)成分の割合が90質量%を超えると、機械的特性などが低下する。好ましくは(A)成分のテトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体が65〜80質量%、(B)成分のエチレン系ポリマーが20〜35質量%であり、より好ましくは、(A)成分のテトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体が65〜75質量%、(B)成分のエチレン系ポリマーが25〜35質量%である。
【0024】
本発明で使用される電気絶縁性組成物に配合される(C)成分の層状シリケートは、シリケートがイオンを介して層状に積層した構造を有する平板状の物質であり、例えば、モンモリロナイト、ヘクトライト、サポナイト、ソーコナイト、バイデライト、ステブンサイト、ノントロナイト、ボルホンスコアイト、ソーコナイト、マガジアイト、メドモンタイト、ケニアイト、クロライト、フロゴパイト、レピドライト、マスコバイト、バイオタイト、パラゴナイト、マーガライト、テニオライト、テトラシリシックマイカ、トリオクタヘドラルバーミキュライト、ジオクタヘドラルバーミキュライト、白雲母、黒雲母、パラゴナイト、レビトライト、マーガライト、クリントナイト、アナンダイトなどが挙げられる。また、これらを、第4級アンモニウム塩などで有機化処理したものも使用可能である。
【0025】
本発明においては、このような層状シリケートのうち、特に、平均二次粒径が0.01〜1.00μmであるものを使用する。平均二次粒径がこのような範囲にある層状シリケートを使用することにより、高温下でも絶縁抵抗が低下することがない優れた絶縁性能を組成物に付与することができる。層状シリケートの平均二次粒径は0.01〜0.80μmであることが好ましい。ここで、「平均二次粒径」とは、一次粒子が凝集した二次粒子の平均粒径をいい、例えば、層状シリケートから任意の部分を抽出して走査型電子顕微鏡を用いて拡大した写真を撮影し、各粉末の定方向の径を算術平均することにより求められる。
【0026】
なお、(C)成分の層状シリケートは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。2種以上を混合して使用する場合には、混合後の層状シリケート粉末の平均二次粒径が上記要件を満足するようにすればよい。
【0027】
この(C)成分の層状の配合量は、前述したベースポリマーの構成成分である(A)成分および(B)成分の合計量100質量部に対して0.1〜15.0質量部であり、好ましくは0.1〜5.0質量部である。配合量が0.1質量部未満では、絶縁抵抗の温度依存性が大きくなり、また、15.0質量部を超えると、ベースポリマーに対する分散性が低下し、いずれも前述した添加による効果が得られなくなる。
【0028】
本発明で使用される電気絶縁性組成物には、耐熱性や、引張強さなどの機械的特性を向上させる目的で、上記(C)成分以外の無機充填剤を配合することができる。そのような無機充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、溶融シリカ、結晶シリカ、タルク、クレー、アルミナ、ジルコニア、酸化マグネシウム、マイカ、チタンホワイト、ベンガラ、炭化珪素、窒化硼素、窒化珪素、窒化アルミなどが挙げられる。耐熱性の点からは、なかでも、炭酸カルシウム、タルクが好ましい。また、炭酸カルシウムやタルクは明色配合が可能であるという利点も有する。炭酸カルシウムは、重質炭酸カルシウムおよび軽質炭酸カルシウムのいずれも使用可能である。(C)成分以外の無機充填剤を配合する場合、その配合量は前述したベースポリマー成分の合計量100質量部に対して、好ましくは1〜200質量部であり、より好ましくは10〜100質量部である。
【0029】
本発明で使用される電気絶縁性組成物には、また、難燃性を付与する目的で、従来より知られる各種難燃剤および難燃助剤を配合することができる。そのような難燃剤および難燃助剤としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの金属水和物、グアニジン系、メラミン系などの窒素系難燃剤、リン酸アンモニウム、赤燐などのリン系難燃剤、リン−窒素系難燃剤、ホウ酸亜鉛などのホウ酸化合物、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)、エチレンビステトラブロモフタルイミド、デカブロモジフェニルオキサイド、テトラデカブロモジフェノキシベンゼンなどの臭素系難燃剤、三酸化アンチモンなどが挙げられる。
【0030】
本発明で使用される電気絶縁性組成物には、以上の各成分のほか、さらに、この種の組成物に一般に配合される加工助剤、分散剤、着色剤、老化防止剤、滑剤などの添加剤を、本発明の効果を阻害しない範囲で必要に応じて配合することができる。
【0031】
例えば、加工助剤として、ポリエチレンワックス、ステアリン酸ナトリウムなどをポリマー成分100質量部に対して0.5〜2.0質量部配合することができる。また、分散剤として脂肪族炭化水素樹脂混合物などをポリマー成分100質量部に対して0.5〜2.0質量部配合することができる。このような加工助剤や分散剤を配合することにより、ポリマーのブレンドに伴う機械的強度や耐熱性などの特性の低下を抑制することができるとともに、押出成形時の加工性を向上させることができる。具体的には、加工助剤として、AC−617A(商品名、ハネウェル社製;ポリエチレンワックス)などが使用される。また、分散剤として、ULTRA−LUBE790(商品名、パフォーマンスアディティブス社製;脂肪酸エステル/特殊潤滑剤混合物)などが使用される。
【0032】
本発明で使用される電気絶縁性組成物は、通常、成形(被覆)後、架橋される。架橋方法は特に限定されるものではなく、架橋剤を用いる化学架橋、電子線などの放射線による架橋など、任意の方法を用いることができる。化学架橋に用いる架橋剤としては、有機過酸化物が好ましく、例えば、1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンなどが使用される。また、このような架橋剤とともに、トリアリルイソシアヌレートなどの架橋助剤を併用することが好ましい。有機過酸化物は、ポリマー成分100質量部に対して、0.5〜2.0質量部配合することが好ましく、また、架橋助剤は、ポリマー成分100質量部に対して、0.5〜10.0質量部配合することが好ましい。
【0033】
電気絶縁性組成物は、上記したような(A)テトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体、(B)エチレン系ポリマー、および(C)層状シリケート、並びに、必要に応じて配合される各種成分を、オープンロール、バンバリーミキサ、加圧ニーダなどによって十分に混練することにより製造することができる。(C)成分や、(C)成分以外の無機充填剤、難燃剤、難燃助剤、加工助剤、分散剤などの添加剤は、(A)成分および(B)成分をそれぞれ素練りする際に予め混合しておいてもよい。
【0034】
本発明の耐熱電線は、上記のようにして得られた電気絶縁性組成物を、導体上に直接もしくは他の被覆を介して押出被覆し、架橋することにより製造される。架橋工程は押出被覆工程と別工程で行ってもよく、単一工程で連続して行ってもよい。導体の材質や外径、撚り合せの有無などは特に限定されるものではなく、用途によって適宜選択される。
【0035】
図1は、本発明の耐熱電線の一実施形態を示す横断面図である。
【0036】
図1において、符号11は、1本乃至複数本のすずめっき軟銅線などからなる導体を示し、この導体11上には、前述した電気絶縁性組成物を押出被覆し、架橋することによって絶縁体12が形成されている。
【0037】
本実施形態の絶縁電線は、以下の要件を満足するように構成されていることが好ましい。
(1)絶縁体12中における(C)成分の層状シリケートの平均二次粒径が0.01〜1.00μmである。
(2)絶縁体12の次式(1)で求められる絶縁抵抗の温度依存指数(Q)が1.0以下である。
Q=[log(R20)]−[log(R90)] …(1)
なお、式(1)中、R20は20℃における絶縁抵抗(MΩ・km)、R90は90℃における絶縁抵抗(MΩ・km)であり、JIS C 3005に準拠して測定される。
(3)絶縁体12の熱老化(180℃、336時間)後の引張強さが4.0MPa以上で、引張伸びが50%以上である。なお、引張強さおよび引張伸びは、JIS C 3005に準拠して測定される値である。
(4)電線全体として、VW−1垂直燃焼試験(UL 1581)に合格する難燃性を有する。
【0038】
本実施形態の耐熱電線においては、電気用品の技術基準に基づく耐熱温度130℃以上の耐熱性を有するとともに、従来のフッ素ゴムを使用した電線のように高温下で絶縁抵抗が低下することがなく、良好な絶縁特性を備えることができる。
【実施例】
【0039】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。実施例および比較例で用いた成分は以下の通りである。
【0040】
FEPM
旭硝子(株)製 商品名 AFLAS 150CS;フッ素含有量57質量%
EEA:
日本ポリエチレン(株)製 商品名 レクスパール EEA A 1150
LDPE:
日本ユニカー(株)製 商品名 NUC 9026
HDPE:
プライムポリマー(株)製 商品名 ハイゼックス 5305E
EVA:
日本ユニカー(株)製 商品名 NUC 3610
層状シリケート(C-1):
ズードケミー触媒(株)製 商品名 NANOFIL(1);
平均二次粒径0.50μm
層状シリケート(C-2):
ズードケミー触媒(株)製 商品名 NANOFIL(2);
平均二次粒径0.70μm
層状シリケート(C-3):
ズードケミー触媒(株)製 商品名 NANOFIL(3);
平均二次粒径1.50μm
【0041】
実施例1
FEPM62.0質量部、LDPE38.0質量部、および層状シリケート(C-1)3.0質量部をオープンロールを用いて十分に混練して電気絶縁性組成物を調製した。
【0042】
次いで、直径0.18mmのすずめっき軟銅線7本を集合撚りしてなる断面積0.18mmの銅撚線導体上に、上記電気絶縁性組成物を0.33mm厚に押出被覆し、加速電圧800kVの電子線照射装置で100kGyの電子線を照射して絶縁体を形成し、外径1.20mmの耐熱電線を製造した。
【0043】
実施例2〜10、比較例1〜6
電気絶縁性組成物の組成を表1に示すように変えた以外は、実施例1と同様にして電気絶縁性組成物を調製し、さらに、これらの組成物を用いて実施例1と同様にして耐熱電線を製造した。
【0044】
上記各実施例および各比較例で得られた耐熱電線について、20℃および90℃における絶縁抵抗、絶縁抵抗の温度依存性パラメータ、初期の機械的特性(引張強さ、引張伸び)、および耐熱性(耐熱老化性)を測定評価した。測定評価方法は以下に示すとおりである。
[絶縁抵抗および温度依存性パラメータ]
JIS C 3005に基づき、長さ20mに切り出した試料電線の絶縁抵抗を、20℃および90℃の水中で測定した。また、その測定値から前述した式(1)により温度依存性パラメータを算出した。
[初期引張強さおよび初期引張伸び]
JIS C 3005に準拠して、標線20mm、引張速度500mm/分の条件で測定した。
[耐熱性]
180℃で336時間熱老化させた後、JIS C 3005に準拠して、標線20mm、引張速度500mm/分の条件で、引張強さおよび引張伸びを測定した。
【0045】
これらの結果を表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
表1から明らかなように、実施例1〜10はいずれも絶縁抵抗、温度依存パラメータ、初期引張強さ、初期引張伸び、耐熱性において、良好な結果が得られた。
また、テトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体の含有量を65〜80質量%、エチレン系ポリマーの含有量を20〜35質量%とすることで、初期引張強さ、初期引張伸び、耐熱性において、さらに良好な結果が得られた(実施例4〜7)。
さらに、層状シリケートの含有量を0.1〜5.0質量部とすることで、絶縁抵抗の温度依存パラメータにおいて、さらに良好な結果が得られた(実施例4、5)。
【符号の説明】
【0048】
11…導体、12…絶縁体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)フッ素含有量40〜70質量%のテトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体60〜90質量%、および(B)エチレン系ポリマー10〜40質量%からなるベースポリマー100質量部に対し、(C)平均二次粒径が0.01〜1.00μmの層状シリケート0.1〜15.0質量部を含有する電気絶縁性組成物からなる被覆を有することを特徴とする耐熱電線。
【請求項2】
前記ベースポリマーは、(A)テトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体65〜80質量%、および(B)エチレン系ポリマー20〜35質量%からなることを特徴とする請求項1記載の耐熱電線。
【請求項3】
前記ベースポリマー100質量部に対し、前記(C)成分を0.1〜5.0質量部含有することを特徴とする請求項1または2記載の耐熱電線。
【請求項4】
前記(B)成分は、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、およびエチレン・酢酸ビニル共重合体から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の耐熱電線。
【請求項5】
前記被覆は、次式で求められる絶縁抵抗の温度依存指数(Q)が1.0以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の耐熱電線。
Q=[log(R20)]−[log(R90)]
(式中、R20は20℃における絶縁抵抗(MΩ・km)、R90は90℃における絶縁抵抗(MΩ・km)である。)

【図1】
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【公開番号】特開2013−4264(P2013−4264A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133226(P2011−133226)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(306013120)昭和電線ケーブルシステム株式会社 (218)
【Fターム(参考)】