説明

耐熱高分子フィルムの製造装置および耐熱高分子フィルムの製造方法

【課題】 300℃以上の高温で稼動させても騒音が小さく、かつ得られるフィルムの金属ダスト量を大幅に低減可能な耐熱高分子フィルムの製造装置を提供する。
【解決手段】 耐熱高分子フィルムまたはその前駆体フィルムに対して、熱処理などの処理を行うフィルム端部固定式テンターにおいて、フィルム端部把持機構をフィルム搬送方向に駆動するための駆動機構部の摺動部に固体潤滑作用を有する耐熱性化合物を作用させてなることを特徴とする耐熱高分子フィルム製造装置であり、300℃以上の温度で3時間稼動させた後のフィルム搬送時に生ずる摩擦音の基本周波数が3kHz以下である高分子フィルムの製造装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐熱高分子フィルムの製造装置に関するするものであり、特に耐熱高分子フィルムを製造する際の最終熱処理時に、前駆体フィルムを高温熱処理して耐熱高分子フィルムとなす際におけるテンター式(フィルム搬送)処理部に特徴を有する耐熱高分子フィルムの製造装置に関し、また、その方法においてこの装置を使用した耐熱高分子フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドフィルムを製造するとき、未乾燥前駆体フィルム(グリーンフィルム)を高
温でイミド化するが、この場合未乾燥な前駆体フィルムを搬送しながら熱処理し乾燥および熱処理を行うが、これらの溶媒を少なからず保有しているフィルムや前駆体フィルムは一般的に乾燥されるにしたがって収縮する。このようなフィルムの搬送・乾燥・熱処理において、フィルムの幅方向の両側端部を多数のピンやクリップで保持することによりフィルムの幅方向を張設した状態で搬送しフィルムを製造する装置として、所謂テンターと呼ばれるフィルム(シート)のテンター式搬送装置が知られている(例えば、特許文献1)。
また、ポリイミドフィルムの製造にテンター式搬送装置を使用することも多数知られている(例えば、特許文献2)。
【0003】
フィルム搬送装置を使用することにより乾燥・熱処理時の熱でフィルムがその幅方向に収縮するのを抑制し、乾燥・熱処理後のフィルムに収縮による皺が発生しないようにすることができる。
フィルムの収縮はフィルムの幅方向に限らず全方向に生じるが、フィルムの搬送方向は搬送テンションが作用しており収縮に対しての抑制効果がある。このように、未乾燥のフィルムを乾燥・熱処理する際にフィルムのテンター式搬送装置を使用して搬送することにより、乾燥・熱処理されたフィルムに必要な強度及び平面性を確保することができる。
【0004】
特にポリイミドフィルムの製造に用いられるテンターは、300℃を越える温度での熱処理を行うため、工業的に安定した生産を行うためにはテンター自体の耐熱性、耐久性が肝要となってくる。特にフィルムを搬送する駆動部分には高い耐熱性を有するステンレス鋼などが用いられる訳であるが、こと摺動部分に限っては潤滑油を使うことが出来ないため、金属部品同士の摩擦摩耗が生じる。このため、装置の寿命には限界があり、さらに摩耗により生じた金属微粉によるフィルム製品の汚染等の問題が生じている。
一般に、潤滑油が使えない場面では固体潤滑材を使用することが知られているが、フッ素樹脂、シリコーン樹脂などの高分子系固体潤滑剤(例えば、特許文献3)は高温であるために使用出来ない。また比較的耐熱性の高いグラファイト(例えば、特許文献4)は、導電性の異物発生源となるため不適である。
【0005】
【特許文献1】特公昭39─029211号公報
【特許文献2】特開平09―188763号公報
【特許文献3】特開2005−325182号公報
【特許文献4】特開平11−166539号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、300℃以上の高温で稼動させても騒音が小さく、かつ得られるフィルムの金属ダスト、導電性異物などによる汚染が少なく、300℃以上の高温熱処理が必要な、ポリイミドフィルム、セルロース系フィルム、ポリアミドフィルム、ポリアミドイミドフィルムなどの耐熱高分子フィルムの製造に好適な耐久性に優れた耐熱高分子フィルム製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討した結果、ポリイミドフィルムなど耐熱高分子フィルムの製造に用いられるテンター式搬送装置において、摺動部に特定の固体潤滑化合物を用いることにより、導電性異物による表面汚染の少ないクリーンな耐熱高分子フィルムの製造が可能であり、かつ耐久性に優れた製造装置を見出すに至った。
すなわち本発明は、以下の構成を採用する。
1.耐熱高分子フィルムまたはその前駆体フィルムに対して、熱処理などの処理を行うフィルム端部固定式テンターにおいて、フィルム端部把持機構をフィルム搬送方向に駆動するための駆動機構部の摺動部に固体潤滑作用を有する耐熱性化合物を作用させてなることを特徴とする耐熱高分子フィルム製造装置。
2.前記の固体潤滑作用を有する耐熱性化合物が、非金属又は金属の硼化物、金属硫化物のいずれかであることを特徴とする、第1記載の耐熱高分子フィルム製造装置。
3.300℃以上の温度で3時間稼動させた後のフィルム搬送時に生ずる摩擦音の基本周波数が3kHz以下であることを特徴とする第1又は2に記載高分子フィルムの製造装置。
4.前記の耐熱高分子フィルムがポリイミドフィルムであることを特徴とする第1〜3のいずれかに記載の耐熱高分子フィルム製造装置。
5.フィルム端部把持機構が、ピン式又はクリップ式である第1〜4のいずれかに記載の耐熱高分子フィルム製造装置。
6.第1〜5のいずれかの耐熱高分子フィルム製造装置を用いることを特徴とする耐熱高分子フィルムの製造方法。
7.前記の耐熱高分子フィルムがポリイミドフィルムである第6記載の耐熱高分子フィルム製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の耐熱高分子フィルム製造装置は、耐熱性と絶縁性を両立し、300℃以上、好ましくは380℃以上、より好ましくは460℃以上という高温域でも潤滑作用を維持する固体潤滑剤が摺動部に用いられているため、稼動時の騒音が小さく、フィルムに余計な振動を与えることがなくフィルムのスムースな搬送が可能であるのみならず、金属ダスト、導電性異物などによる汚染が少なく、かつフィルム全体での歪の低減、フィルム厚み斑の低減が可能であり、10μm以下の極薄の耐熱性フィルムであっても安定に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明において、耐熱高分子フィルムとは、ポリアミドイミド、ポリイミド、酢酸セルロース、アラミドなど高融点や非溶融性高分子からのフィルムが挙げられる。
本発明の製造装置に用いられる耐熱高分子は、通常、これらの高分子を含む溶液を流延し、乾燥、熱処理してフィルムとなす。これらの高分子を含む溶液に用いられる溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、メタノール、メタクレゾールなどが挙げられる。
本発明において好ましく用いられる高分子溶液としては、ポリアミドイミドのN−メチル−2−ピロリドン溶液、N,N−ジメチルアセトアミド溶液、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸のN−メチル−2−ピロリドン溶液、N,N−ジメチルアセトアミド溶液、溶剤可溶なポリイミドのN−メチル−2−ピロリドン溶液、N,N−ジメチルアセトアミド溶液、酢酸セルロースの塩化メチレン溶液、メタノール溶液、ポリカーボネートの塩化メチレン溶液、メタクレゾール溶液、ポリ塩化ビニルのテトラヒドロフラン溶液、アラミドのN−メチル−2−ピロリドン溶液などが挙げられる。
【0010】
本発明の高分子フィルムの製造装置および製造方法は、特にポリイミド前駆体であるポリアミド酸のN−メチル−2−ピロリドン溶液、N,N−ジメチルアセトアミド溶液やポリイミドベンゾオキサゾールの前駆体であるポリアミド酸のN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の溶液を使用する流延製膜方法による場合に最も好ましく適用し得る。以下ポリイミドフィルムについて詳述するがこれらに限定されるものではない。
本発明に好ましく適用し得る、ポリイミドフィルムを得るための芳香族ジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸類との反応は、溶媒中で芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸(無水物)類とを(開環)重付加反応に供してポリイミド前駆体であるポリアミド酸の溶液を得て、次いで、このポリアミド酸の溶液から前駆体フィルム(グリーンフィルム)を成形した後に乾燥・熱処理・脱水縮合(イミド化)することにより製造される。
【0011】
本発明におけるポリイミドフィルムは、特に限定されるものではないが、下記の芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸(無水物)類との組み合わせが好ましい例として挙げられる。
A.ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸類との組み合わせ。
B.ジアミノジフェニルエーテル骨格を有する芳香族ジアミン類とピロメリット酸骨格を有する芳香族テトラカルボン酸類との組み合わせ。
C.フェニレンジアミン骨格を有する芳香族ジアミン類とビフェニルテトラカルボン酸骨格を有する芳香族テトラカルボン酸類との組み合わせ。
D.上記のABCの一種以上の組み合わせ。
本発明で好ましく使用できるベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類として、下記の化合物が例示できる。
【0012】
【化1】

【0013】
【化2】

【0014】
【化3】

【0015】
【化4】

【0016】
2,2’−p−フェニレンビス(5−アミノベンゾオキサゾール)、2,2’−p−フェニレンビス(6−アミノベンゾオキサゾール)、1−(5−アミノベンゾオキサゾロ)−4−(6−アミノベンゾオキサゾロ)ベンゼン、2,6−(4,4’−ジアミノジフェニル)ベンゾ〔1,2−d:5,4−d’〕ビスオキサゾール、2,6−(4,4’−ジアミノジフェニル)ベンゾ〔1,2−d:4,5−d’〕ビスオキサゾール、2,6−(3,4’−ジアミノジフェニル)ベンゾ〔1,2−d:5,4−d’〕ビスオキサゾール、2,6−(3,4’−ジアミノジフェニル)ベンゾ〔1,2−d:4,5−d’〕ビスオキサゾール、2,6−(3,3’−ジアミノジフェニル)ベンゾ〔1,2−d:5,4−d’〕ビスオキサゾール、2,6−(3,3’−ジアミノジフェニル)ベンゾ〔1,2−d:4,5−d’〕ビスオキサゾール。
【0017】
これらの中でも、合成のし易さの観点から、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールの各異性体が好ましい。ここで、「各異性体」とは、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールが有する2つアミノ基が配位位置に応じて定められる各異性体である(例;上記「化1」〜「化4」に記載の各化合物)。これらのジアミンは、単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
本発明においては、前記ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミンを70モル%以上使用することが好ましい。
【0018】
本発明におけるジアミノジフェニルエーテル骨格を有する芳香族ジアミン類としては、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル(DADE)、3,3′−ジアミノジフェニルエーテルおよび3,4′−ジアミノジフェニルエーテルおよびそれらの誘導体が挙げられる。
本発明におけるフェニレンジアミン骨格を有する芳香族ジアミン類としては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミンおよびそれらの誘導体が挙げられる。
本発明におけるポリイミドフィルムには前記に限定されない下記の芳香族ジアミンを使用してもよい。
例えば、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、
【0019】
3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、
【0020】
1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノシ)フェニル]ブタン、2,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、
【0021】
1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’−ビス[(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、
【0022】
2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、4,4’−ビス[3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−トリフルオロメチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−フルオロフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−メチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−シアノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、
【0023】
3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ5,
5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジフェノキシベン
ゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ
−5−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン
3,4’−ジアミノ−5’−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’
−ジビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジビフェノキシベン
ゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−ビフェノキ
シベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−
ジアミノ−5’−ビフェノキシベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノ−4−フェノ
キシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベ
ンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビ
ス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−4
−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベ
ンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼ
ン、1,4−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、2,6−ビス
[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾニトリルおよび上
記芳香族ジアミンにおける芳香環上の水素原子の一部もしくは全てがハロゲン原子、炭素
数1〜3のアルキル基又はアルコキシル基、シアノ基、又はアルキル基又はアルコキシル
基の水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換された炭素数1〜3のハロゲン化
アルキル基又はアルコキシル基で置換された芳香族ジアミン等が挙げられる。
本発明におけるポリイミドフィルムとして好ましく使用できる芳香族テトラカルボン酸類として、ピロメリット酸骨格を有する芳香族テトラカルボン酸類すなわちピロメリット酸およびその無水物またはハロゲン化物、ビフェニルテトラカルボン酸骨格を有する芳香族テトラカルボン酸類すなわちビフェニルテトラカルボン酸およびその無水物またはハロゲン化物が挙げられる。
前記に限定されないで下記の芳香族テトラカルボン酸を使用してもよい。
【0024】
【化5】

【0025】
【化6】

【0026】
【化7】

【0027】
【化8】

これらのテトラカルボン酸は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0028】
芳香族ジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸無水物類とを重合してポリアミド酸を得るときに用いる溶媒は、原料となるモノマーおよび生成するポリアミド酸のいずれをも溶解するものであれば特に限定されないが、極性有機溶媒が好ましく、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−アセチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリックアミド、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、スルホラン、ハロゲン化フェノール類等があげられるが、なかでもN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミドが好ましく適用される。これらの溶媒は、単独あるいは混合して使用することができる。溶媒の使用量は、原料となるモノマーを溶解するのに十分な量であればよく、具体的な使用量としては、モノマーを溶解した溶液に占めるモノマーの重量が、通常5〜40質量%、好ましくは10〜20質量%となるような量が挙げられる。
【0029】
ポリアミド酸を得るための重合反応(以下、単に「重合反応」ともいう)の条件は従来公知の条件を適用すればよく、具体例として、有機溶媒中、0〜80℃の温度範囲で、10分〜30時間連続して撹拌および/又は混合することが挙げられる。必要により重合反応を分割したり、温度を上下させてもかまわない。この場合に、両モノマーの添加順序には特に制限はないが、芳香族ジアミン類の溶液中に芳香族テトラカルボン酸無水物類を添加するのが好ましい。重合反応によって得られるポリアミド酸溶液に占めるポリアミド酸の重量は、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは10〜30質量%であり、前記溶液の粘度はブルックフィールド粘度計による測定(25℃)で、送液の安定性の点から、好ましくは10〜2000Pa・sであり、より好ましくは100〜1000Pa・sである。
本発明におけるポリアミド酸の還元粘度(ηsp/C)は、特に限定するものではないが3.0以上が好ましく、4.0以上がさらに好ましく、なおさらに5.0以上が好ましい。
【0030】
また、重合反応の前に芳香族ジアミン類に少量の末端封止剤を添加して重合を制御することを行ってもよい。末端封止剤としては、無水マレイン酸等といった炭素−炭素二重結合を有する化合物が挙げられる。無水マレイン酸を使用する場合の使用量は、芳香族ジアミン類1モル当たり好ましくは0.001〜1.0モルである。
重合反応中に真空脱泡することは、良質なポリアミド酸の溶液を製造するのに有効である。
さらに、以下述べるポリアミド酸の溶液を支持体上に流延・塗布するに際して予め減圧などの処理によって該溶液中の気泡や溶存気体を除去しておくことも、本発明のポリイミドフィルムを得るために有効な処理である。
【0031】
ポリアミド酸溶液を塗布する支持体は、ポリアミド酸溶液をフィルム状に成形するに足る程度の平滑性、剛性を有していればよく、表面が金属、プラスチック、ガラス、磁器などであるドラム又はベルト状回転体などが挙げられる。また、適度な剛性と高い平滑性を有する高分子フィルムを利用する方法も好ましい態様である。中でも、支持体の表面は好ましくは金属であり、より好ましくは錆びなくて耐腐食に優れるステンレスである。支持体の表面にはCr、Ni、Snなどの金属メッキを施してもよい。支持体表面は必要に応じて鏡面にしたり、あるいは梨地状に加工することができる。また支持体の差によって乾燥における風量や温度は適宜選択採用すればよく、支持体へのポリアミド酸溶液の塗布は、スリット付き口金からの流延、押出機による押出し、スキージコーティング、リバースコーティング、ダイコーティング、アプリケータコーティング、ワイヤーバーコーティング等を含むが、これらに限られず、従来公知の溶液の塗布手段を適宜用いることができる。
【0032】
イミド化・熱処理として、閉環(イミド化)触媒や脱水剤を含まないポリアミド酸溶液を用いて、熱処理に供することでイミド化反応を進行させる方法(所謂、熱閉環法)やポリアミド酸溶液に閉環触媒および脱水剤を含有させておいて、上記閉環触媒および脱水剤の作用によってイミド化反応を行わせる、化学閉環法を挙げることができる。
熱閉環法の熱処理温度は、150〜500℃が好ましく、熱処理温度がこの範囲より低いと充分に閉環されづらくなり、またこの範囲より高いと劣化が進行し、フィルムが脆くなりやすくなる。より好ましい態様としては、150〜250℃で3〜20分間処理した後に350〜500℃で3〜20分間熱処理するところの初期段階熱処理と後段階熱処理とを有する2段階熱処理工程が挙げられる。
【0033】
閉環触媒をポリアミド酸溶液に加えるタイミングは特に限定はなく、ポリアミド酸を得るための重合反応を行う前に予め加えておいてもよい。閉環触媒の具体例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどといった脂肪族第3級アミンや、イソキノリン、ピリジン、ベータピコリンなどといった複素環式第3級アミンなどが挙げられ、中でも、複素環式第3級アミンから選ばれる少なくとも一種のアミンが好ましい。ポリアミド酸1モルに対する閉環触媒の使用量は特に限定はないが、好ましくは0.5〜8モルである。
脱水剤をポリアミド酸溶液に加えるタイミングも特に限定はなく、ポリアミド酸を得るための重合反応を行う前に予め加えておいてもよい。脱水剤の具体例としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸などといった脂肪族カルボン酸無水物や、無水安息香酸などといった芳香族カルボン酸無水物などが挙げられ、中でも、無水酢酸、無水安息香酸あるいはそれらの混合物が好ましい。また、ポリアミド酸1モルに対する脱水剤の使用量は特に限定はないが、好ましくは0.1〜4モルである。脱水剤を用いる場合には、アセチルアセトンなどといったゲル化遅延剤を併用してもよい。
【0034】
熱閉環反応であっても、化学閉環法であっても、支持体に形成されたポリイミドフィルムの前駆体(グリーンシート、フィルム)を完全にイミド化する前に支持体から剥離してもよいし、イミド化後に剥離してもよい。
ポリイミドフィルムの厚さは特に限定されないが、後述するプリント配線基板用ベース基板に用いることを考慮すると、5〜150μm、好ましくは10〜100μmである。この厚さはポリアミド酸溶液を支持体に塗布する際の塗布量や、ポリアミド酸溶液の濃度によって容易に制御し得る。
本発明のポリイミドフィルムには、滑剤をポリイミド中に添加含有せしめるなどしてフィルム表面に微細な凹凸を付与しフィルムの滑り性を改善することが好ましい。
滑剤としては、無機や有機の0.03〜3μm程度の平均粒子径を有する微粒子が使用でき、具体例として、酸化チタン、アルミナ、シリカ、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、燐酸水素カルシウム、ピロ燐酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、粘土鉱物などが挙げられる。
【0035】
本発明の、高分子フィルムまたはその前駆体フィルムをフィルム端部固定式テンターにて処理する際に、フィルムの幅方向の両側端部におけるフィルム端部把持が、多数のピンシートと個々のピンシートに配された多数のピンで構成され、該ピンがフィルム両側端部を突き刺すことでなされ、フィルム幅方向における最内側に配列された個々のピンが互いに、フィルム搬送方向で個々のピンシート内においても、他のピンシート間においても、全て等間隔で配されていることを特徴とする高分子フィルムの製造装置における、ピン配列を詳述する。図に示すように熱処理などの処理を受ける処理室内では、多数のピンが配されたピンシートが多数フィルム両端部に配されており、個々のピンシートには最内側に搬送方向に直列配列された複数ピンとそれ以外の複数ピンが設けられており、前記の個々のピンシートにおける最内側に搬送方向に直列配列された複数ピンの配列が重要であって、この個々のピンシートの最内側に搬送方向に直列配列された複数ピンを例えば搬送方向に向かってA1、A2、A3、A4、・・・Anとしたとき、隣接するピンシートにおける最内側に搬送方向に直列配列された複数ピンを例えば搬送方向に向かってB1、B2、B3、B4、・・・Bnとしたとき、A1、A2、A3、A4、・・・AnまたB1、B2、B3、B4、・・・Bnの各ピンの間隔が同一であり、かつAnとB1との間隔も前者と同一であり、他のピンシートにおける最内側に搬送方向に直列配列された複数ピンにおいても前記関係を有しており、処理室内ではこの複数ピンシートはフィルム両端で互いに並行に走行しているものであって、少なくともこの処理室内でこの複数ピンシートがフィルム両端で互いに並行に走行している間は前記のピンの間隔を保持してフィルムを把持搬送するものである。
【0036】
また、本発明の、高分子フィルムまたはその前駆体フィルムをフィルム端部固定式テンターにて処理する際に、フィルムの幅方向の両側端部におけるフィルム端部把持が、多数のピンシートと個々のピンシートに配された多数のピンで構成され、該ピンがフィルム両側端部を突き刺すことでなされ、フィルム幅方向における最内側に配列された個々のピンが互いに、フィルム搬送方向で個々のピンシート内においても、他のピンシート間においても、全て等間隔で配されていることを特徴とする高分子フィルムの製造装置において、このピン間隔が把持フィルムの幅に対して1/10以下であることが好ましく、このことで、フィルム把持の均一性が保たれ易く、ピンを喰い込ませた孔でのフィルムの幅方向または搬送方向にも孔が拡大することや破断が生じることが抑制され、フィルム全体での歪の低減、フィルム厚み斑の低減が達成し得る。
【0037】
本発明の製造装置の摺動部に作用させる固体潤滑作用を有する耐熱性化合物とは、非金属又は金属の硼化物、金属硫化物のいずれかであり、非金属硼素化物としては、六方晶系の窒化ホウ素(h-BN)、金属硼素化物としては、CrB、TiB、MoB、WB、TaB、金属硫化物としては、二硫化タングステン、二硫化モリブデン、硫化ニオブ、二硫化タングステン、硫化鉄などが挙げられる。
これらの他にグラファイト、フッ化黒鉛、フッ化セリウム、金、銀、イリジウム、バリウムなどを補助的に用いても良い。
【0038】
固体潤滑剤の摺動部への作用方法は特に限定されないが、例示した固体潤滑作用を有する耐熱性化合物と、比較的柔軟な金属とを粉末冶金的に焼結させたブロックを作製し、かかるブロックをチェーンブロック、コロ、ボール、軸受け等に接触させることにより固体潤滑剤成分による皮膜を形成させることができる。
【0039】
これらの固体潤滑作用を有する耐熱性化合物を摺動部に作用させる方法としては、特に限定されないが、例えば、チェーンブロックを乗せるコロに、コロの下部より固体潤滑剤スティックを押し当てる機構を付加し、あらかじめコロ回転体部分と、コロに接するチェーンブロックに固体潤滑剤成分を転写させる方法がある。
固体潤滑剤スティックとしては先に例示した固定潤滑剤を比較的柔らかい金属、例えば、Ni、Fe、Co、Cu、Sn、Ag、Pb、Mn、Cr、Mo、W、Nb、Ta、Al、Zn、Tiなどと粉末冶金的に焼結させたものを用いることが出来る。
【0040】
これらの固体潤滑作用を有する耐熱性化合物の作用で、本発明の製造装置は、300℃以上の高温熱処理を長時間稼動させても、摺動部の磨耗を抑制できるため、主に摺動部の磨耗によって発生すると考えられるフィルム搬送時に生ずる摩擦音を基本周波数が3kHz以下とすることができ、作業環境の改善ができるとともに、製造されたフィルム表面の金属ダスト量を大幅に減少させることができる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例における物性の評価方法は以下の通りである。
【0042】
1.ポリアミド酸の還元粘度(ηsp/C)
ポリマー濃度が0.2g/dlとなるようにN−メチル−2−ピロリドン(又は、N,N−ジメチルアセトアミド)に溶解した溶液をウベローデ型の粘度管により30℃で測定した。(ポリアミド酸溶液の調製に使用した溶媒がN,N−ジメチルアセトアミドの場合は、N,N−ジメチルアセトアミドを使用してポリマーを溶解して測定した。)
【0043】
2.ポリイミドフィルムの厚さ
マイクロメーター(ファインリューフ社製、ミリトロン1245D)を用いて測定した。
【0044】
3.ポリイミドフィルムの引張弾性率、引張破断強度および引張破断伸度
測定対象のポリイミドフィルムを、流れ方向(MD方向)および幅方向(TD方向)にそれぞれ100mm×10mmの短冊状に切り出したものを試験片とした。引張試験機(島津製作所製、オートグラフ(R) 機種名AG−5000A)を用い、引張速度50mm/分、チャック間距離40mmの条件で、MD方向、TD方向それぞれについて、引張弾性率、引張破断強度及び引張破断伸度を測定した。
【0045】
4.金属ダスト量の定量
得られたフィルムから無作為に一辺が50mmとなる正方形を25枚切り出し、それらを10%塩酸水溶液500mlに、各々のフィルムの表裏が十分に塩酸水溶液に接するように室温にて24時間浸積した後に、フィルムを取りだし、塩酸水溶液中に含まれる金属成分を原子吸光分析にて定量した。
金属成分としては、ピンテンター摺動部に使用されていると推定されるステンレス鋼の主成分である、鉄、ニッケル、クロムが検出された。これの合計をフィルム面積にて除し、金属ダスト量とした。
金属ダスト量[ng/平方cm]=金属成分量[ng]/フィルム面積[平方cm]
【0046】
5.フィルム搬送時に生ずる摩擦音の測定
テンター出口からフィルム進行方向に1m、フィルム面から30cm上側の地点にマイクロホンを設置し、リオン社製2ch小型FFT分析器「SA−78」を用いて帯域分析を行いノイズのピーク周波数を求めた。
【0047】
〔参考例1〕
(無機粒子の予備分散)
アモルファスシリカの球状粒子シーホスターKE−P10(日本触媒株式会社製)を1.22質量部、N−メチル−2−ピロリドン420質量部を、容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである容器に入れホモジナイザーT−25ベイシック(IKA Labor technik社製)にて、回転数1000回転/分で1分間攪拌し予備分散液を得た。予備分散液中の平均粒子径は0.11μmであった。
(ポリアミド酸溶液の調製)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである反応容器内を窒素置換した後、223質量部の5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾールを入れた。次いで、4000質量部のN−メチル−2−ピロリドンを加えて完全に溶解させてから、先に得た予備分散液を420質量部と217質量部のピロメリット酸二無水物を加えて、25℃にて24時間攪拌すると、褐色の粘調なポリアミド酸溶液Aが得られた。この還元粘度(ηsp/C)は3.8であった。
【0048】
〔参考例2〕
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである反応容器内を窒素置換した後、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール223質量部、N,N−ジメチルアセトアミド4416質量部を加えて完全に溶解させた後、コロイダルシリカをジメチルアセトアミドに分散してなるスノーテックスDMAC−ST30(日産化学工業株式会社製)40.5質量部(シリカを8.1質量部含む)、ピロメリット酸二無水物217質量部を加え、25℃の反応温度で24時間攪拌すると,褐色で粘調なポリアミド酸溶液Bが得られた。このもののηsp/Cは4.0であった。
【0049】
〔参考例3〕
(無機粒子の予備分散)
アモルファスシリカの球状粒子シーホスターKE−P10(日本触媒株式会社製)を7.6質量部、N−メチル−2−ピロリドン390質量部を容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである容器に入れホモジナイザーT−25ベイシック(IKA Labor technik社製)にて、回転数1000回転/分で1分間攪拌し予備分散液を得た。
(ポリアミド酸溶液の調製)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである反応容器内を窒素置換した後、200質量部のジアミノジフェニルエーテルを入れた。次いで、3800質量部のN−メチル−2−ピロリドンを加えて完全に溶解させてから、先に得た予備分散液を390質量部と217質量部のピロメリット酸二無水物を加えて、25℃にて5時間攪拌すると、褐色の粘調なポリアミド酸溶液Cが得られた。この還元粘度(ηsp/C)は3.7であった。
【0050】
〔参考例4〕
(無機粒子の予備分散)
アモルファスシリカの球状粒子シーホスターKE−P10(日本触媒株式会社製)を3.7質量部、N−メチル−2−ピロリドン420質量部を容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである容器に入れホモジナイザーT−25ベイシック(IKA Labor technik社製)にて、回転数1000回転/分で1分間攪拌し予備分散液を得た。
(ポリアミド酸溶液の調製)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである反応容器内を窒素置換した後、108質量部のフェニレンジアミンを入れた。次いで、3600質量部のN−メチル−2−ピロリドンを加えて完全に溶解させてから、先に得た予備分散液を420質量部と292.5質量部のビフェニルテトラカルボン酸二無水物を加えて、25℃にて12時間攪拌すると、褐色の粘調なポリアミド酸溶液Dが得られた。この還元粘度(ηsp/C)は4.5であった。
【0051】
〔比較例1〜4〕
参考例1〜4で得たポリアミド酸溶液を、ダイコーターを用いて鏡面仕上げしたステンレススチール製の無端連続ベルト上に塗布し(塗工幅1240mm)、90〜115℃にて10分間乾燥した。乾燥後に自己支持性となったポリアミド酸フィルムを支持体から剥離して両端をカットし、厚さ17μm、幅1200mmのそれぞれのグリーンフィルムを得た。
得られたこれらのグリーンフィルムを、図1に示すように、ピンシートが並んだ際にピン間隔が一定となるようにピンを配置したピンシートを有するピンテンターに通し、フィルム端部をピンにさしこむ事により把持し、フィルムが破断しないように、かつ不必要なタルミ生じないようにピンシート間隔を調整し、最終ピンシート間隔が1140mm、となるように搬送し、第1段が170℃で2分間、第2段として230℃で2分間、第3段485で6分間の条件で加熱を施して、イミド化反応を進行させた。その後、2分間で室温にまで冷却し、フィルムの両端部の平面性が悪い部分をスリッターにて切り落とし、ロール状に巻き上げ、褐色を呈する比較例1〜4のそれぞれのポリイミドフィルムを得た。なお、ピンシートはチェーン状に連結されたステンレススチール製のブロックに固定されており、連結体としてステンレススチール製のコロ上を搬送される形式となっている。3段目が高温であるため潤滑油などは用いていない。ピンシートの長さは65.0mm、ピン間隔は7.0mmである。
得られたポリイミドフィルムの特性、フィルム搬送時に生じたノイズのピーク周波数などの測定結果を表1に示す。なお、テンター運転中はいずれのポリアミド酸フィルムを用いた場合であっても機械音、特に金属間の摺動音である甲高い音が断続的に生じ、騒音レベルは高く、ピンテンター近くでは会話に支障を来した。
【0052】
〔実施例1〜4〕
参考例1〜4のポリアミド酸溶液を、実施例と同様に鏡面仕上げしたステンレススチール製の無端連続ベルト上に塗布乾燥し、乾燥後に自己支持性となったポリアミド酸フィルムを支持体から剥離して、厚さ21μmのそれぞれのグリーンフィルムを得た。
得られたこれらのグリーンフィルムを、比較例とは下記の点のみが異なるピンテンターにて熱処理を行った。すなわち、実施例においては、チェーンブロックを乗せるコロに、コロの下部より固体潤滑剤スティックを押し当てる機構を付加し(図4参照)、あらかじめコロ回転体部分と、コロに接するチェーンブロックに固体潤滑剤成分を十分に転写させてから熱処理を行った。
他は比較例と同様の条件にて熱処理し、フィルムの両端部の平面性が悪い部分をスリッターにて切り落とし、ロール状に巻き上げ、褐色を呈する実施例1〜4のそれぞれのポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムの特性、フィルム搬送時に生じたノイズのピーク周波数など結果を表1に示す。なお、テンター運転中の機械駆動音はモーターとチェーンの駆動音を中心とした中低音域のノイズであり、比較例に較べて十分に低い騒音レベルであり特に会話等に支障は無かった。
なお、ここに用いた固体潤滑剤スティックは、固体潤滑剤として平均粒径2μmの二硫化タングステン30質量%、金属成分として平均粒径3μmのタングステン(64質量%)および金属ホウ化物として平均粒径5μmのFe−Ni−B合金(6質量%)を混合し、ボールミルにて混合粉砕した後。約5トン/平方cmの圧力でペレット状にプレスし、これを1.0×10-2Paレベルの低真空下、1150℃×30分の条件で焼結させた物である。
【0053】
〔比較例5〜8〕
参考例1〜4で得たポリアミド酸溶液を、ダイコーターを用いて鏡面仕上げしたステンレススチール製の無端連続ベルト上に塗布し(塗工幅1240mm)、90〜115℃にて10分間乾燥した。乾燥後に自己支持性となったポリアミド酸フィルムを支持体から剥離して両端をカットし、厚さ46μm、幅1200mmのそれぞれのグリーンフィルムを得た。
得られたこれらのグリーンフィルムを、図5〜6に示すクリップを備えたクリップテンターに通し、フィルム端をクリップにて把持し、適宜クリップ幅をフィルムが破断しないよう、かつフィルム余分なタルミを生じないように調整し、最終クリップ間隔を1140mmとなるように搬送し、第1段が170℃で2分間、第2段として230℃で2分間、第3段485で6分間の条件で加熱を施して、イミド化反応を進行させた。その後、2分間で室温にまで冷却し、フィルムの両端部の平面性が悪い部分をスリッターにて切り落とし、ロール状に巻き上げ、褐色を呈する比較例5〜8のそれぞれのポリイミドフィルムを得た。なお、クリップはチェーン状に連結されたステンレススチール製のブロックに固定されており、チェーン状連結体としてステンレススチール製のコロによりレール上を搬送される形式となっている。3段目が高温であるため潤滑油などは用いていない。
得られたポリイミドフィルムの特性、フィルム搬送時に生じたノイズのピーク周波数などの測定結果を表1に示す。なお、テンター運転中はいずれのポリアミド酸フィルムを用いた場合であっても機械音、特に金属間の摺動音である甲高い音が断続的に生じ、騒音レベルは高く、ピンテンター近くでは会話に支障を来した。
【0054】
〔実施例5〜8〕
参考例1〜4のポリアミド酸溶液を、実施例と同様に鏡面仕上げしたステンレススチール製の無端連続ベルト上に塗布乾燥し、乾燥後に自己支持性となったポリアミド酸フィルムを支持体から剥離して、厚さ46μmのそれぞれのグリーンフィルムを得た。
得られたこれらのグリーンフィルムを、比較例5〜8とほぼ同様のクリップテンターにて同条件で熱処理を行った。ただし、実施例においては、チェーンを搬送するコロ固体潤滑剤スティックを押し当てる機構を付加し(図5参照)、あらかじめコロ回転体部分と、コロに接するチェーンブロックに固体潤滑剤成分を十分に転写させてから熱処理を行った。
他は比較例と同様の条件にて熱処理し、フィルムの両端部の平面性が悪い部分をスリッターにて切り落とし、ロール状に巻き上げ、褐色を呈する実施例5〜8のそれぞれのポリイミドフィルムを得た。
得られたポリイミドフィルムの特性、フィルム搬送時に生じたノイズのピーク周波数などの結果を表1に示す。なお、テンター運転中の機械駆動音はモーターとチェーンの駆動音を中心とした中低音域のノイズであり、比較例に較べて十分に低い騒音レベルであり特に会話等に支障は無かった。
なお、用いた固体潤滑剤スティックは、固体潤滑剤として平均粒径2.5μmの窒化硼素35質量%、金属成分として平均粒径2〜4μmの銀(20質量%)、スズ(10質量%)銅(35質量%)を混合し、ボールミルにて混合粉砕した後。約5トン/平方cmの圧力でペレット状にプレスし、これを1.0×10-2Paレベルの低真空下、1000℃×60分間の条件で焼結させた物である。
【0055】
【表1】

【0056】
表1に示すとおり、比較例においてはフィルム表面の金属ダスト量が多いが、実施例においては騒音レベル、騒音の中心周波数ともに下がり、金属ダスト量が大幅に減じられていることがわかる。
以上のように、本発明の固体潤滑剤を用いたフィルム製造装置を用いることにより、製造時の騒音を大幅に低減することができるのみならず、製品となるフィルムの金属ダスト量を大幅に低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の耐熱高分子フィルム製造装置は、300℃以上の高温で稼動させても騒音が小さく、かつ得られるフィルムの金属ダスト量を大幅に低減可能であるため、流延製膜方法で、かつ300℃以上の高温熱処理が必要な、ポリイミドフィルム、セルロース系フィルム、ポリアミドフィルム、ポリアミドイミドフィルムなどの耐熱性高分子フィルムの製造装置として工業的に極めて有意義である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】テンター式フィルム処理機におけるピンシートとチェーンブロックの例を示す概略側面図である。
【図2】テンター式フィルム処理機におけるピンシートの例を示す概略上面図である。
【図3】本発明のテンター式フィルム処理機の全体の概要を示す概略上面図である。
【図4】本発明のテンター式フィルム処理機のピンシートとチェーンブロック部における固体潤滑剤付与部の例を示す概略側面図である。
【図5】本発明のテンター式フィルム処理機のクリップ部における固体潤滑剤付与部の例を示す概略側面図である。
【図6】本発明のテンター式フィルム処理機のクリップ部の例を示す概略正面図である。
【符号の説明】
【0059】
1・・・ピン
2・・・ピンシート
3・・・チェーンブロック
4・・・コロ
5・・・冷却部
6・・・熱処理部
7・・・チェーン
8・・・固体潤滑剤スティック
11・・クリップ可動部
12・・ローラー
13・・クリップ把持部
14・・回転軸
15・・固体潤滑剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱高分子フィルムまたはその前駆体フィルムに対して、熱処理などの処理を行うフィルム端部固定式テンターにおいて、フィルム端部把持機構をフィルム搬送方向に駆動するための駆動機構部の摺動部に固体潤滑作用を有する耐熱性化合物を作用させてなることを特徴とする耐熱高分子フィルム製造装置。
【請求項2】
前記の固体潤滑作用を有する耐熱性化合物が、非金属又は金属の硼化物、金属硫化物のいずれかである請求項1記載の耐熱高分子フィルム製造装置。
【請求項3】
300℃以上の温度で3時間稼動させた後のフィルム搬送時に生ずる摩擦音の基本周波数が3kHz以下である高分子フィルムの製造装置。
【請求項4】
前記の耐熱高分子フィルムがポリイミドフィルムである請求項1または2記載の耐熱高分子フィルム製造装置。
【請求項5】
フィルム端部把持機構が、ピン式又はクリップ式である請求項1〜4のいずれかの耐熱高分子フィルム製造装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかの耐熱高分子フィルム製造装置を用いることを特徴とする耐熱高分子フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記の耐熱高分子フィルムがポリイミドフィルムである請求項6記載の耐熱高分子フィルム製造方法。

【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−166266(P2009−166266A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−3914(P2008−3914)
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】