説明

耐磨耗性樹脂組成物及びそれを用いた耐磨耗性絶縁電線並びに樹脂チューブ

【課題】柔軟性、耐熱性、耐油性、難燃性、加工性に優れるとともに、耐摩耗性も優れた樹脂組成物及びその樹脂組成物からなる絶縁被覆を有する絶縁電線、樹脂チューブを提供する。
【解決手段】塩素化ポリエチレン50〜100重量部と高密度ポリエチレン50〜0重量部、及び、前記塩素化ポリエチレンと高密度ポリエチレンの合計重量100重量部に対し1〜10重量部のハイドロタルサイトを主成分とし、これを放射線照射架橋してなることを特徴とする耐磨耗性樹脂組成物、この耐磨耗性樹脂組成物を導体上に被覆してなる耐磨耗性絶縁電線・ケーブル、及びこの耐磨耗性樹脂組成物をチューブ状に形成してなる樹脂チューブ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐摩耗性に優れた樹脂組成物、及びその樹脂組成物により絶縁被覆された耐磨耗性絶縁電線・ケーブルに関する。具体的には、優れた耐摩耗性を備えるとともに、柔軟性、耐熱性、耐油性、難燃性、加工性も兼ね備えた樹脂組成物、及びその樹脂組成物からなる絶縁被覆を有し自動車内配線等に好適に用いられる絶縁電線・ケーブルに関する。本発明は、さらに、前記耐摩耗性に優れた樹脂組成物をチューブ状に形成してなる樹脂チューブに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車内配線等に用いられる絶縁電線・ケーブル(以下、「絶縁電線」との用語を、絶縁電線及び絶縁ケーブルの両者を含む意味に用いる。)の絶縁被覆には、良好な電気絶縁性とともに、優れた機械的強度及び柔軟性、耐熱性、耐油性、難燃性、加工性が求められる。塩素化ポリエチレンは、耐熱性、耐油性、柔軟性に優れ、例えば絶縁被覆用耐油性樹脂として知られているので、前記のような自動車内配線用絶縁電線の被覆への用途が期待されている。
【0003】
一方、塩素化ポリエチレン等の塩素を含む樹脂は、押出成型時や自動車内配線としての使用時の熱負荷により分解して塩酸が発生する場合がある。塩素化ポリエチレンの塩酸が脱離した部位には二重結合が生成して、ポリマーの酸化劣化反応が進む起点となる。又、塩酸は他の塩酸の脱離を促進する触媒となるため、一旦塩酸が発生すると劣化は加速度的に進む。さらに、塩酸は導体の表面を腐食して変色させる。そこで、この問題を抑制させるために、種々の安定剤の添加が提案されている。
【0004】
安定剤としては、電気的特性、着色性、熱安定性、価格及び成形加工性に優れることから、鉛系熱安定剤が広く用いられてきた。一方、鉛系の熱安定剤には毒性の問題があるので、他の安定剤として、塩基性無機酸塩(特許文献1、2)、ハイドロタルサイト化合物とアルミニウム又はアルカリ土類金属の珪酸塩を併用したもの(特許文献3)、Ca−Zn系安定剤を配合しさらに熱安定化を向上させるためにハイドロタルサイト及び疎水性シリカを配合したもの(特許文献4)等も提案されている。しかし、これらの安定剤は、鉛系安定剤に比較して、絶縁性能や長期安定性、熱安定性や着色性に劣るとの問題がある。
【0005】
そこで、特許文献5では、鉛系安定剤と比べて、絶縁性能、長期安定性、熱安定性及び耐着色性について遜色がなく、しかも毒性に問題のない安定剤として、ハイドロタルサイト化合物、水酸化カルシウム、脂肪族カルボン酸亜鉛塩、2−t−ブチル−5−メチルフェノール誘導体、2,6−ジ−t−ブチルフェノール誘導体及び二酸化ケイ素からなる成分が提案されており、この安定剤を塩化ビニル系樹脂に配合してなる組成物を導体の外側に被覆した絶縁電線が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭52−77157号公報
【特許文献2】特開昭52−77158号公報
【特許文献3】特開平5−179090号公報
【特許文献4】特開平6−80849号公報
【特許文献5】特許第3675953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献5に記載されている前記安定剤を塩素化ポリエチレンに配合し絶縁被覆とすると、実用的な柔軟性、耐熱性、耐油性、難燃性、加工性は得られるものの、機械的強度が低下し、絶縁被覆の耐摩耗性が十分でないとの問題が生じる。前記安定剤中には、種々の安定化助剤が使用されており、これらは低分子量成分のため、樹脂の凝集力を低下させて機械的強度を低下させるものと思われる。そこで、柔軟性、耐熱性、耐油性、難燃性、加工性に優れるとともに、耐摩耗性にも優れた絶縁被覆を与えることができる樹脂組成物の開発が望まれていた。
【0008】
本発明は、柔軟性、耐熱性、耐油性、難燃性、加工性に優れるとともに、耐摩耗性も優れた樹脂組成物、及びその樹脂組成物からなる絶縁被覆を有する絶縁電線を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を達成するために鋭意検討した結果、塩素化ポリエチレン、又は塩素化ポリエチレンと高密度ポリエチレンの所定割合の混合物に、ハイドロタルサイトを所定割合配合し、さらに樹脂を放射線照射架橋することにより、優れた耐摩耗性を備えるとともに、柔軟性、耐熱性、耐油性、難燃性、加工性も兼ね備えた樹脂組成物が得られること、そして、この樹脂組成物を被覆してなる絶縁被覆を有する絶縁電線も前記の優れた性質を有することを見出し、以下に示す構成からなる本発明を完成した。
【0010】
請求項1の発明は、塩素化ポリエチレン50〜100重量部と高密度ポリエチレン50〜0重量部、及び、前記塩素化ポリエチレンと高密度ポリエチレンの合計重量100重量部に対し1〜10重量部のハイドロタルサイトを主成分とし、これを放射線照射架橋してなることを特徴とする耐磨耗性樹脂組成物である。
【0011】
請求項1の樹脂組成物は、(1)塩素化ポリエチレン又は塩素化ポリエチレンとともに、高密度ポリエチレン及びハイドロタルサイトを含有すること、(2)塩素化ポリエチレン、高密度ポリエチレン及びハイドロタルサイトの組成割合が所定の範囲内にあること、及び(3)放射線照射により架橋がされていることを特徴とする。これらの特徴を充足することにより、耐摩耗性等の機械的強度に優れるとともに、優れた柔軟性、耐熱性、耐油性、難燃性、加工性も兼ねそなえた樹脂組成物が得られる。なお、本発明の樹脂組成物は、本発明の趣旨を損ねない範囲で、塩素化ポリエチレン、高密度ポリエチレン及びハイドロタルサイト以外の成分を含有していてもよい。「主成分とする。」とはこの意味を表す。
【0012】
塩素化ポリエチレンとは、ポリエチレンの水素の一部を塩素で置換してなる樹脂であり結晶性、半結晶性、非晶性いずれを使用してもよい。前記のように、塩素化ポリエチレンは、耐熱性、耐油性、柔軟性に優れた樹脂であり、例えば、ポリエチレンを塩素を含むトリクロルエタン、クロロホルム、四塩化炭素等と接触させて塩素化する等の方法により得ることができる。
【0013】
高密度ポリエチレンとは、密度0.942以上のポリエチレンを言う(旧JIS K6748:1995)。高密度ポリエチレンは、繰り返し単位のエチレンが分岐をほとんど有さず直鎖状に結合した結晶性の熱可塑性樹脂であり、他のポリエチレンと比較し硬い性質を有する。さらに、引っ張り強さや衝撃強さ、耐寒性、耐水・耐薬品性に優れ、電気絶縁性能にも優れると言われている。
【0014】
塩素化ポリエチレンの含有量は、塩素化ポリエチレンと高密度ポリエチレンの合計重量に対して、50〜100重量%の範囲である。すなわち、高密度ポリエチレンの含有量は、塩素化ポリエチレンと高密度ポリエチレンの合計重量に対して、0〜50重量%の範囲である。
【0015】
塩素化ポリエチレンと高密度ポリエチレンの合計100重量部に対して、高密度ポリエチレンが10重量部より少ない場合(すなわち、塩素化ポリエチレンが90重量部より多い場合)は、引張強度等の機械的強度が低下する傾向がある。又、耐摩耗性が低くなる傾向があるので、高密度ポリエチレンの含有量は10重量部以上が好ましい。一方、塩素化ポリエチレンと高密度ポリエチレンの合計100重量部に対して、高密度ポリエチレンが50重量部より多い場合(すなわち、塩素化ポリエチレンが50重量部より少ない場合)は、柔軟性が低い絶縁電線となり前記の発明の課題は達成されない。
【0016】
必須成分であるハイドロタルサイトとは、複水酸化物で、層状構造を持ち、層間にアニオンを取り込む性質を持つものであり、天然に産出する粘土鉱物の一種である。ハイドロタルサイトとしては、PVC安定剤として市販されているもの等を用いることができる。ハイドロタルサイトの添加量は、塩素化ポリエチレンと高密度ポリエチレンの合計100重量部に対して、1〜10重量部の範囲である。
【0017】
ハイドロタルサイトの添加量が1重量部未満の場合は耐熱性が不十分となり、自動車のエンジンルーム等のような高温の環境では、引張強度等の機械的強度が経時的に低下しやすくなり本発明の目的とする効果は得られない。又、耐摩耗性も低下する。一方、ハイドロタルサイトの添加量が10重量部を超える場合は、絶縁被覆の形成時の押出加工の際に発泡が生じやすくなる等、加工性が不満足なものとなりやすく、本発明の目的とする効果は得られない。
【0018】
請求項1に記載の樹脂組成物は、上記の組成を常法により混合したものに、電子線、ガンマ線等の電離放射線を照射して、塩素化ポリエチレンと高密度ポリエチレンを架橋させてなるものである。絶縁電線の絶縁被覆に適用する場合は、押出し成形等により導体上に被覆した後、電離放射線の照射がされる。電離放射線を照射することにより、耐摩耗性等の機械的強度とともに耐熱性、耐油性等が向上する。放射線としては工業的に広く用いられ、制御も容易で、低コストでの架橋が可能な電子線照射が特に好ましい。電子線照射量は、30〜500kGy程度が好ましい。電子線照射には、樹脂の架橋等に通常用いられている公知の電子線照射手段を用いることができ、常法により行うことができる。
【0019】
請求項2に記載の発明は、前記ハイドロタルサイトが200〜800℃で焼成処理したものであることを特徴とする請求項1に記載の耐磨耗性樹脂組成物である。ハイドロタルサイトとしては、200〜800℃の温度で焼成処理を施したものが、特に優れた加工性を与えるので好ましい。すなわち焼成処理を施したハイドロタルサイトを用いることにより、樹脂組成物を押出加工して絶縁被覆を形成する際の発泡がより生じにくくなり、加工性が向上するので好ましい。
【0020】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の耐磨耗性樹脂組成物を、絶縁被覆として有することを特徴とする耐磨耗性絶縁電線・ケーブルである。この耐磨耗性絶縁電線は、前記の塩素化ポリエチレン、高密度ポリエチレン及びハイドロタルサイトを主成分とする混合物を導体上に被覆して絶縁被覆を形成し、さらに放射線照射して樹脂を架橋してなるものである。被覆の方法は、従来の絶縁電線の製造において行われている方法、例えば、導体上に樹脂組成物を押出し成形する方法により行うことができる。導体としては、従来より自動車内配線としても用いられる絶縁電線や絶縁ケーブルを構成する銅線等の導体を使用することができる。
【0021】
前記本発明の耐磨耗性樹脂組成物は、優れた耐摩耗性を備えるとともに、柔軟性、耐熱性、耐油性、難燃性、加工性も兼ね備えているので、この樹脂組成物から形成された樹脂チューブも、これらの優れた性質を有する。そこで、請求項4の発明として、請求項1又は請求項2に記載の耐磨耗性樹脂組成物をチューブ状に形成してなることを特徴とする樹脂チューブを提供する。本発明の樹脂チューブとしては、樹脂組成物の融点以上で加熱した場合に内径方向に収縮する熱収縮チューブ等を挙げることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の樹脂組成物は、優れた耐摩耗性を備えるとともに、柔軟性、耐熱性、耐油性、難燃性、加工性も兼ね備えたものである。従って、この樹脂組成物を絶縁被覆した本発明の耐磨耗性絶縁電線は、耐摩耗性等の機械的強度に優れ、かつ柔軟性、耐熱性、耐油性、難燃性等にも優れ、自動車内配線等に好適に用いられる。又、本発明の樹脂組成物をチューブ状に形成してなる樹脂チューブも前記の優れた性質を有するので熱収縮チューブ等として好適に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明の範囲はこの形態に限定されるものではなく本発明の趣旨を損なわない範囲で種々の変更をすることができる。
【0024】
本発明で使用されるハイドロタルサイトとしては、例えば、以下の化学構造式で示されるものを挙げることができる。
Mgx1Znx2Al・(OH)2(x1+x2+4)・(CO1−y/2(ClO・mHO(式中、x1、x2及びyは各々0≦x2/x1≦10、0≦x1+x2≦20、0≦y≦10であり、mは0又は正の数を表す。)
【0025】
上記式で表されるハイドロタルサイト化合物は、マグネシウムとアルミニウム、又は亜鉛、マグネシウム及びアルミニウムからなる複塩化合物であるが、結晶水を脱水したものであってもよく、又、炭酸の一部を過塩素酸に置き換えたものであってもよい。又、本発明において使用されるハイドロタルサイト化合物は、その表面をステアリン酸のような高級脂肪酸、オレイン酸アルカリ金属塩のような高級脂肪酸金属塩、ドデシルベンゼンスルホン酸アルカリ金属塩のような有機スルホン酸金属塩、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステル又はワックスなどで被覆したものであってもよい。
【0026】
本発明の樹脂組成物に、発明の趣旨を損ねない範囲で添加することができる他の成分としては、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、珪酸ナトリウム、珪酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、カーボンブラック、タルク等の充填剤、三酸化アンチモン、含臭素化合物(臭素系難燃剤)、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、イオウ系難燃剤、リン系難燃剤等の難燃剤、フェノール系、アミン系、イオウ系及びリン系等の酸化防止剤、ステアリン酸、脂肪酸アミド、シリコーン、ポリエチレンワックス等の滑剤、着色顔料等を挙げることができる。又、他のポリオレフィン樹脂、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン等を含ませてもよい。これらの添加剤は、単独で又は併用して含有してもよい。
【実施例】
【0027】
実施例、比較例で用いた塩素化ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ハイドロタルサイトを以下に示す。さらに、実施例、比較例の樹脂組成物には、さらに、難燃剤としての三酸化アンチモン、フェノール系酸化防止剤(商品名:イルガノックス1010、チバスペシャリティーケミカル社製)、滑剤としてのステアリン酸、及び非鉛安定剤(商品名:RUP−103、旭電化社製、比較例のみ)を添加している。
【0028】
[塩素化ポリエチレン]
・エラスレン303C(商品名、昭和電工社製)
[高密度ポリエチレン]
・ハイゼックス5305E(商品名、プライムポリマー社製、密度0.951)
[ハイドロタルサイト]
・DHT−4A(商品名、協和化学社製のハイドロタルサイト)
・DHT-4A-2(商品名、協和化学社製の焼成ハイドロタルサイト)
【0029】
<実施例及び比較例>
表1〜3に示すような配合(表中では重量部で表す。)をオープンロールにて140℃で混練し、ペレタイザによってペレット状にして50mmφ押出機にて、TA19/0.19の導体に、絶縁外径0.95mmφ(被覆の厚み:0.375mm)で押出し被覆した。電線に200kGyの電子線照射を行った。このようにして得られた絶縁電線について、以下に示す方法で、引張破断強度、引張破断伸び、耐熱性、耐油性、耐摩耗性、加工性の評価を行った。結果を表1〜3に示す。
【0030】
(機械的強度:引張破断強度、引張破断伸び)
120mmの電線を切り取った後に導体を引抜き、引抜いた後の絶縁被覆のチューブについて、引張速度500mm/分で引張破断強度と引張破断伸びを測定した。合否の基準としては、引張破断強度が11.7MPa以上、引張破断伸びが250%以上のものを合格と判定した。
【0031】
(柔軟性)
引張破断強度、引張破断伸びを測定する際に、S−Sカーブから100%伸びたときのモジュラスを読み取り、その値が20MPa以下を合格とした。
(耐熱性)
120mmの電線を切り取った後に導体を引抜き、引抜いた後の絶縁被覆のチューブを、150℃のギア式オーブンに7日間投入し、その後取り出して、引張速度500mm/分で、引張破断強度と引張破断伸びを測定した。合否の基準としては、引張破断強度が10.4MPa以上、引張破断伸びが200%以上のものを合格と判定した。
【0032】
(耐摩耗性)
JASO規格 D608−92(摩耗テープ法)に基づいて測定した。テープ磨耗試験機にて荷重450gfをかけた場合に最小磨耗抵抗が457mm以上であるものを合格とした。
(耐油性)
120mmの電線を切り取った後に導体を引抜き、引抜いた後の絶縁被覆のチューブを、MIL規格の油圧オイルであるMIL−H−5606に室温×1日浸漬後、引張速度500mm/分で引張破断強度、引張破断伸びを測定した。合否の基準としては、引張破断強度が10.4MPa以上、引張破断伸びが200%以上のものを合格と判定した。
【0033】
(加工性)
200℃10分間、600MPaの条件にてプレスし、発泡の有無を目視で調べ、発泡がない場合(表中では、○で表す。)及びわずかに発泡が見られる場合(表中では、△で表す。)を合格とし、明確に発泡が見られる場合を不合格(表中では、×で表す。)とした。
【0034】
(難燃性)
JASO規格 D608−92(水平難燃試験)に基づいて測定した。15秒間炎を当てて取り去った後に15秒以内に消火したものを合格として、表中に○で示した。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
【表3】

【0038】
表1〜3に示された結果より次のことが明らかである。
1.本発明の構成要件を満足する実施例1〜5の樹脂組成物は、規格を充分満足する耐摩耗性(最小磨耗抵抗)を示し、優れた耐摩耗性を有するものである。さらに、規格を満足する引張強度、引張伸びを示し機械的強度に優れ、又、耐熱性、耐油性、難燃性、加工性も規格を満足している。ただし、ハイドロタルサイト(DHT−4A:焼成なし)の添加量が多い(上限の10重量%)実施例2では、わずかに発泡が見られ加工性が若干劣ることが示された。
2.しかし、ハイドロタルサイトとして200℃〜800℃で焼成したハイドロタルサイト(DHT−4A−2)を用いた実施例4では、実施例2と同じハイドロタルサイトの添加量であるが、発泡は見られず加工性は良好であった。すなわち、焼成したハイドロタルサイトを用いることにより発泡が抑制され加工性が向上することが示されている。
3.塩素化ポリエチレンの配合量が本発明の範囲未満の比較例1では、100%モジュラスが規格外であり、柔軟性が劣ることが示された。
4.ハイドロタルサイトの添加量が本発明の範囲を超える比較例3及び5では、加熱プレス中の発泡が多く、加工性が不良であった。この結果は、焼成したハイドロタルサイト(DHT−4A−2)を用いた比較例5でも同様であった。一方、ハイドロタルサイトの添加量が本発明の範囲未満の比較例2及び4では、耐熱性が不十分であり、150℃、7日間で引張強度が低下し、規格外となった。
5.ハイドロタルサイトを添加せず、代りに非鉛安定剤を添加した比較例6〜8では、耐摩耗性が低く、非鉛安定剤の添加量が多い比較例7、8では規格範囲外となった。又、比較例7、8では引張強度や耐油性も低く、規格範囲外であった。非鉛安定剤の添加量が少ない比較例6では耐熱性が不十分であり規格範囲外であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩素化ポリエチレン50〜100重量部と高密度ポリエチレン50〜0重量部、及び、前記塩素化ポリエチレンと高密度ポリエチレンの合計重量100重量部に対し1〜10重量部のハイドロタルサイトを主成分とし、これを放射線照射架橋してなることを特徴とする耐磨耗性樹脂組成物。
【請求項2】
前記ハイドロタルサイトが200〜800℃で焼成処理したものであることを特徴とする請求項1に記載の耐磨耗性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の耐磨耗性樹脂組成物を、絶縁被覆として有することを特徴とする耐磨耗性絶縁電線・ケーブル。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の耐磨耗性樹脂組成物をチューブ状に形成してなることを特徴とする樹脂チューブ。

【公開番号】特開2011−225673(P2011−225673A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−95199(P2010−95199)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】