説明

耐落下衝撃性に優れた多層プラスチック容器

【課題】バリア性及び耐落下衝撃性に優れた薄肉軽量化された多層プラスチック容器を提供する。
【解決手段】少なくとも容器の側壁部において、ポリエステル樹脂から成る内層及び外層、バリア性樹脂から成るバリア性中間層が形成されている多層プラスチック容器において、前記バリア性中間層の下方の端部が、容器底部の接地部よりも容器半径方向外側に位置することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層プラスチック容器に関するものであり、より詳細には、中間層にバリア層が形成されて成る、バリア性及び耐落下衝撃性に優れた多層プラスチック容器に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック包装容器の材料コストを削減するためなどの目的のために器壁を薄肉化して軽量化することが行われているが、このような器壁の薄肉化に伴う内容物の保存性の低下を補うため、或いは更なる保存性の向上のために、従来より、容器壁を多層構造とし、内外層としてポリエステル樹脂、中間層としてガスバリア性を向上させるエチレンビニルアルコール共重合体やキシリレン基含有ポリアミド樹脂、或いは水蒸気(水分)バリア性を向上させる環状オレフィンコポリマー等の機能性を有する樹脂を用いることが行われている(特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−067637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、バリア性樹脂から成る中間層を設け、容器の器壁を多層化することによって容器の内容物の保存性は確保されるが、従来の薄肉軽量化された多層容器は単層容器に比べて、落下衝撃により層間剥離や割れが生じやすいことがわかった。
従って本発明の目的は、バリア性及び耐落下衝撃性に優れた薄肉軽量化された多層プラスチック容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、少なくとも容器の側壁部において、ポリエステル樹脂から成る内層及び外層、バリア性樹脂から成るバリア性中間層が形成されている多層プラスチック容器において、前記バリア性中間層の下方の端部が、容器底部の接地部或いは接地部よりも容器半径方向外側に位置することを特徴とする多層プラスチック容器が提供される。
【0006】
本発明においては、
1.自生圧力を有する内容物を収納する耐圧性容器であること、
2.容器底部が、接地部を有する足部と、谷部とが交互に形成されて成ること、
3.バリア性中間層の下方の端部の容器軸方向の位置が、前記接地部と谷部の最上端部との中央部或いは中央部よりも上方であること、
4.内層及び外層がポリエチレンテレフタレートから成り、バリア性中間層がポリエチレンテレフタレートとバリア性樹脂の混合物から成ること、
5.バリア性樹脂が、クレイを含有すること、
が好適である。
【0007】
前述した通り、薄肉軽量化された多層プラスチック容器においては、落下衝撃を受けると層間剥離を生じたり、或いは底部の割れを生じやすいことから、本発明者等はその原因について鋭意研究を行った結果、従来の多層プラスチック容器においては、底部中央を除く底部においても多層構造が形成されており、かかる多層構造が形成された部分と、底部中央の単層部分との境界箇所において応力集中が生じて、この部分に割れが発生し、またこの境界箇所を起点に層間剥離が生じていること、また底部全面に多層構造が形成されている場合でも、ゲート部での層間境界部が脆いため、衝撃により層間剥離や割れが生じていることを見出した。
このような割れや層間剥離の発生は、特に自生圧力を有する内容物を充填するため内圧に対して変形抵抗が大きく、しかも耐圧性の点から容器軸方向下方に突出した足部を有するペタロイド型の底部形状を有する耐圧性容器において顕著である。
【0008】
図1は、本発明の多層プラスチック容器の一例を示す側面図、及び図2は、多層プラスチック容器の底部の層構造を示す一部断面図であり、内外層がポリエステル樹脂、中間層がバリア性樹脂から構成される、2種3層のプリフォームを二軸延伸ブロー成形することにより成形されている。
この多層プラスチック容器1においては、口首部2、肩部3、胴部4、及び底部5からなり、底部5は、容器軸方向下方に凸の仮想曲面上に位置する複数の谷部6,6・・と、隣り合う谷部6,6の間に位置し、谷部6よりも容器軸方向下方に突出し且つ底部中央の付け根部7から容器径方向外方に延びている先端部分が接地部8となる足部9,9・・が形成されて成るペタロイド型の形状を有している。
本発明の多層プラスチック容器においては、図2から明らかなように、内層10、外層11及びバリア性樹脂から成るバリア性中間層12の下側端部12aが、容器の接地部8よりも容器半径方向外側、すなわち端部12aが位置する部分における半径(Da)が、接地部8の位置における半径(Ds)よりも大きくなるように形成されており、しかも接地部8と谷部6の最上端部6aの間の垂直距離Lの接地面から半分の距離の位置よりも上方に位置している。
【0009】
本発明においては、バリア性中間層の下側端部の位置を容器底部の接地部或いは接地部よりも容器半径方向外側に位置させることにより、従来、落下の際にバリア性中間層の下側端部が位置する部分に発生していた割れを有効に防止することが可能となる。特に図2に示すように、バリア性中間層の下側端部が、接地部と谷部の最上端部との中央部或いは中央部よりも上方に位置していることにより、層間剥離も顕著に低減させることが可能となる。
すなわち、バリア性中間層の下側端部の位置が、容器底部の接地部よりも容器半径方向内側に位置しているボトル(比較例1及び2)は、いずれもバリア性中間層の下側端部の位置で割れが発生し、また割れが発生した箇所を起点に層間剥離が発生しているのに対し、バリア性中間層の下側端部の位置が容器底部の接地部よりも容器半径方向外側に位置するボトルでは、このような割れや層間剥離が見られず(実施例1〜2,4〜6)、また容器底部の接地部に位置しているボトル(実施例3,7)も層間剥離が多少発生しているものの、割れは発生しておらず、本発明の多層プラスチック容器が優れた耐落下衝撃性を有することが明らかである。
【0010】
また本発明の多層プラスチック容器において、特に高いガスバリア性能が要求される耐圧性容器として使用する場合には、バリア性中間層の下側端部が少なくとも底部の最上端部或いは最上端部よりも下側に位置していることが好ましい。
また、多層プラスチック容器に要求されるバリア性能に応じて胴部のバリア性中間層の厚みを厚くすることによって、バリア性中間層が形成されていない部位があっても、従来の多層プラスチック容器とほぼ同等のバリア性を確保することが可能になる。
すなわち、後述する実施例から明らかなように、バリア性中間層の下側先端の位置にかかわらず、プリフォーム形成のための内層及び外層を構成する樹脂(PET)及びバリア性樹脂のトータルの使用量を同じにすることにより、底部の接地部よりも内側にバリア性中間層が形成されていない本発明のボトル(実施例1〜3)であっても、底部までバリア性中間層が形成されたボトル(比較例1)と同等のバリア性が得られており、バリア層のない底部の肉厚が比較的厚いこととともに、バリア性に影響を与えやすい胴部においてバリア性中間層の厚みを大きくすることによって、バリア性を劣化させることなく耐衝撃性を向上することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の多層プラスチック容器においては、薄肉軽量化されていながら、優れたバリア性及び耐落下衝撃性を有しており、従来の多層プラスチック容器に見られた落下による割れや層間剥離が有効に防止されている。
また本発明の多層プラスチック容器においては、内圧により特に耐落下衝撃による割れや層間剥離の発生が顕著な耐圧性容器においても、優れたバリア性及び耐落下衝撃性を発現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の多層プラスチック容器の一例を示す側面図である。
【図2】多層プラスチック容器の底部の層構造を示すための一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(内外層)
本発明の内外層に用いるポリエステル樹脂は、従来公知のジカルボン酸成分及びジオール成分から成るポリエステル樹脂を用いることができる。
ジカルボン酸成分としては、ジカルボン酸成分の50%以上、特に80%以上がテレフタル酸であることが機械的性質や熱的性質から好ましいが、テレフタル酸以外のカルボン酸成分を含有することも勿論できる。テレフタル酸以外のカルボン酸成分としては、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、p−β−オキシエトキシ安息香酸、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、アジピン酸、セバシン酸等を挙げることができる。
【0014】
ジオール成分としては、ジオール成分の50%以上、特に80%以上がエチレングリコールであることが、機械的性質や熱的性質から好ましく、エチレングリコール以外のジオール成分としては、1,4−ブタンジオール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−へキシレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、グリセロール、トリメチロールプロパン等を挙げることができる。
また上記ジカルボン酸成分及びジオール成分には、三官能以上の多塩基酸及び多価アルコールを含んでいてもよく、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、ヘミメリット酸,1,1,2,2−エタンテトラカルボン酸、1,1,2−エタントリカルボン酸、1,3,5−ペンタントリカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸、ビフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸等の多塩基酸や、ペンタエリスリトール、グリセロール、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、ソルビトール、1,1,4,4−テトラキス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン等の多価アルコールが挙げられる。
【0015】
本発明の内外層に用いるポリエステル樹脂は、重量比1:1のフェノール/テトラクロロエタン混合溶媒を用い、30℃にて測定した固有粘度が、0.60乃至1.40dL/gの範囲にあることが好ましい。また多層容器の耐熱性、加工性等を向上するため、200乃至275℃の融点(Tm)を有することが好ましい。またガラス転移点は、30℃以上、特に50乃至120℃の範囲であることが好ましい。
本発明の内外層に用いるポリエステル樹脂には、それ自体公知の樹脂用配合剤、例えば着色剤、酸化防止剤、安定剤、各種帯電防止剤、離型剤、滑剤、核剤等を最終成形品の品質を損なわない範囲で公知の処方に従って配合することができる。
【0016】
(バリア性中間層)
本発明の多層ポリエステル容器の中間層を構成するバリア性樹脂としては、ガスバリア性、水蒸気バリア性、酸素吸収ガスバリア性等の従来公知のバリア性樹脂を挙げることができ、具体的には、ガスバリア性樹脂のポリメタキシリレンアジパミド、ポリメタキシリレンセバカミド等のキシリレン基含有ポリアミド樹脂、エチレンビニルアルコール共重合体等や、水蒸気バリア性樹脂の環状オレフィン系樹脂等をあげることができるが、本発明においては特に、ガスバリア性に優れたポリメタキシレンアジパミド(MXD6)を用いる場合に、その優れた作用効果を顕著に発現することができる。
【0017】
バリア性中間層は、上記バリア性樹脂を単独で用いることもできるし、或いは他の樹脂等とブレンドして用いることもできる。
例えば、ポリエステル樹脂、バリア性樹脂及びクレイから成るクレイ配合バリア性樹脂組成物、或いはポリエステル樹脂、バリア性樹脂、酸化性有機成分及び遷移金属触媒から成る酸素吸収性バリア性樹脂組成物、或いは該酸素吸収性バリア性樹脂組成物にクレイを更に配合して成るクレイ配合酸素吸収性バリア性樹脂組成物等を好適に使用することができる。
上記クレイ配合バリア性樹脂組成物及び酸素吸収性バリア性樹脂組成物においては、ポリエステル樹脂から成る連続相中にバリア性樹脂から成る分散相が形成されて成る海島分散構造を構成していることから、内外層を構成するポリエステル樹脂との層間接着性に特に優れている。
【0018】
ポリエステル樹脂としては、内外層に用いるポリエステル樹脂として例示したものを用いることができ、特に、内外層に用いた樹脂と同じ樹脂を用いることが層間接着性を向上させる上で好ましい。
またクレイ配合バリア性樹脂に配合するクレイとしては、マイカ、バーミキュライト、スメクタイト等であり、好ましくは0.25〜0.6の電荷密度を有する2−八面体型や3−八面体型の層状珪酸塩であり、2−八面体型としては、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト等、3−八面体型としてはヘクトライト、サポナイト等が挙げられる。
クレイは、クレイを有機化剤で膨潤化処理したものであることが特に好適である。この場合、上記クレイの中でも、モンモリロナイトは高膨潤性を有し、有機化剤の浸透による膨潤が起こり層間が広がりやすいため特に好ましい。
有機化剤としては、第4級アンモニウム塩が好ましく使用できるが、より好ましくは、炭素数12以上のアルキル基を少なくとも一つ以上有する第4級アンモニウム塩、具体的には、トリメチルドデシルアンモニウム塩、トリメチルテトラデシルアンモニウム塩等が用いられる。
【0019】
クレイはバリア性樹脂100重量部当たり1乃至10重量部、特に1乃至8重量部の割合で、バリア性樹脂に配合することが好ましい。上記範囲よりもクレイの量が少ない場合には、クレイを配合することにより得られるガスバリア性を上記範囲にある場合に比して充分に得ることができず、一方上記範囲よりもクレイの量が多い場合には、上記範囲にある場合に比して成形性に劣ると共に、容器がパール状を呈するように成り、容器の透明性を重視する場合には望ましくない。
【0020】
また酸素吸収バリア性樹脂組成物に使用する、酸化性有機成分としては、側鎖または末端に官能基を有し且つ酸化可能なもの、具体的には、ブタジエン、無水マレイン酸変性ブタジエン等の酸乃至酸無水物で変性されたポリエンオリゴマー乃至ポリマーを挙げることができ、また遷移金属触媒としては、鉄、コバルト、ニッケル等の周期律表第VIII族金属成分が使用されるが、勿論、これらの例に限定されない。
酸化性有機成分の配合量は、バリア性樹脂100重量部当たり2乃至10重量部の量で配合されていることが好ましく、また遷移金属触媒は、金属換算で少なくとも300ppm配合されていることが好ましい。
【0021】
本発明のバリア性中間層においては、上記バリア性樹脂、或いはバリア性樹脂組成物に、上述したクレイ、酸化性成分及び遷移金属触媒の組み合わせ、或いは、脱酸素剤、充填剤、着色剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、金属セッケンやワックス等の滑剤、改質用樹脂乃至ゴム等の公知の樹脂配合剤を、本発明の目的を損なわない範囲で、それ自体公知の処方に従って配合することもできる。
【0022】
(多層構造)
本発明の多層ポリエステル容器は、ポリエステル樹脂から成る内外層、バリア性中間層を少なくとも1層有する限り種々の層構成を採用することができ、図2に示したような、ポリエステル樹脂から成る内層10及び外層11の間にバリア性中間層12が形成された2種3層の層構成のものを特に好適に採用できるが、従来多層ポリエステル容器に採用されていた多層構造を採用することもできる。
【0023】
本発明においては、内外層及び中間層の層間接着性が向上されているので、多層容器の製造に当たって、各樹脂層間に接着剤樹脂を介在させる必要はないが、勿論介在させることもできる。
このような接着剤樹脂としては、カルボン酸、カルボン酸無水物、カルボン酸塩、カルボン酸アミド、カルボン酸エステル等に基づくカルボニル(−CO−)基を主鎖又は側鎖に、1乃至700ミリイクイバレント(meq)/100g樹脂、特に10乃至500meq /100g樹脂の濃度で含有する熱可塑性樹脂が挙げられる。接着剤樹脂の適当な例は、エチレン−アクリル酸共重合体、イオン架橋オレフイン共重合体、無水マレイン酸グラフトポリエチレン、無水マレイン酸グラフトポリプロピレン、アクリル酸グラフトポリオレフイン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、共重合ポリエステル等である。
【0024】
本発明の多層ポリエステル容器は、胴部の厚みは、容器の容積(目付)や容器の用途、或いは使用するバリア性樹脂の種類等によっても相違するが、0.36mm未満、特に0.20乃至0.30mmの範囲に薄肉化されていることが好ましい。
また本発明においては、底部の接地部よりも内側にバリア性中間層が形成されていないため、胴部の中間層の厚みの割合を従来のものに比して高くすることが望ましい。使用するバリア性中間層を構成する樹脂或いは樹脂組成物の組成にもよるが、容器胴部における全肉厚の5乃至30%、特に10乃至20%の範囲にすることが好適である。上記範囲よりも中間層の厚みが厚い場合には、経済性、成形性及び容器の透明性の点で望ましくなく、一方上記範囲よりも中間層の厚みが薄いと充分なバリア性を付与することが困難になる。
また前述したように、バリア性樹脂組成物から成る中間層を複数存在させるときは、中間層全体として胴部の全厚みの10乃至30%の範囲にあることが望ましい。
【0025】
(製造方法)
本発明の多層ポリエステル容器は、バリア性中間層の下側先端の位置を制御する以外は、例えば特開平1−254539号公報や特開2004−130650号公報などに開示されている従来公知の多層プラスチック容器の製造法により製造することができる。以下、本発明の多層ポリエステル容器として最も好適に利用できる耐圧性二軸延伸ブロー成形容器の製法を説明する。
本発明の耐圧性二軸延伸ブロー成形容器においては、多層プリフォームの製造において、バリア性中間層の下側先端位置が、最終成形品の状態において、接地部或いは接地部よりも外側、好適には、接地部と底部の最上端部との中央部或いは中央部よりも上方且つ底部の最上端位置或いは最上端位置よりも下方、に位置するように制御して、多層プリフォームを製造する。プリフォームの製造は、従来公知の射出成形法、圧縮成形法により成形することができるが、バリア性中間層の下側先端位置の制御を正確且つ確実に行うためには、同時射出成形あるいは逐次射出成形により行うことができる。尚、バリア性中間層は、ポリエステル樹脂の内外層中に内封されていることが好ましい。
多層プリフォームの成形とその延伸ブロー成形とは、上記の通りコールドパリソン方式で実施することが好ましいが、形成される多層プリフォームを完全に冷却しないで延伸ブロー成形を行うホットパリソン方式にも適用できる。
延伸ブロー成形に先立って、プリフォームを熱風、赤外線ヒーター、高周波誘導加熱等の手段で延伸温度まで予備加熱するが、本発明においては、110乃至120℃の通常の延伸ブロー成形よりも高温に加熱して延伸ブローすることが好ましい。
【0026】
この加熱されたプリフォームを、それ自体公知の延伸ブロー成形機中に供給し、金型内にセットして、延伸棒の押し込みにより軸方向に引張延伸すると共に、流体の吹き込みにより周方向に延伸する。この際、バリア性中間層がクレイ配合バリア性樹脂組成物から成る場合には、多層プリフォームを300乃至600℃に加熱された加熱体を用いて内部加熱すること及び/又は150乃至220℃のホットエアーを用いることが好ましい。
すなわち、上記温度範囲に加熱されたプリフォームを二軸延伸ブロー成形するに際して、プリフォーム内部に高温に加熱された加熱体が挿入されて内部加熱されていること及び/又は高温の熱風が圧入されていることにより、プリフォーム内部の温度がより高温になると共に、延伸ブロー成形時においてプリフォーム内部の温度が高温に保たれるため、歪の緩和が促進され、延伸応力の高いクレイ配合バリア性樹脂組成物から成る中間層の歪も緩和されるため、透明性及びガスバリア性等の機能を損なうことが有効に抑制される。
内部加熱の加熱時間は、プリフォームの予備加熱温度及び内部加熱に用いる加熱体の設定温度によって変化させることが好ましく、好適には、8乃至20秒、特に10乃至15秒の範囲で加熱を行うことが望ましい。また、延伸ブロー成形する際に用いられるホットエアーは金型内にセットされたプリフォーム内部に2乃至3秒間圧入されることが望ましい。
また多層プラスチック容器に耐熱性を付与する場合には、プリフォームの口首部を熱結晶化させておくと共に、二段ブロー成形法等、公知の耐熱性容器の製法で製造することもできる。
【0027】
最終製品である耐圧性ポリエステル容器における延伸倍率は、面積倍率で1.5乃至25倍、軸方向延伸倍率で1.2乃至6倍、周方向延伸倍率で1.2乃至4.5倍の範囲にあることが好ましく、これにより図1に示すような所謂ペタロイド型形状や、底部が中心部に凹部が形成されたシャンパン型等の従来公知の耐圧性の底部形状とすることにより耐圧性ポリエステル容器として製造することができる。
本発明方法により得られた耐圧性ポリエステル容器は、容器胴部におけるポリエステル樹脂の密度が1.353g/cm以上であり、密度法による結晶化度で15%以上であり、優れた透明性も有している。
【実施例】
【0028】
<多層ボトルの作製>
内層外層共用射出機と中間層用射出機を備えた共射出成形機を使用し、耐圧ボトル用の多層プリフォームを成形した。層構成は2種3層(PET/中間層/PET)であった。中間層にはMXD6にクレイを配合したバリア材とPET材の乾燥済みペレットを4:6の重量比率でドライブレンドして成形機のホッパーに投入し、共射出成形した。内外のPET層には中間層のPET材と同じものを使用した。多層プリフォームの重量は24gであり、いずれの実施例・比較例とも内層外層樹脂を95重量%、中間層樹脂を5重量%の比率で作製した。このとき、中間層の成形温度は280乃至290℃とした。中間層射出機の射出条件のタイミングを制御して、バリア層先端位置が多層ボトルの表1の位置になるようにして多層プリフォームを成形した。中間層射出機の射出条件のタイミング制御にあたり、口首部射出では中間層樹脂射出を停止し、肩部以降では中間層樹脂を射出し、表1に示す各実施例・比較例の中間層位置に相当する位置以降では中間層樹脂射出を停止した。作製した多層プリフォームを500ml用耐圧ボトルに二軸延伸ブロー成形して多層ボトルを作製し、バリア性、耐落下衝撃性、を評価した。
【0029】
(使用材料)
PET材:イソフタル酸共重合PET(イソフタル酸1.5mol%、IV=0.83dL/g)
バリア材:ポリメタキシレンアジパミド(MXD6、97%)+有機処理クレイ(モンモリロナイト、3%)
【0030】
(評価方法、条件)
<バリア性>
得られた多層ボトルのバリア性を、炭酸ガス透過速度で評価した。
得られた多層ボトルに炭酸水をガスボリューム4.0に充填した後、23℃50%RHに制御した密封チャンバーに入れ、チャンバー内雰囲気の二酸化炭素濃度を測定し、ボトルの二酸化炭素透過速度(cc/ボトル/day)を算出した。二酸化炭素透過速度がほぼ定常になった時点で、次の基準をもとにボトルのバリア性を評価した。○と△を製品としての許容範囲とした。
○:二酸化炭素透過速度が、4.7未満
△:二酸化炭素透過速度が、4.7以上で、5.0未満
×:二酸化炭素透過速度が、5.0以上
【0031】
<耐落下衝撃性>
得られた多層ボトルに炭酸水をガスボリューム4.0に充填した後、23℃で1日間保管した。その後、2.0mの高さから、底部を下にしてコンクリート床面へ1回落下させ、視覚で割れとデラミ発生を評価した。n=3で行い、最も程度の大きいものにつき、次の基準をもとにボトルの耐落下衝撃性を評価した。○と△を製品としての許容範囲とした。
○:割れ無し、デラミなし
△ :割れ無し、軽度なデラミあり
× :割れ有り、大きなデラミあり
<総合評価>
得られたバリア性評価と耐落下衝撃性評価をもとに、次の基準で総合評価とした。○と△を製品としての許容範囲とした。
○:いずれの評価も「○」
△:いずれの評価も「○」あるいは「△」であり、いずれかの評価に「△」がある
×:少なくともいずれかの評価に「×」がある
【0032】
<実施例1>
上記の仕様でバリア性中間層の先端位置を図1のC(谷部最上端)にした多層ボトルを作製し、バリア性と耐落下衝撃性を評価した。ボトル仕様と評価結果を表1に示した。
【0033】
<実施例2>
バリア性中間層の先端位置を図1のD(接地部と谷部の最上端部との中央部)にした以外は実施例1と同様にして多層ボトルを作製し、バリア性と耐落下衝撃性を評価した。ボトル仕様と評価結果を表1に示した。
【0034】
<実施例3>
バリア性中間層の先端位置を図1のE(接地部)にした以外は実施例1と同様にして多層ボトルを作製し、バリア性と耐落下衝撃性を評価した。ボトル仕様と評価結果を表1に示した。
【0035】
<実施例4>
バリア性中間層の先端位置を図1のB(底部最上端)にした以外は実施例1と同様にして多層ボトルを作製し、バリア性と耐落下衝撃性を評価した。ボトル仕様と評価結果を表1に示した。
【0036】
<実施例5>
バリア性中間層に有機処理クレイを添加しなかった以外は実施例1と同様にして多層ボトルを作製し、バリア性と耐落下衝撃性を評価した。ボトル仕様と評価結果を表1に示した。
【0037】
<実施例6>
バリア性中間層をMXD6ナイロンのみにした以外は実施例1と同様にして多層ボトルを作製し、バリア性と耐落下衝撃性を評価した。ボトル仕様と評価結果を表1に示した。
【0038】
<実施例7>
多層プリフォームと多層ボトルを500ml用耐熱ボトル用形状にし、耐落下衝撃性評価用にイオン交換水を充填したこととバリア性評価は実施しなかったこと以外は実施例3と同様にして多層ボトルを作製し、耐落下衝撃性を評価した。ボトル仕様と評価結果を表1に示した。
【0039】
<比較例1>
バリア性中間層の先端位置を図1のG(底全面にバリア層あり)にした以外は実施例1と同様にして多層ボトルを作製し、バリア性と耐落下衝撃性を評価した。ボトル仕様と評価結果を表1に示した。
【0040】
<比較例2>
バリア性中間層の先端位置を図1のF(底半径の中央部)にした以外は実施例1と同様にして多層ボトルを作製し、バリア性と耐落下衝撃性を評価した。ボトル仕様と評価結果を表1に示した。
【0041】
<比較例3>
バリア性中間層の先端位置を図1のA(胴中央部)にした以外は実施例1と同様にして多層ボトルを作製し、バリア性と耐落下衝撃性を評価した。ボトル仕様と評価結果を表1に示した。
【0042】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の多層プラスチック容器は、薄肉軽量化されていても、バリア性及び耐落下衝撃性に優れており、特に自生圧力を有する炭酸飲料等を充填した場合にも、落下時の割れや層間剥離が有効に防止されているため、特に耐圧性ポリエステル容器として好適に使用でき、飲料では炭酸ソフトドリンク、果汁入り炭酸飲料等に特に好適に使用できるが、これらの例に限定されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも容器の側壁部において、ポリエステル樹脂から成る内層及び外層、バリア性樹脂から成るバリア性中間層が形成されている多層プラスチック容器において、前記バリア性中間層の下方の端部が、容器底部の接地部或いは接地部よりも容器半径方向外側に位置することを特徴とする多層プラスチック容器。
【請求項2】
自生圧力を有する内容物を収納する耐圧性容器である請求項1記載の多層プラスチック容器。
【請求項3】
前記容器底部が、接地部を有する足部と、谷部とが交互に形成されて成る請求項1又は2記載の多層プラスチック容器。
【請求項4】
前記バリア性中間層の下方の端部の容器軸方向の位置が、前記接地部と谷部の最上端部との中央部或いは中央部よりも上方である請求項3記載の多層プラスチック容器。
【請求項5】
内層及び外層がポリエチレンテレフタレートから成り、バリア性中間層がポリエチレンテレフタレートとバリア性樹脂の混合物から成る請求項1乃至4の何れかに記載の多層プラスチック容器。
【請求項6】
前記バリア性樹脂が、クレイを含有する請求項5記載の多層プラスチック容器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−202249(P2010−202249A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49401(P2009−49401)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】