説明

耐蝕性の複層塗装及びその製造方法

本発明は、金属製基材の腐蝕保護仕上げのための方法であって、第一工程(I)において、アニオンとしてランタノイド金属カチオン及び/又はd元素金属カチオン及び/又はd元素メタラートを有する少なくとも1種の化合物(A1)並びに少なくとも1種の酸化可能な酸(A2)を含む水性の腐蝕保護剤(K1)を用いて無電解で浸漬コーティングする工程と、第二工程(II)において、基材の腐蝕に際して遊離する金属イオンと及び/又は基材表面とキレートを形成する共有結合された配位子(L)並びに官能基(B)を有する少なくとも1種の好ましくは水分散性の及び/又は水溶性の重合体(P)と、重合体の官能基(B)と反応する官能基(B′)並びに好ましくは基材の腐蝕に際して遊離される金属イオンと及び/又は基材表面とキレートを形成する共有結合された配位子(L′)を有する少なくとも1種の好ましくは水分散性の及び/又は水溶性の架橋剤(V)を含有する水性腐蝕保護剤(K2)を用いて更に無電解で浸漬コーティングする工程と、第三工程(III)において、前記の官能基(B)及び/又は(B′)を有する少なくとも1種のバインダー(FB)を含有するコーティング剤(F)の適用と、最終工程(IV)において、トップコート塗料、好ましくはベースコート塗装及び最終的なクリヤーコート塗装からなるトップコート塗料を適用する工程を実施する前記方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
自動車塗装、特に自動泳動(autophoretisch)による浸り塗りによる自動車塗装のための前処理としての、種々の金属基材の無電解の腐蝕保護コーティングのための方法及びコーティング剤は知られている。それらは、より簡単でかつ廉価な方法という利点と、より短いプロセス時間という利点を提供する。特に、無電解法では、コーティングされるべき基材中の中空空間もしくはコーティングされるべき基材の縁部を、電圧の印加が必要な方法よりも良好にコーティングすることができる。
【0002】
近年では、クロム含有のコーティング剤に匹敵する非常に良好な腐蝕保護を保証する、クロム不含の自動泳動によるコーティング剤の開発に努力がなされている。その際に、ランタノイド元素の塩並びにd元素の塩並びに被膜形成性の有機成分を含有するコーティング剤が、特に適していることが判明している。しかしながら、例えばWO−A−99/29927号、WO−A−96/10461号及びDE−A−3727382号に記載される自動泳動によるコーティング剤は、欠点として、基材から形成された金属イオンが析出された腐蝕保護層中をさまよう傾向にあること、例えばフッ化物のような環境的に危険な物質が使用されることがある。
【0003】
DE−A−102005023728号及びDE−A−102005023729号において、基材から形成された金属イオンが析出された腐蝕保護層中をさまよう傾向にあるという問題と、環境的に危険な物質が使用されるという問題とをみごとに解決するコーティング剤が記載されている。特に、DE−A102005023728号に記載される、金属製基材の腐蝕保護仕上げのための二段階法であって、第一段階に、基材を、基材表面にコンバージョンをもたらす腐蝕保護剤Kの浴中に浸し、第二段階に、段階(a)に従って処理された基材を、基材の腐蝕に際して遊離される金属イオン及び/又は基材表面とキレートを形成する共有結合された配位子並びに自体他の相補的な重合体Pの官能基B′と及び/又は架橋剤Vの他の官能基B及び/又はB′と共有結合を形成しうる架橋性の官能基Bを有する水分散性及び/又は水溶性の重合体Pを含有する水性コーティング剤の浴に浸す前記方法は、特に好適であると見なされている。
【0004】
WO−A−2008/110195号において、DE−A−102005023728号及びDE−A−102005023729号による金属基材の2段階の前処理と、引き続いての電着塗装との組み合わせが記載されている。こうして製造されたコーティングは、良好な腐蝕保護と、高い環境への優しさとを結びつける。WO−A−2008/110195号による前処理は、自動車量産塗装に際して電着塗装と、サーフェイサーと、ベースコート塗装と、引き続きクリヤーコート塗装とが設けられた金属基材の前処理の簡素化において大きな発展をもたらすにもかかわらず、更に、自動車量産塗装の全行程を、特にプロセス工程もしくは塗装工程の時間の点で簡素化するという要求が存在する。自動車量産塗装において、費用のかかる電着塗装の置き換えに大きな関心が向けられている。
【0005】
本発明の課題
上述の先行技術に鑑みて、本発明の課題は、特に自動車分野における腐蝕保護仕上げのための環境的に十分に心配のない方法であって、技術的に簡単に実施できる方法によって保護すべき基材上に施与できる前記方法を見出すことであった。特に、該方法は、殊に個々のプロセス工程の簡素化及び統合に関して自動車量産塗装における全行程の簡素化に寄与し、その際、特に電着塗装は、特に費用のかかるプロセス工程として置き換えられるべきである。特に、腐蝕保護仕上げと、自動車量産塗装の後続の塗装との間の良好な付着、殊に腐蝕保護層とサーフェイサー層との間の良好な付着が達成されるべきである。
【0006】
更に、本発明による方法は、特に自動車量産塗装の腐蝕保護仕上げをもたらし、それにより、基材から形成された金属イオンがさまようことは十分に阻止され、かつ基材の縁部及び中空空間中で良好に作用する。更に、不純物金属イオンの影響はできる限り低く保持されるべきであり、比較的少ない材料の使用によって効果的な腐蝕保護が達成されるべきである。
【0007】
本発明による解決
前記課題に鑑みて、プロセス工程数の明らかな低減を可能にする、前処理されていない金属製基材の、自動車量産塗装と組み合わされた腐蝕保護仕上げのための方法であって、以下の工程:
(I)第一工程において、アニオンとしてランタノイド金属カチオン及び/又はd元素金属カチオン及び/又はd元素メタラートを有する少なくとも1種の化合物(A1)並びに少なくとも1種の酸化可能な酸(A2)を含む水性の腐蝕保護剤(K1)を用いて無電解で浸漬コーティングする工程と、
(II)第二工程において、基材の腐蝕に際して遊離する金属イオンと及び/又は基材表面とキレートを形成する共有結合された配位子L並びに官能基(B)であってそれ自身と、重合体Pの更なる官能基と及び/又は架橋剤(V)の更なる官能基(B)及び/又は(B′)と共有結合を形成しうる基を有する好ましくは水分散性の及び/又は水溶性の重合体(P)を含有する水性の腐蝕保護剤(K2)を用いて更に無電解で浸漬コーティングする工程と、
(III)第三工程において、前記の官能基(B)及び/又は(B′)を有する少なくとも1種のバインダー(FB)を含有する好ましくは水性のコーティング剤(F)の適用によって更にコーティングする工程と、
(IV)最終工程において、トップコート塗料、好ましくはベースコート塗装及び最終的なクリヤーコート塗装からなるトップコート塗料を適用する工程と、
を含む前記方法が見出された。
【0008】
本発明の詳細な説明
本発明による方法の第一工程(I)
本発明による方法の第一工程(I)において、以下に記載する水性の腐蝕保護剤(K1)を、金属製基材上に無電解で塗布する。無電解で、とは、この場合、電圧の印加による電流の不在を意味する。
【0009】
好ましくは、前記基材は、水性の腐蝕保護剤(K1)の適用前に、特に油性及び脂肪性の残留物の清浄化を行い、その際、好ましくはデタージェント及び/又はアルカリ性の清浄剤が使用される。本発明の更なる好ましい一実施態様においては、デタージェント及び/又はアルカリ性の清浄剤での清浄化の後に、本発明によるコーティング剤の適用前にもう一度、水でさらにすすぐ。基材表面で、堆積物及び/又は化学的に改質された、特に酸化された層を除去するために、本発明の更なる好ましい一実施態様においては、さらなるすすぎ工程の前に、もう一度、その表面を、例えば研磨媒体で機械的に清浄化すること、及び/又は表面層を、例えば脱酸素性の清浄剤で化学的に除去することが行われてよい。
【0010】
水性の腐蝕保護剤(K1)は、1〜5のpH値を有し、カチオンとしてランタノイド金属カチオン及び/又はd元素金属カチオン(好ましくはクロムを除く)を有し、かつ/又はアニオンとしてd元素メタラート(好ましくはクロム含有メタラート)を有する少なくとも1種の化合物(A1)並びに少なくとも酸化可能な酸(好ましくはリン含有酸及び/又はクロム含有酸を除く)を含有する。腐蝕保護剤(K1)におけるクロム含有成分及びリン含有成分を避けることは、環境的理由から好ましい。
【0011】
化合物(A1)は、水中に良好に可溶である。特に、溶解度積LP=[カチオン]n*[アニオン]m>10-8*モル(n+m)/l(n+m)を有する化合物(A1)[カチオン]n[アニオン]m(式中、n、m≧1)、殊に溶解度積LP>10-6*モル(n+m)/l(n+m)を有する化合物(a1)が好ましい。本発明の特に好ましい一実施態様においては、腐蝕保護剤(K1)中の化合物(A1)の濃度は、10-1〜10-4モル/l、特に5*10-1〜10-3モル/lである。
【0012】
化合物(A1)は、カチオン性成分として、ランタノイド金属カチオン及び/又はd元素金属カチオンを有する。好ましいランタノイド金属カチオンは、ランタンカチオン、セリウムカチオン、プラセオジムカチオン、ネオジムカチオン、プロメチウムカチオン、サマリウムカチオン、ヨーロピウムカチオン及び/又はジスプロシウムカチオンである。殊に、ランタンカチオン、セリウムカチオン及びプラセオジムカチオンが好ましい。ランタノイド金属カチオンは、一価、二価及び/又は三価の酸化段階で存在してよく、三価の酸化段階が好ましい。好ましいd元素金属カチオンは、チタンカチオン、バナジウムカチオン、マンガンカチオン、イットリウムカチオン、ジルコニウムカチオン、ニオブカチオン、モリブデンカチオン、タングステンカチオン、コバルトカチオン、ルテニウムカチオン、ロジウムカチオン、パラジウムカチオン、オスミウムカチオン及び/又はイリジウムカチオンである。d元素金属カチオンとしては、好ましくは、全ての酸化段階のクロムカチオンが、その環境的に危険な特性に基づき除外される。殊に、バナジウムカチオン、マンガンカチオン、タングステンカチオン、モリブデンカチオン及び/又はイットリウムカチオンが好ましい。d元素金属カチオンは、一価ないし六価の酸化段階で存在してよく、その際、三価ないし六価の酸化段階が好ましい。ランタノイド金属カチオン及び/又はd元素金属カチオンと化合物(A1)を形成するアニオンは、好ましくは溶解度積Pについての上述の条件が与えられるように選択される。好ましくは、元素の周期律表の第VI副族、第VII副族及び第VIII副族の元素の酸化性の酸のアニオン並びに元素の周期律表の第V主族及び第VI主族の元素の酸化性の酸のアニオン(好ましくは環境的に危険な特性に基づきリン及びクロムの酸化性の酸のアニオンを除く)が使用され、例えば好ましくは硝酸イオン、亜硝酸イオン、亜硫酸イオン及び/又は硫酸イオンが使用される。更に、アニオンとして可能なのは、フッ化物イオンを除くハロゲン化物イオンである。
【0013】
本発明の更なる一実施態様においては、化合物(A1)のランタノイド金属カチオン及び/又はd元素金属カチオンは、単座の及び/又は多座の潜在アニオン性配位子(L1)との錯体としても存在してよい。好ましい配位子(L1)は、場合により官能化されたテルピリジン、場合により官能化された尿素及び/又はチオ尿素、場合により官能化されたアミン及び/又はポリアミン、例えば特にEDTA、イミン、例えば特にイミン官能化されたピリジン、有機硫黄化合物、例えば特に場合により官能化されたチオール、チオカルボン酸、チオアルデヒド、チオケトン、ジチオカルバメート、スルホンアミド、チオアミド及び特に好ましくはスルホネート、場合により官能化された有機ホウ素化合物、例えば特にホウ酸エステル、場合により官能化されたポリアルコール、例えば特に炭化水素及びその誘導体並びにキトサン、場合により官能化された酸、例えば特にジ官能化及び/又はオリゴ官能化された酸、場合により官能化されたカルベン、アセチルアセトネート、場合により官能化されたアセチレン、場合により官能化されたカルボン酸、例えば特にカルボン酸であってイオン性及び/又は配位性に金属中心に結合されうる酸並びにフィチン酸及びその誘導体である。
【0014】
本発明の特に好ましい一実施態様においては、化合物(A1)は、アニオンとして、d元素メタラートを含み、前記メタラートは、d元素金属カチオンと一緒にも又はそれ自体単独でも化合物(A1)を形成しうる。前記メタラートのために好ましいd元素は、バナジウム、マンガン、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン及び/又はタングステンである。d元素メタラートとしては、全ての酸化段階のクロメートが、その環境的に危険な特性に基づき除外される。特に好ましいd元素メタラートは、オキソアニオン、例えば特にウォルフラメート、ペルマンガネート、バナデート及び/又は殊に好ましくはモリブデートである。
【0015】
d元素メタラートがそれ自体単独で、すなわちランタノイド金属カチオン及び/又はd元素金属カチオンなくして化合物(A1)を形成する場合に、かかる化合物の好ましい溶解度積LPについては上述のことが言える。かかる化合物(A1)の好ましいカチオンは、場合により有機基で置換されたアンモニウムイオン、ホスホニウムイオン及び/又はスルホニウムイオン、アルカリ金属カチオン、例えば特にリチウム、ナトリウム及び/又はカリウム、アルカリ土類金属カチオン、例えば特にマグネシウム及び/又はカルシウムである。特に、場合により有機基で置換されたアンモニウムイオン及びアルカリ金属カチオンであって、化合物(A1)の特に高い溶解度積LPを保証するものが好ましい。
【0016】
腐蝕保護剤(K1)の成分(A2)として、少なくとも1種の酸化可能な酸は、腐蝕保護剤のpH値が1〜5、好ましくは2〜4であるように使用される。好ましい酸(A2)は、酸化性の鉱酸、例えば特に硝酸、亜硝酸、硫酸及び/又は亜硫酸の群から選択される。pH値の調整のために、必要な場合には、緩衝剤媒体、例えばアンモニア又は中間強度の塩基と弱酸との塩、特に酢酸アンモニウムなどの緩衝剤媒体を使用してよい。連続相として、腐蝕保護剤(K1)のために、水が使用され、好ましくは脱イオン水及び/又は蒸留水が使用される。
【0017】
上述のように前処理された基材は、腐蝕保護剤(K1)と接触される。それは、前記基材を、腐蝕保護剤(K1)を含有する浴中に無電解で浸漬するかあるいは前記浴へと通すことによって行われる。腐蝕保護剤(K1)中での基材の滞留時間は、好ましくは1秒〜10分、好ましくは10秒〜8分、特に好ましくは30秒〜6分である。腐蝕保護剤(K1)を含有する浴の温度は、好ましくは25〜90℃、好ましくは30〜80℃、特に好ましくは35〜70℃である。
【0018】
コーティング剤(K1)で生成された層の湿式層厚は、自動泳動的な適用の後に、好ましくは5〜900nmであり、特に好ましくは15〜750nmであり、特に25〜600nmであり、これは、可視光のλ/4領域での干渉の目視的測定(乳光)によって並びにDIN EN ISO3497による蛍光X線測定によって測定できる。
【0019】
コーティング剤(K1)での基材の処理後で、本発明による方法の工程(II)における腐蝕保護剤(K2)による引き続いてのコーティングの前に、コーティング剤(K1)からの層を乾燥させ、その際、本発明によるコーティング剤の好ましい作用のための乾燥パラメータ及び乾燥装置は、あまり重要ではないと見なすことができる。
【0020】
好ましくは、コーティング剤(K1)からの層は、後続のコーティング剤(K2)でのコーティングの前に、蒸留水ですすがれ、そして空気、好ましくは不活性ガス、特に窒素を用いて、好ましくは50℃までの温度で吹き付け乾燥される。
【0021】
本発明による方法の第二工程(II)
本発明による水性の腐蝕保護剤(K2)であって、本発明による方法の工程(II)で腐蝕保護剤(K1)からの層上に塗布されるものは、好ましくは水溶性の又は水分散性の重合体(P)を含有し、前記重合体は、基材の腐蝕に際して遊離される金属イオンとキレートを形成する配位子を有し、かつ付加的な架橋剤(V)の成分である更なる官能基(B′)と共有結合を形成しうる官能基(B)を有する。
【0022】
本発明の理解において、水分散性又は水溶性とは、重合体(P)が水相で平均直径50ナノメートル(nm)未満、好ましくは35ナノメートル(nm)未満及び特に好ましくは20ナノメートル(nm)未満を有する凝集物を形成するかあるいは分子分散的に溶解されていることを意味する。水溶性の、すなわち分子分散的に溶解された重合体(P)は、一般に、100000ダルトン未満の、好ましくは50000ダルトン未満の、特に好ましくは20000ダルトン未満の質量平均分子量Mw(規格DIN55672−1〜−3によるゲル透過クロマトグラフィーにより測定可能)を有する。
【0023】
重合体(P)からなる凝集物の大きさは、重合体(P)の親水性基(HG)の導入によって自体公知のように達成される。重合体(P)にある親水性基(HG)の数は、基(HG)の溶媒和能及び立体的アクセシビリティーに依存し、当業者によって同様に自体公知のように設定できる。重合体(P)上にある好ましい親水性基(HG)は、イオン性基、例えば特にスルフェート基、スルホネート基、スルホニウム基、ホスフェート基、ホスホネート基、ホスホニウム基、アンモニウム基及び/又はカルボキシレート基並びに非イオン性基、例えば特にヒドロキシル基、第一級の、第二級の及び/又は第三級のアミン基、アミド基及び/又はオリゴアルコキシ置換基もしくはポリアルコキシ置換基、例えば好ましくはエトキシ化もしくはプロポキシ化された置換基であって更なる基とエーテル化されていてよい置換基である。親水性の基(HG)は、以下に記載される配位子(L)及び/又は架橋性の官能基(B)と同一であってよい。
【0024】
重合体(P)にある親水性基(HG)の数は、基(HG)の溶媒和能及び立体的アクセシビリティーに依存し、当業者によって同様に自体公知のように設定できる。
【0025】
本発明の更なる一実施態様においては、上述の親水性基(HG)は、その濃度においてポリマー骨格に沿って勾配を形成する。その勾配は、ポリマー骨格に沿った親水性基の空間濃度における勾配によって定義される。このように構成された好ましい重合体(P)は、WO−A−2008/058586号に記載されている。前記重合体は、水性媒体中でミセル形成をすることができ、かつコーティングされるべき基材の表面に表面活性を有する、すなわち本発明によるコーティング剤の界面活性エネルギーは、コーティングされるべき表面で低減される。
【0026】
重合体(P)のポリマー骨格としては、任意のポリマー成分が、好ましくは1000〜50000ダルトンの、特に好ましくは2000〜20000ダルトンの質量平均分子量Mw(DIN55672−1〜−3によるゲル透過クロマトグラフィーにより測定可能)を有するものが使用できる。ポリマー骨格としては、好ましくはポリオレフィンもしくはポリ(メタ)アクリレート、ポリウレタン、ポリビニルアミン、ポリアルキレンイミン、ポリエーテル、ポリエステル及びポリアルコールであって特に部分アセタール化及び/又は部分エステル化されているものから誘導された成分が使用される。重合体骨格は、直鎖状に、分枝鎖状に及び/又は樹枝状に構成されていてよい。特に好ましいポリマー骨格は、ポリアルキレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアルコール、ポリ(メタ)アクリレート並びに超分岐型の重合体(例えばそれらはWO−A−01/46296号に記載されている)から誘導された成分であり、その際、ポリアルキレンイミンから誘導された成分が殊に好ましい。
【0027】
重合体(P)は、好ましくは、酸性pH範囲において、特にpH値<5で、特に好ましくはpH値<3で加水分解安定性である。
【0028】
配位子(L)としては、基材の腐蝕に際して遊離する金属イオンとキレートを形成しうる全ての基又は化合物が適している。単座の及び/又は多座の潜在アニオン性の配位子(L)が好ましい。特に好ましくは、配位子(L)は、重合体(P)の官能基と、単座の及び/又は多座の潜在アニオン性の配位子(L)を有する配位子形成体(LB)との反応によって導入され、その際、好ましくは、こうして導入された配位子(L)は、複層塗装の熱的硬化に際してそのキレート形成体としての特性を失わない。
【0029】
配位子(L)は、好ましくは、
− 有機リン化合物、例えば特に有機置換基を有するオルガノホスフェート並びにオルガノホスホネート、好ましくは有機置換基においてヒドロキシアミノ官能化又はアミド官能化されたホスフェートもしくはホスホネート、
− 有機硫黄化合物、例えば特に官能化されたチオ化合物、例えばチオール化合物、ポリチオール化合物、チオカルボン酸化合物、チオアルデヒド化合物、チオケトン化合物、ジチオカルバメート化合物、スルホンアミド化合物及び/又はチオアミド化合物、好ましくは少なくとも2つのチオール基を有するポリチオール、好ましくは少なくとも3つのチオール基を有するポリチオール、特に好ましくは少なくとも3つのチオール基を有するポリエステルポリチオール、
− アシル化尿素及びチオ尿素、例えば特にベンゾイル尿素化合物及び/又はベンゾイルチオ尿素化合物、
− ジアミン及び/又はポリアミン、例えば特にエチレンジアミン四酢酸(EDTA)又は好ましくは高官能性アミン、例えばJeffcat(登録商標)型(Huntsman社)などのアミン、例えば特にトリアルキルアミン、好ましくはジアミノアルキルヒドロキシアルキルアミン、例えば特に好ましくはN,N−ビス(3−ジメチルアミノプロピル)−N−イソプロパノールアミン(Jeffcat(登録商標)ZR50)、
− キノリン、コリン及び/又はベンズイミダゾール、例えば特にアミノキノリン化合物及び/又はメルカプトベンズイミダゾール化合物、
− ヒドロキシ化合物、特に立体的に好ましい位置に、好ましくは1,3−位に、他のカルボニル基、カルボン酸基、チオカルボニル基及び/又はイミノ基を有する化合物、
− カルボニル化合物、特に立体的に好ましい位置に、好ましくは1,3−位に、他のカルボニル基、カルボン酸基、チオカルボニル基及び/又はイミノ基を有する化合物、特に好ましくはアセチルアセトネート化合物、
− カルベン、及び/又は
− アセチレン化合物、例えば特にプロパルギル化合物
の群から選択される。
【0030】
重合体(P)上にある架橋性の官能基(B)としては、それ自体と及び/又は好ましくは架橋剤(V)に存在する相補的な官能基(B′)と共有結合を形成できる基が適している。好ましくは、共有結合は、熱的に及び/又は放射の作用によって形成される。特に好ましくは、共有結合は、熱的に形成される。架橋性の官能基(B)及び(B′)は、重合体(P)の分子と架橋剤(V)の分子との間に分子間ネットワークの形成をもたらす。放射の作用下で架橋する官能基(B)は、活性化可能な結合、例えば炭素−水素の、炭素−炭素の、炭素−酸素の、炭素−窒素の、炭素−リンの、又は炭素−ケイ素の、単結合もしくは二重結合を有する。この場合、特に炭素−炭素の二重結合が好ましい。熱架橋性の官能基(B)は、それ自体と、又は好ましくは相補的な架橋性の官能基(B′)と、熱エネルギーの作用下で共有結合を形成しうる。
【0031】
重合体(P)上の好適な熱架橋性の官能基(B)は、
− 特に好ましくはヒドロキシル基、
− 好ましくはアミノ基、
− メルカプト基、
− アルデヒド基、
− アジド基、
− 酸基、特にカルボン酸基、
− 酸無水物基、特にカルボン酸無水物基、
− 酸エステル基、特にカルボン酸エステル基、
− エーテル基、
− 好ましくはカルバメート基、
− 尿素基、
− 好ましくはエポキシ基、
− イソシアネート基であって、好ましくは封鎖剤と反応されており、本発明によるコーティング剤の焼き付け温度で脱封鎖される及び/又は脱封鎖なく形成されたネットワーク中に組み込まれる基
である。
【0032】
熱架橋性の基(B)と相補的な基(B′)とからの特に好ましい組み合わせは、
− 好ましくはヒドロキシル基とイソシアネート基、
− アミノ基とイソシアネート基及び/又はカルバメート基、
− カルボン酸基とエポキシ基
である。
【0033】
熱的に及び/又は放射の作用によって架橋する基(B′)を有する架橋剤Vとしては、原則的に当業者に公知の全ての架橋剤が適している。質量平均分子量Mw(規格DIN55672−1〜−3によるゲル透過クロマトグラフィーにより測定可能)20000ダルトン未満、特に好ましくは10000ダルトン未満を有する低分子量又はオリゴマー型の架橋剤(V)が好ましい。架橋剤(V)の架橋性基(B′)を有する骨格は、直鎖状に、分枝鎖状に、及び/又は超分岐型に構成されていてよい。分枝鎖状の及び/又は超分岐型の構造、特に例えばWO−A−01/46296号に記載される構造が好ましい。
【0034】
架橋剤(V)は、重合体(P)の架橋性基と反応して共有結合を形成する架橋性基(B′)を有する。
【0035】
架橋剤(V)のために特に良好に適した架橋性の官能基(B′)は、
− ヒドロキシル基、
− エポキシ基、
− 好ましくはカルボン酸基及びカルボン酸無水物基、
− カルバメート基、及び
− 特に好ましくはイソシアネート基であって、殊に好ましくは封鎖剤と反応されており、本発明によるコーティング剤の焼き付け温度で脱封鎖されるか又は脱封鎖なく形成されるネットワーク中に組み込まれる基
である。
【0036】
本発明の好ましい一実施態様においては、架橋剤Vは、架橋性基(B′)の他に、重合体(P)の配位子と同一及び/又はそれとは異なっていてよく、かつ基材の腐蝕に際して遊離する金属イオンとキレートを形成しうる配位子(L)を有する。単座の及び/又は多座の潜在アニオン性の配位子(L′)が好ましい。
【0037】
配位子(L′)は、好ましくは、
− 有機リン化合物、例えば特に有機置換基を有するオルガノホスフェート並びにオルガノホスホネート、好ましくは有機置換基においてヒドロキシアミノ官能化又はアミド官能化されたホスフェートもしくはホスホネート、
− 有機硫黄化合物、例えば特に官能化されたチオ化合物、例えばチオール化合物、ポリチオール化合物、チオカルボン酸化合物、チオアルデヒド化合物、チオケトン化合物、ジチオカルバメート化合物、スルホンアミド化合物及び/又はチオアミド化合物、好ましくは少なくとも2つのチオール基を有するポリチオール、好ましくは少なくとも3つのチオール基を有するポリチオール、特に好ましくは少なくとも3つのチオール基を有するポリエステルポリチオール、
− アシル化尿素及びチオ尿素、例えば特にベンゾイル尿素化合物及び/又はベンゾイルチオ尿素化合物、
− ジアミン及び/又はポリアミン、例えば特にエチレンジアミン四酢酸(EDTA)又は好ましくは高官能性アミン、例えばJeffcat(登録商標)型(Huntsman社)などのアミン、例えば特にトリアルキルアミン、好ましくはジアミノアルキルヒドロキシアルキルアミン、例えば特に好ましくはN,N−ビス(3−ジメチルアミノプロピル)−N−イソプロパノールアミン(Jeffcat(登録商標)ZR50)、
− キノリン、コリン及び/又はベンズイミダゾール、例えば特にアミノキノリン化合物及び/又はメルカプトベンズイミダゾール化合物、
− ヒドロキシ化合物、特に立体的に好ましい位置に、好ましくは1,3−位に、他のカルボニル基、カルボン酸基、チオカルボニル基及び/又はイミノ基を有する化合物、
− カルボニル化合物、特に立体的に好ましい位置に、好ましくは1,3−位に、他のカルボニル基、カルボン酸基、チオカルボニル基及び/又はイミノ基を有する化合物、特に好ましくはアセチルアセトネート化合物、
− カルベン、及び/又は
− アセチレン化合物、例えば特にプロパルギル化合物
の群から選択される。
【0038】
特に好ましくは、配位子(L′)は、架橋剤(V)の官能基と、架橋剤(V)中の配位子形成体(LB′)との反応によって導入される。
【0039】
好適な架橋剤(V)の例は、アミノプラスト樹脂、例えば特にメラミン樹脂、グアナミン樹脂及び/又は尿素樹脂、無水物基を有する化合物又は樹脂、例えばポリコハク酸無水物などの樹脂、エポキシ基を有する化合物又は樹脂、例えば特に脂肪族及び/又は脂環式のポリエポキシド、トリス(アルコキシカルボニルアミノ)トリアジンなどの樹脂、例えば特にUS−A−4,939,213号、US−A−5,084,541号もしくはEP−A−0624577に記載されるもの、カーボネート基を有する化合物もしくは樹脂、β−ヒドロキシアルキルアミド並びに本発明の好ましい実施態様においては好ましくは封鎖されているポリイソシアネートである。
【0040】
架橋剤(V)は、水溶性又は水分散性がなおも不十分な場合に、公知のように親水性に改質してよい。本発明の意味において、水分散性とは、架橋剤(V)が、規定の濃度まで、水相中で、500nm未満の、好ましくは100nm未満の、特に好ましくは50ナノメートル未満の平均粒径を有する安定な凝集物を形成することを意味する。このためには、特にイオン性の及び/又は非イオン性の置換基が架橋剤(V)に導入される。特に、前記置換基は、アニオン性の置換基の場合に、フェノレート基、カルボキシレート基、スルホネート基及び/又はスルフェート基であり、カチオン性の置換基の場合に、アンモニウム基、スルホニウム基及び/又はホスホニウム基であり、そして非イオン性の基の場合に、オリゴアルコキシル化又はポリアルコキシル化された、特に好ましくはエトキシル化された置換基である。
【0041】
特に好ましくは、架橋剤(V)は、少なくとも1種のジイソシアネート及び/又はポリイソシアネートであって、イソシアネート基の一部が複層塗装の熱硬化時に開裂する封鎖剤と反応されており、かつイソシアネート基の残りの部分は、単座の及び/又は多座の潜在アニオン性の配位子(L′)を架橋剤(V)中に導入するために用いられる上記の配位子形成体(LB′)と反応されているものを含み、その際、こうして導入された配位子(L)は、複層塗装の熱硬化時に、好ましくはそのキレート形成体としての特性を失わない。
【0042】
好ましいポリイソシアネートの架橋剤(V)としての例は、イソシアヌレートを、ビウレットを、アロファネートを、イミノオキサジアジンジオンを、ウレタンを、尿素を、及び/又はウレットジオンを有するポリイソシアネートである。好ましくは、脂肪族のもしくは脂環式のポリイソシアネート、特にヘキサメチレンジイソシアネート、二量体化もしくは三量体化されたヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4′−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジイソシアネート、二量体脂肪酸から誘導されたジイソシアネート又は上述のポリイソシアネートの混合物が使用される。
【0043】
殊に好ましくは、ウレットジオン基及び/又はイソシアヌレート基及び/又はアロファネート基を有するポリイソシアネート、特にジイソシアネートの三量体、四量体、五量体及び/又は六量体を基礎とするポリイソシアネート、特に好ましくはヘキサメチレンジイソシアネートを基礎とするポリイソシアネートが架橋剤(V)として使用される。
【0044】
架橋剤(V)の好ましいイソシアネート基(B′)のための封鎖剤としては、好ましくはDE19948004号A1の第15頁第5〜36行に記載される化合物が使用される。特に好ましくは封鎖剤として、ジメチルピラゾール及び/又はマロン酸エステルが使用される。
【0045】
架橋剤(V)として殊に好ましいのは、ウレットジオン基及び/又はイソシアヌレート基及び/又はアロファネート基を有するヘキサメチレンジイソシアネートを基礎とするポリイソシアネートであって、遊離のイソシアネート基の全体数に対して10〜90モル%、好ましくは25〜75モル%、特に35〜65モル%のイソシアネート基が、特にメチルピラゾール及び/又はマロン酸エステルで封鎖されており、かつ遊離のイソシアネート基の全体数に対して10〜90モル%、好ましくは25〜75モル%、特に35〜65モル%が、上述の好ましい配位子形成体(LB′)と、特に好ましくはジアミンもしくはポリアミン、例えば特にEDTAもしくはJeffcat型のアミン、例えば好ましくはトリアルキルアミン、好ましくはジアミノアルキルヒドロキシアルキルアミン、例えば殊に好ましくはJeffcat(登録商標)ZR50、アミノキノリン及び/又はベンゾイミダゾール、少なくとも2個のチオール基を、好ましくは少なくとも3個のチオール基を有するポリチオール、例えば殊に好ましくは少なくとも3個のチオール基を有するポリエステルチオール及び/又は官能化されたアセチレン、例えば殊に好ましくはプロパルギルアルコール並びにかかる配位子形成体(LB′)からの混合物の群から選択される配位子形成体(LB′)と反応されているポリイソシアネートである。
【0046】
本発明の更なる好ましい一実施態様においては、腐蝕保護剤(K2)は、上記の配位子(L′)を有する架橋剤(V)の群から選択される少なくとも2種の異なる架橋剤(V1)及び(V2)からの混合物を含有する。
【0047】
連続相として、腐蝕保護剤(K2)のために、水が使用され、好ましくは脱イオン水及び/又は蒸留水が使用される。更なる成分としては、好ましくは少なくとも1種の酸化可能な酸を、腐蝕保護剤(K2)のpH値が2〜7、好ましくは3〜6である量で使用される。特に好ましい酸は、酸化性の鉱酸、例えば特に硝酸、亜硝酸、硫酸及び/又は亜硫酸の群から選択される。pH値の調整のために、必要な場合には、緩衝剤媒体、例えば中間強度の塩基と弱酸との塩、特に酢酸アンモニウムなどの緩衝剤媒体を使用してよい。好ましくは、腐蝕保護剤(K2)は、重合体(P)を、腐蝕保護剤(K2)1リットル当たりに0.1〜100gの割合で、好ましくは0.2〜50gの割合で、特に好ましくは0.5〜20gの割合で含有し、かつ架橋剤(V)を、腐蝕保護剤(K2)1リットル当たりに0.05〜50gの割合で、好ましくは0.1〜30gの割合で、特に好ましくは0.2〜15gの割合で含有する。
【0048】
本発明の更なる一実施態様においては、腐蝕保護剤(K2)は、本発明による腐蝕保護剤の表面張力を、基材表面上での自動泳動的な析出及び/又は後続の乾燥工程で低減させる少なくとも1種の成分を含有する。腐蝕保護剤の表面張力を低減させる成分を有するかかる好ましい腐蝕保護剤は、WO−A−2008/058587号に記載されている。
【0049】
本発明の更なる一実施態様においては、腐蝕保護剤(K2)は、付加的に、カチオン性成分としてランタノイド金属カチオン及び/又はd金属カチオンを有する塩を含有する。
【0050】
好ましいランタノイド金属カチオンは、ランタンカチオン、セリウムカチオン、プラセオジムカチオン、ネオジムカチオン、プロメチウムカチオン、サマリウムカチオン、ヨーロピウムカチオン及び/又はジスプロシウムカチオンである。殊に、ランタンカチオン、セリウムカチオン及びプラセオジムカチオンが好ましい。ランタノイド金属カチオンは、一価、二価及び/又は三価の酸化段階で存在してよく、三価の酸化段階が好ましい。好ましいd金属カチオンは、チタンカチオン、バナジウムカチオン、マンガンカチオン、イットリウムカチオン、ジルコニウムカチオン、ニオブカチオン、モリブデンカチオン、タングステンカチオン、コバルトカチオン、ルテニウムカチオン、ロジウムカチオン、パラジウムカチオン、オスミウムカチオン及び/又はイリジウムカチオンである。d元素カチオンとしては、全ての酸化段階におけるクロムカチオンが除外される。殊に、バナジウムカチオン、マンガンカチオン、タングステンカチオン、モリブデンカチオン及び/又はイットリウムカチオンが好ましい。d元素カチオンは、一価ないし六価の酸化段階で存在してよく、その際、三価ないし六価の酸化段階が好ましい。その際、塩(S)のランタノイド金属カチオン及び/又はd元素カチオンは、上述の単座の及び/又は多座の潜在アニオン性の配位子(L1)との錯体として存在してもよい。
【0051】
本発明による方法の工程(II)において、腐蝕保護剤(K1)でコーティングされた基材を、コーティング剤(K2)でコーティングする。その際、腐蝕保護剤(K1)でコーティングされた基材は、腐蝕保護剤(K2)の塗布前に上記のように乾燥又はフラッシュオフされる。前記コーティングは、好ましくは、コーティングされた基材を、腐蝕保護剤(K2)を含有する浴中に浸漬するかあるいは前記浴へと通すことによって行われる。腐蝕保護剤(K2)中での基材の滞留時間は、好ましくは1秒〜15分、好ましくは10秒〜10分、特に好ましくは30秒〜8分である。本発明による腐蝕保護剤(K2)を含有する浴の温度は、好ましくは20〜90℃、好ましくは25〜80℃、特に好ましくは30〜70℃である。
【0052】
コーティング剤(K2)で生成された層の湿式層厚は、自動泳動的な適用の後に、有利には5〜1500nmであり、好ましくは15〜1250nmであり、特に25〜1000nmであり、これは、例えば可視光のλ/4領域での干渉の目視的測定(乳光)によって並びにDIN EN ISO3497による蛍光X線測定によって測定できる。
【0053】
基材を腐蝕保護剤(K2)で処理した後で、かつ本発明による方法の工程(III)におけるコーティング剤(F)による引き続いての塗装の前に、好ましくは、基材と、腐蝕保護剤(K1)並びに腐蝕保護剤(K2)からの層との複合物の乾燥を、約30〜200℃の温度で、特に100〜180℃の温度で実施し、その際、本発明による腐蝕保護剤(K2)の好ましい作用のための乾燥装置は、あまり重要と見なすことはできない。好ましくは、腐蝕保護剤(K1)及び腐蝕保護剤(K2)からの複合物は、蒸留水ですすがれ、そして空気で、好ましくは不活性ガスで、特に窒素で、好ましくは50℃までの温度で吹き付け乾燥され、そして本発明による方法の引き続いての工程(III)の前にフラッシュオフされる、すなわち30秒〜30分の時間の間、好ましくは1分〜25分の時間の間、25〜120℃の温度に、好ましくは30〜90℃の温度にさらされる。
【0054】
本発明によるコーティング方法の工程(III)及び(IV)
本発明による方法の第三工程(III)においては、コーティング剤(F)は、工程(II)に従って製造されたコーティング剤(K1)及びコーティング剤(K2)からの複合物上に塗布され、その際、前記コーティング剤(F)は、上述の官能基(B)及び/又は(B′)を有する少なくとも1種のバインダー(FB)を含有する。
【0055】
本発明の好ましい一実施態様においては、コーティング剤(F)は、例えば自動車量産塗装で使用されるような、水性のコーティング剤、特に水性のサーフェイサーである。
【0056】
かかる水性のサーフェイサー(F)は、例えばEP0269828号B1に記載され、その際、そこに記載される水分散性のヒドロキシル基を有するポリエステルは、本発明によるバインダー(FB)の成分として好ましい。特に、EP0269828号B1の第2頁第34行〜第4頁第16行又はWO01/02457号A1の第24頁第2行〜第28頁第19行に記載される水分散性のヒドロキシル基を有するポリエステルは、バインダー成分(FB1)として使用され、その際、かかるポリエステルは、好ましくは、DIN EN ISO3682による酸価20〜150、好ましくは30〜120mg KOH/g(不揮発性成分)及びDIN EN ISO4629によるヒドロキシル価50〜300、好ましくは80〜250mg KOH/g(不揮発性成分)を有する。
【0057】
本発明の好ましい一実施態様においては、水性サーフェイサー(F)中での更なるバインダー成分(FB2)として、例えばDE4438504号A1及びWO01/02457号A1に記載されるような水分散性のヒドロキシ基を有するポリエステルポリウレタンが使用される。好ましくは、かかるポリエステルポリウレタンは、DIN EN ISO3682による酸価0〜50、好ましくは5〜30mg KOH/g(不揮発性成分)及びDIN EN ISO4629によるヒドロキシル価20〜200、好ましくは30〜150mg KOH/g(不揮発性成分)を有する。
【0058】
バインダー成分(FB)は、サーフェイサー(F)中に、サーフェイサー(F)の固体含量に対して、1〜70質量%の量で、好ましくは2〜60質量%の量で、特に好ましくは5〜50質量%の量で含まれている。好ましくは、サーフェイサー(F)は、更なる成分として架橋剤(FV)を含有し、その際、架橋剤成分として、特に好ましくはアミノプラスト樹脂(FV1)及び/又は封鎖ポリイソシアネート(FV2)が使用される。本発明の殊に好ましい一実施態様においては、水希釈可能なアミノプラスト樹脂(FV1)、特にメラミンホルムアルデヒド樹脂、例えばWO01/02457号A1の第23頁第8〜25行に記載されている樹脂からの混合物が、そして水分散性の封鎖ポリイソシアネート(FV2)、例えばDE19948004号の第15頁第4行〜62行に記載されているものからの混合物が使用される。架橋剤(FV)は、サーフェイサー(F)中に、サーフェイサー(F)の固体含量に対して、1〜50質量%の量で、好ましくは2〜40質量%の量で、特に好ましくは3〜30質量%の量で含まれている。サーフェイサー(F)の更なる典型的な成分としては、特に好適な有機の及び/又は無機の充填剤及び/又は顔料が、例えばWO01/02457号A1の第29頁第1行〜第30頁第3行に記載されるものが使用される。特に好ましくは、カーボンブラック、二酸化チタン及びタルクなどの充填剤が使用される。顔料及び/又は充填剤は、サーフェイサー(F)中に、サーフェイサー(F)の固体含量に対して、10〜80質量%の量で、好ましくは15〜70質量%の量で、特に好ましくは20〜65質量%の量で含まれている。更に、サーフェイサー(F)は、サーフェイサー(F)に対して、40質量%までの、好ましくは30質量%までの、特に好ましくは20質量%までの更なる添加剤、例えばWO01/02457号A1の第30頁第8行〜第32頁第17行目に記載される添加剤を含有する。
【0059】
コーティング剤(F)の適用は、好ましくは吹き付け塗布、特に気圧式の塗布によって行われる。コーティング剤(F)は、コーティング剤(F)からなる層の硬化後に5〜60μmの、好ましくは10〜50μmの、特に15〜40μmの乾燥層厚が得られるような湿式層厚で塗布される。
【0060】
本発明によるコーティング方法の一連の工程(I)及び(III)もしくは一連の工程(I)、(II)及び(III)において製造された層複合物は、本発明の好ましい一実施態様において、好ましくは30秒〜30分の時間の間、20〜100℃の温度で、好ましくは室温と80℃の間の温度で、次いで100〜200℃の温度で、好ましくは120〜180℃の温度で、10〜60分の時間の間、好ましくは15〜30分の時間の間、焼き付けられる。
【0061】
驚くべきことに、工程(III)で適用されたコーティング剤(F)からの塗装は、工程(I)及び工程(II)により析出された層上に優れた付着性を示す。前記の層複合物は、更に、衝撃負荷に対する優れた耐性を有する。
【0062】
工程(III)により塗布された層上に、本発明による方法の工程(IV)において、自動車量産塗装で慣用の更なる層は、好ましくはベースコート及びクリヤーコートの順序で自体公知の方法で塗布され、ベースコート塗料の場合に、特に静電吹き付け塗布(ESTA)によって、クリヤーコート塗料の場合に好ましくは吹き付け塗布によって塗布される。使用されるのが好ましいベースコート塗料は、ベースコート塗料からなる層の硬化後に乾燥層厚5〜40μm、好ましくは8〜35μm、特に10〜30μmが得られるような湿式層厚で塗布される。使用されるのが好ましいクリヤーコート塗料は、クリヤーコート塗料からなる層の硬化後に乾燥層厚10〜70μm、好ましくは15〜65μm、特に20〜60μmが得られるような湿式層厚で塗布される。本発明の特に好ましい一実施態様においては、ベースコート塗料の塗布後で、かつクリヤーコートの塗布前に、1〜20分にわたり、15〜40℃の温度でフラッシュオフし、引き続き40〜100℃の温度で乾燥させる。クリヤーコート塗料の塗布後に、好ましくは1〜20分にわたり15〜40℃の温度でフラッシュオフし、次いで100〜200℃の温度で、好ましくは120〜180℃の温度で、10〜60分の時間の間、好ましくは15〜30分の時間の間、焼き付ける。
【0063】
本発明による方法は、驚くべきことに、広い基材スペクトルに対して使用でき、基材のレドックス電位とは十分に無関係である。好ましい基材材料は、亜鉛、鉄、マグネシウム及びアルミニウム並びにそれらの合金であり、その際、上述の金属は、好ましくは合金中に少なくとも20質量%で存在している。好ましくは、基材は、例えば自動車産業、建築産業並びに機械構造産業で使用されるような薄板として構成される。
【0064】
本発明による方法の工程(I)ないし(IV)で塗布される層複合体の腐蝕に対する安定性は、卓越しており、自動車構造の要求を高程度に満たす。
【0065】
以下に挙げられる実施例は、本発明を説明するものである。
【0066】
実施例
製造例1: 腐蝕保護剤K1を有する第一の前処理タンクの製造
1リットルの水中に、1.77g(0.01モル)のモリブデン酸アンモニウム四水和物(A1)を溶解させた。その溶液を、硝酸(A2)によってpH=2.5に調整した。場合により、上述のpH値の調整のために、水性アンモニア溶液で緩衝させた。
【0067】
製造例2: 腐蝕保護剤K2のためのポリマー成分Pの合成
平均分子量Mw=800g/モルを有するポリエチレンイミン(BASF SE社製のLupasol FG、第一級:第二級:第三級のアミノ基の比率(p−s−t):1:0.9:0.5)5g(6.25*10-3モル)を100gのエタノール中で窒素雰囲気下で初充填し、そして75℃で45分にわたって10.7g(0.066モル)のベンゾイルイソチオシアネートを86gのエタノール中に溶かしたものを加えた。さらに4時間にわたり、この温度で撹拌させ、生成物を更なる精製をせずに使用した。
【0068】
製造例3a: 腐蝕保護剤K2のための架橋剤V1の合成
配位子形成体(LB)としてのN,N−ビス(3−ジメチルアミノプロピル)−N−イソプロパノールアミン(Huntsman社製のJeffcat ZR(登録商標)50)17.16g(0.07モル)を、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネートを基礎とする分枝鎖状の50モル%でジメチルピラゾールで封鎖されたポリイソシアネート(Bayer AG社製のBayhydur 304)の81%の酢酸ブチル溶液50g(5.81%のNCO含有率)と一緒に、4時間にわたり80℃で反応させた。溶液が得られ、それは更なる精製をせずに使用した。
【0069】
製造例3b: 腐蝕保護剤K2のための架橋剤V2の合成
配位子形成体(LB1)としてのメルカプトベンゾイミダゾール(Merck社、ダルムシュタット)8.54g(0.035モル)を、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネートを基礎とする分枝鎖状の50モル%でジメチルピラゾールで封鎖されたポリイソシアネート(Bayer AG社製のBayhydur 304)の81%の酢酸ブチル溶液50g(5.81%のNCO含有率)と一緒に、2時間にわたり80℃で反応させた。引き続き、配位子形成体(LB2)としてのN,N−ビス(3−ジメチルアミノプロピル)−N−イソプロパノールアミン(Huntsman社製のJeffcat ZR(登録商標)50)8.58g(0.035モル)を添加し、改めて2時間にわたり80℃で反応させた。溶液が得られ、それは更なる精製をせずに使用した。
【0070】
製造例4: 腐蝕保護剤K2を有する第二の前処理タンクの製造
1リットルの水中に、それぞれ、3gの製造例2によるポリマー成分Pと、1gの製造例3aによる架橋剤V1と、1gの製造例3bによる架橋剤V2を溶解させた。その溶液を、硝酸によってpH=5.0に調整する。場合により、上述のpH値の調整のために、水性アンモニア溶液で緩衝させた。
【0071】
実施例1: 腐蝕保護剤K1(本発明による方法の工程I)及び腐蝕保護剤K2(本発明による方法の工程II)による基材のコーティング
基材(亜鉛メッキ鋼からなる薄板)を、5分にわたり55℃で清浄化溶液(Henkel社製のRidoline C72)中で清浄化し、次いで蒸留水ですすいだ。引き続き、蒸留水ですすいだ薄板を、直ちに45℃で4分にわたって、製造例1による腐蝕保護剤K1の第一のタンクに浸した。可視光のλ/4領域での干渉により目視できない層ないし乳光性の層が形成された。次いで、コーティングされた薄板を、蒸留水ですすぎ、窒素で吹き付け乾燥させた。
【0072】
その直後に、こうしてコーティングされた薄板を5分にわたって35℃で、製造例4による本発明による腐蝕保護剤K2の第二のタンク中に浸した。可視光のλ/4領域での干渉により目視できない第二の層ないし乳光性の第二の層が形成された。次いで、2段階でコーティングされた薄板を、蒸留水ですすぎ、窒素で吹き付け乾燥させ、2.5分にわたり80℃でフラッシュオフした。
【0073】
実施例2: 実施例1によりコーティングされた薄板の、本発明による方法の工程(III)及び(IV)によるコーティング
実施例1に従ってコーティングされコンディショニングされた薄板を、本発明による方法の工程(III)において、EP−B1−0726919号の実施例3に記載されるような更なるサーフェイサーに典型的な成分に加えてバインダー成分(FB)として、サーフェイサー(F)に対して21質量%の、EP−B1−0269828号に記載されるエポキシ改質されたポリエステル(FB1)の水性分散液と、更なる成分として、サーフェイサー(F)に対して21質量%の、ヒドロキシル基を有するポリエステルポリウレタンであってDIN EN ISO4629によるヒドロキシル価約85mg KOH/g(不揮発性成分)及びDIN EN ISO3682による酸価約7.5KOH/g(不揮発性成分)を有するもの(FB2=Bayer AG社製のBAYHYROL PT 241)の水性分散液との組み合わせを含有し、その際、前者のモノマー成分は、DIN EN ISO4629によるヒドロキシル価が185mg KOH/g(不揮発性成分)及びDIN EN ISO3682による酸価が45KOH/g(不揮発性成分)であるように選択され、かつ分散液中の35質量%(FB1)の不揮発性成分の割合に調整され、かつ分散液中の41質量%(FB1)の不揮発性成分の割合に調整され、並びに架橋剤成分(FV)として、サーフェイサー(F)に対して5質量%の水希釈性のメタノールでエーテル化されたメラミン樹脂(FV1=CYTEC社製のCymel 327とCymel 1130からの50/50混合物)からなる混合物と、サーフェイサー(F)に対して5質量%のヘキサメチレンジイソシアネートからの封鎖されたイソシアネート基をポリイソシアネート(FV2)に対して7.5〜8質量%のケイ酸含有率で有するイソシアヌレート付加物を基礎とする水希釈性の封鎖されたポリイソシアネート(FV)を含有する水性のサーフェイサー(F)で気圧式適用によって、乾燥層厚25〜30μmが生ずるような湿式層厚でコーティングした。次いで、サーフェイサーでコーティングされた薄板を、10分にわたり室温でフラッシュオフし、引き続き20分にわたり165℃の対象物温度で焼き付けた。
【0074】
引き続き、本発明による方法の工程(IV)において、商慣習のベースコート塗料(BASF Coatings AG社製のColor Pro 1)を、乾燥層厚15μmが得られるような湿式層厚で適用した。次いで、ベースコート塗料でコーティングされた薄板を4分にわたり室温でフラッシュオフし、引き続き10分にわたり80℃の対象物温度で乾燥させた。引き続き、商慣習のクリヤーコート塗料(BASF Coatings AG社製のPro Gloss)を、乾燥層厚30〜35μmが得られるような湿式層厚で適用した。次いで、ベースコート塗料とクリヤーコート塗料でコーティングされた薄板を、10分にわたり室温でフラッシュオフし、引き続き20分にわたり135℃の対象物温度で焼き付けた。
【0075】
比較例2
比較例2のために、商慣習のリン酸塩処理剤(Chemetall社製のGardobond 26S W42 MBZE3)でコーティングされた亜鉛メッキされた鋼製の薄板を、商慣習の鉛不含のカソード電着塗料(BASF Coatings AG社製のCathoguard(登録商標)500)で浴温度32℃及び析出時間120秒でコーティングし、次いで20分の間、175℃で硬化させた。析出され硬化されたカソード電着塗料の厚さは、19〜20μmであった。引き続き、上記の方法の工程(III)によるサーフェイサー並びに上記の方法の工程(IV)によるベースコート塗料及びクリヤーコート塗料からなる構造を適用し、乾燥させ、そして硬化させた。
【0076】
実施例3: 実施例2によりコーティングされた薄板と比較例2によりコーティングされた薄板の気候交換試験
コーティングされた薄板を、金属基材にまで貫いた引っ掻き傷を設けた後に、該薄板を、VDA−テストシート(Pruefblatt)621−415(1982年2月)による気候交換試験(Klimawechseltest)KWTに供した。その際、サンプルは、19週の周期を経て、1週の周期は以下のように構成されている:
月曜日:
DIN ISO 9227による塩水噴霧試験
火曜日から金曜日:
DIN ISO 6270−2KKによる40℃での一定気候
土曜日と日曜日:
23℃及び50%の相対空気湿度での再生
【0077】
腐蝕の尺度として、マイクロメートルのねじによる引っ掻き傷での腐蝕性穿掘(korrosive Unterwandung)を測定した。
【0078】
第1表に、結果をまとめる。本発明による層構造の耐腐食性は、複数の前処理タンクが必要なリン酸塩処理と、カソード浸漬塗装及び本発明による方法の工程(III)及び(IV)による構成からなる層構造と比較して同等であり、従ってカソード浸漬塗装は完全に省くことができる。
【0079】
第1表: 気候交換試験(KWT)の結果
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製基材の塗装のための多段階方法であって、
(I)第一工程において、アニオンとしてランタノイド金属カチオン及び/又はd元素金属カチオン及び/又はd元素メタラートを有する少なくとも1種の化合物(A1)並びに少なくとも1種の酸化可能な酸(A2)を含有する水性の腐蝕保護剤(K1)を用いて無電解で浸漬コーティングする工程と、
(II)第二工程において、
(1)基材の腐蝕に際して遊離する金属イオンと及び/又は基材表面とキレートを形成する共有結合された配位子(L)並びに官能基(B)を有する少なくとも1種の好ましくは水分散性の及び/又は水溶性の重合体(P)、及び
(2)前記重合体の官能基(B)と反応する官能基(B′)並びに好ましくは基材の腐蝕に際して遊離する金属イオンと及び/又は基材表面とキレートを形成する共有結合された配位子(L′)を有する少なくとも1種の好ましくは水分散性の及び/又は水溶性の架橋剤(V)
を含有する水性の腐蝕保護剤(K2)を用いて更に無電解で浸漬コーティングする工程と、
(III)第三工程において、前記の官能基(B)及び/又は(B′)を有する少なくとも1種のバインダー(FB)を含有するコーティング剤(F)を適用する工程と、
(IV)最終工程において、トップコート、好ましくはベースコート塗装及び最終的なクリヤーコート塗装からなるトップコートを適用する工程と、
を含む前記方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、該方法の工程(I)で使用される腐蝕保護剤(K1)の化合物(A1)の少なくとも1種の成分が、ウォルフラメート、ペルマンガネート、バナデート及び/又は好ましくはモリブデートの群から選択されるd元素メタラートであることを特徴とする前記方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法であって、該方法の工程(II)で使用される腐蝕保護剤(K2)の重合体(P)の配位子(L)及び/又は該方法の工程(II)で使用される腐蝕保護剤(K2)の架橋剤(V)の配位子(L′)が、
− 有機リン化合物、例えば特に有機置換基を有するオルガノホスフェート並びにオルガノホスホネート、好ましくは有機置換基においてヒドロキシアミノ官能化又はアミド官能化されたホスフェートもしくはホスホネート、
− 有機硫黄化合物、例えば特に官能化されたチオ化合物、例えばチオール化合物、ポリチオール化合物、チオカルボン酸化合物、チオアルデヒド化合物、チオケトン化合物、ジチオカルバメート化合物、スルホンアミド化合物及び/又はチオアミド化合物、好ましくは少なくとも2つのチオール基を有するポリチオール、好ましくは少なくとも3つのチオール基を有するポリチオール、特に好ましくは少なくとも3つのチオール基を有するポリエステルポリチオール、
− アシル化尿素及びチオ尿素、例えば特にベンゾイル尿素化合物及び/又はベンゾイルチオ尿素化合物、
− ジアミン及び/又はポリアミン、例えば特にエチレンジアミン四酢酸(EDTA)又は好ましくは高官能性アミン、例えばJeffcat(登録商標)型(Huntsman社)などのアミン、例えば特にトリアルキルアミン、好ましくはジアミノアルキルヒドロキシアルキルアミン、例えば殊に好ましくはN,N−ビス(3−ジメチルアミノプロピル)−N−イソプロパノールアミン(Jeffcat(登録商標)ZR50)、
− キノリン、コリン及び/又はベンズイミダゾール、例えば特にアミノキノリン化合物及び/又はメルカプトベンズイミダゾール化合物、
− 特に立体的に好ましい位置に、好ましくは1,3−位に、他のカルボニル基、カルボン酸基、チオカルボニル基及び/又はイミノ基を有するヒドロキシ化合物、
− 特に立体的に好ましい位置に、好ましくは1,3−位に、他のカルボニル基、カルボン酸基、チオカルボニル基及び/又はイミノ基を有するカルボニル化合物、特に好ましくはアセチルアセトネート化合物、
− カルベン、及び/又は
− アセチレン化合物、例えば特にプロパルギル化合物
の群から選択されることを特徴とする前記方法。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法であって、該方法の工程(II)で使用される腐蝕保護剤(K2)の重合体(P)が、ポリマー骨格として、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルアミン及び好ましくはポリアルキレンイミンの群から選択される1種もしくはそれより多種の構成単位を有することを特徴とする前記方法。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法であって、該方法の工程(II)で使用される腐蝕保護剤(K2)の重合体(P)の官能基(B)が、アミノ基、カルバメート基、エポキシ基及び好ましくはヒドロキシル基の群から選択されることを特徴とする前記方法。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法であって、該方法の工程(II)で使用される腐蝕保護剤(K2)の架橋剤(V)が、少なくとも1種のジイソシアネート及び/又はポリイソシアネートであって、このましくはイソシアネート基の一部が封鎖剤と反応されているイソシアネートを含有することを特徴とする前記方法。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法であって、工程(III)で使用されるコーティング剤(F)が水性サーフェイサーであり、かつ好ましくはバインダー成分(FB1)として水分散性のヒドロキシル基を有するポリエステルを含有することを特徴とする前記方法。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法であって、工程(III)で使用されるコーティング剤(F)が、バインダー成分(FB2)として水分散性のヒドロキシル基を有するポリエステルポリウレタンを含有することを特徴とする前記方法。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法であって、工程(III)で使用されるコーティング剤(F)が、アミノプラスト樹脂及び/又は封鎖されたポリイソシアネートの群から選択される少なくとも1種の架橋剤(FV)を含有することを特徴とする前記方法。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法であって、基材が、コーティングされるべき表面に、Fe、Al及び/又はZnの群から選択される金属を少なくとも20質量%含有することを特徴とする前記方法。

【公表番号】特表2012−516916(P2012−516916A)
【公表日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548537(P2011−548537)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際出願番号】PCT/EP2009/009270
【国際公開番号】WO2010/088946
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(390008981)ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (155)
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D−48165 Muenster,Germany
【Fターム(参考)】