説明

耐衝撃性保護用多層フィルム

【課題】耐衝撃性、耐候性、耐汚染性、接着性等に優れた合成表面を覆うための透明な多層フィルムの提供。
【解決手段】露出する保護層、及び、内在する緩衝層を含み、露出層は主としてポリ弗化ビニリデンなどのフッ素置換オレフィン重合体とアクリル重合体の重合体混合物で、緩衝層は耐衝撃変性されたアクリル重合体、エチレン−酢酸ビニル重合体、又は、メタロセン触媒によるポリエチレンであり30,000psi(207MPa)未満の弾性モジュラスを持ち、実質的にフッ素重合体を含まない。多層フィルム2は、追加のフッ素置換オレフィン重合体とアクリル重合体の混合物よりなる熱接着性の層を持つ。戸外の建物下見板、乗り物のボディパネル、及び、看板(サイン)のような支持体の汚染、天候状態、及び、衝撃損傷に抵抗を示す。

【発明の詳細な説明】
【発明が属する技術分野】
【0001】
この発明は、家屋の下見板、標識(サイン)、及び、乗物のパネルのような装飾目的の、主として戸外の構造物を保護する為のフィルムに関係する。更に詳細には、本発明は、耐衝撃性、低モジュラスの熱可塑性重合体からなる隣接の緩衝層に接合した弗素ポリマー/アクリルポリマーアロイの耐候性・保護層を含む多層フィルムに関係する。
【従来の技術】
【0002】
最近に至り、硬質,軟質の内部、外部の壁、及び、パネルの装飾目的の標識(マーキング)は、市場的に益々重要になってきた。装飾目的の標識面は、広範囲に使われている。これらは、例えば、アルミニウム又はポリ塩化ビニル(PVC)の下見板を持つ建物外壁、垣根構造物、広告掲示板、及び、道路標識、トラック、バス、及び、飛行機の外部パネル、並びに、ボート、飛行機、及び、鉄道車両乗客キャビンの内部隔壁に見ることができる。
【0003】
これらの装飾目的の標識を持つ表面を、風化、化学腐食、汚染、及び、他の崩壊プロセスから保護し続けることが必要とされた。この必要性を満たすべく開発された技術は、装飾目的の標識面を保護フィルムによって覆うことからなる。弗素ポリマー、特にポリ弗化ビニリデン(PVDF)を含むフィルムが天候、腐食、及び、汚染に対して耐性があることが分かっている。従って、弗素ポリマーは、耐腐食性パイプ、板、及び、シート、並びに、内部の耐汚染性の品物、ビニル製下見板、窓枠、看板(サイン)、日よけ等のような天候又は化学的に犯されやすい外装物の保護コーティング用または、積層用塗料に広く使われる。
【0004】
残念なことに、PVDFなどの弗素ポリマーは、また、混和性がないので、表面の保護必要性の高い多くの支持体(substrate)へ接着出来ない。PVC、または、ポリカーボネートのような適当な支持体に対する弗素ポリマーの接着を向上させる一つの方法は、アクリル樹脂を含む中間接着層を導入することからなる。無定形状態では、弗化ビニリデン、及び、アクリル樹脂が非常に広い濃度範囲で混和性があるので、接着性は、幾分向上する。しかしながら、弗素ポリマー、及び、接着層は、好ましくは押出し、または、積層法で同時に、接着・適用するのがよい。この方式では、弗素ポリマーと接着性の層と間に十分な表面の相互作用が行われないので、弗素ポリマーの不活性な点を克服して満足に接着できる程度にはならない。
【0005】
他の仕方では、弗素ポリマーを溶融、または、溶液にして、アクリル樹脂と混合し、一種のポリマーアロイを作り、これを支持体に、塗付、積層、成型、または、押出し成型して単層の保護フィルムを形成させることであった。ポリマーアロイ中のアクリル樹脂の濃度が十分に高ければ、接着が合格の程度まで向上できる。少なくとも通常約50重量%の濃度で使用する。しかしながら、アクリル樹脂の含量がそのように高いと、フィルムの脆性が不当な水準まで上昇し、紫外線、天候による害、化学薬品、及び、汚染に対する耐性が劣化してしまう。
【0006】
異なる組成、及び、混合物の多層の利用を目指す技術上の改善が様々提案されてきた。
【0007】
米国特許4,317,860には、PVDFの層と熱可塑性の樹脂層からなる積層物の層が、その表面上全体でそれ自体両重合体層の表面に緊密に融合している中間層のポリアルキルメタクリレート層で結合されていることが開示されている。
【0008】
米国特許4,364,886には、PVDFと非混和性の重合体をPVDFとポリアルキルメタクリレートの同時押し出しで得た、PVDFとポリアルキルメタクリレートの予備成型積層物の表面に圧縮或いは射出成型して成型積層物を生成することが開示されている。このPVDF層は、PVDFと他の重合体との共重合体か、他の重合体との混合物でもよい。
【0009】
米国特許4,677,017には、熱可塑性の弗素ポリマー層、隣接する熱可塑性の重合体層、及び、両者間にある変性ポリ‐オレフィン、好ましくは、エチレン・酢酸ビニル共重合体の接着層からなる、同時同時押し出し多層フィルムが開示されている。
【0010】
米国特許5,180,634には、PVDFと、エラストマーがグラフトされたアルキルメタクリレートの単独重合体または共重合体の混合物からなる第一の外側の層、エラストマーがグラフトされたアルキルメタクリレートの単独重合体または共重合体、並びにアルキルメタクリレートの単独重合体または共重合体からなる層、及び必要ならアルキルメタクリレートの単独重合体または、任意の共重合体の中間層からなる同時押し出し多層シートが開示されている。
【0011】
米国特許5,256,472によれば、弗化ビニリデン樹脂が主要成分でメタクリレート樹脂が副成分の前部表面層及び紫外線吸収剤を含み、主要成分がメタクリレート樹脂、副成分が弗化ビニリデン樹脂である後部表面層を含む耐候性多層フッ素樹脂タイプが開示されている。
【0012】
米国特許5,506,031には、梨地剥離層上の装飾的コーティング物を、押出成型プラスチックのシートに転写することからなるプロセスが開示されている。剥離層が艶消剤を含んでおり、装飾的コーティングの外面に深い三次元の型押しを形成するエンボシングロールで圧力をかけて、天然の木目模様に類似の光沢の鈍い装飾的コーティングが得られる。
【0013】
WO94/12583は、弗化ビニリデン樹脂を少なくとも60重量%含む表面層及びガラス遷移温度が35℃‐90℃の透明アクリル樹脂接着層を持つ熱トランスファー可能なフッ素樹脂多層フィルムを開示している。そのフィルムは、最高110℃までの低い熱トランスファー温度で積層できる。
【0014】
これら、及び、他の技術では、天候、腐食、及び、汚染抵抗特性と支持体の保護的コーティングの接着とのバランスをとるのに、いくらか成功したが、依然他の問題が残っている。例えば、従来の多層コーティングは、一般に、引っかき、切削、亀裂、剥離、及び、異物の衝撃による累積的な効果に依る同様の劣化に対して保護できない。例えば、車体の外部ボディパネルには、保護コーティングに被害を与える塵、埃、及び、小石粒子に絶えず高速で打たれている。同様に、風が運ぶ埃、雹、及び近傍の対象物との接触により、固定表面のコーティングが損傷を受けることが知られている。その上、此れまで使われたコーティングは、通常硬質で、脆い。非常に接着性があるが、それらは、(伸縮性)膨張性のある建物の下見板、及び、日よけの薄い部分のような柔軟な、又は、撓む支持体から剥離しやすい。
【0015】
装飾的な標識を持つ表面の保護コーティングは、耐衝撃性、及び、必要なら耐候性、耐汚染性、接着性がある他、他の性能基準においても優れているべきである。例えば、多くの応用で、これらの層は、下にある装飾がゆがんだり、かすんだりしないで見えるように、透明であるべきである。しかも、更に、しばしば必要なことは、保護コーティングが規定されたレベルの光沢を持つか、逆に持たないことである。従って、好ましくは低度の、予め選択した光沢度を与えるように調整され、また、非常に耐衝撃性で、柔軟な、又は撓む支持体上で耐久性があり、耐候性、耐汚染性、接着性があり、好ましくは透明な保護コーティングが、依然として必要である。
【0016】
従って、この発明が今回提供するものは、フッ素置換オレフィン重合体とアクリル重合体からを含む混合物の保護層を含み、且つ、該保護層は、弾性モジュラス約207MPa未満の、実質的に弗素ポリマーを含まないの耐衝撃性重合体を含む緩衝層に堅固に接合した多層フィルムである。
【0017】
更に保護層とは反対側の緩衝層に接合されたフッ素置換オレフィン重合体とアクリル重合体を含む混合物を含む熱接着性層を含む、前記多層フィルムも提供される。これらのフッ素置換オレフィン重合体、アクリル重合体、耐衝撃性重合体成分は、夫々独立して単独重合体、共重合体、及び、それらの混合物を含むことができる。この熱接着性の層は、余分な接着剤やプライマーを必要とせず、多くの支持体材料へ多層フィルムを強く接着させることができる。
【0018】
更に本発明は、装飾面を持つ支持体及び該支持体を覆い、フッ素置換オレフィン重合体とアクリル重合体を含む混合物の保護層を含み、且つ、該保護層は、弾性モジュラス約207MPa未満の、実質的に弗素ポリマーを含まない耐衝撃性重合体を含む緩衝層に堅固に接合している、多層薄膜からなり、装飾面は緩衝層に熱接着されている耐候、耐汚染性複合構造物を提供する。この新規な多層フィルム、及び、複合物は、活気あり、永久的にもつように装飾した乗り物のボディパネル、建物外部、柔軟な日よけ、サイン、自動車、トラック、列車、及び、飛行機その他の乗客室内の隔壁にとって有益である。
【0019】
本発明は、弗素ポリマー/アクリルポリマーアロイを組み入れた保護用の多層フィルム、並びに支持体上の積層物への応用に関する。好ましい態様では、フィルムの各層は、光学的に透明である。
【0020】
基本的な態様において、この発明に基づく多層フィルムは、二つの層、すなわち保護層と緩衝層を持っている。支持体に適用する場合、緩衝層が支持体に接触し、好ましくは、接着されるが、一方保護層は、周囲の環境にさらされることになる。各層が各種の機能を発揮できるが、同時に、緩衝層は、フィルムと支持体の複合物に主として耐衝撃性、機械的なエネルギーの分散、及び、接着効果を与え、一方保護層は、耐候性、及び、耐腐食、耐汚染性を与える。多くの応用で、この新規なフィルムの層全てが、余り邪魔されずに下にある支持体が見通せるように、光学的に透明であってもよい。ここで使用する、用語、「光学的に透明」とは、そのフィルムが可視光を最小限度透過させることを意味する。このように、個々の層の組成は、多層フィルムの可視光透過率が約70%より高く、好ましくは約75%より高く、最も好ましくは約80%より高くなるように選択すべきである。光学的に透明なフィルムは、曇り値が約4%未満、更に約2%未満、最も好ましくは、約1%未満であるのがよい。可視光透過率と曇り値は、両方共、ASTMD−1003に従って測定できる。代りに、色つきのフィルムが望まれるときは、複数層中1層以上は、効果的な量の顔料を含むことができる。顔料が存在すると、それによりフィルムを可視光に対し、部分的または、完全に不透明にすることができる。既知の顔料が使用できる。
【0021】
保護層は、時に、「フルオロオレフィン重合体」とも呼ばれるフッ素置換オレフィン重合体とアクリル重合体の混合物を含む。フルオロオレフィン重合体は、全重合体成分100重量部に対して約45〜95重量部含まれ(全重合体成分100重量部に対しての重量部をpphという)、従って、アクリル重合体は約5〜55pph含まれる。好ましくは、該組成は、約60〜80pphのフルオロオレフィン重合体、及び、20〜40pphのアクリル重合体を含む。明確にそれと逆の意味が指示されていない限り、新規な多層フィルムの成分を示すのに、ここに使われる用語「重合体」、または、その同族語の用語は、記述されている単量体の単独重合体、または、共重合体、及び、そのような単独重合体、かつ/または、共重合体の混合物を意味すると、理解すべきである。
【0022】
フッ素置換オレフィン重合体は、好ましくは弗化ビニリデン、弗化ビニル、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、エチレン‐クロロトリフルオロエチレンからなる群から選択された少なくとも1つの単量体から成り、そのような弗素ポリマーの混合物も含む。好ましいフルオロオレフィン重合体は、ポリ弗化ビニリデン(PVDF)及び、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体のようなPVDF共重合体を含む。
【0023】
この発明で使用するのに適当な多くのフルオロオレフィン重合体は、様々な品位のものが供給者から市場で入手可能である。例えば、供給者は、名目上同じ組成で、特定の粘性特性を確保するために、異なる分子量のような、異なる特質を持つ種々の樹脂を供給し得る。以下詳細に説明するように、保護層、および/または熱接着性層のフルオロオレフィン重合体成分には、以下に詳細に述べるように、1種の重合体の代わりに多数のフルオロオレフィン重合体の溶融混合物を含むことができる事も意図している。PVDF単独重合体、及び、PVDF共重合体のアロイは、弾性モジュラスが改良され、光沢が削減されているので、好まれる。保護層において、好ましいアクリル重合体は、次式(I)の重合単位を含む重合体であるが、
【0024】
【化3】

【0025】
同式に於いて、Xは、H、または炭素原子数1〜4のアルキル基で、Rは、炭素原子数1〜4のアルキル基、グリシジル基、又は炭素原子数1〜4のヒドロキシアルキル基である。代表的なアクリル重合体は、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレー、ポリブチルメタクリレート、ポリグリシジルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリグリシジルアクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、及び、これらの混合物を含む。
【0026】
緩衝層組成は、既知の多層保護用薄膜の接着性の層で必要なものと同じ特質を多数持つべきである。例えば、緩衝層は、保護層と支持体組成に十分な相溶性を持ち、双方と共によく接着すべきである。その上、可視光透過率の高い応用では、下にある支持体の装飾的標識が通して見られるように、緩衝層は、光学的に透明であるべきである。好ましくは、緩衝層は、耐久性があり、放射線、酸化、腐食、及び、同様な崩壊プロセスからの攻撃に耐性があるべきである。従って、該層には、少量であっても相当な量の分解抑制添加物、及び、助剤を組み入れることができる。
【0027】
重大なことは、緩衝層は、優れた耐衝撃性をフィルムに相当程度与えるように選択された、低いモジュラス重合体を含むという点で、既知の接着性の層材料から異なっている。概して、この緩衝層の低モジュラス重合体は、脆くて堅いと言うよりむしろ幾分弾力性、伸張性があり、且つ、柔軟であるべきである。緩衝層は、該フィルムで保護されている物品が使用中に硬い対象物から衝撃を受けて蒙るエネルギーを弾性的に吸収し、分散させるのに役立つ。その結果、このフィルムは、物体から打撃を受けても、引っかき、切削、亀裂、剥離、などが起きるのを防ぐ。同じく緩衝層のゴム状性質は、本フィルムを、日よけやカーテンのような柔軟で、撓みが起こる支持体に接着するのに役立つ。低モジュラス重合体は、所望の弾性を与えるために、好ましくは、せいぜい約30,000psi(psiは平方インチ当たりのポンド)の弾性モジュラスを持っべきである、すなわち、約207MPa未満の、更に好ましくはせいぜい、約25,000psi(172MPa)、最も好ましくは、最高、約20,000psi(138MPa)である。
【0028】
低モジュラス重合体は、また、耐衝撃性が特色であり得る。好ましくは、低いモジュラス重合体は、ASTMD−256による測定で、少なくとも約30J/m、更に好ましくは約70J/mの耐衝撃性を持つ。ASTMD−3679による測定で、本発明の緩衝層は、このようにフィルムと支持体の複合物に、好ましくは、少なくとも約6.8N・m(60インチ−ポンド)(in−lbf)、少なくとも更に好ましくは約7.9N・m(70インチ−ポンド)(in−lbf)の耐衝撃性を付与できる。この発明で使用する代表的な低モジュラス重合体は、耐衝撃変性アクリル重合体、及び、ポリ(エチレン・酢酸ビニル)、エチレン−プロピレン−ジエン単量体(EPDM)共重合体、及び線状の低密度ポリエチレン、メタロセン触媒で合成した非常に低密度のポリエチレンのような低密度ポリエチレンの如き耐衝撃変性ポリオレフィンを含む。好ましくは、低モジュラス重合体は、耐衝撃変性アクリル重合体、ポリ(エチレン−酢酸ビニル)、メタロセン触媒で合成したポリ‐オレフィン、及び、これらの混合物からなる群から選択された熱可塑性の重合体である。
【0029】
耐衝撃変性されたアクリル重合体は、アクリル重合体に化学的に類似し、緩衝層と保護層間の層間接着が上昇するので、緩衝層として、好ましく使用される。衝撃変性されたアクリル重合体は、所望の弾性モジュラスと耐衝撃性を発揮するよう、効果的な量の適当なコモノマーまたは、グラフト部分とアクリル単量体を単量体とする共重合体を含むことができる。時にはアクリレートゴム、ポリアクリレートゴム、ポリ‐アクリルエラストマー、または、「ACM」と呼ばれるアクリルエラストマーは、ポリアクリレートとポリメタクリレート、ポリアクリレートとエチレンメタクリレート共重合体(EMAC)[シェブロンケミカル社(Chevron Chemicals)EMAC2260。または、ポリアクリレートとポリブチルメタクリレート(BMAC)の混合物が使用できる。所望の弾性モジュラスを持つ組成は、主要量(50wt%より多い)のエラストマー共重合体(例えば、EMACまたは、BMAC)と補助的量のポリアクリレートを含む。
【0030】
例えば、代りに、適当な熱可塑性の耐衝撃変性アクリル重合体は、エチレンとアクリル酸、メタクリル酸、及び、これら混合物から選択したカルボキシル基を持つ化合物とのプラスチック状共重合体のような透明ガラス状のアクリル重合体とエラストマー的な成分との混合物であってもよい。耐衝撃変性アクリル重合体は、エラストマーの微粒子が一様にプラスチック状共重合体に分散した分散物として存在することが好ましい。Thompson等が米国特許5,079,296、5,252,664、及び、5,336,719で示したような耐衝撃変性アクリル重合体製造法を用いてもよい。前記Thompson特許は、ブロック共重合体10〜99重量%と;0.1〜10ミクロンの粒子サイズを持つ粒状ゴム0.1〜1重量%;残部は透明なガラス状の重合体とを混合することによって生成した、透明強化熱可塑性の混合物について述べている。
【0031】
耐衝撃変性アクリル重合体を生成するためのもう一つの適当な技術は、ローム・アンド・ハース社(Rohm and Haas)のDR−101樹脂のようないわゆる「コア(芯)/シェル(殻)」製品を使用することである。これらは、一般に、重合体の中央の芯が他の重合体の殻(シェル)で囲まれた重合体粒子である。その芯は、プラスチックかエラストマー成分のいずれかでよく、その殻は、その反対、すなわち、エラストマーかプラスチックの成分になる。コア/シェル製品粒子は、典型的に、約1.6mm〜12mmの直径を持つ円筒、球形、もしくは、卵形の形をしたペレットとして入手可能である。適当なコア/シェル製品粒子は、最高約10重量%、通常約5〜10重量%のエラストマー成分を含む。通常、コア/シェル粒子は、溶融押出機のような溶融混合装置に仕込まれ、はるかに小さい規模で均一な混合物を形成するように、コア、及び、シェル領域が溶融液相で混合され、この均一な混合物の押出物からフィルムを形成する。
【0032】
時に「EVA」と呼ばれ、本発明にとって、有益なポリ(エチレン−酢酸ビニル)は、広く、エチレンと酢酸ビニルのランダム共重合体として記載されている。好ましくは、EVA共重合体の酢酸ビニル含量は、約10〜40%の範囲である。酢酸ビニル含量が増加すると、形態不規則性が上昇し、結晶性が更に低下、ゴム状性質が増え、接着性が増す。
【0033】
3番目に好ましい、衝緩層に適切な低モジュラス重合体タイプは、線状極低密度ポリエチレンとメタロセン触媒によるポリ‐オレフィン,とくにメタロセン触媒によるポリエチレンである。ここに使われている言葉、「低密度ポリエチレン」は、既知の分岐エチレン重合体で、25℃での密度が約0.910から0.925g/ccである。比較に、「中密度ポリエチレン」、及び、「高密度ポリエチレン」は密度が夫々、約0.925〜0.940g/cc及び0.940g/cc以上であるエチレンの線状単独重合体を意味する。「線状極低密度ポリエチレン」は、既知の、密度が0.910g/cc以下の本質的に線状なエチレン重合体の種類を意味する。これらの密度による分類を採用する場合、「エチレン系重合体」は、エチレンの単独重合体及び一種以上のコモノマーとの共重合体を含む。
【0034】
本発明の緩衝層に使用するのに適当な線状極低密度のエチレン重合体は(以下、[LVLDPE])は,1種以上のコモノマーを含むか、含まなくてもよく、密度が0.850から0.900g/ccで、分子量分布が狭い、本質的に線状のエチレン重合体を含む。共重合体に使用するのに好ましいコモノマーは、1〜10モル%のαーオレフィンを含む。本発明で使用するのに好ましいLVLDPEは、メタロセン触媒による重合体であるが、他の重合体で、満足すべき弾性モジュラス値、透明度、及び、保護層と支持体に接着性を与えるような密度、及び、分子量分布を兼ね備えている限り、どの低密度、中密度、または、高密度ポリエチレンでもLVLDPEと同様に使用できる。
【0035】
ここに使われる表現「メタロセン触媒による」は、米国特許No.5,191,052に開示されたシステムのような重合触媒システムを言う。メタロセン触媒重合化学の開発は、米国特許No.5,770,318に解説されており、メタロセン触媒によるポリオレフィンはさらに、米国特許5,792,560と5,817,386に記載されている。これらの特許全体の開示を、ここに引用によって組み入れる。
【0036】
メタロセンは、シクロペンタジエニル基(Cp)と金属原子化合物の錯塩的な結合物である。メタロセンは、二個のCp基と第IV族の遷移金属(Ti、Zr、Hf、Cr)との「サンドウイッチ型錯塩(sandwich complex)である。そのような触媒は、また、「単一サイト」、または、「拘束された構造・形状」の触媒と呼ばれる。メタロセンは、既知のエチレン重合体及び共重合体の重合において使用されたチーグラ−−ナッタ触媒と構造及び反応性において著しく異なる。
【0037】
メタロセンは、既知のエチレン系重合体の触媒と異なり、典型的には、狭い分子量分布、均一の鎖長、分子鎖に沿って均一なコモノマー分布、及び低いかさ密度をもたらす。メタロセン触媒による重合体は好ましいが、これは、メタロセン触媒が単一サイト触媒であって、重合体鎖に付加される各単量体単位の配向を制御するからである。これらの触媒によって作られたLVLDPEは、均一な組成分布があり、そのような材料中の重合体分子は全て、実質的に類似の組成を持っている。メタロセン触媒によって生成した共重合体の中には、分子のエチレン主鎖の中に長鎖分岐を含む。これに反して、既知の線状低密度ポリエチレンは、普通長鎖分岐を含まない。既知のエチレン系重合体は、組成分布が広く、結晶性のような物理的、機械的な性質において、実質的に同等のモル組成と平均分子量を持つメタロセン重合体とは、著しく異なっている。例えば、本発明のフィルムに有益なメタロセン触媒によるLVLDPEは、実質的に無定形(アモルファス)な熱可塑性の材料で、既知の線状低密度ポリエチレンより、結晶性がはるかに低い。
【0038】
メタロセン触媒システムを用いて重合した、本質的に線状のエチレン系重合体/共重合体を使うことは、望ましい。それは、このタイプの触媒で低密度及び非常に狭い分子量分布(MWD)を持つ熱可塑性の重合体が得られるからである。重合体のMWDは、一般に多分散度インデックス(PI)、すなわち、重量平均分子量、数平均分子量間の比率(Mw/Mn)で特徴付けられ、各々の値はゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ(GPC)で測定された分子量分布から計算して求める。メタロセン触媒によるポリエチレンのPI値は非常に小さい、すなわち、MWDは非常に狭い。メタロセンポリエチレンのPI値は、通常3.5より低いが、典型的に1.5〜2.5と言う狭い範囲のPIを持つ、実質的にLVLDPEである工業用グレードが入手できる。狭いMWDは、すなわち、非常に均一な長さの高分子鎖と、極端に狭く、均一なコモノマー及び分岐の分布と相俟って、低結晶性(10%未満)、高透明性,及び低い曇り値が達成できる。
【0039】
典型的に曇り値が約3%未満の、高い光学的品質のフィルムは、多分散度が好ましくは、約3.5未満、更に好ましくは、約2.5未満、最も好ましくは、約2.3未満、密度が好ましくは、約0.905g/cc未満、更に好ましくは約0.885g/cc未満で、結晶性が好ましくは、約20重量%未満、更に好ましくは、約15%未満、最も好ましくは、約10%未満のエチレン系樹脂を用いて生成される。
【0040】
本発明の開示に従って緩衝層を生産するのに使われるエチレン系共重合体樹脂は、エチレン単量体に比して量を制限したコモノマー含量を持つエチレン系共重合体から選択されるべきである。コモノマー含量が約10モル%より高くなると、樹脂の融点、軟化点が約50℃〜75℃に低下する。このようなものは、低融点及び/又は低軟化点の多層フィルムが極端な温度環境に露出されると、剥離したり、又/或いは歪むので望ましくない。好ましくは、該熱可塑性重合体は、90℃〜140℃の範囲の融点を持つべきである。
【0041】
ポリオレフィンは、その分子の非極性により、他の重合体や支持体によく接着しない傾向があるので、緩衝層は、特に本発明に基づく保護フィルムの二層式態様の保護フィルムでは、支持体によく接着するように、好ましくは結合剤を含ませるのがよい。
【0042】
保護層中に、更に相溶性を増し、ひいては、接着性を改善するのに、弗素ポリマーを緩衝層に混入したら有利なように思われるが、弗素ポリマーが存在しない方が、接着性が向上することが見出された。その上、弗素ポリマーは,通常、フィルムの−最高ではないとしても−高価な成分である。従って、弗素ポリマー無添加の緩衝層は、更に経済的なフィルムを与える。このように、優れた耐衝撃性を与えるるためには、緩衝層が、実質的に如何なる弗素ポリマーも含まないことが好ましい。「実質的に含まない」ということは、弗素ポリマーが痕跡量存在してもよいと言う事であるが、弗素ポリマーは、緩衝層中に、低モジュラス重合体の重量100部につき約1部より高い濃度で存在すべきではない。更に、保護層に使用するためには、上に詳細に特記したフッ素置換オレフィン重合体のみではなく、全てのタイプの弗素ポリマーが、緩衝層に含まれていてはならない。
【0043】
好ましい態様では、多層フィルムは、3つの層を含む。上記の如く、第1の層は、保護層である。緩衝層は、同じく、既述の如く第1の層に隣接している。第3の層は熱接着性層で、第1、つまり保護層とは反対側で緩衝層に隣接する。従って、緩衝層は、保護層と熱接着性層の間に挟まれる。高い可視光透過率を要する応用では、第3の層は、光学的に透明であるべきである。
【0044】
熱接着性層の第一の目的は、支持体が緩衝層によく接着するように促進することである。本発明の多層フィルムが支持体に強く接着することは、望ましい。フィルム−支持体間の接着を評価するのに、多くの既知の技術が有益である。ASTMD−3559による測定で、接着は、少なくとも約90%、好ましくは少なくとも約98%、そして最も好ましくは、100%であるべきである。
【0045】
熱接着性層は、更に「自己接着性」と特徴付けることができる。これは、その層を、熱、及び、圧力だけでビニル下見板のような支持体に接着し得ることを意味する。余分の接着剤の成分及びプライマーは、必要でない。
【0046】
保護層と同じように、熱接着性層は、フルオロオレフィン重合体とアクリル重合体の混合物を含むが、これらの成分の濃度は逆になる。すなわち、フルオロオレフィン重合体は、この第3層中、フルオロオレフィンとアクリル重合体全体100部に対して約5〜55重量部、好ましくは、20〜40重量部存在し、アクリル重合体は、残りの量、すなわち、45〜95重量部、好ましくは、60〜80重量部である。
【0047】
使用に際して、この3層フィルムは、好ましくは、熱接着性層が支持体に隣接し、保護層は周囲の大気に露出するように用いる。アクリル重合体の濃度が高いと、熱接着性層と多層フィルムを配置予定の多くの支持体との接着が強くなるよう促進する。高濃度のアクリル重合体が存在すると、また、第3番目の層はかなり脆いものとなる。しかしながら、隣接の緩衝層は、この脆化を防ぎ、優れた耐衝撃性を多層フィルムに付与する。熱接着層中のアクリル重合体は、必要なら、耐衝撃変性アクリル重合体自身であってもよいし、またそれを含有してもよい。
【0048】
多層フィルムの各々の層は、一種以上の効率的な紫外線吸収剤、及び/或いは安定剤薬品を含むことができる。層中の紫外線吸収剤は、下にある層を保護するよう、紫外線の波長光の透過を遮断し、紫外線光安定剤は、入射紫外線放射によって引き起こされる崩壊から該安定剤を含む層を保護する。単一種の紫外線保護剤は、その濃度が高いと、時間の経過と共に、薄膜表面に移行することがある。この現象は、業界で「ブリーディング「にじみ」」と呼ばれ、でこぼこの変色した表面を生成し、又、可視光を遮断する。更に少ない量で、種々の紫外線保護剤を用いれば、単一の薬剤を過剰に添加する必要性が無くなり、そのため、ブリーディングを減少させる事ができる。紫外線吸収剤及び安定剤は、約0.1から約10重量部での範囲の濃度に、好ましくは約0.25から約1.5重量部までの範囲で使われるべきである(ここで、吸収剤剤の重量部は、それぞれの層中全重合体の100重量当たりである。)高度の可視光透過が必要であれば、光学的透明度が過度に低下するほど多くの吸収剤を付加することを回避するよう注意が払われるべきである。
【0049】
産業界において既知の紫外線吸収剤が使用できる。次のものが好ましい。ポリ[[6−[(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ]−1,3,5−トリアジン−2,4ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)イミノ]−1,6−ヘキサンジイル[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)イミノ]]{poly[[6−[(1,1,3,3−tetramethylbutyl)amino]−1,3,5−triazine−2,4−diyl][(2,2,6,6−tetramethyl−4−piperidinyl)imino]−1,6−hexanediyl[(2,2,6,6−tetramethyl−4−piperidinyl)imino]]}、キマソーブ(Chimassorb)(登録商標)944オリゴメリックヒンダードアミン光安定剤(Oligomeric Hindered Amine Light Stabilizer);2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジターシャリペンチルフェノール{2−(2H−benzotriazo−2−yl)−4,6−ditertpentylphenol}、 チヌビン(Tinuvin)(登録商標)328ベンゾトリアゾール紫外線吸収剤(Benzotriazole UV Absorber);2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール{2−(2H−benzotriazol−2−yl)−4,6−bis(1−methyl−1−phenylethyl)phenol}、チヌビン(Tinuvin)(登録商標)234低蒸発性ベンゾトリアゾール紫外線吸収剤(Low volatile Benzotriazole UV Absorber);2,2’−メチレンビス(6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール){2,2’−methylenebis(6−(2H−benzotriazol−2−yl)−4−1,1,3,3−tetramethylbutyl)phenol}、チヌビン(Tiinuvin)(登録商標)360極低蒸発性ベンゾトリアゾール紫外線吸収剤(Very Low Volatile Benzotriazole UV Absorber);2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)− 5−(ヘキシル)オキシル−フェノール{2−(4,6−Diphenyl−1,3,5−triazin−2−yl)−5−(hexyl)oxyl−phenol}、チヌビン(Tinuvin)(登録商標)1577FF低蒸発性ヒドロキシフェニル−トリアジン紫外線吸収剤(Low Volatile Hydroxyphenyl−Triazine UV Absorber);2−[2−ヒドロキシ−3,5−ジ(1,1−ジメチルベンジル)フェニル]−wH−ベンゾトリアゾール[2−[2−Hydroxy−3,5−di(1,1−dimethylbenzyl)phenyl]−wH−benzotriazole]、チヌビン(Tinuvin)(登録商標)900;以上、すべてCiba Specialty Chemicals Corporation, Switzerland/Germanyから入手可能;2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン(2−hydroxy−4−methoxybenzophnone)、シアソーブ(Cyasorb)(登録商標)UV9光吸収剤(ight absorber);2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)−ベンゾトリアゾール{2−(2−Hydroxy−5−t−octylphenyl)−benzotriazole}、シアソ−ブ(Cyasorb)(登録商標)UV5411光安定剤(light stabilizer);2−ヒドロキシ−4−n−オクトキベンゾフェノン{2−Hydroxy−4−n−octoxybenzophenone}、シアソ−ブ(Cyasorb)(登録商標)UV−531光安定剤(light absorber);2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチルオキシ)フェノール{2−[4,6−Bis(2,4−dimethylphenyl)−1,3,5−triazin−2−yl]−5−(octyloxy)phenol}、シアソーブ(Cyasorb)(登録商標)UV−1164光吸収剤(light absorber);以上すべてCytec Industries,Inc.West Paterson,New Jerseyから入手可能;並びに重合性ベンゾトリアゾール{polymerizable benzotriazole}、ノルブロック(Norblock)(登録商標)吸収剤(absorber);Noramco Corporation(USA)から入手可能。
【0050】
他の添加物を添加し、多層フィルムに特別な性質を持たせることができる。かかる他の添加物は次のようなものを含む。
熱安定剤:オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート{octadecyl−3−(3,5−di−t−butyl−4−hydroxyphenyl)−propionate}、アーガノックス(Irganox)(登録商標)1076フェノール系抗酸化剤(Phenolic antioxidant)、Ciba Specialty Chemicals;トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート{Tris (3,5−di−t−butyl−4−hydroxybenzyl)−isocyanurate}、シアノックス(Cyanox)(登録商標)1741抗酸化剤(antioxidant);及び1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオンとトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトとの混合物{1,3,5−Tris(4−t−butyl−3−hydroxy−2,6−dimethylbenzyl)−1,3,5−triazine−2,4,6−(1H,3H,5H)−trione blend with Tris (2,4−di−t− butylphenyl) phosphite}、シアノックス(Cyanox)(登録商標)2777抗酸化剤(antioxidant)、Cytec Industries;核剤:3,4−ジメチルベンジリデンソルビトール{3,4−dimethylbenzylidene sorbitol}、ミラッド(Millad)(登録商標)3998、Milliken Chemicals,Inman,S.Carolina;艶消剤:総アクリル系(all acrylic)、パラロイドEXL(ParaloidEXL)(登録商標)5136及びパラロイド(Paraloid)KF−710艶消剤(Gloss Reducing Additives)、及びパラロイド(Paraloid)(登録商標)KM377PVC耐衝撃変性剤・艶消剤(impact modified and gloss reducer)、Rohm and Haas Company,Philadelphia,Penna.;制電剤:ステアラミドプロピルジメチル−2−ヒドロキシアンモニウムナイトレート(stearamidopropyldimethyl−2−hydroxyethylammonium nitrate)、シアスタット(Cyastat)(登録商標)SN及び(3−ラウラミドプロピル)トリメチルアンモニウムメチルサルフェート{(3−lauramidopropyl)trimethylammonium methyl sulfate}、シアスタット(Cyastat)(登録商標)LS、(Cytec Industries,Inc.);赤外線遮断剤(infrared light blocking agents)などである。但し、添加剤は添加すべき層の重合体と混和性があるものとする。例えば、高度の可視光透過性が望まれる場合、添加物の存在がそのような透過を著しく妨害するべきではない。好ましくは、添加物全体の量は、層中100重量部重合体につき約10重量部を越えるべきでない。
【0051】
支持体に適用される多層フィルム全体の厚さは、一般に約3から約100μm、好ましくは,約7から約50μm、更に好ましくは、約12.5μmから約25μmの範囲の中にある。個々の応用でのフィルムの厚さは、支持体の性質、保護の程度、及び、支持体上のフィルムの複合物の用途よって変わる。例えば、建物外装上のビニル下見板を保護する場合、下見板が妨害されずに真の色を呈示するのに、高度な透明度が通常望ましく、材料が安価であることは、通常非常に重要である。そのような場合、全薄膜厚さは、約30μm未満がよい。
【0052】
この発明に基づいた2層フィルムにおいて、保護層の厚さは、緩衝層より全厚さ当たり更に薄くなければならない。好ましくは、保護層は、全厚さの約5〜50%で,残部は、緩衝層になる。3‐層フィルムにおいて、保護層は、好ましくは全薄膜厚さの約5〜50%であるべきで、より好ましくは、20〜35%、そして、最も好ましくは、約25〜30%であり、緩衝層は、好ましくは、約20〜90%、更に好ましくは約30〜50%で,最も好ましくは、約33%を占め、熱接着性層は[全]厚さの残部を占めるべきである。保護層、及び、熱接着性層の各々は、十分な保護、及び、接着のために全厚さの最少約5%を占めるべきである。
【0053】
この発明は、代表的な態様で説明するが、特記しない限り、全ての部、割合、及び、パーセンテージは、重量に基づくものである。最初にSI単位で得なかった重量、及び、測定値の単位は、SI単位に変換した。下記の実施例で次の材料が使われた(表1)。
【0054】
【表1】

【実施例】
【0055】
実施例1〜3保護層の組成(実施例1)は次の成分から形成した(表2)。
【0056】
【表2】

【0057】
71℃で重合体ペレットを一夜乾燥後、粉末状の諸成分と共に数分間混転し、均一な混合物を得た。混合物は、5cmスクリュー直径Werner&Pfleiderer製かみ合い、同方向回転型、二軸押出機で、溶融−混合し、配合物を得た。溶解温度は、押出機バレルに沿って193〜227℃に、ダイ−プレートで221〜232℃までの範囲にあった。スクリュ−[回転]速度は、80〜100回転/分、及び、機内押出流量は、13.6〜27.2kg/時の範囲であった。押出物は、ペレット化し、水中で急冷し、ペレットは、薄膜サンプル作成に使用する前に、4時間より長時間、強制空気循環乾燥機中、60℃で乾燥した。
【0058】
エチレン/メタクリレート共重合体(「EMAC」)樹脂(シェブロンケミカルズ社、EMAC2260)ペレットは、緩衝層組成(実施例2)用に、実施例1と同様に乾燥機で乾燥した。
【0059】
熱接着性の層組成(実施例3)は、次の成分から実施例1と同様に生成した(表3)。
【0060】
【表3】

【0061】
これらの成分は、実施例1と同様に、乾燥,混転、溶融混合し、熱接着性の層組成を形成した。それらの組成は、厚さ0.102mmの単一層フィルムを形成するために、216℃〜227℃、27.6MPa(4000psi)で3分間CarverCorporation 製、研究室用熱プレスで、圧縮成型した。実施例1のフィルムは、艶消し仕上げフィルム試料生成のため、別々の実験で、キャプトン(Kapton)(登録商標)、ポリイミド、及び、テフロン(Teflon)(登録商標)ポリテトラフルオロエチレン・エンボスフィルムの離型シート中に圧縮プレスした。実施例2、及び、実施例3のフィルムは、2枚の15.24cm×15.24cmの磨かれたフェロ‐プレート間でプレスした。これらのフィルムは、光沢があった。表4に示すように、波長300nmにおける紫外線透過率を測定した。紫外線透過率が低かったのは、実施例1の組成にあった紫外線吸収剤が原因と思われる。
【0062】
【表4】

【0063】
実施例4次の組成を溶融・混合して保護層組成の単一層フィルムを生成した(表5)。
【0064】
【表5】

【0065】
これらの成分は、実施例1と同様に、乾燥し、溶融混合した。その溶融液は、45.7cmのニッケル鍍金されたコートハンガー・ダイ付きのL/D(長さ/直径)比率24:1、直径5cm、1軸スクリュー押出機Killionから、直径50.8cmのクロム表面の流延用ドラムに押し出され、厚さ0.025、及び、0.020mmのフィルムを得た。これらのフィルムの紫外線透過率を、実施例1〜3と同様に測定、各々、0.1、及び、2.1%であった。
【0066】
実施例5実施例4に記述のように、熱接着性層組成を次の成分から生成し、混合した(表6)。
【0067】
【表6】

【0068】
実施例4の手法に従い、この組成は、厚さ0.025、0.019、0.013、及び0.005mmのフィルムに成型した。これらのフィルムの紫外線透過率は、夫々、2.5、4.5、5.4、及び、14.5%であることが分かった。
【0069】
実施例6及び7次の成分から3組の組成を生成した(表7)。
【0070】
【表7】

【0071】
これら成分は、乾燥、混転して乾燥した混合物を生成し、実施例1と同様に夫々、別々に溶融・混合した。三種の組成物を、3層仕込みブロックを通して、35.6cm幅のコートハンガー・ダイに供給し、3台の24:1 L/D(長さ/直径)比率、1軸スクリュ−押出機付き、Killion多層フィルム同時押出し装置で処理し、3本―ロール積重ね装置のクロム鍍金流延用ドラム上にフィルムを形成した。
【0072】
組成Aをそれと略等しい厚さの組成B上に同時押出し、2層フィルム(実施例6)を生成した。同様に、上層組成A、中間層組成B、下層組成Cの3層フィルム(実施例7)を生成した。押出機のバレル温度は、組成間の溶融液粘性をほぼ同じに保つように、組成A及びCは、204〜243℃の範囲、組成Bは、171〜221℃の範囲にあった。供給ブロック、及び、ダイ温度は、232〜249℃の範囲にあり、押出機スクリュ−速度は、90rev./min.であり、該フィルムは、0.3〜0.5m/秒で移動した。上、中央、及び、下層の厚さは、各々全体の厚さの約35%、30%、及び、35%であった。2層及び3層フィルムは、各々全体の厚さが0.025、0.019、0.013mmになるよう生成した。これらのフィルムの紫外線透過率は、表8に示す。
【0073】
【表8】

【0074】
実施例8及び比較例9、10図1の略図で示した設備を使い、実施例7の厚さ0.013mmの3層フィルムを、青色非耐候性塩化ビニル(PVC)製建物下見板支持体(支持体1)に積層した。塩化ビニル(PVC)ペレットは、直径5cmの一軸スクリュ−押出機(図示せず)を用い、約180〜185℃のバレル温度、ダイ温度185℃で溶融押出した。40cm×1mmの塩化ビニル・シート用ダイ6を用いて、塩化ビニル(PVC)シート5を0.2m/sで、ダイに於けるシート温度は、190〜207℃の範囲で押し出した。3層フィルム2は、スプール1から引き出し、張力調整ロール3を通って、エンボシング・部門に供給した。そのフィルムは、エンボッシングドラム4aとバックアップロール4bの間で、エンボスされ、熱いPVCシート5に積層された。保護用のフィルム7に積層したPVCシートは、ロール群8の間で張力を受け、10で脱離され、既知の装置で、断面成型(profile shaping)、冷却、切断、包装された。
【0075】
試料(実施例8)の耐衝撃性、及び、接着性は、ASTMD3679の落下ダーツテスト、ASTMD3359の剥離テストによって、夫々測定した。結果は、表9に示す。接着テストは、10×10の等しい面積の四角辺を持つマトリックスを、フィルムを通して切り付け、このマトリックスに圧感接着テープを貼り,表面からテープを剥離し、テープに付着して除かれた4角片の数を最初の100から引いた残りを計算し、これを接着値とし
て報告した。
【0076】
比較のために、厚さ20μm(比較例9)及び30μm(比較例10)、組成が米国特許No.5,123,164に開示の2層フィルムをそのメーカー(Denka社、日本)から入手した。これらのフィルムの上層は70%PVDF/30%アクリル樹脂混合物で、下層は、上層とほぼ厚さが同一の30%PVDF%/70%アクリル樹脂混合物であった。2層フィルムは、実施例8で使用のものと同じ非耐候性PVC下見板組成(支持体1)片に積層した。接着、及び、耐衝撃性は、上と同様に測定した。試料の光透過率は肉眼検査で求めた。全ての試料は、合格である事が分かった。
【0077】
実施例8の透明度は、該新規のフィルムの厚さが薄いので、比較例9、10より夫々、少なくとも、約35%及び60%良いと予測される。同じく表9は、全ての組成物に、優れた薄膜の持つ接着性があったことを示す。重要なことは、PVC支持体上のこの新規な3層フィルムは、コートしていない支持体の持つ高い耐衝撃性を維持することができたのに、これら既知の2層フィルムでは、耐衝撃性が26.1、22.7%低下した。
【0078】
【表9】

【0079】
実施例11、及び、比較例12、13次の成分からなる複合物を生成した(表10)。
【0080】
【表10】

【0081】
これらの成分は、乾式混合(ドライブレンド)して混合物にし、実施例,6,7の手法に従って同時押出を行い、多層を形成した。実施例11の2層フィルムは、層組成D/Eから作成した。60番グリット研磨剤で粗面にしたゴムエンボスロールを、同時押し出し時に上層(D)に押し当てて、艶消しを行った。フィルムの全体の厚さは、15.24μmであった。それらの層は、フィルムの中でほぼ等しい厚さであった。該フィルムは、非耐候性PVC下見板支持体(支持体2)に積層された。比較のために、比較例9、10のように、2層フィルムを、PVC下見板支持体(支持体3)に積層した。これら試料は、耐衝撃性、接着性、及び、光沢について試験し、結果は表11に示す。
【0082】
表11のデータは、既知のフィルムが支持体材料の耐衝撃性を著しく減少させたが、これら新規な多層フィルムでは、そのような事はなかった。この新規な2層フィルムの接着は、成績基準を満たした。更に、新規なフィルムでは、既知のコーティングよりはるかに光沢が低下した。
【0083】
【表11】

【0084】
実施例14、15、及び、比較例16、17複合物は、次の成分から生成した(表12)。
【0085】
【表12】

【0086】
組成Gに接着した組成D(実施例11)の2層フィルム(実施例14)、及び、層D/G/Fの3層フィルム(実施例15)を、上と同様に生成した。D/G組成の2層フィルム、及び、D/G/F組成の3層フィルムを、別々に同時押出し、次いで、実施例11の手法によって顔料充填PVC支持体(支持体4、及び、5)に積層した。両フィルムは、厚さ約16.5μmであり、そして、それらの層は、全薄膜厚さをほぼ等分した割合を占めた。フィルムと未コート支持体(比較例16、17)を前述のように測定し、表13に示す、これらの実施例から本発明の2−,及び3層−フィルムを使用すれば優れた耐衝撃性が得られることが分かる。
【0087】
【表13】

【0088】
このフィルムは、支持体上の保護用外皮、もしくは、装飾用のフィルム上覆い(オーバーレイ)を生成するのに特に有益で、様々な熱可塑性物質支持体、ゴム、金属プレート、サイン、及び、日よけ等に優れた熱接着性を示し、化学薬品、汚染に対する優れた抵抗をもたらすのに効果的である。非常に重大な事は、この新規な多層フィルムは、優れた耐候性と共に優れた耐衝撃性を提供するので、ビニル下見板のような支持体を、厳しい天候、太陽の照射、及び、被保護物品にぶつかる埃、小石、雹、及び、他の異物との接触に長期間戸外でさらされることで引き起こされる老化、亀裂、退色から保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】図1は、この発明の多層フィルムを支持体シートに接着する際使用する積層装置の略図である。
【符号の説明】
【0090】
1…スプール
2…3層フィルム
3…張力調整ロール
4a…エンボッシングドラム
4b…バックアップロール
5…PVCシート
6…ダイ
7…保護用のフィルム
8…ロール群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素置換オレフィン重合体とアクリル重合体を含む混合物の保護層を含み、且つ、該保
護層は、弾性モジュラス約207MPa未満の、実質的に弗素ポリマーを含まない耐衝撃
性重合体を含む緩衝層に堅固に接合した多層フィルムであって、前記保護層とは反対側で
前記緩衝層に接合され、フッ素置換オレフィン重合体とアクリル重合体を含む混合物を含
む熱接着性層を更に含むことを特徴とする多層フィルムであって、熱接着性層が接着用プライマーを持たないことを特徴とする多層フィルム。
【請求項2】
装飾面を持つ支持体、フッ素置換オレフィン重合体とアクリル重合体を含む混合物の保護
層と、該保護層に堅固に接合され、弾性モジュラス約207MPa未満の、実質的に弗素
ポリマーを含まない耐衝撃性重合体を含む緩衝層、及び、緩衝層と該支持体間を接合し、
フッ素置換オレフィン重合体とアクリル重合体の混合物を含む熱接着性層を含む耐候、耐
汚染性複合構造物であって、熱接着性層が接着用プライマーを持たないことを特徴とする耐候、耐汚染性複合構造物。

【図1】
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【公開番号】特開2011−136569(P2011−136569A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22114(P2011−22114)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【分割の表示】特願2000−315193(P2000−315193)の分割
【原出願日】平成12年10月16日(2000.10.16)
【出願人】(500480182)セント・ゴバイン・パーフォーマンス・プラスティックス・コーポレーション (1)
【Fターム(参考)】