説明

耐酸化性に優れたセリウム基金属ガラス合金

【課題】Ce基金属ガラス合金は、広い過冷却液体領域(ΔTx)を有し、優れたガラス
形成能を有する。しかしながら、Ce元素は、非常に活性であり、また、空気中室温で著
しく酸化するので、耐酸化性を有する新規なCe基合金を開発することが望まれていた。
【解決手段】組成式(Ce1−aCu100−z−xAlZn(ただし、aは原
子比であり、0.25≦a≦0.30,8原子%≦z≦11原子%,3原子%≦x≦15
原子%)で示されることを特徴とするセリウム基金属ガラス合金。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大きなガラス形成能、広い過冷却液体領域、極めて低いガラス遷移温度を有
し、耐酸化性に優れた新規なセリウム基金属ガラス合金に関する。
【背景技術】
【0002】
1988年に、広い過冷却液体領域と大きなガラス形成能を有する多成分Ln基金属ガ
ラス合金及びMg基金属ガラス合金が見いだされ、バルク金属ガラス合金が初めて製造さ
れた。これらの発見は、ガラス遷移温度(Tg)と結晶化温度(Tx)との間の差(△Tx=
Tx−Tg)で定義される過冷却液体領域△Txの広い合金が非常に大きなガラス形成能
を持ち、より大きな寸法の非晶質合金、すなわちバルク金属ガラス合金製品を製造できる
ことを示した。
【0003】
近年、例えば、Zr基、Cu基、Fe基、Co基、Ni基等、多種類のバルク金属ガラ
ス合金が開発されている。Zr基、 Cu基、 Ni基、 及びTi基バルク金属ガラス合
金は、大きな破壊強度、大きな降伏強度のような良好な機械的諸性質を示し、精密部品や
微細構造体の材料としての好適な候補である。さらに、Fe基及びCo基バルク金属ガラ
ス合金は優れた軟磁性を有している。さらに、La基、Pr基、Dy基、Nd基のような
RE(RE=希土類)基バルク金属ガラス合金も開発された。
【0004】
また、Ce−Al−Ni−Cu系バルク金属ガラス合金が報告された (非特許文献1)
。最近、本発明者等により、ガラス遷移温度(Tg)が326Kという極めて低いガラス
遷移温度と約90K以上の広い過冷却液体領域(ΔTx)を有するCe基金属ガラス合金
が開発された(非特許文献2、3)。
【0005】
金属ガラス合金は、△Txの温度範囲で軟化現象と超塑性を示すので、Ce基金属ガラ
ス合金の低いTgと広い△Txの両者は、金属ガラス合金の応用の好機を提供する。Ce
基金属ガラス合金は、機能部品や構造部品としての種々のマイクロデバイス並びにナノデ
バイスを製作するのに用いられる高性能微小構造物やマイクロマシンを実現するのに非常
に有用である。さらに、Ce基金属ガラス合金の100℃未満の低いTgは、該合金は熱
水中に入れるだけで軟化するということであり、加工技術が容易になるので製品コストを
大幅に低下させる。
【0006】
【非特許文献1】B.Zhang APPLIED PHYSICS LETTERS issued on 2004, Vol.85, No.1 pp.61-63
【非特許文献2】Zhan Bian et al. Materials Transaction, Japan Institute of Metals (English version) issued on 2005, Vol.46,No.8 pp.1857-1860
【非特許文献3】Zhan Bian et al. Materials Transaction, Japan Institute of Metals (English version) issued on 2005, Vol.46,No.8 pp.2541-2544
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者等は、先に下記の組成式で表されるCe基金属ガラス合金の発明をなした(特
願2005−305078)。
(1)組成式(Ce1−aCu100−z−xAlFe(ただし、aは原子比で
あり、0.25≦a≦0.30、8原子%≦z≦11原子%、1原子%≦x≦15原子%
)で示されることを特徴とするセリウム基金属ガラス合金。
(2)組成式(Ce1−aCu100−z−yAlSi(ただし、aは原子比で
あり、0.25≦a≦0.30、8原子%≦z≦11原子%、2原子%≦y≦5原子%)
で示されることを特徴とするセリウム基金属ガラス合金。
【0008】
さらに、本発明者等は、上述のバルク金属ガラス合金は、大気中における水の沸点より
も低いという、非常に低いガラス遷移温度(<100℃)を持つという事実を発見した。
バルク金属ガラス合金は、ガラス遷移温度以上で軟化するので、このCe基バルク金属ガ
ラス合金は沸騰水に浸漬するだけでも軟化することを意味する。さらに、このCe基金属
ガラス合金は、広い過冷却液体領域(ΔTx)を有し、優れたガラス形成能を有する。こ
れらの特性は、バルク金属ガラスを加工する際の技術的な困難さを大きく減らし、構造部
品や機能部品として種々のマイクロデバイス並びにナノデバイスを製作するために用いる
マイクロマシンのような用途に、Ce基金属ガラス合金が利用される可能性を高める。
【0009】
しかしながら、Ce元素は、非常に活性であり、また、空気中室温で非常に容易に酸化
するので、Ce基金属ガラス合金は空気中では室温においてさえ安定ではない。空気中に
曝露後に、Ce基金属ガラス合金の表面は、CeとO元素の間の化学酸化により常に黄色
か黒色に変色する。故に、Ce基金属ガラス合金の応用は、大いに制約されている。
【0010】
したがって、Ce基金属ガラス合金の耐酸化性を高める有用な元素を探索することは重
要である。このような状況下で、高い耐酸化性を有する新規なCe基合金を開発すること
が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の問題を解決するために、本発明者らは、鋭意研究し、幾つかの元素の添加がセリ
ウム基合金の耐酸化性をかなり改善することを見出した。幾多の実験の結果、本発明者等
は、遂に、Ce基合金のガラス形成能の改善、過冷却液体領域の拡大、耐酸化性の増加を
もたらす一つの元素を見出した。結果として、本発明者らは、Zn元素の添加は、Ce基
金属ガラス合金の酸化挙動を著しく阻止し、Ce基金属ガラス合金の耐酸化性を大幅に改
善するという事実を見出した。
【0012】
すなわち、本発明は、組成式(Ce1−aCu100−z−xAlZn(ただ
し、aは原子比であり、0.25≦a≦0.30、8原子%≦z≦11原子%、3原子%
≦x≦15原子%)で示されることを特徴とするセリウム基金属ガラス合金、である。
【0013】
金属ガラス合金のガラス形成能は、銅鋳型鋳造により非晶質相100%の合金鋳造棒を
製造できる最大直径を意味する臨界直径と過冷却液体領域(ΔTx)の広さの両者で特徴
付けられるが、本発明のCe基金属ガラス合金は、臨界直径が3〜6mm、ΔTxが44
K以上、最大で73Kを示す。また、Tg/Tlの比で定義される換算ガラス化温度T
はガラス形成能を推定する重要なパラメーターであるが、本発明のCe基金属ガラス合
金のTrgは0.545以上である。さらに、ガラス遷移温度(Tg)は約470K未満
と低い。また、本発明のCe基金属ガラス合金は大気中20ヶ月程度放置しても表面光沢
を失われない優れた耐酸化性を有していた。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、大きいガラス形成能を有し、かつ優れた耐酸化性を有する新規なバルクCe
基金属ガラス合金を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明のCe基金属ガラス合金及びその製法の好ましい実施形態を以下に説明する。本
発明のセリウム基金属ガラス合金は下記の組成式で表される。
(Ce1−aCu100−z−xAlZn(ただし、aは原子比であり、0.
25≦a≦0.30、8原子%≦z≦11原子%、3原子%≦x≦15原子%)。
【0016】
本発明の合金の基本組成となるCe−Cu二元合金の共晶組成はCe72Cu28であり、
共晶組成を外れると金属ガラス形成能が低下するので、上記組成式におけるaの値は0.
25≦a≦0.30とする。より好ましくは、0.27≦a≦0.29とする。Ce72
28二元ガラス合金のTgTx△Txは、それぞれ、324K、344K及び20K
である。Alの添加はCe基金属ガラス合金のガラス形成能を改善する。Ce72Cu28
元ガラス合金にAl元素を添加すると、TgTx△Txの変化をもたらす。式(Ce
0.72Cu0.28100-zAlz において、Al=2.5at%の場合、TgTx△Tx
は、それぞれ、326K,359K,33K,Al=5at%の場合、それぞれ,330
K,373K,43K,Al=7.5at%の場合、それぞれ、333K,395K,6
2Kである。
【0017】
Al含有量をさらに増加すると、TgとTxは、それぞれ、Al=10at%の場合の
348Kと411Kから、Al=15at%の場合の378Kと439Kに増加する。し
かしながら、Al量が10at%よりも多くなるとTgとTxの両方はさらに高くなるが
、△Txは減少する。したがって、Al含有量は、65K以上の大きな△Tx低いTg
を得るためには8〜11at%が好ましい。
【0018】
式(Ce0.72Cu0.28100-zAlz の合金に3at%以上の少量のZnの添加は、△T
x及び ガラス形成能を大きく増加させる。Zn含有量を8at%程度まで増加させると
、パラメータ(Tg、 Tx、 △Tx、 及び臨界直径)も増加する。8at%を超えると
Tx、 △Txは減少し始める。耐酸化性はZn含有量の増加とともに大きくなり、特に
5at%以上で顕著に改善される。これらを考慮するとZnの含有量は、3〜15at%
、より好ましくは、5〜10at%である。
【0019】
直径3〜6mm のCe基バルク金属ガラス棒材試料を銅鋳型鋳造法により製造した。
図1に、異なる直径の棒材試料のXRDパターンを示す。メインの広いピークのみが回折
パターンに見られ、これらの試料が基本的にガラス相のみからなることを示していた。試
料のガラス遷移に伴う熱安定性、過冷却液体領域、結晶化温度は、示差走査カロリメトリ
ー(DSC)により測定した。試料の外表面も観察した。これらのバルク合金は、金属ガラ
ス合金に典型的な綺麗な光沢を有しており、大きな直径の棒状試料でさえ、バルク金属ガ
ラス構造の形成を示した。
【0020】
図2は、試料の加熱速度0.083Ks-1におけるDSC曲線を示している。Znの添
加は、△Txのかなりの増大をもたらす。図3は、Zn含有量の増加に伴うTg、 Tx
、 及び△Txの変化を示す。
【0021】
Ce基合金の融点及び液相線温度は高真空系で示差熱分析(DTA、Tm9000)によ
り測定した。図4に、試料の加熱速度0.083Ks-1におけるDTA曲線を示す。図4
(a)に示されるように、第一段階の融点(Tm)をこれらの合金の融点として定義する。液
相線温度(Tl)の定義も図4(a)に示す。
【0022】
γ値(γ=Tx/(Tg+Tl) )も評価したところ類似の傾向を有していた。図5に、本
発明のCe基合金のガラス形成能、 Tl、 Trg及びγのZn含有量依存性を示す。
【0023】
Zn添加による耐酸化性の強化は金属ガラス合金の表面によって直接確認することがで
きる。図6は、2004年10月に製造されたリボン状の(Ce0.72Cu0.28)90Al10とリ
ボン状及び棒状の(Ce0.72Cu0.28)82.5Al10Zn7.5ガラス合金試料の外観を示す。
試料は、空気中で注意深く保持された。図6(a)に示すように、(Ce0.72Cu0.28)90
Al10ガラス合金については、試料の表面は、黄色及び黒色に完全に変化し、金属の光沢
は観察されず、著しい酸化反応が生じたことを示す。
【0024】
しかしながら、図6(b)に示すように、(Ce0.72Cu0.28)82.5Al10Zn7.5ガラ
ス合金については、これらの試料も同じ雰囲気条件に長時間保持されたにもかかわらず、
試料の表面はなおガラス合金に典型的な輝いた金属光沢を有している。耐酸化性の改善は
、試料表面のCeとO元素の間の酸化反応の阻止に導く、より緻密な構造を有するZnO
膜の形成におそらく起因する。
【0025】
図7に、酸化した試料の表面のSEM画像を示す。図7(a)、(b)に見られるように、試
料の表面は形成された酸化物層でほとんど完全に被覆され、著しい酸化反応が合金表面で
生じることを示す。しかしながら、図7 (c)に見られるように、(Ce0.72Cu0.28)82.5
Al10Zn7.5ガラス合金については、ほとんど酸化物は観察されず、合金成分としての
Zn元素の添加は大気中での酸化物の形成を著しく阻止し、耐酸化性を改善することが分
かる。
【0026】
以下に、本発明のCe基金属ガラス合金の好ましい製造方法を説明する。まず、高純度
Ce(純度99.99 %)とCu (純度99.9 %)の混合物をTiゲッタ処理で純化したAr雰囲気
下でアーク溶解してCe72Cu28の組成のインゴットを製造する。
【0027】
通常、セリウム金属は金属表面の酸化を避けるために、常にオイルの中に浸漬されてい
る。それゆえに、セリウム金属をアーク溶解する前に、その表面に付着したオイルを除去
するためにアセトンで洗浄しなければならない。次に、セリウム金属の酸化表面も、機械
研磨により除去する。そして、セリウム金属は、アセトン中に入れて超音波装置によって
再度洗浄する。洗浄されたセリウム金属は、高純度のCu金属と直ちに混合し、そして、
Tiによるゲッター処理で純化したAr雰囲気下でCe−Cuインゴットをアーク溶解法
によって調製する。
【0028】
Ce-Cu二元合金は、機械研磨して酸化表面を除去し、洗浄することが望ましい。次
に、研磨したインゴットは小さく破砕してAl金属及びZn金属と一緒にセラミックスる
つぼに装填する。混合した金属は、高純度Ar雰囲気中でセラミックスるつぼ内で高周波
誘導によって溶解し、鋳造して合金インゴットを製造する。
【0029】
得られた合金インゴットも機械研磨して酸化表面を除去し、洗浄することが望ましい。
次いで、研磨したインゴットは小さく破砕し石英管に装填し高周波誘導加熱により再溶解
する。溶湯を銅鋳型鋳造法などの非晶質合金鋳造法を用いて所望の形状の材料を製造する
ことができる。
【実施例】
【0030】
実施例1〜8、比較例1〜15
本発明の実施例合金とその性質を下記に説明する。
(Ce0.72Cu0.28)100-xAl10Znx合金インゴットを二元Ce-Cu合金、Al(純度
99.9 %) 、及びZn (純度99.99 %)金属の混合物を高純度Ar雰囲気中でセラミックスる
つぼ内で高周波誘導加熱により溶解することにより製造した。合金インゴットを再溶解し
、直径6mmまでの棒状のCe基バルク金属ガラスを銅鋳型鋳造法により製造した。
【0031】
ガラス相はCuKα照射によりX線回折法(XRD)で測定した。ガラス遷移に伴う熱
安定性、過冷却液体領域、及び結晶化温度はSeiko DSC 6200(Exsta
r 6000、セイコーインスツルメント株式会社)により示差走査カロリメトリ(DS
C)で測定した。溶融温度及び液相温度は高真空システム中で加熱速度0.083Ks
で示差熱分析(DTA、Tm9000)で測定した。結果を表1に示す。なお、表1中
の「--」は測定していないことを意味する。
【0032】
【表1】

【0033】
最大の△Txと臨界直径(D)は、実施例6のガラス合金で見られた。すなわち、△T
xとDは、それぞれ73Kと6mmである。合金の△Tx及びガラス形成能は、Znが1
0at%より多い範囲では減少し始める(実施例7〜8)。 実施例1〜8の合金のTg、
Tm,Tlは、比較例5〜8のFeを含有する合金、比較例9〜12のSiを含有する合
金よりも、いずれも高くなる。
【0034】
さらに、直径2mmのバルク金属ガラス合金試料を3.0〜3.2mmの長さに切断し
、酸化挙動の測定に用いた。図8に、酸化挙動の測定法を図示する。Ce金属は非常に活
性であり、著しく酸化しやすいのでZnを含有しないCe基金属ガラスの空気中加熱状態
の酸化挙動を測定することは非常に困難である。空気中室温でも加熱するとCe−Cu−
Al金属ガラスは発火する。よって、Ce基金属ガラスの著しい酸化と発火を避けるため
にArガス雰囲気中で酸化挙動を測定した。測定装置としてはセイコーインスツルメント
株式会社の「示差熱重量同時測定装置」(TG/DIA9300)を用いた。
【0035】
図8に、酸化挙動の測定法の原理を図示する。加熱炉1内に設けた天秤2に参照ルツボ
3と試料を入れたルツボ4を設置し、純化したArガスを炉内に流し、Ar雰囲気中でバ
ルク金属ガラス試料を加熱速度0.083 Ks-1で炉中加熱した。バルク金属ガラス試料の重量
変化は、コンピュータでリアルタイムで測定し、耐酸化性を評価するのに用いた。加熱温
度の上昇に伴う重量変化が大きいほど耐酸化性が小さい。よって、Ce基バルク金属ガラ
スの耐酸化性は、温度の上昇に伴う試料重量の相対変化によって評価することができる。
試料が酸化によって溶融するのを避けるために、測定はCe基合金の融点よりも低い60
0Kで停止した。
【0036】
図9は、(Ce0.72Cu0.28)100-xAl10Znxの相対的試料重量の温度依存性を(Ce0
.72Cu0.28)90Al10と (Ce0.72Cu0.28)80Al10Fe10バルク金属ガラス合金の両
者のデータとともに示す。図10に、Zn含有量の関数としての重量の相対変化(ΔW/W0=
(W-W0)/W0、 W0 は測定前の試料重量、W は測定後の試料重量)も示す。結果は、耐酸化性
はZn含有量の増加とともに大きくなることを明白に示している。
【0037】
Ce基合金に対する他の元素を添加した場合の耐酸化性と比較するために、Fe、 S
i、 Co、 Ni 、及びPtを添加したCe基金属ガラスリボン試料を回転銅ロールを
用いた溶湯急冷凝固法で製造し、試料を上記と同じ酸化挙動測定法で測定した。実施例と
比較例の表面を検査し、結果を表1にまとめた。表1において、「O」は、リボン試料上
に酸化物反応があり、試料の表面が黄色又は黒色である(図6(a)に示される)ことを意味
し、「X」は、酸化反応がなく試料の表面がなお金属光沢を有し、輝いている(図7(b)
に示される)ことを意味する。
【0038】
実施例1〜8から、3at%を超えるZnを添加した試料は、なお良好な表面を有し、
典型的な金属光沢を見せる。亜鉛を2.5原子%添加した比較例1は、ΔTxは69Kと
大きいが、添加量が少ないため、試料の表面が酸化した。Fe、 Si、 Co、 Ni、
及びPtを含有する試料(比較例2〜15)については、表面は完全に黄色又は黒色に変
化し、酸化挙動が生じたことを示す。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の新規なCe基バルク金属ガラス合金は、広い過冷却液体領域、極めて低いガラ
ス遷移温度、及び優れた耐酸化性の故に、過冷却液体領域における粘性流動変形挙動の利
用により種々のマイクロ又はナノデバイスの製造のための進歩した構造用並びに機能材料
として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】Znを含有するCe基金属ガラス合金のXRDパターンである。
【図2】Znを含有するCe基金属ガラス合金のDSC曲線である。
【図3】Znを含有するCe基金属ガラス合金のZn含有量に伴うTg、Tx、及び△Txの変化を示すグラフである。
【図4】Znを含有するCe基金属ガラス合金のDTA曲線である。
【図5】Znを含有するCe基金属ガラス合金のZn含有量に伴うガラス形成能 (臨界直径D)、 Tl、 Trg、及び γの変化を示すグラフである。
【図6】2004年10月から空気中に曝露されたリボン状の(Ce0.72Cu0.28)90Al10合金 (a)及びリボン状及び棒状の両方の(Ce0.72Cu0.28)82.5Al10Zn7.5合金(b)の表面を示す図面代用光学写真である。
【図7】空気中に20月曝露した(Ce0.72Cu0.28)90Al10合金リボン(a)及び(b) 、(Ce0.72Cu0.28)82.5Al10Zn7.5合金リボン(c)の酸化した表面のSEM像を示す図面代用写真である。
【図8】試料表面の酸化挙動の測定のために使用される装置の模式図である。
【図9】実施例及び比較例合金の酸化挙動の測定のための加熱温度の上昇に伴う相対試料重量の変化を示すグラフである。
【図10】Znを含有するCe基金属ガラス合金のZn含有量に伴う相対試料重量の変化を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成式(Ce1−aCu100−z−xAlZn(ただし、aは原子比であり、
0.25≦a≦0.30,8原子%≦z≦11原子%,3原子%≦x≦15原子%)で示
されることを特徴とするセリウム基金属ガラス合金。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−95162(P2008−95162A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−280781(P2006−280781)
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)