説明

耐酸化性酸化ホウ素層を含む電極およびその製造方法

ここで開示されているのは、銅、ニッケル、鉄、コバルト、チタン、鉛、アルミニウム、スズおよびこれらの金属の1つを主成分として含む合金からなる群から選択される導電性構成成分を含む導電層と、酸化ホウ素を含む酸化保護層とを含む電極であって、前記酸化保護層が導電層の上面を被覆するかまたは導電層の上面および側面の両方を被覆するかまたは導電層が形成されている全ての場所を被覆する電極であって;導電層および酸化保護層を同時に空気焼成することによって形成される電極である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気デバイスの電極そしてより特定的には電極構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性ペーストを電極の原料として使用する方法は広く知られている。導電性ペーストは一般に導電性構成成分、ガラスフリット、有機結合剤、および溶剤を含む。細かいパターンの形成を可能にする感光性ペーストも同様に広く使用されており、感光性ペーストの組成には一般に、上述の構成成分に加えてモノマーと光開始剤が含まれている。
【0003】
非感光性ペーストは、スクリーン印刷または別の方法により既定のパターンでコーティングされ、導電性構成成分と結合剤を伴うガラスで構成される電極が、このペーストから乾燥と焼成によって形成される。感光性ペースト(ネガ型)は、コーティングの後マスクを通して露光される。露光部位においてモノマーの重合が進行し、その後、感光性ペーストを現像し焼成することによって、導電性構成成分と結合剤を伴うガラスで構成された電極が形成される。
【0004】
導電性構成成分としては一般に銀が使用される(例えば米国特許第5047313号明細書および米国特許公開第2005/0287472号明細書)。金、銀およびパラジウムなどの貴金属は空気中で焼成できることから、炉のための資本投資を低減させることができる。しかしながら、貴金属は高価であるため、貴金属を使用すると金属コストが急激に上昇することになる。
【0005】
半導体回路などの中の導電性構成成分としては、銅が広く使用される。銅は、銀よりも安価であるという利点を有する。しかしながら、銅は酸化しやすいため、空気中で焼成できず、こうして窒素雰囲気などの中での焼成が必要となるために資本投資は増加する。
【0006】
金属粉末と共にホウ素を使用する方法が、非感光性ペースト中の酸化しやすい金属の空気焼成を可能にする技術として開示された(米国特許第4122232号明細書)。米国特許第4,122,232号明細書の実施例においては、325メッシュより細かい銅粉末が使用されている。銅粉末の平均粒度は具体的に記述されていないが、325メッシュを用いて選別された銅粉末の平均粒度は、一般に40〜50μmである。焼成の結果として生産される酸化ホウ素(B23)は、高い抵抗値を有し、これが、形成された電極の抵抗を増大させる。したがって、銅粉末などの導電性構成成分を含むペーストの空気焼成により形成された電極の抵抗を低く保ち、かつ銀ほど高価でない技術が模索されてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、空気焼成により形成され、空気焼成プロセス中で酸化しやすいかもしれない導電性構成成分を含むものの低い抵抗を有する電極を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の特徴を有する電極は、導電性構成成分として銅粉末、他の酸化しやすい金属またはその合金を含む電極の上層としてホウ素粉末を含むペーストを構成することによって達成可能である。
【0009】
本発明は、銅、ニッケル、鉄、コバルト、チタン、鉛、アルミニウム、スズおよびこれらの金属の1つを主成分として含む合金からなる群から選択される導電性構成成分を含む導電層と;酸化ホウ素を含み、導電層の上面を被覆するかまたは導電層の上面および側面を被覆するかまたは導電性ペーストが上にコーティングされている任意のかつ全ての場所を被覆する酸化保護層と;を含む電極を開示する。さらにこの電極は、導電層および酸化保護層を同時に空気焼成することによって形成される。
【0010】
本発明は同様に、電極製造方法であって、
− 銅、ニッケル、鉄、コバルト、チタン、鉛、アルミニウム、スズおよびこれらの金属の1つを主成分として含む合金からなる群から選択される導電性構成成分を含む導電性ペーストを、既定のパターンで基板上にコーティングするステップと;
− 導電性ペーストを乾燥させるステップと;
− 乾燥した導電性ペーストの上面にホウ素粉末を含むホウ素ペーストをコーティングするステップと;
− ホウ素ペーストを乾燥させるステップと;
− 導電性ペーストと前記ホウ素ペーストを空気焼成するステップと、
を含む方法でもある。
【0011】
さらに本発明は、電極製造方法であって、
− 銅、ニッケル、鉄、コバルト、チタン、鉛、アルミニウム、スズおよびこれらの金属の1つを主成分として含む合金からなる群から選択される感光性導電性構成成分を含む導電性ペーストを基板上にコーティングするステップと;
− コーティングされた導電性ペーストを既定のパターンで露光するステップと;
− 露光した導電性ペーストを現像するステップと;
− 現像した導電性ペーストの上面にホウ素粉末を含むホウ素ペーストをコーティングするステップと;
− ホウ素ペーストを乾燥させるステップと;
− 導電性ペーストとホウ素ペーストを空気焼成するステップと、
を含む方法である。
【0012】
さらに本発明は、電極製造方法であって、銅、ニッケル、鉄、コバルト、チタン、鉛、アルミニウム、スズおよびこれらの金属の1つを主成分として含む合金からなる群から選択される導電性構成成分を含む導電性ペーストを基板上にコーティングするステップと;導電性ペーストを乾燥させるステップと;乾燥した導電性ペーストの上面にホウ素粉末を含む感光性ホウ素ペーストをコーティングするステップと;コーティングされた感光性ホウ素ペーストを既定のパターンで露光するステップと;導電性ペーストおよび露光したホウ素ペーストを現像するステップと;導電性ペーストとホウ素ペーストを空気焼成するステップと、を含む方法である。
【0013】
本発明は、安価な導電性構成成分を用いて空気焼成することにより低抵抗パターンの形成を可能にする。本発明は、電子デバイスのための電極を生産するコストの低減に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の電極の第1の実施形態の概略的断面図である。
【図2】本発明の電極の第2の実施形態の概略的断面図である。
【図3】本発明の電極の第3の実施形態の断面図である。
【図4】本発明の製造方法の第1の実施形態を説明する概略的断面図である。
【図5】ホウ素ペーストのコーティングパターンが修正されている実施形態を説明する概略的断面図である。
【図6】ホウ素ペーストのコーティングパターンが修正されている異なる実施形態を説明する概略的断面図である。
【図7】本発明の製造方法の第2の実施形態を説明する概略的断面図である。
【図8】本発明の製造方法の第3の実施形態を説明する概略的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の電極において、銅などの酸化しやすい導電性構成成分を含む導電性ペーストの少なくとも上面は、焼成に先立ちホウ素粉末を含むホウ素ペーストで被覆されている。その結果、たとえ空気中で焼成が行なわれても、銅の酸化はホウ素ペーストにより阻止され、低抵抗電極が形成される。
【0016】
形成された電極は、銅、ニッケルなどの導電性構成成分を含む導電層およびこの導電層の上面を被覆する酸化ホウ素を含む酸化保護層を含む積層品になる。本発明の電極について、以下で図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は、本発明の電極の第1の実施形態の概略的断面図である。導電性構成成分を含む導電層20が基板10の上面に形成される。酸化ホウ素を含む酸化保護層30が導電層20の上面に存在する。酸化保護層30を形成するペーストはホウ素を含み、焼成ステップの後、酸化保護層30は酸化ホウ素を含む。図1においては導電層20の上面のみが、酸化保護層で被覆されており、その側面は露出している。その結果、焼成中に導電層20の中に含まれる導電性構成成分の酸化がその側面で進行する。しかしながら、表面積の大部分を占める上面は酸化保護層30により保護されていることから、内部の導電性構成成分の酸化に起因する電極抵抗の増加は制御される。
【0018】
導電層の側面を介した導電性構成成分の酸化は、側面を酸化保護層で被覆することによって防ぐことができる。図2は、本発明の電極の第2の実施形態の概略的断面図である。図2中に例示された電極内に示されている通り、導電層の側面を介した導電性構成成分の酸化は、これらの側面も同様に被覆することによって阻止され、それにより電極の抵抗をより一層低下させることができる。
【0019】
酸化保護層で導電層の側面を被覆する複数の方法が、以下で詳述されるが、一例としてホウ素ペーストを導電層パターンの幅より広くコーティングする態様に言及することができる。ホウ素ペーストのパターンは、導電層20のパターンよりも幅広にコーティングされる。導電層20を超えて延在する部分は、重力のため基板10に向かって下垂する。その結果、導電層20の側面が酸化保護層30で被覆されている電極が形成される。説明を容易にするため、図2では、導電層20の上面に形成された酸化保護層30の厚みは、導電層20の側面に形成された酸化保護層30の厚みと同じものとして描かれているが、上述の要領で側面を保護する場合、酸化保護層は多くの場合上面よりも側面上の方が薄い。下垂するペーストの量が多い場合、側面上に形成された酸化保護層は、それが基板に近づくにつれて厚くなる。一方、下垂するペーストの量が少ない場合、酸化保護層は基板に近づくにつれて薄くなる。側面を介した導電性構成成分の酸化は、両方の状況下で阻止され得る。
【0020】
図3に示されている態様は、酸化保護層で導電層の側面を被覆する1つの異なる方法として言及できるものである。図3は、本発明の電極の第3の実施形態の概略的断面図である。図3では、酸化保護層30が、基板10上に形成された導電層20全体を被覆するように形成されている。換言すると、導電層20のパターンと整合する酸化保護層を形成するのではなく、むしろ基板のサイズに整合するサイズを有する酸化保護層が形成される。この要領で酸化保護層をコーティングする場合、導電層の導電性構成成分の酸化が充分に阻止され、導電層のパターンとの整列は必要でないため、酸化保護層は容易に形成される。しかしながら、この酸化保護層のために使用されるホウ素ペースト原料の量は図2の場合比較的多い。
【0021】
次に、本発明の電極の製造方法について説明する。製造方法の第1の実施形態は、導電性ペーストもホウ素ペーストも感光性でない場合である。製造方法の第2の実施形態は、導電性ペーストが感光性でありホウ素ペーストが感光性でない場合である。製造方法の第3の実施形態は、ホウ素ペーストが感光性である場合である。第3の実施形態では、導電性ペーストは感光性かまたは非感光性のいずれでもあり得る。
【0022】
最初に、導電性ペーストの導電性構成成分、ホウ素ペーストのホウ素粉末、溶剤、有機ポリマー結合剤、光重合モノマーおよび光重合開始剤について記述し、その後各々の製造方法について詳述する。
【0023】
(I)導電性構成成分
導電性構成成分としては、銅、ニッケル、鉄、コバルト、チタン、鉛、アルミニウム、スズおよびこれらの金属の1つを主成分として含む合金に言及することができる。本明細書中、「主成分」とは、40重量%以上を構成する構成成分を意味し、合金中で最高の含有比率を有する構成成分である。その2つ以上のタイプを組合せて使用することができる。
【0024】
このような合金の具体例としては、Sn−Cu−Ag合金などのスズを主成分とするもの、Cu−Sn−Ni−P合金などの銅を主成分とするもの、Al−Si合金などのアルミニウムを主成分とするもの、そしてPb−Snなどの鉛を主成分とするものが含まれる。
【0025】
導電性構成成分は、導電性を提供するために添加される。その平均直径は、好ましくは30μm未満、より好ましくは20μm未満、さらに一層好ましくは10μm未満であるが、これに限定されない。直径の下限には特に制限がない。ただし、材料コストの観点から見ると、平均直径が0.1μm超の導電性構成成分が好ましい。
【0026】
平均直径は、レーザー回折散乱法を用いて粒径分布を測定することによって得られ、D50として定義可能である。Microtrac X−100型が、そのための市販のデバイスの一例である。
【0027】
細かい粒度を有する導電性構成成分を使用することで、低抵抗の電極を形成することができる。空気焼成を実施した場合に酸化が進行しその結果電極の抵抗は増加することから、細かい導電性構成成分も使用する場合には問題があった。本発明においては、細かい導電性構成成分を使用することによって電極抵抗は減少する。
【0028】
導電性構成成分の形態は特に限定されない。それは球形または薄片状であり得る。ただし、感光性ペーストにおいては、球形が好適である。
【0029】
上述の導電性構成成分以外の金属を感光性ペースト中に含み入れることは可能であるが、原料費の削減の観点から見ると、銀、金またはパラジウムなどの貴金属の量は少ない方が好ましい。具体的には、貴金属の総量は好ましくは30%未満、より好ましくは15wt%未満、なお一層好ましくは5wt%未満、さらに一層好ましくは1wt%未満であり、最も好ましくは、ペースト中に貴金属は実質的に含まれない。本明細書中、「実質的に含まれない」という用語は、貴金属が不純物として偶発的に含まれる場合を包含する概念である。
【0030】
(II)ホウ素粉末
焼成中、導電性構成成分の酸素を防ぐためにホウ素粉末が使用される。導電性構成成分の酸化の結果としての電極抵抗の増大は、ペーストにホウ素粉末を添加することによって阻止可能である。
【0031】
平均粒径は、好ましくは3μm未満、より好ましくは2μmである。平均直径は、レーザー回折散乱方法を用いて粒径分布を測定することによって得られ、D50として定義づけ可能である。Microtrac X−100型が、そのための市販のデバイスの一例である。直径の下限に特に制限はない。ただし、材料費の観点から見ると、平均直径が0.1μm超のホウ素粉末が好適である。
【0032】
小さい粒度のホウ素粉末の使用は、薄い電極を形成する場合有効である。1〜4μmのフィルム厚の薄い電極が形成される場合、大きい粒度のホウ素粉末の使用は、現像時点でのフィルム品質の外観劣化をひき起こす。電極の外観は、以上で規定した小さい粒度のホウ素粉末を使用することによって高水準に保つことができる。
【0033】
(III)ガラスフリット
ガラスフリットは、基板例えばPDPのリアパネル用に使用されるガラス基板を伴う構成の封止特性を増大させることができる。
【0034】
ガラスフリットのタイプとしては、ビスマス系ガラスフリット、ホウ酸系ガラスフリット、リン系ガラスフリット、Zn−B系ガラスフリットおよび鉛系ガラスフリットが含まれる。環境に課せられる負荷を考慮すると、無鉛ガラスフリットの使用が好ましい。ガラスフリットは当該技術分野において周知の方法により調製可能である。例えば、酸化物、水酸化物、炭酸塩などの原料を混合し溶融させ、それから焼入れによりカレットを形成し、次に機械的粉砕(湿式または乾式製粉)を実施することによって、ガラス構成成分を調製することができる。その後、必要であれば、所望の粒度での選別が実施される。
【0035】
ガラスフリットの軟化点は、通常325〜700℃、好ましくは350〜650℃、そしてより好ましくは550〜600℃である。325℃未満の温度で溶融が発生する場合、有機物質は包み込まれた状態となる傾向をもち、有機物質のその後の分解が、ペースト中に気泡を発生させる原因となる。一方、700℃超の軟化点は、ペーストの接着力を弱め、ガラス基板に損傷を加えるかもしれない。ガラスフリットの比表面積は、好ましくは10m2/g以下である。平均直径は一般に0.1〜10μmである。好ましくは、ガラスフリットの少なくとも90wt%が0.4〜10μmの粒径を有する。
【0036】
次に、感光性ペーストの有機構成成分について記述する。光重合開始剤、モノマーおよび有機ビヒクルが、典型的な有機構成成分である。通常、有機ビヒクルは有機ポリマー結合剤および溶剤を含む。
【0037】
(IV)光重合開始剤
光重合タイプのモノマーを光重合するために光重合開始剤が使用される。光重合開始剤は好ましくは185℃以下で不活性であるが、紫外線に曝露された場合にフリーラジカルを生成する。光重合開始剤の例としては、共役炭素環系内に2つの分子内環を有する化合物が含まれる。このタイプの化合物には、置換または非置換多核キノンが含まれる。
【0038】
実際には、キノンの例としては、エチル4−ジメチルアミノベンゾエート、ジエチルチオキサントン、9,10−アントラキノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナントレンキノエン、ベンゾ[a]アントラセン−7,12ジオン、2,3−ナフタセン−5,12−ジオン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、1,4−ジメチルアントラキノン、2,3−ジメチルアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、レテネキノン、7,8,9,10−テトラヒドロナフタセン−5,12−ジオンおよび1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[a]アントラセン−7,12−ジオンが含まれる。使用してよい他の化合物としては、米国特許第2,760,863号明細書、第2,850,445号明細書、第2,875,047号明細書、第3,074,974号明細書、第3,097,097号明細書、第3,145,104号明細書、第3,427,161号明細書、第3,479,185号明細書、第3,549,367号明細書および第4,162,162号明細書中に記されたものが含まれる。
【0039】
(V)光重合モノマー
光重合開始モノマーは、本明細書中特に限定されない。例としては、少なくとも1つの重合可能なエチレン基を有するエチレン不飽和化合物が含まれる。好ましくは、感光性ペーストは、3つ以上の連結基を伴う少なくとも1つの多点架橋モノマーを含む。
【0040】
好ましいモノマーの例としては(メタ)アクリル酸t−ブチル、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、デカメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2−ジメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート、米国特許第3,380,381号明細書中に開示されている化合物、2,2−ジ(p−ヒドロキシフェニル)−プロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリチリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリオキシエチル−1,2−ジ−(p−ヒドロキシエチル)プロパンジメタクリレート、ビスフェノール−Aジ−[3−(メタ)アクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル]エーテル、ビスフェノール−Aジ−[2−(メタ)アクリルオキシエチル]エーテル、1,4−ブタンジオールジ−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリオキシプロピルトリメチロールプロパントリアクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2,4−ブタンジオールトリ(メタ)アクリレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1−フェニルエチレン−1,2−ジメタクリレート、フマル酸ジアリル、スチレン、1,4−ベンゼンジオールジメタクリレート、1,4−ジイソプロペニルベンゼンおよび1,3,5−トリイソプロペニルベンゼンが含まれる。ここで、(メタ)アクリレートは、アクリレートとメタクリレートの両方を表わす。
【0041】
(VI)有機ポリマー結合剤
有機結合剤は導電性粉末、ホウ素粉末およびガラスフリットなどの成分が組成物中に分散できるようにするために用いられる。公知の方法を用いてスクリーン印刷または関連する技術により基板上に導電性ペーストがコーティングされる場合に、コーティングフィルムのコーティング特性および安定化を改善するために、有機ポリマー結合剤を使用する。有機ポリマー結合剤は、感光性ペーストを焼結することによって電極を形成する時に除去される。
【0042】
有機結合剤は、本明細書において、それが所望の溶剤中に溶解し好ましい粘性を提供することを条件として、特に限定されない。例としては、セルロース誘導体、例えばエチルセルロース;アセチルセルロース;ポリアクリル酸エステル;ポリメタクリル酸エステル;ポリスチレン;ビニルポリマー、例えば酢酸ポリビニル、ポリビニルブチラールなど;ポリウレタン;ポリエステル;ポリエーテル;ポリカーボネート;およびそのコポリマーが含まれる。
【0043】
水またはアルカリ溶液などの現像主薬を用いてラインが形成される場合には、現像剤の中で膨張し溶解するものを結合剤ポリマーとして選択することが好ましい。例えば水およびアルカリ溶液が現像プロセスのために使用される場合、ヒドロキシプロピルセルロースおよび側鎖上にカルボキシル基を有する結合剤ポリマー例えばメチルメタクリレートとメタクリル酸のコポリマーを使用することができる。
【0044】
コーティングされ乾燥させられた感光性ペーストが水性現像液で現像され、そのパターンが形成される場合には、水性現像液の現像能力を考慮して高い分解能を有する有機ポリマー結合剤を使用することが好ましい。この条件を満たすことのできる有機ポリマー結合剤の例としては、非酸性コモノマーまたは酸性コモノマーを含むものがある。コポリマーまたはインターポリマー(混合ポリマー)も好ましい。有機ポリマー結合剤の他の例は、米国特許公開第2007/0001607号明細書中に示されているアクリルポリマー結合剤または他のポリマー結合剤である。
【0045】
(VI)溶剤
有機溶剤を使用する主目的は、組成物中に含まれる固体の分散を基板に容易に塗布できるようにすることにある。したがって、まず第1に、全ての有機溶剤は好ましくは、適切な安定性を維持しながら固体を分散させることのできるものである。第2に、有機溶剤のレオロジー特性は、好ましくは分散に対し有利な塗布特性を付与する。
【0046】
有機溶剤は、単一の構成成分または有機溶剤の混合物であってよい。選択される有機溶剤は、ポリマーおよび他の有機構成成分がその中に完全に溶解できるものであることが好ましい。選択される有機溶剤は、好ましくは、組成物中の他の成分に対し不活性なものである。有機溶剤は好ましくは、充分に高い揮発性を有し、好ましくは空気中において比較的低い温度で塗布された場合でさえ分散から蒸発することができる。好ましくは、溶剤は、スクリーン上のペーストが印刷プロセス中に通常の温度で過度に急速に乾燥するほどの高い揮発性を有していない。通常の圧力における有機溶剤の沸点は、好ましくは300℃以下そしてより好ましくは250℃以下である。
【0047】
有機溶剤の具体例としては、脂肪族アルコールおよびこれらのアルコールのエステル例えば酢酸エステルまたはプロピオン酸エステル;テルペン類、例えばツルペンチン、α−またβ−テルピネオール、またはそれらの混合物;エチレングリコールまたはエチレングリコールのエステル、例えばエチレングリコールモノブチルエーテルまたは酢酸ブチルセロソルブ;ブチルカルビトールまたはカルビトールのエステル、例えば酢酸ブチルカルビトールおよび酢酸カルビトール;およびテキサノール(2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート)が含まれる。
【0048】
(VII)追加の要素
当業者にとっては公知の追加の要素、例えば分散剤(dispersing agent)、安定剤例えばTAOBN(1,4,4−トリメチル−2,3−ジアザビシクロ[3.2.2]−ノン−2−エン−N,N−ジキソイド)およびマロン酸、可塑化剤、離型剤、剥離剤、分散剤(dispersant)、消泡剤例えばシリコーン油、および湿潤剤が、感光性ペースト中に存在し得る。従来の技術に基づいて適切な要素を選択してよい。
【0049】
感光性ペーストを調合するために、有機要素および必要である場合には溶剤を使用して各要素のビヒクルが調合され、これは次に導電性粉末およびガラスフリットと混合される。その後、得られた混合物は、サンドミキサー、例えばロールミキサー、ミキサー、均一ミキサー、ボールミルおよびビーズミルを使用することにより混練され、こうして感光性ペーストが得られる。
【0050】
各構成成分の含有量は、それがペーストに感光性を付与するか否かおよびそれがペーストに導電性を付与するか否かに応じて調整される。表1は、ペーストのタイプに応じた各構成成分の一般的含有量の要約を示す。各々の数値は、ペーストの総量との関係における重量比(wt%)として表現されている。「X−X>Y−Y」という記号表示は、「Y−Y」というより狭い範囲が、「X−X」というより広い範囲よりも好ましいことを意味している。
【0051】
表中、ホウ素は、導電性ペーストの必須構成成分ではなく、導電性粉末は、ホウ素ペーストの必須構成成分ではない。ただし、フィルムの光沢を改善するためおよび写真速度、ペーストの粘度および印刷適性を調整するために、抵抗特性が不利な影響を受けることがないような範囲でそれらをペースト中に適量混合することができる。
【0052】
さらに、開始剤およびモノマーは、通常非感光性ペーストにとっては不要であるが、フィルムに可撓性を付与するため、全画像露光(full−image exposure)、表面の硬化およびコーティング後の取扱いを容易にするため、コーティング後に別の層にモノマーおよび可塑化剤を分散させるためといった目的で、適量を添加することができる。
【0053】
【表1】

【0054】
導電性ペーストとホウ素ペーストの両方が感光性ではない製造方法の第1の実施形態についてここで記述する。
【0055】
図4は、本発明の製造方法の第1の実施形態を説明する概略的断面図である。第1に、導電性構成成分を含む導電性ペーストは、既定のパターンで基板10にコーティングされる。基板は、製造すべき電気デバイスに応じて選択される。例えば、PDPのリアパネルの場合にはガラス基板が使用される。本明細書では、意図された用途にしたがって設計されていることを条件として、電極パターンは特に限定されない。
【0056】
導電性ペーストのコーティング手段は、本明細書において特に限定されない。スクリーン印刷などの先行技術において広く使用された方法を、導電性ペーストコーティング手段として使用することができ、インクジェット印刷などの高度に発達した手段も同様に使用可能である。
【0057】
コーティングされた導電性ペーストは乾燥させられて導電層10を形成し、これはその後焼結される(図4(A))。導電性ペーストの層を乾燥させる場合、乾燥条件は特に限定されない。例えば、100℃で18〜20分間それを乾燥させてよい。同様に、導電性ペーストを、コンベヤタイプの赤外線乾燥機を用いて乾燥させることができる。状況に応じて、導電性ペーストを、特定の乾燥設備無く空気乾燥によって乾燥させることが可能である。
【0058】
ホウ素粉末を含むホウ素ペーストは、導電性ペーストの上面にコーティングされる。導電性ペーストの場合と全く同様に、ホウ素ペーストをコーティングする手段として、スクリーン印刷などの先行技術で広く使用された方法を使用することができ、インクジェット印刷などの高度に発達した手段も使用可能である。
【0059】
コーティングされたホウ素ペーストは乾燥させられて導電層20を形成し、これはその後焼結される(図4(B))。導電性ペーストの層を乾燥させる場合、乾燥条件は特に限定されない。例えば、100℃で18〜20分間それを乾燥させてよい。同様に、導電性ペーストを、コンベヤタイプの赤外線乾燥機を用いて乾燥させることができる。状況に応じて、ホウ素ペーストを、特定の乾燥設備無く空気乾燥によって乾燥させることが可能である。
【0060】
次に、導電性ペーストおよびホウ素ペーストは焼結される。既定の温度プロフィールを有する焼結炉の中で組成物を焼結することができる。焼結プロセス中の最高温度は好ましくは400〜600℃、またはより好ましくは500〜600℃である。焼結時間は好ましくは1〜3時間、またはより好ましくは1.5時間である。
【0061】
本発明において焼成は、空気雰囲気中で実施される。以上で指摘した通り、低抵抗パターンは、銅を含む導電層の表面上にホウ素を含む層を形成することにより空気焼成の場合でさえ形成可能である。本出願では、「空気中での焼成」または「空気焼成」は本質的に焼成炉内の雰囲気を交換しない焼成を意味し、より具体的には、それは焼成炉内の雰囲気を交換しない焼成と炉内の雰囲気の5vol%以下を交換した焼成の両方を含む。
【0062】
製造方法の第1の実施形態においては、ホウ素ペーストコーティングパターンを、図5および図6内に示されている通りに修正することができる。
【0063】
図5は、ホウ素ペーストコーティングパターンが修正されている実施形態を説明する概略的断面図である。最初に、導電性構成成分を含む導電性ペーストは既定のパターンで基板10上にコーティングされる。コーティングされた導電性ペーストは乾燥させられて、導電層10を形成し、これはその後焼成される(図5(A))。
【0064】
ホウ素粉末を含むホウ素ペーストは、導電性ペーストの上部にコーティングされる。この時点で、図5(B)に示されているように、ホウ素ペーストは導電層パターンの幅よりも広いパターンでコーティングされる。例えば、導電性ペーストのパターンの幅が100μmである場合、ホウ素ペーストは幅120μmでコーティングされる。その結果、導電性ペーストを超えて延在するホウ素ペーストは、乾燥した導電性ペースト(導電層)20上に下垂し、導電性ペーストの側面はホウ素ペーストのその部分で被覆される(図5(C))。
【0065】
コーティングされたホウ素ペーストは乾燥させられて層20を形成し、これは後に焼結され(図5(C))、導電性ペーストおよびホウ素ペーストは同時に焼結される。
【0066】
導電層の側面は、図5で示されている通りホウ素ペーストをコーティングすることによりホウ素ペーストで被覆され得る。したがって、焼成中の導電層の酸化はさらに一層阻止される。
【0067】
図6は、ホウ素ペーストコーティングパターンが修正されている異なる実施形態を説明する概略的断面図である。最初に、導電性構成成分を含む導電性ペーストは既定のパターンで基板10上にコーティングされる。コーティングされた導電性ペーストは乾燥させられて、導電層10を形成し、これはその後焼成される(図6(A))。
【0068】
ホウ素粉末を含むホウ素ペーストは、導電性ペーストの上部にコーティングされる。この時点で、図6(B)に示されているように、ホウ素ペーストは導電性ペーストがコーティングされた全ての場所を被覆するようにコーティングされる。基板10上に導電層20が形成される場合、通常、パターンは基板の縁部にまで延在せず、一定量の余白が存在する。したがって、ホウ素ペーストコーティングパターンの縁部が空白部域に達するようにホウ素ペーストをコーティングすることにより導電性ペーストがコーティングされた全ての場所を被覆する形でホウ素ペーストをコーティングすることが可能である。
【0069】
コーティングされたホウ素ペーストは乾燥させられて層20を形成し、これは後に焼結され、導電性ペーストおよびホウ素ペーストは同時に焼結される。
【0070】
ホウ素ペーストのコーティングパターンは、基板の形状にしたがって決定され得る。例えば、基板が110cm×63cmである場合、ペーストを基板のサイズよりわずかに小さい矩形パターンでコーティングすることができる。基板の一部分だけに導電層が形成される場合、ホウ素ペーストを、導電層が形成された場所に対応するスポットにコーティングすることができる。その上、一部位が端子として機能する予定である場合には、外側との連続性を提供するためにホウ素ペーストが上にコーティングされないような形でコーティングパターンを設計することができる。
【0071】
図6に示されているようにホウ素ペーストをコーティングすることによって得られる第1の利点は、導電層内の導電性構成成分の酸化がさらに一層阻止されるという点にある。第2の利点は、基板が同じサイズである場合、導電層のパターンの如何に関わらず同じコーティングパターンを使用できるという点にある。例えばペーストがスクリーン印刷によってコーティングされる場合、コーティングパターンに整合する形状を準備することが必要である。しかしながら、図6に示されているように、ホウ素ペーストがコーティングされる場合、導電層のパターンが変更された場合でもホウ素ペーストをコーティングするために形状を変更する必要は全くない。
【0072】
導電性ペーストが感光性であるもののホウ素ペーストは非感光性である製造方法の第2の実施形態について次に記述する。
【0073】
図7は、本発明の製造方法の第2の実施形態を説明する概略的断面図である。図7は、スクリーン印刷を使用することによりパターンを形成する態様を例示しているが、ペーストのコーティング手段はこれに限定されない。その上、パターンを形成する方法は必要に応じて修正することが可能である。
【0074】
最初に、基板上に感光性導電性ペーストをコーティングする。感光性導電性ペースト(104)がスクリーン印刷およびディスペンサーを使用するコーティング方法(106)によって基板(102)上の全面にコーティングされる(図7(A))。
【0075】
次にコーティングされた感光性ペーストを乾燥させる。感光性ペーストの層を乾燥させる場合、乾燥条件は、特に限定されない。例えば、100℃で18〜20分間乾燥させられてよい。同様に、コンベヤタイプの赤外線乾燥機を用いて、感光性ペーストを乾燥させることもできる。
【0076】
次に、乾燥した感光性ペーストをパターン化する。パターン化処理において、乾燥した感光性ペーストは露光され現像される。露光プロセスにおいては、電極パターンを有するフォトマスク(108)が乾燥した感光性ペースト(104)上に設置され、この上に紫外線(110)を照射する(図7(B))。
【0077】
露光条件は、感光性ペーストのタイプおよび感光性ペーストのフィルム厚に応じて異なる。例えば、200〜400μmのギャップが用いられる露光プロセスにおいては、100mJ/cm2〜2000mJ/cm2の紫外線を使用することが好ましい。照射時間は、好ましくは5〜200秒である。
【0078】
現像は、アルカリ溶液を用いて実施することができる。アルカリ溶液としては、0.4%の炭酸ナトリウム溶液を使用してよい。現像は、基板(102)上の露光済み感光性ペースト層(104)にアルカリ溶液(112)を噴霧することによって(図7(C))、あるいは露光済み感光性ペースト(104)を有する基板(102)をアルカリ溶液中に浸漬することによって行なうことができる。以上で開示されているようなプロセスにより、基板102上に導電層104が形成される。
【0079】
次に、ホウ素ペーストを導電層104上にコーティングする。ホウ素ペーストのコーティング方法およびコーティングパターンは、本発明の製造方法の第1の実施形態において記述されているものである。換言すると、ホウ素ペーストが導電性ペーストのコーティングパターンと同じパターンでコーティングされる実施形態(図4参照)、ホウ素ペーストが導電性ペーストのコーティングパターンよりも幅広のパターンでコーティングされ、コーティングされたホウ素ペーストの一部が導電性ペーストの側面を被覆している実施形態(図5参照)そして、導電性ペーストが上にコーティングされた全ての場所を被覆するようにホウ素ペーストがコーティングされている実施形態(図6参照)の全ての態様を使用することができる。本発明の製造方法の第1の実施形態と全く同様に、さまざまな修正が可能である。
【0080】
ホウ素ペーストが感光性である本発明の製造方法の第3の実施形態についてここで記述する。第3の実施形態において、導電性ペーストは感光性または非感光性のいずれでもあり得る。
【0081】
ホウ素ペーストと導電性ペーストの両方が感光性である場合、PDP向けの2重層母線電極の製造方法において使用されたものに基づくプロセスを使用することができる。例えば、米国特許公開第2009/0033220号明細書中で記述されている方法が、参考として役立ち得る。
【0082】
図8を参照しながら要点を簡単に記述する。図8は、本発明の製造方法の第3の実施形態を説明する概略的断面図である。導電性構成成分を含む感光性導電性ペーストが、基板10上にコーティングされる(図8(A))。その後、上述のコーティングされた導電性ペーストは乾燥させられる。ホウ素粉末を含む感光性ホウ素ペーストが、乾燥した導電性ペーストの上にコーティングされる(図8(B))。次に、感光性ホウ素ペーストは、既定のパターンで露光される。露光中、例えば図7(B)に示されているマスクを使用する。感光性導電性ペーストにも光が到達するような形で線量およびエネルギーを制御することにより、反応は、感光性ホウ素ペースト中のみならず感光性導電性ペースト中でも進行する。
【0083】
導電性ペーストとホウ素ペーストは現像されて、既定のパターンを形成する(図8(C))。次に導電性ペーストとホウ素ペーストは空気焼成されて、電極が製造される。焼成条件は以上ですでに記述されたため、ここでのその記述は割愛する。
【0084】
状況に応じて、導電性ペーストは感光性である必要はない。導電性ペーストが非感光性である場合、照射によってひき起こされる化学反応は、ホウ素ペースト中でのみ進行する。しかしながら、現像プロセスにおいては、残留ホウ素ペーストをいわゆるレジストとして使用して、導電性ペースト中にパターンを形成することが可能である。導電性ペーストが現像剤中に容易に溶解する場合には、それは湿式エッチングと同じ原理に基づいて除去され、そうして既定のパターンが形成される。導電性ペーストが現像剤中に溶解しないかわずかしか溶解しない場合、ホウ素ペーストが現像された後、導電性ペーストのエッチングがレジスト用基板として残留ホウ素ペーストを用いて実施される。エッチングは湿式エッチングまたは乾式エッチングであり得る。エッチング中にホウ素ペーストの一部が除去されたとしても、焼成中に導電性構成成分の酸化を阻止するのに充分なホウ素ペーストが残留するようになるのが好ましい。導電層は電極に機能性を付与することから、電極は、導電層の機能性が低下しないことを条件として、有効に機能し続ける。
【0085】
本発明は、電極を有する電子デバイスに適用可能であるが、用途は特にそれに限定されない。好ましくは、本発明は、PDPのリアパネルの電極(アドレス電極および/または母線電極)に応用可能である。PDPの生産コストは、本発明を使用することにより削減され得る。
【実施例】
【0086】
本発明について以下で実施例によりさらに詳述する。実施例は単に例示を目的とするものであって、本発明を限定するように意図されたものではない。
【0087】
実施例1
1. 有機構成成分の調製
溶剤としてのテキサノール(2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート)および有機結合剤としての6,000〜7,000の分子量を有するアクリルポリマー結合剤を混合し、混合物を撹拌しながら100℃まで加熱した。得られた溶液を75℃まで冷却した。有機結合剤の全てが溶解してしまうまで、混合物を加熱し撹拌した。EDAB(エチル4−ジメチルアミノベンゾエート)、DETX(ジエチルチオキサントン)およびChiba Specialty Chemicals製のIrgacure907を光重合開始剤として添加し、TAOBN(1,4,4−トリメチル−2,3−ジアザビシクロ[3.2.2]−ノン−2−エン−N,N−ジキソイド)を安定剤として添加した。すべての固体が溶解してしまうまで、混合物を75℃で撹拌した。40ミクロンのフィルタを通して溶液をろ過し、冷却した。
【0088】
2. ペーストの調製
2−1: ペースト1(Cu)の調製
2.62wt%のTMPEOTA(トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート)、2.62wt%のBASF製Laromer(登録商標)LR8967(ポリエチルアクリレートオリゴマー)および7.85wt%のSartomer(登録商標)SR399E(ジペンタエリスリトールペンタアクリレート)からなる光重合開始モノマー、安定剤としての0.84wt%のマロン酸、0.17wt%のシリコーン消泡剤(BYK Chemie,BYK085)、5.91wt%の追加のテキサノール溶剤を、黄色光の下で混合タンク内で、19.50wt%の上述の有機構成成分と混合して、ペーストを調製した。ガラスフリットとして1.07wt%のビスマスフリット(日本山村硝子株式会社)を使用し、導電性(金属)粒子として59.43wt%の銅粉末(DOWAエレクトロニクス、D50=1.0μm)を使用した。無機材料の粒子が有機材料で濡れるまでペースト全体を混合した。3−ロールミルを用いて混合物を分散させた。ペーストの配合表は、表2中で示されている。
【0089】
2−2: ペースト2(B)の調製
6.17wt%のTMPEOTA(トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート)、6.17wt%のBASF製Laromer(登録商標)LR8967(ポリエチルアクリレートオリゴマー)および18.50wt%のSartomer(登録商標)SR399E(ジペンタエリスリトールペンタアクリレート)からなる光重合開始モノマー、安定剤としての1.97wt%のマロン酸、0.4wt%のシリコーン消泡剤(BYK Chemie,BYK085)、5.63wt%の追加のテキサノール溶剤を、黄色光の下で混合タンク内で、45.99wt%の上述の有機構成成分と混合して、ペーストを調製した。0.28wt%のビスマスフリット(日本山村硝子株式会社)と14.89wt%のホウ素粉末(H.C.Starck、Boron Amorphous I、D50=0.9μm)を使用した。無機材料の粒子が有機材料で濡れるまで混合した。3−ロールミルを用いて混合物を分散させた。ペーストの配合表は、表2中で示されている。
【0090】
2−3: ペースト3(Cu)の調製
ペースト1の製造方法に基づいて、銅ペーストを製造した。構成成分および含有量は表2に示されている通りである。
【0091】
2−4: ペースト4(Ni)の調製
ペースト1の製造方法に基づいてニッケルペーストを製造した。構成成分および含有量は、表2に示されている通りである。
【0092】
【表2】

【0093】
3. 電極の調製
ペーストの調製および部品の製造中の粉塵による汚染は、結果として欠陥をもたらすと考えられることから、粉塵汚染を回避するための予防措置を講じた。
【0094】
3−1: コーティング
150〜400メッシュのスクリーンを用いたスクリーン印刷により、ペースト1(Cu)をガラス基板に塗布した。所望のフィルム厚が確実に得られるように、適切なスクリーンおよび電極ペーストの粘度を選択した。その後、ペーストを、高温空気循環炉内で100℃で20分間乾燥させた。
【0095】
ペースト2(B)を使用して同じプロセスを実施し、銅層の上にホウ素層を形成した。銅層およびホウ素層の組合せ厚みは9.3μmであった。
【0096】
3−2: フォトパターン化可能ペーストのための紫外線パターン露光
乾燥したペーストを、平行紫外線放射源を用いるフォトツールを通して紫外光に露光した(照明:18〜20mW/cm2、露光:10〜2000mJ/cm2)。
【0097】
3−3: フォトパターン化可能なペーストのための現像
露光した試料をコンベヤ上に設置し、その後、現像剤として0.4wt%の炭酸ナトリウム水溶液を充填したスプレー現像装置内に入れた。現像液を30℃の温度に保ち、10〜20psiで噴霧した。
【0098】
現像時間は、以下の要領で決定した。最初に、パターン露光した試料の場合と同じ条件下で乾燥した部品を印刷することにより、現像剤中で基板から乾燥した未露光フィルムを除去する時間(TTC、Time To Clear)を測定した。次に、TTCの1.5倍に設定された現像時間で、パターン露光された部品を現像した。
【0099】
現像された試料を、エアジェットで余剰の水分を吹き飛ばすことによって乾燥させた。
【0100】
2層構造を形成するために、2つの方法を使用した。すなわち、コーティングから乾燥までの作業を2回実施し、次に2層構造を単一のユニットとして露光し現像した場合と;下層をコーティングし、露光し、現像し、次に上層をコーティングし、焼成を行なった場合である。
【0101】
3−4: 焼結
1.5時間のプロファィルを用いてベルト炉内において空気中で焼結することにより、590℃のピーク温度を達成した(最初の焼結)。
【0102】
得られたパターン内の表面抵抗、体積抵抗率およびフォトパターン化を評価した。
【0103】
焼成された部品の表面抵抗を決定するために、最初に、下層を形成する試料を、40mm平方の開口部を伴うスクリーンマスク(poly380)で印刷した。部品を乾燥させ、上層を再度印刷し、乾燥させた。焼成済み部品を横断して対角線上に端子を適用し、抵抗を測定した。
【0104】
体積抵抗率のためには、パターンを露光するために、幅400μm、長さ14.7mmのラインを有するパターンを伴うフォトマスクを使用し、現像と焼成の後、形成したパターンを用いて抵抗を測定し、焼成後のライン幅とフィルム厚から体積抵抗率を計算した。
【0105】
以下の方法により、フォトパターン化を評価した。最初に、現像の後パターン露光された部品上にラインが残留しているか否かを目視で確認した。より具体的には、3〜5μmの焼成済みフィルム厚みを有するようにコーティングされた部品が800mJ/cm2で露光され、次にTTCの1.5倍に設定した現像時間で現像された場合、100μmのラインが残留していたならばフォトパターン化は合格(OK)と判断されたが、100μmのラインが洗い流されるかまたは数多くの壊れたラインが観察された場合には、フォトパターン化は不良(NG)と判断された。
【0106】
比較例1〜6
表3に示されているようなペースト1およびペースト2を用いてパターン形成を試みた。上述の方法により、表面抵抗、体積抵抗率およびフォトパターン化を評価した。結果は、表3に示されている。
【0107】
【表3】

【0108】
表3中の実施例1は、最初に下層を銅ペーストで形成し、乾燥後ホウ素ペーストをコーティングし乾燥させ、次に部品を露光し現像し焼成した場合の結果を示す。この場合、焼成されたフィルムの外観は褐色であり、0.279Ωの表面抵抗および1.88×10-5Ohm・cmの体積抵抗率で、比較的低い抵抗値を示した。
【0109】
比較例1および2は、実施例1を構成する銅ペーストとホウ素ペーストが各々層化無く単独で形成された場合の結果を示す。紫外線露光後の現像の結果としてのパターン化特性は、比較例1および2の両方において良好であった。しかしながら、銅ペーストのみを含むフィルムを空気焼成した比較例1においては、焼成後の外観は、酸化銅(CuO)の黒色を示し、表面抵抗と体積抵抗率の両方が実施例1の場合よりも際立って高いものであった。ホウ素ペーストのみを含むフィルムを空気焼成した比較例2は、表面抵抗および体積抵抗率の両方が測定上限(100MΩ)よりも高い絶縁体であった。
【0110】
比較例3においては、実施例1で低い抵抗を示している銅ペーストとホウ素ペーストを逆転させ、ホウ素ペーストが下層を形成し、銅ペーストが上層を形成するようにした。この場合、紫外線露光に起因するパターン化は良好であったが、焼成後フィルムは酸化銅(CuO)の黒色を示し、フィルムがガラス基板から離昇したため、抵抗を測定することはできなかった。
【0111】
したがって、実施例1での空気焼成後に得られた低い抵抗値が、導電性ペースト(この場合は銅)とホウ素ペーストをそれぞれ下層と上層を形成するように塗布した構成によって達成されたものであることは明白である。
【0112】
さらに、比較例4、5および6は、ペースト1(銅ペースト)とペースト2(ホウ素ペースト)を予め混合しコーティングした場合である。その時は、実施例1のものにおおよそ近いフィルム厚に達するために同じペーストを2回コーティングした。
【0113】
この場合、混合したペースト中の[ホウ素]/[ホウ素+銅]の重量百分率が比較例4については12.5wt%、比較例5については25wt%、そして比較例6については50wt%となるような形で、混合物を調製した。
【0114】
比較例4、5および6の各々においては、紫外光照射によりパターンを形成することが可能であった。比較例4においては、焼成したフィルムは幾分か暗く変色したように見え、抵抗は際立って高いものであった。比較例6の抵抗は、測定上限より高いものであった。比較例5では、幾分か低い抵抗値が得られたが、その値はなおも実施例1の場合よりも著しく高いものであった。以上のことから、異なる構成をもつペーストすなわち導体とホウ素から2層構造を形成した場合、単に2つを共に混合した場合に比べてさらに低い抵抗値が得られる、実施例1のような場合が存在することは明白であった。
【0115】
実施例2〜5、比較例7〜8
表1に示されたペースト2(B)、ペースト3(Cu)およびペースト4を用いて、パターン形成を試みた。
【0116】
【表4】

【0117】
表4中の実施例2および3については、それぞれ銅またはニッケル導電性粉末を含むペーストをコーティングし乾燥させることによって構成し、ホウ素を含むペーストを上層としてコーティングした後、2層乾燥フィルムを露光し現像した。この場合、形成したパターンの断面構造は図1に例示されている。実施例2において、表面抵抗は0.195Ωであり、体積抵抗率は1.28×10-5Ω・cmであり、実施例3において表面抵抗は4.585Ωであり、体積抵抗率は6.98×10-4Ω・cmであった。これらの値は、上層内にホウ素が全く存在しなかった場合、すなわち比較例7および8よりも際立って低いものであり、ホウ素含有フィルムの上層に起因する抵抗の低下の効果が明白に示されている。
【0118】
表4中の実施例4および5は、それぞれ銅またはニッケルを含むペーストを下層としてコーティングし乾燥させ、露光し現像してパターンを形成させ、次にホウ素を含むペーストを上部層として表面全体にコーティングし、乾燥させ焼成させた場合である。この場合において、形成されたパターンの断面構造は、図3に示されたものである。実施例4および5において、体積抵抗率は、それぞれ2.21×10-5Ω・cmおよび5.31×10-4Ω・cmであり、図3に示された構造において、ホウ素含有フィルムの上層に起因する抵抗の低下の効果が明確に示されている。
【0119】
実施例6〜8、比較例9〜11
表5に示されているペースト5(Cu+Sn)、ペースト6(Bi+Sn)、ペースト7(Cu+はんだ)およびペースト8(B)を用いて、パターン形成を試みた。
【0120】
【表5】

【0121】
表5に示されたさまざまな金属を含むペーストを用いて導電層を構成し、それを表6に示されているホウ素含有ペーストの上層と組合せることによって調製した焼成フィルムにおいて、抵抗を測定した。本発明の構成が、導体のみを焼成した場合に比べてさまざまなタイプの金属との関連において低い抵抗を付与したことは明白である。
【0122】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
− 銅、ニッケル、鉄、コバルト、チタン、鉛、アルミニウム、スズおよびこれらの金属の1つを主成分として含む合金からなる群から選択される導電性構成成分を含む導電層と;
− 酸化ホウ素を含み前記導電層の上面を被覆するかまたは前記導電層の上面および側面を被覆するかまたは前記導電層が形成されている場合にはつねに前記導電層の全ての場所を被覆する酸化保護層と;
を含む電極であって、前記導電層および前記酸化保護層を同時に空気焼成することによって形成される電極。
【請求項2】
前記酸化保護層が前記導電層の前記上面および前記側面の両方を被覆する、請求項1に記載の電極。
【請求項3】
前記導電層が形成された全ての場所を前記酸化保護層が被覆している、請求項1に記載の電極。
【請求項4】
電極製造方法であって、
− 銅、ニッケル、鉄、コバルト、チタン、鉛、アルミニウム、スズおよびこれらの金属の1つを主成分として含む合金からなる群から選択される導電性構成成分を含む導電性ペーストを、既定のパターンで基板上にコーティングするステップと;
− 前記導電性ペーストを乾燥させるステップと;
− 前記乾燥した導電性ペーストの上面にホウ素粉末を含むホウ素ペーストをコーティングするステップと;
− 前記ホウ素ペーストを乾燥させるステップと;
− 前記導電性ペーストと前記ホウ素ペーストを空気焼成するステップと、
を含む、方法。
【請求項5】
前記ホウ素ペーストが前記導電性ペーストの前記コーティングパターンと同一のパターンでコーティングされている、請求項4に記載の電極製造方法。
【請求項6】
前記ホウ素ペーストが前記導電性ペーストの前記コーティングパターンよりも広いパターンでコーティングされ、前記コーティングされたホウ素ペーストの一部分が前記導電性ペーストの前記側面を被覆している、請求項4に記載の電極製造方法。
【請求項7】
前記導電性ペーストがコーティングされた全ての場所を被覆するように前記ホウ素ペーストがコーティングされる、請求項4に記載の電極製造方法。
【請求項8】
電極製造方法であって、
− 銅、ニッケル、鉄、コバルト、チタン、鉛、アルミニウム、スズおよびこれらの金属の1つを主成分として含む合金からなる群から選択される感光性導電性構成成分を含む導電性ペーストを基板上にコーティングするステップと;
− 前記コーティングされた導電性ペーストを既定のパターンで露光するステップと;
− 前記露光した導電性ペーストを現像するステップと;
− 前記現像した導電性ペーストの上面にホウ素粉末を含むホウ素ペーストをコーティングするステップと;
− 前記ホウ素ペーストを乾燥させるステップと;
− 前記導電性ペーストとホウ素ペーストを空気焼成するステップと、
を含む、方法。
【請求項9】
前記ホウ素ペーストが前記導電性ペーストの前記コーティングパターンと同一のパターンでコーティングされている、請求項8に記載の電極製造方法。
【請求項10】
前記ホウ素ペーストが前記導電性ペーストの前記コーティングパターンよりも広いパターンでコーティングされ、前記コーティングされたホウ素ペーストの一部分が前記導電性ペーストの前記側面を被覆している、請求項8に記載の電極製造方法。
【請求項11】
前記導電性ペーストがコーティングされた全ての場所を被覆するように前記ホウ素ペーストがコーティングされる、請求項8に記載の電極製造方法。
【請求項12】
電極製造方法であって、
− 銅、ニッケル、鉄、コバルト、チタン、鉛、アルミニウム、スズおよびこれらの金属の1つを主成分として含む合金からなる群から選択される導電性構成成分を含む導電性ペーストを基板上にコーティングするステップと;
− 前記コーティングされた導電性ペーストを乾燥させるステップと;
− 前記乾燥した導電性ペーストの上面にホウ素粉末を含む感光性ホウ素ペーストをコーティングするステップと;
− 前記コーティングされた感光性ホウ素ペーストを既定のパターンで露光するステップと;
− 前記導電性ペーストおよび露光したホウ素ペーストを現像するステップと;
− 前記導電性ペーストと前記ホウ素ペーストを空気焼成するステップと、
を含む、方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図5C】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図7C】
image rotate

【図7D】
image rotate

【図8A】
image rotate

【図8B】
image rotate

【図8C】
image rotate


【公表番号】特表2013−507772(P2013−507772A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533265(P2012−533265)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【国際出願番号】PCT/US2010/051575
【国際公開番号】WO2011/044196
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】