説明

耐震免震型直立ケージ

【課題】地震による強い衝撃が加わっても、ケージの転倒及び変形等の被害を防ぐことが可能な耐震免震型直立ケージの提供することを課題とする。
【解決手段】鶏舎3に立設されるケージ1は、予め想定した震度以上の地震による衝撃を受けた際、設置面に対して滑動するケージ脚2aを有し、ケージ長手方向に沿って少なくとも二列以上のケージ列5aが所定の間隔を保持して鶏舎3内に構築された場合、ケージ長手方向に直交する直交方向に沿って配設され、互いに隣接するケージ列5a同士を連結するケージ連結部材4aを具備し、地震の震動によるエネルギーに二つのケージ列5a及びケージ連結部材4aによって抗することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐震免震型直立ケージに関するものであり、鶏の飼育が行われる鶏舎内に設置される耐震免震型直立ケージに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、多数羽の鶏を一カ所にまとめて飼育し、鶏卵や鶏肉を生産する養鶏場において、ケージと呼ばれる設備が採用されている。このケージは、金属製の複数のフレーム部材を縦横に組合わせ、略直方体の枠形状(フレーム形状)を呈するように構築されたケージユニットを複数連設したものであり、このように連結されたケージ列が鶏舎の大きさに応じて、鶏舎内に複数列配置されることにより構築されている。ケージには、各ケージ列に収容された鶏に対して、餌や水を自動的に与える給餌・給水システムや、産卵した鶏卵を自動的に回収し、集卵する集卵システム、及び鶏から排出された糞等を回収し、ケージの内部を清潔に保つための除糞システム等の各種システムが取付けられている。そして、これらのケージ及び前述の各システムをコンピュータによって一元的に管理することで、一養鶏場当たりの作業人員を必要最小限に抑え、新鮮な鶏卵等を低価格で安定供給することが可能となっている。
【0003】
各ケージユニットは、単位面積当たりの飼育数を増加させるために、多段に形成されている。例えば、一般的なケージユニットの場合、3段から8段程度に構築されることが多く、さらに状況に応じては12段以上に構築されることもある。そして、このように構成された各ケージユニットが複数連結されることによって、各ケージ列が構築されている。これにより、鶏卵等の生産性を飛躍的に向上させることができ、上記のような低価格での供給を可能としている。
【0004】
このため、3段から8段等の多段に形成されたケージユニットの高さは、最低でも2mを超え、さらに、8段以上の段数を有するゲージユニットとなると、6mから8m程度に及ぶこともある。一方、ケージユニットの幅方向の長さは、例えば、1.8m前後のものが一般的であり、ケージユニット全体として、高さ方向に縦長な形状の態様をしている。また、ケージ列は、複数のケージユニットが連設されたものであるから、ケージ列全体を上方からみると、細長い形状の態様をしている。
【0005】
以上の従来技術は、本技術分野における当業者においては周知のものであり、本願出願時には、本発明に関する関する従来技術が記載された文献を本願出願時において特に知見するものではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のケージにおいて、下記に掲げるような不具合が発生する可能性があった。すなわち、先に述べたように、各ケージ列は多段に形成されており、全体として縦長の態様とされているため、付随する上記の各システムを取付けた場合、ケージ列の単位長さ当たりの重量は、全体として400〜500kgの値を示すことがあった。なお、上記単位長さ当たりの重量は、一般的なケージに関するものであり、さらに多段に形成され、多くの鶏を収容等をすることにより、500kgを超える場合もあった。
【0007】
このとき、多段に形成されたケージ列は、当該ケージ列の重心位置が鶏舎の設置面の上方の比較的高い位置に存在することがあった。このような状況で、想定以上の震度による地震が発生し、その地震による衝撃をケージ列が受けた場合、重心位置の高さ及びその縦長の立体的形状から立設状態が不安定なケージ列は、容易に揺動し、転倒してしまう可能性があった。更には、ケージ列は複数のケージユニットが連結されることにより構成されることが多いため、全体が一様に転倒しなくても、一のケージユニットに伴い、雪崩的に他のケージユニットも転倒してしまう可能性もあった。なお、当然のことながら、これらのケージ列は、鶏舎の床面(設置面)とケージ列とをボルト等で固定し、容易に移動することを禁止する措置が採られていることがあった。しかしながら、地震の震動が大きく、ケージ列に伝搬する地震のエネルギーが大きい場合、ボルト等の固定ではケージ列が大きく揺動することを抑制することができず、却って、ケージが転倒したり、変形するような被害が発生する可能性もあった。
【0008】
特に、近年において日本及び世界各地では、震度4以上の大きな地震が頻発しており、自動車産業等の各種産業分野への生産への影響が非常に大きくなっている。また、上記のような養鶏業においても、地震による被害を受けることにより、鶏卵等を低価格で安定して供給することができなくなる場合もあり、地震に対する被害の発生を未然に防いだり、或いは被害を最小限に抑えることのできる対策や設備の開発等が期待されていた。
【0009】
ここで、鶏舎等の建築物自体は、建築基準法等の法律や各地方自治体が定めた耐震基準などによって厳しい規制がなされ、上記のような大きな地震に対しても十分な強度を有することが要求され、該建築基準を満たした建築物自体が倒壊したりする可能性は極めて低いものと考えられる。ところが、鶏舎内に収容されるケージ等の生産設備に対する耐震基準等はほとんど規定されていないのが現状であり、何ら地震対策を施していない場合もあった。そのため、ひとたび地震が発生すれば、ケージが鶏舎内に転倒し、被害が甚大に及ぶ場合があった。さらに、ケージや鶏舎等の物的な損害とともに、新鮮な鶏卵を安定的に供給するために飼育してきた多数羽の鶏が圧死する等の被害が及ぶ場合があり、さらには鶏舎内で作業する作業者へも危険が及ぶこともあった。そのため、鶏舎内に設置されるケージに対する地震対策を早急に求める声が強かった。
【0010】
そこで、本発明は、上記実情に鑑み、地震の震動によって強い衝撃が設置面に加わる場合であっても、耐震免震型直立ケージの転倒及び変形等の各種被害を未然に防止し、被害を最小限に抑えることの可能な耐震免震型直立ケージの提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明の耐震免震型直立ケージは、「鶏舎内に設置された複数のケージユニットが連設されて構築され、且つ前記鶏舎内に所定の間隔を空けて平行に少なくとも二列以上並設されるケージ列の耐震及び免震を行うものであって、前記ケージ列の長手方向に直交するケージ直交方向に沿って配設され、複数の前記ケージ列同士を連結するケージ連結部材と、前記各ケージ列を前記鶏舎の設置面に立設した状態に支持させるケージ脚とを具備し、前記ケージ脚は、相当の衝撃力を前記設置面から受けた場合、前記設置面に対して前記ケージ脚の当接面を滑動させる滑動手段」を主に具備して構成されている。
【0012】
ここで、ケージ脚とは、各ケージ列を、鶏舎の設置面に対して立設した状態で支持させるものである。ケージ長手方向に連設されたケージ列を構成する一つのケージユニットの底面形状は、一般に四角形状を呈するため、例えば、このケージ脚をケージの底面の各コーナー部(隅部)に計4カ所設けることにより、耐震免震型直立ケージを安定した状態で立設し、支持することができる。なお、設置する耐震免震型直立ケージのサイズや耐震免震型直立ケージの段数、及び収容する鶏の数やその他付設設備に取付状況に応じて、上記4カ所のケージ脚では、安定した支持ができない場合には、ケージ脚の数を増加して設置することも可能であり、例えば、一つの耐震免震型直立ケージに対して6カ所以上に設けるものであっても構わない。
【0013】
一方、滑動手段とは、予め想定した震度以上(例えば、震度4以上の地震等)による衝撃が、設置面を介してケージ脚に伝搬した場合、当該設置面上に重畳するように当接したケージ脚の当接面が互いの面上に沿って滑動(若しくは摺動)させるためのものである。このとき、ケージ脚の滑動によって、設置面を介してケージ脚に伝搬する地震のエネルギーが大きく緩衝され、耐震免震型直立ケージに伝わる地震の衝撃を大幅に抑えることが可能となる。すなわち、従来のように固定されている場合と比べ、固定箇所を基点として耐震免震型直立ケージが大きく揺動することがなく、耐震免震型直立ケージに加わる荷重負荷がそれほど大きくなくなる。その結果、地震の震動に十分耐え得ることができ、鶏舎内での転倒等の被害の発生が抑えられることとなる。
【0014】
ここで、滑動手段の具体例を示すと、例えば、ケージ脚の基部(底部)に設けられ、設置面に面接触するように当接させた金属製のプレート状部材が挙げられる。即ち、滑動手段であるプレート状部材によりケージ脚の基部(以下、ケージ脚基部という)が構成されている。このとき、設置面とケージ脚基部とは、ボルト等の周知の固定締結手段で締結することを行わず、設置面に耐震免震型直立ケージを載置するだけにする。これにより、平常時には、重量物である耐震免震型直立ケージの自重、及び、設置面及びプレートの間の摩擦力によって載置状態が維持され、容易に移動することがない。一方、地震が発生し、強い衝撃が地盤を通じて鶏舎の設置面に伝搬し、この衝撃のエネルギーがさらに耐震免震型直立ケージに伝搬されようとする場合、耐震免震型直立ケージの自重及び面間の摩擦力以上の力が作用すると、設置面及びケージ脚基部は何ら固定手段を介して連結されていないため、設置面及びケージ脚基部の当接面の間で「滑り」が発生し、耐震免震型直立ケージの横方向への移動が認められる。その結果、衝撃のエネルギーが設置面及び当接面の間の滑動によって緩衝され、吸収されることとなる。そのため、本発明の滑動手段によって、地震の震動によるエネルギーが直接伝搬することが少なくなり、所謂「免震」の作用を奏させることが可能となる。
【0015】
なお、ケージ脚基部には、上記のような金属製の素材から形成されたプレート状部材を用いる以外に、例えば、設置面との摩擦係数をさらに小さくし、滑り易くする目的のためにプラスチック樹脂等の素材を当接面に配するようにすることが可能である。一方、ケージ脚基部に相対する設置面には、一般的に土或いはコンクリート等が採用されるものの、かかる設置面をケージ脚基部の当接面との間でさらに摩擦係数を小さくするような素材を採用するものであっても構わない。
【0016】
また、ケージ脚基部の別例構成として、より滑動性の高いポリプロピレン樹脂のようなプラスチック樹脂からなる樹脂プレートを下層に設け、さらにその上層に金属製のプレートを貼合わせ、二層構造にしたものであっても構わない。すなわち、周知の固定手段を利用してケージの下端を設置面に強固に固定するのではなく、衝撃によるエネルギーを緩衝するために、設置面に対して耐震免震型直立ケージ全体が滑動可能な構成であれば特に構わない。このケージ脚基部及び設置面の間の摩擦係数及び滑動性は、滑動を開始する地震による衝撃の大きさを設定する上で特に重要であり、より小さな地震による衝撃であっても、ケージを滑動させ、免震作用を奏するようにする場合、上述の摩擦係数の低いプラスチック樹脂素材からなるものを採用し、一方、震度6以上等の強い地震による震動を受けて初めて滑動を開始しようとする場合には、上記よりもさらに摩擦係数を高くし、比較的弱い力では容易に滑動しないようなものとすることができる。
【0017】
したがって、本発明の耐震免震型直立ケージによれば、上記構成により、耐震免震型直立ケージ全体が設置面に対して滑動することとなる。その結果、地震の震動或いはその他衝撃が発生していない平常時には、自重等によって設置位置に固定され、想定した震度以上の衝撃が加わった場合には、容易にケージ全体が滑動することとなる。このように免震作用が発揮されるため、耐震免震型直立ケージの転倒等の被害を防ぐことが可能となる。
【0018】
また、ケージ列とは、複数のケージユニットをケージ長手方向に沿って連接したものであり、本発明においては、鶏舎内にこのケージ列が少なくとも二列以上並設されている。ここで、各ケージ列は重心位置が比較的高く構成されているため、想定以上の震度(例えば、震度6)の地震が発生し、各ケージ列に震動が伝搬した場合、転倒する可能性がある。そこで、この傾動方向への転倒を規制するように、複数のケージ列同士をケージ連結部材で連結し、補強することが行われる。これにより、二つのケージ列及びその間を架渡すように横架して連結されたケージ連結部材によって、側方から見ると少なくとも一部に開口部を下に向けた略コの字形状の形態が確認される。このコの字形状の形態は、力学的に非常に安定した構造であり、単にケージ列を立設したものに比べて明らかに強度が増している。その結果、地震による震動で連結された一方のケージ列を倒そう(傾けよう)とする強い力が作用した場合でも、ケージ連結部材で連結された他方のケージ列によってこれを支えることができ、転倒を免れることが可能となる。なお、ケージ連結部材によるケージ列同士の連結間隔は、例えば、ケージ長手方向に対して10m〜20m程度の間隔で行うことにより、上記連結による転倒等の防止作用を十分に奏させることが可能となる。また、ケージ連結部材として使用される素材、特性、及び連結にかかる手法及び方法は、前述した鶏舎連結部材と略同一の構成のものを採用することが可能となる。
【0019】
さらに、本発明の耐震免震型直立ケージのケージ連結部材は、該ケージ連結部材の剛性によって立設状態を安定させることができるとともに、下記に示すように、地震の震動による耐震免震型直立ケージの大きな揺動を抑える作用を奏することができる。すなわち、一般に物体(ここでは、耐震免震型直立ケージに相当)には、それぞれに固有な揺れの周期(固有周期)が存在し、この固有周期は物体の剛性によって変化することが知られている。例えば、物体の剛性が強い場合、換言すると、物体が硬い材質で形成されている場合、その固有周期は短くなり、一方、物の剛性が弱い場合、換言すると、物体が柔らかい材質で形成されている場合、その固有周期は長くなる傾向がある。さらに、物体が最も大きく揺動するのは、物体の固有周期と、物体が載置された設置面(地震による地盤に相当)の卓越周期とが一致する場合である。
【0020】
このとき、本発明の耐震免震型直立ケージのように、それぞれを互いにケージ連結部材によって所定の高さ(例えば、ケージ長さの中央位置等)で連結することにより、上述した物体特有の固有周期を短くすることが可能となる。これにより、地震による地盤の卓越周期と物体(耐震免震型直立ケージ)の固有周期との間の相違を大きくすることができ、両者の周期が一致し、大きく揺動することが規制される。その結果、耐震免震型直立ケージ自体の大きな揺動が制限され、上述した免震作用、ケージ連結部材の剛性よる立設状態の安定化とともに、耐震免震型直立ケージの振動の固有周期を変化させることによる立設状態の安定化を図ることができる。
【0021】
以上説明した通り、本発明の耐震免震型直立ケージにおいては、単に、耐震、又は免震の何れか一方の機能のみを発揮するのではなく、簡素な構成により、耐震と免震の両方の機能を発揮するものである。これにより、その役割故、転倒し易い構成となっているケージの転倒を強固に抑制することが可能となる。
【0022】
さらに、本発明の耐震免震型直立ケージは、上記構成に加え、「前記ケージ連結部材は、前記ケージユニットをケージ列の短手方向に貫通して配設される貫通ケージ連結部材である」ものであっても構わない。
【0023】
したがって、本発明の耐震免震型直立ケージによれば、ケージ連結部材が一つのケージ列のケージ列幅方向を貫通した状態で互いに隣接するケージ列同士を連結するように一つの貫通ケージ連結部材によって接続されている。その結果、鶏舎内に二列以上の複数のケージ列が並設された場合、ケージ列幅方向に沿って並んだ全てのケージ列(耐震免震型直立ケージ)を一つの貫通ケージ連結部材で連結することが可能となる。これにより、一つのケージ列がケージ長手方向の直交方向に倒れようとしても、残りのケージ列全体及びケージ連結部材でこれを阻止することが可能となり、鶏舎内の耐震免震型直立ケージ(ケージ列)の立設状態をさらに安定させたものとすることできる。なお、貫通ケージ連結部材の両端を略水平方向に延設し、鶏舎の構造材の一部と連結するものであってよい。これにより、貫通ケージ連結部材が上述した鶏舎連結部材の一部機能を奏することとなる。その結果、立設状態がさらに安定する。
【0024】
さらに、本発明の耐震免震型直立ケージは、上記構成に加え、「前記ケージ列の長手方向及び前記ケージ直交方向の少なくともいずれか一方に沿って配設され、一端が前記鶏舎の構造材の一部と連結した鶏舎連結部材」を具備するものであっても構わない。
【0025】
したがって、本発明の耐震免震型直立ケージによれば、鶏舎の構造材の一部(例えば、鶏舎の鶏舎壁部の一部)と連結可能な鶏舎連結部材を具備している。ここで、鶏舎連結部材は、通常の鋼板等の剛性部材からなるものを利用することができる。これにより、上述したケージ脚による免震作用に加え、耐震免震型直立ケージ自体の揺動を直接抑える耐震作用を奏させることが可能となる。なお、上記のケージ脚による免震作用を阻害することがないように、鶏舎連結部材は、設置面近傍に設けられるものではなく、設置面から少なくとも1m以上、さらに好ましくは2m以上の位置の高さに設けられることが求められる。なお、この鶏舎連結部材は、ケージ長手方向またはこれに直交する直交方向の少なくともいずれか一方に沿って配設することが可能である。
【0026】
耐震免震型直立ケージ及び鶏舎連結部材、及び、鶏舎連結部材及び鶏舎の構造材のそれぞれの結合または連結に係る手法は、特に限定されないが、例えば、ボルト及びナット等を用いた周知の固定締結手段を利用するもの、耐震免震型直立ケージとともに揺動する鶏舎に過剰な負荷がかかるのを防ぐために、規定の応力以上の衝撃が該鶏舎連結部材に与えられた場合に破断するもの、またはゴム、バネ、ダンパー等の弾性部材を利用し、応力に応答して一定の範囲で伸縮し、地震の衝撃を吸収可能なもの、さらにはこれらの上記構成を適宜組合わせて取付るものであっても構わない。
【0027】
さらに、本発明の耐震免震型直立ケージは、上記構成に加え「前記ケージ連結部材は、前記ケージ列間に設けられる中間経路の構成部材の一部として配される」ものであっても構わない。
【0028】
多段に形成された耐震免震型直立ケージ(ケージ列)の間には、高所作業を容易とするために、所定の高さに作業用の通路(中間通路)が設けられていることが一般的である。このとき、中間通路は、作業者が屈むことなく当該通路を歩行できるように、人間の平均身長よりも高い間隔(例えば、2m)で設けられていることが多い。そこで、この中間通路の設置位置の近傍の高さに上記ケージ連結部材を配設することにより、ケージ連結部材の設置が容易となる。
【0029】
したがって、本発明の耐震免震型直立ケージによれば、作業用の中間通路の高さに合わせるようにしてケージ連結部材が設けられる。このとき、耐震免震型直立ケージが4m以下のものである場合、2m以下、4m以下の範囲の高さに少なくとも一つ設けることにより、ケージ脚による免震作用を損することなくケージ列同士の連結を強固なものとし、震動に対して互いに安定した状態を保つことができる。一方、多段な耐震免震型直立ケージを採用し、4m以上の高さのものを使用した場合、上述の中間通路がさらに設けられることがある。そこで、係る上方側の中間通路の近傍にケージ連結部材を設けることによりケージの安定性を向上させることが可能となる。なお、ケージの強度によっては、下方側の中間通路の近傍にケージ連結部材を設けることを省略することも可能である。また、中間通路を構成する部材自体を強度を有するもので形成し、これにより耐震免震型直立ケージの立設状態を安定させるものであっても構わない。すなわち、中間通路の一部をケージ連結部材として機能させるものであってもよい。これにより、省スペース化を図ることができる。
【0030】
さらに、本発明の耐震免震型直立ケージは、上記構成に加え、「前記ケージ連結部材は、前記ケージ列の上部同士を連結する」ものであっても構わない。
【0031】
したがって、本発明の耐震免震型直立ケージによれば、ケージ連結部材によって、複数のケージ列の上部同士が連結される。これにより、上述した開口部を下に向けたコの字の形態が形成されるため、ケージ列の立設状態の安定性が図られる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の効果として、本発明の耐震免震型直立ケージによれば、設置面に対してケージ脚を滑動させることによって生じる免震効果と、互いの耐震免震型直立ケージ(またはケージ列)同士を連結し、ケージ長手方向への傾動をケージ連結部材によって抑制する耐震効果の双方の機能を発揮させることができる。特に従来は、ケージ単独で地震等の震動に抗する必要があったものを、少なくとも一対の複数の耐震免震型直立ケージを連結し、一方のケージが倒れようとしても他方の耐震免震型直立ケージが協働して支持しようとする作用が働くため、ケージの立設状態を安定させることができる。これにより、強い衝撃を受ける地震による被害を未然に防止等することができる。加えて、ケージ連結部材によって耐震免震型直立ケージの固有周期を変化させることができ、固有周期と卓越周期との一致によって耐震免震型直立ケージが大きく揺動する状況を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の一実施形態である耐震免震型直立ケージ1(以下、単に「ケージ1」と称す)について、図1乃至図6に基づいて説明する。ここで、図1は本実施形態のケージ1の(a)ケージ脚2aの構成、及び(b),(c)ケージ脚2b,2cの別例構成を示す説明図であり、図2は設置面Fに対するケージ脚2bの滑動の一例を模式的に示す概略説明図であり、図3は鶏舎3の側方から見た(a)ケージ連結部材4a、(b)貫通ケージ連結部材4bによるケージ列5aの連結の一例を示す説明図であり、図4は鶏舎3の上方から見た(a)ケージ連結部材4a、(b)ケージ連結部材4a及び鶏舎連結部材6aによるケージ列5aの連結の一例を示す説明図であり、図5は(a)鶏舎連結部材6a、(b)貫通鶏舎連結部材6bによるケージ列5bの連結の一例を示す説明図であり、図6は(a)ケージ連結部材4a、(b)貫通ケージ連結部材4bによるケージ列5cのケージ上部7、及びケージ上部と鶏舎3との連結の一例を示す説明図である。なお、本実施形態のケージ1及び該ケージ1の収容される鶏舎3において、一般的な鶏舎3に設置または付設される給餌システム等のその他構成については、簡略化のため図示を省略している。さらに、図1乃至図6において、実際のケージ1に対する縦横の比率、鶏舎3に対する設置比率等は説明を簡略化するため、適宜変更して図示しており、本実施形態のケージ1は上記図1乃至図6に示されたものに限定されるわけではない。
【0034】
本実施形態のケージ1は、図1乃至図6に示されるように、複数の縦フレーム及び横フレーム(いずれも図示しない)からなるフレーム部材を枠状に組合わせることによって構築され、全体が略直方体フレーム形状を呈するように形成されている。さらに、ケージ1は、ケージ内空間を上下方向に所定間隔で複数段に仕切るための仕切り板、ケージ1の背面に取付けられる後板、及び多数羽の鶏を個々に区切って収容するための横仕切板等の構成を有して構成されている。これにより、ケージ内空間における鶏の動きを規制した状態で収容し、飼育することが可能となっている。
【0035】
そして、上記ケージ1がケージ長手方向(図3における紙面奥行方向に相当)に沿って複数連結されることにより、一列のケージ列5a等が構築される。なお、ケージ1及びケージ列5a等のその他一般的な構成については、ここでは詳細な説明は省略する。
【0036】
また、縦長形状の本実施形態のケージ1を直立した状態で鶏舎3内に立設し、支持するために、鶏舎3の設置面Fに直交するように縦フレームが配設されている。さらに、具体的に説明すると、ケージ1の底面から下方に突出するようにケージ脚2aが少なくとも4カ所に設けられている(図1(a)参照)。なお、支持するケージ1の重量に応じて、ケージ脚2aの数を増加させることも可能であり、例えば、ケージ1のケージ長手方向に沿って配設された底面の一部を構成する互いに対向する横フレーム(図示しない)の中央部にそれぞれ設け、合計で6カ所の位置にケージ脚2aを設けるものであっても構わない。
【0037】
ここで、ケージ脚2aは、鶏舎3の設置面Fと面接触するように当接する当接面8を有する四角板状のケージ脚基部9と、ケージ脚基部9の基部上面10から上方に向かって垂設された脚フレーム11とを主に具備して構成されている。ここで、ケージ脚2aの一部を構成する脚フレーム11は、その一端をさらに上方に延設することによって、ケージ1の主骨格となる縦フレームの一部構成とすることもできる。
【0038】
本実施形態のケージ1に使用される四角板状(プレート状)のケージ脚基部9は、例えば、7cm×7cm角、2〜3mm厚程度のステンレス製部材を採用することができる。また、ケージ脚基部9及び脚フレーム11とは溶接等の周知の接合技術によって接合することが可能である。また、ケージ1に使用されるケージ脚の別例として、例えば、図1(b)に示すように、ケージ脚基部9の基部下面12に同一形状に加工したポリプロピレン製等のプラスチック樹脂からなる四角板状の易滑動性基部13を設けたケージ脚2bを構成するものや、図1(c)に示すように、ケージ脚基部9全体を上記のポリプロピレン製等のプラスチック樹脂から一体的に形成したプラスチック基部14を有するケージ脚2cを構成するものであっても構わない。ここで、ステンレス製のプレートからなるケージ脚基部9、プラスチック樹脂からなる易滑動性基部13、及びプラスチック基部14が本発明における滑動手段に相当する。
【0039】
上記構成のケージ脚2a等を採用することにより、以下のような効果を奏することができる。ここで、前述したように、ケージ1の単位長さ当たりのケージ重量は、400〜500kg/mに及ぶことがあり、設置面Fにケージ1を単に載置しただけでも通常の状態では該ケージ1を横方向に移動させることは困難である。特に、複数のケージ1をケージ長手方向に連結することによってケージ列5a等を構成した場合、その移動は大型の移動設備等を使用しない限りほとんど不可能である。すなわち、ケージ1のケージ内空間に多数羽の鶏を収容し、飼育を行う場合において、ケージ1のケージ脚2a等と鶏舎3の設置面Fとの間に何ら固定手段を設けないでも、特に問題を生じることがない。
【0040】
一方、地震が発生し、設置面F自体が縦横方向に強い衝撃を受けた場合、当該衝撃によるエネルギーは、当然のことながら、ケージ1にも伝達されることになる。このとき、ケージ1及び設置面Fとが固定されておらず、さらに想定した震度以上の衝撃を受けることにより、上述の滑動手段が作用し、ケージ1全体が衝撃に応じてケージ1が横方向に移動する「滑り」が生じる。すなわち、ケージ1の自重G及びケージ脚基部9の当接面8及び設置面Fとの間の摩擦力以上の地震による震動V(図2矢印参照)が加わった場合、当接面8及び設置面Fの当接状態が解除され、略水平方向に互いに離間するように滑動あるは摺動することとなる。これにより、本来ケージ1にそのまま伝搬するはずだった地震のエネルギーが上記滑動によって緩衝され、その一部しかケージ1に伝搬することがない。その結果、ケージ1は地震によってほとんど揺動することがなくなり、ケージ列5aが転倒してしまったり、或いは各フレーム部材が折れ曲がったりするような変形等の被害を受ける可能性が低くなる。すなわち、ケージ脚2a等を設置面に固定せず、滑動させることにより、本実施形態のケージ1は優れた免震効果を備えることとなる。
【0041】
ここで、ステンレス等の金属部材及びプラスチック樹脂とを比較すると、その摩擦係数は一般的にはプラスチック樹脂の方が小さくなることが知られている。そのため、比較的弱い震度の地震(例えば、震度3程度)でも、本実施形態のケージ1による免震効果を発揮させようとする場合、当接面8を上記図1(b),(c)で示したようなプラスチック樹脂を配したケージ脚2b,2cを採用することが好ましいと考えられる。
【0042】
これに対し、従来のようにケージをボルトや溶接等で設置面Fに強固に固定した場合、設置面Fを通じて地震のエネルギーが直にケージ1に伝搬することとなり、その結果、該エネルギーに対して十分に抗することができないと、ケージが大きく揺動し、転倒したり、ケージが変形することとなる。なお、本実施形態のケージ1の場合、地震発生後に、横方向に移動したケージ1をクレーン等の大型移動設備を利用して、当初の設置場所に復帰させることにより、鶏の飼育を直ぐに再開することができる。これにより、鶏卵等の生産性が低下することがなく、地震後であっても係る製品を安定供給することができる。
【0043】
さらに、本実施形態のケージ1は、図3乃至図6等に示すように、さらなる構成として、互いに隣接するケージ1同士或いはケージ1及び鶏舎3の間をそれぞれ連結することにより、地震等の被害を抑えることのできる各種の連結部材4a等を備えることもできる。以下、各連結部材4a等の設置例の詳細について述べるものとする。
【0044】
本実施形態のケージ1は、図3(a),(b)に示すような、鶏舎3の鶏舎内空間Sに収容され、鶏舎3の設置面Fと上述のケージ脚2a等を介して直立した状態で立設されている。ここで、図3では、鶏舎幅方向(図3における紙面左右方向に相当)に、四つのケージ列5aを並設したものを示している。なお、ケージ列5aは、ケージ長手方向(図3における紙面奥行方向に相当)に複数のケージ1を連なるように連結して構築したものである。
【0045】
さらに、ケージ1は、4段で構成された二つのケージユニットUを上下方向に積重させることによって合計8段のものとして構成され、ケージ1全体の高さが約6mになるように設定されている。ここで、互いのケージユニットUの上下の接続箇所の近傍には、鶏の飼育作業をする作業者のための中間通路15が設置面Fから2〜3mの高さ位置に設けられている。これにより、作業者は飼育作業を行う場合に、腰を屈めた無理な姿勢を強いられることなく、楽な姿勢で常に作業を行うことができる。そして、該中間通路15に沿ってその下方に互いに隣接するケージ列5a(またはケージ1)同士を連結するケージ連結部材4aが取付けられている。その結果、図3(a)に示すよう、二列のケージ列5a及びケージ連結部材4aによって、側方から見ると略H字形状を呈している。また、図3におけるケージ1は、図1(a)に示したケージ脚2aが採用されている。
【0046】
また、このケージ連結部材4aは、図4(a)に模式的に示すように、ケージ長手方向に直交する直交方向に沿って、かつケージ長手方向の所定間隔毎に複数配設されている。なお、ケージ連結部材4aは、鉄等の剛性部材からなる棒状部材を用いることができ、例えば、断面略コの字形状の鋼製フレーム等を用いることが可能である。さらに、ケージ1との連結は、ケージ1の縦フレーム或いは横フレームの一部とボルト及びナット等の周知の固定締結手段を利用して固定連結されるもの、或いは、縦フレーム等に溶接等によって接合されるものが例示される。
【0047】
上記構成により、二つのケージ列5aが設置面Fから所定の高さ(2〜3m)のところで連結されることになる。この状態で地震が発生した場合、一方のケージ列5aがケージ長手方向に直交する直交方向(図3における紙面左右方向に相当)に倒れようとしても、直交方向に沿って設けられたケージ連結部材4a及び連結した他方のケージ列5aが倒れようとするケージ列5aを支えることができるため、転倒等の被害が生じることがない。特に、ケージ連結部材4aを、ケージ1の重心位置よりも高い位置に設けることにより、ケージ1の立設状態の安定がより図られることとなる。さらに、上述したケージ脚2aの滑動による免震効果を併せて得ることができ、ケージ1に伝搬されるエネルギーはかなり抑えられている。その結果、ケージ1が転倒し、被害をもたらす可能性は極めて低くなる。さらに、上記ケージ連結部材4aによってケージ1(ケージ列5a)の有する固有周期を短くすることができる。これにより、設置面を介して伝搬される地震の震動による地盤の卓越周期と一致する可能性が低くなり、ケージ1自体が大きく揺動することがない。特に、図3(a)等に示すように、ケージ連結部材4a等を、ケージ1のケージ高さに対して八約1/2の高さに設けることにより、ケージ1が二つの短い固有周期を有することとなり、地盤の比較的大きな揺れによる卓越周期と一致する可能性が極めて低くなる。
【0048】
なお、上記ケージ連結部材4aのその他別例構成として、例えば、図3(b)及び図4(b)に示すように、ケージ列5a(または、ケージ1)をケージ列幅方向を貫くようにして、互いのケージ列5aを連結した貫通ケージ連結部材4bを採用することも可能である。ここで、貫通ケージ連結部材4bが本発明のケージ連結部材に相当する。より具体的に説明すると、ケージ1の一部に該貫通ケージ連結部材4bを貫通した状態で支持可能な貫通孔等の連結部材支持部(図示しない)を設け、上述の固定締結手段等を利用して貫通ケージ連結部材4bを固定することができる。これにより、図3(a)等で示したケージ連結部材4bよりもケージ列5aとの連結が強固となり、ケージ列5aの立設状態がより安定したものとなる。なお、図4(b)において、ケージ長手方向に沿って鶏舎3の構造材の一部とケージ列5aとを連結する鶏舎連結部材6aの構成が図示されているが、これについての詳細は後述する。
【0049】
一方、ケージ列5bが単一で鶏舎3に収容して設置されている場合(図5(a)参照)、上記のように互いに隣接するケージ(ケージ列)自体が存在しないため、ケージ連結部材4a等の連結による耐震効果を享受することができない。
【0050】
そこで、図5(a)に示すように、ケージ列5bと鶏舎3の構造材の一部(ここでは、鶏舎側壁16)とを連結する鶏舎連結部材6aを設ける。これにより、耐震基準に則って十分な強度を有して建設された鶏舎3とケージ列5bを連結することにより、地震の震動によるケージ列5bの揺動を鶏舎3自体の強度で抑制することができる。なお、係る鶏舎連結部材6aは、前述したように、ケージ長手方向に沿って所定の間隔で、該ケージ長手方向に直交する直交方向に沿って配設することができる。或いは、図4(b)に示すように、ケージ長手方向にそれぞれ対向するように配置される鶏舎側壁16との間を連結するようにしたものであっても構わない。さらに、図5(b)に示すように、鶏舎連結部材6a等を一つの長手形状の部材で構成し、ケージ列5bの列幅方向を貫通した状態でそれぞれを連結する貫通鶏舎連結部材6bを採用するものであっても構わない。ここで、貫通鶏舎連結部材6bが本発明の鶏舎連結部材に相当する。
【0051】
さらに、図5(a)等では、3つのケージユニットUを上下方向に積重し、合計12段からケージ1を構成している。この場合、中間通路15は、各ケージユニットUの接続箇所の近傍二カ所にそれぞれ設けられ、鶏舎連結部材6aも所定の間隔を空けて上下二カ所に設けられている。なお、図3(a)等で示した鶏舎3においても多段のケージ1を構成する場合には、上下に複数の中間通路15及びケージ連結部材4a,4bをそれぞれ設置するものであっても構わない。
【0052】
一方、図6に示すように、ケージ上部7で互いのケージ列5cをケージ連結部材4aで連結する構成を採用することもできる。ここで、前述した8段以上のケージ1に比べ、段数がそれほど多くない場合(図6(a)においては6段)、ケージ列5cのケージ上部7同士をケージ連結部材4aによって連結することにより、上記と同様の作用効果を奏することが可能となる。さらに、この場合、前述した鶏舎連結部材6aをケージ上部7に連結することにより、鶏舎3との接続によってケージ列5cの立設状態をさらに安定にすることができる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態のケージ1及びこれを連設してなるケージ列5a等は、ケージ脚2a等による免震効果とともに、ケージ列同士或いは鶏舎3との連結によってケージ1の立設状態を安定させ、地震による強い震動に対しても十分に耐え得ることのできる耐震効果を発揮することができる。特に、従来は鶏舎3が被害を免れても、その内部のケージ1の被害が甚大であったケースにおいて、本実施形態のケージ1を採用することにより、鶏舎3及びケージ1の双方の被害の発生を抑えることが可能となる。その結果、地震の発生後、速やかに養鶏作業及び鶏卵の生産等を行うことができ、生産効率を低下させることがない。
【0054】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0055】
すなわち、個々の連結部材4a等の説明において、説明を簡略化するためにそれぞれ鶏舎3に対して独立して設置するものを示したが、これに限定されるものではなく、上記説明した全ての連結部材4a等を一つのケージ列5a等に対して採用し、立設状態の安定化を図るものであっても構わない。また、連結部材4aの配設及びその個数等については、ケージ列5a等の強度に応じて個々に設計されるものであり、ケージ列5a等の製作コストを勘案し、不要な箇所については設置を省略するものであってももちろん構わない。
【0056】
さらに、本実施形態のケージ1において、鶏舎3の一部と連結する鶏舎連結部材6a,6bとしてケージ連結部材4a等と同様に剛性部材からなるものを例示したがこれに限定されるものではない。すなわち、ケージ1の揺動が大きくなると、鶏舎3自体に鶏舎連結部材6a等を通じて無理な荷重が加わり、鶏舎3を損傷させるおそれも想定される。そのため、一定以上の応力が鶏舎連結部材6aにかかった場合には、鶏舎連結部材6a等自体が破断するような材質を用い、鶏舎3に対する影響を小さくしたものや、或いはダンパー等の弾性部材を利用し、衝撃に対して伸縮可能な部材で形成したものであっても構わない。これにより、ケージ1の揺動による鶏舎3への被害を最小限にすることができる。さらに、複数の特性を有する鶏舎連結部材6a等を使用状況に応じて適宜組合わせるものであっても構わない。
【0057】
さらに、本実施形態のケージ1において、ケージ連結部材4a等を中間通路15の下方に独立した構成として設けるものを示したが、これに限定されるものではなく、例えば、中間通路15の構成材自体を強度を有するものから形成したものであってもよい。これにより、中間通路15自体にケージ1の立設状態を安定化させる機能を付与することができる。その結果、無駄なスペースを必要とせず、従来と略同一の形態のケージ1(ケージ列5a等)で、地震等に対する振動を抑えることができる。
【0058】
さらに、本実施形態のケージ1において、脚フレーム11相互を連結するようにしても良い。これにより、各ケージ列5aを構築する脚フレーム11を連結するようにすれば、ケージ1が滑動することにより脚フレーム11等が折れ曲がってしまうことを防止することができるし(滑動(免震性)の阻害を防止できるし)、隣合うケージ列5a,5a間の脚フレーム11同士を連結すれば、隣合うケージ列5aを上方と下方とで連結することになるので、耐震性を向上することができるのである。
【0059】
さらに、本実施形態のケージ1においては、隣合うケージ列5a,5a同士を連結するようにされているが、必ずしも隣合うケージ列5a,5a同士を連結するものではなく、全体としてケージ列5aが連結することによりケージ1が構成されていても良い。なお、隣合うケージ列5a,5a同士を連結した方が好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本実施形態のケージの(a)ケージ脚の構成、及び(b),(c)ケージ脚の別例構成を示す説明図である。
【図2】設置面に対するケージ脚の滑動の一例を模式的に示す概略説明図である。
【図3】鶏舎の側方から見た(a)ケージ連結部材、(b)貫通ケージ連結部材によるケージ列の連結の一例を示す説明図である。
【図4】鶏舎の上方から見た(a)ケージ連結部材、(b)貫通ケージ連結部材及び鶏舎連結部材によるケージ列の連結の一例を示す説明図である。
【図5】(a)鶏舎連結部材、(b)貫通鶏舎連結部材によるケージ列の連結の一例を示す説明図である。
【図6】(a)ケージ連結部材、(b)貫通ケージ連結部材によるケージ列のケージ上部、及びケージ上部と鶏舎との連結の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0061】
1 ケージ(耐震免震型直立ケージ)
2a,2b,2c ケージ脚
3 鶏舎
4a ケージ連結部材
4b 貫通ケージ連結部材(ケージ連結部材)
5a,5b,5c ケージ列
6a 鶏舎連結部材
6b 貫通鶏舎連結部材(鶏舎連結部材)
7 ケージ上部
8 当接面
9 ケージ脚基部(滑動手段)
10 基部上面
11 脚フレーム
13 易滑動性基部(滑動手段)
14 プラスチック基部(滑動手段)
15 中間通路
F 設置面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鶏舎内に設置された複数のケージユニットが連設されて構築され、且つ前記鶏舎内に所定の間隔を空けて平行に少なくとも二列以上並設されるケージ列の耐震及び免震を行うものであって、
前記ケージ列の長手方向に直交するケージ直交方向に沿って配設され、複数の前記ケージ列同士を連結するケージ連結部材と、
前記各ケージ列を前記鶏舎の設置面に立設した状態に支持させるケージ脚と、
を具備し、
前記ケージ脚は、相当の衝撃力を前記設置面から受けた場合、前記設置面に対して前記ケージ脚の当接面を滑動させる滑動手段
をさらに具備することを特徴とする耐震免震型直立ケージ。
【請求項2】
前記ケージ連結部材は、
前記ケージユニットをケージ列の短手方向に貫通して配設される貫通ケージ連結部材であることを特徴とする請求項1に記載の耐震免震型直立ケージ。
【請求項3】
前記ケージ列の長手方向及び前記ケージ直交方向の少なくともいずれか一方に沿って配設され、一端が前記鶏舎の構造材の一部と連結した鶏舎連結部材をさらに具備することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の耐震免震型直立ケージ。
【請求項4】
前記ケージ連結部材は、
前記ケージ列間に設けられる中間経路の構成部材の一部として配されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の耐震免震型直立ケージ。
【請求項5】
前記ケージ連結部材は、
前記ケージ列の上部同士を連結することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載の耐震免震型直立ケージ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−39012(P2009−39012A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−205702(P2007−205702)
【出願日】平成19年8月7日(2007.8.7)
【出願人】(390030661)株式会社ハイテム (22)
【出願人】(304019399)国立大学法人岐阜大学 (289)
【Fターム(参考)】