Notice: Undefined variable: fterm_desc_sub in /mnt/www/biblio_conv.php on line 353
耐震改修機構
説明

耐震改修機構

【課題】地震の大きさに対応して効率よく制震させ、構造物の変形を小さく抑えることができる耐震改修機構を提供する。
【解決手段】補助質量体40と減衰装置18とを構造物12に設けることで、それぞれの利点を生かして構造物12を制震する。すなわち、小さな地震時には補助質量体40により構造物12の振動を抑制し、大きな地震時には減衰装置18により地震エネルギーを吸収して構造物の応答速度を小さくする。これによって、補助質量体40の重量を小さくできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震による揺れを抑えることができる耐震改修機構に関する。
【背景技術】
【0002】
既存のRC構造物やSRC構造物の耐震改修工事では、従来、主にRC壁などを設けることで建物の対地震性能を向上させている。しかし、RC壁の変形能力は層の高さに対して1/300rad程度しかなく、この変形の範囲内で地震の揺れに対して抵抗し、建物を崩壊の危機から守らなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−74089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は係る事実を考慮し、地震の大きさに対応して効率よく制震させ、構造物の変形を小さく抑えることができる耐震改修機構を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、既存の構造物を制震構造とする耐震改修機構において、前記構造物の屋上階に積層ゴムを介して配置され、地震時の前記構造物との位相差を利用して前記構造物の振動を抑制する補助質量体と、前記構造物を構成する架構内に配置され、減衰力を発揮して前記構造物の振動を抑制する減衰装置と、を備え、前記減衰装置が、前記架構内に固定された支持台と、前記支持台に揺動自在に所定の梃子比で支持された梃子部材と、前記架構へ地震力が作用すると前記支持台の固定部と相対変位する前記架構の部位へ前記梃子部材の一端を回転自在に連結する連結部材と、前記梃子部材の他端に一端が回転自在に連結され、他端が前記架構内に回転自在に連結されたダンパーと、を有する。
【0006】
請求項1に記載の発明では、補助質量体と減衰装置とを構造物へ組み込むことによって、それぞれの利点を生かして構造物を制震する耐震改修機構を構築している。すなわち、積層ゴムを介して配置された補助質量体は、補助質量体と構造物との位相差を利用して構造物の振動を抑制し、また、架構内に配置された減衰装置は、地震エネルギーをダンパーの減衰力によって吸収し、構造物の応答速度を小さくして構造物の振動を抑制する。
【0007】
減衰装置を構成する梃子部材は、架構内に固定された支持台に所定の梃子比で揺動自在に支持され、その一端は支持台の固定部と相対変位する架構の部位へ回転自在に連結部材で連結されている。よって、地震等により、支持台の固定部と梃子部材の一端とが、小さく水平方向へ相対変形しても、この変形は幾何学的な特性から増幅され、梃子部材の他端を大きく変位させる。そして、梃子部材の他端にはダンパーの一端が回転自在に連結され、ダンパーの他端は架構内に回転自在に連結されているので、ダンパーは大きなストロークを得て地震エネルギーを吸収することができる。
【0008】
このため、小さい変形×大きな力=大きな変形×小さな力という関係が成立し、ダンパーが小さな力によって構造物の振動を抑制する。
このように、梃子機構によりダンパーの仕事効率を高めることができるため、少ない数の減衰装置の設置によって減衰効果を発揮することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記補助質量体は、レベル1の地震動に対してチューンドマスダンパーとして機能し、前記減衰装置は、前記構造物の任意の階層に分散配置されてレベル2の地震動に対して減衰力を発揮する。
【0010】
請求項2に記載の発明では、レベル1の小さい地震動に対しては、補助質量体がチューンドマスダンパーとして機能する。このレベルの振動では、各階層の変位量が小さいため、任意の階層に設けられた減衰装置の効果は小さい。
【0011】
なお、レベル1の地震動とは、当該建築物の敷地において当該建築物の耐用年数中に一度以上受ける可能性が大きい地震動をいい、当該建築物は損傷を受けることなく、主要構造体は概ね弾性的な挙動で応答することを目標としている。このような強さを有する地震動をレベル1の地震動という。
【0012】
ここで、レベル1より大きな地震力であるレベル2に対しては、各階層の変位量が大きくなるため、任意の階層に設けられた減衰装置が減衰力を発揮し構造物の振動を抑制する(地震に対して構造物の応答加速度を小さくする)。
【0013】
つまり、レベル1では、補助質量体がチューンドマスダンパーとしての機能を十分に発揮するが、減衰装置の効果は小さい。しかし、レベル2では、補助質量体だけでは振動を抑制しきれずに各階層の変位量が大きくなり、減衰装置が効き始める。
【0014】
このように、補助質量体で抑制する地震動の対象をレベル1に特定することで、その分、補助質量体を小さくできる。また、補助質量体のストロークが大きくならないため制御が容易で、補助質量体として、例えば、RC系架構を利用することができる。
【0015】
なお、レベル2の地震動とは、当該建築物の敷地において過去に受けたことがある地震動のうち最強と考えられるもの、及び将来において受けることが考えられる最強の地震動をいい、当該建築物は倒壊あるいは外壁の脱落等の人命に損傷を与える可能性のある破損を生じないことを目標としている。このような強さを有する地震動をレベル2の地震動という。
【0016】
請求項3に記載の発明は、前記構造物の固有周期が0.4秒〜0.6秒であり、高さが10m〜40mである。
【0017】
請求項3に記載の発明では、固有周期が0.4秒〜0.6秒、高さが10m〜40mの構造物を耐震改修する。つまり、固有周期の短い構造物においては、小さい地震に対しては各階層の変位量が小さいため、減衰装置で応答を低減することが難しく、大きい地震時には補助質量体で応答を低減することは難しい。よって、小さい地震時に効果を発揮し、大きい地震時には効果を発揮しない補助質量体と、小さい地震時には効果を発揮しないが、各階層の変位量が大きくなる大きい地震時に効果を発揮する減衰装置との、異なる働きをする(異なる応答性能を持つ)機構を組合せることにより地震の揺れに対して最大限の効果を発揮することができる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、前記構造物が、RC構造又はSRC構造である。
【0019】
請求項4に記載の発明では、RC構造又はSRC構造の構造物を耐震改修する。これまでは、RC構造又はSRC構造の構造物は、剛性補強(RC壁や鉄骨ブレス等)によって構造物の耐力を向上させる補強がなされてきたが、構造物の耐力を向上させて強くした分だけ、その反力として基礎に負担が掛かってしまう。しかし、上述したように異なる働きをする機構を組合せることで基礎に負担を掛けることなく、地震の揺れに対して最大限の制震を発揮することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は上記構成としたので、耐震改修によって、地震の大きさに対応して効率よく制震させ、構造物の変形を小さく抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る耐震改修機構を有する構造物を示す正面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る耐震改修機構を有する構造物を示す側断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る耐震改修機構の減衰装置を示す拡大図である。
【図4】地震の大きさによる補助質量体と減衰装置との効果を示す説明図である。
【図5】本発明の実施形態に係る耐震改修機構の減衰装置が変位した状態を示す拡大図である。
【図6】串ダンゴモデルにより揺れの大きさを比較した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図面を参照しながら、本発明の実施形態である、既存の鉄筋コンクリート造(以下、「RC造」とする)建物の耐震改修機構16を説明する。なお、本実施形態では、既存のRC造建物を改修した例を説明するが、SRC造建物の改修への適用も可能である。
【0023】
図1、2には、既存の10階建てのRC造の構造物12の概略図が示されている。耐震改修機構16は、RC系架構40と減衰装置18とを有している。
構造物12の屋上には、補助質量体となるトラス形状のRC系架構40が塔屋38をまたぐように配置されている。RC系架構40は、免震装置としての積層ゴム42によって、構造物12の屋上に構造物12に対して水平方向へ相対移動可能に支持され、固有周期が構造物12と同調されている。
【0024】
そして、RC系架構40と構造物12との揺れにπ/2の周期ずれ(位相差)を生じさせることにより構造物12がRC系架構40を引きずるような機構とすることで揺れを抑えるものである。
【0025】
さらに、構造物12の各階層には、左右対称に減衰装置18が配置され、構造物12の水平方向の揺れに対して減衰力を発揮できるようになっている。減衰装置18は、上階梁14A、下階梁14B、及び縦部材14Cにより構成された架構14内に設けられている。なお、減衰装置18は、構造物12の任意の階層に分散配置することができる。
【0026】
この減衰装置18では、図3に示すように、下階梁14Bに固定された支持台26から水平に延出されたアーム27の継手板27Aに、梃子部材24が、所定の梃子比で揺動自在にピン28により支持されている。上階梁14Aから下方へ張り出し、支持台26の固定部26Aと水平方向へ相対変位するブラケット20に、梃子部材24の上端に設けられた継手板24Aがピン22により回転自在に連結されている。また、梃子部材24の下端に設けられた継手板24Bには、油圧ダンパー32のロッド32A端部がピン30により回転自在に連結されている。そして、油圧ダンパー32のシリンダー32Bは、縦部材14Cから横方向へ張り出したブラケット34にピン36により回転自在に連結され、継手板24B(ピン30)の動きに追従できるようになっている。
【0027】
また、RC系架構40の重量は、構造物12の1次有効質量の約3%(従来の補助質量体は、最低でも制震構造物の重量の10%が必要)の900tonfとしており、小さい質量で構造物12の揺れを抑える設計となっている。すなわち、RC系架構40で制震できない部分を減衰装置18の減衰力によって制震することで、制震性能を満足するスペックとしている。
【0028】
また、本実施例の構造物12の固有周期は0.4秒〜0.6秒、高さが40mとされており、地震動に応答して揺れるが固有周期が短いので大きな減衰を付加することが難しい構造形式となっている。
【0029】
なお、本発明の効果を顕著に生じさせるには、固有周期を0.2秒〜2.0秒、高さを10m以上とするのが好ましい。固有周期が0.2秒以下、高さが10m以下では、設備投資に見合う効果が期待できない恐れがある。
【0030】
次に、本発明の実施形態に係る耐震改修機構の作用を説明する。
【0031】
図4(A)に示すように、小さな地震力であるレベル1に対しては、補助質量体であるRC系架構40がチューンドマスダンパーとして機能する。このレベルの振動では、各階層の変位量が小さいため(構造物全体の変位量はL1)、任意の階層に設けられた減衰装置18の効果は小さい。
【0032】
しかし、図4(B)に示すように、大きな地震力であるレベル2では、補助質量体であるRC系架構40だけでは振動を抑制しきれずに各階層の変位量が大きくなり(構造物全体の変位量はL2)、減衰装置18が効き始める。
【0033】
このように、RC系架構40は、レベル1に特定した地振動を抑制すればよいため、重量を1次有効質量の3%程度まで小さくできる。さらに、RC系架構40のストロークが大きくならないので、本実施形態のようにRC系架構40が塔屋38等をまたぐような構造であっても、地震時にRC系架構40が塔屋38等に接触するようなことはない。
【0034】
減衰装置18は、レベル2の地震動に対して減衰力を発揮し構造物12の振動を抑制する(地震に対して構造物の応答加速度を小さくする)。図5に示すように、地震力によって、構造物12が右方向へ水平変形した場合、架構14も右方向へ水平変形する。このとき、架構14内において、減衰装置18を構成する梃子部材24がピン28を中心に時計回りに回転運動を行うため、幾何学的な特性により、上階梁14A(ピン22)と下階梁14B(固定部26A)との相対水平変位量よりも、継ぎ手板24B(ピン30)の変位量の方が大きくなる。
【0035】
このように、架構14の小さな変位(水平変形)が継ぎ手板24B(ピン30)の大きな変位に増幅され、小さい変位×大きな力=大きな変位×小さな力という関係が成立する。すなわち、油圧ダンパー32のロッド32Aが大きく伸張し、小さな力によって架構14の振動が減衰され、構造物12が効果的に制震される。この増幅率は、梃子部材24の梃子比を変えることによって自由に調整できる。
【0036】
ここで、図6(A)に示す串ダンゴモデルによって、通常のRC造建物の挙動(図6(B))、補助質量体のみをRC造建物の屋上に配置した制震構造物の挙動(図6(C))、減衰装置のみを任意の階に分散配置した制震構造物の挙動(図6(D))、補助質量体をRC造建物の屋上に配置し、減衰装置を任意の階に分散配置した制震構造物の挙動(図6(E))、について説明する。
【0037】
図6(B)に示す通常のRC造建物は大きく揺れるが、図6(C)に示す制震構造物では、補助質量体がRC造建物の動きに対してπ/2位相ずれることにより、RC造建物の揺れに対して補助質量体がRC造建物を引っ張るような役割を果たして制震する。
【0038】
なお、RC造建物では1次モードが卓越しているので、一般に同調型による位相差制御によって制震するが、補助質量体が大きくなり過ぎ、ストロークが大きくなるため、補助質量体を屋上に設置するには難しい。
【0039】
図6(D)に示す制震構造物では、減衰装置によって地震エネルギーが吸収され、揺れの大きさは、図6(B)を「大」、図6(C)を「中」とすれば、「中小」と表現できる。
【0040】
また、図6(E)に示す制震構造物では、補助質量体を小さくし、通常の同調型の補助質量体として機能させ、任意の階に減衰装置を分散配置している。このように、減衰装置と補助質量体とを組み合わせることにより、揺れは「小」まで抑えられる。
【0041】
以上のように、本発明は、構造物の地震エネルギーを吸収する減衰型と、構造物のあるモードを制御する同調型との組み合わせにより構造物を制震化することができる。
【符号の説明】
【0042】
12 構造物
14 架構
16 耐震改修機構
18 減衰装置
20 ブラケット(連結部材)
22 ピン(連結部材)
24 梃子部材
24A 継手板(連結部材)
26 支持台
26A 固定部
32 油圧ダンパー(ダンパー)
40 RC系架構(補助質量体)
42 積層ゴム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既存の構造物を制震構造とする耐震改修機構において、
前記構造物の屋上階に積層ゴムを介して配置され、地震時の前記構造物との位相差を利用して前記構造物の振動を抑制する補助質量体と、
前記構造物を構成する架構内に配置され、減衰力を発揮して前記構造物の振動を抑制する減衰装置と、
を備え、
前記減衰装置が、
前記架構内に固定された支持台と、
前記支持台に揺動自在に所定の梃子比で支持された梃子部材と、
前記架構へ地震力が作用すると前記支持台の固定部と相対変位する前記架構の部位へ前記梃子部材の一端を回転自在に連結する連結部材と、
前記梃子部材の他端に一端が回転自在に連結され、他端が前記架構内に回転自在に連結されたダンパーと、
を有する耐震改修機構。
【請求項2】
前記補助質量体は、レベル1の地震動に対してチューンドマスダンパーとして機能し、前記減衰装置は、前記構造物の任意の階層に分散配置されてレベル2の地震動に対して減衰力を発揮する請求項1に記載の耐震改修機構。
【請求項3】
前記構造物の固有周期が0.4秒〜0.6秒であり、高さが10m〜40mである請求項1又は請求項2に記載の耐震改修機構。
【請求項4】
前記構造物が、RC構造又はSRC構造である請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の耐震改修機構。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−255256(P2012−255256A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127583(P2011−127583)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(899000057)学校法人日本大学 (650)
【出願人】(504004083)株式会社i2S2 (28)
【Fターム(参考)】