説明

耐食性、導電性および皮膜外観に優れた表面処理鋼板

【課題】 皮膜中に6価クロム等のような環境規制物質を含有することなく優れた耐食性を有し、しかも導電性および皮膜外観にも優れた表面処理鋼板を提供する。
【解決手段】 亜鉛系またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、4価の価数を有するバナジウム化合物からなる若しくはこれを主成分とし、さらに好ましくは、リン酸または/およびリン酸化合物若しくはSi化合物を含有する下層皮膜を有し、その上層に、特定の皮膜厚の有機系皮膜を有する。皮膜構成成分として4価のバナジウム化合物を用いることにより優れた耐食性が得られ、且つ着色による皮膜外観の問題を解消できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、家電、建材等の用途に好適な表面処理鋼板に関するもので、特に、製造時の排水処理、製品を取扱う作業者・ユーザーへの影響を考慮し、製品中に6価クロム等のような環境規制物質を全く含まない環境調和型表面処理鋼板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用鋼板、家電製品用鋼板、建材用鋼板には、従来から亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、耐食性(耐白錆性、耐赤錆性)を向上させる目的で、6価クロムを主要成分とした処理液によるクロメート処理が施された鋼板が幅広く用いられてきた。しかし、クロメート処理は公害規制物質である6価クロムを使用するため、最近では従来から使用されていたクロメート処理に代わって、6価クロムを全く用いない表面処理を施した表面処理鋼板が提案されている。その中で、6価クロムに代わる成分としてバナジウム化合物を含有した溶液を用い、浸漬、塗布、電解処理等の方法によってめっき表面に薄膜を形成させる技術が数多く提案されている。
【0003】
従来、亜鉛やアルミニウムの防錆剤として広く知られているのは、5価の価数を有するバナジウム化合物である。この5価のバナジウム化合物は貴な酸化還元電位をもち、酸化作用を有するため、めっき表面に不動態皮膜を形成して腐食環境下でのアノード腐食反応の抑制剤として防錆効果を発揮すると考えられている。
例えば、特許文献1や特許文献2には、主にリン酸イオンとバナジン酸イオンを含有する塗料で処理を行う方法が、特許文献3には、有機樹脂とチオカルボニル基含有化合物、バナジウム化合物を含む塗膜を形成する方法が、特許文献4には、特殊変性フェノール樹脂とバナジウム化合物とジルコニウム、チタニウム等の金属化合物を含む表面処理剤により処理を行う方法が、それぞれ開示されている。また、特許文献5には、バナジウム化合物とジルコニウム、チタニウム化合物等を含む表面処理液が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平1−92279号公報
【特許文献2】特開平1−131281号公報
【特許文献3】特開2000−248380号公報
【特許文献4】特開2001−181860号公報
【特許文献5】特開2002−30460号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載の方法は、主に5価のバナジウム化合物の防錆効果を狙ったものであるため、大きな防食効果は得られない。また、特許文献3に記載の方法は、耐食性の向上効果を発揮しているのはチオカルボニル基を含む化合物であり、主成分は5価のバナジウム化合物であるため耐食性の向上効果は大きくない。また、特許文献4に記載の技術は、最も耐食性に効果のあるのは特殊変性フェノール樹脂であって、バナジウム、ジルコニウム等の金属塩の効果は小さく、このためクロメート処理皮膜に比べ耐食性は十分とは言えない。さらに、特許文献5に記載の技術は、5価のバナジウム化合物を一部還元した2〜4価のバナジウム化合物によって皮膜を形成したものであるが、この皮膜は腐食抑制効果の小さい2、3価のバナジウム化合物が混在したものであるため十分な耐食性が得られず、また、湿潤環境等にさらされた場合に皮膜の着色が顕著になり、外観劣化を生じる。また、上層に有機系皮膜を有していないため、アルカリ脱脂等の環境下では皮膜が損傷を受け耐食性が低下する。
【0006】
このように、いずれの従来技術も耐食性はある程度発現するものの、皮膜中のバナジウム化合物はクロム酸イオンに比べて酸化力が劣るため、クロメート皮膜と比較して耐食性が十分ではない。また、耐食性を確保するために付着量を大きくすると、5価のバナジウム化合物を含有した皮膜の場合、乾燥後に5価のバナジウム化合物に由来した黄色味を帯びた外観となってしまう問題がある。また、5価以外のバナジウム化合物を含有した処理液で亜鉛系めっき鋼板に処理を施した場合にも、皮膜が変色し、皮膜外観と耐食性を両立することはできなかった。
したがって本発明の目的は、このような従来技術の課題を解決し、皮膜中に6価クロム等のような環境規制物質を含有することなく優れた耐食性を有し、しかも導電性および皮膜外観にも優れた表面処理鋼板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、着色を起こすことなく優れた皮膜外観を有し、且つ耐食性にも優れた皮膜を形成することができる無機化合物について検討を行った。その結果、これまでに亜鉛やアルミニウムの防錆剤として知られている5価のバナジウム化合物ではなく、4価のバナジウム化合物を用いることにより優れた耐食性が得られ、しかも従来の課題であった着色による皮膜外観の問題を解消できること、さらに、この4価のバナジウム化合物に対してリン酸またはリン酸化合物、Si化合物を複合添加することにより特に優れた耐食性が得られること、また、その皮膜の上層に有機系皮膜を形成することによりアルカリ脱脂後の優れた耐食性が得られることを見出した。
【0008】
本発明はこのような知見に基づきなされたもので、その特徴は以下のとおりである。
[1] 亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、4価の価数を有するバナジウム化合物からなる若しくはこれを主成分とする下層皮膜を有し、その上層に、皮膜厚が0.01〜5μmの有機系皮膜を有することを特徴とする耐食性、導電性および皮膜外観に優れた表面処理鋼板。
[2] 亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、4価の価数を有するバナジウム化合物とリン酸または/およびリン酸化合物とからなる若しくはこれらを主成分とする下層皮膜を有し、その上層に、皮膜厚が0.01〜5μmの有機系皮膜を有することを特徴とする耐食性、導電性および皮膜外観に優れた表面処理鋼板。
【0009】
[3] 亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、4価の価数を有するバナジウム化合物とSi化合物とからなる若しくはこれらを主成分とする下層皮膜を有し、その上層に、皮膜厚が0.01〜5μmの有機系皮膜を有することを特徴とする耐食性、導電性および皮膜外観に優れた表面処理鋼板。
[4] 上記[1]〜[3]のいずれかの表面処理鋼板において、下層皮膜が、さらに有機樹脂を含有し、且つ下層皮膜の皮膜厚が5μm未満であることを特徴とする耐食性、導電性および皮膜外観に優れた表面処理鋼板。
【0010】
[5] 上記[1]〜[4]のいずれかの表面処理鋼板において、下層皮膜中での4価の価数を有するバナジウム化合物の付着量がV換算で0.1〜200mg/mであることを特徴とする耐食性、導電性および皮膜外観に優れた表面処理鋼板。
[6] 上記[2]、[4]、[5]のいずれかの表面処理鋼板において、下層皮膜中でのリン酸または/およびリン酸化合物の付着量がP換算で1〜1000mg/mであることを特徴とする耐食性、導電性および皮膜外観に優れた表面処理鋼板。
[7] 上記[3]〜[5]のいずれかの表面処理鋼板において、下層皮膜中でのSi化合物の付着量がSi換算で1〜600mg/mであることを特徴とする耐食性、導電性および皮膜外観に優れた表面処理鋼板。
【発明の効果】
【0011】
本発明の表面処理鋼板は、皮膜中に6価クロム等を含有することなく優れた耐食性を示し、しかも、導電性および皮膜外観にも優れている。このため特に、めっき皮膜中のAl含有量が低く、耐食性が劣るZn−Al系めっき鋼板を下地鋼板とする表面処理鋼板として有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の詳細とその限定理由を説明する。
本発明の表面処理鋼板のベースとなる亜鉛系めっき鋼板としては、亜鉛めっき鋼板(電気亜鉛めっき鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板)の他に、例えば、20質量%以下のAl、20質量%以下のNi、10質量%以下のSi、15質量%以下のFe、10質量%以下のMg、20質量%以下のCr、2質量%以下のCo、40質量%以下のMnの中から選ばれる1種以上を含有し、残部がZnからなるめっき層を有する亜鉛系合金めっき鋼板が挙げられる。
【0013】
具体例としては、Zn−Ni合金めっき鋼板、Zn−Fe合金めっき鋼板、Zn−Cr合金めっき鋼板、Zn−Mn合金めっき鋼板、Zn−Co合金めっき鋼板、Zn−Co−Cr合金めっき鋼板、Zn−Cr−Ni合金めっき鋼板、Zn−Cr−Fe合金めっき鋼板、Zn−Al−Mg合金めっき鋼板(例えばZn−6%Al−3%Mg合金めっき鋼板、Zn−11%Al−3%Mg合金めっき鋼板)、Zn−Al合金めっき鋼板(例えば、Zn−5%Al合金めっき鋼板、Zn−55%Al合金めっき鋼板)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、本発明の表面処理鋼板のベースとなるアルミニウム系めっき鋼板としては、アルミニウムめっき鋼板、Al−Si合金めっき鋼板などが挙げられる。
また、以上挙げた各種めっき鋼板のめっき皮膜中に金属酸化物、ポリマーなどを分散させた複合めっき鋼板(例えば、Zn−SiO分散めっき鋼板)を用いることも可能である。さらには、同種または異種のものを二層以上めっきした複層めっき鋼板を用いることもできる。めっき鋼板は、電気めっき法(電解法)、溶融めっき法(溶融めっきした後に合金化処理する場合を含む)、気相法等のいずれのめっき方法で得られたものでもよい。
【0014】
また、上述しためっき皮膜と鋼板の間に予めNiなどの薄目付けのめっきを施してもよい。さらに、めっき皮膜の黒変(めっき表面の酸化現象の一種)を防止する目的で、めっき皮膜中に1〜5000ppm程度の濃度でNi、Co、Feの1種以上を含有させることができる。また、めっき皮膜表面に下層皮膜を形成した際に、皮膜欠陥やムラを生じさせにくくするために、予めめっき皮膜の表面にNi、Co、Feの1種以上を含むアルカリ性または酸性水溶液による表面調整処理を施し、これらの元素を析出させることも可能である。
【0015】
本発明の表面処理鋼板は、上記亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、4価の価数を有するバナジウム化合物からなる若しくはこれを主成分とする下層皮膜と、その上層の有機系皮膜とからなる表面処理皮膜を有する。この表面処理皮膜(下層皮膜および有機系皮膜)は6価クロムを含まない。
まず、上記下層皮膜について説明すると、下層皮膜を構成する4価のバナジウム化合物としては、バナジウムの酸化物、水酸化物、硫化物、硫酸物、炭酸物、ハロゲン化物、窒化物、フッ化物、炭化物、シアン化物(チオシアン化物)およびこれらの塩などが挙げられる。このようにバナジウムの供給源は特別に制約はなく、これらのうち1種を単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。また、4価のバナジウム化合物としては、特に耐食性および耐黒変性の観点から、5価のバナジウム化合物を予め還元剤を用いて4価に還元したものを用いることが好ましい。この場合、用いる還元剤は無機系、有機系のいずれでもよいが、有機系がより好ましい。
【0016】
下層皮膜中でのバナジウム化合物の付着量は、V換算で0.1〜200mg/mとするのが好ましい。バナジウム化合物の付着量(V換算)が0.1mg/m未満では耐食性の向上効果が十分でなく、一方、200mg/mを超えると経済的に不利であるばかりでなく、皮膜の着色、黒変の問題が生じる。このような観点から、バナジウム化合物のより好ましい付着量(V換算)は0.5〜150mg/mであり、特に好ましくは1〜100mg/mである。
【0017】
本発明において、4価のバナジウム化合物からなる若しくはこれを主成分とする下層皮膜とその上層の有機系皮膜を形成することにより、優れた耐食性が得られる理由は必ずしも明らかではないが、以下のような機構によるものであると推定される。
バナジウム化合物の中で一般的な5価のバナジウム化合物は、その酸化作用のためにバナジウム化合物自身は還元され、酸化物や水酸化物等としての皮膜がめっき層の表面に形成される。そして、形成される皮膜は、皮膜形成時における局部的なpHの上昇度の違い(バナジウム化合物還元時の水素イオン消費による局部的なpH上昇度の違い)によって2、3、4価の化合物が混在したものになると考えられる。すなわち、pHによって安定に存在する還元物の形態が異なり、2、3、4価のバナジウム化合物が混在した皮膜が形成される。しかしながら、このようにして形成された2、3、4価のバナジウム化合物が混在する皮膜の中には、腐食を抑制する十分なバリア効果を発揮できないものも存在し、その部分が腐食の起点となってしまう。一方、本発明で用いる4価のバナジウム化合物は5価のバナジウム化合物とは異なり酸化作用がないため、2、3価のバナジウム化合物は形成されにくく、皮膜のほとんどが4価のバナジウム化合物で形成される。この4価のバナジウム化合物が十分なバリア効果をもつ理由は、4価のバナジル(IV)イオン:VOやその錯イオン(例えば、[VO(SO2−)が、他に比べ、めっき表面に緻密な皮膜を形成するためであると推測される。そして、その上層に有機系皮膜を形成させることにより、アルカリ脱脂などの環境下でもバナジウムイオンの溶出が抑制され、耐食性を維持することができる。
【0018】
また、本発明の表面処理鋼板は、下層皮膜の4価のバナジウム化合物に対してリン酸または/およびリン酸化合物を複合添加することができ、これにより耐食性を飛躍的に向上させることができる。すなわち、この下層皮膜は、4価の価数を有するバナジウム化合物とリン酸または/およびリン酸化合物とからなる若しくはこれらを主成分とするものとなる。
本発明において用いられるリン酸化合物とは可溶性の化合物である。リン酸、リン酸化合物としては、例えば、リン酸、第一リン酸塩、第二リン酸塩、第三リン酸塩、ピロリン酸、ピロリン酸塩、トリポリリン酸、トリポリリン酸塩などの縮合リン酸塩、亜リン酸、亜リン酸塩、次亜リン酸、次亜リン酸塩等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
下層皮膜中でのリン酸または/およびリン酸化合物の付着量(合計量)は、P換算で1〜1000mg/mとするのが好ましい。リン酸または/およびリン酸化合物の付着量(P換算)が1mg/m未満では耐食性の向上効果が十分ではなく、一方、1000mg/mを超えると耐水性が低下する。このような観点から、リン酸または/およびリン酸化合物のより好ましい付着量(P換算)は5〜750mg/mであり、特に好ましくは10〜500mg/mである。
【0019】
リン酸または/およびリン酸化合物を4価のバナジウム化合物と複合添加することによって、飛躍的に耐食性を高められる理由は必ずしも明らかではないが、以下のような機構によるものであると推定される。
すなわち、4価のバナジウム化合物とリン酸または/およびリン酸化合物を複合添加した下層皮膜を形成することにより、めっき鋼板の表面状態に関りなく良好な耐食性が得られることから、リン酸または/およびリン酸化合物を下層皮膜形成用の処理液に配合することにより、処理液とめっき金属との界面反応、つまりめっき層表面のエッチング反応が増加するものと考えられる。そして、このエッチング反応によって活性化されためっき層の表面に、バナジウムおよびリンを含有した界面反応層が形成され、めっき金属と強固に密着した皮膜が形成される結果、湿潤環境下においても防錆成分が溶出しにくいバリア効果を維持でき、特に優れた耐食性を発揮できるものと考えられる。
【0020】
さらに、本発明の表面処理鋼板は、下層皮膜の4価のバナジウム化合物に対してSi化合物を複合添加することができ、これによっても耐食性を大きく向上させることができる。すなわち、この下層皮膜は、4価の価数を有するバナジウム化合物とSi化合物とからなる若しくはこれらを主成分とするものとなる。
上記Si化合物としては、微粒子シリカ(コロイダルシリカ、乾式シリカ等)やシランカップリング剤等が挙げられる。
コロイダルシリカとしては、例えば、日産化学(株)製のスノーテックスO、C、N、S、20、OS、OXS等を用いることができる。乾式シリカとしては、例えば、日本アエロジル(株)製のAEROSIL50、130、200、300、380等を用いることができる。また、カルシウムをその表面に結合させたカルシウムイオン交換シリカを用いることができ、このカルシウムイオン交換シリカとしては、例えば、W.R.Grace&Co.製のSHIELDEX C303、SHIELDEX AC3、富士シリシア化学(株)製のSHIELDEX SY710等を挙げることができる。
【0021】
シランカップリング剤としては、ビニルメトキシシラン、ビニルエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメエキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−(ビニルベンジルアミン)−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0022】
以上のSi化合物は、1種を単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
下層皮膜中でのSi化合物の付着量は、Si換算で1〜600mg/mとすることが好ましい。Si化合物の付着量(Si換算)が1mg/mでは耐食性の向上効果が十分でなく、一方、600mg/mを超えると、飽和したSi化合物が逆に耐食性を悪化させてしまう。このような観点から、Si化合物のより好ましい付着量(Si換算)は30〜500mg/mであり、特に好ましくは50〜400mg/mである。
【0023】
Si化合物を4価のバナジウム化合物と複合添加することによって、耐食性が高められる理由は必ずしも明らかではないが、腐食環境下において、Si化合物が緻密で安定な亜鉛の腐食生成物の生成に寄与し、この腐食生成物層がめっき層表面に形成されることによって、腐食の促進が抑制されるものと考えられる。なお、Si化合物が微粒子シリカの場合、耐食性の観点からは緻密な腐食生成物を形成しやすい平均粒子径がなるべく小さいシリカが望ましく、めっき成分として亜鉛を多く含有するめっき鋼板ほどシリカの防食効果が大きい。さらに、Si化合物の添加は、湿潤環境下でのバナジウム化合物の溶出を抑制するため、皮膜の着色を起こさせない効果もある。
【0024】
以上述べたような下層皮膜を形成し、その上層に有機系皮膜を形成することにより、耐食性、導電性および皮膜外観に優れた表面処理鋼板を得ることができるが、本発明ではさらに、下層皮膜中に有機樹脂を配合することができ、これにより耐食性をさらに向上させることができる。
下層皮膜中に配合される有機樹脂の種類に特別な制限はないが、後述する上層皮膜(有機系皮膜)に関して例示した有機樹脂および硬化剤を用いることができ、また、必要に応じて、同じく上層皮膜(有機系皮膜)に関して例示した防錆添加剤、固形潤滑剤等を配合することが、耐食性や加工性等の向上の観点から望ましい。
有機樹脂を配合する場合の下層皮膜は、バナジウム化合物の付着量(V換算)、リン酸または/およびリン酸化合物の付着量(P換算)およびSi化合物の付着量を上述した範囲とした上で、皮膜厚を5μm未満とすることが望ましい。皮膜厚が5μm以上では導電性が低下し易くなるからであり、このような観点からより好ましい皮膜厚は3μm以下、さらに好ましくは2μm以下である。
【0025】
次に、下層皮膜の上層に形成される有機系皮膜について説明する。
この有機系皮膜を構成する有機樹脂に特別な制限はなく、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコン樹脂、アクリル−エチレン共重合体、アクリル−スチレン共重合体、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、エチレン樹脂、フッ素樹脂等の中から選ばれる1種以上を用いることができる。また、特に耐食性の観点からは、OH基および/またはCOOH基を有する有機高分子樹脂を用いることが好ましい。
このOH基および/またはCOOH基を有する有機高分子樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリヒドロキシポリエーテル樹脂、アクリル系共重合体樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体樹脂、アルキド樹脂、ポリブタジエン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミン樹脂、ポリフェニレン樹脂類およびこれらの樹脂の2種以上の混合物もしくは付加重合物等が挙げられる。
【0026】
前記ポリヒドロキシポリエーテル樹脂は、単核型若しくは2核型の2価フェノールまたは単核型と2核型との混合2価フェノールを、アルカリ触媒の存在下にほぼ等モル量のエピハロヒドリンと重縮合させて得られる重合体である。単核型2価フェノールの代表例としてはレゾルシン、ハイドロキノン、カテコールが挙げられ、2核型フェノールの代表例としてはビスフェノールAが挙げられ、これらは1種を単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0027】
前記エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ノボラック等をグリシジルエーテル化したエポキシ樹脂、ビスフェノールAにプロピレンオキサイド、エチレンオキサイドまたはポリアルキレングリコールを付加し、グリシジルエーテル化したエポキシ樹脂、さらには脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、ポリエーテル系エポキシ樹脂等を用いることができる。これらエポキシ樹脂は、特に低温での硬化を必要とする場合には、数平均分子量1500以上のものが望ましい。なお、上記エポキシ樹脂は単独または異なる種類のものを2種以上混合して使用することもできる。また、変性エポキシ樹脂とすることも可能であり、この変性エポキシ樹脂としては、上記エポキシ樹脂中のエポキシ基またはビドロキシル基に各種変性剤を反応させた樹脂が挙げられる。例えば、乾性油脂肪酸中のカルボキシル基を反応させたエポキシエステル樹脂、アクリル酸、メタクリル酸等で変性したエポキシアクリレート樹脂、イソシアネート化合物を反応させたウレタン変性エポキシ樹脂、エポキシ樹脂にイソシアネート化合物を反応させたウレタン変性エポキシ樹脂にアルカノールアミンを付加したアミン付加ウレタン変性エポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0028】
前記ウレタン樹脂としては、例えば、油変性ポリウレタン樹脂、アルキド系ポリウレタン樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ウレタン樹脂、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂等を挙げることができる。
前記アクリル樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸およびその共重合体、ポリアクリル酸エステルおよびその共重合体、ポリメタクリル酸およびその共重合体、ポリメタクリル酸エステルおよびその共重合体、ウレタン−アクリル酸共重合体(またはウレタン変性アクリル樹脂)、スチレン−アクリル酸共重合体等が挙げられ、さらにこれらの樹脂を他のアルキド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等によって変性させた樹脂を用いてもよい。
【0029】
前記アクリルシリコン樹脂としては、例えば、主剤としてアクリル系共重合体の側鎖または末端に加水分解性アルコキシシリル基を含み、これに硬化剤を添加したもの等が挙げられる。これらのアクリルシリコン樹脂を用いた場合、優れた耐候性が期待できる。
前記アルキド樹脂としては、例えば、油変性アルキド樹脂、ロジン変性アルキド樹脂、フェノール変性アルキド樹脂、スチレン化アルキド樹脂、シリコン変性アルキド樹脂、アクリル変性アルキド樹脂、オイルフリーアルキド樹脂、高分子量オイルフリーアルキド樹脂等を挙げることができる。
【0030】
前記エチレン樹脂としては、例えば、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、カルボキシル変性ポリオレフィン樹脂等のエチレン系共重合体、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体、エチレン系アイオノマー等が挙げられ、さらに、これらの樹脂を他のアルキド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等によって変性させた樹脂を用いてもよい。
前記フッ素樹脂としては、フルオロオレフィン系共重合体があり、これには例えば、モノマーとしてアルキルビニルエーテル、シンクロアルキルビニルエーテル、カルボン酸変性ビニルエステル、ヒドロキシアルキルアリルエーテル、テトラフルオロプロピルビニルエーテル等と、フッ素モノマー(フルオロオレフィン)とを共重合させた共重合体がある。これらフッ素樹脂を用いた場合には、優れた耐候性と優れた疎水性が期待できる。
【0031】
また、樹脂の乾燥温度の低温化を狙いとして、樹脂粒子のコア部分とシェル部分とで異なる樹脂種類、または異なるガラス転移温度の樹脂からなるコア・シェル型水分散性樹脂を用いることも可能である。また、自己架橋性を有する水分散性樹脂を用い、例えば、樹脂粒子にアルコキシシラン基を付与することによって、樹脂の加熱乾燥時にアルコキシシランの加水分解によるシラノール基の生成と樹脂粒子間のシラノール基の脱水縮合反応を利用した粒子間架橋を利用することも可能である。また、有機樹脂を、シランカップリング剤を介してシリカと複合化させた有機複合シリケートも好適である。
上記の有機樹脂は1種を単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
さらに、耐食性や加工性の向上を狙いとして、特に熱硬化性樹脂を用いることが望ましいが、この場合、尿素樹脂(ブチル化尿素樹脂等)、メラミン樹脂(ブチル化メラミン樹脂等)、ブチル化尿素・メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等のアミノ樹脂、ブロックイソシアネート、オキサゾリン化合物、フェノール樹脂等の硬化剤を配合することができる。
【0032】
有機系皮膜中には、必要に応じて、皮膜の加工性を向上させる目的で固形潤滑剤を配合することができる。この固形潤滑剤の種類に特別な制限はないが、例えば、ポリオール化合物と脂肪酸とのエステル化物である脂肪酸エステルワックス、シリコン系ワックス、フッ素系ワックス、ポリエチレン等のポリオレフィンワックス、ラノリン系ワックス、モンタンワックス、マイクロクリスタリンワックス、カルナウバろう等を挙げることができる。これらの固形潤滑剤は、1種を単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
有機系皮膜中での固形潤滑剤の配合量は、樹脂100質量部(固形分)に対して1〜50質量部(固形分)、好ましくは3〜30質量部(固形分)とすることが適当である。固形潤滑剤の配合量が1質量部未満では潤滑効果が乏しく、一方、配合量が50質量部を超えると塗装性が低下するので好ましくない。
【0033】
また、有機系皮膜中には、必要に応じて、耐食性を向上させるために防錆添加剤を配合することができる。この防錆添加剤としては、酸化物微粒子(例えば、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化セリウム、酸化アンチモン等)、リン酸塩(例えば、リン酸亜鉛、リン酸二水素アルミニウム、亜リン酸亜鉛等)、モリブデン酸塩、リンモリブデン酸塩(リンモリブデン酸アルミニウム等)、バナジン酸塩、有機リン酸およびその塩(例えば、フィチン酸、フィチン酸塩、ホスホン酸、ホスホン酸塩およびこれらの金属塩、アルカリ金属塩)、有機インヒビター(例えば、ヒドラジン誘導体、チオール化合物、ジチオカルバミン酸塩等)、有機化合物(例えば、ポリエチレングリコール等)等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0034】
さらに、有機系皮膜中にはその他の添加剤として、有機着色顔料(例えば、縮合多環系有機顔料、フタロシアニン系有機顔料等)、着色染料(例えば、有機溶剤アゾ系染料、水溶性アゾ系金属染料等)、無機顔料(例えば、酸化チタン等)、キレート剤(例えば、チオール等)、導電性顔料(例えば、亜鉛、アルミニウム、ニッケル等の金属粉末、リン化鉄、アンチモンドープ型酸化錫等)、メラミン・シアヌル酸付加物等を添加することもできる。
有機系皮膜の皮膜厚は0.01〜5μmとする。皮膜厚が0.01μm未満では耐食性が十分でなく、一方、5μmを超えると導電性が劣る。また、下層皮膜に有機樹脂を配合する場合には、下層皮膜と有機系皮膜の合計皮膜厚は、同様の導電性の観点から5μm以下にすることが好ましい。
【0035】
本発明の表面処理鋼板は、上述した下層皮膜の構成成分を含む処理液で亜鉛系めっき鋼板の表面を処理(処理液を塗布)した後、加熱乾燥させ、次いでその上層に、上述した有機系皮膜の構成成分が配合された塗料組成物を塗布し、加熱乾燥させることにより製造される。
なお、めっき鋼板の表面は、上記処理液を塗布する前に必要に応じてアルカリ脱脂処理し、さらに密着性、耐食性を向上させるために表面調整処理などの前処理を施すことができる。
下層皮膜用の処理液をめっき鋼板表面にコーティングする方法としては、塗布方式、浸漬方式、スプレー方式のいずれでもよく、塗布方式ではロールコーター(3ロール方式、2ロール方式等)、スクイズコーター、ダイコーター等のいずれの塗布手段を用いてもよい。また、スクイズコーター等による塗布処理、浸漬処理、スプレー処理の後に、エアナイフ法やロール絞り法により塗布量の調整、外観の均一化、膜厚の均一化を行うことも可能である。
【0036】
上記のように処理液をコーティングした後、通常、水洗することなく加熱乾燥を行うが、本発明で使用する処理液は下地めっき鋼板との反応により難溶性の生成物を形成するため、処理後に水洗を行ってもよい。コーティングした処理液を加熱乾燥する方法は任意であり、例えば、ドライヤー、熱風炉、高周波誘導加熱炉、赤外線炉等の手段を用いることができるが、耐食性の観点からは高周波誘導加熱炉が特に好ましい。この加熱乾燥処理は到達板温で50〜300℃、望ましくは80〜200℃、さらに望ましくは80〜160℃の範囲で行うことが望ましい。加熱乾燥温度が50℃未満では皮膜中に溶媒が多量に残り、耐食性が不十分となりやすい。一方、加熱乾燥温度が300℃を超えると非経済的であるばかりでなく、皮膜に欠陥が生じやすくなり、耐食性が低下する。
【0037】
以上のようにして亜鉛系めっき鋼板の表面に下層皮膜を形成した後、その上層に有機系皮膜形成用の塗料組成物を塗布する。塗料組成物を塗布する方法としては、塗布法、浸漬法、スプレー法等の任意の方法を採用できる。塗布法としては、ロールコーター(3ロール方式、2ロール方式等)、スクイズコーター、ダイコーター等のいずれの方法を用いてもよい。また、スクイズコーター等による塗布処理、浸漬処理またはスプレー処理の後に、エアナイフ法やロール絞り法により塗布量の調整、外観の均一化、膜厚の均一化を行うことも可能である。
塗料組成物の塗布後、通常は水洗することなく、加熱乾燥を行うが、塗料組成物の塗布後に水洗工程を実施しても構わない。加熱乾燥処理には、ドライヤー、熱風炉、高周波誘導加熱炉、赤外線炉等を用いることができるが、耐食性の観点からは高周波誘導加熱炉が特に好ましい。加熱処理は、到達板温で50〜350℃、好ましくは80℃〜250℃の範囲で行うことが望ましい。加熱温度が50℃未満では皮膜中の溶媒が多量に残り、耐食性が不十分となりやすい。また、加熱温度が350℃を超えると非経済的であるばかりでなく、皮膜に欠陥が生じて耐食性が低下するおそれがある。
【実施例】
【0038】
下層皮膜形成用として、表1に示すバナジウム化合物、表2に示す可溶性リン酸化合物、表3に示すSi化合物、表4に示す有機樹脂を適宜配合した処理液(水溶液)を調製した。また、上層の有機系皮膜形成用として、表5に示す有機樹脂を配合した塗料組成物を調製した。
処理原板としては表6に示す各種めっき鋼板を用い、めっき鋼板の表面をアルカリ脱脂処理、水洗乾燥した後、上記下層皮膜形成用の処理液で処理(塗布)し、各種温度で乾燥させた。次いで、その上部に上記有機系皮膜形成用の塗料組成物を塗布し、各種温度で乾燥させ、発明例および比較例の表面処理鋼板を得た。なお、下層皮膜および有機系皮膜の膜厚は、皮膜組成物の固形分(加熱残分)や処理時間等により調整した。
得られた表面処理鋼板の品質性能(皮膜外観、耐食性、導電性)を評価した結果を、試験条件、皮膜構成とともに表7〜表16に示す。なお、各品質性能の測定及び評価方法は、以下の通りである。
【0039】
(1)湿潤試験後の皮膜外観
各サンプルについて、80℃×98%RHの環境下で1日放置した後、皮膜外観を目視で評価した。その評価基準は以下のとおりである。
◎:着色および変色なし(湿潤試験前と同じ)
○:斜めからみて確認できる程度のごくうすい着色
△:面積率20%未満の明らかな着色および変色
×:面積率20%以上の明らかな着色および変色
(2)耐白錆性
各サンプルについて、塩水噴霧試験(JIS−Z−2371)を施し、100時間後、150時間後および200時間後の白錆発生面積率で評価した。その評価基準は以下のとおりである。
◎ :白錆発生面積率5%未満
○ :白錆発生面積率5%以上、10%未満
○−:白錆発生面積率10%以上、25%未満
△ :白錆発生面積率25%以上、50%未満
× :白錆発生面積率50%以上
(3)導電性
JIS C 2550に従い層間絶縁抵抗値を測定し、下記基準により評価した。
○:3Ω・cm/枚 未満
△:3〜5Ω・cm/枚
×:5Ω・cm/枚 超え
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
【表3】

【0043】
【表4】

【0044】
【表5】

【0045】
【表6】

【0046】
【表7】

【0047】
【表8】

【0048】
【表9】

【0049】
【表10】

【0050】
【表11】

【0051】
【表12】

【0052】
【表13】

【0053】
【表14】

【0054】
【表15】

【0055】
【表16】

【0056】
表7〜表16によれば、本発明例は湿潤試験後の皮膜外観、耐白錆性(耐食性)、導電性のいずれもが優れており、特に皮膜の付着量を限定した本発明例では特に優れた耐白錆性(耐食性)が得られていることが判る。一方、比較例では湿潤試験後の皮膜外観、耐白錆性(耐食性)、導電性のいずれか一つ以上が本発明例に比べ劣っている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、4価の価数を有するバナジウム化合物からなる若しくはこれを主成分とする下層皮膜を有し、その上層に、皮膜厚が0.01〜5μmの有機系皮膜を有することを特徴とする耐食性、導電性および皮膜外観に優れた表面処理鋼板。
【請求項2】
亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、4価の価数を有するバナジウム化合物とリン酸または/およびリン酸化合物とからなる若しくはこれらを主成分とする下層皮膜を有し、その上層に、皮膜厚が0.01〜5μmの有機系皮膜を有することを特徴とする耐食性、導電性および皮膜外観に優れた表面処理鋼板。
【請求項3】
亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、4価の価数を有するバナジウム化合物とSi化合物とからなる若しくはこれらを主成分とする下層皮膜を有し、その上層に、皮膜厚が0.01〜5μmの有機系皮膜を有することを特徴とする耐食性、導電性および皮膜外観に優れた表面処理鋼板。
【請求項4】
下層皮膜が、さらに有機樹脂を含有し、且つ下層皮膜の皮膜厚が5μm未満であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の耐食性、導電性および皮膜外観に優れた表面処理鋼板。
【請求項5】
下層皮膜中での4価の価数を有するバナジウム化合物の付着量がV換算で0.1〜200mg/mであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の耐食性、導電性および皮膜外観に優れた表面処理鋼板。
【請求項6】
下層皮膜中でのリン酸または/およびリン酸化合物の付着量がP換算で1〜1000mg/mであることを特徴とする請求項2、4、5のいずれかに記載の耐食性、導電性および皮膜外観に優れた表面処理鋼板。
【請求項7】
下層皮膜中でのSi化合物の付着量がSi換算で1〜600mg/mであることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の耐食性、導電性および皮膜外観に優れた表面処理鋼板。

【公開番号】特開2006−2171(P2006−2171A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−176580(P2004−176580)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】