説明

耐食性、導電性および耐アブレージョン性に優れた表面処理鋼板

【課題】優れた耐食性と耐アブレージョン性が得られるクロムフリー表面処理鋼板を提供する。
【解決手段】亜鉛系めっき鋼板などの表面に、特定のチタン含有水性液と、有機リン酸化合物と、バナジン酸化合物と、フッ化ジルコニウム化合物と、炭酸ジルコニウム化合物を含有する表面処理組成物による表面処理皮膜を有し、その上層に、樹脂中に一級水酸基を有するエポキシ樹脂に、水酸基と架橋する基を有する硬化剤および固形潤滑剤が配合された塗料組成物による上層皮膜を有する。皮膜中に6価クロムなどの公害規制物質を含有することなく優れた耐食性を有するとともに、使用する潤滑剤の種類に関わりなく優れた耐アブレージョン性を有し、また、導電性にも優れている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、家電、建材などの用途に最適な表面処理鋼板であって、特に、皮膜中に6価クロムなどの公害規制物質を全く含まない環境調和型表面処理鋼板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用鋼板、家電製品用鋼板、建材用鋼板には、亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、耐食性(耐白錆性、耐赤錆性)を向上させる目的で、6価クロムを主要成分とした処理液によるクロメート処理が施された鋼板が幅広く用いられてきた。しかし、クロメート処理は公害規制物質である6価クロムを使用するため、最近ではその使用を規制する動きが広まっており、一方において、クロメート処理に代わる、6価クロムを全く用いない表面処理技術の開発が盛んに行われている。このうち、有機系化合物や有機樹脂を利用した技術が幾つか提案されており、例えば、以下のようなものを挙げることができる。
【0003】
(1)エポキシ樹脂に活性水素を有するヒドラジン誘導体を反応させた水性樹脂組成物とシランカップリング剤とリン酸などを含む表面処理組成物により皮膜を形成する技術(例えば、特許文献1など)
(2)下層として酸化物微粒子とリン酸と特定の金属を含有する複合酸化物皮膜を形成し、その上層に、エポキシ樹脂などの有機樹脂に活性水素を有するヒドラジン誘導体を反応させた樹脂組成物と特定の防錆添加剤を含む塗料組成物により有機皮膜を形成する技術(例えば、特許文献2など)
(3)チタン化合物、有機リン酸化合物、水溶性樹脂、バナジン酸塩、ジルコニウム塩からなる下層皮膜を形成し、その上層に耐指紋性皮膜を形成する技術(例えば、特許文献3など)
また、有機皮膜を構成するエポキシ樹脂の硬化性を高めるために、以下のような技術が提案されている。
(4)エポキシ樹脂の末端に塩基性窒素原子と一級水酸基を導入する技術(例えば、特許文献4など)
【0004】
また、特に最近の家電製品の分野においては、省工程・省コストを目的として無塗装のまま鋼板を使用するケースが増えている。このような使用形態において、表面外観に関する様々な要求性能を満足させるため、鋼板上に特殊樹脂をベースとする有機複合皮膜を形成した塗装金属板が開発されている。このような有機複合皮膜を形成した表面処理鋼板は、製品運搬時にダンボールなどとの擦れによりアブレージョンが発生する場合があり、この擦り疵はその部分が黒く変色して見える欠陥となり、表面処理鋼板の商品価値を著しく低下させる。
【0005】
そこで、耐アブレージョン性を向上させるために、以下に示すような技術が提案されている。
(5)皮膜焼付けと同時に潤滑剤を溶融させ、皮膜表面を潤滑剤で保護する技術(例えば、特許文献5など)
(6)皮膜表面上に潤滑剤を突出させ、潤滑剤をスペーサーとして用いる技術(例えば、特許文献6,7など)
【特許文献1】特開2003-105554号公報
【特許文献2】特開2002−53979号公報
【特許文献3】特開2006−22370号公報
【特許文献4】特開平7-118870号公報
【特許文献5】特開2001−288584号公報
【特許文献6】特開2002−212749号公報
【特許文献7】特開平8−207199号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの従来技術には以下に述べるような問題点がある。
まず、上記(1)、(2)の技術は、エポキシ樹脂にヒドラジン誘導体を付与することによって緻密な有機高分子皮膜(バリア層)を形成し、所望の耐食性を付与している。さらには、ポリイソシアネートなどの硬化剤を用いて架橋することで、バリア性を強化している。しかしながら、硬化剤と架橋するエポキシ樹脂の水酸基が二級水酸基であるため、樹脂骨格との立体障害により十分な架橋密度は得られず、耐食性が不十分である。
【0007】
一方、上記(3)の技術は、下層皮膜によりある程度の耐食性は付与できるが、上層の耐指紋性皮膜の耐食性が低いため、全体として耐食性が不十分である。
また、上記(4)の技術は、末端のエポキシ基をアルカノールアミンで変性することで、塩基性窒素原子と一級水酸基を導入し、エポキシ樹脂の密着性、硬化性を向上させている。しかしながら、このような技術で形成される有機皮膜は、クロムフリー皮膜においてアルカノールアミンの塩基性窒素原子による密着性は十分に発揮されず、耐食性が不十分である。
また、上記(5)、(6)の技術は、特定の潤滑剤により耐アブレージョン性を付与しているため、適用可能な潤滑剤が限定され、加工時に要求される潤滑特性の設計が困難である。
【0008】
したがって本発明の目的は、このような従来技術の課題を解決し、皮膜中に6価クロムなどの公害規制物質を含有することなく優れた耐食性が得られるとともに、適用する潤滑剤の種類に関わりなく優れた耐アブレージョン性が得られ、且つ導電性にも優れた表面処理鋼板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明者らが鋭意検討を行った結果、亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、特定のチタン系水性液に対して有機リン酸化合物、バナジン酸化合物、フッ化ジルコニウム化合物および炭酸ジルコニウム化合物を所定の割合で複合添加した表面処理組成物による表面処理皮膜を形成し、さらにその上層に、樹脂中に一級水酸基を有するエポキシ樹脂に、水酸基と架橋する基を有する硬化剤と固形潤滑剤が配合された塗料組成物による上層皮膜を形成することにより、非常に優れた耐食性と耐アブレージョン性が得られることを見出した。
【0010】
本発明はこのような知見に基づきなされたもので、下記を要旨とするものである。
[1]亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、加水分解性チタン化合物、加水分解性チタン化合物の低縮合物、水酸化チタン、水酸化チタンの低縮合物の中から選ばれる少なくとも1種のチタン化合物を過酸化水素水と混合して得られるチタン含有水性液(A)の固形分100質量部に対して、有機リン酸化合物(B)を1〜400質量部、バナジン酸化合物(C)を1〜400質量部、フッ化ジルコニウム化合物(D)を1〜400質量部、炭酸ジルコニウム化合物(E)を1〜400質量部含有する表面処理組成物(X)を塗布し、乾燥させることにより形成された膜厚が0.01〜1.0μmの表面処理皮膜を有し、その上層に、樹脂中に一級水酸基を有するエポキシ樹脂(G)と、水酸基と架橋する基を有する硬化剤(H)と、固形潤滑剤(I)を含有し、エポキシ樹脂(G)と硬化剤(H)の固形分質量比(G)/(H)が95/5〜55/45、固形潤滑剤(I)の含有量がエポキシ樹脂(G)と硬化剤(H)の固形分の合計100質量部に対して固形分の割合で1〜80質量部である塗料組成物(Y)を塗布し、乾燥することにより形成された膜厚が0.1〜5μmの上層皮膜を有することを特徴とする耐食性、導電性および耐アブレージョン性に優れた表面処理鋼板。
【0011】
[2]上記[1]の表面処理鋼板において、表面処理組成物(X)が、さらに、水溶性有機樹脂または/および水分散性有機樹脂(F)をチタン含有水性液(A)の固形分100質量部に対して2000質量部以下含有することを特徴とする耐食性、導電性および耐アブレージョン性に優れた表面処理鋼板。
[3]上記[1]または[2]の表面処理鋼板において、エポキシ樹脂(G)は、エポキシ基が活性水素含有化合物で変性されたエポキシ樹脂であり、且つ前記活性水素含有化合物の一部または全部が活性水素を有するヒドラジン誘導体であることを特徴とする耐食性、導電性および耐アブレージョン性に優れた表面処理鋼板。
【0012】
[4]上記[1]〜[3]のいずれかの表面処理鋼板において、塗料組成物(Y)が、さらに、下記(a)〜(e)の中から選ばれる1種以上の防錆添加成分(J)を、エポキシ樹脂(G)と硬化剤(H)の固形分の合計100質量部に対して固形分の割合で1〜100質量部含有することを特徴とする耐食性、導電性および耐アブレージョン性に優れた表面処理鋼板。
(a)リン酸塩
(b)Caイオン交換シリカ
(c)モリブデン酸塩
(d)酸化ケイ素
(e)トリアゾール類、チオール類、チアジアゾール類、チアゾール類、チウラム類の中から選ばれる1種以上の有機化合物
【発明の効果】
【0013】
本発明の表面処理鋼板は、皮膜中に6価クロムなどの公害規制物質を含有することなく優れた耐食性が得られるとともに、適用する潤滑剤の種類に関わりなく優れた耐アブレージョン性が得られ、また、導電性にも優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の詳細とその限定理由を説明する。
本発明の表面処理鋼板のベースとなる亜鉛系めっき鋼板としては、亜鉛めっき鋼板、Zn−Ni合金めっき鋼板、Zn−Fe合金めっき鋼板(電気めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板)、Zn−Cr合金めっき鋼板、Zn−Mn合金めっき鋼板、Zn−Co合金めっき鋼板、Zn−Co−Cr合金めっき鋼板、Zn−Cr−Ni合金めっき鋼板、Zn−Cr−Fe合金めっき鋼板、Zn−Al合金めっき鋼板(例えば、Zn−5%Al合金めっき鋼板、Zn−55%Al合金めっき鋼板)、Zn−Mg合金めっき鋼板、Zn−Al−Mg合金めっき鋼板(例えば、Zn−6%Al−3%Mg合金めっき鋼板、Zn−11%Al−3%Mg合金めっき鋼板)、さらには、これらのめっき鋼板のめっき皮膜中に金属酸化物、ポリマーなどを分散した亜鉛系複合めっき鋼板(例えば、Zn−SiO2分散めっき鋼板)などを用いることができる。
【0015】
また、上記のようなめっきのうち、同種または異種のものを2層以上めっきした複層めっき鋼板を用いることもできる。
また、本発明の表面処理鋼板のベースとなるアルミニウム系めっき鋼板としては、アルミニウムめっき鋼板、Al−Si合金めっき鋼板などを用いることができる。
また、めっき鋼板としては、鋼板面に予めNiなどの薄目付のめっきを施し、その上に上記のような各種めっきを施したものであってもよい。
めっき方法としては、電解法(水溶液中での電解または非水溶媒中での電解)、溶融法、気相法等、実施可能ないずれの方法を採用してもよい。
さらに、めっきの黒変を防止する目的で、めっき皮膜中にNi、Co、Feの1種以上の微量元素を1〜2000ppm程度析出させたり、或いはめっき皮膜表面にNi、Co、Feの1種以上を含むアルカリ性水溶液または酸性水溶液による表面調整処理を施し、これら元素を析出させるようにしてもよい。
【0016】
次に、上記亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、第一層皮膜として形成される表面処理皮膜およびこの皮膜形成用の表面処理組成物について説明する。
本発明の表面処理鋼板において、亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に形成される表面処理皮膜は、特定のチタン含有水性液(A)、有機リン酸化合物(B)、バナジン酸化合物(C)、フッ化ジルコニウム化合物(D)および炭酸ジルコニウム化合物(E)を必須成分として含有する表面処理組成物(X)を塗布し、乾燥させることにより形成されるものである。この表面処理皮膜はクロム(但し、不可避不純物としてのクロムを除く)を含まない。
このような表面処理皮膜を形成することによって優れた耐食性が得られる理由は必ずしも明確ではないが、特定のチタン系水性液に特定の金属塩を組合わせて複合添加した混合液が鋼板表面で乾燥する過程で、含有する金属イオンによる複合塩の形成と酸化チタン系の緻密な皮膜成分の析出により、腐食抑制能が高い皮膜が形成されるためであると考えられる。
【0017】
前記チタン含有水性液(A)は、加水分解性チタン化合物、加水分解性チタン化合物の低縮合物、水酸化チタン、水酸化チタンの低縮合物の中から選ばれる少なくとも1種のチタン化合物と過酸化水素水とを混合して得られるチタンを含む水性液である。
前記加水分解性チタン化合物は、チタンに直接結合する加水分解性基を有するチタン化合物であって、水、水蒸気などの水分と反応することにより水酸化チタンを生成するものである。また、加水分解性チタン化合物は、チタンに結合する基の全てが加水分解性基であるものでもよいし、チタンに結合する基の一部が加水分解性基であるものでもよい。
前記加水分解性基としては、上記したように水分と反応することにより水酸化チタンを生成させるものであれば特に制限はないが、例えば、低級アルコキシル基やチタンと塩を形成する基(例えば、塩素などのハロゲン原子、水素原子、硫酸イオンなど)などが挙げられる。
【0018】
加水分解性基として低級アルコキシル基を含有する加水分解性チタン化合物としては、特に、一般式Ti(OR)(式中、Rは同一若しくは異なる炭素数1〜5のアルキル基を示す)で示されるテトラアルコキシチタンが好ましい。炭素数1〜5のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。
加水分解性基として、チタンと塩を形成する基を有する加水分解性チタン化合物としては、塩化チタン、硫酸チタンなどが代表的なものとして挙げられる。
また、加水分解性チタン化合物の低縮合物は、上記した加水分解性チタン化合物どうしの低縮合物である。この低縮合物は、チタンに結合する基の全てが加水分解性基であるものでもよいし、チタンに結合する基の一部が加水分解性であるものでもよい。
加水分解性基がチタンと塩を形成する基である加水分解性チタン化合物(例えば、塩化チタン、硫酸チタンなど)については、その加水分解性チタン化合物の水溶液とアンモニアや苛性ソーダなどのアルカリ溶液との反応により得られるオルトチタン酸(水酸化チタンゲル)も低縮合物として使用できる。
【0019】
加水分解性チタン化合物の低縮合物及び水酸化チタンの低縮合物としては、縮合度が2〜30の化合物が使用可能であり、特に縮合度が2〜10の化合物を使用することが好ましい。縮合度が30を超えると、過酸化水素と混合した際に白色沈殿を生じ、安定なチタン含有水性液が得られない。
以上挙げた加水分解性チタン化合物、加水分解性チタン化合物の低縮合物、水酸化チタン、水酸化チタンの低縮合物は、1種または2種以上を使用できるが、そのなかでも、上述した一般式で示される加水分解性チタン化合物であるテトラアルコキシチタンが特に好ましい。
【0020】
チタン含有水性液(A)としては、上記したチタン化合物と過酸化水素水を混合することにより得られるチタンを含む水性液であれば、従来公知のものを特に制限なしに使用することができる。具体的には、下記のものを挙げることができる。
(i)含水酸化チタンのゲルまたはゾルに過酸化水素水を添加して得られるチタニルイオン過酸化水素錯体またはチタン酸(ペルオキソチタン水和物)水溶液(特開昭63−35419号公報、特開平1−224220号公報参照)。
【0021】
(ii)塩化チタンや硫酸チタンの水溶液と塩基性溶液から製造した水酸化チタンゲルに過酸化水素水を作用させ、合成することで得られるチタニア膜形成用液体(特開平9−71418号公報、特開平10−67516号公報参照)。
このチタニア膜形成用液体を得る場合、チタンと塩を形成する基を有する塩化チタンや硫酸チタンの水溶液とアンモニアや苛性ソーダなどのアルカリ溶液とを反応させることによりオルトチタン酸と呼ばれる水酸化チタンゲルを沈殿させる。次いで、水を用いたデカンテーションによって水酸化チタンゲルを分離し、良く水洗し、さらに過酸化水素水を加え、余分な過酸化水素を分解除去することにより、黄色透明粘性液体を得ることができる。
【0022】
沈殿した上記オルトチタン酸は、OHどうしの重合や水素結合によって高分子化したゲル状態にあり、そのままではチタンを含む水性液としては使用できない。このゲルに過酸化水素水を添加するとOHの一部が過酸化状態になり、ペルオキソチタン酸イオンとして溶解或いは高分子鎖が低分子に分断された一種のゾル状態になり、余分な過酸化水素は水と酸素になって分解し、無機膜形成用のチタンを含む水性液として使用できるようになる。
このゾルはチタン原子以外に酸素原子と水素原子しか含まないので、乾燥や焼成によって酸化チタンに変化する場合、水と酸素しか発生しないため、ゾルゲル法や硫酸塩などの熱分解に必要な炭素成分やハロゲン成分の除去が必要でなく、低温でも比較的密度の高い酸化チタン膜を形成することができる。
【0023】
(iii)塩化チタンや硫酸チタンの無機チタン化合物水溶液に過酸化水素を加えてぺルオキソチタン水和物を生成させた後に、塩基性物質を添加して得られた溶液を放置または加熱することによってペルオキソチタン水和物重合体の沈殿物を生成させ、次いで、少なくともチタン含有原料溶液に由来する水以外の溶解成分を除去した後に過酸化水素を作用させて得られるチタン酸化物形成用溶液(特開2000−247638号公報、特開2000−247639号公報参照)。
【0024】
チタン化合物として加水分解性チタン化合物および/またはその低縮合物(以下、説明の便宜上「加水分解性チタン化合物a」という)を用いるチタン含有水性液(A)は、加水分解性チタン化合物aを過酸化水素水と反応温度1〜70℃で10分間〜20時間程度反応させることにより得ることができる。
この加水分解性チタン化合物aを用いたチタン含有水性液(A)は、加水分解性チタン化合物aと過酸化水素水とを反応させることにより、加水分解性チタン化合物aが水で加水分解されて水酸基含有チタン化合物を生成し、次いで、この水酸基含有チタン化合物に過酸化水素が配位するものと考えられ、この加水分解反応及び過酸化水素による配位が同時近くに起こることにより得られたものであり、室温域での安定性が極めて高く、長期の保存に耐えるキレート液を生成する。従来の製法で用いられる水酸化チタンゲルは、Ti−O−Ti結合により部分的に三次元化しており、このゲルと過酸化水素水を反応させたチタン含有水性液(A)とは組成及び安定性が本質的に異なる。
【0025】
また、加水分解性チタン化合物aを用いたチタン含有水性液(A)を80℃以上で加熱処理またはオートクレーブ処理すると、結晶化した酸化チタンの超微粒子を含む酸化チタン分散液が得られる。前記加熱処理またはオートクレーブ処理が80℃未満では、酸化チタンの結晶化が十分に進まない。このようにして製造された酸化チタン分散液は、酸化チタン超微粒子の平均粒子径が10nm以下、好ましくは1〜6nm程度が望ましい。酸化チタン超微粒子の平均粒子径が10nmより大きくなると造膜性が低下する(塗布後乾燥して皮膜とした場合、膜厚1μm以上でワレを生じる)ので好ましくない。この酸化チタン分散液の外観は半透明状のものである。このような酸化チタン分散液も、チタン含有水性液(A)として使用することができる。
【0026】
加水分解性チタン化合物aを用いたチタン含有水性液(A)を含む表面処理組成物(X)を、めっき鋼板表面に塗布・乾燥(例えば、低温で加熱乾燥)することにより、それ自体で付着性に優れた緻密な酸化チタン含有皮膜(表面処理皮膜)を形成することができる。
表面処理組成物(X)を塗布した後の加熱温度としては、例えば200℃以下、特に150℃以下が好ましく、このような温度で加熱乾燥することにより、水酸基を若干含む非晶質(アモルファス)の酸化チタン含有皮膜が形成できる。
また、上記したような80℃以上の加熱処理またはオートクレーブ処理を経て得られた酸化チタン分散液をチタン含有水性液(A)として用いた場合、表面処理組成物(X)を塗布するだけで結晶性の酸化チタン含有皮膜が形成できるため、加熱処理できない材料のコーティング材として有用である。
【0027】
また、チタン含有水性液(A)としては、酸化チタンゾルの存在下で、加水分解性チタン化合物aと過酸化水素水とを反応させて得られるチタン含有水性液(A1)を使用することもできる。
前記酸化チタンゾルは、無定型チタニア微粒子または/およびアナタース型チタニア微粒子が水(必要に応じて、例えばアルコール系、アルコールエーテル系などの水性有機溶剤を添加してもよい)に分散したゾルである。この酸化チタンゾルとしては、従来公知のものを使用することができ、例えば、(i)硫酸チタンや硫酸チタニルなどの含チタン溶液を加水分解して得られる酸化チタン凝集物、(ii)チタンアルコキシドなどの有機チタン化合物を加水分解して得られる酸化チタン凝集物、(iii)四塩化チタンなどのハロゲン化チタン溶液を加水分解または中和して得られる酸化チタン凝集物、などの酸化チタン凝集物を水に分散した無定型チタニアゾル、或いは前記酸化チタン凝集物を焼成してアナタース型チタン微粒子とし、このものを水に分散したゾルを使用することができる。
【0028】
前記無定形チタニアの焼成では、少なくともアナタースの結晶化温度以上の温度、例えば、400℃〜500℃以上の温度で焼成すれば、無定形チタニアをアナタース型チタニアに変換させることができる。この酸化チタンの水性ゾルとしては、例えば、TKS−201(商品名,テイカ社製,アナタース型結晶形,平均粒子径6nm)、TA−15(商品名,日産化学社製,アナタース型結晶形)、STS−11(商品名,石原産業社製,アナタース型結晶形)などが挙げられる。
チタン含有水性液(A1)において、上記酸化チタンゾルxとチタン過酸化水素反応物y(加水分解性チタン化合物aと過酸化水素水との反応生成物)との質量比率x/yは、1/99〜99/1、好ましくは約10/90〜90/10の範囲が適当である。質量比率x/yが1/99未満では、安定性、光反応性などの点において酸化チタンゾルを添加した効果が十分に得られず、一方、99/1を超えると造膜性が劣るので好ましくない。
【0029】
チタン含有水性液(A1)は、酸化チタンゾルの存在下で加水分解性チタン化合物aを過酸化水素水と反応温度1〜70℃で10分間〜20時間程度反応させることにより得ることができる。
チタン含有水性液(A1)の生成形態やその特性は、さきに述べた加水分解性チタン化合物aを用いたチタン含有水性液(A)と同様であるが、特に、酸化チタンゾルを使用することにより、合成時に一部縮合反応が起きて増粘するのが抑えられる。その理由は、縮合反応物が酸化チタンゾルの表面に吸着され、溶液状態での高分子化が抑えられるためであると考えられる。
また、チタン含有水性液(A1)を80℃以上で加熱処理またはオートクレーブ処理すると、結晶化した酸化チタンの超微粒子を含む酸化チタン分散液が得られる。この酸化チタン分散液を得るための温度条件、結晶化した酸化チタン超微粒子の粒子径、分散液の外観なども、さきに述べた加水分解性チタン化合物aを用いたチタン含有水性液(A)と同様である。このような酸化チタン分散液も、チタン含有水性液(A1)として使用することができる。
【0030】
さきに述べた加水分解性チタン化合物aを用いたチタン含有水性液(A)と同様、チタン含有水性液(A1)を含む表面処理組成物(X)を、めっき鋼板表面に塗布・乾燥(例えば、低温で加熱乾燥)することにより、それ自体で付着性に優れた緻密な酸化チタン含有皮膜(表面処理皮膜)を形成することができる。
表面処理組成物(X)を塗布した後の加熱温度としては、例えば200℃以下、特に150℃以下が好ましく、このような温度で加熱乾燥することにより、水酸基を若干含むアナタース型の酸化チタン含有皮膜が形成できる。
以上述べたように、チタン含有水性液(A)の中でも、加水分解性チタン化合物aを用いたチタン含有水性液(A)やチタン含有水性液(A1)は、貯蔵安定性、耐食性などに優れた性能を有するので、本発明ではこれらを使用することが特に好ましい。
【0031】
加水分解性チタン化合物、加水分解性チタン化合物の低縮合物、水酸化チタン、水酸化チタンの低縮合物の中から選ばれる少なくとも1種のチタン化合物に対する過酸化水素水の配合割合は、チタン化合物10質量部に対して過酸化水素換算で0.1〜100質量部、望ましく1〜20質量部とすることが好ましい。過酸化水素水の配合割合が過酸化水素換算で0.1質量部未満では、キレート形成が十分でないため白濁沈殿が生じてしまう。一方、100質量部を超えると未反応の過酸化水素が残存し易く、貯蔵中に危険な活性酸素を放出するので好ましくない。
【0032】
過酸化水素水の過酸化水素濃度は特に限定されないが、3〜30質量%程度であることが、取り扱いやすさ、塗装作業性に関係する生成液の固形分の点で好ましい。
チタン含有水性液(A)には、必要に応じて、他のゾルや顔料を添加分散させることもできる。例えば、添加物としては、市販の酸化チタンゾルや酸化チタン粉末、マイカ、タルク、シリカ、バリタ、クレーなどが挙げられ、これらの1種以上を添加することができる。
表面処理組成物(X)中でのチタン含有水性液(A)の含有量は、固形分で1〜100g/L、好ましくは5〜50g/Lとすることが、処理液の安定性などの点から好ましい。
【0033】
上記有機リン酸化合物(B)としては、例えば、1−ヒドロキシメタン−1,1−ジホスホン酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、1−ヒドロキシプロパン−1,1−ジホスホン酸などのヒドロキシル基含有有機亜リン酸;2−ヒドロキシホスホノ酢酸、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸などのカルボキシル基含有有機亜リン酸、及びこれらの塩などが好適なものとして挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0034】
有機リン酸化合物(B)は、チタン含有水性液(A)の貯蔵安定性を向上させる効果が大きいが、なかでも、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸はその効果が特に大きいことから、これらを使用するのが特に好ましい。
有機リン酸化合物(B)の配合量は、チタン含有水性液(A)の固形分100質量部に対して1〜400質量部、特に20〜300質量部とすることが耐水付着性などの点から好ましい。有機リン酸化合物(B)の配合量が、チタン含有水性液(A)の固形分100質量部に対して400質量部を超えると、耐水付着性が劣るため好ましくない。
【0035】
上記バナジン酸化合物(C)は、表面処理組成物により得られる皮膜の防食性を向上させるものであり、例えば、バナジン酸、オルソバナジン酸リチウム、オルソバナジン酸ナトリウム、メタバナジン酸リチウム、メタバナジン酸カリウム、メタバナジン酸ナトリウム、メタバナジン酸アンモニウム、ピロバナジン酸ナトリウム、塩化バナジル、硫酸バナジルなどが挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。なかでも、防食性に効果の大きいメタバナジン酸塩が好ましく、特にメタバナジン酸アンモニウムが好ましい。
バナジン酸化合物(C)の配合量は、チタン含有水性液(A)の固形分100質量部に対して1〜400質量部、特に10〜400質量部とすることが、皮膜をアルカリ脱脂した後の耐食性などの点から好ましい。バナジン酸化合物(C)の配合量が、チタン含有水性液(A)の固形分100質量部に対して400質量部を超えると、アルカリ脱脂した後の耐食性が劣るため好ましくない。
【0036】
上記フッ化ジルコニウム化合物(D)としては、ジルコニウムフッ化水素酸のナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウムなどの塩を挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。なかでも、ジルコニウムフッ化アンモニウムが、耐水付着性などの点から好ましい。
フッ化ジルコニウム化合物(D)の配合量は、チタン含有水性液(A)の固形分100質量部に対して1〜400質量部、特に20〜400質量部とすることが、皮膜をアルカリ脱脂した後の耐食性などの点から好ましい。フッ化ジルコニウム化合物(D)の配合量が、チタン含有水性液(A)の固形分100質量部に対して400質量部を超えると、アルカリ脱脂した後の耐食性が劣るため好ましくない。
【0037】
上記炭酸ジルコニウム化合物(E)としては、炭酸ジルコニウムのナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウムなどの塩が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。なかでも、炭酸ジルコニウムアンモニウムが耐水付着性などの点から好ましい。
炭酸ジルコニウム化合物(E)の配合量は、チタン含有水性液(A)の固形分100質量部に対して1〜400質量部、特に10〜400質量部とすることが、皮膜をアルカリ脱脂した後の耐食性などの点から好ましい。炭酸ジルコニウム化合物(E)の配合量が、チタン含有水性液(A)の固形分100質量部に対して400質量部を超えると、アルカリ脱脂した後の耐食性が劣るため好ましくない。
【0038】
本発明で用いる表面処理組成物(X)は、さらに必要に応じて、水溶性有機樹脂または/および水分散性有機樹脂(F)を含有することができ、これにより塗装性が向上する。
この水溶性有機樹脂または/および水分散性有機樹脂(F)は、水に溶解または分散することのできる有機樹脂であり、有機樹脂を水に水溶化または分散化させる方法としては、従来公知の方法を適用することができる。具体的には、有機樹脂として、単独で水溶化や水分散化できる官能基(例えば、水酸基、ポリオキシアルキレン基、カルボキシル基、アミノ(イミノ)基、スルフィド基、ホスフィン基など)を含有するもの、および必要に応じてそれらの官能基の一部または全部を、酸性樹脂(カルボキシル基含有樹脂など)であればエタノールアミン、トリエチルアミンなどのアミン化合物;アンモニア水;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物で中和したもの、また、塩基性樹脂(アミノ基含有樹脂など)であれば、酢酸、乳酸などの脂肪酸;リン酸などの鉱酸で中和したものなどを使用することができる。
【0039】
水溶性または水分散性有機樹脂としては、例えば、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、オレフィン−カルボン酸系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリオキシアルキレン鎖を有する樹脂、ポリビニルアルコール、ポリグリセリン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどが挙げられる。上記有機樹脂は1種または2種以上を用いることができる。
これらのなかでも特に、水溶性または水分散性のアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂およびエポキシ系樹脂の中から選ばれる少なくとも1種の有機樹脂を用いることが表面処理組成物(X)の貯蔵安定性の面から好ましく、また特に、水溶性または水分散性のアクリル系樹脂を主成分として用いることが、表面処理組成物(X)の貯蔵安定性と塗膜性能とのバランスの面から好ましい。
【0040】
水溶性または水分散性アクリル樹脂は、従来公知の方法、例えば、乳化重合法、懸濁重合法、親水性の基を有する重合体を溶液重合により合成し、必要に応じて中和、水性化する方法などにより得ることができる。
前記親水性の基を有する重合体は、例えば、カルボキシル基、アミノ基、水酸基、ポリオキシアルキレン基などの親水性の基を有する不飽和単量体、必要に応じて、さらにその他の不飽和単量体を重合させることにより得ることができる。
水溶性または水分散性アクリル樹脂は、耐食性などの点からスチレンを共重合してなるものが好ましく、全不飽和単量体中のスチレンの量は10〜60質量%、特に15〜50質量%であることが好ましい。また、共重合して得られるアクリル樹脂のTg(ガラス転移点)は30〜80℃、特に40〜70℃であることが、得られる皮膜の強靭性などの点から好ましい。
【0041】
上記カルボキシル基含有不飽和単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸などが挙げられる。
上記アミノ基含有不飽和単量体などのような含窒素不飽和単量体としては、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの含窒素アルキル(メタ)アクリレート;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミドなどの重合性アミド類;2−ビニルピリジン、1−ビニル−2−ピロリドン、4−ビニルピリジンなどの芳香族含窒素モノマー;アリルアミンなどが挙げられる。
【0042】
上記水酸基含有不飽和単量体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどの多価アルコールとアクリル酸またはメタクリル酸とのモノエステル化物;上記多価アルコールとアクリル酸またはメタクリル酸とのモノエステル化物にε−カプロラクトンを開環重合した化合物などが挙げられる。
【0043】
その他の不飽和単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレートなどの炭素数1〜24のアルキル(メタ)アクリレート;酢酸ビニルなどが挙げられる。
以上挙げた不飽和単量体は、1種または2種以上を用いることができる。なお、本願の記載において、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタアクリレート」を意味する。
【0044】
上記ウレタン系樹脂としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールなどのポリオールとジイソシアネートからなるポリウレタンを必要に応じてジオール、ジアミンなどのような2個以上の活性水素を持つ低分子量化合物である鎖伸長剤の存在下で鎖伸長し、水中に安定に分散または溶解させたものを好適に使用でき、従来公知のものを広く使用できる(例えば、特公昭42−24192号公報、特公昭42−24194号公報、特公昭42−5118号公報、特公昭49−986号公報、特公昭49−33104号公報、特公昭50−15027号公報、特公昭53−29175号公報参照)。
【0045】
ポリウレタン樹脂を水中に安定に分散または溶解させる方法としては、例えば下記の方法が利用できる。
(1)ポリウレタンポリマーの側鎖または末端に水酸基、アミノ基、カルボキシル基などのイオン性基を導入することにより親水性を付与し、自己乳化により水中に分散または溶解する方法。
(2)反応の完結したポリウレタンポリマーまたは末端イソシアネート基をオキシム、アルコール、フェノール、メルカプタン、アミン、重亜硫酸ソーダなどのブロック剤でブロックしたポリウレタンポリマーを乳化剤と機械的剪断力を用いて強制的に水中に分散する方法。さらに、末端イソシアネート基を持つウレタンポリマーを水、乳化剤および鎖伸長剤と混合し、機械的剪断力を用いて分散化と高分子量化を同時に行う方法。
(3)ポリウレタン主原料のポリオールとしてポリエチレングリコールのごとき水溶性ポリオールを使用し、水に可溶なポリウレタンとして水中に分散または溶解する方法。
なお、ポリウレタン系樹脂は、上述した分散または溶解方法のうち異なる方法で得られたものを混合して用いることもできる。
【0046】
上記ポリウレタン系樹脂の合成に使用できるジイソシアネートとしては、芳香族、脂環族または脂肪族のジイソシアネートが挙げられ、具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、3,3′−ジメトキシ−4,4′−ビフェニレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、1,3−(ジイソシアナトメチル)シクロヘキサノン、1,4−(ジイソシアナトメチル)シクロヘキサノン、4,4′−ジイソシアナトシクロヘキサノン、4,4′−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、2,4−ナフタレンジイソシアネート、3,3′−ジメチル−4,4′−ビフェニレンジイソシアネート、4,4′−ビフェニレンジイソシアネートなどが挙げられる。これらなかでも、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートが特に好ましい。
ポリウレタン系樹脂の市販品としては、ハイドランHW−330、同HW−340、同HW−350(いずれも商品名,大日本インキ化学工業社製)、スーパーフレックス100、同150、同E−2500、同F−3438D(いずれも商品名,第一工業製薬社製)などを挙げることができる。
【0047】
上記エポキシ系樹脂としては、エポキシ樹脂にアミンを付加してなるカチオン系エポキシ樹脂;アクリル変性、ウレタン変性などの変性エポキシ樹脂などが好適に使用できる。カチオン系エポキシ樹脂としては、例えば、エポキシ化合物と、1級モノ−またはポリアミン、2級モノ−またはポリアミン、1,2級混合ポリアミンなどとの付加物(例えば、米国特許第3984299号明細書参照);エポキシ化合物とケチミン化された1級アミノ基を有する2級モノ−またはポリアミンとの付加物(例えば、米国特許第4017438号明細書参照);エポキシ化合物とケチミン化された1級アミノ基を有するヒドロキシル化合物とのエーテル化反応生成物(例えば、特開昭59−43013号公報参照)などが挙げられる。
【0048】
上記エポキシ系樹脂としては、数平均分子量が400〜4000、特に800〜2000、エポキシ当量が190〜2000、特に400〜1000であるものが好ましい。そのようなエポキシ系樹脂は、例えば、ポリフェノール化合物とエピルロルヒドリンとの反応によって得ることができ、ポリフェノール化合物としては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2,2−プロパン、4,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタン、ビス(4−ヒドロキシ−tert−ブチルフェニル)−2,2−プロパン、ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,2,2−エタン、4,4−ジヒドロキシジフェニルスルホン、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどが挙げられる。
【0049】
水溶性有機樹脂または/および水分散性有機樹脂(F)の配合量は、チタン含有水性液(A)の固形分100質量部に対して2000質量部以下、特に5〜1500質量部とすることが、アルカリ脱脂後の耐食性などの点から好ましい。水溶性有機樹脂または/および水分散性有機樹脂(F)の配合量が、チタン含有水性液(A)の固形分100質量部に対して2000質量部を超えると、アルカリ脱脂した後の耐食性が劣るため好ましくない。
【0050】
表面処理組成物(X)には、さらに必要に応じて、シランカップリング剤を添加することができる。シランカップリング剤としては、例えば、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β(N−ビニルベンジルアミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン−塩酸塩、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトピロプルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ビニリトリアセトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、オクタデシルジメチル[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロライド、トリメチルクロロシランなどが挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
シランカップリング剤の配合量は、チタン含有水性液(A)の固形分100質量部に対して1〜400質量部、特に10〜400質量部であることが、皮膜をアルカリ脱脂した後の耐食性などの点から好ましい。
【0051】
表面処理組成物(X)には、さらに必要に応じて、有機微粒子および/または無機微粒子を添加することができる。このような微粒子を添加することにより塗膜の透明性が下がり、薄膜において発生しやすいニジムラ(干渉色)を抑えることができ、外観を重視する用途に特に適したものとなる。上記微粒子は、平均粒子径が3〜1000nm、特に3〜500nmのものが、粒子の沈降安定性および耐食性の点から好ましい。
上記有機微粒子としては、例えば、アクリル、ポリウレタン、ナイロン、ポリエチレングリコールなどの樹脂微粒子が挙げられる。また、無機微粒子としては、例えば、シリカ、二酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウムなどを挙げることができる。コストなどの点から、シリカ、二酸化チタン、硫酸バリウムなどが特に好ましい。
有機微粒子および/または無機微粒子の配合量は、表面処理組成物(X)の固形分中で1〜30質量%、特に1〜20質量%とすることが、耐食性などの点から好ましい。
【0052】
表面処理組成物(X)には、さらに必要に応じて、無機リン酸化合物、フッ化水素酸などのエッチング剤、本発明が規定する成分以外の重金属化合物、水性有機高分子化合物、増粘剤、界面活性剤、防錆剤(タンニン酸、フィチン酸、ベンゾトリアゾールなど)、着色顔料、体質顔料、シリカ、防錆顔料などを添加することができる。
また、表面処理組成物(X)は、通常水で希釈して使用されるが、必要に応じて、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール系溶剤、プロピレングリコール系溶剤などの親水性溶剤で希釈してもよい。
表面処理組成物(X)は、中性または酸性領域で安定な液体となるので、特にpH1〜7、特に1〜5の範囲が好ましい。
表面処理組成物(X)により形成される表面処理皮膜の膜厚は、経済性と塗膜性能、特に耐食性や付着性の観点から0.01〜1.0μm、好ましくは0.05〜0.8μmとする。膜厚が0.01μm未満では十分な耐食性が得られず、一方、1.0μmを超えるとアルカリ脱脂後の耐白錆性、導電性、耐アブレージョン性が劣る。
【0053】
本発明の表面処理鋼板において、上述した表面処理皮膜の上に形成される上層皮膜は、樹脂中に一級水酸基を有するエポキシ樹脂(G)と、水酸基と架橋する基を有する硬化剤(H)と、固形潤滑剤(I)を含有する塗料組成物(Y)を塗布し、乾燥することにより形成された皮膜である。この皮膜もクロム(但し、不可避不純物としてのクロムを除く)を含まない。
上記塗料組成物(Y)を構成するエポキシ樹脂(G)は、樹脂中に一級水酸基を有するものであれば特別な制限はない。このようなエポキシ樹脂(G)は、例えば、エポキシ樹脂(g1)に環状エステル化合物(g2)を反応させることにより得ることができる。
【0054】
上記エポキシ樹脂(g1)としては、ビスフェノールA、ビスフェノールFなどのポリフェノール類とエピクロルヒドリンなどのエピハロヒドリンとを反応させてエポキシ基を導入してなる数平均分子量が1500〜50000、好ましくは2000〜4000、エポキシ当量が750〜7500、好ましくは2000〜5000のビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましく、また、得られる有機皮膜の耐食性の面からは、ビスフェノールAとエピハロヒドリンとの反応生成物である下記式(1)のエポキシ樹脂が特に好ましい。
【化1】

上記化学構造式中、qは0〜50の整数、好ましくは1〜40の整数、特に好ましくは2〜20の整数である。
【0055】
エポキシ樹脂(g1)の市販品としては、例えば、ジャパンエポキシレジン(株)製のjER828(エポキシ当量約190、数平均分子量約350)、jER834(エポキシ当量約250、数平均分子量約470)、jER1004(エポキシ当量約950、数平均分子量約1600)、jER1007(エポキシ当量約2250、数平均分子量約2900)、jER1009(エポキシ当量約3250、数平均分子量約3750)、jER1010(エポキシ当量約4000、数平均分子量約5500)、旭チバ社製のアラルダイトAER6099(エポキシ当量約3500、数平均分子量約3800)、三井化学(株)製のエポミックR−309(エポキシ当量約3500、数平均分子量約3800)などを挙げることができる(以上、いずれも商品名)。
【0056】
上記エポキシ樹脂(g1)と反応させる環状エステル化合物(g2)は、下記式(2)で示されるものである。
【化2】

(式中、R=HまたはCH、nは3〜6)
具体的には、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、ζ−エナラクトン、η−カプリロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−エナラクトン、ξ−カプリロラクトンなどが挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。また、これらのなかでも特に好ましいのは、ε−カプロラクトンである。
上記付加反応において、式(2)の環状エステル化合物(g2)は開環し、エポキシ樹脂(g1)中の二級水酸基と反応し、一級水酸基を付与することができる。
【0057】
また、上記一級水酸基を有するエポキシ樹脂の末端はエポキシ基のままでもよいが、一部又は全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(g3)である活性水素含有化合物で変性することにより、得られる皮膜の耐食性および導電性を大きく向上させることができる。
エポキシ樹脂のエポキシ基と反応する活性水素含有化合物としては、例えば、以下に示すようなものを例示でき、これらの1種または2種以上を使用できるが、活性水素含有化合物の少なくとも一部(好ましくは全部)は活性水素を有するヒドラジン誘導体(g3)であることが必要である。
・活性水素を有するヒドラジン誘導体
・活性水素を有する第1級または第2級のアミン化合物
・アンモニア、カルボン酸などの有機酸
・塩化水素などのハロゲン化水素
・アルコール類、チオール類
・活性水素を有しないヒドラジン誘導体または第3級アミンと酸との混合物である4級塩化剤
【0058】
上記活性水素を有するヒドラジン誘導体(g3)の具体例としては、例えば以下のものを挙げることができる。
(1)カルボヒドラジド、プロピオン酸ヒドラジド、サリチル酸ヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、チオカルボヒドラジド、4,4′−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、ベンゾフェノンヒドラゾン、アミノポリアクリルアミドなどのヒドラジド化合物;
(2)ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、3−メチル−5−ピラゾロン、3−アミノ−5−メチルピラゾールなどのピラゾール化合物;
(3)1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、5−アミノ−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、2,3−ジヒドロ−3−オキソ−1,2,4−トリアゾール、1H−ベンゾトリアゾール、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(1水和物)、6−メチル−8−ヒドロキシトリアゾロピリダジン、6−フェニル−8−ヒドロキシトリアゾロピリダジン、5−ヒドロキシ−7−メチル−1,3,8−トリアザインドリジンなどのトリアゾール化合物;
【0059】
(4)5−フェニル−1,2,3,4−テトラゾール、5−メルカプト−1−フェニル−1,2,3,4−テトラゾールなどのテトラゾール化合物;
(5)5−アミノ−2−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールなどのチアジアゾール化合物;
(6)マレイン酸ヒドラジド、6−メチル−3−ピリダゾン、4,5−ジクロロ−3−ピリダゾン、4,5−ジブロモ−3−ピリダゾン、6−メチル−4,5−ジヒドロ−3−ピリダゾンなどのピリダジン化合物;
また、これらのなかでも5員環または6員環の環状構造を有し、環状構造中に窒素原子を有するピラゾール化合物、トリアゾール化合物が特に好適である。これらのヒドラジン誘導体は1種を単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0060】
エポキシ樹脂(g1)と環状エステル化合物(g2)との反応物は、エポキシ樹脂(g1)と環状エステル化合物(g2)とを100〜200℃、好ましくは140〜180℃の温度で1〜6時間反応させることにより得ることができ、一級水酸基を有するエポキシ樹脂(G)が得られる。さらに、活性水素を有するヒドラジン誘導体(g3)を反応させる場合には、上記エポキシ樹脂(G)に一部又は全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(g3)である活性水素含有化合物を40〜200℃、好ましくは80〜130℃の温度で約1〜8時間反応させる。
【0061】
エポキシ樹脂(g1)、環状エステル化合物(g2)及び活性水素を有するヒドラジン誘導体(g3)の配合割合は、各モル数の合計に対して、エポキシ樹脂(g1)を好ましくは5〜20モル%、さらに好ましくは7〜20モル%、環状エステル化合物(g2)を好ましくは40〜90モル%、さらに好ましくは40〜80モル%、ヒドラジン誘導体(g3)を好ましくは10〜40モル%、さらに好ましくは15〜40モル%の範囲とすることが適当である。これは樹脂骨格中のヒドラジン誘導体、一級水酸基を適切な組成にし、耐食性と反応性のバランスをとるためである。
エポキシ樹脂(G)の製造においては、特に、[エポキシ樹脂(g1)のモル数]/[環状エステル化合物(g2)のモル数]=0.05〜0.5、好ましくは0.1〜0.5、さらに好ましくは0.1〜0.25の範囲とすることが、塗膜硬度と反応性とのバランスがよく、耐食性と反応性とのバランスをとることができる。
【0062】
上記反応は有機溶剤を加えて行ってもよく、使用する有機溶剤の種類は特に限定されない。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;エタノール、ブタノール、2−エチルヘキシルアルコール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどの水酸基を含有するアルコール類やエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのエステル類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素などを例示でき、これらの1種または2種以上を使用することができる。また、これらのなかでエポキシ樹脂との溶解性、皮膜形成性などの面からは、ケトン系またはエーテル系の溶剤が特に好ましい。
【0063】
以上のような特定のエポキシ樹脂(G)に対して、緻密なバリア皮膜を形成するために、水酸基と架橋する基を有する硬化剤(H)を配合し、皮膜を加熱硬化させる。樹脂組成物による皮膜を形成する場合の硬化方法としては、(1)イソシアネートと基体樹脂中の水酸基とのウレタン化反応を利用する硬化方法、(2)メラミン、尿素およびベンゾグアナミンの中から選ばれた1種以上にホルムアルデヒドを反応させてなるメチロール化合物の一部若しくは全部に炭素数1〜5の1価アルコールを反応させてなるアルキルエーテル化アミノ樹脂と基体樹脂中の水酸基との間のエーテル化反応を利用する硬化方法、が適当であるが、このうち(1)の硬化方法の方が緻密な皮膜を形成できるので、より好ましい。
【0064】
上記(1)の硬化方法で用いることができる硬化剤としてのポリイソシアネート化合物は、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有する脂肪族、脂環族(複素環を含む)または芳香族イソシアネート化合物、若しくはそれらの化合物を多価アルコールで部分反応させた化合物である。このようなポリイソシアネート化合物としては、例えば、以下のものが例示できる。
(i)m−またはp−フェニレンジイソシアネート、2,4−または2,6−トリレンジイソシアネート、o−またはp−キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート
(ii)上記(i)の化合物単独またはそれらの混合物と多価アルコール(エチレングリコール、プロピレングリコールなどの2価アルコール類;グリセリン、トリメチロールプロパンなどの3価アルコール;ペンタエリスリトールなどの4価アルコール;ソルビトール、ジペンタエリスリトールなどの6価アルコールなど)との反応生成物であって、1分子中に少なくとも2個のイソシアネートが残存する化合物
これらのポリイソシアネート化合物は、1種を単独でまたは2種以上を混合して使用できる。
【0065】
また、ポリイソシアネート化合物の保護剤(ブロック剤)としては、例えば、
(1)メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、オクチルアルコールなどの脂肪族モノアルコール類;
(2)エチレングリコールおよび/またはジエチレングリコールのモノエーテル類、例えば、メチル、エチル、プロピル(n−,iso)、ブチル(n−,iso,sec)などのモノエーテル;
(3)フェノール、クレゾールなどの芳香族アルコール;
(4)アセトオキシム、メチルエチルケトンオキシムなどのオキシム;
などが使用でき、これらの1種または2種以上と前記ポリイソシアネート化合物とを反応させることにより、少なくとも常温下で安定に保護されたポリイソシアネート化合物を得ることができる。
【0066】
硬化剤(H)の配合割合は、エポキシ樹脂(G)との固形分の質量比(G)/(H)で95/5〜55/45、好ましくは90/10〜65/35とする。硬化剤(H)の配合量が多過ぎると却って皮膜の性能が劣化しやすくなる。例えば、硬化剤としてポリイソシアネート化合物を使用する場合、ポリイソシアネート化合物には吸水性があるので、その配合量が多過ぎると有機皮膜の密着性を劣化させてしまう。さらに、未反応のポリイソシアネート化合物が電着塗装などの上層塗膜中に移動し、上層塗膜の硬化阻害や密着性不良を起こしてしまう。
【0067】
なお、エポキシ樹脂は以上のような架橋剤(硬化剤)の添加により十分に架橋するが、さらに低温架橋性を増大させるため、公知の硬化促進触媒を使用することが望ましい。この硬化促進触媒としては、例えば、N−エチルモルホリン、ジブチル錫ジラウレート、ナフテン酸コバルト、塩化第1スズ、ナフテン酸亜鉛、硝酸ビスマスなどが使用できる。
また、付着性など若干の物性向上を狙いとして、エポキシ樹脂とともに公知のアクリル、アルキッド、ポリエステルなどの樹脂を混合して用いることもできる。混合量としては、エポキシ樹脂(G)の固形分100質量部に対して100質量部以下、好ましくは50質量部以下とする。混合量が100質量部を超えると耐食性などの性能が劣化する傾向がある。
【0068】
上層皮膜の耐アブレージョン性をより向上させるために、上層皮膜(皮膜形成用の塗料組成物(Y))には固形潤滑剤(I)を配合する。本発明において皮膜に耐アブレージョン性を付与する手段は、さきに述べた従来技術のような特定の固形潤滑剤ではなく、エポキシ樹脂(G)の一級水酸基と硬化剤(H)との架橋反応により生成する緻密で強固な皮膜を形成することである。したがって、本発明で使用できる固形潤滑剤には特別な制限はなく、公知のものを適用することができる。例えば、以下のようなものが挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0069】
(1)ポリオレフィンワックス、パラフィンワックス:例えば、ポリエチレンワックス、合成パラフィン、天然パラフィン、マイクロワックス、塩素化炭化水素など
(2)フッ素樹脂微粒子:例えば、ポリフルオロエチレン樹脂(ポリ4フッ化エチレン樹脂など)、ポリフッ化ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂など
また、この他にも、脂肪酸アミド系化合物(例えば、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミド、オレイン酸アミド、エシル酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミドなど)、金属石けん類(例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸鉛、ラウリン酸カルシウム、パルミチン酸カルシウムなど)、金属硫化物(例えば、二硫化モリブデン、二硫化タングステンなど)、グラファイト、フッ化黒鉛、窒化ホウ素、ポリアルキレングリコール、アルカリ金属硫酸塩などの1種または2種以上を用いてもよい。
【0070】
以上の固形潤滑剤の中でも、特に、ポリエチレンワックス、フッ素樹脂微粒子(なかでも、ポリ4フッ化エチレン樹脂微粒子)が好適である。
ポリエチレンワックスとしては、例えば、クラリアントジャパン(株)製のセリダスト9615A、セリダスト3715、セリダスト3620、セリダスト3910(以上、いずれも商品名)、三洋化成(株)製のサンワックス131−P、サンワックス161−P(以上、いずれも商品名)、三井化学(株)製のケミパールW−100、ケミパールW−200、ケミパールW−500、ケミパールW−800、ケミパールW−950(以上、いずれも商品名)などを用いることができる。
【0071】
また、フッ素樹脂微粒子としては、テトラフルオロエチレン微粒子が最も好ましく、例えば、ダイキン工業(株)製のルブロンL−2、ルブロンL−5(以上、いずれも商品名)、三井・デュポンフロロケミカル(株)製のMP1100、MP1200(以上、いずれも商品名)、旭硝子(株)製のフルオンディスパージョンAD1、フルオンディスパージョンAD2、フルオンL141J、フルオンL150J、フルオンL155J(以上、いずれも商品名)などが好適である。
また、これらのなかで、ポリオレフィンワックスとテトラフルオロエチレン微粒子の併用により特に優れた潤滑効果が期待できる。
固形潤滑剤(I)の配合量は、エポキシ樹脂(G)と硬化剤(H)の固形分の合計100質量部に対して、固形分の割合で1〜80質量部、好ましくは3〜40質量部とする。固形潤滑剤(I)の配合量が1質量部未満では潤滑効果が乏しく、一方、配合量が80質量部を超えると塗装性が低下するので好ましくない。
【0072】
上層皮膜(皮膜形成用の塗料組成物(Y))には、さらに、下記(a)〜(e)の中から選ばれる1種以上の防錆添加成分(J)を配合することが好ましい。
(a)リン酸塩
(b)Caイオン交換シリカ
(c)モリブデン酸塩
(d)酸化ケイ素
(e)トリアゾール類、チオール類、チアジアゾール類、チアゾール類、チウラム類の中から選ばれる1種以上の有機化合物
【0073】
上記成分(a)であるリン酸塩は、単塩、複塩などの全ての種類の塩を含む。また、それを構成する金属カチオンに特に制限はなく、リン酸亜鉛、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、リン酸アルミニウムなどのいずれの金属カチオンでもよい。また、リン酸イオンの骨格や縮合度などにも限定はなく、正塩、二水素塩、一水素塩または亜リン酸塩のいずれでもよく、さらに、正塩はオルトリン酸塩の他、ポリリン酸塩などの全ての縮合リン酸塩を含む。
また、上記成分(a)であるリン酸塩とともにカルシウム化合物を複合添加することにより、耐食性をさらに向上させることができる。カルシウム化合物は、カルシウム酸化物、カルシウム水酸化物、カルシウム塩のいずれでもよく、これらの1種または2種以上を使用できる。また、カルシウム塩の種類にも特に制限はなく、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムなどのようなカチオンとしてカルシウムのみを含む単塩のほか、リン酸カルシウム・亜鉛、リン酸カルシウム・マグネシウムなどのようなカルシウムとカルシウム以外のカチオンを含む複塩を使用してもよい。
【0074】
また、上記成分(b)であるCaイオン交換シリカは、カルシウムイオンを多孔質シリカゲル粉末の表面に固定したもので、腐食環境下でCaイオンが放出されて沈殿膜を形成する。
Caイオン交換シリカとしては任意のものを用いることができるが、平均粒子径が6μm以下、望ましくは4μm以下のものが好ましく、例えば、平均粒子径が2〜4μmのものを用いることができる。Caイオン交換シリカの平均粒子径が6μmを超えると耐食性が低下するとともに、塗料組成物中での分散安定性が低下する。
Caイオン交換シリカ中のCa濃度は1mass%以上、望ましくは2〜8mass%であることが好ましい。Ca濃度が1mass%未満ではCa放出による防錆効果が十分に得られない。なお、Caイオン交換シリカの表面積、pH、吸油量については特に限定されない。
【0075】
以上のようなCaイオン交換シリカとしては、例えば、W.R.Grace&Co.製のSHIELDEX C303(平均粒子径2.5〜3.5μm、Ca濃度3mass%)、SHIELDEX AC3(平均粒子径2.3〜3.1μm、Ca濃度6mass%)、SHIELDEX AC5(平均粒子径3.8〜5.2μm、Ca濃度6mass%)(以上、いずれも商品名)、富士シリシア化学(株)製のSHIELDEX(平均粒子径3μm、Ca濃度6〜8mass%)、SHIELDEX SY710(平均粒子径2.2〜2.5μm、Ca濃度6.6〜7.5mass%)(以上、いずれも商品名)などを用いることができる。
上記成分(c)であるモリブデン酸塩は、その骨格、縮合度に限定はなく、例えば、オルトモリブデン酸塩、パラモリブデン酸塩、メタモリブデン酸塩などが挙げられる。また、単塩、複塩などの全ての塩を含み、複塩としてはリンモリブデン酸塩などが挙げられる。
【0076】
上記成分(d)である酸化ケイ素は、コロイダルシリカ、乾式シリカのいずれでもよい。コロイダルシリカとしては、水系皮膜形成樹脂をベースとする場合には、例えば、日産化学工業(株)製のスノーテックスO、スノーテックスN、スノーテックス20、スノーテックス30、スノーテックス40、スノーテックスC、スノーテックスS(以上、いずれも商品名)、触媒化成工業(株)製のカタロイドS、カタロイドSI−350、カタロイドSI−40、カタロイドSA、カタロイドSN(以上、いずれも商品名)、(株)ADEKA製のアデライトAT−20〜50、アデライトAT−20N、アデライトAT−300、アデライトAT−300S、アデライトAT20Q(以上、いずれも商品名)などを用いることができる。
【0077】
また、溶剤系皮膜形成樹脂をベースとする場合には、例えば、日産化学工業(株)製のオルガノシリカゾルMA−ST−M、オルガノシリカゾルIPA−ST、オルガノシリカゾルEG−ST、オルガノシリカゾルE−ST−ZL、オルガノシリカゾルNPC−ST、オルガノシリカゾルDMAC−ST、オルガノシリカゾルDMAC−ST−ZL、オルガノシリカゾルXBA−ST、オルガノシリカゾルMIBK−ST(以上、いずれも商品名)、触媒化成工業(株)製のOSCAL−1132、OSCAL−1232、OSCAL−1332、OSCAL−1432、OSCAL−1532、OSCAL−1632、OSCAL−1722(以上、いずれも商品名)などを用いることができる。
特に、有機溶剤分散型シリカゾルは、分散性に優れ、ヒュームドシリカよりも耐食性に優れている。
【0078】
また、ヒュームドシリカとしては、例えば、日本アエロジル(株)製のAEROSIL R971、AEROSIL R812、AEROSIL R811、AEROSIL R974、AEROSIL R202、AEROSIL R805、AEROSIL 130、AEROSIL 200、AEROSIL 300、AEROSIL 300CF(以上、いずれも商品名)などを用いることができる。
微粒子シリカは、腐食環境下において緻密で安定な亜鉛の腐食生成物の生成に寄与し、この腐食生成物がめっき表面に緻密に形成されることによって、腐食の促進を抑制することができると考えられている。
耐食性の観点からは、微粒子シリカは粒子径が5〜50nm、望ましくは5〜20nm、さらに好ましくは5〜15nmのものを用いるのが好ましい。
【0079】
上記成分(e)の有機化合物のうち、トリアゾール類としては、1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、5−アミノ−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、1H−ベンゾトリアゾールなどが、またチオール類としては、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール、2−メルカプトベンツイミダゾールなどが、またチアジアゾール類としては、5−アミノ−2−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールなどが、またチアゾール類としては、2−N,N−ジエチルチオベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール類などが、またチウラム類としては、テトラエチルチウラムジスルフィドなどが、それぞれ挙げられる。
【0080】
防錆添加成分(J)の配合量(上記成分(a)〜(e)の中から選ばれる1種以上の自己補修性発現物質の合計の配合量)は、エポキシ樹脂(G)と硬化剤(H)の固形分の合計100質量部に対して、固形分の割合で1〜100質量部、好ましくは5〜80質量部、さらに好ましくは10〜50質量部とすることが適当である。防錆添加成分(J)の配合量が1質量部未満では耐食性向上効果が小さく、一方、配合量が100質量部を超えると、耐食性が低下するので好ましくない。
【0081】
また、上層皮膜(皮膜形成用の塗料組成物(Y))中には上記の防錆添加成分に加えて、腐食抑制剤として、他の酸化物微粒子(例えば、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化セリウム、酸化アンチモンなど)、リンモリブデン酸塩(例えば、リンモリブデン酸アルミニウムなど)、有機リン酸及びその塩(例えば、フィチン酸、フィチン酸塩、ホスホン酸、ホスホン酸塩、およびこれらの金属塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩など)、有機インヒビター(例えば、ヒドラジン誘導体、チオール化合物、ジチオカルバミン酸塩など)などの1種または2種以上を添加することができる。
【0082】
上層皮膜(皮膜形成用の塗料組成物(Y))中には、さらに必要に応じて、添加剤として、有機着色顔料(例えば、縮合多環系有機顔料、フタロシアニン系有機顔料など)、着色染料(例えば、有機溶剤可溶性アゾ系染料、水溶性アゾ系金属染料など)、無機顔料(例えば、酸化チタンなど)、キレート剤(例えば、チオールなど)、導電性顔料(例えば、亜鉛、アルミニウム、ニッケルなどの金属粉末、リン化鉄、アンチモンドープ型酸化錫など)、カップリング剤(例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤など)、メラミン・シアヌル酸付加物などの1種または2種以上を添加することができる。
上層皮膜の膜厚は0.1〜5μm、好ましくは0.2〜2μmとすることが望ましい。膜厚が0.1μm未満では十分な耐食性が得られず、一方、5μmを超えると導電性が低下する。
【0083】
以上のような表面処理鋼板を製造するには、亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、上述したような成分が配合された表面処理組成物(X)(処理液)を塗布した後、水洗することなく乾燥し、次いで、上述したような成分が配合された上層皮膜形成用の塗料組成物(Y)を塗布し、乾燥させる。
表面処理組成物(X)をめっき鋼板表面にコーティングする方法としては、塗布法、浸漬法、スプレー法などの任意の方法を採用できる。塗布法としては、ロールコーター(3ロール方式、2ロール方式など)、スクイズコーター、ダイコーターなどのいずれの方法を用いてもよい。また、スクイズコーターなどによる塗布処理、浸漬処理またはスプレー処理の後に、エアナイフ法やロール絞り法により塗布量の調整、外観の均一化、膜厚の均一化を行うことも可能である。
【0084】
表面処理組成物(X)をコーティングした後は、水洗することなく加熱乾燥を行う。加熱乾燥処理には、ドライヤー、熱風炉、高周波誘導加熱炉、赤外線炉などを用いることができる。加熱乾燥は、到達板温で30〜200℃、好ましくは40℃〜140℃の範囲で行うことが望ましい。加熱乾燥温度が30℃未満では皮膜中の水分が多量に残り、耐食性が不十分となる。また、加熱乾燥温度が200℃を超えると非経済的であるばかりでなく、皮膜に欠陥が生じて耐食性が低下するおそれがある。
【0085】
上層皮膜形成用の塗料組成物(Y)をコーティングする方法としては、塗布法、浸漬法、スプレー法などの任意の方法を採用できる。塗布法としては、ロールコーター(3ロール方式、2ロール方式など)、スクイズコーター、ダイコーターなどのいずれの方法を用いてもよい。また、スクイズコーターなどによる塗布処理、浸漬処理またはスプレー処理の後に、エアナイフ法やロール絞り法により塗布量の調整、外観の均一化、膜厚の均一化を行うことも可能である。
【0086】
塗料組成物(Y)の塗布後、通常は水洗することなく、加熱乾燥を行うが、塗料組成物の塗布後に水洗工程を実施してもよい。加熱乾燥処理には、ドライヤー、熱風炉、高周波誘導加熱炉、赤外線炉などを用いることができるが、耐食性の観点からは高周波誘導加熱炉が特に好ましい。加熱処理は、到達板温で50〜350℃、好ましくは80℃〜250℃の範囲で行うことが望ましい。加熱温度が50℃未満では皮膜中の溶媒が多量に残り、耐食性が不十分となる。また、加熱温度が350℃を超えると非経済的であるばかりでなく、皮膜に欠陥が生じて耐食性が低下するおそれがある。
【0087】
本発明は、以上述べたような皮膜を両面または片面に有する鋼板を含むものである。したがって、本発明鋼板の形態としては、例えば、以下のようなものがある。
(1)片面:めっき皮膜−表面処理皮膜−上層皮膜、片面:めっき皮膜
(2)片面:めっき皮膜−表面処理皮膜−上層皮膜、片面:めっき皮膜−公知のリン酸塩処理皮膜など
(3)両面:めっき皮膜−表面処理皮膜−上層皮膜
(4)片面:めっき皮膜−表面処理皮膜−上層皮膜、片面:めっき皮膜−表面処理皮膜(本発明の表面処理皮膜に相当する皮膜)
(5)片面:めっき皮膜−表面処理皮膜−上層皮膜、片面:めっき皮膜−有機皮膜(本発明の上層皮膜に相当する皮膜)
【実施例】
【0088】
[第一層(表面処理皮膜)用の表面処理組成物]
表面処理組成物に用いたチタン含有水性液A1〜A7、有機リン酸化合物B1〜B6、バナジン酸化合物C1〜C3、フッ化ジルコニウム化合物D1〜D3、炭酸ジルコニウム化合物E1〜E3、水溶性または水分散性有機樹脂F1〜F7を以下に示す。これらの成分を表1および表2に示す割合で配合し、表面処理組成物P1〜P50を得た。
【0089】
(1)チタン含有水性液A1〜A7の製造
・製造例1
四塩化チタン60%溶液5ccを蒸留水で500ccとした溶液にアンモニア水(1:9)を滴下し、水酸化チタンを沈殿させた。蒸留水で洗浄後、過酸化水素水30%溶液を10cc加えてかき混ぜ、チタンを含む黄色半透明の粘性のあるチタン含有水性液A1を得た。
・製造例2
テトラiso−プロポキシチタン10質量部とiso−プロパノール10質量部の混合物を30%過酸化水素水10質量部と脱イオン水100質量部の混合物中に20℃で1時間かけて撹拌しながら滴下した。その後25℃で2時間熟成し、黄色透明の少し粘性のあるチタン含有水性液A2を得た。
【0090】
・製造例3
製造例2で使用したテトラiso−プロポキシチタンの代わりにテトラn−ブトキシチタンを使用した以外は製造例2と同様の製造条件で、チタン含有水性液A3を得た。
・製造例4
製造例2で使用したテトラiso−プロポキシチタンの代わりにテトラiso−プロポキシチタンの3量体を使用した以外は製造例2と同様の製造条件で、チタン含有水性液A4を得た。
・製造例5
製造例2に対して過酸化水素水を3倍量用い、50℃で1時間かけて滴下し、さらに60℃で3時間熟成した以外は製造例2と同様の製造条件で、チタン含有水性液A5を得た。
【0091】
・製造例6
製造例3で製造したチタン含有水性液A3を、さらに95℃で6時間加熱処理することにより、白黄色の半透明なチタン含有水性液A6を得た。
・製造例7
テトラiso−プロポキシチタン10質量部とiso−プロパノール10質量部の混合物を、「TKS−203」(商品名,テイカ社製,酸化チタンゾル)5質量部(固形分)、30%過酸化水素水10質量部及び脱イオン水100質量部の混合物中に10℃で1時間かけて撹拌しながら滴下した。その後10℃で24時間熟成し、黄色透明の少し粘性のあるチタン含有水性液A7を得た。
【0092】
(2)有機リン酸化合物B1〜B6
B1:1−ヒドロキシメタン−1,1−ジホスホン酸
B2:1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸
B3:1−ヒドロキシプロパン−1,1−ジホスホン酸
B4:2−ヒドロキシホスホノ酢酸
B5:3−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸
B6:2−ヒドロキシホスホノ酢酸カリウム
(3)バナジン酸化合物C1〜C3
C1:メタバナジン酸アンモニウム
C2:メタバナジン酸ナトリウム
C3:メタバナジン酸カリウム
【0093】
(4)フッ化ジルコニウム化合物D1〜D3
D1:ジルコニウムフッ化アンモニウム
D2:ジルコニウムフッ化ナトリウム
D3:ジルコニウムフッ化カリウム
(5)炭酸ジルコニウム化合物E1〜E3
E1:炭酸ジルコニウムアンモニウム
E2:炭酸ジルコニウムナトリウム
E3:炭酸ジルコニウムリチウム
【0094】
(6-1)水性有機樹脂F1〜F4の合成
・合成例1
窒素封入管、玉入りコンデンサー、滴下ロートおよびメカニカルスターラーを備えたフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテル200質量部を入れ、90℃まで加熱した後、温度を90℃に保持した状態で、フラスコ内にスチレン10質量部、tert−ブチルアクリレート80質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート10質量部およびアゾビスイソブチロニトリル1質量部の混合物を3時間かけて滴下し、滴下終了後さらに90℃に2時間保持した後、室温まで冷却して水性有機樹脂(アクリル樹脂溶液)F1を得た。得られたアクリル樹脂のTg(ガラス転移点)は33℃である。
・合成例2
窒素封入管、玉入りコンデンサー、滴下ロートおよびメカニカルスターラーを備えたフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテル200質量部を入れ、90℃まで加熱した後、温度を90℃に保持した状態で、フラスコ内にスチレン25質量部、メチルアクリレート60質量部、アクリルアミド15質量部およびアゾビスイソブチロニトリル1質量部の混合物を3時間かけて滴下し、滴下終了後さらに90℃に2時間保持した後、室温まで冷却して水性有機樹脂(アクリル樹脂溶液)F2を得た。得られたアクリル樹脂のTgは46℃である。
【0095】
・合成例3
窒素封入管、玉入りコンデンサー、滴下ロートおよびメカニカルスターラーを備えたフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテル200質量部を入れ、90℃まで加熱した後、温度を90℃に保持した状態で、フラスコ内にスチレン55質量部、n−ブチルアクリレート5質量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート20質量部、N−メチルアクリルアミド20質量部およびアゾビスイソブチロニトリル1質量部の混合物を3時間かけて滴下し、滴下終了後さらに90℃に2時間保持した後、室温まで冷却して水性有機樹脂(アクリル樹脂溶液)F3を得た。得られたアクリル樹脂のTgは78℃である。
・合成例4
窒素封入管、玉入りコンデンサー、滴下ロートおよびメカニカルスターラーを備えたフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテル200質量部を入れ、90℃まで加熱した後、温度を90℃に保持した状態で、フラスコ内にメチルメタクリレート80質量部、n−ブチルアクリレート10質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート10質量部およびアゾビスイソブチロニトリル1質量部の混合物を3時間かけて滴下し、滴下終了後さらに90℃に2時間保持した後、室温まで冷却して水性有機樹脂(アクリル樹脂溶液)F4を得た。得られたアクリル樹脂のTgは56℃である。
【0096】
(6-2)水性有機樹脂F5〜F7
F5:「スーパーフレックスE−2500」(商品名,第一工業製薬社製,水性ポリウレタン樹脂)
F6:「バイロナールMD−1100」(商品名,東洋紡績社製,水性ポリエステル樹脂)
F7:「アデカレジンEM−0718」(商品名,(株)ADEKA製,水性エポキシ樹脂)
【0097】
[第二層(上層皮膜)用の塗料組成物]
塗料組成物に用いたエポキシ樹脂溶液G1〜G9、硬化剤H1〜H4、硬化触媒K1〜K4、防錆添加剤J1〜J6、固形潤滑剤I1〜I3を以下に示す。表3に示すエポキシ樹脂溶液G1〜G9(本発明条件を満足するものは、本発明で使用する「エポキシ樹脂(G)」である)に、硬化剤H1〜H4と硬化触媒K1〜K4を適宜配合し、表4に示す樹脂組成物S1〜S21(本発明条件を満足するものは、本発明で使用する「エポキシ樹脂(G)+硬化剤(H)」である)を得た。この樹脂組成物S1〜S21に、防錆添加剤J1〜J6、固形潤滑剤I1〜I3を適宜配合し、塗料用分散機(サンドグラインダー)を用いて所定時間撹拌し、表5に示す塗料組成物Q1〜Q45を得た。
【0098】
(1)エポキシ樹脂溶液G1〜G9の合成
・合成例5(発明例相当)
温度計、撹拌機および加熱装置を備えた反応装置に、エポキシ樹脂「jER1007」(商品名,ジャパンエポキシレジン社製,エポキシ当量約2250,数平均分子量約2900)1448質量部およびシクロヘキサノン507質量部を仕込み、140℃に昇温し、2時間で完全に溶解した。次いで、ε−カプロラクトン「PLACCEL
M」(商品名,ダイセル社製)73質量部、ジブチル錫オキサイド0.08質量部を加え(反応時固形分量75%)、170℃に昇温し、4時間反応させた。その後、メチルイソブチルケトン395質量部、シクロヘキサノン371質量部、芳香族炭化水素系溶剤「スワゾール1500」(商品名,丸善石油化学(株)製)585質量部を加え、固形分35%のエポキシ樹脂溶液G1を得た。このエポキシ樹脂溶液G1のエポキシ樹脂/ε−カプロラクトンのモル比を表3に示す。
【0099】
・合成例6(発明例相当)
温度計、撹拌機および加熱装置を備えた反応装置に、エポキシ樹脂「jER1007」(商品名,ジャパンエポキシレジン社製,エポキシ当量約2250,数平均分子量約2900)1448質量部およびシクロヘキサノン507質量部を仕込み、140℃に昇温し、2時間で完全に溶解した。次いで、ε−カプロラクトン「PLACCEL
M」(商品名,ダイセル社製)73質量部、ジブチル錫オキサイド0.08質量部を加え(反応時固形分量75%)、170℃に昇温し、4時間反応させた。このものを80℃に冷却し、メチルイソブチルケトン44質量部、ブチルセロソルブ1024質量部、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール54質量部を加え(反応時固形分量50%)、エポキシ基が消失するまで約6時間反応させた。その後、メチルイソブチルケトン395部、シクロヘキサノン371質量部、芳香族炭化水素系溶剤「スワゾール1500」(商品名,丸善石油化学(株)製)585質量部を加え、固形分35%のエポキシ樹脂溶液G2を得た。このエポキシ樹脂溶液G2のエポキシ樹脂/ε−カプロラクトン/3−アミノ−1,2,4−トリアゾールのモル比を表3に示す。
【0100】
・合成例7〜10(発明例相当)
表3のような固形分配合量とし、さらに、反応時固形分量が同じになるよう溶剤量の調整を行い、合成例5と同様にしてエポキシ樹脂溶液G3〜G6を製造した。なお、エポキシ樹脂としては、合成例7,8,10では「jER1007」(商品名,ジャパンエポキシレジン社製,エポキシ当量約2250,数平均分子量約2900)を、合成例9では「jER1009」(商品名,ジャパンエポキシレジン社製,エポキシ当量約3000,数平均分子量約3750)を用いた。エポキシ樹脂溶液G3〜G6のエポキシ樹脂/ε−カプロラクトン/3−アミノ−1,2,4−トリアゾールのモル比を表3に示す。
【0101】
・合成例11(比較例相当)
温度計、撹拌機および加熱装置を備えた反応装置に、エポキシ樹脂「jER1007」(商品名,ジャパンエポキシレジン社製,エポキシ当量約2250,数平均分子量約2900)1518質量部およびシクロヘキサノン878質量部を仕込み、140℃に昇温し、2時間で完全に溶解した。このものを80℃に冷却し、メチルイソブチルケトン411質量部、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール57質量部を加え、エポキシ基が消失するまで約6時間反応させた。その後、メチルイソブチルケトン28質量部、ブチルセロソルブ1023質量部、芳香族炭化水素系溶剤「スワゾール1500」(商品名,丸善石油化学(株)製)585質量部を加え、固形分35%のエポキシ樹脂溶液G7を得た。このエポキシ樹脂溶液G7のエポキシ樹脂/3−アミノ−1,2,4−トリアゾールのモル比を表3に示す。
【0102】
・合成例12(比較例相当)
表3のような固形分配合量とし、さらに、反応時固形分量が同じになるよう溶剤量の調整を行い、合成例11と同様にしてエポキシ樹脂溶液G8を製造した。なお、エポキシ樹脂としては、「jER1009」(商品名,ジャパンエポキシレジン社製,エポキシ当量約3000,数平均分子量約3750)を用いた。エポキシ樹脂溶液G8のエポキシ樹脂/3−アミノ−1,2,4−トリアゾールのモル比を表3に示す。
【0103】
(2)硬化剤H1〜H4(H1〜H3はイソシアネート化合物)
H1:「タケネートB−870N」(商品名,三井化学ポリウレタン(株)製,IPDIのMEKオキシムブロック体)
H2:「スミジュールBL3175」(商品名,住化バイエルウレタン(株)製,イソシヌレートタイプブロックイソシアネート)
H3:「デュラネートMF−B80M」(商品名,旭化成ケミカルズ(株)製,HMDIのMEKオキシムブロック体)
H4:「サイメル325」(商品名,日本サイテックインダストリーズ(株)製,イミノ基型メラミン樹脂)
(3)硬化触媒K1〜K4
K1:ジブチル錫ジラウレート
K2:ナフテン酸コバルト
K3:塩化第一錫
K4:N−エチルモルホリン
【0104】
(4)防錆添加剤J1〜J6
J1:カルシウムイオン交換シリカ
J2:コロイダルシリカ
J3:ヒュームドシリカ
J4:トリポリリン酸二水素アルミニウム
J5:リンモリブデン酸アルミニウム
J6:テトラエチルチウラムジスルフィド
(5)固形潤滑剤I1〜I3
I1:「LUVAX1151」(商品名,日本精蝋社製,ポリエチレンワックス)
I2:「セリダスト3620」(商品名,クラリアントジャパン(株)製,ポリエチレンワックス)
I3:「MP1100」(商品名,三井・デュポンフロロケミカル(株)製,テトラフルオロエチレン微粒子)
【0105】
[表面処理鋼板の製造]
処理原板として表6に示す各種めっき鋼板を用い、めっき鋼板の表面をアルカリ脱脂処理、水洗・乾燥した後、下層皮膜形成用の表面処理組成物で処理(塗布)し、各種温度で乾燥させた。次いで、その上部に上層皮膜形成用の塗料組成物を塗布し、各種温度で乾燥させ、本発明例および比較例の表面処理鋼板を得た。なお、下層皮膜および上層皮膜の膜厚は、皮膜組成物の固形分(加熱残分)や処理時間等により調整した。
得られた表面処理鋼板の品質性能(耐白錆性、アルカリ脱脂後の耐白錆性、導電性、耐アブレージョン性)を評価した結果を、製造条件および皮膜構成とともに表7〜表10に示す。なお、各品質性能の測定および評価方法は、以下のとおりである。
【0106】
(1)耐白錆性
各サンプルについて、塩水噴霧試験(JIS−Z−2371)を施し、500時間後の白錆面積率で評価した。その評価基準は以下のとおりである。
◎ :白錆発生面積率5%未満
○ :白錆発生面積率5%以上、10%未満
○−:白錆発生面積率10%以上、25%未満
△ :白錆発生面積率25%以上、50%未満
× :白錆発生面積率50%以上
(2)アルカリ脱脂後の耐白錆性
各サンプルについて、日本パーカーライジング(株)製のアルカリ処理液「CLN−364S」(60℃、スプレー2分)でアルカリ脱脂を行った後、上記の塩水噴霧試験を施し、200時間後の白錆面積率で評価した。その評価基準は以下のとおりである。
◎ :白錆発生面積率5%未満
○ :白錆発生面積率5%以上、10%未満
○−:白錆発生面積率10%以上、25%未満
△ :白錆発生面積率25%以上、50%未満
× :白錆発生面積率50%以上
【0107】
(3)導電性
JIS−C−2550に基づき層間絶縁抵抗値を測定した。その評価基準は以下のとおりである。
○:3Ω・cm/枚 未満
△:3〜5Ω・cm/枚
×:5Ω・cm/枚 超え
(4)耐アブレージョン性
ラビングテスター(太平理化工業(株)製)を用いて、各サンプルをダンボールでラビング後、サンプルの表面を目視で観察し、下記評価基準に従って評価した。試験は、400g(面圧9.8kPa)、摺動距離60mm、速度120mm/s、ラビング回数1000回で行った。
◎:疵の本数が0本
○:疵の本数が1〜2本
△:疵の本数が3〜10本
×:疵の本数が11本以上または変色(本数測定不能)
【0108】
表7〜表10によれば、本発明例は、耐白錆性およびアルカリ脱脂後耐白錆性(耐食性)、導電性、耐アブレージョン性のいずれにも優れている。これに対して比較例では、耐白錆性およびアルカリ脱脂後耐白錆性(耐食性)、導電性、耐アブレージョン性のいずれか一つ以上が本発明例に比べ劣っている。
【0109】
表1および表2において、*1〜*7は以下の内容を示す。
*1 明細書本文に記載のチタン含有水性液A1〜A7
*2 明細書本文に記載の有機リン酸化合物B1〜B6
*3 明細書本文に記載のバナジン酸化合物C1〜C3
*4 明細書本文に記載のフッ化ジルコニウム化合物D1〜D3
*5 明細書本文に記載の炭酸ジルコニウム化合物E1〜E3
*6 明細書本文に記載の水溶性又は水分散性有機樹脂F1〜F7
*7 固形分の質量部
【0110】
【表1】

【0111】
【表2】

【0112】
【表3】

【0113】
【表4】

【0114】
【表5】

【0115】
【表6】

【0116】
表7〜表10において、*1〜*3は以下の内容を示す。
*1 表6に記載のめっき鋼板T1〜T9
*2 表1および表2に記載の表面処理組成物P1〜P50
*3 表5に記載の塗料組成物Q1〜Q45
【0117】
【表7】

【0118】
【表8】

【0119】
【表9】

【0120】
【表10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、加水分解性チタン化合物、加水分解性チタン化合物の低縮合物、水酸化チタン、水酸化チタンの低縮合物の中から選ばれる少なくとも1種のチタン化合物を過酸化水素水と混合して得られるチタン含有水性液(A)の固形分100質量部に対して、有機リン酸化合物(B)を1〜400質量部、バナジン酸化合物(C)を1〜400質量部、フッ化ジルコニウム化合物(D)を1〜400質量部、炭酸ジルコニウム化合物(E)を1〜400質量部含有する表面処理組成物(X)を塗布し、乾燥させることにより形成された膜厚が0.01〜1.0μmの表面処理皮膜を有し、その上層に、樹脂中に一級水酸基を有するエポキシ樹脂(G)と、水酸基と架橋する基を有する硬化剤(H)と、固形潤滑剤(I)を含有し、エポキシ樹脂(G)と硬化剤(H)の固形分質量比(G)/(H)が95/5〜55/45、固形潤滑剤(I)の含有量がエポキシ樹脂(G)と硬化剤(H)の固形分の合計100質量部に対して固形分の割合で1〜80質量部である塗料組成物(Y)を塗布し、乾燥することにより形成された膜厚が0.1〜5μmの上層皮膜を有することを特徴とする耐食性、導電性および耐アブレージョン性に優れた表面処理鋼板。
【請求項2】
表面処理組成物(X)が、さらに、水溶性有機樹脂または/および水分散性有機樹脂(F)をチタン含有水性液(A)の固形分100質量部に対して2000質量部以下含有することを特徴とする請求項1に記載の耐食性、導電性および耐アブレージョン性に優れた表面処理鋼板。
【請求項3】
エポキシ樹脂(G)は、エポキシ基が活性水素含有化合物で変性されたエポキシ樹脂であり、且つ前記活性水素含有化合物の一部または全部が活性水素を有するヒドラジン誘導体であることを特徴とする請求項1または2に記載の耐食性、導電性および耐アブレージョン性に優れた表面処理鋼板。
【請求項4】
塗料組成物(Y)が、さらに、下記(a)〜(e)の中から選ばれる1種以上の防錆添加成分(J)を、エポキシ樹脂(G)と硬化剤(H)の固形分の合計100質量部に対して固形分の割合で1〜100質量部含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の耐食性、導電性および耐アブレージョン性に優れた表面処理鋼板。
(a)リン酸塩
(b)Caイオン交換シリカ
(c)モリブデン酸塩
(d)酸化ケイ素
(e)トリアゾール類、チオール類、チアジアゾール類、チアゾール類、チウラム類の中から選ばれる1種以上の有機化合物

【公開番号】特開2008−248356(P2008−248356A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−93819(P2007−93819)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】