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耐食性に優れた溶融Zn−Al系合金めっき鋼板およびその製造方法
説明

耐食性に優れた溶融Zn−Al系合金めっき鋼板およびその製造方法

【課題】本発明は、耐黒変性、および耐食性に優れる溶融Zn-Al系合金めっき鋼板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】鋼板の少なくとも一方の表面に、質量%で、Al:3.0〜6.0%、Mg:0.2〜1.0%、Ni:0.01〜0.10%を含有し、残部Znおよび不可避的不純物からなる組成を有する溶融Zn-Al系合金めっき層を形成し、さらに該溶融Zn-Al系合金めっき層の上層としてモリブデン酸塩を含有する化成処理皮膜を形成する。これにより、めっき層の表面が、Zn-Al-Mg系三元共晶を面積率で1〜50%含む組織となり、めっき層の組成、組織と、さらにめっき層の上層に形成されたモリブデン酸塩を含有する化成処理皮膜とにより、耐黒変性に優れ、さらに耐食性に優れた溶融Zn-Al系合金めっき鋼板となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築、土木、家電等の部材用として好適な、耐食性に優れた溶融Zn-Al系合金めっき鋼板およびその製造方法に係り、とくにめっき層の加工性、耐食性の向上に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建築、土木、家電等の分野では、このような使途で使用される溶融Zn系めっき鋼板には、耐食性に優れることが要求される溶融Zn系めっき鋼板が広く利用されている。
しかし、例えば、建築分野では、溶融Zn系めっき鋼板を所定形状に成形加工して、屋根、壁、あるいは構造体などの構造部材として使用している。このような用途では、耐食性に優れていることに加えて、加工性に優れること、さらには加工部の耐食性に優れることが要求され、加工部を含む素材の耐食性がその構造部材の耐久性を決定する重要な要素となっている。このため、構造部材の耐久性向上の観点から、素材として使用される溶融Zn系めっき鋼板の耐食性向上が強く要望されている。この場合には、外観の均一性や耐黒変性にも優れることが要求されている。
【0003】
また、溶融Zn系めっき鋼板は、例えば、海岸部など飛来塩分が多い厳しい環境下においても耐食性が優れることから、建築分野では、無塗装で使用されることも多い。
このような要望に対して、例えば、特許文献1には、連続溶融Zn−Al−Mgめっき鋼板が記載されている。特許文献1に記載された技術は、Al:4.0〜10%、Mg:1.0〜4.0%、残部がZnおよび不可避的不純物からなるめっき層を鋼板表面に形成した連続溶融Zn−Al−Mgめっき鋼板であり、めっき後の冷却速度を0.5℃/s以上に制御して、めっき層をAl/Zn/ZnMgの三元共晶組織の素地中に初晶Al相が混在した金属組織を有する層とすることにより、良好な耐食性と表面外観を有するめっき鋼板となるとしている。
【0004】
また、特許文献2には、金属光沢をもつ美麗なめっき外観と、優れた耐黒変性を有する溶融Zn−Al系合金めっき鋼板が記載されている。特許文献2に記載された技術では、鋼板を溶融Zn−Al系合金めっき浴に浸漬した後、該めっき浴から引き上げて、250℃までの冷却速度で1〜15℃/sの範囲で冷却し、鋼板表面に、Al:1.0〜10%、Mg:0.2〜1.0%、Ni:0.005〜0.1%を含み、残部がZnおよび不可避的不純物からなる溶融Zn−Al系合金めっき層を形成し、金属光沢をもつ美麗なめっき外観と、優れた耐黒変性を有する溶融Zn−Al系合金めっき鋼板となるとしている。また、特許文献2に記載された技術では、めっき後の冷却速度を上記した特定の範囲に制御することにより、MgとNiの相乗作用によりめっき最表層部へのNiの濃化が促進されるとしている。また、特許文献2に記載された技術では、溶融Zn−Al系合金めっき層が、めっき層断面で、Al−Zn−Mg金属間化合物の3元共晶を好ましくは10〜30面積%含有するとしている。また、特許文献2に記載された技術では、めっき層の上層として化成処理層、プライマー層、樹脂層を形成してもよく、化成処理層として、クロムを含まないチタン系やジルコニウム系等の処理液によるクロムフリー処理を適用してもよいとしている。
【0005】
また、特許文献3には、鋼板の少なくとも一方の表面に、溶融Zn−Al系合金めっき層を形成し、さらに該めっき層の表面に表面処理皮膜を形成してなる溶融Zn−Al系合金めっき鋼板が記載されている。特許文献3に記載された技術では、溶融Zn−Al系合金めっき層を、質量%で、Al:1.0〜10%、Mg:0.2〜1.0%、Ni:0.005〜0.1%を含み、残部がZnおよび不可避的不純物からなる溶融Zn−Al系合金めっき層とし、さらに該めっき層の表面に形成する表面処理皮膜を、特定のチタン含有水性液と、ニッケル化合物及び/又はコバルト化合物と、弗素含有化合物とを所定の割合で含有する表面処理組成物による表面処理皮膜とするとしている。これにより、めっき組成の最適化と相俟って、優れた耐黒変性が得られるとともに、弗素含有化合物の作用により反応性が高まり、めっき表面に緻密な反応層が形成され、さらに表面処理皮膜自体により高いバリア性が付与されて、優れた耐食性が得られるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3179401号公報
【特許文献2】特開2008−138285号公報
【特許文献3】特開2008−291350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された技術で製造されためっき鋼板は、めっき層中に、Znよりも酸化力の強いAlやMgを多量に含有させており、めっき鋼板をコイルやシート状態で倉庫などにて長期間保管すると、めっき表面の一部もしくは全面にくすんだ灰黒色の変色(黒変現象)が発生する場合があり、商品価値が低下するという問題がある。また、特許文献1に記載された技術で製造されためっき鋼板では、めっき層中にMgを多量に含有させると、めっき層が硬質化するため、成形加工を施された箇所にクラックが発生し、めっき層下地の腐食(赤錆)が進行するという問題がある。
【0008】
また、特許文献2に記載された技術では、めっき層中にNiを含有するZn-Al-Mg系組成とすることにより、主として耐黒変性を向上させるとしているが、Al−Mg−Ni−Zn系という4元系では、めっき層組成によっては、めっき層表面に化成処理皮膜を形成する際に、化成処理反応が不十分となる場合があり、黒変を抑止する効果が不安定になるという問題があった。
【0009】
また、特許文献3に記載された技術では、めっき層をNiを含有するZn-Al-Mg系組成としたうえで、さらにめっき層の上層として特殊な表面処理皮膜を形成し、耐黒変性を向上させているが、ニッケル化合物および/又はコバルト化合物を多くすると、耐食性が低下するという問題があり、耐黒変性との両立に問題を残していた。
本発明は、かかる従来技術の問題を解決し、耐黒変性および耐食性に優れる溶融Zn-Al系合金めっき鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記した目的を達成するために、溶融Zn-Al系合金めっき鋼板の耐黒変性および耐食性に及ぼす各種要因について、鋭意検討した。その結果、鋼板表面に形成するめっき層を、Niを適正量含有するZn-Al-Mg系組成としたうえで、めっき層の表面組織を、Zn-Al-Mg系の3元共晶が面積率で1〜50%存在する組織とすることにより、その後の化成処理においてめっき層表面との反応性に優れ、良好な化成処理皮膜を形成でき、安定して耐黒変性を向上することができるとともに、成形加工に際し、めっき層のクラック発生を有効に抑制でき、成形加工部の耐食性が顕著に向上することを見出した。
【0011】
また、本発明者らは、上記したような組成のZn-Al-Mg系合金めっき層としたうえで、さらに、該めっき層の上層として、モリブデン酸塩を含有する化成処理皮膜を形成することにより、めっき層組成と相俟って黒変が顕著に抑止され、耐黒変性が格段に向上することを知見した。
本発明は、このような知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨は次のとおりである。
(1)基板である鋼板の少なくとも一方の表面に、溶融Zn-Al系合金めっき層を形成し、さらに該溶融Zn-Al系合金めっき層の上層として化成処理被膜を形成してなる溶融Zn-Al系合金めっき鋼板であって、前記溶融Zn-Al系合金めっき層が、質量%で、Al:3.0〜6.0%、Mg:0.2〜1.0%、Ni:0.01〜0.10%を含有し、残部Znおよび不可避的不純物からなる組成を有するめっき層であり、該めっき層の表面組織が、Zn-Al-Mg系三元共晶を面積率で1〜50%含む組織であり、前記化成処理被膜が、モリブデン酸塩を含有する化成処理皮膜であることを特徴とする耐黒変性と耐食性に優れた溶融Zn-Al系合金めっき鋼板。
(2)(1)において、前記モリブデン酸塩を含有する化成処理皮膜の片面当たりの付着量が、0.05〜1.5g/m2であることを特徴とする溶融Zn-Al系合金めっき鋼板。
(3)基板となる鋼板を、質量%で、Al:3〜6%、Mg:0.2〜1.0%、Ni:0.01〜0.10%を含み、残部Znおよび不可避的不純物からなる組成の溶融Zn−Al系合金めっき浴中に侵入させたのち、引き上げて冷却して、該鋼板表面に溶融Zn-Al系合金めっき層を形成し、さらに化成処理を施して、該溶融Zn-Al系合金めっき層の上層として、化成処理皮膜を形成する、溶融Zn-Al系合金めっき鋼板の製造方法であって、前記溶融Zn−Al系合金めっき浴の温度を420℃〜520℃、前記溶融Zn−Al系合金めっき浴中に侵入する前記鋼板の温度を420〜600℃の範囲の温度で、かつ前記鋼板の温度を前記溶融Zn−Al系めっき浴の温度以上となるように調整して、前記溶融Zn−Al系合金めっき浴中に侵入させ、前記溶融Zn−Al系めっき浴から引き上げたのちの冷却を、前記鋼板の表面温度で、350℃までの平均で1〜100℃/sである冷却とし、前記化成処理を、モリブデン酸塩を含有する化成処理液を用いる化成処理とすることを特徴とする耐黒変性と耐食性に優れた溶融Zn-Al系合金めっき鋼板の製造方法。
(4)(3)において、前記したモリブデン酸塩を含有する化成処理液のpHが2〜6であることを特徴とする溶融Zn-Al系合金めっき鋼板の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、安定して優れた耐黒変性を有する溶融Zn-Al系合金めっき鋼板を、容易にかつ安価に製造でき、産業上格段の効果を奏する。また、本発明によれば、めっき層の加工性が向上し、成形加工時にめっき層のクラック発生を抑制して、成形加工後の耐食性に優れた溶融Zn-Al系合金めっき鋼板とすることができ、めっき下地の腐食を効果的に抑制できるという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明になる溶融Zn-Al系めっき鋼板のめっき層表面組織の一例を示す走査型電子顕微鏡組織写真である。
【図2】図1で示しためっき層表面組織におけるZn-Al-Mg系3元共晶の表面分布状態を示す画像解析図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の溶融Zn-Al系合金めっき鋼板(以下、「本発明めっき鋼板」ともいう)は、鋼板の少なくとも一方の表面に、質量%で、Al:3.0〜6.0%、Mg:0.2〜1.0%、Ni:0.01〜0.1%を含有し、残部Znおよび不可避的不純物からなる溶融Zn-Al系合金めっき層を有し、さらにその上層として、モリブデン酸塩を含有する化成処理皮膜を有する。
まず、めっき層の組成限定理由について説明する。なお、以下、組成における質量%は単に%で記す。
【0015】
Al:3.0〜6.0%
めっき層中に含まれるAlが、3.0%未満では、めっき層と下地鋼板との界面にFe-Al系合金層が厚く形成するため、加工性が低下する。一方、Alが6.0%を超えて多量に含有されると、Znの犠牲防食作用が小さくなり、耐食性が低下するとともに、耐黒変性が低下する。またZn-Al-Mgの3元共晶の形成が多くなり、化成処理性が不安定となるうえ、めっき層の加工性も低下する。このため、めっき層中のAlは3.0〜6.0%の範囲に限定した。
【0016】
Mg:0.2〜1.0%
Mgは、耐食性向上のためにめっき層中に含有させるが、めっき層中に含まれるMgが、0.2%未満では耐食性の向上効果が少なく、一方、Mgが1.0%を超えて多量に含有すると、Zn-Al-Mg系3元共晶の形成が多くなり、めっき層の加工性が低下する。このようなことから、めっき層中のMgは0.2〜1.0%の範囲に限定した。
【0017】
Ni:0.01〜0.10%
Niは、耐食性と耐黒変性向上のためにめっき層中に含有させるが、めっき層中に含まれるNiが、0.01%未満では耐食性と耐黒変性の向上効果が少なく、一方、Niが0.10%を超えて多量に含有されると、めっき層の表面が過剰に活性化され、腐食しやすくなり、初期に白錆が出やすくなる。このため、めっき層中のNiは0.01〜0.10%の範囲に限定した。
上記した以外の残部は、Znおよび不可避的不純物からなる。
【0018】
さらに、本発明めっき鋼板の表面に形成されるめっき層は、上記した組成を有し、さらにめっき層表面で、Zn-Al-Mg系三元共晶を面積率で1〜50%含む組織を有する。
本発明めっき鋼板のめっき層は、表面に、Zn-Al-Mg系3元共晶が面積率で1〜50%露出した、表面組織を有する。めっき層表面に所定量のZn-Al-Mg系3元共晶を存在(露出)させることにより、耐食性と加工性を兼備させることができる。
【0019】
めっき層表面のZn-Al-Mg系三元共晶が表面の面積率で1%未満では耐食性の向上効果が少なく、一方、Zn-Al-Mg系三元共晶が表面の面積率で50%を超えると、化成処理のめっき層表面との反応性が低下し、良好な化成処理皮膜を形成できにくくなり、耐黒変性が不安定となるとともに、めっき層の表面が固くなりすぎて、成形加工時にクラックが発生しやすくなる。このため、めっき層の表面組織におけるZn-Al-Mg系三元共晶を、面積率で1〜50%の範囲に限定した。なお、好ましくは5〜40%である。
【0020】
なお、めっき層表面におけるZn-Al-Mg系三元共晶の面積率は、例えば、走査型電子顕微鏡(倍率:1000倍程度)でめっき層表面を観察し、めっき層の表面組織を無作為に数視野撮像し、その視野(写真)ごとに画像処理ソフトを用いて求めることが好ましい。本発明では、各視野ごとに得られた面積率を算術平均し、そのめっき層におけるZn-Al-Mg系三元共晶の面積率とする。図1に、本発明めっき鋼板のめっき層表面組織の一例を示す。縞模様を有する結晶が、Zn-Al-Mg系三元共晶である。なお、図2は、図1に示しためっき層表面をEPMAでMgを分析した結果を画像解析し、Zn-Al-Mg系三元共晶の表面分布状況として示す画像解析図である。この画像解析図を利用して、白黒に2階調化し、ヒストグラムから算出する方法で、Zn-Al-Mg系三元共晶の表面面積率を求めてもよい。黒い部分がZn-Al-Mg系三元共晶である。
【0021】
本発明めっき鋼板における溶融Zn-Al-Mg系合金めっき層の付着量は、通常通り、使途に応じて設定すればよく、とくに限定する必要はないが、片面あたり30〜300g/m程度とすることが好ましい。めっき層の付着量が30 g/m以上では、めっき層厚さが不足せず、所望の耐食性を維持できる。一方、300 g/m以下であれば、めっき層厚さが厚くなりすぎることがなく、めっき層が剥離しない。
【0022】
本発明めっき鋼板では、溶融Zn-Al-Mg系合金めっき層の上層として、モリブデン酸塩を含有する化成処理皮膜を有する。
めっき層の上層として形成される化成処理皮膜は、モリブデン酸塩を含有するものであり、このモリブデン酸塩とZn-Al-Mg系三元共晶との組み合わせにより、耐黒変性と耐食性をよくするものである。なお、モリブデン酸塩としては、化成処理中に溶解するものであればよく、特に限定されるものではない。モリブデン酸塩の種類としては、例えばアンモニウム、ナトリウム等の塩が例示できる。化成処理皮膜中のモリブデン酸塩の含有量は、特に限定されるものではない。
【0023】
また、化成処理皮膜には、モリブデン酸塩に加えて、クロム酸、リン酸塩、あるいは、Ti、Zr、V、Mn、Ni、Coなどのフッ化物もしくは塩、シラン化合物、金属キレート剤、水性樹脂、シリカゾルなどの酸化物ゾルなどを含有してもよい。また、化成処理皮膜の片面当たりの付着量は、用途に応じて適宜決定すればよく、とくに限定する必要はないが、0.05 g/m以上であれば耐黒変性および耐食性が低下せず、一方、1.5 g/m以下であれば、皮膜形成量が多くなることがなく、製造コストは高騰しない。このようなことから、化成処理皮膜の片面当たりの付着量は、0.05〜1.5 g/mとすることが好ましい。
つぎに、本発明めっき鋼板の好ましい製造方法について説明する。
【0024】
基板とする鋼板を、例えば、連続式溶融Znめっき製造設備を利用して、溶融Zn−Al系合金めっき浴中に侵入させたのち、引き上げ、冷却して、鋼板表面に溶融Zn-Al系合金めっき層を形成する。
基板として使用する鋼板は、その種類、組成について、とくに限定する必要はなく、用途に応じて、公知の熱延鋼板、冷延鋼板のなかから適宜選択することができる。
【0025】
まず、基板である鋼板は、例えば、連続式溶融Znめっき製造設備を用いて、所望の加熱温度まで加熱される。加熱温度は、使用する鋼板に応じて、適宜決定すればよく、とくに限定する必要はないが、本発明では、めっき浴に侵入する際に、鋼板温度(板温)を所望の温度に調整する必要があり、少なくともめっき浴に侵入する際の、所望の鋼板温度(板温)を確保できる加熱温度とする必要がある。
【0026】
所定の温度に加熱された鋼板は、所定の組成、浴温に保持された溶融Zn−Al系合金めっき浴に侵入する。
鋼板が侵入する、溶融Zn−Al系合金めっき浴の組成は、質量%で、Al:3〜6%、Mg:0.2〜1.0%、Ni:0.01〜0.10%を含み、残部Znおよび不可避的不純物からなる組成とする。また、めっき浴の浴温は、420℃〜520℃とする。めっき浴の浴温が420℃未満では、浴温が低すぎて、めっき浴が一部凝固する場合があり、所定のめっき処理ができなくなる。一方、520℃を超えて高温となると、めっき浴の酸化が著しくなり、ドロスの発生が増加する。このため、めっき浴の浴温は420℃〜520℃の範囲の温度に限定した。
【0027】
また、めっき浴に侵入する鋼板の温度(板温)は、420〜600℃の範囲でかつめっき浴の浴温以上の温度に調整する。侵入する鋼板の板温が、浴温未満では浴温が次第に低下していくため、めっき浴の粘性が大きくなり、操業に支障をきたす。一方、600℃を超えると、浴温が次第に上昇し、めっき定着性が低下する。このため、めっき浴に侵入する鋼板の温度(板温)は、420〜600℃の範囲の温度で、かつめっき浴の浴温以上に限定した。
本発明では、上記しためっき浴を上記した範囲の浴温とし、さらにめっき浴に侵入する鋼板の温度(板温)を、420〜600℃の範囲の温度に調整したうえ、さらにめっき浴に侵入する鋼板の温度(板温)を、めっき浴の浴温以上となるように調整する。これにより、めっき浴と鋼板表面との界面で合金元素の拡散が生じ、めっき層と鋼板(基板)との界面にNi濃化層の形成が促進される。Ni濃化層の形成により、めっき層に基板に到達するような傷が生じた場合にも、あるいは加工によりめっき層にクラックが生じた場合にも、耐食性を向上できる。
【0028】
めっき浴に侵入した鋼板はついで、めっき浴から引き上げられ、冷却される。引き上げたのちの冷却は、鋼板の表面温度で、350℃までの平均で、1〜100℃/sである冷却とする。350℃までの平均冷却速度で、1℃/s未満では、冷却に必要な時間が長くなるため、生産性が低下する。一方、100℃/sを超えて急冷とすると、Zn-Al-Mg系三元結晶が表面の面積率で50%を超え、化成処理の反応性とめっき層の加工性が低下する。このようなことから、鋼板をめっき浴から引き上げたのちの冷却速度は、350℃までの平均で、1〜100℃/sに限定した。なお、好ましくは2〜70℃/sである。
【0029】
表面にめっき層を形成された鋼板には、ついで、化成処理が施され、めっき層の上層として、化成処理皮膜が形成される。
本発明で行う化成処理で使用する化成処理液は、水等の溶媒に、モリブデン酸塩を、好ましくはpH:2〜6に調整した液を用いる。なお、化成処理液には、モリブデン酸塩に加えて、クロム酸、リン酸塩、あるいは、Ti、Zr、V、Mn、Ni、Coなどのフッ化物もしくは塩、シラン化合物、金属キレート剤、水性樹脂、シリカゾルなどの酸化物ゾルを含有してもよいことは言うまでもない。
【0030】
また、化学処理液のpHが2以上であれば、めっき層表面への溶解性が適度であり、化成処理皮膜が正常に形成され、定着性、耐食性が低下しない。一方、pHが6以下であれば、化成処理液の安定性が悪くなることがなく、密着性、耐食性が低下しない。このため、化学処理液のpHを2〜6の範囲に調整することが好ましい。
上記した化成処理液を、常温で、めっき層表面に塗布したのち、好ましくは鋼板温度として60〜120℃に加熱し乾燥して溶媒を蒸発させ、めっき層の上層である化学処理皮膜を形成する。塗布方法は、とくに限定されないが、通常公知の塗布方法である、ロールコート、シャワーリンガー、ディップ気体絞りなど連続的に処理する方法がいずれも適用できる。また、乾燥方法は、通常公知の方法である、熱風炉、電熱炉、誘導加熱等がいずれも適用できる。
【実施例】
【0031】
冷延鋼板(板厚:0.8mm、未焼鈍)を基板とし、該基板を、表1に示す侵入時の鋼板温度(板温)となるように加熱したのち、表1に示す各種組成、浴温の溶融Zn−Al系合金めっき浴に侵入させ、引き上げ、冷却して、基板表面に、表2に示す組成、付着量の溶融Zn−Al系合金めっき層を形成した。なお、引き上げ後、表1に示す引き上げ後から350℃までの平均で、表1に示す冷却速度で冷却した。
【0032】
ついで、得られためっき鋼板のめっき層表面に、化成処理液(液温:25℃)をロールコートで塗布し、続いて220℃の熱風炉で3秒間、乾燥し、0.6 g/mの化成処理皮膜を形成する化成処理を施した。なお、使用した化成処理液は、溶媒(水)に、モリブデン酸塩、ジルコン酸塩、チタン酸塩のうちのいずれか1種を質量比で10質量%添加し、表1に示すpHを有する液とした。
【0033】
得られた溶融Zn−Al系合金めっき鋼板について、まず、めっき層表面の組織観察、腐食試験を実施した。試験方法は次のとおりとした。
(1)めっき層表面の組織観察
得られた溶融Zn−Al系合金めっき鋼板から組織観察用試験片を採取し、走査型電子顕微鏡(倍率:1000倍)を用いて、めっき層表面の組織を観察した。また、EPMAを用いて、めっき層表面についてMgを分析し、その分析結果を画像解析して白黒の2階調化して、ヒストグラムより、Zn-Al-Mg系三元共晶の面積率を算出した。
ついで、得られた溶融Zn−Al系合金めっき鋼板について、耐黒変性試験を実施し、耐黒変性を評価した。試験方法は次のとおりである。
(2)耐黒変性試験
得られた溶融Zn−Al系合金めっき鋼板から試験片(平板:50×50mm)を採取し、該試験片を、温度:80℃、相対湿度:95%の恒温恒湿槽内に24時間保持する試験を実施し、試験片表面の明度Lを試験の前後で測定し、明度Lの差ΔLを求め、耐黒変性を評価した。評価基準は、下記のとおりとした。
【0034】
評点3:ΔL:8以下(黒変発生がほとんどない状態)
評価2:ΔL:8超〜15未満(若干の黒変が発生している状態)
評点1:ΔL:15以上(著しい黒変が発生している状態)
また、得られた溶融Zn−Al系合金めっき鋼板について、加工後の耐食性試験を実施し、加工部の耐食性を評価した。試験方法は次のとおりとした。
(3)加工部の耐食性試験
得られた溶融Zn−Al系合金めっき鋼板から曲げ試験片を採取し、JIS G 3317の規定に準拠して、内1.6mmR−180°曲げを付与したのち、JIS Z 2371の規定に準拠して塩水噴霧試験を実施した。塩水噴霧条件は、噴霧液:5質量%食塩水、温度:35℃、試験時間:2000hとした。試験後、試験片表面をデジタルカメラで観察し、撮像して、画像処理により、赤錆発生率(面積率)を求め、加工部の耐食性を評価した。評価の基準は次のとおりとした。
【0035】
評点3:赤錆発生なし
評価2:赤錆発生あり、赤錆発生率50%以下
評点1:赤錆発生あり、赤錆発生率50%超
得られた結果を表2に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
【表2】

【0038】
本発明例はいずれも、耐黒変性に優れ、かつ加工部の耐食性にも優れた、溶融Zn−Al系合金めっき鋼板となっている。一方、本発明の範囲を外れる比較例は、耐黒変性が低下しているか、加工部の耐食性が低下しているか、あるいは両方とも低下している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板である鋼板の少なくとも一方の表面に、溶融Zn-Al系合金めっき層を形成し、さらに該溶融Zn-Al系合金めっき層の上層として化成処理被膜を形成してなる溶融Zn-Al系合金めっき鋼板であって、
前記溶融Zn-Al系合金めっき層が、質量%で、
Al:3.0〜6.0%、 Mg:0.2〜1.0%、
Ni:0.01〜0.10%
を含有し、残部Znおよび不可避的不純物からなる組成を有するめっき層であり、該めっき層の表面組織が、Zn-Al-Mg系三元共晶を面積率で1〜50%含む組織であり、前記化成処理被膜が、モリブデン酸塩を含有する化成処理皮膜であることを特徴とする耐黒変性と耐食性に優れた溶融Zn-Al系合金めっき鋼板。
【請求項2】
前記モリブデン酸塩を含有する化成処理皮膜の片面当たりの付着量が、0.05〜1.5g/m2であることを特徴とする請求項1に記載の溶融Zn-Al系合金めっき鋼板。
【請求項3】
基板となる鋼板を、質量%で、Al:3〜6%、Mg:0.2〜1.0%、Ni:0.01〜0.10%を含み、残部Znおよび不可避的不純物からなる組成の溶融Zn−Al系合金めっき浴中に侵入させたのち、引き上げて冷却して、該鋼板表面に溶融Zn-Al系合金めっき層を形成し、さらに化成処理を施して、該溶融Zn-Al系合金めっき層の上層として、化成処理皮膜を形成する、溶融Zn-Al系合金めっき鋼板の製造方法であって、
前記溶融Zn−Al系合金めっき浴の温度を420℃〜520℃、前記溶融Zn−Al系合金めっき浴中に侵入する前記鋼板の温度を420〜600℃の温度で、かつ前記鋼板の温度を前記溶融Zn−Al系めっき浴の温度以上となるように調整して、前記溶融Zn−Al系合金めっき浴中に侵入させ、
さらに前記溶融Zn−Al系めっき浴から引き上げたのちの冷却を、前記鋼板の表面温度で、350℃までの平均で1〜100℃/sである冷却とし、
前記化成処理を、モリブデン酸塩を含有する化成処理液を用いる化成処理とすることを特徴とする耐黒変性と耐食性に優れた溶融Zn-Al系合金めっき鋼板の製造方法。
【請求項4】
前記したモリブデン酸塩を含有する化成処理液のpHが2〜6であることを特徴とする請求項3に記載の溶融Zn-Al系めっき鋼板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−36094(P2013−36094A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174017(P2011−174017)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【出願人】(000200323)JFE鋼板株式会社 (77)
【Fターム(参考)】