説明

耐食性被膜を有する装飾品及びその製造方法

【課題】ステンレス鋼からなる装飾品で、耐食性が高く、長期にわたって錆発生が極めて起こりにくく、その上、耐傷付き性に優れた耐食性被膜を有する装飾品を提供すること。
【解決手段】ステンレス鋼からなる装飾品用基材と、該基材表面に湿式メッキ法で形成された耐食性被膜層と、該耐食性被膜層の表面に乾式メッキ法により形成された下地層と、該下地層の表面に乾式メッキ法により形成された硬質被膜層と、該硬質被膜層の表面に乾式メッキ法により形成された貴金属被膜層とから構成されていることを特徴とする。
、耐食性が向上し、長期にわたって錆発生が極めて起こりにくくなり、その上、耐傷付き性に優れ、傷等による外観品質の劣化も起きにくい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐食性被膜を有する装飾品およびその製造方法に関し、さらに詳しくは、特に、長期間使用しても錆の発生が極めて起こりにくい装飾品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、装飾品である時計、ネックレス、ペンダント、ブローチ等は、耐食性等よりステンレス鋼、チタンまたはチタン合金を使用してる。これら素材を機械加工等で装飾品形状に加工した後、耐食性、耐傷性、装飾性等を上げるため表面に乾式メッキにより硬質の窒化チタン被膜と、この窒化チタン被膜の表面に金合金被膜を形成し、金色色調を有する装飾品を完成させている。
【0003】
また、白色色調を有する装飾品として、本願出願人が出願した、特開2003−253473号公報(特許文献1)がある。これは、金属素材表面に、チタンメッキ被膜(下地層)と、炭化チタンメッキ被膜(硬質被膜層)と、プラチナ被膜またはプラチナ合金被膜(貴金属被膜層)を乾式メッキ法でそれぞれ積層したもので、装飾品に形成された白色硬質被膜は、高級感が得られ、キズがつきにくく、その上、市場で要望されているステンレス鋼特有の白色色調が得られた。
【0004】
また、上記金色色調を有する装飾品も白色色調を有する装飾品もデザイン性を上げるため素材表面に模様等が入っている。この一般的な模様の入れ方として、素材表面に何らかの物理的方法、例えば、金属ブラシまたは樹脂ブラシを回転させながら素材表面に押し当てヘアーライン目付を行っている。
【特許文献1】特開2003−253473号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記金色色調を有する装飾品または白色色調を有する装飾品を長期間使用した場合や、通常よりも長い時間耐食テスト(CASS試験)を行った場合、僅かな錆が発生した。(当社規格:携帯上問題なし。)この原因は、デザイン性等を上げるため行われている素材表面への模様形成が考えられている。この一般的な模様の入れ方として、素材表面に何らかの物理的方法、例えば、金属ブラシまたは樹脂ブラシを回転させながら素材表面に押し当てヘアーライン目付を行っている。目付が施された装飾品表面には極僅かであるが切り粉(素材がこびり付、装飾品表面から僅かに突出している。)が付いた状態となっている。この状態で装飾品表面に乾式メッキ被膜(下地層、硬質被膜層、貴金属被膜層)を形成しても切り粉全体を覆うことができず、目に見えないような極僅か素材が露出していると考えられる。また、乾式メッキ法で成膜した時、避けて通ることが難しい超微細なピンホールも原因の一つ考えられる。このような目に見えないような極僅か素材が露出している部分や、乾式メッキ被膜に有する超微細なピンホールから人間の汗や水分が装飾品の素材と接触して錆発生が起こると考えられる。
【0006】
本発明は、上記問題を解決しようとするものであって、基材となるステンレス鋼から錆発生を起こりにくくし、長期間にわたって錆、傷等による外観品質の劣化を起きにくくした耐食性被膜を有する装飾品およびその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る白色被膜を有する装飾品は、
貴金属被膜層として貴金属または貴金属の合金からなる被膜が乾式メッキ法により形成された装飾品において、ステンレス鋼からなる装飾品用基材と、該基材表面に湿式メッキ法で形成された耐食性被膜層と、該耐食性被膜層の表面に乾式メッキ法により形成された下地層と、該下地層の表面に乾式メッキ法により形成された硬質被膜層と、該硬質被膜層の表面に乾式メッキ法により形成された貴金属被膜層とから構成され、前記硬質被膜層の厚みが0.2〜1.5μm、前記貴金属被膜層の厚みが0.002〜0.1μmであることを特徴とする。
【0008】
また、ステンレス鋼からなる前記基材表面と耐食性被膜層との間に、湿式メッキ法により形成された、金、金合金またはニッケルからなるストライクメッキ被膜層を有している。また、このストライクメッキ被膜層が、湿式メッキ法により形成された厚み0.05〜0.3μmであるが、好ましくは0.05〜0.15μm、もっとも好ましくは0.05〜0.1μmであることを特徴とする。
【0009】
また、ステンレス鋼からなる前記基材表面に形成される耐食性被膜層が、湿式メッキ法により形成された、ロジウム(Rh)、金(Au)、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)、プラチナ(Pt)、パラジウム(Pd)またはクロム(Cr)からなる被膜であることを特徴とする。また、他の耐食性被膜層として、湿式メッキ法により形成された、ロジウム合金、ニッケル合金、プラチナ合金、銅合金、金合金、ルテニウム合金、パラジウム合金の中の少なくとも1つからなる被膜であっても良い。
この耐食性被膜層の厚みは、0.1〜3μmの被膜であるが、好ましくは1.0〜2.5μm、もっとも好ましくは1.5〜2.0μmであることを特徴とする。
【0010】
また、耐食性被膜層表面に形成される下地層は、乾式メッキ法により形成された、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)またはタンタル(Ta)からなる被膜であることを特徴とする。また、他の下地層としては、乾式メッキ法により形成された、炭素原子含有量が5〜15原子%の炭化チタン、炭化クロム、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化バナジウム、炭化ニオブ、炭化タングステンまたは炭化タンタルからなる金属化合物被膜、または窒素原子含有量が5〜15原子%の窒化チタン、窒化クロム、窒化ジルコニウム、窒化ハフニウム、窒化バナジウム、窒化ニオブ、窒化タングステンまたは窒化タンタルであっても良い。この下地層の厚みは、0.02〜0.2μmの被膜であることが好ましい。
【0011】
また、硬質被膜層は、炭化チタン(TiC)、炭化クロム(Cr32)、炭化ジルコニウム(ZrC)、炭化ハフニウム(HfC)、炭化バナジウム(VC)、炭化ニオブ(NbC)、炭化タングステン(WC)、炭化タンタル(TaC)、窒化チタン(TiN)、窒化クロム(Cr32)、窒化ジルコニウム(ZrN)、窒化ハフニウム(HfN)、窒化バナジウム(VN)、窒化ニオブ(NbN)、窒化タングステン(WN)または窒化タンタル(TaN)からなる金属化合物被膜であることを特徴とする。この硬質被膜層の厚みは、0.2〜1.5μmであり、0.5〜1.0μmであることが好ましい。
【0012】
また、貴金属被膜層は、プラチナ(Pt)、パラジウム(Pd)、金(Au)またはロジウム(Rh)からなる被膜であることを特徴とする。また、他の貴金属被膜層として、プラチナ合金、パラジウム合金、金合金またはロジウム合金からなる被膜であっても良い。この貴金属被膜層の厚みは、0.002〜0.1μmであるが、好ましくは0.005〜0.1μm、更に好ましくは0.01〜0.08μmの被膜である。
【0013】
また、硬質被膜層と前記貴金属被膜層との間に、該硬質被膜層を形成する金属化合物と、該貴金属被膜層を形成する金属または合金とからなる混合層を有していることを特徴とする。この混合層の厚みは、0.005〜0.1μmであることを特徴とする。
【0014】
また、下地層、硬質被膜層、混合層および貴金属被膜層の各層は、スパッタ法、イオンプレーティング法およびアーク法の中の少なくとも1つの方式で形成されていることを特徴とする。
【0015】
また、貴金属被膜層表面の一部に、乾式メッキ法または湿式メッキ法により形成された、前記発色層の色調と異なる少なくとも1つの被膜を有していることを特徴とする。また、貴金属被膜層の色調と異なる被膜が、金、金合金、窒化チタン、窒化ジルコニウム、窒化ハフニウム、ロジウム、ロジウム合金、パラジウム、パラジウム合金、プラチナ、プラチナ合金またはダイヤモンドライクカーボン(DLC)からなることを特徴とする。また、貴金属被膜層と異なる被膜が、窒化チタン、窒化ジルコニウムまたは窒化ハフニウムからなる下層と、金または金合金からなる上層との二層構造になっていてもよい。更に、貴金属被膜層と、該発色層と異なる被膜であるダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜との間に、チタン被膜と該チタン被膜表面に形成されたシリコン被膜とを有していることが好ましい。
【0016】
また、貴金属被膜層は、前記硬質被膜層を形成する金属化合物と、プラチナ(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)または金(Au)からなる混合層であることを特徴とする。また、貴金属被膜層が、前記硬質被膜層を形成する金属化合物と、プラチナ合金、パラジウム合金、ロジウム合金または金合金からなる混合層であってもよい。
【0017】
本発明に係る耐食性被膜層を有する装飾品は、時計外装部品であることを特徴とする。
【0018】
本発明に係る白色被膜を有する装飾品の製造方法は、
貴金属または貴金属の合金からなる被膜が乾式メッキ法により形成された装飾品の製造方法において、ステンレス鋼からなる素材を用い、各種加工手段で装飾品用基材を製造する工程と、該基材表面に湿式メッキ法により耐食性被膜層を形成する工程と、該耐食性被膜層表面に乾式メッキ法により下地層を形成する工程と、該下地層の表面に乾式メッキ法により金属化合物からなる硬質被膜層を形成し、さらに該硬質被膜層の表面に乾式メッキ法によりプラチナ、プラチナ合金、パラジウム、パラジウム合金、ロジウム、ロジウム合金、金または金合金からなる貴金属被膜層を形成することを特徴とする。
【0019】
また、ステンレス鋼からなる前記基材表面と耐食性被膜層との間に、金または金合金からなるストライクメッキ被膜層を湿式メッキ法により形成することを特徴とする。また、ストライクメッキ被膜層として、厚み0.05〜0.3μmであるが、好ましくは0.05〜0.15μm、もっとも好ましくは0.05〜0.1μmで形成する。
【0020】
また、前記基材表面に、前記耐食性被膜層として、ロジウム(Rh)、金(Au)ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)、プラチナ(Pt)、パラジウム(Pd)またはクロム(Cr)からなる被膜を湿式メッキ法により形成することを特徴とする。また、他の耐食性被膜層として、ロジウム合金、ニッケル合金、パラジウム合金、プラチナ合金、銅合金、金合金、ルテニウム合金、パラジウム合金の中の少なくとも1つからなる被膜を湿式メッキ法により形成しても良い。
【0021】
また、基材表面に、前記耐食性被膜層として、厚み0.1〜3μmの被膜が湿式メッキ法により形成するが、好ましくは1.0〜2.5μm、もっとも好ましくは1.5〜2.0μmで形成する。
【0022】
また、装飾品用基材の耐食性被膜層表面に、前記下地層として、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(
Nb)またはタンタル(Ta)からなる被膜を乾式メッキ法により形成することを特徴とする。また、他の下地層として、炭素原子含有量が5〜15原子%の炭化チタン、炭化クロム、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化バナジウム、炭化ニオブ、炭化タングステンまたは炭化タンタルからなる金属化合物被膜を乾式メッキ法により形成しても良い。また、装飾品用基材の耐食性被膜層表面に、前記下地層として、厚み0.02〜0.2μmの被膜を乾式メッキ法により形成すると良い。
【0023】
また、硬質被膜層は、炭化チタン(TiC)、炭化クロム(Cr32)、炭化ジルコニウム(ZrC)、炭化ハフニウム(HfC)、炭化バナジウム(VC)、炭化ニオブ(NbC)、炭化タングステン(WC)、炭化タンタル(TaC)、窒化チタン(TiN)、窒化クロム(Cr32)、窒化ジルコニウム(ZrN)、窒化ハフニウム(HfN)、窒化バナジウム(VN)、窒化ニオブ(NbN)、窒化タングステン(WN)または窒化タンタル(TaN)からなる金属化合物被膜を乾式メッキ法により形成することを特徴とする。また、硬質被膜層の厚みが通常0.2〜1.5μmであるが、好ましくは0.5〜1.0μmで形成すると良い。
【0024】
また、貴金属被膜層は、プラチナ(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)または金(Au)からなる被膜を乾式メッキ法により形成することを特徴とする。また、他の貴金属被膜層として、プラチナ合金、パラジウム合金、ロジウム合金または金合金からなる被膜を乾式メッキ法により形成しても良い。また、貴金属被膜層の厚みが0.002〜0.1μmで乾式メッキ法により形成すると良い。
【0025】
また、硬質被膜層と貴金属被膜層との間に、該硬質被膜層を形成する金属化合物と、該貴金属被膜層を形成する金属または合金とからなる混合層を形成することを特徴とする。
【0026】
本発明に係る白色被膜を有する装飾品の製造方法は、下地層、硬質被膜層、混合層および貴金属被膜層の各層を、スパッタ法、イオンプレーティング法およびアーク法の少なくとも1つの方式で形成することを特徴とする。
【0027】
また、2種類以上の色調を有する装飾品の製造方法は、貴金属被膜層表面の一部に、該貴金属被膜層の色調と異なる少なくとも1つの被膜を乾式メッキ法または湿式メッキ法により形成することを特徴とする。
【0028】
また、貴金属被膜層の色調と異なる被膜は、金、金合金、窒化チタン、窒化ジルコニウム、窒化ハフニウムまたはダイヤモンドライクカーボン(DLC)からなることを特徴とする。
【0029】
また、貴金属被膜層と、該貴金属被膜層と異なる被膜であるダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜との間に、チタン被膜を形成し、さらに該チタン被膜表面にシリコン被膜を形成することを特徴とする。
【0030】
また、貴金属被膜層は、前記硬質被膜層を形成する金属化合物と、プラチナ(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)または金(Au)とからなる混合層であることを特徴とする。また、貴金属被膜層が、前記硬質被膜層を形成する金属化合物と、プラチナ合金、パラジウム合金,ロジウム合金または金合金とからなる混合層で形成しても良い。
【0031】
また、装飾品が時計外装部品であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、長期の使用においても装飾品の基材となるステンレス鋼からの錆発生
は殆どなく、よって、装飾品の劣化が起きにくくなり、長期間にわたり外観品質が維持できる。その上、高級感があり、硬質で耐傷付き性に優れ、傷等による外観品質の劣化が起きにくく、高級感のある耐食性被膜を有する装飾品およびその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明に係る耐食性被膜を有する装飾品およびその製造方法について具体的に説明する。
本発明に係る耐食性被膜を有する装飾品は、ステンレス鋼からなる装飾品用基材と、該基材表面に湿式メッキ法で形成された耐食性被膜層と、該耐食性被膜層の表面に乾式メッキ法により形成された下地層と、該下地層の表面に乾式メッキ法により形成された硬質被膜層と、該硬質被膜層の表面に乾式メッキ法により形成された貴金属被膜層とから構成されている。
【0034】
また、本発明に係る装飾品は、前記貴金属被膜層表面の一部に、この貴金属被膜層の色調と異なる少なくとも1つの被膜を有していてもよい。
【0035】
〔装飾品用基材〕
ステンレス鋼からなる装飾品用基材は、上記の金属から従来公知の機械加工により製造される。また、装飾品用基材には、必要に応じて各種手段により、鏡面、梨地、ヘアライン模様、ホーニング模様、型打ち模様、エッチング模様の中の少なくとも1つの表面仕上げが施されている。
【0036】
本発明における装飾品(装身具)(部品も含む)としては、たとえば腕時計ケース、腕時計バンド、腕時計のリューズ、腕時計の裏蓋等の時計外装部品、さらにはベルトのバックル、指輪、ネックレス、ブレスレット、イヤリング、ペンダント、ブローチ、カフスボタン、ネクタイ止め、バッジ、メダル、眼鏡のフレーム、カメラのボディ、ドアノブなどが挙げられる。
【0037】
本発明においては、装飾品用基材の表面にストライクメッキ被膜層及び耐食性被膜層を形成する前に、予め装飾品用基材表面を従来公知の有機溶剤等で洗浄・脱脂しておくことが好ましい。
〔耐食性被膜層〕
本発明に係る装飾品を構成している耐食性被膜層は、湿式メッキ法により形される少なくとも1つのメッキ被膜からなる。このメッキ被膜として、ロジウム(Rh)、金(Au)、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)、プラチナ(Pt)、パラジウム(Pd)、クロム(Cr)などがある。また、他の耐食性被膜層として、湿式メッキ法により形成された、ロジウム合金、ニッケル合金、プラチナ合金、銅合金、金合金、ルテニウム合金、パラジウム合金の中の少なくとも1つからなる被膜であっても良い。また、装飾品用基材表面と耐食性被膜層との密着をより強固なものとするには、装飾品用基材表面と耐食性被膜層との間にストライクメッキ被膜層を設ける。このストライクメッキ被膜層として、金または金合金などがある。
【0038】
〔下地層〕
本発明に係る白色被膜を有する装飾品を構成している下地層は、乾式メッキ法
により形成される少なくと1つのメッキ被膜からなる。このメッキ被膜として、
チタン(Ti)、クロム(Cr)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf) 、バ
ナジウム(V)、ニオブ(Nb)またはタンタル(Ta)などがある。
【0039】
下地層表面に、硬質被膜層として炭化チタン(TiC)、炭化クロム(Cr32)、炭
化ジルコニウム(ZrC)、炭化ハフニウム(HfC)、炭化バナジウム(VC)、炭化ニオブ(NbC)、炭化タングステン(WC)または炭化タンタル(TaC)からなる金属化合物被膜を形成する場合には、基材と硬質被膜層との密着性を更に高めるという観点から、下地層は、乾式メッキ法により形成された、炭素原子含有量が5〜15原子%の炭化チタン、炭化クロム、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化バナジウム、炭化ニオブ、炭化タングステンまたは炭化タンタルからなる金属化合物被膜であることが特に好ましい。また、下地層表面に、硬質被膜層として窒化チタン(TiN)、窒化クロム(Cr32)、窒化ジルコニウム(ZrN)、窒化ハフニウム(HfN)、窒化バナジウム(VN)、窒化ニオブ(NbN)、窒化タングステン(WN)または窒化タンタル(TaN)からなる金属化合物被膜を形成する場合には、基材と硬質被膜層との密着性を更に高めるという観点から、下地層は、乾式メッキ法により形成された、窒素原子含有量が5〜15原子%の窒化チタン、窒化クロム、窒化ジルコニウム、窒化ハフニウム、窒化バナジウム、窒化ニオブ、窒化タングステンまたは窒化タンタルからなる金属化合物被膜であることが特に好ましい。この金属化合物被膜において、装飾品用基材表面に近づくに従って、上記金属化合物の炭素原子含有量または窒素原子含有量が徐々に少なくなっており、この金属化合物被膜は、いわゆる傾斜膜と呼ばれる。
【0040】
本発明に係る装飾品は、硬質被膜層と貴金属被膜層、または硬質被膜層と混合層と貴金属被膜層とから構成されている。これらの層は乾式メッキ法により形成される。乾式メッキ法としては、具体的には、スパッタリング法、アーク法、イオンプレーティング法、イオンビーム等の物理的蒸着法(PVD)、CVDなどが挙げられる。中でも、スパッタリング法、アーク法、イオンプレーティング法が特に好ましく用いられる。
【0041】
(硬質被膜層)
上記硬質被膜層は、下地層表面に乾式メッキ法により形成される金属化合物被膜からなる。このような金属化合物被膜としては、炭化チタン(TiC)、炭化クロム(Cr32)、炭化ジルコニウム(ZrC)、炭化ハフニウム(HfC)、炭化バナジウム(VC)、炭化ニオブ(NbC)、炭化タングステン(WC)、炭化タンタル(TaC)、窒化チタン(TiN)、窒化クロム(Cr32)、窒化ジルコニウム(ZrN)、窒化ハフニウム(HfN)、窒化バナジウム(VN)、窒化ニオブ(NbN)、窒化タングステン(WN)または窒化タンタル(TaN)からなる金属化合物被膜が望ましい。
【0042】
この硬質被膜層の厚みは、0.2〜1.5μm、好ましくは0.5〜1.0μmである。
【0043】
(貴金属被膜層)
上記貴金属被膜層は、上記硬質被膜層または後述の混合層の表面に、乾式メッキ法により形成される貴金属(合金を含む)の被膜からなる。
【0044】
このような貴金属からなる被膜としては、プラチナ(Pt)、パラジウム(Pd)、金(Au)、ロジウム(Rh)、プラチナ合金、パラジウム合金、金合金またはロジウム合金からなる貴金属被膜が望ましい。また、本発明においては、後述する混合層を貴金属被膜層とすることができる。貴金属被膜層の厚みは、0.002〜0.1μm、好ましくは0.005〜0.1μm、さらに好ましくは0.01〜0.08μmである。ただし、貴金属被膜層としてプラチナ被膜またはプラチナ合金被膜を形成する場合には、その被膜の厚みは、0.002〜0.01μm、好ましくは0.005〜0.08μmである。
【0045】
(混合層)
本発明において必要に応じて硬質被膜層と貴金属被膜層との間に形成されることがある混合層は、乾式メッキ法により形成される被膜である。この被膜は、硬質被膜層を形成す
る金属化合物(たとえば炭化チタン)と、貴金属被膜層を形成する金属または合金(たとえばプラチナ、プラチナ合金)とからなる。この混合層の厚みは、通常、0.005〜0.1μm、好ましくは0.01〜0.08μmであることが望ましい。このような混合層を設けることにより、硬質被膜層と貴金属被膜層との密着性をより強固にすることができる。
【0046】
〔発色層と異なる被膜〕
本発明に係る装飾品は、前記貴金属被膜層表面の一部に、この貴金属被膜層の色調と異なる少なくとも1つの被膜が乾式メッキ法または湿式メッキ法により形成されていてもよい。貴金属被膜層の色調と異なる被膜としては、金、金合金(好ましくはニッケルを含まない金合金)、窒化チタン、窒化ジルコニウム、窒化ハフニウム、ロジウム、ロジウム合金、パラジウム、パラジウム合金、プラチナ、プラチナ合金またはダイヤモンドライクカーボン(DLC)からなる被膜が望ましい。この被膜は、貴金属被膜層とともに装飾品の外観に現れる。したがって、本発明に係る装飾品には、いわゆるツートーンの装飾品等も含まれる。
【0047】
貴金属被膜層と色調の異なるメッキ被膜の厚みは、通常0.1〜1.0μm、好ましくは0.2〜0.5μmである。また、この貴金属被膜層と色調の異なる被膜は、例えば、窒化チタン、窒化ジルコニウムまたは窒化ハフニウムからなる下層と、金または金合金(たとえば金−鉄合金)からなる上層との二層構造になっていてもよい。この場合、下層の厚みは、通常0.2〜1.5μm、好ましくは0.5〜1.0μmであり、上層の厚みは、通常0.03〜0.2μm、好ましくは0.05〜0.1μmである。
【0048】
さらに、貴金属被膜層と色調の異なる被膜は、例えば、チタンからなる下層と、窒化チタン、窒化ジルコニウム、または窒化ハフニウムからなる中間層と、金または金合金からなる上層との三層構造になっていてもよい。この場合、下層の厚みは、通常0.02〜0.1μm、好ましくは0.03〜0.08μmであり、中間層の厚みは、通常0.2〜1.5μm、好ましくは0.5〜1.0μmであり、上層の厚みは、通常0.03〜0.2μm、好ましくは0.05〜0.1μmである。
【0049】
さらにまた、この貴金属被膜層と色調の異なる被膜は、貴金属被膜層表面の一部に、チタン被膜とシリコン被膜とダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜とがこの順で形成されていてもよい。この場合、下層の厚みは、通常0.05〜0.3μm、好ましくは0.08〜0.2μmであり、中間層の厚みは、通常0.05〜0.3μm、好ましくは0.08〜0.2μmであり、上層の厚みは、通常0.5〜3.0μm、好ましくは0.8〜1.5μmである。
【0050】
上記の単層構造、二層構造、三層構造を構成する各層は、通常、乾式メッキ法により形成される。乾式メッキ法としては、具体的には、スパッタリング法、アーク法、イオンプレーティング法、イオンビーム等の物理的蒸着法(PVD)、CVDなどが挙げられる。中でも、スパッタリング法、アーク法、イオンプレーティング法が特に好ましく用いられる。
【0051】
また、この貴金属被膜層と色調の異なる被膜は、例えば、湿式メッキ法により形成される金ストライクメッキ被膜等からなる下層と、湿式メッキ法により形成される金、金合金、ロジウム、ロジウム合金、パラジウム、パラジウム合金、プラチナまたはプラチナ合金メッキ被膜等からなる上層との二層構造であってもよい。この場合、下層の厚みは、通常0.05〜0.2μm、好ましくは0.05〜0.1μmであり、上層の厚みは、通常1.0〜10μm、好ましくは1.0〜3.0μmである。
【0052】
このような貴金属被膜層と色調の異なる被膜を貴金属被膜層表面の一部に有する装飾品は、たとえば以下のような方法により製造することができる。まず、装飾品用基材表面に耐食性被膜層及び下地層を形成し、この下地層表面に、前記硬質被膜層及び貴金属被膜層を形成した後、この貴金属被膜層表面の一部にマスキング処理を施し、この貴金属被膜層およびマスク表面に貴金属被膜層と色調の異なるメッキ被膜を乾式メッキ法または湿式メッキ法で形成し、その後、このマスクおよびマスクの上のメッキ被膜を除去する工程を少なくとも1回行なうことにより、2以上の色調を有する貴金属被膜層を得ることができる。
【0053】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、これらの実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0054】
まず、ステンレス鋼(SUS316L)を機械加工して得られた腕時計ケース用基材および腕時計バンド用基材を有機溶剤で洗浄・脱脂した。なお、これらの基材の表面は、機械加工によりヘアライン仕上げとした。次いで、この基材を下記の組成のメッキ液に浸漬し、下記のメッキ条件で電気メッキして、厚み(0.1μm)の金(または金合金)ストライクメッキ被膜層を基材表面に形成し、水洗した。
《金ストライクメッキ》
<メッキ液の組成>
金 3〜5g/l
硫酸 10g/l
<メッキ条件>
pH 0.3以上1未満
液温 25℃
電流密度(Dk) 3〜5A/dm2
時間 30秒
次いで、この金ストライクメッキ被膜を有する基材を下記の組成のメッキ液に浸漬し、下記のメッキ条件で電気メッキして、厚み1.5μmのロジウムの耐食性被膜層を金ストライクメッキ被膜表面に形成し、水洗した。
《ロジウムメッキ》
<メッキ液の組成>
硫酸 60g/l
ロジウム 5〜6g/l
<メッキ条件>
pH 0.3〜1未満
液温 45℃
電流密度(Dk) 1〜2A/dm2
時間 15分
光沢剤 適量
次いで、これら基材をイオンプレーティング装置内に取り付け、アルゴン雰囲気中で基材表面をボンバードクリーニングした。
【0055】
次いで、これらの耐食性被膜層表面に、厚み0.05μmのチタンメッキ被膜(下地層)をイオンプレーティング法(熱陰極法)により下記の成膜条件で形成した。
<成膜条件>
蒸発源:チタン
電子銃:10kV、200〜500mA
ガス:アルゴンガス
成膜圧力:0.004〜0.009Pa
加速電圧(バイアス電圧):Ground〜−100V
アノード電圧:50V
フィラメント電圧:7V
【0056】
次いで、これらの基材表面に形成されたチタンメッキ被膜表面に、厚み0.6μmの白色色調を有する炭化チタンメッキ被膜(硬質被膜層)をイオンプレーティング法(熱陰極法)により下記の成膜条件で形成した。
<成膜条件>
蒸発源:チタン
電子銃:10kV、300mA
ガス:メタンガス
成膜圧力:0.02Pa
加速電圧(バイアス電圧):Ground〜−100V
アノード電圧:60V
フィラメント電圧:7V
【0057】
次いで、これらの基材表面に形成された炭化チタンメッキ被膜表面に、厚み0.05μmの白色色調を有する炭化チタンとプラチナとの混合メッキ被膜(混合層)をイオンプレーティング法(熱陰極法)により下記の成膜条件で形成した。
<成膜条件>
蒸発源:チタン、プラチナ
電子銃:10kV、300mA(蒸発源:チタン)、
10kV、500mA(蒸発源:プラチナ)
ガス:メタンガス
成膜圧力:0.02Pa
加速電圧(バイアス電圧):Ground〜−50V
アノード電圧:60V
フィラメント電圧:7V
【0058】
次いで、これらの基材表面に形成された炭化チタンとプラチナとの混合メッキ被膜表面に、厚み0.005μmの白色色調を有するプラチナメッキ被膜(貴金属被膜層)をイオンプレーティング法(熱陰極法)により下記の成膜条件で形成し、ステンレス鋼色の腕時計ケースおよび腕時計バンドを得た。
<成膜条件>
蒸発源:プラチナ
電子銃:10kV、500mA
ガス:アルゴンガス成膜圧力:0.2Pa
加速電圧(バイアス電圧):Ground〜−50V
アノード電圧:60V
フィラメント電圧:7V
【0059】
上記のようにして得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されているプラチナメッキ被膜(硬質被膜層+混合層を含む)の表面硬度(Hv;マイクロビッカース硬度計、5mN荷重、保持時間10秒)は、1400であった。これらの腕時計ケースおよび腕時計バンドは、耐傷付き性に優れ、しかも、ステンレス鋼被膜に近く高級感のある白色被膜が形成されていた。
【0060】
また、高級感のある貴金属被膜層(白色被膜)のL*、a*、b*表示系(CIE表系)による色評価は、82<L*<85、0<a*<2.0、4.0<b*<5.0であった。
【実施例2】
【0061】
まず、ステンレス鋼(SUS316L)を機械加工して得られた腕時計ケース用基材および腕時計バンド用基材を有機溶剤で洗浄・脱脂した。なお、これらの基材の表面は、機械加工によりヘアライン仕上げとした。次いで、この基材を下記の組成のメッキ液に浸漬し、下記のメッキ条件で電気メッキして、厚み(0.1μm)の金(または金合金)ストライクメッキ被膜層を基材表面に形成し、水洗した。
《金ストライクメッキ》
<メッキ液の組成>
金 3〜5g/l
硫酸 10g/l
<メッキ条件>
pH 0.3以上1未満
液温 25℃
電流密度(Dk) 3〜5A/dm2
時間 30秒
次いで、この金ストライクメッキ被膜を有する基材を下記の組成のメッキ液に浸漬し、下記のメッキ条件で電気メッキして、厚み1.5μmのロジウムの耐食性被膜層を金ストライクメッキ被膜表面に形成し、水洗した。
《ロジウムメッキ》
<メッキ液の組成>
硫酸 60g/l
ロジウム 5〜6g/l
<メッキ条件>
pH 0.3〜1未満
液温 45℃
電流密度(Dk) 1〜2A/dm2
時間 15分
光沢剤 適量
次いで、これら基材をイオンプレーティング装置内に取り付け、アルゴン雰囲気中で基材表面をボンバードクリーニングした。
【0062】
次いで、これらの耐食性被膜層表面に、厚み0.05μmのチタンメッキ被膜(下地層)をイオンプレーティング法(熱陰極法)により下記の成膜条件で形成した。
<成膜条件>
蒸発源:チタン
電子銃:10kV、200〜500mA
ガス:アルゴンガス
成膜圧力:0.004〜0.009Pa
加速電圧(バイアス電圧):Ground〜−100V
アノード電圧:50V
フィラメント電圧:7V
【0063】
次いで、これらの基材表面に形成されたチタンメッキ被膜表面に、厚み0.6μmの白色色調を有する炭化チタンメッキ被膜(硬質被膜層)をイオンプレーティング法(熱陰極法)により下記の成膜条件で形成した。
<成膜条件>
蒸発源:チタン
電子銃:10kV、300mA
ガス:メタンガスとアルゴンガスとの混合ガス
成膜圧力:0.02Pa
加速電圧(バイアス電圧):Ground〜−100V
アノード電圧:60V
フィラメント電圧:7V
【0064】
次いで、これらの基材表面に形成された炭化チタンメッキ被膜表面に、厚み0.005μmの白色色調を有するプラチナメッキ被膜(貴金属被膜層)をイオンプレーティング法(熱陰極法)により下記の成膜条件で形成し、ステンレス鋼色の腕時計ケースおよび腕時計バンドを得た。
<成膜条件>
蒸発源:プラチナ
電子銃:10kV、500mA
ガス:アルゴンガス
成膜圧力:0.2Pa
加速電圧(バイアス電圧):Ground〜−50V
アノード電圧:60V
フィラメント電圧:7V
【0065】
上記のようにして得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されているプラチナメッキ被膜(硬質被膜層を含む)の表面硬度(Hv;マイクロビッカース硬度計、5mN荷重、保持時間10秒)は、1200であった。これらの腕時計ケースおよび腕時計バンドは、耐傷付き性に優れ、しかも、ステンレス鋼被膜に近く高級感のある白色被膜が形成されていた。
【0066】
また、高級感のある貴金属被膜層(白色被膜)のL*、a*、b*表示系(CIE表系)による色評価は、82<L*<85、0<a*<2.0、4.0<b*<5.0であった。
【実施例3】
【0067】
まず、ステンレス鋼(SUS316L)を機械加工して得られた腕時計ケース用基材および腕時計バンド用基材を有機溶剤で洗浄・脱脂した。なお、これらの基材の表面は、機械加工によりヘアライン仕上げとした。次いで、この基材を下記の組成のメッキ液に浸漬し、下記のメッキ条件で電気メッキして、厚み(0.1μm)のニッケルストライクメッキ被膜層を基材表面に形成し、水洗した。
《金ストライクメッキ》
<メッキ液の組成>
塩化ニッケル 150〜250g/l
塩酸 50〜150ml/l
<メッキ条件>
pH 0.3以上1未満
液温 15〜30℃
電流密度(Dk) 5〜10A/dm2
時間 20〜60秒
次いで、このニッケルストライクメッキ被膜を有する基材を下記の組成のメッキ液に浸漬し、下記のメッキ条件で電気メッキして、厚み3.0μmのニッケルメッキ被膜の耐食性被膜層をニッケルストライクメッキ被膜表面に形成し、水洗した。
《ニッケルメッキ》
<メッキ液の組成>
硫酸ニッケル 240〜450g/l
塩化ニッケル 38〜60g/l
硼酸 30〜50g/l
光沢剤 適量
<メッキ条件>
pH 2.8〜4.5
浴温 50〜70℃
電流密度(Dk) 3〜5A/dm2
時間 5分
次いで、これら基材をイオンプレーティング装置内に取り付け、アルゴン雰囲気中で基材表面をボンバードクリーニングした。
【0068】
次いで、これらの耐食性被膜層表面に、厚み0.05μmのチタンメッキ被膜(下地層)をイオンプレーティング法(熱陰極法)により下記の成膜条件で形成した。
<成膜条件>
蒸発源:チタン
電子銃:10kV、200〜500mA
ガス:アルゴンガス
成膜圧力:0.004〜0.009Pa
加速電圧(バイアス電圧):Ground〜−100V
アノード電圧:50V
フィラメント電圧:7V
【0069】
次いで、これらの基材表面に形成されたチタンメッキ被膜表面に、厚み0.6μmの白色色調を有する炭化チタンメッキ被膜(硬質被膜層)をイオンプレーティング法(熱陰極法)により下記の成膜条件で形成した。
<成膜条件>
蒸発源:チタン
電子銃:10kV、300mA
ガス:メタンガスとアルゴンガスとの混合ガス
成膜圧力:0.02Pa
加速電圧(バイアス電圧):Ground〜−100V
アノード電圧:60V
フィラメント電圧:7V
【0070】
次いで、これらの基材表面に形成された炭化チタンメッキ被膜表面に、厚み0.05μmの白色色調を有するプラチナメッキ被膜(貴金属被膜層)をイオンプレーティング法(熱陰極法)により下記の成膜条件で形成し、ステンレス鋼色の腕時計ケースおよび腕時計バンドを得た。
<成膜条件>
蒸発源:プラチナ
電子銃:10kV、500mA
ガス:アルゴンガス
成膜圧力:0.2Pa
加速電圧(バイアス電圧):Ground〜−50V
アノード電圧:60V
フィラメント電圧:7V
【0071】
上記のようにして得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されているプラチナメッキ被膜(硬質被膜層を含む)の表面硬度(Hv;マイクロビッカース硬度計、5mN荷重、保持時間10秒)は、1200であった。これらの腕時計ケースおよび腕時計バンドは、耐傷付き性に優れていた。
【0072】
また、高級感のある貴金属被膜層(白色被膜)のL*、a*、b*表示系(CIE表系)による色評価は、実施例2と同様で、得られたステンレス鋼色の硬質被膜(プラチナメッキ被膜)表面の一部に、この硬質被膜の色調と異なるメッキ被膜を乾式メッキ法により形成した。
すなわち、この硬質被膜表面に、厚み0.05μmのチタンメッキ被膜をイオンプレーティング法(熱陰極法)により下記の成膜条件で形成した。
<成膜条件>
蒸発源:チタン
電子銃:10kV、200〜500mA
ガス:アルゴンガス
成膜圧力:0.2Pa
加速電圧(バイアス電圧):Ground〜−100V
アノード電圧:40〜50V
フィラメント電圧:7V
【0073】
次いで、このチタンメッキ被膜表面に、厚み0.6μmの金色を呈する窒化チ
タンメッキ被膜をイオンプレーティング法(熱陰極法)により下記の成膜条件で 形成した。
<成膜条件>
蒸発源:チタン
電子銃:10kV、200〜500mA
ガス:アルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス
成膜圧力:0.2Pa
加速電圧(バイアス電圧):Ground〜−100V
アノード電圧:40〜50V
フィラメント電圧:7V
【0074】
次いで、この窒化チタンメッキ被膜表面に、厚み0.1μmの金色を呈する金
−鉄合金メッキ被膜をイオンプレーティング法(熱陰極法)により下記の成膜条
件で形成した。
<成膜条件>
蒸発源:金−鉄合金
電子銃:8kV、500mA
ガス:アルゴンガス
成膜圧力:0.26Pa
加速電圧(バイアス電圧):Ground〜−100V
アノード電圧:10〜30V
フィラメント電圧:7V
【0075】
次いで、この金−鉄合金メッキ被膜表面の一部にマスキング処理(マスク材と してエポキシ系レジストを使用)を施し、金−鉄合金メッキ被膜、窒化チタン メッキ被膜およびチタンメッキ被膜を順次エッチング液で除去し、最後にマス クを除去することにより、ステンレス鋼色の硬質被膜と金色の金−鉄合金メッ キ被膜とからなる、2つの色調の異なる貴金属被膜層被膜を有する腕時計ケー スおよび腕時計バンドを得た。
【0076】
なお、金−鉄合金メッキ被膜用剥離液として、シアンを主成分に酸化剤が含有された剥離液を用い、窒化チタンメッキ被膜およびチタンメッキ被膜用剥離液として、硝酸を主成分にフッ化アンモンが含有された剥離液を用い、マスク剥離液として塩化メチレンを用いた。
上記のようにして得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されているプラチナメッキ被膜(硬質被膜層を含む)の表面硬度(Hv;マイクロビッカース硬度計、5mN荷重、保持時間10秒)は、1200であり、金−鉄合金メッキ被膜(窒化チタンメッキ被膜を含む)の表面硬度(Hv;マイクロビッカース硬度計、5mN荷重、保持時間10秒)は、1000であった。これらの腕時計ケースおよび腕時計バンドは、耐傷付き性に優れ、しかも、ステンレス鋼被膜に近く高級感のある白色被膜が形成されていた。
【0077】
また、発色層を構成している貴金属被膜層(白色被膜)のL*、a*、b*表示系(CIE表系)による色評価は、82<L*<85、0<a*<2.0、4.0<b*<5.0であった。
【実施例4】
【0078】
実施例3と同様にして得たステンレス鋼色の硬質被膜(プラチナメッキ被膜)表面の一部に、この硬質被膜の色調と異なるメッキ被膜を湿式メッキ法により形成した。この硬質被膜が形成された基材を、前処理として電解脱脂、中和、水洗を行ないクリーニングを行なった。
【0079】
次いで、この硬質被膜を有する基材を下記の組成のメッキ液に浸漬し、下記のメッキ条件で電気メッキして、厚み0.1μmの金ストライクメッキ被膜を、硬質被膜表面に形成し、水洗した。
《金ストライクメッキ》
<メッキ液の組成>
金 3〜5g/l
硫酸 10g/l
<メッキ条件>
pH 0.3以上1未満
液温 25℃
電流密度(Dk) 3〜5A/dm2
時間 30秒
【0080】
次いで、この金ストライクメッキ被膜を有する基材を下記の組成のメッキ液に浸漬し、下記のメッキ条件で電気メッキして、厚み3.0μmの金−鉄合金メッキ被膜を、金ストライクメッキ被膜表面に形成し、水洗した。
《金−鉄合金メッキ》
<メッキ液の組成>
金 4.6g/l
鉄 0.6g/l
インジウム 3.5g/l
光沢剤 適量
<メッキ条件>
pH 3.5〜3.7
浴温 37〜40℃
電流密度(Dk) 1.0〜1.5A/dm2
時間 30分
【0081】
次いで、この金−鉄合金メッキ被膜表面の一部にマスキング処理を施し、金−鉄合金メッキ被膜および金ストライクメッキ被膜を順次エッチング液で除去し、最後にマスクを除去することにより、ステンレス鋼色の硬質被膜と金色の金−鉄合金メッキ被膜とからなる、2つの色調の異なる貴金属被膜層被膜を有する腕時計ケースおよび腕時計バンドを得た。
【0082】
なお、金−鉄合金メッキ被膜および金ストライクメッキ被膜用剥離液として、シアンを主成分に酸化剤が含有された剥離液を用い、マスク剥離液として塩化メチレンを用いた。上記のようにして得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されているプラチナ被膜(硬質被膜層を含む)の表面硬度(Hv;マイクロビッカース硬度計、5mN荷重、保持時間10秒)は1100であり、金−鉄合金メッキ被膜の表面硬度(Hv;マイクロビッカース硬度計、5mN荷重、保持時間10秒)は、120であった。これらの腕時計ケースおよび腕時計バンドは、耐傷付き性に優れ、しかも、ステンレス鋼被膜に近く高級感のある白色被膜が形成されていた。
【0083】
また、発色層を構成している貴金属被膜層(白色被膜)のL*、a*、b*表示系(CIE表系)による色評価は、82<L*<85、0<a*<2.0、4.0<b*<5.0であった。
【実施例5】
【0084】
実施例3と同様にして得たステンレス鋼色の硬質被膜(プラチナ被膜)表面の一部に、この硬質被膜の色調と異なるメッキ被膜を乾式メッキ法により形成した。すなわち、この硬質被膜表面の一部にマスク材(エポキシ系レジスト)を塗布し乾燥させた後、硬質被膜表面およびマスク材表面に、厚み0.05μmのチタンメッキ被膜をスパッタリング法(マグネトロンスパッタリング方式)により下記の成膜条件で形成した。
<成膜条件>
ターゲット:チタン
スパッタガス:アルゴンガス
成膜圧力:0.02Pa
ターゲット印加電力:0.3〜0.5kW
バイアス電圧(加速電圧):−50〜−100V
【0085】
次いで、このチタンメッキ被膜表面に、厚み0.1μmのシリコンメッキ被膜をスパッタリング法(マグネトロンスパッタリング方式)により下記の成膜条件で形成した。
<成膜条件>
ターゲット:シリコン
スパッタガス:アルゴンガス
成膜圧力:0.05Pa
ターゲット印加電力:0.3〜0.5kW
バイアス電圧(加速電圧):−50〜−100V
【0086】
次いで、このシリコンメッキ被膜表面に、厚み0.1μmの黒色のダイヤモンドライクカーボン(DLC)メッキ被膜をプラズマCVD(Chemical Vaper Deposition)により下記の成膜条件で形成した。
<成膜条件>
ガ ス :ベンゼン
成膜圧力:0.2Pa
フィラメント電流:20A
アノード電流:2.0A
カソード電圧(加速電圧):−1.0〜−5.0kV
次いで、塩化メチレンでマスキング材を剥離し、マスキング材直上に形成されているチタンメッキ被膜、シリコンメッキ被膜およびDLCメッキ被膜をリフトオフすることにより、ステンレス鋼色の硬質被膜と黒色のDLCメッキ被膜とからなる、2つの色調の異なる貴金属被膜層被膜を有する腕時計ケースおよび腕時計バンドを得た。
【0087】
上記のようにして得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されているプラチナメッキ被膜(硬質被膜層を含む)の表面硬度(Hv;マイクロビッカース硬度計、5mN荷重、保持時間10秒)は、1200であり、DLCメッキ被膜の表面硬度(Hv;マイクロビッカース硬度計、5mN荷重、保持時間10秒)は、1800であった。これらの腕時計ケースおよび腕時計バンドは、耐傷付き性に優れ、しかも、ステンレス鋼被膜に近く高級感のある白色被膜が形成されていた。
【0088】
また、発色層を構成している貴金属被膜層(白色被膜)のL*、a*、b*表示系(CIE表系)による色評価は、82<L*<85、0<a*<2.0、4.0<b*<5.0であった。
【実施例6】
【0089】
まず、ステンレス鋼を機械加工して得られた腕時計ケース用基材および腕時計バンド用基材を有機溶剤で洗浄・脱脂した。なお、これらの基材の表面は、機械加工によりヘアライン仕上げとした。次いで、この基材を下記の組成のメッキ液に浸漬し、下記のメッキ条件で電気メッキして、厚み0.1μmの金(または金合金)ストライクメッキ被膜層を基材表面に形成し、水洗した。
《金ストライクメッキ》
<メッキ液の組成>
金 3〜5g/l
硫酸 10g/l
<メッキ条件>
pH 0.3以上1未満
液温 25℃
電流密度(Dk) 3〜5A/dm2
時間 30秒
次いで、この金ストライクメッキ被膜を有する基材を下記の組成のメッキ液に浸漬し、下記のメッキ条件で2回にわけ電気メッキして、総厚が1.5μm(第1回のメッキを厚み1.0μm形成し、水洗後、第2回のメッキを厚み0.5μm形成する。)のロジウムの耐食性被膜層を金ストライクメッキ被膜表面に形成し、水洗した。なお、耐食性被膜層の形成を2回にわけた理由は、耐食性被膜層の微細なピンホールをできるだけ少なくするためと、切り粉等の全表面を覆うために行ったものである。
《ロジウムメッキ》
<メッキ液の組成>
硫酸 60g/l
ロジウム 5〜6g/l
光沢剤 適量
<メッキ条件>
pH 0.3〜1未満
液温 45℃
電流密度(Dk) 1〜2A/dm2
時間 第1回:10分、第2回:5分
次いで、これら基材をスパッタリング装置内に取り付け、アルゴン雰囲気中で基材表面をボンバードクリーニングした。
【0090】
次いで、これらの基材表面に、厚み0.05μmのジルコニウムメッキ被膜(下地層)をスパッタリング法(マグネトロンスパッタリング方式)により下記の成膜条件で形成した。
<成膜条件>
ターゲット:ジルコニウムスパッタ
ガス:アルゴンガス
成膜圧力:0.5Pa
ターゲット印加電力:0.5kW
バイアス電圧(加速電圧):−50V
【0091】
次いで、これらの基材表面に形成されたジルコニウムメッキ被膜表面に、厚み
0.6μmの白色色調を有する炭化ジルコニウムメッキ被膜(硬質被膜層)をスパッタリング法(マグネトロンスパッタリング方式)により下記の成膜条件で形成した。
<成膜条件>
ターゲット:ジルコニウムスパッタ
スパッタガス:メタンガスとアルゴンガスとの混合ガス
成膜圧力:0.665Pa
ターゲット印加電力:0.5kW
バイアス電圧(加速電圧):−50V
【0092】
次いで、これらの基材表面に形成された炭化ジルコニウムメッキ被膜表面に、
厚み0.005μmの白色色調を有するプラチナメッキ被膜(貴金属被膜層)スパッタリング法(マグネトロンスパッタリング方式)により下記の成膜条件で形成し、ステンレス鋼色の腕時計ケースおよび腕時計バンドを得た。
<成膜条件>
ターゲット:プラチナ
スパッタガス:アルゴンガス
成膜圧力:0.2Pa
ターゲット印加電力:0.5kW
バイアス電圧(加速電圧):−50V
上記のようにして得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されているプラチナメッキ被膜(硬質被膜層を含む)の表面硬度(Hv;マイクロビッカース硬度計、5mN荷重、保持時間10秒)は、1300であった。これらの腕時計ケースおよび腕時計バンドは、耐傷付き性に優れ、しかも、ステンレス鋼被膜に近く高級感のある白色被膜が形成されていた。
【0093】
また、発色層のL*、a*、b*表示系(CIE表系)による色評価は、82<L*<85、0<a*<2.0、4.0<b*<5.0であった。
【実施例7】
【0094】
まず、ステンレス鋼(SUS316L)を機械加工して得られた腕時計ケース用基材および腕時計バンド用基材を有機溶剤で洗浄・脱脂した。なお、これらの基材の表面は、機械加工によりヘアライン仕上げとした。次いで、この基材を下記の組成のメッキ液に浸漬し、下記のメッキ条件で電気メッキして、厚み0.1μmの金(または金合金)ストライクメッキ被膜層を基材表面に形成し、水洗した。
《金ストライクメッキ》
<メッキ液の組成>
金 3〜5g/l
硫酸 10g/l
<メッキ条件>
pH 0.3以上1未満
液温 25℃
電流密度(Dk) 3〜5A/dm2
時間 30秒
次いで、この金ストライクメッキ被膜を有する基材を下記の組成のメッキ液に浸漬し、
下記のメッキ条件で電気メッキして、厚み1.5μmの金−鉄合金の耐食性被膜層を金ストライクメッキ被膜表面に形成し、水洗した。
《金−鉄メッキ》
<メッキ液の組成>
金 4.6g/l
鉄 0.6g/l
インジウム 3.5g/l
光沢剤 適量
<メッキ条件>
pH 4.7
液温 50℃
電流密度(Dk 1.0A/dm2
時間 15分
【0095】
次いで、これら基材をスパッタリング装置内に取り付け、アルゴン雰囲気中で
基材表面をボンバードクリーニングした。
【0096】
次いで、これらの基材の耐食性被膜層表面に、厚み0.05μmの炭素原子含有量5〜15原子%の傾斜構造からなる炭化チタンメッキ被膜(下地層)をイオンプレーティング法(熱陰極法)により下記の成膜条件で形成した。
<成膜条件>
蒸発源:チタン
電子銃:10kV、200〜500mA
ガス:アルゴンガスとメタンガスとの混合ガス
成膜圧力:0.2Pa
加速電圧(バイアス電圧):Ground〜−100V
アノード電圧:40〜50V
フィラメント電圧:7V
【0097】
次いで、これらの基材表面に下地層として形成された炭化チタンメッキ被膜表面に、厚み0.6μm、炭素原子含有量40±10原子%の白色色調を有する炭化チタンメッキ被膜(硬質被膜層)をイオンプレーティング法(熱陰極法)により下記の成膜条件で形成した。
<成膜条件>
蒸発源:チタン
電子銃:10kV、200〜500mA
ガス:アルゴンガスと炭素ガスとの混合ガス
成膜圧力:0.2Pa
加速電圧(バイアス電圧):Ground〜−100V
アノード電圧:40〜50V
フィラメント電圧:7V
【0098】
次いで、これらの基材表面に形成された炭化チタンメッキ被膜表面に、厚み0.005μmの白色色調を有するプラチナメッキ被膜(貴金属被膜層)をイオンプレーティング法(熱陰極法)により下記の成膜条件で形成し、白色色調の腕時計ケースおよび腕時計バンドを得た。
<成膜条件>
蒸発源:プラチナ
電子銃:10kV、500mA
ガス:アルゴンガス
成膜圧力:0.2Pa
加速電圧(バイアス電圧):Ground〜−50V
アノード電圧:60V
フィラメント電圧:7V
上記のようにして得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されているロジウムメッキ被膜(硬質被膜層を含む)の表面硬度(HV;マイクロビッカース硬度計、5mN荷重、保持時間10秒)は、1200であった。これらの腕時計ケースおよび腕時計バンドは、耐傷付き性に優れ、しかも、スレンレス鋼に近く高級感のある白色被膜が形成されていた。
【実施例8】
【0099】
まず、ステンレス鋼(SUS316L)を機械加工して得られた腕時計ケース用基材および腕時計バンド用基材を有機溶剤で洗浄・脱脂した。なお、これらの基材の表面は、機械加工によりヘアライン仕上げとした。次いで、この基材を下記の組成のメッキ液に浸漬し、下記のメッキ条件で電気メッキして、厚み0.1μmの金(または金合金)ストライクメッキ被膜層を基材表面に形成し、水洗した。
《金ストライクメッキ》
<メッキ液の組成>
金 3〜5g/l
硫酸 10g/l
<メッキ条件>
pH 0.3以上1未満
液温 25℃
電流密度(Dk) 3〜5A/dm2
時間 30秒
次いで、この金ストライクメッキ被膜を有する基材を下記の組成のメッキ液に浸漬し、下記のメッキ条件で電気メッキして、厚み1.5μmの金−鉄合金の耐食性被膜層を金ストライクメッキ被膜表面に形成し、水洗した。
《金−鉄メッキ》
<メッキ液の組成>
金 4.6g/l
鉄 0.6g/l
インジウム 3.5g/l
光沢剤 適量
<メッキ条件>
pH 3.5〜3.7
液温 37〜40℃
電流密度(Dk 1.0〜1.5A/dm2
時間 30分
次いで、これら基材をスパッタリング装置内に取り付け、アルゴン雰囲気中で
基材表面をボンバードクリーニングした。
【0100】
次いで、これらの基材の耐食性被膜層表面に、厚み0.05μmの窒素原子含有量5〜15原子%の傾斜構造からなる窒化チタンメッキ被膜(下地層)をイオンプレーティング法(熱陰極法)により下記の成膜条件で形成した。
<成膜条件>
蒸発源:チタン
電子銃:10kV、200〜500mA
ガス:アルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス
成膜圧力:0.2Pa
加速電圧(バイアス電圧):Ground〜−100V
アノード電圧:40〜50V
フィラメント電圧:7V
【0101】
次いで、これらの基材表面に下地層として形成された窒化チタンメッキ被膜表面に、厚み0.6μm、窒素原子含有量40±10原子%の金色色調を有する窒化チタンメッキ被膜(硬質被膜層)をイオンプレーティング法(熱陰極法)により下記の成膜条件で形成した。
<成膜条件>
蒸発源:チタン
電子銃:10kV、200〜500mA
ガス:アルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス
成膜圧力:0.2Pa
加速電圧(バイアス電圧):Ground〜−100V
アノード電圧:40〜50V
フィラメント電圧:7V
【0102】
次いで、これらの基材表面に形成された窒化チタンメッキ被膜表面に、厚み0.005μmの金色色調を有する金―鉄合金メッキ被膜(貴金属被膜層)をイオンプレーティング法(熱陰極法)により下記の成膜条件で形成し、金色色調の腕時計ケースおよび腕時計バンドを得た。
<成膜条件>
蒸発源:金−鉄合金
電子銃:8kV、500mA
ガス:アルゴンガス
成膜圧力:0.26Pa
加速電圧(バイアス電圧):Ground〜−100V
アノード電圧:10〜30V
フィラメント電圧:7V
上記のようにして得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されている金―鉄合金メッキ被膜(硬質被膜層を含む)の表面硬度(HV;マイクロビッカース硬度計、5mN荷重、保持時間10秒)は、1200であった。これらの腕時計ケースおよび腕時計バンドは、耐傷付き性に優れ、しかも、淡い金色で高級感のある金色被膜が形成されていた。
【実施例9】
【0103】
まず、ステンレス鋼(SUS316L)を機械加工して得られた腕時計ケース用基材および腕時計バンド用基材を有機溶剤で洗浄・脱脂した。なお、これらの基材の表面は、機械加工によりヘアライン仕上げとした。次いで、この基材を下記の組成のメッキ液に浸漬し、下記のメッキ条件で電気メッキして、厚み0.1μmの金(または金合金)ストライクメッキ被膜層を基材表面に形成し、水洗した。
《金ストライクメッキ》
<メッキ液の組成>
金 3〜5g/l
硫酸 10g/l
<メッキ条件>
pH 0.3以上1未満
液温 25℃
電流密度(Dk) 3〜5A/dm2
時間 30秒
次いで、この金ストライクメッキ被膜を有する基材を下記の組成のメッキ液に浸漬し、下記のメッキ条件で電気メッキして、厚み1.5μmの金−ニッケル合金の耐食性被膜層を金ストライクメッキ被膜表面に形成し、水洗した。
《金−ニッケルメッキ》
<メッキ液の組成>
金 3〜7g/l
ニッケル 2〜5g/l
インジウム 0.3〜1g/l
クエン酸 150〜200g/l
クエン酸カリウム 50〜100g/l
光沢剤 適量
<メッキ条件>
pH 3〜4
液温 35〜50℃
電流密度(Dk) 0.5〜2.0A/dm2
時間 20分
【0104】
次いで、これら基材をスパッタリング装置内に取り付け、アルゴン雰囲気中で
基材表面をボンバードクリーニングした。
【0105】
次いで、これらの基材の耐食性被膜層表面に、厚み0.05μmの窒素原子含有量5〜15原子%の傾斜構造からなる窒化チタンメッキ被膜(下地層)をイオンプレーティング法(熱陰極法)により下記の成膜条件で形成した。
<成膜条件>
蒸発源:チタン
電子銃:10kV、200〜500mA
ガス:アルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス
成膜圧力:0.2Pa
加速電圧(バイアス電圧):Ground〜−100V
アノード電圧:40〜50V
フィラメント電圧:7V
【0106】
次いで、これらの基材表面に下地層として形成された窒化チタンメッキ被膜表面に、厚み0.6μm、窒素原子含有量40±10原子%の金色色調を有する窒化チタンメッキ被膜(硬質被膜層)をイオンプレーティング法(熱陰極法)により下記の成膜条件で形成した。
<成膜条件>
蒸発源:チタン
電子銃:10kV、200〜500mA
ガス:アルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス
成膜圧力:0.2Pa
加速電圧(バイアス電圧):Ground〜−100V
アノード電圧:40〜50V
フィラメント電圧:7V
【0107】
次いで、これらの基材表面に形成された窒化チタンメッキ被膜表面に、厚み0.005μmの金色色調を有する金―パラジウム合金メッキ被膜(貴金属被膜層)をイオンプレーティング法(熱陰極法)により下記の成膜条件で形成し、金色色調の腕時計ケースおよび腕時計バンドを得た。
<成膜条件>
蒸発源:金−パラジウム合金
電子銃:8kV、 500mA
ガス:アルゴンガス
成膜圧力:0.26Pa
加速電圧(バイアス電圧):Ground〜−100V
アノード電圧:10〜30V
フィラメント電圧:7V
上記のようにして得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されている金―パラジウム合金メッキ被膜(硬質被膜層を含む)の表面硬度(HV;マイクロビッカース硬度計、5mN荷重、保持時間10秒)は、1200であった。これらの腕時計ケースおよび腕時計バンドは、耐傷付き性に優れ、しかも、淡い金色で高級感のある金色被膜が形成されていた。
【実施例10】
【0108】
まず、ステンレス鋼(SUS316L)を機械加工して得られた腕時計ケース用基材および腕時計バンド用基材を有機溶剤で洗浄・脱脂した。なお、これらの基材の表面は、機械加工によりヘアライン仕上げとした。次いで、この基材を下記の組成のメッキ液に浸漬し、下記のメッキ条件で電気メッキして、厚み0.1μmの金(または金合金)ストライクメッキ被膜層を基材表面に形成し、水洗した。
《金ストライクメッキ》
<メッキ液の組成>
金 3〜5g/l
硫酸 10g/l
<メッキ条件>
pH 0.3以上1未満
液温 25℃
電流密度(Dk) 3〜5A/dm2
時間 30秒
次いで、この金ストライクメッキ被膜を有する基材を下記の組成のメッキ液に浸漬し、下記のメッキ条件で電気メッキして、厚み1.5μmの金−ニッケル合金の耐食性被膜層を金ストライクメッキ被膜表面に形成し、水洗した。
《金−ニッケルメッキ》
<メッキ液の組成>
金 3〜7g/l
ニッケル 2〜5g/l
インジウム 0.3〜1g/l
クエン酸 150〜200g/l
クエン酸カリウム 50〜100g/l
光沢剤 適量
<メッキ条件>
pH 3〜4
液温 35〜50℃
電流密度(Dk) 0.5〜2.0A/dm2
時間 20分
【0109】
次いで、これら基材をスパッタリング装置内に取り付け、アルゴン雰囲気中で
基材表面をボンバードクリーニングした。
【0110】
次いで、これらの基材の耐食性被膜層表面に、厚み0.05μmのチタンメッキ被膜(下地層)をイオンプレーティング法(熱陰極法)により下記の成膜条件で形成した。
<成膜条件>
蒸発源:チタン
電子銃:10kV、200〜500mA
ガス:アルゴンガス
成膜圧力:0.2Pa
加速電圧(バイアス電圧):Ground〜−100V
アノード電圧:40〜50V
フィラメント電圧:7V
【0111】
次いで、これらの基材表面に下地層として形成されたチタンメッキ被膜表面に、厚み0.6μm、窒素原子含有量40±10原子%の金色色調を有する窒化チタンメッキ被膜(硬質被膜層)をイオンプレーティング法(熱陰極法)により下記の成膜条件で形成した。<成膜条件>
蒸発源:チタン
電子銃:10kV、200〜500mA
ガス:アルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス
成膜圧力:0.2Pa
加速電圧(バイアス電圧):Ground〜−100V
アノード電圧:40〜50V
フィラメント電圧:7V
【0112】
次いで、これらの基材表面に形成された窒化チタンメッキ被膜表面に、厚み0.05μmの金色色調を有する窒化チタンと金−パラジウム合金との混合メッキ被膜(混合層)をイオンプレーティング法(熱陰極法)により下記の成膜条件で形成した。
<成膜条件>
蒸発源:チタン、金−パラジウム合金
電子銃:10kV、300mA(蒸発源:チタン)、
10kV、500mA(蒸発源:金−パラジウム合金)
ガス:アルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス
成膜圧力:0.2Pa
加速電圧(バイアス電圧):Ground〜−50V
アノード電圧:60V
フィラメント電圧:7V
【0113】
次いで、これらの基材表面に形成された窒化チタンと金−パラジウム合金との混合メッキ被膜表面に、厚み0.005μmの金色色調を有する金−パラジウム合金メッキ被膜(貴金属被膜層)をイオンプレーティング法(熱陰極法)により下記の成膜条件で形成し、金色色調の腕時計ケースおよび腕時計バンドを得た。
<成膜条件>
蒸発源:金−パラジウム合金
電子銃:10kV、500mA(蒸発源:金−パラジウム合金)
ガス:アルゴンガス
成膜圧力:0.26Pa
加速電圧(バイアス電圧):Ground〜−100V
アノード電圧:10〜30V
フィラメント電圧:7V
上記のようにして得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されている金―パラジウム合金メッキ被膜(硬質被膜層を含む)の表面硬度(HV;マイクロビッカース硬度計、5g荷重、保持時間10秒)は、1200であった。これらの腕時計ケースおよび腕時計バンドは、耐傷付き性に優れ、しかも、淡い金色で高級感のある金色被膜が形
成されていた。
【0114】
また、上記実施例2で得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドと実施例7で得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドについて、それぞれ、引っ掻き試験を行ない、基材に対する被膜の密着力の比較を行なった。引っ掻き試験に使用した測定機は、HEIDON−14型の表面性測定機である。
【0115】
以下、チタンメッキ被膜からなる下地層と炭素原子含有量40±10原子%の白色色調を有する炭化チタンメッキ被膜(硬質被膜層)を有する実施例2の装飾品試料と、炭素原子含有量5〜15原子%の炭化チタンメッキ被膜からなる下地層と炭素原子含有量40±10原子%の白色色調を有する炭化チタンメッキ被膜(硬質被膜層)を有する実施例7の装飾品試料を作製して被膜の密着力(後述の臨界荷重)を測定した。
【0116】
この測定条件は、先端角度が90°で先端曲率半径が50μmのダイヤモンド圧子を使用し、引っ掻き速度は30mm/分とし、引っ掻き荷重は50gfから300gfまで、50gfおきに変化させた。この測定結果は、引っ掻き荷重と引っ掻き後の抵抗値により、引っ掻き荷重がある値以上になると、抵抗値が急激に変化する。これは、荷重の増加とともに直線的に引っ掻き抵抗値が増加していくが、臨界荷重以上になると、基材上に形成した被膜に亀裂が発生し、チッピング剥がれが発生しているためと考えられる。そして、発生した亀裂、チッピング剥がれのために、引っ掻き抵抗値は急激な増加を示し、摩擦係数が増大する。この臨界荷重の値によって、基材に対する被膜の密着力を評価することができる。ここでは、急激に変化した引っ掻き荷重の点を光学顕微鏡で観察し、被膜の密着強度を評価した。
【0117】
実施例2では、引っ掻き荷重を200gfにしたときにチッピング剥がれが発生した。一方、実施例7では、引っ掻き荷重を250gfにしたときにチッピング剥がれが発生した。すなわち、実施例2における臨界荷重は200gfであり、実施例7における臨界荷重は250gfであった。このことから、実施例7の装飾部品は、実施例2の装飾部品よりも、被膜の密着力が25%もアップしているとが理解される。
【0118】
次に、ステンレス鋼(SUS316L・寸法(mm):50(横)×100(縦)×1(厚))の試験片に、上記実施例1〜10と同じ被膜をそれぞれ被覆形成し、各試験片の耐食性について試験を行った。耐食性試験は、JISH8502(キャス(CASS)試験にしたがって行った。試験時間は48時間とし、その試験面の耐食性評価は、レイティングナンバ標準図表によってレイティングナンバが9.8以上の時、合格とした。実施例1から実施例10における耐食性試験の結果は、レイティングナンバの値が9.8以上、つまり合格であった。また、比較例の耐食性試験の結果もレイティングナンバの値が9.8以上で合格であったが、下記試験結果より、実施例1から実施例10の方がより耐食性が優れていることが分かる。

【0119】
尚、上記実施例1〜10において、耐食性被膜層としてクロム(Cr)、金(Au)、ルテニウム(Rh)、プラチナ(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム合金、ニッケル合金、ルテニウム合金、パラジウム合金、プラチナ合金または銅合金からなるメッキ被膜、下地層としてクロム、ハフニウム、バナジウム、ニオブまたはタンタルからなるメッキ被膜、硬質被膜層として炭化クロム(Cr32)、炭化ハフニウム(HfC)、炭化バナジウム(VC)、炭化ニオブ(NbC)、炭化タングステン(WC)、炭化タンタル(TaC)、窒化クロム(Cr32)、窒化ジルコニウム(ZrN)、窒化ハフニウム(HfN)、窒化バナジウム(VN)、窒化ニオブ(NbN)、窒化タングステン(WN)または窒化タンタル(TaN)からなる金属化合物被膜、貴金属被膜層として、ロジウム、ロジウム合金被膜、パラジウム、パラジウム合金またはプラチナ合金被膜を形成できることは云うまでもない。また、実施例1〜10では、腕時計ケースおよび腕時計バンドを製造しているが、実施例1〜10に記載の技術は、ネックレス、ペンダント、ブローチ等の装飾品にも適用できることは云うまでもない。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
貴金属被膜層として貴金属または貴金属の合金からなる被膜が乾式メッキ法により形成された装飾品において、ステンレス鋼からなる装飾品用基材と、該基材表面に湿式メッキ法で形成された耐食性被膜層と、該耐食性被膜層の表面に乾式メッキ法により形成された下地層と、該下地層の表面に乾式メッキ法により形成された硬質被膜層と、該硬質被膜層の表面に乾式メッキ法により形成された貴金属被膜層とから構成され、前記硬質被膜層の厚みが0.2〜1.5μm、前記貴金属被膜層の厚みが0.002〜0.1μmであることを特徴とする耐食性被膜を有する装飾品。
【請求項2】
ステンレス鋼からなる前記基材表面と耐食性被膜層との間に、湿式メッキ法により形成された、金、金合金またはニッケルからなるストライクメッキ被膜層を有していることを特徴とする請求項1記載の耐食性被膜を有する装飾品。
【請求項3】
前記ストライクメッキ被膜層が、湿式メッキ法により形成された厚み0.05〜0.3μmの被膜であることを特徴とする請求項2記載の耐食性被膜を有する装飾品。
【請求項4】
ステンレス鋼からなる前記基材表面に形成される耐食性被膜層が、湿式メッキ法により形成された、ロジウム(Rh)、金(Au)、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)、プラチナ(Pt)、パラジウム(Pd)またはクロム(Cr)からなる被膜であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の耐食性被膜を有する装飾品。
【請求項5】
前記基材表面に形成される耐食性被膜層が、湿式メッキ法により形成された、ロジウム合金、ニッケル合金、プラチナ合金、銅合金、金合金、ルテニウム合金、パラジウム合金の中の少なくとも1つからなる被膜であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の耐食性被膜を有する装飾品。
【請求項6】
前記耐食性被膜層が、湿式メッキ法により形成された厚み0.1〜3μmの被膜であることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項4〜5のいずれかに記載の耐食性被膜を有する装飾品。
【請求項7】
前記耐食性被膜層表面に形成される下地層が、乾式メッキ法により形成された、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)またはタンタル(Ta)からなる被膜であることを特徴とする請求項1記載の耐食性被膜を有する装飾品。
【請求項8】
前記耐食性被膜層表面に形成される下地層が、乾式メッキ法により形成された、炭素原子含有量が5〜15原子%の炭化チタン、炭化クロム、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化バナジウム、炭化ニオブ、炭化タングステンまたは炭化タンタルからなる金属化合物被膜、または窒素原子含有量が5〜15原子%の窒化チタン、窒化クロム、窒化ジルコニウム、窒化ハフニウム、窒化バナジウム、窒化ニオブ、窒化タングステンまたは窒化タンタルからなる金属化合物被膜であることを特徴とする請求項1記載の耐食性被膜を有する装飾品。
【請求項9】
前記下地層が、乾式メッキ法により形成された厚み0.02〜0.2μmの被膜であることを特徴とする請求項1、請求項7または請求項8記載の耐食性被膜を有する装飾品。
【請求項10】
前記硬質被膜層が、炭化チタン(TiC)、炭化クロム(Cr32)、炭化ジルコニウム(ZrC)、炭化ハフニウム(HfC)、炭化バナジウム(VC)、炭化ニオブ(NbC)、炭化タングステン(WC)、炭化タンタル(TaC)、窒化チタン(TiN)、窒化クロム(Cr32)、窒化ジルコニウム(ZrN)、窒化ハフニウム(HfN)、窒化バナジウム(VN)、窒化ニオブ(NbN)、窒化タングステン(WN)または窒化タンタル(TaN)からなる金属化合物被膜であることを特徴とする請求項1記載の耐食性被膜を有する装飾品。
【請求項11】
前記硬質被膜層の厚みが0.5〜1.0μmであることを特徴とする請求項1または請求項10記載の耐食性被膜を有する装飾品。
【請求項12】
前記貴金属被膜層が、プラチナ(Pt)、パラジウム(Pd)、金(Au)またはロジウム(Rh)からなる被膜であることを特徴とする請求項1記載の耐食性
被膜を有する装飾品。
【請求項13】
前記貴金属被膜層が、プラチナ合金、パラジウム合金、金合金またはロジウム合金からなる被膜であることを特徴とする請求項1記載の耐食性被膜を有する装飾品。
【請求項14】
前記貴金属被膜層の厚みが0.01〜0.08μmであることを特徴とする請求項1、請求項12または請求項13記載の耐食性被膜を有する装飾品。
【請求項15】
前記硬質被膜層と前記貴金属被膜層との間に、該硬質被膜層を形成する金属化合物と、該最貴金属被膜層を形成する金属または合金とからなる混合層を有していることを特徴とする請求項1、請求項10〜14のいずれかに記載の耐食性被膜を有する装飾品。
【請求項16】
前記混合層の厚みが0.005〜0.1μmであることを特徴とする請求項1または請求項15記載の耐食性被膜を有する装飾品。
【請求項17】
前記下地層、前記硬質被膜層、前記混合層および前記貴金属被膜層の各層が、スパッタ法、イオンプレーティング法およびアーク法の中の少なくとも1つの方式で形成されていることを特徴とする請求項1、請求項8〜16のいずれかに記載の耐食性被膜を有する装飾品。
【請求項18】
前記貴金属被膜層表面の一部に、乾式メッキ法または湿式メッキ法により形成された、前記貴金属被膜層の色調と異なる少なくとも1つの被膜を有していることを特徴とする請求項1または請求項16のいずれかに記載の耐食性被膜を有する装飾品。
【請求項19】
前記貴金属被膜層の色調と異なる被膜が、金、金合金、窒化チタン、窒化ジルコニウム、窒化ハフニウム、ロジウム、ロジウム合金、パラジウム、パラジウム合金、プラチナ、プラチナ合金またはダイヤモンドライクカーボン(DLC)からなることを特徴とする請求項18記載の耐食性被膜を有する装飾品。
【請求項20】
前記貴金属被膜層と、該貴金属被膜層と異なる被膜であるダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜との間に、チタン被膜と該チタン被膜表面に形成されたシリコン被膜とを有していることを特徴とする請求項18または19記載の耐食性被膜を有する装飾品。
【請求項21】
前記前記貴金属被膜層が、前記硬質被膜層を形成する金属化合物と、プラチナ(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)または金(Au)からなる混合層であることを特徴とする請求項1、請求項12〜20のいずれかに記載の耐食性被膜を有する装飾品。
【請求項22】
前記貴金属被膜層が、前記硬質被膜層を形成する金属化合物と、プラチナ合金、パラジウム合金、ロジウム合金または金合金からなる混合層であることを特徴とする請求項1、請求項12〜20のいずれかに記載の耐食性被膜を有する装飾品。
【請求項23】
前記装飾品が時計外装部品であることを特徴とする請求項1〜22のいずれかに記載の耐食性被膜を有する装飾品。
【請求項24】
貴金属または貴金属の合金からなる被膜が乾式メッキ法により形成された装飾品の製造方法において、ステンレス鋼からなる素材を用い、各種加工手段で装飾品用基材を製造する工程と、該基材表面に湿式メッキ法により耐食性被膜層を形成する工程と、該耐食性被膜層表面に乾式メッキ法により下地層を形成する工程と、該下地層の表面に乾式メッキ法により金属化合物からなる硬質被膜層を形成し、さらに該硬質被膜層の表面に乾式メッキ法によりプラチナ、プラチナ合金、パラジウム、パラジウム合金、ロジウム、ロジウム合金、金又は金合金からなる貴金属被膜層を形成することを特徴とする耐食性被膜を有する装飾品の製造方法。
【請求項25】
ステンレス鋼からなる前記基材表面と耐食性被膜層との間に、金、金合金またはニッケルからなるストライクメッキ被膜層を湿式メッキ法により形成することを特徴とする請求項24記載の耐食性被膜を有する装飾品の製造方法。
【請求項26】
前記基材表面に、ストライクメッキ被膜層として、厚み0.05〜0.3μmの被膜が湿式メッキ法により形成することを特徴とする請求項25記載の耐食性被膜を有する装飾品の製造方法。
【請求項27】
前記基材表面に、前記耐食性被膜層として、ロジウム(Rh)、金(Au)ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)、プラチナ(Pt)、パラジウム(Pd)またはクロム(Cr)からなる被膜を湿式メッキ法により形成することを特徴とする請求項24記載の耐食性被膜を有する装飾品の製造方法。
【請求項28】
前記基材表面に、前記耐食性被膜層として、ロジウム合金、ニツケル合金、パラジウム合金、プラチナ合金、銅合金、金合金、ルテニウム合金、パラジウム合金の中の少なくとも1つからなる被膜を湿式メッキ法により形成することを特徴とする請求項24記載の耐食性被膜を有する装飾品の製造方法。
【請求項29】
前記基材表面に、前記耐食性被膜層として、厚み0.1〜3μmの被膜が湿式メッキ法により形成することを特徴とする請求項24、請求項27または請求項28記載の耐食性被膜を有する装飾品の製造方法。
【請求項30】
前記装飾品用基材の耐食性被膜層表面に、前記下地層として、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)またはタンタル(Ta)からなる被膜を乾式メッキ法により形成することを特徴とする請求項24記載の耐食性被膜を有する装飾品の製造方法。
【請求項31】
前記装飾品用基材の耐食性被膜層表面に、前記下地層として、炭素原子含有量が5〜15原子%の炭化チタン、炭化クロム、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化バナジウム、炭化ニオブ、炭化タングステンまたは炭化タンタルからなる金属化合物被膜、または窒素原子含有量が5〜15原子%の窒化チタン、窒化クロム、窒化ジルコニウム、窒化ハフニウム、窒化バナジウム、窒化ニオブ、窒化タングステンまたは窒化タンタルからなる金属化合物被膜をそれぞれ乾式メッキ法により形成することを特徴とする請求項24記載の耐食性被膜を有する装飾品の製造方法。
【請求項32】
前記装飾品用基材の耐食性被膜層表面に、前記下地層として、厚み0.02〜0.2μmの被膜を乾式メッキ法により形成することを特徴とする請求項24、請求項30または請求項31記載の耐食性被膜を有する装飾品の製造方法。
【請求項33】
前記装飾品用基材の下地層表面に、前記硬質被膜層として、炭化チタン(TiC)、炭化クロム(Cr32)、炭化ジルコニウム(ZrC)、炭化ハフニウム(HfC)、炭化バナジウム(VC)、炭化ニオブ(NbC)、炭化タングステン(WC)、炭化タンタル(TaC)、窒化チタン(TiN)、窒化クロム(Cr32)、窒化ジルコニウム(ZrN)、窒化ハフニウム(HfN)、窒化バナジウム(VN)、窒化ニオブ(NbN)、窒化タングステン(WN)または窒化タンタル(TaN)からなる金属化合物被膜を乾式メッキ法により形成することを特徴とする請求項24記載の耐食性被膜を有する装飾品の製造方法。
【請求項34】
前記装飾品用基材の下地層表面に、前記硬質被膜層として、厚み0.2〜1.5μmの被膜を乾式メッキ法により形成することを特徴とする請求項24または請求項33記載の耐食性被膜を有する装飾品の製造方法。
【請求項35】
前記装飾品用基材の硬質被膜層表面に、前記貴金属被膜層として、プラチナ(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)または金(Au)からなる被膜を乾式メッキ法により形成することを特徴とする請求項24記載の耐食性被膜を有する装飾品の製造方法。
【請求項36】
前記装飾品用基材の硬質被膜層表面に、前記貴金属被膜層として、プラチナ合金、パラジウム合金、ロジウム合金または金合金からなる被膜を乾式メッキ法により形成することを特徴とする請求項24記載の耐食性被膜を有する装飾品の製造方法。
【請求項37】
前記装飾品用基材の硬質被膜層表面に、前記貴金属被膜層として、厚み0.002〜0.1μmの被膜を乾式メッキ法により形成することを特徴とする請求項24、請求項35または請求項36記載の耐食性被膜を有する装飾品の製造方法。
【請求項38】
前記硬質被膜層と前記貴金属被膜層との間に、該硬質被膜層を形成する金属化合物と、該貴金属被膜層を形成する金属または合金とからなる混合層を形成することを特徴とする請求項24、請求項33〜37のいずれかに記載の耐食性被膜を有する装飾品の製造方法。
【請求項39】
前記下地層、前記硬質被膜層、前記混合層および前記貴金属被膜層の各層を、スパッタ法、イオンプレーティング法およびアーク法の少なくとも1つの方式で形成することを特徴とする請求項24、請求項30〜38のいずれかに記載の耐食性被膜を有する装飾品の製造方法。
【請求項40】
前記貴金属被膜層表面の一部に、該貴金属被膜層の色調と異なる少なくとも1つの被膜を乾式メッキ法または湿式メッキ法により形成することを特徴とする請求項24または請求項39記載の耐食性被膜を有する装飾品の製造方法。
【請求項41】
前記貴金属被膜層の色調と異なる被膜が、金、金合金、窒化チタン、窒化ジルコニウム、窒化ハフニウムまたはダイヤモンドライクカーボン(DLC)からなることを特徴とする請求項40記載の耐食性被膜を有する装飾品の製造方法。
【請求項42】
前記貴金属被膜層と、該貴金属被膜層と異なる被膜であるダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜との間に、チタン被膜を形成し、さらに該チタン被膜表面にシリコン被膜を形成することを特徴とする請求項40または41記載の耐食性被膜を有する装飾品の製造方法。
【請求項43】
前記貴金属被膜層が、前記硬質被膜層を形成する金属化合物と、プラチナ(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)または金(Au)とからなる混合層であることを特徴とする請求項24、請求項33〜42のいずれかに記載の耐食性被膜を有する装飾品の製造方法。
【請求項44】
前記貴金属被膜層が、前記硬質被膜層を形成する金属化合物と、プラチナ合金、パラジウム合金,ロジウム合金または金合金とからなる混合層であることを特徴とする請求項24、請求項33〜42のいずれかに記載の耐食性被膜を有する装飾品の製造方法。
【請求項45】
前記装飾品が時計外装部品であることを特徴とする請求項24〜44のいずれかに記載の耐食性被膜を有する装飾品の製造方法。




【公開番号】特開2007−56301(P2007−56301A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−242032(P2005−242032)
【出願日】平成17年8月24日(2005.8.24)
【出願人】(000001960)シチズン時計株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】