説明

耐食性部材

【課題】局所的に腐食された部材を修理することにより、耐食性を損なうことなく、長期間の製品寿命を維持できる耐食性部材を提供する。
【解決手段】耐食性部材1は、基材2と、基材2上に形成された第一の酸化物皮膜3と、第一の酸化物皮膜3とは別種の材料により、基材2上に形成された第二の酸化物皮膜4と、を備える。このように耐食性部材1では、基材2が2種類の酸化物皮膜で被覆されている。たとえば、プラズマ環境で使用された部材の部分的に腐食された箇所を高耐プラズマ性の材料で被覆し修理することで本発明の耐食性部材1が作製される。その結果、修理された耐食性部材1は、長期間の使用が可能となる。また、第二の酸化物皮膜4を部分的に被覆することができるため、リコート回数を低減させ耐食性部材1を長期間使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ環境で使用される耐食性部材に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置内やフラットパネルディスプレイ製造装置内では、ハロゲン系腐食ガスまたはハロゲン系ガスプラズマ等の環境で製造が行われるため、耐食性を持った部材が使用される。近年では、希土類化合物の耐食性が確認され、その中でも特に、Yが注目されている。そして、基材表面にYを含む耐食性皮膜を設けた部材が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−164354号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、半導体製造装置やフラットパネルディスプレイ製造装置内等のプラズマガス発生環境では、使用されるパーツがプラズマの影響により部分的に腐食されてしまう場合がある。そのため、腐食箇所以外が十分使用可能であっても、そのパーツは短期間しか使用することができない不便がある。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、局所的に腐食された部材を修理することにより、耐食性を損なうことなく、長期間の製品寿命を維持できる耐食性部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)上記の目的を達成するため、本発明に係る耐食性部材は、基材と、前記基材上に形成された第一の酸化物皮膜と、前記第一の酸化物皮膜とは別種の材料により、前記基材上に形成された第二の酸化物皮膜と、を備えることを特徴としている。
【0006】
このように本発明の耐食性部材では、基材が2種類の酸化物皮膜で被覆されている。たとえば、プラズマ環境で使用された部材の部分的に腐食された箇所を高耐プラズマ性の材料で被覆し修理することで本発明の耐食性部材が作製される。その結果、修理された耐食性部材は、長期間の使用が可能となる。また、第二の酸化物皮膜を部分的に被覆することができるため、リコート回数を低減させ耐食性部材を長期間使用することができる。また、高コストな耐食材料を使用する場合でも、これを部分的に施工することにより、耐食材料の使用量を低減させコストを削減できる。
【0007】
(2)また、本発明に係る耐食性部材は、前記第二の酸化物皮膜は、前記第一の酸化物皮膜の材料より高い耐食性を有する材料により形成されていることを特徴としている。これにより、第一の酸化物皮膜で全面を被覆した部材より耐食性が高くなる。たとえば、局所的に腐食した部分を第二の酸化物皮膜により被覆して修理すれば、耐食性部材の耐食性がさらに高まり、製品寿命も延びる。
【0008】
(3)また、本発明に係る耐食性部材は、前記第一の酸化物皮膜と前記第二の酸化物皮膜との接触部分において、表面に段差がないことを特徴としている。これにより、段差が集中的に腐食することがなくなり、パーティクルの発生を抑制することができる。
【0009】
(4)また、本発明に係る耐食性部材は、前記第一の酸化物皮膜および前記第二の酸化物皮膜はいずれも、希土類元素、アルミニウムおよびジルコニウムのうちのいずれかの酸化物で形成されていることを特徴としている。これにより、表面が耐食性の高い皮膜により形成されているため、耐食性を高く維持することができる。
【0010】
(5)また、本発明に係る耐食性部材は、前記第二の酸化物皮膜は、溶射法により形成されることを特徴としている。これにより、局所的に腐食された部分を被覆する際にその部分だけを、容易かつ正確に第二の酸化物皮膜で被覆することが可能となる。
【0011】
(6)また、本発明に係る耐食性部材は、前記第一の酸化物皮膜と前記第二の酸化物皮膜との接触部分において、前記第二の酸化物皮膜は前記第一の酸化物皮膜の上に形成されていることを特徴としている。剥離や腐食の進んだ部分で、進みの程度の低い領域では第一の酸化物が薄くなるのみである。しかし、進みの程度が高い領域で基材が露出する。第一の酸化物が薄くなった領域を新たに酸化物で被覆したときには、第二の酸化物皮膜は第一の酸化物皮膜の上に形成される。
【0012】
(7)また、本発明に係る耐食性部材は、前記基材は円板形状を有し、前記第一の酸化物皮膜は基材の一方の主面上に設けられ、前記第二の酸化物皮膜は基材の側面上に設けられていることを特徴としている。耐食性部材が、ウエハを載置する静電チャックであるときに、主面はウエハにより覆われているが、その側面がエッチングにより腐食を受け易い。その際には、側面に第二の酸化物皮膜を被覆して修理することができる。
【0013】
(8)また、本発明に係る耐食性部材は、半導体製造装置内、フラットパネルディスプレイ製造装置内または太陽電池製造装置内で使用されることを特徴としている。本発明の耐食性部材は、耐食性が強化され、長期間使用可能であるため、半導体製造装置内、フラットパネルディスプレイ製造装置内または太陽電池製造装置内のプラズマ発生環境下での使用に適している。
【0014】
(9)また、本発明に係る耐食性部材は、静電チャック、ヒーター、ガス分散プレート、バッフルプレート、バッフルリング、シャワーリング、高周波透過窓、赤外線透過窓、監視窓、サセプター、クランプリング、フォーカスリング、シャドーリング、絶縁リング、ダミーウエハ、半導体ウエハを支持するためのリフトピン、ベローズカバー、クーリングプレート、上部電極、下部電極、ならびに、チャンバー、ベルジャー、ドームおよびそれらの内壁材のいずれかであることを特徴としている。本発明の耐食性部材は、具体的に、上記のような部材として使用されることにより、パーティクルが低減され、産業上の効果が高まる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、部分的に腐食された箇所を高耐プラズマ性の材料で被覆し修理することにより高い耐食性を有する耐食性部材を作製することができる。その結果、耐食性部材の長期間の使用が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本願発明者らは、鋭意検討した結果、酸化イットリウム皮膜に比べて酸化ガドリニウム皮膜が耐食性に優れていることを見出した。そして、酸化物皮膜が腐食または剥離により局所的に消失したときには、酸化ガドリニウム皮膜等の酸化物皮膜を消失部分に設けて修理することができる。そして、このような特徴を利用し、基材上に、別種類の酸化物皮膜を設けた耐食性部材を発明するに至った。
【0017】
(耐食性部材の構成)
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図1は、耐食性部材1を模式的に示す断面図である。耐食性部材1は、基材2、酸化物皮膜3(第一の酸化物皮膜)および酸化物皮膜4(第二の酸化物皮膜)を備えている。図1に示すように、酸化物皮膜3および酸化物皮膜4は、それぞれ基材2上の部分的領域に形成されており、一つの表面を形成している。このような耐食性部材1は、たとえば皮膜で被覆された部材の表面の一部が腐食したときに、別の酸化物皮膜で腐食箇所を埋めることで形成される。酸化物皮膜3と酸化物皮膜4の接触部分7では、酸化物皮膜4が酸化物皮膜3の上に形成されている。すなわち、接触部分7付近では、基材2の上に酸化物皮膜3が形成され、酸化物皮膜3の上に酸化物皮膜4が形成されている。このように耐食性部材1は、部分的に多層構造を有している。
【0018】
基材2は、ガラス、石英、アルミニウムやステンレス等の金属、アルミナ等のセラミックス等により形成されている。これらのように、基材2の材質は、皮膜が剥離してもすぐには腐食が進まない程度の耐食性を有し、酸化ガドリニウム皮膜との密着性を高く維持できるものであることが好ましいが、特に上記に限定されない。
【0019】
酸化物皮膜3(第一の酸化物皮膜)は、基材2上に形成されている。酸化物皮膜3は、希土類元素、アルミニウムおよびジルコニウムのうちのいずれかの酸化物で形成されることが好ましく、たとえば酸化イットリウムで形成される。これにより、表面が耐食性の高い部材により被覆されているため、耐食性部材の耐食性を高く維持することができる。酸化物皮膜3は、当初から部材に設けられプラズマ環境で使用されても、残存した皮膜である。
【0020】
酸化物皮膜4(第二の酸化物皮膜)は、酸化物皮膜3とは別種の材料により基材2上に形成されている。希土類元素、アルミニウムおよびジルコニウムのうちのいずれかの酸化物で形成されることが好ましく、たとえば酸化ガドリニウムで形成される。以下、酸化物皮膜4が酸化ガドリニウムで形成される場合について説明する。このように酸化物皮膜4は、酸化物皮膜3の材料より高い耐食性を有する材料により形成されていることが好ましい。これにより、酸化物皮膜3で全面を被覆した部材より耐食性を高くすることができる。たとえば、局所的に腐食した部分を酸化物皮膜4により被覆して修理すれば、耐食性部材の耐食性がさらに高まり、製品寿命が延びる。なお、酸化物皮膜4は、酸化イットリウムにより耐食性の高い酸化イッテルビウムであってもよい。その場合にも酸化ガドリニウムと同様の効果を奏する。
【0021】
酸化物皮膜4は、純度99.9%以上の酸化ガドリニウムにより形成されることが好ましい。純度を99.9%以上にすることよりプラズマ環境での皮膜の腐食の進行を抑制することができる。また、酸化物皮膜4は、鉄、コバルト、ニッケル等の鉄族金属化合物を含んでいることが好ましい。これらの鉄族金属化合物が酸化ガドリニウム皮膜に含まれることにより、ガドリニウムの融点が低下する。また、酸化物皮膜4の気孔率は、5%以上15%以下であることが好ましい。気孔率が15%以下の酸化ガドリニウム皮膜は、ハロゲンガス系腐食ガスまたはハロゲン系ガスプラズマ等に曝された場合でも、ハロゲンガス系腐食ガスまたはハロゲン系ガスプラズマ等が酸化ガドリニウム皮膜を透過せず基材に損傷を与えにくい。
【0022】
酸化物皮膜4の厚さは50μm以上1000μm以下であることが好ましい。厚さを50μm以上にすることにより、酸化ガドリニウム皮膜は、ハロゲンガス系腐食ガスまたはハロゲン系ガスプラズマ等に曝された場合でも、耐食性の効果を奏し、基材2までガスが透過しにくくなる。また、厚さを1000μm以下にすることにより、酸化物皮膜4と基材2の密着性が向上し、酸化物皮膜4と基材2との熱膨張差による剥離が発生しにくくなる。
【0023】
酸化物皮膜4は、20MPa以上の強度で基材に密着して形成されている。酸化物皮膜4と基材2との密着強度を20MPa以上にすることで、使用中や洗浄中における酸化ガドリニウム皮膜の剥離を防止することができる。剥離すると基材の露出部からのパーティクルが発生しやすいがこれを防止できる。
【0024】
酸化物皮膜3と酸化物皮膜4の接触部分7では、表面に段差がない。製造過程において酸化物皮膜4の溶射により段差が生じるが、表面を加工することで段差を研削することが好ましい。表面に段差がないことにより、段差が集中的に腐食せず、パーティクルの発生を抑制することができる。
【0025】
図2は、静電チャック11を模式的に示す断面図である。図2に示す静電チャック11は、耐食性部材1の一例である。静電チャック11はプラズマ環境で用いられ、特に側面は、主面とは異なり常にプラズマに対して露出するため、腐食しやすい。したがって、腐食や剥離により表面の皮膜が消失した側面部分を酸化物皮膜4でリコートすることで、耐食性部材1が完成する。静電チャック11の基材2は円板形状を有している。また、酸化物皮膜3は基材2の一方の主面上に設けられている。また、酸化物皮膜4は基材2の側面上に設けられている。そして、酸化物皮膜3および酸化物皮膜4が一つの表面を形成している。
【0026】
(耐食性部材の製造方法)
耐食性部材1の製造方法を説明する。耐食性部材1は修理品であるため、ここでいう製造方法は、実質的には、プラズマ環境で用いられる部材の修理方法である。まず、プラズマ環境での腐食または洗浄による表面皮膜の剥離が生じた部材を準備する。
【0027】
次に、局所的に腐食または剥離が生じた部分に溶射し、酸化物皮膜を形成する。溶射の対象となる表面の領域には、必要に応じてブラスト処理を施す。ブラスト処理により基材2と酸化物皮膜4との密着強度を高め、耐食性部材1の使用中や洗浄中に発生しがちな皮膜の剥離や剥離による基材2の露出を防止することができる。その結果、基材2からのパーティクルの発生を低減することができる。次に、ガドリニウムを酸化させて粉末化するとともに、鉄族金属化合物を酸化させて粉末化し、これらを混合させた後にリコートの対象となる箇所に溶射し、酸化ガドリニウム皮膜を形成する。
【0028】
酸化ガドリニウム皮膜は、フレーム溶射、高速フレーム溶射(HVOF)、プラズマ溶射、爆発溶射、コールドスプレー、エアロゾルデポジション法等で形成できる。特にプラズマ溶射で酸化ガドリニウム皮膜を形成することが好ましい。プラズマ溶射は、溶射出力が高く、かつ高融点材料の溶射に適している。このように溶射法で形成することが好ましいが、皮膜の形成方法は上記に限定されない。
【0029】
溶射には、平均粒径20μm以上60μm以下の溶射粉末を使用する。平均粒径20μm以上の溶射粉末を使用することにより、溶射粉末の投入時に溶射粉末はプラズマ炎に吹き飛ばされることがなくプラズマ炎内に流れる。その結果、溶射材料を溶融状態で部材に付着させることができる。また、平均粒径60μm以下の溶射粉末を使用することにより、プラズマ炎に溶射粉末を投入時に溶射粉末はプラズマ炎を通り抜けることがなくプラズマ炎上に流れ、溶融状態で部材に付着させることができる。好ましくは平均粒径30μm以上50μm以下の溶射粉末を使用する。溶射粉末がプラズマ炎内に流れ、溶融状態で部材に付着させることができる。プラズマ溶射時のプラズマ発生の際に使用するガスは特に限定はされないが、アルゴンガス、へリウムガス、窒素ガス、水素ガス、酸素ガス等を用いることができる。
【0030】
このように、局所的に腐食または剥離の生じた部分へ溶射すると、表面に盛り上がりや段差ができる。盛り上がりや段差を研削等の加工により削除することで、耐食性部材1が完成する。
【0031】
(実験例)
以下、実験例を説明する。ただし、本発明は以下に説明する各実験例により何ら限定されない。基材上に酸化ガドリニウム皮膜、酸化イッテルビウムおよび酸化イットリウム皮膜を設けた試料を作製し、それぞれの試料に対してエッチング、気孔率および密着強度を測定した。
【0032】
[エッチング試験および気孔率の測定]
各酸化物皮膜が含むFe量を変えて、試料を作製し、エッチング試験および気孔率の測定を行った。
【0033】
(試料AG1〜AG10の作製)
Feをそれぞれ1ppm、3ppm、4ppm、8ppm、10ppm、20ppm、30ppm、40ppm、70ppm、80ppm含むGdの純度99.9%以上の溶射粉末を用意した。Feの含有量は、ICP発光分析装置を用い測定した。溶射粉末の平均粒径は、30μm〜40μmであった。溶射粉末の平均粒径は、レーザー回折・散乱式の粒度測定機を用い測定した。一方、100×100×5t(mm)のアルミニウム基材を用意し、表面にブラスト処理を施した。そして、エアロプラズマ社製ASP7100プラズマ溶射機を使用し、電圧275V、電流110A、アルゴンガス流量25L/min、酸素ガス40L/minの溶射条件にて、アルミニウム基材上に200μm〜300μmの酸化ガドリニウム皮膜を形成した。
【0034】
(試料AB1〜AB10の作製)
Feをそれぞれ1ppm、3ppm、4ppm、8ppm、10ppm、20ppm、30ppm、40ppm、70ppm、80ppm含むYbの純度99.9%以上の溶射粉末を用意した。Feの含有量は、ICP発光分析装置を用い測定した。溶射粉末の平均粒径は、30μm〜40μmであった。溶射粉末の平均粒径は、レーザー回折・散乱式の粒度測定機を用い測定した。一方、100×100×5t(mm)のアルミニウム基材を用意し、表面にブラスト処理を施した。そして、エアロプラズマ社製ASP7100プラズマ溶射機を使用し、電圧275V、電流110A、アルゴンガス流量25L/min、酸素ガス40L/minの溶射条件にて、アルミニウム基材上に200μm〜300μmの酸化ガドリニウム皮膜を形成した。
【0035】
(試料AY1の作製)
上記の試料の作製手順と同様に、Feを10ppm含むYの純度99.9%以上の溶射粉末を用意した。溶射粉末の平均粒径は、30μm〜40μmであった。上記の試料と同様の条件で、アルミニウム基材上に200μm〜300μmの酸化物皮膜を形成した。
【0036】
このようにして作製した各試料についてエッチングレートを測定した。エッチングレートは、酸化ガドリニウム皮膜の一部をポリイミドテープでマスキングし、RIE装置を用いてCFプラズマ中で10時間照射を行い、マスキング有無の箇所の段差を測定して求めた。
【0037】
また、各試料について気孔率を評価した。気孔率は、皮膜の乾燥重量W1、水中重量W2、飽水重量W3を測定し、以下の数式で表されるアルキメデス法を用いて求めた。
【数1】

【0038】
図3は、上記で作製した各試料について、Feの含有量に対するエッチングレートおよび気孔率を示す表である。なお、試料AG10およびAB10については、局所的にエッチングが確認されたため、その部分のエッチングレートを示している。
【0039】
図3の表に示すように、同程度のFe含有率のものを比較すると試料AG4〜AG8のエッチングレートは試料AY1のエッチングレートの1/2〜1/3であり、Gd皮膜がY皮膜より耐食性に優れ、パーティクルの発生が少ないことが分かった。Fe含有率が4ppm以上40ppm以下の酸化ガドリニウム皮膜は、酸化イットリウムよりエッチングレートが優れており、特に8ppm以上40ppm以下の範囲の酸化ガドリニウム皮膜のエッチングレートは、酸化イットリウムのエッチングレートの1/2〜1/3であった。
【0040】
また、同程度のFe含有率の酸化イッテルビウム皮膜の試料AB4〜AB8のエッチングレートも試料AY1のエッチングレートの1/2〜1/3であり、Yb皮膜がY皮膜より耐食性に優れていることも分かった。Fe含有率が4ppm以上40ppm以下の酸化イッテルビウム皮膜は、エッチングレートが酸化イットリウムと同等または酸化イットリウムより優れており、特に8ppm以上40ppm以下の範囲の酸化イッテルビウム皮膜のエッチングレートは、酸化イットリウムのエッチングレートの1/2〜1/3であった。
【0041】
このように耐食性に優れるため、耐食性部材1は、ハロゲン系腐食ガスまたはハロゲン系ガスプラズマ等を利用する半導体製造装置内やフラットパネルディスプレイ装置内での長期間の使用に好適である。
【0042】
図4は、酸化ガドリニウム皮膜を有する試料および酸化イッテルビウム皮膜を有する試料のそれぞれについてFeの含有量に対するエッチングレートを示すグラフ、図5は、同試料についてFeの含有量に対する気孔率を示すグラフである。図4に示すように、70ppm以下の含有量では、酸化ガドリニウム皮膜にFeが含有されている場合の方が、されていない場合よりエッチングレートが低く耐食性が優れていることが分かる。また、図5に示すように、酸化ガドリニウム皮膜にFeが含有されている場合の方が、されていない場合より気孔率が小さく、緻密であることが分かる。
【0043】
ある程度のFeが含まれている酸化ガドリニウム皮膜の方が緻密で耐食性に優れているのは、Feが含まれることで皮膜形成時にガドリニウムの融点が低下し、十分に溶融した状態で酸化ガドリニウム皮膜が形成されているためと考えられる。
【0044】
同様に、図4に示すように、67ppm以下の含有量では、酸化イッテルビウム皮膜にFeが含有されている場合の方が、されていない場合よりエッチングレートが低く耐食性が優れていることが分かる。また、図5に示すように、酸化イッテルビウム皮膜にFeが含有されている場合の方が、されていない場合より気孔率が小さく、緻密であることが分かる。酸化イッテルビウムについても酸化ガドリニウム皮膜の場合と同様の理由により緻密性が向上すると考えられる。このように、Feが含まれることにより、耐食性に優れた酸化ガドリニウム皮膜や酸化イッテルビウム皮膜の形成が可能となる。
【0045】
上記より鉄族金属化合物を含む酸化ガドリニウム皮膜または酸化イッテルビウム皮膜で部分的に表面を被覆された耐食性部材1は、ハロゲン系腐食ガスまたはハロゲン系ガスプラズマ等に対する耐食性に優れていることが実証された。したがってそのような環境に曝される半導体製造装置内またはフラットパネルディスプレイ製造装置内での使用に好適である。
【0046】
[密着強度の測定]
次に、同等の条件で試料を作成し、酸化ガドリニウム皮膜と基板との密着強度の試験を行った。上記のエッチング試験と同様の試料作製手順に従って、棒状のアルミニウム基材の先端面(表面粗さ5.11μm)上に厚さ200μm〜300μmで純度99.9%以上のGd皮膜を形成し、試料BG1の試料を作製した。また、表面粗さ5.02μmの棒状のアルミニウム基材の先端面上に、厚さ200μm〜300μmで純度99.9%以上のY皮膜を形成し、試料BY1の試料を作製した。そして、試料BG1および試料BY1をそれぞれ別の棒状部材の先端面に接着剤で接合し、引っ張りにより剥離する強度、すなわち密着強度を測定した(JISH8666に準じた試験方法)。
【0047】
図6は、密着強度の評価結果を示す表である。図6に示すように、同等の条件下において酸化イットリウム皮膜と基材との密着強度が14MPaであるのに対し、酸化ガドリニウム皮膜と基材との密着強度は22MPaであった。このように、酸化ガドリニウム皮膜の方が、酸化イットリウム皮膜より、基材に密着しやすく、剥離が生じにくいことが実証された。
【0048】
なお、半導体製造装置内またはフラットパネルディスプレイ製造装置内で使用される部材としては、例えば、静電チャック、ヒーター等の内部に静電電極や抵抗発熱体が挙げられる。静電電極には耐食性の低い金属が用いられることが多いことから、静電電極を耐食性部材1で被覆することで耐食性を高め、長期間使用することができる。
【0049】
また、耐食性部材1は、ハロゲン系腐蝕ガスを装置内に導入するためのガス拡散プレート、バッフルプレート、バッフルリング、シャワープレート等にも採用できる。さらに、ガスが導入される処理容器であるチャンバー、ベルジャー、ドームおよびそれらの内壁材、ならびに高周波透過窓、赤外線透過窓および監視窓にも適用でき、また、容器内で使用されるサセプター、クランプリング、フォーカスリング、シャドーリング、絶縁リング、ダミーウエハ、半導体ウエハを支持するためのリフトピン、ベローズカバー、クーリングプレート、上部電極、下部電極等にも適用できる。このように、耐食性部材1は、プラズマ雰囲気に曝され、耐食性を要する種々の部材に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る耐食性部材を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明に係る耐食性部材を模式的に示す断面図である。
【図3】Feの含有量に対するエッチングレートおよび気孔率を示す表である。
【図4】Feの含有量に対するエッチングレートを示すグラフである。
【図5】Feの含有量に対する気孔率を示すグラフである。
【図6】密着強度の評価結果を示す表である。
【符号の説明】
【0051】
1 耐食性部材
2 基材
3 酸化物皮膜(第一の酸化物皮膜)
4 酸化物皮膜(第二の酸化物皮膜)
7 接触部分
11 静電チャック(耐食性部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材上に形成された第一の酸化物皮膜と、
前記第一の酸化物皮膜とは別種の材料により、前記基材上に形成された第二の酸化物皮膜と、を備えることを特徴とする耐食性部材。
【請求項2】
前記第二の酸化物皮膜は、前記第一の酸化物皮膜の材料より高い耐食性を有する材料により形成されていることを特徴とする請求項1記載の耐食性部材。
【請求項3】
前記第一の酸化物皮膜と前記第二の酸化物皮膜との接触部分において、表面に段差がないことを特徴とする請求項1または請求項2記載の耐食性部材。
【請求項4】
前記第一の酸化物皮膜および前記第二の酸化物皮膜はいずれも、希土類元素、アルミニウムおよびジルコニウムのうちのいずれかの酸化物で形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の耐食性部材。
【請求項5】
前記第二の酸化物皮膜は、溶射法により形成されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の耐食性部材。
【請求項6】
前記第一の酸化物皮膜と前記第二の酸化物皮膜との接触部分において、前記第二の酸化物皮膜は前記第一の酸化物皮膜の上に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の耐食性部材。
【請求項7】
前記基材は円板形状を有し、
前記第一の酸化物皮膜は基材の一方の主面上に設けられ、
前記第二の酸化物皮膜は基材の側面上に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の耐食性部材。
【請求項8】
半導体製造装置内、フラットパネルディスプレイ製造装置内または太陽電池製造装置内で使用されることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の耐食性部材。
【請求項9】
静電チャック、ヒーター、ガス分散プレート、バッフルプレート、バッフルリング、シャワーリング、高周波透過窓、赤外線透過窓、監視窓、サセプター、クランプリング、フォーカスリング、シャドーリング、絶縁リング、ダミーウエハ、半導体ウエハを支持するためのリフトピン、ベローズカバー、クーリングプレート、上部電極、下部電極、ならびに、チャンバー、ベルジャー、ドームおよびそれらの内壁材のいずれかであることを特徴とする請求項8記載の耐食性部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−106318(P2010−106318A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−279490(P2008−279490)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(391005824)株式会社日本セラテック (200)
【Fターム(参考)】