説明

耳かき

【課題】耳の内部を傷つけることが無いよう先端部に膨張部を設けるとともに、匙状を呈していなくとも充分に耳垢を除去することができ、かつ、簡単な洗浄により繰り返し使用可能な耳かきを提供すること。耳掃除の最中において耳の内部のみならず耳の外部周囲まで照射することができ、利便性がよく、安全面および衛生面に配慮した耳かきを提供すること。
【解決手段】本体部と、柄部とを有する耳かきであり、本体部に電源、電源スイッチが設けられており、柄部の内部または本体部の内部に光照射部が設けられており、柄部の先端部が膨張部を有し、該膨張部が光透過性部材(II)で被覆された被覆部を有し、前記光透過性部材(II)が、初期粘着力(S1)が15N以上30N以下であり、粘着性能耐久試験後の粘着力(S2)との割合(S2/S1)が0.9以上である耳かき。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耳かきに関する。さらに詳しくは、耳かきの柄部の先端が膨張部を有し、該膨張部が粘着性を有する光透過性部材で被覆されてなる耳かきに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、耳かきの先端部が匙状に形成されてなる木製の耳かきが知られている。かかる耳かきは、匙状の先端部で耳の内部に存在する耳垢を削りとる、または掻き取ることを特徴とする。かかる匙状の先端部は、木製の場合、耳の内部(特に外耳)を傷つけるおそれがあった。そのため、匙状の先端部を木製に代わる素材(樹脂など)で形成した耳かきもある。
【0003】
しかしながら、かかる耳かきにおいても、耳の内部を傷つける恐れが解消されていなかった。かかる問題を解決するために、特許文献1には、耳かき棒の先部に形成した耳かき部の外面を被覆部材で被覆したことを特徴とする耳かきが開示されている。また、かかる耳かき棒にライトの光を通して耳かき部から発光させるライト付耳かきも開示されている。また、特許文献2には、先端に耳かきを有する耳かき棒の後部を、先端に筒に挿入した構成になる耳かきが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−111102号公報
【特許文献2】特開平11−197051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図4に示されるように、特許文献1に記載の耳かき8は、依然として匙状の耳かき部9が先端に形成されており、匙状の耳かき部9の先端部10を被覆する被覆部材は、耳の内部を傷つけないように匙状の先端部を保護することを主目的とするものである。そのため、被覆部材で被覆したとしても、先端部10は依然として匙状の形状を呈しており、耳の内部を傷つける可能性があるという問題は充分に解決されていない。また、特許文献2に記載の発明では、耳かきで耳の内部を掃除した後に、耳の内部周囲に付着した耳垢を除去する目的で匙状の耳かきの別端に形成された素材を補助的に用いて粘着させて除去する構成を有しており、匙状の耳かきで耳垢を除去する構成ではない。また、依然として匙状の先端で耳の内部の耳垢を掻き取る構成を採用している。
【0006】
そのため、特許文献1および2のいずれにおいても、匙状の先端部により耳の内部を傷つける可能性は充分に排除されておらず、かつ、かかる可能性を排除するために先端部に設けられた被覆部材の種類や、先端部の形状については充分な検討がなされていない。
【0007】
また、最近の知見として、耳垢の除去は、風呂上りに綿棒でそっと触る程度がよく、外耳道を拭う程度がよいとする報告もあり、外耳道を傷つけると皮膚の糜爛や水様性の耳垂れ、外耳道真菌症の一因となることも知られている。外耳道への傷は、前述のとおり耳垢を掃除する際に匙状の先端部によって起こることが多いと考えられる。
【0008】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、耳かきの先端部を匙状ではなく、膨張部とし、さらにその膨張部を被覆する光透過性部材(II)の材料として特定の初期粘着力および耐粘着性を有する材料を採用することにより、耳の内部を傷つけることが無いよう先端部に膨張部を設けるとともに、匙状を呈していなくとも充分に耳垢を除去することができ、かつ、簡単な洗浄により繰り返し使用可能な耳かきを提供することを目的とする。また、柄部を光透過性部材で形成することにより、耳掃除の最中において耳の内部のみならず耳の外部周囲まで照射することができ、利便性がよく、安全面および衛生面に配慮した耳かきを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の耳かきは、本体部と、光透過性部材(I)からなる柄部とを有する耳かきであって、前記本体部の内部に電源が内蔵されており、前記本体部に電源スイッチが設けられており、前記柄部の内部に、前記電源に接続され、前記電源スイッチにより点灯可能な光照射部が設けられており、前記柄部の先端部が膨張部を有し、該膨張部が光透過性部材(II)で被覆された被覆部を有し、前記光透過性部材(II)が、光透過性部材(II)からなる試験片(縦30mm、横30mm、厚さ2mm)を作製し、室温にて加重測定機(ミネベア(株)製、PT−200N、直径10mmの円筒形アルミニウム製プランジャー使用、加重負荷速度30mm/分、加重20Nにて5秒間保持後、30mm/分で剥離)にて測定した初期粘着力(S1)が15N以上30N以下であり、光透過性部材(II)からなる試験片(縦30mm、横30mm、厚さ2mm)を作製し、試験粉(クラフトフーヅジャパン(株)製 商品名クラフトパルメザンチーズ)を付着させた後に水で洗浄する操作を100回繰り返し、室温にて加重測定機(ミネベア(株)製、PT−200N、直径10mmの円筒形アルミニウム製プランジャー使用、加重負荷速度30mm/分、加重20Nにて5秒間保持後、30mm/分で剥離)にて測定した粘着性能耐久試験後の粘着力(S2)と、前記S1との割合(S2/S1)が0.9以上である。
【0010】
前記光透過部材(I)が、光透過率が85%以上、衝撃強度が15kg・cm/cm以上の樹脂であることが好ましい。
【0011】
前記樹脂がポリメチルメタクリレートまたはポリカーボネートであることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の耳かきによれば、匙状の先端部を呈していなくとも充分に耳垢を除去することができ、かつ、簡単な洗浄により繰り返し使用可能な耳かきを提供することができる。また、柄部が光透過性部材で形成されているため、耳掃除の最中において耳の内部のみならず耳の外部周囲まで照射することができ、利便性がよく、安全面および衛生面に配慮した耳かきを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態(実施の形態1)にかかる耳かきの斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態(実施の形態1)にかかる耳かきの正面図である。
【図3】本発明の一実施形態(実施の形態1)にかかる耳かきの柄部および被覆部を説明するための断面図である。
【図4】従来の耳かきの斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態(実施例1)にかかる耳かきの被覆部に使用した光透過性部材(II)の可視光透過率を測定したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1
本発明の耳かきは、図1に示されるように、本体部1と、光透過性部材(I)からなる柄部2とを有する耳かき3であって、前記本体部1の内部に電源が内蔵されており、前記本体部1に電源スイッチ4が設けられており、前記柄部2の内部または前記本体部1の内部に、前記電源に接続され、前記電源スイッチ4により点灯可能な光照射部5が設けられており、前記柄部2の先端部が膨張部6を有し、該膨張部6が、光透過性部材(II)からなる試験片(縦30mm、横30mm、厚さ2mm)を作製し、室温にて加重測定機(ミネベア(株)製、PT−200N、直径10mmの円筒形アルミニウム製プランジャー使用、加重負荷速度30mm/分、加重20Nにて5秒間保持後、30mm/分で剥離)にて測定した初期粘着力(S1)が15N以上30N以下であり、光透過性部材(II)からなる試験片(縦30mm、横30mm、厚さ2mm)を作製し、試験粉(クラフトフーヅジャパン(株)製 商品名クラフトパルメザンチーズ)を付着させた後に水で洗浄する操作を100回繰り返し、室温にて加重測定機(ミネベア(株)製、PT−200N、直径10mmの円筒形アルミニウム製プランジャー使用、加重負荷速度30mm/分、加重20Nにて5秒間保持後、30mm/分で剥離)にて測定した粘着性能耐久試験後の粘着力(S2)と、前記S1との割合(S2/S1)が0.9以上である光透過性部材(II)で被覆された被覆部7を有する。
【0015】
本体部1は、耳かき3の本体を形成する部材である。前述のとおり、本体部1の内部には電源が設けられており、該電源と光照射部5とは、本体内部で電気的に接続されており、電源スイッチ4により光照射部5から光を照射させることができる。前記光照射部5は、前述のとおり前記柄部2の内部または本体部1の内部に設けることができるが、本実施の形態では、本体部1の内部に設けられている。
【0016】
本体部1の材質としては特に限定されず、たとえば樹脂としてポリイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリシクロヘキシレン・ジメチレン・テレフタレート、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾイミダゾール、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、MS樹脂、ポリスチレンABS樹脂、AS樹脂、ポリ塩化ビニル、環状ポリオレフィン、脂環式アクリル樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ポリ−4−メチルペンテン−1、シクロヘキサジエン系ポリマー、非晶ポリエステル樹脂、透明ポリイミド、透明ポリアミド、透明ポリウレタン、透明フッ素樹脂、熱可塑性エラストマー、ポリ乳酸を使用することができる。本実施の形態では、ABS樹脂を採用している。
【0017】
電源としては特に限定されず、たとえばコイン型の丸電池、単5電池、扁平形状の蓄電池など種類、大きさを問わず1または複数個を内蔵させて使用することができる。また、外部電源を用いることも可能である。本実施の形態では、コイン型の丸電池を2個内蔵させて使用している。
【0018】
光照射部5は、前述のとおり本体内部で電気的に電源と接続されており、電源スイッチ4により光照射部5から光を照射させるための部材である。後述する光透過性部材(II)で形成された柄部2および柄部2の先端部に形成された膨張部6を被覆する光透過性部材(II)を内部から照射するために設けられている。光源としては特に限定されず、たとえば小型白熱電球、小型ハロゲン電球、LEDを採用することができる。本実施の形態では、LEDを採用している。
【0019】
柄部2は、耳かき3の本体部1に接続されている部材である。接続方法は特に限定されず、本体部1に挿入されており、使用者が本体部1を把持して耳掃除をするときに本体部1を介して耳を掃除する力が伝わればよい。柄部2は光透過性部材(I)からなり、内部に前記電源に接続され、前記電源スイッチ4により点灯可能な光照射部5を設けることができる。前述のとおり、本実施の形態では、本体部1の内部に光照射部5が設けられている。
【0020】
光透過性部材(I)としては、特に限定されず、広く光を透過する樹脂を使用することができる。中でも、光の透過性がよく、かつ、耐侯性、耐熱性、強度に優れる点で、光透過率が85%以上、衝撃強度が15kg・cm/cm以上の樹脂が好ましい。透過度が85%未満の場合、光透過性部材(I)および後述の光透過性部材(II)の種類にもよるが、耳の外部周辺を充分に照射することができない傾向がある。光透過率の上限は特になく、透過度が高ければ高いほどよい。光透過率が85%以上、衝撃強度が15kg・cm/cm以上の樹脂としては、たとえばポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、MS樹脂、ポリスチレンABS樹脂、AS樹脂、ポリ塩化ビニル、環状ポリオレフィン、脂環式アクリル樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ポリ−4−メチルペンテン−1、シクロヘキサジエン系ポリマー、非晶ポリエステル樹脂、透明ポリイミド、透明ポリアミド、透明ポリウレタン、透明フッ素樹脂、熱可塑性エラストマー、ポリ乳酸が挙げられる。これらの中でも、入手可能性、コストの面からポリメチルメタクリレートまたはポリカーボネートが好ましい。衝撃強度が15kg・cm/cm未満の場合、使用中に本体部1が破損する恐れがある。本実施の形態では、光透過率が約85%、衝撃強度が約80kg・cm/cmを使用している。これにより前記光照射部5により照射された光が柄部2を通過し、耳掃除の最中に耳の内部のみならず外部周囲をも照射することができる。
【0021】
膨張部6は、柄部2の先端部に設けられている。膨張部6は、耳掃除の際に耳の内部に挿入される部位であり、匙状ではなく、丸みを帯びたほぼ球形の形状を呈している。そのため、従来の匙状の先端部を有する耳かきと比較して、耳の内部を傷つけることがなく、安全性が高い。膨張部6は、光透過性部材(II)で被覆された被覆部7を有している。
【0022】
光透過性部材(II)は、前記光透過性部材(II)が、光透過性部材(II)からなる試験片(縦30mm、横30mm、厚さ2mm)を作製し、室温にて加重測定機(ミネベア(株)製、PT−200N、直径10mmの円筒形アルミニウム製プランジャー使用、加重負荷速度30mm/分、加重20Nにて5秒間保持後、30mm/分で剥離)にて測定した初期粘着力(S1)が15N以上30N以下であり、光透過性部材(II)からなる試験片(縦30mm、横30mm、厚さ2mm)を作製し、試験粉(クラフトフーヅジャパン(株)製 商品名クラフトパルメザンチーズ)を付着させた後に水で洗浄する操作を100回繰り返し、室温にて加重測定機(ミネベア(株)製、PT−200N、直径10mmの円筒形アルミニウム製プランジャー使用、加重負荷速度30mm/分、加重20Nにて5秒間保持後、30mm/分で剥離)にて測定した粘着性能耐久試験後の粘着力(S2)と、前記S1との割合(S2/S1)が0.9以上である。
【0023】
当該条件を満たす光透過性部材(II)は、粘着性を有するとともに、耐煮沸性、耐久性が高く、耳掃除の後に温水で洗浄した場合において、洗浄後に再び粘着性を示すことができる。また、光透過性に優れている。そのため、前記光照射部5により柄部2が照射されると、その光が被覆部7を通過して耳の内部を照射することができる。S2/S1が0.9未満の場合、洗浄後に粘着性が低下することから、反復使用に適さない傾向がある。
【0024】
なお、初期粘着力(S1)が15N未満の場合、耳垢を充分に粘着することができない傾向があり、30Nを超えると粘着性が高すぎるため、外耳道を傷つける可能性がある。
【0025】
光透過性部材(II)を構成する樹脂としては、ポリスチレンがあげられ、ポリスチレンに、粘着付与樹脂を配合した樹脂を採用することができる。また、別途軟化剤を併用することができる。ポリスチレンとしては、たとえばスチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレンエチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体(SEEPS)があげられ、これらの分子量(数平均分子量Mn)としては上限は特になく、100000以上が好ましい。粘着付与樹脂としては、たとえばロジン樹脂、テルペン樹脂、石油樹脂、石炭樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂等があげられる。軟化剤としては、種々の鉱物油系軟化剤、植物油系軟化剤を使用することができる。鉱物油系軟化剤としては、ナフテン系、パラフィン系オイルなどを使用でき、植物油系軟化剤としては、ひまし油、なたね油、大豆油などを使用でき、これらの分子量(数平均分子量Mn)としては300〜2000が好ましい。300未満の場合、ブリードアウトを生じる傾向があり、2000を超えると耐粘着性が劣る傾向がある。
【0026】
前記粘着付与樹脂の配合量としては、ポリスチレン100重量部に対して120〜450重量部配合することが好ましく、軟化剤の配合量としては、ポリスチレン100重量部に対して0〜200重量部配合することが好ましい。
【0027】
本実施の形態では、ポリスチレン(分子量約200000)100重量部に対してテルペン、パラフィンオイル(分子量約400)の混合物を120〜450重量部配合した樹脂組成物を使用している。
【0028】
なお、試験粉であるクラフトフーヅジャパン(株)製のクラフトパルメザンチーズは、その成分が脂質約33%、タンパク質約40%、遊離アミノ酸およびその他が約27%からなり、耳垢の成分(脂質約23%、タンパク質約57%、遊離アミノ酸およびその他が20%)と比較的近似するため採用した。
【0029】
以下、実施例により本発明の耳かきをより詳細に説明する。
【実施例】
【0030】
実施例1
以下の条件を有する耳かきを用いて、粘着耐久性試験を行なった。結果を表1に示す。また、実施例1の耳かきの被覆部に使用した光透過性部材(II)について、可視光透過率を測定した。測定には、紫外可視近赤外分光光度計((株)島津製作所製 UV−3100 測定波長:380〜780nm)を用いた。結果を図5に示す。参照符号T1は光透過性部材(II)の光透過率を表す。
【0031】
・実施例1の耳かき
柄部:ポリカーボネート(光透過率85%、衝撃強度80kg・cm/cm)
被覆部:ポリスチレン(分子量約200000)100重量部に対してテルペン、パラフィンオイル(分子量約400)の混合物を120〜450重量部配合した樹脂組成物(光透過率91%)
【0032】
比較例1の耳かき
被覆部をシリコーン系樹脂(共和工業(株)製、KS0004、分子量5000〜10000)に変更した以外は実施例1と同様に試験を行なった。結果を表1に示す。
【0033】
比較例2の耳かき
比較例1のシリコーン系樹脂に、シリコーンオイル(信越化学工業(株)製、KF96)を塗布して粘着性を付与した以外は実施例1と同様に試験を行なった。結果を表1に示す。
【0034】
比較例3の耳かき
比較例1のシリコーン系樹脂に、アクリル系粘着剤(トラスコ中山(株)製、TC−SN420B)を塗布して粘着性を付与した以外は実施例1と同様に試験を行なった。結果を表1に示す。
【0035】
試験方法を以下に示す。
【0036】
(粘着耐久性試験)
1.初期粘着力
実施例1および比較例1〜3の耳かきの被覆部に使用した素材について、試験片(縦30mm、横30mm、厚さ2mm)を作製し、ミネベア(株)製の加重測定機(型番PT−200N)にて剥離加重値を測定した。測定は、室温条件下で行い、前記試験片に対して、直径10mmの円筒形アルミニウム製プランジャーを用いて30mm/分の速度で加重を負荷し、20Nの加重が加わった時点で5秒保持し、その後、30mm/分の速度で剥離した。剥離した際の強度(剥離強度)を測定した。試験片は5つ作製し、平均値を算出した。
【0037】
2.水洗浄による粘着久性試験
試験片に対して、試験粉(クラフトフーヅジャパン(株)製 商品名クラフトパルメザンチーズ)を付着させ、その後水で洗浄する操作を100回繰り返した後に剥離強度の測定に供した以外は、初期粘着力と同様に測定した。
【0038】
3.洗剤洗浄による粘着耐久性試験
試験片に対して、試験粉(クラフトフーヅジャパン(株)製 商品名クラフトパルメザンチーズ)を付着させ、その後中性洗剤(P&G(株)製 商品名ジョイ)で洗浄する操作を100回繰り返した後に剥離強度の測定に供した以外は、初期粘着力と同様に測定した。
【0039】
4.耐熱負荷試験
試験片を、60℃に保温された恒温槽に7日間保持した後に剥離強度の測定に供した以外は、初期粘着力と同様に測定した。
【0040】
5.耐寒負荷試験
試験片を、−30℃に保温された恒温槽に7日間保持した後に剥離強度の測定に供した以外は、初期粘着力と同様に測定した。
【0041】
6.煮沸負荷試験
試験片を、100℃の沸騰水中に1時間保持した後に剥離強度の測定に供した以外は、初期粘着力と同様に測定した。
【0042】
【表1】

【0043】
表1に示されるように、実施例1の耳かきに使用した光透過性部材(II)は、S1が15N以上であり、S2/S1も0.9を超えた。その他、洗剤洗浄による粘着耐久性試験、耐熱負荷試験、耐寒負荷試験および煮沸負荷試験後においても、粘着力は低下せず、反復使用に耐え得ることが判った。
【0044】
一方、被覆部をシリコーン系樹脂で形成した場合(比較例1)、さらにシリコーンオイルを塗布した場合(比較例2)およびアクリル系粘着剤を使用した場合(比較例3)では、S1がほぼ0であり、耳垢を粘着させて除去することは不可能であると判る。また、S2/S1は算出不可能であるか、0であった。その他、洗剤洗浄による粘着耐久性試験、耐熱負荷試験、耐寒負荷試験および煮沸負荷試験に耐えられないことが判った。
【0045】
すなわち、本願発明にかかる光透過性部材(II)を採用することにより。先端を匙の形状とせずとも耳垢を粘着させて除去することができ、かつ、反復使用した場合でも粘着力が維持される優れた耳かきを提供できることが判った。
【0046】
図5に示されるように、光透過性部材(II)の光透過率T1は、可視光領域において、90%を超え(最大91.2%)、透過率が大きいことが判った。すなわち、柄部を構成する光透過性部材(I)の光透過率が約85%であり、被覆部を構成する光透過性部材(II)の光透過率T1が約91%であることから、これらを使用した耳かきでは、充分に光を透過することが判る。
【符号の説明】
【0047】
1 本体部
2 柄部
3、8 耳かき
4 電源スイッチ
5 光照射部
6 膨張部
7 被覆部
9 耳かき部
10 先端部
T1 光透過性部材(II)の光透過率

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、光透過性部材(I)からなる柄部とを有する耳かきであって、
前記本体部の内部に電源が内蔵されており、前記本体部に電源スイッチが設けられており、
前記柄部の内部または前記本体部の内部に、前記電源に接続され、前記電源スイッチにより点灯可能な光照射部が設けられており、
前記柄部の先端部が膨張部を有し、該膨張部が光透過性部材(II)で被覆された被覆部を有し、
前記光透過性部材(II)が、光透過性部材(II)からなる試験片(縦30mm、横30mm、厚さ2mm)を作製し、室温にて加重測定機(ミネベア(株)製、PT−200N、直径10mmの円筒形アルミニウム製プランジャー使用、加重負荷速度30mm/分、加重20Nにて5秒間保持後、30mm/分で剥離)にて測定した初期粘着力(S1)が15N以上30N以下であり、
光透過性部材(II)からなる試験片(縦30mm、横30mm、厚さ2mm)を作製し、試験粉(クラフトフーヅジャパン(株)製 商品名クラフトパルメザンチーズ)を付着させた後に水で洗浄する操作を100回繰り返し、室温にて加重測定機(ミネベア(株)製、PT−200N、直径10mmの円筒形アルミニウム製プランジャー使用、加重負荷速度30mm/分、加重20Nにて5秒間保持後、30mm/分で剥離)にて測定した粘着性能耐久試験後の粘着力(S2)と、前記S1との割合(S2/S1)が0.9以上である耳かき。
【請求項2】
前記光透過部材(I)が、光透過率が85%以上、衝撃強度が15kg・cm/cm以上の樹脂である請求項1記載の耳かき。
【請求項3】
前記樹脂がポリメチルメタクリレートまたはポリカーボネートである請求項1または2記載の耳かき。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−229610(P2011−229610A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101019(P2010−101019)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(000112299)ピップ株式会社 (46)
【Fターム(参考)】