説明

耳に薬理的作用物質を適用するための方法及び組成物

耳に薬理的作用物質を適用するために有用である方法及び材料が記載されている。該方法は、少なくとも1種の粘度生成剤及び少なくとも1種の薬理的作用物質を含む組成物を耳道から鼓膜の上皮表面に送出することを伴う。該組成物は、流動性形態で鼓膜に送出され、そして鼓膜に送出された後、該薬理的作用物質が鼓膜に対して局在するように十分に粘稠になる。このような組成物は、中耳炎を包含する中耳及び内耳症状を予防的及び/又は治療的に処置するために使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耳に薬理的作用物質を適用するための方法及び組成物に関する。より詳細には、本発明は、耳の疾患を治療するために鼓膜の外部上皮表面に薬理的作用物質を適用するための方法及び材料を特色とする。
【背景技術】
【0002】
中耳炎(OM)は特に小児に極めてよく起こる。OMは上気道のウイルス感染でしばしば発症し、これは鼻咽頭に常在する細菌が中耳に侵入して住みつくように上気道、ユウスタキイ管及び中耳の微小環境を変化させる。この侵入は、ユウスタキイ管を炎症させて遮断し、中耳の通気、圧力平衡化及び排液を妨げる。通常は空気で満たされている中耳腔に液体が蓄積して圧力を上昇させ、非常な痛みを引き起こす。重症OMの場合、音知覚構造が損傷されることがある。持続性又は再発性OMは、薄いバイオフィルムにより抗生物質から保護されていた中耳内での休眠から覚めた細菌によって引き起こされることがある。
【0003】
現在、OMは抗生物質を用いて、そして/又は中耳腔を排液及び減圧するように鼓膜の外科的切開により中耳腔換気用チューブを挿入することによって治療される。抗生物質治療の効力は送出経路により制限される。抗生物質は全身的に送出することができるが、中耳において治療レベル(すなわち、最小阻止濃度より多い)を得るために高い容量を必要とし、そしてこのようなレベルはかなり遅れた後で達成される。抗生物質は洗浄によるか、又は耳管内への点滴により送出することもできる。このような送出経路は調整が困難なことがあり、そして中耳内の抗生物質の持続性治療レベルを達成するために有効でない。抗生物質は中耳内への注射によるか、又は中耳内への抗生物質含浸材料の挿入によっても送出できるが、このような方法は鼓膜の穿刺又は切断を伴い、これらは全身麻酔を必要とし、そして鼓膜を損傷することがある。中耳腔換気用チューブの外科的挿入は、鼓膜硬化(すなわち、鼓膜の瘢痕化)、聴力喪失、持続性耳漏(すなわち、耳管からの膿の排出)及び感染を含む危険性をも有する。
【0004】
国立衛生研究所の一部門である国立難聴及び他の意思疎通障害研究所(NIDCD)は、最近、OMを予防及び治療するための代替戦略及び新しいアプローチの開発を支援するために2,000,000ドルの財源イニシアチブを開始した。申請に対するその要請(RFA−DC−02−002)において、NIDCDは次のことを述べた:(1)OMは著しい小児罹患率を生じ、そして一般的公衆衛生にますます悪影響を与えている;(2)OMは緊急治療室を訪れる主要な理由である;(3)OMは診療所を訪れる二番目に主用な理由である;(4)OMは小児に抗生物質を処方する主要な理由であり、全外来患者処方の40%超を占める;(5)OMは小児期難聴の主要な理由である;そして(6)OMは小児の全身麻酔の主要な理由である。加えて、NIDCDは、OMの原因となりうる三つの属の多剤耐性細菌(肺炎連鎖球菌、型を分類できないインフルエンザ菌及びモラクセラ・カタラーリス)の発生を警告するために、OMの治療に広域スペクトル抗生物質を使用することを非難した。結果として、多くの第一及び第二選択抗生物質は、OM並びに肺炎及び髄膜炎を含む他の疾患に対する効果がますます少なくなってきている。NIDCDは、「1)OMの罹患率および関連費用を減少させるため、そして2)OM及び他の一般的な重病の治療に用いられる抗生物質の効力を保存するために、OMを研究、治療及び予防するための新しいアプローチの開発が緊急に必要とされる」と結論づけた。
【発明の開示】
【0005】
発明の概要
本発明は、一部は、1種以上の薬理的作用物質(pharmacologic agent)を含む組成物を鼓膜の上皮外部表面に液体様形態で送出することができ、送出されると次に該組成物が鼓膜に対して局在したままとなるように固体様状態に変化できるように、該組成物を製剤化できるという発見に基づいている。このような組成物の鼓膜への送出は、中耳及び内耳障害(例えば、OM)を治療するためのより効果的な手段を提供することができる。
【0006】
一つの態様において、本発明は、哺乳類(例えば、げっ歯動物又はヒト)に薬理的作用物質を投与することを特色としている。本方法は、哺乳類の鼓膜の上皮表面に製剤を適用することを含み、該製剤が粘度生成剤(viscogenic agent)及び少なくとも1種の薬理的作用物質(pharmacologic agent)を含み、該製剤が100,000cps未満の粘度を有し、そして該製剤が該鼓膜に適用した後に、該製剤を該鼓膜に対して保持するのに十分である降伏応力を有する。粘度生成剤は、ジェラン(gellan)で、アクリル酸ナトリウム及びn−N−アルキルアクリルアミドを伴うN−イソプロピルアクリルアミド、ポリエチレングリコールを伴うポリアクリル酸、ポリエチレングリコールを伴うポリメタクリル酸、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを伴うカルボポール、酢酸フタル酸水素セルロースラテックス(cellulose acetate hydrogen phthalate latex)、アルギン酸ナトリウム、又は逆熱硬化性(reverse thermosetting)ゲル、例えばポロキサマー若しくはポロキサミンであってよい。薬理的作用物質は、抗生物質、抗真菌剤又は抗ウイルス剤であってよい。薬理的作用物質は、鼓膜を越えて中耳腔内に移行することができる。抗生物質は、ペニシリン、例えば、アモキシシリン又はアモキシシリン−クラブラン酸塩であってよい。抗生物質は、サルファ剤に基づく組み合わせ、例えば、エリスロマイシン−スルフイソキサゾール又はトリメトプリム−スルファメトキサゾールであってよい。抗生物質は、マクロライド系抗生物質/アジド、例えば、アジスロマイシン及又はクラリスロマイシンであってよい。抗生物質は、セファロスポリン、例えばセファクロル、セフプロジル、セフロキシムアクセチル、ロラカルベフ、セフジニル、セフィキシム、セフポドキシムプロクセチル、セフチブテン又はセフトリアクソンであってよい。少なくとも1種の薬理的作用物質は、抗生物質及び抗炎症剤を含むことができ、そして麻酔剤をさらに含むことができる。製剤は、接着促進剤、透過促進剤、生物接着剤(bioadhesive)、吸湿剤、耳垢軟化剤又は保存剤をさらに含むことができる。
【0007】
別の態様において、本発明は、製剤及び該製剤を鼓膜に適用することを指示する指示書を含むキットであって、該製剤が粘度生成剤及び少なくとも1種の薬理的作用物質を含み、該製剤が100,000cps未満の粘度を有し、そして該製剤が該鼓膜に適用した後に、該製剤を該鼓膜に対して保持するのに十分である降伏応力を有する上記キットを特色としている。
【0008】
本発明はまた、その鼓膜の上皮表面に適用された製剤を含むげっ歯動物(例えば、チンチラ)あって、該製剤が粘度生成剤及び少なくとも1種の薬理的作用物質を含み、該製剤が100,000cps未満の粘度を有し、そして該製剤が該鼓膜に適用した後に、該製剤を該鼓膜に対して保持するのに十分である降伏応力を有する上記げっ歯動物を特色としている。
【0009】
別に定義しない限り、本明細書で用いられる全ての技術及び科学用語は、本発明が関係する当業者により普通に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載するものと同様又は同等の方法及び材料を本発明の実施に使用できるが、好適な方法及び材料は以下に説明される。本明細書で挙げた全ての刊行物、特許出願、特許及び他の参考文献は、それらの全体が参照により本明細書に組み入れられる。対立する場合には、定義を含めて本明細書が支配するであろう。加えて、材料、方法及び実施例は説明のためだけのものであって、限定を意図するものではない。
【0010】
本発明の他の特色及び利点は、下記の詳細な説明及び請求項から明らかにされるであろう。
【0011】
詳細な説明
一般的に、本発明は、1種以上の薬理的作用物質及び1種以上の粘度生成剤を含む組成物を用いて、耳に薬理的作用物質を適用する方法を提供する。組成物は、具体的には、それらを液体様状態、すなわち流動性形態で鼓膜の外部上皮表面に送出できるように製剤化される。しかしながら、投与した後、組成物は、それらが鼓膜と接触したままとなるように固体様状態に変化する。結果として、組成物は鼓膜に対して局在したままとなり、そして薬理的作用物質は鼓膜を越えて、例えば中耳腔内に移行し、中耳及び内耳障害(例えば、OM)を治療するためのより効果的な手段を提供する。好適な組成物は他の成分、例えば、鼓膜への製剤の接着を促進するもの及び/又は薬理的作用物質への鼓膜の透過性を増大するものを含むこともできる。
【0012】
本発明の組成物は、25℃で100,000センチポアズ(cps)未満の粘度を有する。粘度は、流れに対する組成物の抵抗を指す。1mLツベルクリン用シリンジに取り付けた19ゲージ針を適度な力により機械的装置なしで通過できる0.5mLの体積を有する組成物は、典型的に、100,000cps未満の粘度を有する。組成物の粘度は、市販の粘度標準物で較正した粘度計(例えば、Brookfield製)を用いて測定することができる。
【0013】
また、本発明の組成物は、該組成物を鼓膜に対して保持するのに十分である最小降伏応力を有する。降伏応力は、固体材料に加えられたときに、応力をさらに増大することなく該固体材料が変形し続けるという液体様の挙動を該材料に示させる力の量を指す。本発明の組成物の最小降伏応力は、適用したゲルの厚さに依存するが、該ゲルの形状及び環境の温度には依存しない。本明細書で用いられるように、組成物の最小降伏応力は、4mmの厚さ及び1g/Lの密度を有する適用したゲルに関する。降伏応力(σ)は、σ=ρghとして表され、式中、ρは密度であり、gは重力による加速度であり、そしてhは層の厚さである。典型的には、最小降伏応力は約39パスカル(Pa)である。本明細書に記載する方法は、組成物が鼓膜に対して保持されるのに十分である降伏応力を有するかどうかを評価するために用いることもできる。例えば、試験組成物をチンチラのような動物の耳に投与することができ、そして該組成物がより固体様状態に変形し、かつ鼓膜に対して保持されるかどうかを決定するために、該動物の耳を監視することができる。実施例1を参照されたい。
【0014】
粘度生成剤
本明細書で用いられるように、粘度生成剤は、液体の粘度を上昇させるポリマー又は他の化学的部分を指す。好適な粘度生成剤は、本発明の組成物に含めた場合に、該組成物を25℃で液体様状態(例えば、流動性)から、鼓膜と接触した後に固体様状態(例えば、ゲル)に変形させ、そして非生物分解性であっもてよく、すなわち、動物中に天然に存在する化学物質又は酵素により分解されることができなくてもよく、又は生物分解性であってもよい。組成物は、25℃で100,000cps未満(例えば、90,000、60,000、30,000、20,000又は10,000cps未満)の該組成物の粘度、及び一般的に、鼓膜に適用した後に39Pa未満の最小降伏応力を生じさせるのに十分である量の粘度生成剤を含む。典型的には、組成物は、0.05〜50%の粘度生成剤(例えば、0.15〜25、5〜45、10〜40、12〜37、15〜35、17〜33又は20〜30%の粘度生成剤)を含む。
【0015】
例示的な粘度生成剤は、ジェラン(Gelrite(登録商標)又はKelcogel(登録商標))、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を伴うCarbopol(登録商標)940、アクリル酸ナトリウム及びn−N−アルキルアクリルアミドを伴うN−イソプロピルアクリルアミド(NiPAAm)、ポリエチレングリコール(PEG)を伴うポリアクリル酸又はPEGを伴うポリメタクリル酸、酢酸フタル酸水素セルロースラテックス(CAP)、アルギン酸ナトリウム、並びに非イオン界面活性剤、例えばポロキサマー(Pluronic(登録商標))及びポロキサミン(Tetronic(登録商標))可逆性温度依存性ゲル化系を包含する。ジェランは、シュードモナス・エラデア (Pseudomonas elodea) により分泌される、天然高分子のアニオン性の脱アセチル化した細胞外多糖である。四糖反復単位は、1個のα−L−ラムノース、1個のβ−D−グルクロン酸及び2個のβ−D−グルコース部分からなる。ジェランのin situゲル化機構は、カチオン誘導性(例えば、カルシウムイオンの存在)及び温度依存性(例えば、生理的温度)である。ゲル化は熱可逆性である。HPMCを伴うCarbopol(登録商標)940は、pH依存性様式によりin situでゲル化する。Carbopol(登録商標)はゲル化剤であり、そしてHPMCはゲルの粘度を上昇させるために用いられる。アクリル酸ナトリウム及びn−N−アルキルアクリルアミドを伴うNiPAAmは、温度に基づく可逆的ゾル−ゲル変換を行うことのできるターポリマーヒドロゲルである。アクリル酸ナトリウム及びn−N−アルキルアクリルアミドは、ヒドロゲルの特性、特に転移温度を改変するために用いられる。PEGを伴うポリアクリル酸又はPEGを伴うポリメタクリル酸は、水素結合に基づくゲルであると考えられる。ポリアクリル酸は、ヒドロアルコール溶液に溶解することができ、そして注射した後にアルコールは拡散して、ポリマーの沈殿及び溶液のゲル化を引き起こす。CAPはpH依存性の様式によりゲル化するナノ粒状物系である。活性化合物(薬理的作用物質)はポリマー粒子の表面に部分的に吸着される。アルギン酸ナトリウムは、カルシウム又は他の多価イオンの存在下にゲル化する。
【0016】
非イオン界面活性剤、例えばポロキサマー及びポロキサミンは特に有用である。ポロキサマーは製剤技術で周知であり、そして例えば、Irving R. Schmolka により Poloxamers in the Pharmaceutical Industry, in Polymers for Controlled Drug Delivery, Chapter 10 (Peter J. Tarcha ed., 1990) に記載されている。ポロキサマーは、それらが2個の異なるポリマーブロック(すなわち、親水性ポリ(オキシエチレン)ブロック及び疎水性ポリ(オキシプロピレン)ブロック)からなり、ポリ(オキシエチレン)−ポリ(オキシプロピレン)−ポリ(オキシエチレン)の三ブロックとして構成されているので、三ブロックコポリマーである。ポロキサマーは、プロピレンオキシドブロック疎水性部及びエチレンオキシド親水性部を有するブロックコポリマー界面活性剤の一クラスである。ポロキサマーは市販されている(例えば、Pluronic(登録商標)ポリオールはBASF Corporationから入手することができる)。その代わりに、ポロキサマーは公知の技術により合成することができる。
【0017】
これまでは、ポロキサマーには、それらの生物分解性、それらの水溶性、及びそれらの比較的急速な薬剤放出速度を仮定すれば、薬理的作用物質を投与するための実用性がないと考えられていた(例えば、米国特許第6,201,072号参照)。それにもかかわらず、本明細書に記載するように、ポロキサマーは製剤を鼓膜に適用するために有利な特性を分担する:ポロキサマーの水性製剤は逆熱ゲル化性(reverse thermal gelation)、又は逆熱硬化性(reverse thermosetting)を示す。水性ポロキサマー製剤をそのゲル化温度以上に加熱すると、その粘度は上昇し、それはゲルに変換する。水性ポロキサマー製剤をそのゲル化温度以下に冷却すると、その粘度は低下し、それは液体に変換する。ゲルと液体との間の遷移は、製剤の化学的組成の変化を伴わず、可逆的かつ反復可能性である。水性ポロキサマー製剤のゲル−液体遷移温度は、当業者により日常的な実験を用いて(例えば、製剤中のポロキサマー濃度、pH及び他の成分の存在を操作することにより)調節することができる。若干の実施形態において、組成物は、周囲温度よりも高く、そして鼓膜の温度より低いかそれと等しいゲル化温度を有する。このような組成物は、それぞれの耳管から液体として都合よく適用することができ、次いで鼓膜に対してゲルに変換することができ、これにより製剤中の薬剤を鼓膜に近接して保持する。
【0018】
薬理的作用物質
本発明の組成物は、少なくとも1種の薬理的作用物質(すなわち、有効量で鼓膜に適用したときに所望の効果を有する化学的又は生物学的分子)を含有することもできる。組成物中に存在する薬理的作用物質の量は、薬理的作用物質の種類及びその既知の有効用量に依存する。典型的には、薬理的作用物質は0.1%〜50%(例えば、0.25%〜15%)の範囲の量で存在する。組成物は、例えば、アドレノコルチコイド(コルチコステロイド、ステロイド)、鎮痛剤、鎮痛佐剤、鎮痛−麻酔剤、麻酔剤、抗生物質、抗菌剤、抗感染剤、抗生物質治療用佐剤、解毒剤、制吐剤、抗真菌剤、抗炎症剤、抗眩暈剤、抗ウイルス剤、生物学的反応修飾物質、細胞毒性剤、診断用助剤、免疫剤、免疫調節剤、タンパク質、ペプチド、及び耳障害の治療に有用でありうる他の作用物質を含むことができる。鎮痛剤、鎮痛佐剤、鎮痛−麻酔剤、麻酔剤、抗生物質、抗菌剤、抗感染剤、抗生物質治療用佐剤、抗真菌剤、抗炎症剤、抗ウイルス剤及びペプチドが特に有用である。本発明の組成物は、複数の薬理的作用物質を含むことができ、それらは、所望の効果に応じて、同じクラス内の2種以上の作用物質(例えば、2種の異なる抗生物質)又は種々の種類の2種以上の作用物質を包含する。例えば、細菌感染と戦うため、組織炎症を減少させるため、そして刺激を緩和するために、組成物は抗菌剤、抗炎症剤及び麻酔剤又は鎮痛剤を含有することができる。当業者は、所望の効果を達成するために必要とされるように薬理的作用物質を確認し、それらを組み合わせることができる。
【0019】
例示的なアドレノコルチコイドは、ベタメタゾン、コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、パラメタゾン、プレゾニドロン、プレドニゾン及びトリアムシノロンを包含する。例示的な鎮痛剤は、アセトアミノフェン、アスピリン、ブプレノフィン、ブタルビタール、ブトルファノール、コデイン、デゾシン、ジフルニサル、ジヒドロコデイン、エトドラク、フェノプレフェン、フェンタニル、フロクタフェニン、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、イブプロフェン、ケトプロフェン、ケトロラク、レボルファノール、サリチル酸マグネシウム、メクロフェナメート、メフェナミン酸、メペリジン、メプロバメート、メサドン、メトトリメプラジン、モルフィン、ナルブフィン、ナプロキセン、オピウム、オキシコドン、オキシモルフォン、ペンタゾシン、フェノバルビタール、プロポキシフェン、サルサラート及びサリチル酸ナトリウムを包含する。一つの例示的な鎮痛剤はカフェインである。例示的な麻酔剤は、アルチカン−エピネフリン、ブピバカイン、クロルプロマジン、エチドカイン、ケタミン、リドカイン、メピバカイン、メトヘキシタル、プリロカイン、プロポフォル、プロポキシカイン、テトラカイン及びチオペンタールを包含する。一つの例示的な鎮痛−麻酔剤はアンチピリン−ベンゾカインである。
【0020】
例示的な抗生物質、抗菌剤及び抗感染剤は、スルホンアミド(例えば、スルファニルアミド、スルファジアジン、スルファメトキサゾール、スルフイソキサゾール、パラ−アミノ安息香酸又はスルフアセタミド)、トリメトプリム−スルファメトキサゾール、キノロン(例えば、シプロフロキサシン、オフロキサシン又はナリジジキシン酸)、β−ラクタム抗生物質、例えばペニシリン又はセラロスポリン、アミノグリコシド(例えば、カナマイシン、トブロマイシン、ゲンタマイシンC、アミカシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、ストレプトマイシン又はバンコマイシン)、テトラサイクリン、クロラムフェニコール及びマクロライド系抗生物質(例えばエリスロマイシン、クラリスロマイシン又はアジスロマイシン)を包含する。好適なペニシリンの非限定的な例は、ペニシリンG、ペニシリンV、メシシリン、オキサシリン、ナフェイリン、アンピシリン及びアモキシシリンを包含する。好適なセファロスポリンの非限定的な例は、セファロチン、セフジニル、セフォゾリン、セファレキシン、セファドラキサル、セファマンドール、セフォキシチン、セフェクロル、セフォニシド、セフェレタン、セフォタキシム、セフチゾキシム、セフルトリアキソン、セフジトレン及びセフェピンを包含する。OMの治療に有用である例示的な抗生物質は、ペニシリン、例えばアモキシシリン及びアモキシシリン−クラブラン酸塩(Augmentin(登録商標));サルファ剤に基づく組み合わせ、例えばエリスロマイシン−スルフイソキサゾール(Pediazole)、トリメトプリム−スルファメトキサゾール、(Bactrim、Septra(登録商標));マクロライド系抗生物質/アジド、例えばアジスロマイシン(Zithromax(登録商標))又はクラリスロマイシン(Biaxin(登録商標));第二世代のセファロスポリン、例えばセファクロル(Ceclor(登録商標))、セフプロジル(Cefzil(登録商標))、セフロキシムアクセチル(Ceftine(登録商標))又はロラカルベフ(Lorabid(登録商標));並びに第三世代のセファロスポリン、例えばセフジニル(Omnicef(登録商標))、セフィキシム(Suprax(登録商標))、セフポドキシムプロクセチル(Vantin(登録商標))、セフチブテン(Cedax(登録商標))、セフジトレン(SpectracefTM)及びセフトリアクソン(Rocephin(登録商標))を包含する。
【0021】
好適な制吐剤は、ブクリジン、クロルプロマジン、シクリジン、ジメンヒドリナート、ジフェンヒドラミン、ジフェニドール、ドムペリドン、ドロナビノール、ハロペリドール、ヒドロキシジン、メクリジン、メトクロプラミン、ナビロン、オンダンセトロン、ペルフェナジン、プロクロルペラジン、プロメタジン、スコポラミン、チエチルペラジン、トリフルプロマジン及びトリメトベンザミンを包含する。例示的な抗真菌剤は、アムホテリシンB、クリオキノール、クロトリマゾール、フルコナゾール、フルシトシン、グリセオフルビン、ケトコナゾール、ミコナゾール及びヨウ化カリウムを包含する。例示的な抗炎症剤は、酢酸アルミニウム、アスピリン、ベタメタゾン、ブフェキサマク、セレコキシブ、デキサメタゾン、ジクロフェナク、エトドラク、フルルビプロフェン、ヒドロコルチゾン、インドメタシン、サリチル酸マグネシウム、ナプロキセン、プレドニゾロン、ロフェコキシブ、サルサラート、スリンダク及びトリアムシノロンを包含する。本発明に適する例示的な抗眩暈剤は、ベラドンナ、ジメンヒドリナート、ジフェンヒドラミン、ジフェニドール、メクリジン、プロメタジン及びスコポラミンを包含する。本発明に適する例示的な抗ウイルス剤は、アシクロビル、アマンタジン、デラビルジン、ジダノシン、エファビレンズ、フォスカルネト、ガンシクロビル、インジナビル、ネルフィナビル、リバビリン、ニトナビル、ザルシタビン及びジドブジンを包含する。例示的な生物学的反応修飾物質は、アルデスロイキン、インターフェロンα−2a、インターフェロンα−2b、インターフェロンα−n1、インターフェロンα−n3、インターフェロンγ及びレバミソールを包含する。例示的な細胞毒性剤は、ポドフィロクス及びポドフィラムを包含する。例示的な免疫剤は、インフルエンザウイルスワクチン、多価肺炎球菌ワクチン及び免疫グロブリンを包含する。例示的な免疫調節剤は、インターフェロンγである。本発明に適する他の薬理的作用物質は、ベタヒスチン(例えば、メニエル病で生じる吐き気、眩暈及び耳鳴りの治療のため)、プロクロルペラジン及びヒヨスチンを包含する。
【0022】
本発明の組成物の他の成分
若干の実施形態において、本発明の組成物は、粘度生成剤及び薬理的作用物質に加えて、1種以上の化合物を含む。例えば、組成物は1種以上の次の化合物:溶剤又は希釈剤、例えば食塩水、生物接着剤、透過促進剤、吸湿剤、耳垢軟化剤、保存剤(例えば、抗酸化剤)又は他の添加物を含むことができる。このような化合物は、組成物中に0.01%〜99%(例えば、0.01〜1、0.01〜10、0.01〜40、0.01〜60、0.01〜80、0.5〜10、0.5〜40、0.5〜60、0.5〜80、1〜10、1〜40、1〜60、1〜80、5〜10、5〜40、5〜60、5〜80、10〜20、10〜40、10〜60、10〜80、20〜30、30〜40、40〜50、50〜60、60〜70又は70〜80%)の量で存在することができる。例えば、組成物は、1種以上の粘度生成剤(例えば、Pluronic F−127及びカルボポール(carbopol))、1種以上の薬理的作用物質、及び1種以上の透過促進剤(例えば、ビタミンE)を含むことができる。別の実施形態において、組成物は、1種以上の粘度生成剤、1種以上の薬理的作用物質、及び1種以上の耳垢軟化剤を含むことができる。また、組成物は、1種以上の粘度生成剤、1種以上の薬理的作用物質、1種以上の吸湿剤、及び1種以上の保存剤を含むこともできる。一定の作用物質は製剤内での異なる役割を果たしうることが注目される。例えば、カルボポールは、その濃度に応じて粘度生成剤として又は生物接着剤として機能することができる。ビタミンEは透過促進剤、保存剤及び抗酸化剤として機能することができる。
【0023】
生物接着剤は、鼓膜への組成物の接着を促進する。好適な生物接着剤は、ヒドロコロイド、例えば次のもの:アカシア;寒天;アルギネート(例えば、アルギン酸及びアルギン酸ナトリウム);カルボポール;カルボキシメチルセルロースナトリウム;カルボキシメチルセルロースカルシウム;デキストラン;ゼラチン;グアゴム;ヘパリン;ヒアルロン酸;ヒドロキシエチルセルロース;カラヤゴム;メチルセルロース;ペクチン;ポリアクリル酸;ポリエチレングリコール;ポリ−N−ビニル−2−ピロリドン;及びトラガントを包含する。
【0024】
透過促進剤は、薬理的作用物質への鼓膜の透過性を増大させる。例示的な透過促進剤は、次のもの:アルコール(例えば、エタノール及びイソプロパノール);ポリオール(例えば、n−アルカノール、リモネン、テルペン、ジオキソラン、プロピレングリコール、エチレングリコール及びグリセロール);スルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、メチルドデシルスルホキシド及びジメチルアセトアミド);エステル(例えば、ミリスチン酸/パルミチン酸イソプロピル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル及びカプセルリン酸/カプリル酸トリグリセリド);ケトン;アミド(例えば、アセトアミド);オレエート(例えば、トリオレイン);界面活性剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム);アルカン酸(例えば、カプリル酸);ラクタム(例えば、アゾン);アルカノール(例えば、オレイルアルコール);ジアルキルアミノアセテート;多価不飽和脂肪酸(例えば、リノール酸、アルファ−リノレン酸及びアラキドン酸);オレイン酸;タラ肝油;メントール誘導体(例えば、1−メントール);スクアレン;直鎖状不飽和脂肪アルコールから誘導されたグリセロールモノエーテル;フラボン(例えば、カモミール、アピゲニン、ルテオリン及びアピゲニン7−O−β−グルコシド);ビタミンE(α−トコフェロール)及びそのエステル及び類似体;並びにSenkyu(Ligustici Chuanxiong Rhizome)エーテル抽出物を包含する。
【0025】
吸湿剤、例えばフルクトース、フタル酸及びソルビトールは、液体が中耳から鼓膜を通ってゲルマトリックス中に移行するのを促進する。吸湿剤は、中耳での液体の蓄積及び昇圧に関連する痛みの軽減を補助することができ、そして薬理的作用物質を中耳内で小さい液体体積に濃縮することができる。
【0026】
耳垢軟化剤(例えば、ドキュセート、オリーブ油、重炭酸ナトリウム、尿素又は過酸化水素)は、鼓膜と組成物との接触を促進する。抗酸化剤、例えばアスコルビン酸及び安息香酸又は他の保存剤は、貯蔵中の組成物の保存寿命を延長するために用いることができる。
【0027】
鼓膜への組成物の適用方法
本発明の組成物を、例えば、中耳及び内耳障害(例えば、OM)を治療するために、外耳道から鼓膜の上皮表面に適用することができる。また、本発明の組成物は予防的に(例えば、中耳又は内耳障害の進行を防止するために)適用することもできる。組成物は、鼓膜の下方部分である緊張部、又は鼓膜の上方部分である弛緩部を含めて、鼓膜の任意の部分を標的とすることができる。ヒト成人では、鼓膜は直径が約9〜10mmであり、30〜230μmの範囲(平均で約100μm)の厚さを有する。弛緩部は、ヒト並びに動物、例えばネコ、モルモット及びチンチラでは鼓膜面積の3%未満を占める。他の動物(例えば、アレチネズミ、ウサギ、ラット及びマウス)では、弛緩部は、鼓膜面積の10%〜25%を占める。薄い上皮層(約15〜30μm厚さ)がヒト鼓膜を覆っている一方で、厚い上皮層(約75〜150μm厚さ)がヒト身体の他の面積を覆っている。細胞の5〜10層が弛緩部を覆っている一方で、細胞の3〜5層が緊張部を覆っている。従って、緊張部は多くの場合に鼓膜の他の部分よりも薄く、そして薬理的作用物質に対してより透過性でありうる。緊張部の中央部分は音に反応する活性振動領域を与える。
【0028】
本発明の組成物を鼓膜に適用するために、当技術で公知の任意の方法を用いることができる。例えば、組成物を、液体分配装置を用いて鼓膜に適用することができる。分配装置は、典型的には、導通管と連結した貯留容器を有し、該導通管は流動性組成物を該貯留容器から直接又は間接的に受け入れ、そして該組成物を分配出口に導く。当業者は、柔軟な配管に接続したシリンジから日常的なこととして簡単な分配装置を作成することができる。また、分配装置は、鼓膜穿刺装置、例えばCDT(登録商標)Speculum (Walls Precision Instruments LLC, Casper, WY, USA) の針を液体導通管と交換することにより作成することができる。分配装置は、組成物を鼓膜に適用するために正確なプラットフォームを生じさせるために、空気圧式又は診断用の耳鏡ヘッド(例えば、Welch Allyn(登録商標)、Skaneateles Falls, NY, USA から)に取り付けることができる。
【0029】
組成物及び中耳又は内耳障害に応じて、組成物を耳から除去することが望ましい。これは、通常は消毒綿又はピンセットを用いて行うことができる。製剤の軟化、溶解及び/又は流出のために、シリンジ又はバルブを用いて水、食塩水又は他の生体適合性水溶液を注射することができる。他の実施形態において、組成物はしばらくすると鼓膜からはがれ、そして耳から脱落するであろう(例えば、運動又は入浴中)。生物分解性製剤は、耳から除去する必要がないであろう。
【0030】
製造品(articles of manufacture)
本明細書に記載した組成物は、包装材料と組み合わせ、そして製造品又はキットとして販売することができる。製造品を製造するための成分及び方法は周知である。製造品は、本明細書に記載した1種以上の組成物を組み合わせることができる。加えて、製造品は1種以上の次のもの:滅菌水若しくは食塩水、製薬用担体、緩衝液又は液体分配装置をさらに含むことができる。内耳又は中耳障害の治療のために組成物を送出できる方法を記載したラベル又は指示書を、このようなキットに含めることができる。組成物は、1回又は複数回の投与に十分である量で前包装した形態で提供することができる。
【実施例】
【0031】
本発明を以下の実施例によりさらに説明するが、これらの実施例は請求項に記載した本発明の範囲を限定するものではない。
【0032】
実施例1 − アモキシシリンの経鼓膜送出
成体チンチラの鼓膜に外耳道から投与するために、20%のPluronic(登録商標)PF−127(Sigma製品番号P−2443、ロット番号99H1194)及び0.3mg〜5.2mgの範囲のアモキシシリン(Sigma製品番号A−8523、ロット番号29F0730)を負荷した標的薬剤を含む流動性製剤を製造した。各製剤の組成については表1(最初の5列)を参照されたい。平滑針に固定した1mlツベルクリン用シリンジを用いて各製剤を分配した。動物の頭を片方に傾け、また耳鏡を用いてシリンジを鼓膜に近い耳道内に挿入し、製剤(300〜350μl)を徐々に分配した。チンチラを約1分間、又は製剤が不透明に変わり、製剤がゲル化したことを示すまで横臥位に保った。
【0033】
ブランクのリン酸緩衝液(PBS)をチンチラの中耳に注入した。中耳液体中のアモキシシリン濃度を、チンチラが覚醒している間に下鼓屋胞の微量透析サンプリング及び20時間のHPLC−UV分析により測定した。中耳液体中の平均未結合(薬理的活性)アモキシシリンレベル(各時点でn=3〜5、平均及び標準誤差)は、5時間後に約75μg/mlに上昇した。図1を参照されたい。
【表1】

【0034】
実施例2 − クラリスロマイシンの経鼓膜送出
20%のPluronic(登録商標)PF−127(Sigma製品番号P−2443、ロット番号99H1194)及び0.25%(w/v)のクラリスロマイシン(USP標準13437、ロット番号F−2)(表1の最後の行を参照のこと)を含む流動性製剤を、成体チンチラの鼓膜に投与した。これらの製剤は約28℃の溶液−ゲル遷移温度を有していた。丸めた経口ガバージュ管に取り付けた1mlツベルクリン用シリンジを用いて製剤を分配した。動物の頭を片方に傾け、また耳鏡を用いてシリンジを鼓膜に近い耳道内に挿入し、製剤(0.2〜0.5mL;クラリスロマイシン用量=耳当たり0.5〜1.25mg)を徐々に分配した。チンチラを約10分間横臥位に保って製剤をゲル化させた。これらの溶液は、一般的に、製剤を鼓膜に対して保持するのに十分であるゲル状態に遷移し、遷移は耳鏡により測定して1〜2分以内であった。
【0035】
ブランクのリン酸緩衝液(PBS)をチンチラの中耳に注入した。中耳液体中のクラリスロマイシン濃度を鼓屋胞からの直接サンプリング及びLC−MS−MS分析により測定した。12〜23の投与した耳についてクラリスロマイシン濃度を投与後の時間の関数としてプロットした図2を参照されたい。
【0036】
実施例3 − 粘度及び降伏応力
市販のポロキサマー407 20%ゲル(Gallipot(登録商標)Polox Gel 20%、保存剤添加及びpH5.0に緩衝)の粘度を13.5℃で測定した。この製品の遷移温度は約14.5℃なので、粘度を25℃で測定することはできなかった。13.5℃での粘度は約350〜400cpsであった。
【0037】
同じ製品の降伏応力を、それがゲル化した後に23〜27.5℃の範囲の温度で測定した。測定した降伏応力は80〜400Paの範囲にあり、組成物を鼓膜に対して保持するために必要である39.2Paの最小降伏応力よりも著しく高かった。
【0038】
実施例4 − 流動性製剤
20%のPluronic(登録商標)PF−127(Sigma製品番号P−2443、ロット番号99H1194)及び1種以上の薬理的作用物質(例えば、0.5〜1.5%(w/v))を含む流動性製剤を、表2に記載した成分を含有させて製造することができる。
【表2】

【0039】
他の実施形態
本発明をその詳細な説明と併せて記載してきたが、前述の記載は、添付の請求項の範囲により定義される本発明の範囲の説明を意図するものであって、限定するものではないと理解すべきである。他の態様、利点及び変更は、請求項の範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】外耳腔から薬剤を投与した後の時間の関数としてのチンチラ中耳液体内の遊離(未結合)アモキシシリン濃度のグラフである;平均データ及び標準誤差バー(各時点でn=3〜5)。
【図2】外耳腔から薬剤を投与した後の時間の関数としてのチンチラ中耳液体内のクラリスロマイシン濃度のグラフである;平均データ及び標準誤差バー(各時点でn=12〜23)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類の鼓膜の上皮表面に製剤を適用することを含む、哺乳類に薬理的作用物質を投与する方法であって、該製剤が粘度生成剤及び少なくとも1種の薬理的作用物質を含み、該製剤が100,000cps未満の粘度を有し、そして該製剤が、該鼓膜に適用後、該製剤を該鼓膜に対して保持するのに十分である降伏応力を有する上記方法。
【請求項2】
上記粘度生成剤がジェランである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記粘度生成剤がアクリル酸ナトリウム及びn−N−アルキルアクリルアミドを伴うN−イソプロピルアクリルアミドである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
上記粘度生成剤がポリエチレングリコールを伴うポリアクリル酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
上記粘度生成剤がポリエチレングリコールを伴うポリメタクリル酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
上記粘度生成剤がヒドロキシプロピルメチルセルロースを伴うカルボポールである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
上記粘度生成剤が酢酸フタル酸水素セルロースラテックスである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
上記粘度生成剤がアルギン酸ナトリウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
上記粘度生成剤が逆熱硬化性ゲルである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
上記粘度生成剤がポロキサマーである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
上記粘度生成剤がポロキサミンである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
上記薬理的作用物質が抗生物質、抗真菌剤又は抗ウイルス剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
上記薬理的作用物質が上記鼓膜を越えて中耳腔内に移行する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
上記抗生物質がペニシリンである、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
上記ペニシリンがアモキシシリン及びアモキシシリン−クラブラン酸塩からなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
上記抗生物質がサルファ剤に基づく組み合わせである、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
上記サルファ剤に基づく組み合わせがエリスロマイシン−スルフィソキサゾール及びトリメトプリム−スルファメトキサゾールからなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
上記抗生物質がマクロライド系抗生物質/アジドである、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
上記マクロライド系抗生物質/アジドがアジスロマイシン及びクラリスロマイシンからなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
上記抗生物質がセファロスポリンである、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
上記セファロスポリンがセファクロル、セフプロジル、セフロキシムアクセチル、ロラカルベフ、セフジニル、セフィキシム、セフポドキシムプロクセチル、セフチブテン及びセフトリアクソンからなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
上記少なくとも1種の薬理的作用剤が抗生物質及び抗炎症剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
上記少なくとも1種の薬理的作用剤が麻酔剤をさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
上記製剤が接着促進剤、透過促進剤、生物接着剤、吸湿剤、耳垢軟化剤又は保存剤をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
上記哺乳類がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
上記哺乳類がげっ歯動物である、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
製剤及び該製剤を鼓膜に適用することを指示する指示書を含むキットであって、該製剤が粘度生成剤及び少なくとも1種の薬理的作用物質を含み、該製剤が100,000cps未満の粘度を有し、そして該製剤が、該鼓膜に適用後に、該製剤を該鼓膜に対して保持するのに十分である降伏応力を有する上記キット。
【請求項28】
その鼓膜の上皮表面に適用された製剤を含む哺乳類であって、該製剤が粘度生成剤及び少なくとも1種の薬理的作用物質を含み、該製剤が100,000cps未満の粘度を有し、そして該製剤が、該鼓膜に適用後に、該製剤を該鼓膜に対して保持するのに十分である降伏応力を有する上記哺乳類。
【請求項29】
上記哺乳類がヒトである、請求項28に記載の哺乳類。
【請求項30】
上記哺乳類がげっ歯動物である、請求項28に記載の哺乳類。
【請求項31】
上記げっ歯動物がチンチラである、請求項31に記載のげっ歯動物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−509791(P2006−509791A)
【公表日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−557338(P2004−557338)
【出願日】平成15年11月25日(2003.11.25)
【国際出願番号】PCT/US2003/037819
【国際公開番号】WO2004/050021
【国際公開日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(301078489)リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミネソタ (24)
【Fターム(参考)】