説明

耳式体温計

【課題】耳式体温計において、センサをセンサミラー内に容易に設置できる構造を提供して、耳式体温計の量産化を図ること。
【解決手段】プローブは本体部、本体部に結合された測温部を含む。測温部は、本体部に結合するフランジ部分、フランジ部分から延びる先端部分を含む。先端部分の内部にセンサミラーが嵌め込まれる。センサミラーは、内部に凹形状反射面を有する円筒体ホルダ、円筒体ホルダの後方から延びる連結軸、所定パターンの回路導体を有しかつ円筒体ホルダの前面空間に張り渡された可撓性印刷回路基板、基板の長手方向に所定の間隔を空けて基板上の回路導体に半田付けされた測温用の第1センサおよび補正用の第2センサ、円筒体ホルダの前面を覆う保護カバーを含む。基板が、測温部内で本体部を貫通したケーブルに電気的に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、測温対象者の体温を測定する温度計に関し、特に測温部を耳孔に挿入して鼓膜の温度を測る耳式体温計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の耳式体温計の代表例について、図9および図10を参照して説明する。図9は従来の耳式体温計の動作原理を示す概略構成図であり、図10は従来の耳式体温計の測温部の縦断面図である。図9に示すように、従来の代表的耳式体温計のプローブ10は、サーモパイル11を用いている。一般に、サーモパイルは、冷接点と温接点との間の温度差により電位差を生じる(ゼーベック効果)。サーモパイルを温度測定用プローブとして用いるためには、熱電対と同様に室温(環境温度)補償が必要となる。そのために、従来の耳式体温計では、サーミスタ12が用いられている。
【0003】
測温対象者の体温がサーモパイル11の冷接点温度と等しいとき、プローブ10の出力はゼロ(ゼロ点)となる。一方、測温対象者の体温がサーモパイル11の冷接点温度よりも高いとき、プローブ10の出力は非線形的に大きくなる。
【0004】
プローブ10を用いて体温を測定する場合、プローブ10の出力は微弱である。そのために、プローブ10の出力を信号増幅器13によって信号処理が可能なレベルまで増幅する。リニアライザ14aによって非線形出力を線形化する。一方、サーミスタ12の出力も非線形であるため、リニアライザ14bによって線形化する。
【0005】
環境温度が安定した状態では、サーミスタ12の温度とサーモパイル11の冷接点温度とは等しい。プローブ10からの出力を線形化した信号は、サーミスタ12の温度と測温対象者の体温との差となる。したがって、プローブ10の出力を線形化した信号を放射率補正器15によって補正し、その補正信号とサーミスタ12の出力を線形化した信号とを加算器16で室温補償または冷接点温度補償した後、温度換算器17で環境温度補正を行えば、測温対象者の体温が求められる。これを表示器18に表示する。
【0006】
サーモパイルは、個体差の感度のバラツキが大きいため、一定の温度差であっても出力電圧にバラツキを生じる。そのために、サーモパイルを用いたプローブに対する感度調整(校正作業)が個々に必要となる。サーモパイルの赤外線吸収膜(赤外線吸収膜と温接点とが一体となった部分、図10の116参照)は、測温対象者からの赤外線を吸収して温度が上昇するが、サーモパイルのパッケージからも赤外線吸収膜に対して赤外線は放射されている。通常の使用法では、パッケージはサーモパイルのヒートシンク(吸熱部)と同一の温度とみなせるが、外部からの要因により急激な温度変化が与えられると、パッケージの頭部とサーモパイルのヒートシンクとの間に温度差が生じ、プローブの出力は過渡的に不安定になる。
【0007】
そこで、図10に示すように、プローブ10に温度変化が均一で緩やかに加わるようにするために、サーモパイル110を熱伝導度がよい金属(例えば、アルミニウム)ホルダ111内に設置し、さらに断熱材として空気層112と樹脂113とで囲むようにカバー114を設けている。サーモパイル110の前面に金属管115を設け、測温対象者からの熱放射の影響を小さくする。金属管115は、放射率を小さくするように金メッキが施され、導波管の働きを持たされている。冷接点温度補償用のセンサとして半導体、サーミスタ等が用いられる。しかし、サーミスタは、生産コストが安く、精度がよいために広く用いられている。
【0008】
サーモパイル冷接点部とサーミスタとの熱結合が悪いと、温度差を生じ、正確な計測ができなくなる。サーミスタ(図示せず)をサーモパイル110と同一パッケージ内に取り付け、サーモパイル冷接点部ヒートシンクとサーミスタとの熱結合度を高める。同一規格のサーミスタでもB常数(抵抗温度特性で任意の2点の温度から求めた抵抗値変化の大きさを表す定数)にバラツキがあるため、広い環境温度範囲で精度を保つのは困難である。例えば、電子体温計のサーミスタで人体の測定温度範囲を34〜42℃とすると、サーミスタ精度は8℃の範囲内で精度を保つだけでよい。しかし、サーモパイルの環境温度範囲を5〜40℃とした場合、サーミスタ精度は35℃(40−5=35)の範囲内で精度を保たなければならない。
【0009】
図10に示すプローブ10の構造では、環境温度上昇中にサーモパイル110とプローブ10の先端部間に温度差を生じ、測温部はサーモパイル110よりも温度が高くなるため、正方向の誤差を生じる。環境温度下降中では、サーモパイル110とセンサ先端部間に温度差を生じ、測温部はサーモパイル110よりも温度が低くなるため、負方向の誤差を生じる。この誤差を少なくするため、サーモパイル110をカバー114で囲み温度変化の影響を少なくしているが、金属ホルダ111の大型化は測温対象者との関係から限界がある。環境温度変化に対する誤差対策として、サーモパイル・パッケージ内のサーミスタの単位時間当たりの変化率を計算してプローブ出力を補正し、誤差を少なくしている。
【0010】
そこで、本出願人は、先の特許出願(特許文献1参照)において、短時間の環境温度変化による影響を排除し、環境温度変化による誤差を生じない耳式体温計を提案した。
【0011】
前記特許文献1に係る耳式体温計は、樹脂製の第1断熱部材と、第1断熱部材の先端に接続された樹脂製の第2高断熱部材と、第1断熱部材および第2高断熱部材を覆う保護カバーと、第1断熱部材および第2高断熱部材内に埋め込まれたサーミスタリード細線と、ならびにサーミスタリード細線の先端折返し部分のほぼ中央に装着された超高速応答サーミスタとを含むプローブを備えている。
【0012】
前記特許文献1に係る発明によれば、サーミスタが精度を保つ温度範囲は、測温対象者の体温範囲のみでよく、従来のサーモパイルを用いた耳式体温計のように、測定環境温度範囲全域においてサーミスタの測定精度を保つ必要がない。その結果、この特許出願に係る発明のプローブは環境温度の変化(短時間の温度変化)の影響を受けない。
【0013】
しかしながら、前記特許文献1に係る耳式体温計は、小型化が難しいこと、消費電力が大きいこと、回路が複雑であること、一部に高価な部品を必要とするために全体のコストが高くなることなどの課題がある。
【0014】
前記特許文献1に係る耳式体温計は、短時間期間中の1回体温測定には適しているが、長時間期間中の連続体温測定には適していない。特殊な使用条件、例えば、手術中の被施術者の体温測定等においては、手術前の準備段階において十分な時間が取れるので、ある程度の立ち上がり時間(約10分程度)を無視できること、大きな相対温度および早い温度変化を無視できること(最大で10分間に1℃の温度変化を感知できればよい)、連続して測定する必要があること、環境温度が比較的安定していることなどの使用条件においては、前記特許文献1に係る耳式体温計は高価で適切ではない。
【0015】
そこで、本出願人は、測温対象者の体温を長時間期間中連続測定でき、しかも安価で使い捨て可能な耳式体温計を得るために、次に続く特許出願(特許文献2参照)において、測定装置に連結されるプローブが本体部と、その本体部に結合された測温部とを含み、本体部は、ほぼL字形円筒体に形成され、一端がケーブルを介して前記測定装置に接続され、他端が前記測温部に結合され、測温部は、本体部に結合するフランジ部分、フランジ部分から延びる先端部分を含み、先端部分の内部にセンサミラーが嵌め込まれ、センサミラーは、内部に凹形状反射面を有する円筒体ホルダ、その円筒体ホルダの後方から延びる連結軸、円筒体ホルダの前面空間にリード線で支持された測温用の第1センサおよび補正用の第2センサ、円筒体ホルダの前面を覆う保護カバーを含み、第1および第2センサを支持する各リード線が測温部および本体部を貫通してケーブルに電気的に接続されている耳式体温計を提案した。
【0016】
前記特許文献2に係る耳式体温計においては、プローブに使用されるサーミスタが精度を保つ温度範囲は、測温対象者の体温変化範囲のみでよく、従来のサーモパイルを用いた耳式体温計のように、測定環境温度範囲全域においてサーミスタの測定精度を保つ必要がない。比較的安定した環境温度の下では、長時間期間中の連続測定が可能となる。測温回路が単純化され、温度校正が簡略化され、プローブが小型化され、量産時の組立が容易になり、小型で安価な耳式体温計が得られる。従って、前記特許文献2に係る耳式体温計は使い捨てが可能になり、測温対象者の耳への装着が安定確実になるので、特に手術中の被施術者の体温測定に最適である。
【0017】
しかしながら、前記特許文献2に係る耳式体温計においては、第1および第2センサがリード線によってセンサミラー内に支持される構造になっているので、センサとリード線とを半田付けする作業、センサをセンサミラー内に設置する作業に高度の熟練と時間を要し、量産に適していないことがわかった。
【特許文献1】特開2006−250883号公報(特願2005−071350号)
【特許文献2】特開2007−111363号公報(特願2005−307672号)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、前記特許文献2に係る耳式体温計において、センサをセンサミラー内に容易に設置できる構造を提供して、耳式体温計の量産化を図ることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明に基づく耳式体温計は、測定装置に連結されるプローブを備えた耳式体温計であって、プローブが本体部とおよびその本体部に結合された測温部とを含む。本体部は、ほぼL字形円筒体に形成され、一端がケーブルを介して測定装置に接続され、他端が測温部に結合される。測温部は、本体部に結合するフランジ部分とおよびそのフランジ部分から延びる先端部分とを含み、先端部分の内部にセンサミラーが嵌め込まれる。センサミラーは、内部に凹形状反射面を有する円筒体ホルダと、その円筒体ホルダの後方から延びる連結軸と、所定パターンの回路導体を有しかつ円筒体ホルダの前面空間に張り渡された可撓性印刷回路基板と、その基板の長手方向に所定の間隔を空けて基板上の回路導体に半田付けされた測温用の第1センサおよび補正用の第2センサと、円筒体ホルダの前面を覆う保護カバーとを含む。可撓性印刷回路基板が測温部内で本体部を貫通したケーブルの一端に電気的に接続される。
【0020】
上記発明の耳式体温計においては、センサミラーの外周面中間部分のほぼ対向部位に第1突起および第2突起を設け、可撓性印刷回路基板の一端側で第1突起および第2突起にそれぞれ対応する部位に第1位置決め穴および第2位置決め穴を設けることができる。
【0021】
また、上記発明の耳式体温計においては、第1および第2突起を第1および第2位置決め穴にそれぞれ係合させ、可撓性印刷回路基板の他端側をセンサミラーの外周面上を長手方向に沿って誘導し、基板の他端側を測温部内で本体部を貫通したケーブルの一端に電気的に接続することができる。
【0022】
また、上記発明の耳式体温計においては、円筒体ホルダの前面空間に張り渡された可撓性印刷回路基板の中間部分に赤外線透過用穴を設け、その赤外線透過用穴の両側でかつ基板の長手方向に第1センサおよび第2センサを配置することができる。
【0023】
さらに、上記発明の耳式体温計においては、円筒体ホルダの前面空間に張り渡された可撓性印刷回路基板の中間部分において、その基板の一端側に熱溜まり導体を設けることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に基づく耳式体温計によれば、プローブに使用されるセンサ(サーミスタ)が精度を保つ温度範囲は、測温対象者の体温変化範囲のみでよく、従来のサーモパイルを用いた耳式体温計のように、測定環境温度範囲全域においてサーミスタの測定精度を保つ必要がない。比較的安定した環境温度の下では、長時間期間中の連続測定が可能となる。センサを可撓性印刷回路基板の回路導体に予め半田付けできるので、組立作業が簡略化され、量産に適している。さらに、測温回路が単純化され、温度校正が簡略化され、プローブが小型化され、小型で安価な耳式体温計が得られる。従って、本発明に基づく耳式体温計は使い捨てが可能になり、測温対象者の耳への装着が安定確実になるので、特に手術中の被施術者の体温測定に最適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて詳説する。図1は本発明の1つの実施の形態の耳式体温計の概略構成説明図であり、図2は図1の耳式体温計の概略回路構成図である。図1に示すように、本実施の形態の耳式体温計1は、プローブ2、ケーブル3、雄コネクタ4からなる。ケーブル3の一端はプローブ2の本体部21(図3参照)に接続され、また、ケーブル3の他端は雄コネクタ4に接続される。測定装置5は、ケーブル6、雌コネクタ7を含む。ケーブル6の一端は雌コネクタ7に接続され、また、ケーブル6の他端は測定装置5に接続される。雌コネクタ7は表示器8に接続される。プローブ2の測温部22は、測温対象者9の耳孔9aに装着される。
【0026】
図2を参照して、測定装置5の概略構成を説明する。測定装置5の主な構成要素は、AD変換器51、差動増幅器52、制御信号処理回路53、抵抗値出力回路54、スイッチ群55(スイッチS1、S2、S3)、スイッチング・ライン群56(SL1、SL2、SL3)、抵抗群57(R1、R2、R3、R4)、ケーブル6、雌コネクタ7を含む。
【0027】
プローブ2は、ケーブル3および雄コネクタ4を介して測定装置5に連結される。プローブ2は、後述する測温用の第1センサ25および補正用の第2センサ26を備えている。センサ25、26は、後述するように、サーミスタからなる。抵抗R3、R4は図2ではプローブ2内に設けられているが、それらは測定装置5に設けられてもよい。雄コネクタ4は、図示されていないが、慣用のカードエッジ式コネクタが好ましい。このカードに、校正(較正)値等の個別情報が記録される。
【0028】
プローブ2の測温用の第1センサ25および補正用の第2センサ26の検出信号が、抵抗R3およびR4を介してAD変換器51に、そしてスイッチS2およびS3を介して差動増幅器52に入力される。AD変換器51は制御信号処理回路53および差動増幅器52に接続され、制御信号処理回路53は抵抗値出力回路54に接続される。制御信号処理回路53からはデジタル信号が出力され、抵抗値出力回路54からはアナログ信号が出力される。制御信号処理回路53はスイッチング・ライン群56を介してスイッチ群55に接続される。スイッチ群55は差動増幅器52に接続される。
【0029】
第1センサ25および第2センサ26からの微少温度差信号を容易に検出できるようにするために、AD変換器51には高精度高分解能を持たせることが好ましい。抵抗R1、R2、R3、R4は高精度抵抗である。VrefはAD変換器51の基準電圧であって、AD変換値のフルスケール値である。
【0030】
本実施の形態耳式体温計1のプローブ2は、図3〜図8に示すように、本体部21、本体部21に連結された測温部22、本体部21の外側にそって設けられたタブ23を含む。本体部21は、長辺部分211と屈曲短辺部分212からなるほぼL字形に屈曲した円筒体に形成される。長辺部分211が測温対象者9(図1)の耳孔9aの下方から顔面こめかみ付近にそって延び、屈曲短辺部分212が測温部22の後述するフランジ部分221に結合する。この概略L字形形状は、測温部22の先端部分222を測温対象者9の耳孔9a内で鼓膜側に向けると共に、装着時に本体部21が耳介から脱落または耳介上で回転しないようにする。本体部21の下端からはケーブル3が延びていて、後述する第1センサ25および第2センサ26を装着した可撓性印刷回路基板246を雄コネクタ4に電気的に接続する。タブ23は、プローブ2を測温対象者9の耳孔9aに着脱するさいに作業を容易にするために設けられている。
【0031】
測温部22は、本体部21の屈曲短辺部分212に結合するフランジ部分221、フランジ部分221から延びる先端部分222を含む。フランジ部分221は耳孔9aの入口を閉じるように形成され、また、先端部分222は外耳道の複雑な形状に合わせるように形成される。
【0032】
プローブ2を構成する本体部21、測温部22、タブ23、センサミラー24は断熱性材料から作られる。測温部22は、測温対象者9のアレルギ体質を考慮して、エラストマまたはシリコンゴムで被覆することが好ましい。
【0033】
前述したように、本実施の形態耳式体温計1のプローブ2は、本体部21、測温部22、タブ23を含む。測温部22は、フランジ部分221、先端部分222を含む。図3に示すように、測温部22の先端部分222の内部にセンサミラー24が嵌め込まれる。センサミラー24は、例えば、平行光集光型センサミラー(図3参照)または点光源集光型センサミラー(図4参照)のいずれでもよい。平行光集光型センサミラーは、円筒体ホルダの前面の平行光をセンサに集光する。点光源集光型センサミラーは、鼓膜想定位置の点光源からの光を集光する。センサミラー24は、各センサ25、26の組付け作業を容易にするために、測温部22とは別部品としている。
【0034】
センサミラー(点光源集光型センサミラー)24は絶縁性材料から作られ、図4に示すように、内部に凹形状反射面241を有する比較的長尺の円筒体ホルダ242、ホルダ242の後方から延びる連結軸245、ホルダ242の前面に張り渡された後述する可撓性印刷回路基板246、基板246に装着された後述する測温用の第1センサ25および補正用の第2センサ26、ホルダ前面を覆う保護カバー27を含む。
【0035】
センサミラー24の反射面241は、素材の鏡面仕上げのままにするか、さらにその上に金属(例えば、アルミニウム)箔を貼り付けるか、ニッケルメッキを施すことが好ましい。保護カバー27は、放射エネルギ損失を抑え、センサ25、26を保護する材料であればよい。例えば、厚み0.015mmのポリエチレン・フィルムが好ましい。保護カバー27は、センサミラー24の円筒体ホルダ242および連結軸245の外周面と測温部22の先端部分222の穴内周面との間に押し込まれて固定される。
【0036】
可撓性印刷回路基板246は、図5に示すように、可撓性絶縁材料(例えば、ポリエチレン等)からなる細長フィルムであって、その表面に回路導体246dおよび熱溜まり246eが印刷され、さらに赤外線透過穴246c、第1位置決め穴246a、第2位置決め穴246bが貫通されている。これらの作用については後述する。
【0037】
図4、図6〜図8に示すように、センサミラー24の円筒体ホルダ242の外周面中間部分のほぼ対向部位に第1突起242aおよび第2突起242bが設けられる。図5に示すように、可撓性印刷回路基板246の一端側で第1突起242aおよび第2突起242bにそれぞれ対応する部位に第1位置決め穴246aおよび第2位置決め穴246bが設けられる。第1突起242aおよび第2突起242bが第1位置決め穴246aおよび第2位置決め穴246bにそれぞれ係合される。このようにして、可撓性印刷回路基板246の一端側は、センサミラー24の円筒体ホルダ242の前面空間に簡単に張り渡される。
【0038】
可撓性印刷回路基板246の他端側がセンサミラー24の円筒体ホルダ242の外周面上を長手方向に沿って誘導され、基板246の他端側を本体部21の先端に埋め込まれた連結基板213に接続される。図3に示すように、各センサ25、26を装着した可撓性印刷回路基板246の他端は、連結基板213を介してケーブル3の先端に接続される。このようにして、可撓性印刷回路基板246は、測温部22内で本体部21の内部を貫通するケーブル3に電気的に接続される。
【0039】
図4、図6〜図8に示すように、可撓性印刷回路基板246の一端側は円筒体ホルダ242の前面空間に張り渡される。図5に示すように、円筒体ホルダ242の前面空間に張り渡される予定部位に相当する可撓性印刷回路基板246の中間部分に赤外線透過用穴246cが設けられる。その赤外線透過用穴246cの両側でかつ基板246の長手方向に第1センサ25および第2センサ26が配置される。可撓性印刷回路基板246が円筒体ホルダ242の前面空間に張り渡される以前に、センサ25、26は予め基板246の回路導体246dに半田付けされる。このようにすれば、センサ25、26をセンサミラー24に装着することが容易になり、高度の技術を必要とせず、測温部22を量産化することができる。測温対象者9からの赤外線は基板246の赤外線透過穴246cを通過し、センサミラー24の反射面241で反射され、センサ25、26に至る。
【0040】
また、図5に示すように、円筒体ホルダ242の前面空間に張り渡される予定部位に相当する可撓性印刷回路基板246の中間部分において、その基板246の一端側に熱溜まり導体246eを設けることが好ましい。熱溜まり導体246eは、基板246に到達する赤外線を吸収し、センサ25、26への二次的熱影響を防止する。
【0041】
示度試験の結果、プローブ2の示度は外気温度によって影響を受けることがわかった。そこで、測温用のセンサ(第1センサ25)の外に別のセンサ(第2センサ26)を設けて、外気温度の影響を補正している。
【0042】
第1センサ25および第2センサ26には、小熱容量、高熱感受性、高赤外線反応温度上昇率等の特性を備えたサーミスタ素子が適している。
【0043】
実験の結果、センサミラー24の円筒体ホルダ242の前面空間に張り渡された可撓性印刷回路基板246上には、集光点が一番高くなる温度分布が現れることを確認した。そこで、測温用の第1センサ25は、図4に示すように、センサミラー24の反射面241のほぼ集光点に配置される。外気温度補正用の第2センサ26は、集光点から外れた位置に配置される。センサ25、26は同一基板上にあるので、ほぼ同時に昇温し、補正がより簡単になっている。第1センサ25には、放射率が高く(赤外線を良く吸収し発熱する)、赤外線により発生した熱を発散し易い樹脂(例えば、黒色熱硬化性のエポキシ樹脂)が塗布される。第2センサ26には、赤外線を吸収し難い樹脂(例えば、2液硬化型エポキシ樹脂)が塗布される。
【0044】
第1センサ25および第2センサ26を同時に温度校正(較正)する。この校正については、前記特許文献2において詳述されたものと同様である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の耳式体温計は、人間のみならず、動物にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に基づく耳式体温計の概略構成説明図である。
【図2】図1の耳式体温計の概略回路構成図である。
【図3】本発明に基づく耳式体温計を構成するプローブの一部破断側面図である。
【図4】本発明のプローブを構成するセンサミラーの縦断面図である。
【図5】本発明のセンサミラーを構成する可撓性印刷回路基板の平面図である。
【図6】図4のVI−VI線から見た本発明のセンサミラーの正面図である。
【図7】図6の矢印VII方向から見た本発明のセンサミラーの斜視図である。
【図8】図6の矢印VIII方向から見た本発明のセンサミラーの斜視図である。
【図9】従来の耳式体温計の動作原理を示す概略構成図である。
【図10】従来の耳式体温計の測温部の縦断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 耳式体温計
2 プローブ
3、6 ケーブル
4 雄コネクタ
5 測定装置
9 測温対象者
9a 耳孔
21 本体部
22 測温部
23 タブ
24 センサミラー
25 第1センサ
26 第2センサ
27 保護カバー
211 長辺部分
212 屈曲短辺部分
213 連結基板
221 フランジ部分
222 先端部分
241 凹形状反射面
242 円筒体ホルダ
242a 第1突起
242b 第2突起
245 連結軸
246 可撓性印刷回路基板
246a 第1位置決め穴
246a 第2位置決め穴
246c 赤外線透過穴
246d 回路導体
246e 熱溜まり

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定装置に連結されるプローブを備えた耳式体温計において、
前記プローブは、本体部と、該本体部に結合された測温部とを含み、
前記本体部は、ほぼL字形円筒体に形成され、一端がケーブルを介して前記測定装置に接続され、他端が前記測温部に結合され、
前記測温部は、前記本体部に結合するフランジ部分、該フランジ部分から延びる先端部分を含み、前記先端部分の内部にセンサミラーが嵌め込まれ、
前記センサミラーは、内部に凹形状反射面を有する円筒体ホルダ、該円筒体ホルダの後方から延びる連結軸、所定パターンの回路導体を有しかつ前記円筒体ホルダの前面空間に張り渡された可撓性印刷回路基板、該基板の長手方向に所定の間隔を空けて該基板上の回路導体に半田付けされた測温用の第1センサおよび補正用の第2センサ、前記円筒体ホルダの前面を覆う保護カバーを含み、
前記可撓性印刷回路基板が前記測温部内で前記本体部を貫通した前記ケーブルの一端に電気的に接続されていることを特徴とする耳式体温計。
【請求項2】
前記センサミラーの外周面中間部分のほぼ対向部位に第1突起および第2突起を設け、前記可撓性印刷回路基板の一端側で前記第1突起および第2突起にそれぞれ対応する部位に第1位置決め穴および第2位置決め穴を設け、前記第1および第2突起を前記第1および第2位置決め穴にそれぞれ係合させ、前記可撓性印刷回路基板の他端側を前記センサミラーの外周面上を長手方向に沿って誘導し、前記基板の他端側を前記測温部内で前記本体部を貫通した前記ケーブルの一端に電気的に接続したことを特徴とする請求項1に記載の耳式体温計。
【請求項3】
前記円筒体ホルダの前面空間に張り渡された可撓性印刷回路基板の中間部分に赤外線透過用穴を設け、該赤外線透過用穴の両側でかつ前記基板の長手方向に前記第1センサおよび前記第2センサを配置したことを特徴とする請求項1に記載の耳式体温計。
【請求項4】
前記円筒体ホルダの前面空間に張り渡された可撓性印刷回路基板の中間部分において、該基板の一端側に熱溜まり導体を設けたことを特徴とする請求項1に記載の耳式体温計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−307370(P2008−307370A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−70282(P2008−70282)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【基礎とした実用新案登録】実用新案登録第3134746号
【原出願日】平成19年6月12日(2007.6.12)
【出願人】(500374294)株式会社バイオエコーネット (8)
【Fターム(参考)】