説明

耳式体温計

【課題】 測定結果の再現性を向上させることが可能な耳式体温計を提供する。
【解決手段】 温度検出素子と赤外線検出素子とを備え、該温度検出素子により検出された環境温度と該赤外線検出素子により検出された相対温度とを用いて、被検者の体温を測定する耳式体温計100であって、中空の筒状体によって形成され、前記耳腔内に挿入されるプローブ101と、測定者の指に装着するための装着機能106〜108を有し、該装着機能106〜108を用いて該測定者の指に装着した場合に、前記プローブ101の支持位置が、該測定者の手指末節部の手掌面に対向する位置となるように、前記プローブを支持する装着部102、104と、前記プローブ101の先端面から外周面にかけて連続して配されたセンサが複数配置された接触検知部121と、を備え、該センサ全てにおいて接触が検知されたことを条件に、体温の算出を行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耳式体温計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、耳腔内にプローブを挿入し、鼓膜またはその周辺の温度を検出することで、被検者の体温を測定する耳式体温計が実用化されている。
【0003】
耳式体温計は、一般に、環境温度を検出する温度検出素子(例えば、サーミスタ)と、耳腔内の温度測定部位(鼓膜またはその周辺)から放射される赤外線を検出する赤外線検出素子(例えば、冷接点と温接点とからなるサーモパイル)とを備えており、それぞれの検出素子の検出温度に基づいて、被検者の体温を算出している。
【0004】
つまり、耳式体温計の場合、熱源である温度測定部位から放射される赤外線を直接測定する方式を採っているため、他の方式の体温計(例えば、腋下棒状の体温計)と比較して、体温測定にかかる時間が短く、かつ高精度であるという特徴を有している。
【0005】
一方で、耳式体温計の場合、他の方式の体温計と比較して、再現性が低いという欠点がある。その原因の1つとして、耳式体温計の場合、温度測定部位に対して赤外線検出素子の向きがずれたことによる影響を受けやすいことが挙げられる。
【0006】
一般に耳式体温計は、プローブ部の先端に形成された開口部を介して赤外線検出素子に直接到達した赤外線を測定している。このため、赤外線検出素子の向きがずれると、開口部を介して赤外線検出素子に到達する赤外線を放射している領域(測定範囲)がずれ、当該領域(測定範囲)に占める、熱源である温度測定部位(鼓膜またはその周辺)の割合が低くなり、結果的に測定誤差が大きくなる。
【0007】
このため、体温測定に際しては、プローブ部の先端を耳穴に確実に挿入するか、あるいは、耳穴が小さく挿入できない場合にあっては、耳穴を塞ぐように、プローブ部の先端を密着させるといった適切な測定状態を実現することが不可欠である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−241362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、乳幼児等のように、一定時間、静止させておくことが困難で、測定時に両手で拘束することが必要な被検者の場合には、上記適切な測定状態を実現できないことも多い。
【0010】
一方で、上述したように、耳式体温計の場合、体温測定にかかる時間が短いことから、適切な測定状態が整ったわずかな時間を利用して、測定を開始することができれば、再現性の向上に寄与するものと期待できる。
【0011】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、高い再現性を実現可能な耳式体温計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明に係る耳式体温計は以下のような構成を備える。即ち、
環境温度を検出する温度検出素子と、被検者の耳腔内の温度測定部位から放射される赤外線を検出することで該温度測定部位の相対温度を検出する赤外線検出素子とを備え、該温度検出素子により検出された環境温度と該赤外線検出素子により検出された相対温度とを用いて、被検者の体温を算出する耳式体温計であって、
中空の筒状体によって形成され、前記耳腔内に挿入されるプローブと、
測定者の指に装着するための装着機能を有し、該装着機能を用いて該測定者の指に装着した場合に、前記プローブの支持位置が、該測定者の手指末節部の手掌面に対向する位置にくるように、前記プローブを支持する装着部と、
前記プローブの先端に形成された開口部の周縁を構成する先端面から、前記プローブの側面を構成する外周面にかけて一体的に配された、接触の有無を検知するための検知部が、前記プローブの周方向に複数配置された検知手段と、を備え、
前記検知手段に含まれる前記複数の検知部全てにおいて接触が検知されたことを条件に、前記体温の算出を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高い再現性を実現可能な耳式体温計を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る耳式体温計100の外観構成を示す図である。
【図2】耳式体温計100の正面図及び側面図である。
【図3】測定者が耳式体温計100を装着した様子を示す図である。
【図4】耳式体温計100を用いて体温測定を行う様子を示した図である。
【図5】耳式体温計100の検出素子収納体の構成を示す図である。
【図6】耳式体温計100のプローブ部の構成を示す図である。
【図7】耳式体温計100全体の機能構成を示す図である。
【図8】耳式体温計100における体温測定処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の各実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0016】
[第1の実施形態]
1.耳式体温計の外観構成
はじめに、本発明の第1の実施形態に係る耳式体温計100の外観構成について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る耳式体温計100の外観構成を示す図である。
【0017】
図1において、101はプローブ部であり、耳腔内の温度測定部位(好ましくは鼓膜及び/又はその周辺)から放射される赤外線を検出するために耳腔内(外耳道)に挿入される。プローブ部101は、耳腔内への挿入ができるだけ可能となるように、先端の外径寸法が約7mmの筒状形状を有している。なお、プローブ部101の先端には、接触の有無を検知するための接触検知部121が取り付けられている(接触検知部121の詳細は後述するものとする)。
【0018】
102はプローブ支持部であり、一方の面においてプローブ部101を支持する。また、プローブ部101を支持する面に対向する面111には、指固定壁(規定部材)103が設けられており、耳式体温計100を測定者の指に装着した際の、当該指のX軸方向(プラス方向及びマイナス方向)及びY軸方向(プラス方向)の位置を規定している。
【0019】
なお、プローブ支持部102の面111のY軸方向の長さは、概ね、測定者の指の先端から第1関節付近までの1/3程度の長さとなっており、面111上であって、プローブ部101を支持する支持位置に対向する位置に、測定者の指の腹(指紋がある部分。手指末節部の手掌面側の部分)の一部が接触するよう構成されている。
【0020】
104は耳式体温計100全体を制御する固定部であり、プローブ支持部102の面111と同一平面を形成する面112を有しており、耳式体温計100が測定者の指に装着された際に、測定者の指の第1関節よりも先端側の部分が接触するよう構成されている。つまり、本実施形態における耳式体温計100では、固定部104のY軸方向の長さが、概ね、測定者の指の第1関節までの長さとなるように構成されている。これにより、測定者は第1関節で指を折り曲げる動作を自由に行うことが可能となり、耳式体温計100を被検者の耳腔内に挿入した際に、指先で微小角度の調整を行うことができる。つまり、プローブ部の先端の位置合わせを高精度に行うことが可能となる。
【0021】
なお、固定部104の面112には、指固定壁(規定部材)105が設けられており、耳式体温計100を測定者の指に装着した際の、当該指のX軸方向(プラス方向及びマイナス方向)の位置を規定する。
【0022】
また、固定部104の側面には、測定者の指に巻かれる装着帯106、108が設けられており、プローブ支持部102の面111及び固定部104の面112に測定者の指が載置された状態で、該測定者の指に装着帯106を巻き、その先端の装着リング107に、装着帯108を通したうえで、X軸方向(マイナス方向)に引っ張ることにより、測定者の指を耳式体温計100に安定して固定することができる(つまり、装着帯106、108、装着リング107は、耳式体温計100を測定者の指に装着するための装着機能を実現するものであり、当該装着機能により装着されるプローブ支持部102及び固定部104は、一体で、装着部としての役割を果たす)。
【0023】
なお、装着帯106及び装着帯108にはそれぞれ、雄型の面ファスナーと雌型の面ファスナーとが備えられており(不図示)、装着帯108をX軸方向(マイナス方向)に引っ張った状態で、装着帯108を装着帯106に罫着固定できるように構成されている。
【0024】
2.耳式体温計100の正面及び側面の構成
次に、耳式体温計100の正面及び側面の構成について説明する。図2(a)は、耳式体温計100の正面図であり、図2(b)は、耳式体温計100の側面図である。
【0025】
図2(a)に示すように、固定部104の面112と対向する面211上(プローブ部101の突出方向と同じ側の面)には、表示部201が設けられており、測定された被検者の体温を表示する。また、面211上には、電源スイッチ202が設けられており、押圧操作により耳式体温計100の電源のON/OFFを制御することができる。
【0026】
また、図2(b)に示すように、固定部104の側面には、スピーカ204が設けられており、適切な測定状態となった場合や、体温測定が終了した場合等に、音声を出力する。205はLED素子であり、耳式体温計100の内部状態に対応して点灯する。
【0027】
3.耳式体温計100の装着状態
次に測定者が耳式体温計100を装着した状態について図3を参照しながら説明する。図3に示すように、測定者の指の先端部が指固定壁103に接触することで、測定者の指のY軸方向(マイナス方向)及びX軸方向(プラス方向及びマイナス方向)の位置が規定される。
【0028】
また、装着帯106の先端に設けられた装着リング107に装着帯108が通され、装着帯108がX軸方向(マイナス方向)に引っ張られることで、測定者の指の第1関節より先端側の部分が、固定部104に固定される。
【0029】
上述したように、耳式体温計100が測定者の指に装着された状態では、測定者は指の第1関節を折り曲げることができ、これにより、被検者の耳腔内へのプローブ部101の挿入に際して、測定者はプローブ部101の先端の位置を微調整することができる。
【0030】
また、測定者の指の腹が、プローブ支持部102の面111上であって、プローブ支持部102がプローブ部101を支持する支持位置に対向する位置において面111に接触するため、測定者は、プローブ部101の先端が耳壁に接触する感覚を、指先で敏感に感じ取ることができる。
【0031】
なお、図3に示すように、耳式体温計100は、測定者のいずれかの指(通常は、人指し指)に安定して固定されるため、測定者は、被検者の体温測定に際して、耳式体温計100が装着された指以外の指を、自由に使うことができる。
【0032】
4.耳式体温計100による体温測定
次に測定者が耳式体温計100を装着して、被検者の体温測定を行う様子を図4を参照しながら説明する。図4に示すように、耳式体温計100を測定者の右手の人差し指に装着した場合、右手人差し指以外の指は自由に使うことができる。このため、測定者は、被検者の顔を両手(左手の全ての指と、右手の人差し指以外の指と)で、押えることができる。
【0033】
このように、本実施形態に係る耳式体温計100によれば、測定に際して、被検者を両手で押えることができるため、安定した状態(被検者が静止した状態)での体温測定が可能となる。
【0034】
5.プローブ部101の構成
(1)検出素子収納体の構成
次にプローブ部101の構成について説明する。はじめに、プローブ部101に取り付けられた検出素子収納体の構成について説明する。
【0035】
プローブ部101は先端に開口部が形成された中空筒状体により構成されており、温度検出素子(例えば、サーミスタ)と、耳腔内の温度測定部位(鼓膜またはその周辺)から放射される赤外線を検出する赤外線検出素子(例えば、冷接点と温接点とからなるサーモパイル)とが収納された検出素子収納体が固定されている。なお、サーミスタは、サーモパイルの近傍に配置され、サーモパイルの冷接点の温度を測定するものであり、温度測定部位から放射される赤外線が当たることがないように配置されている。
【0036】
図5は、検出素子収納体の一部を破断して示した外観斜視図である。図5に示すように、検出素子収納体は、取付け基部材503を備え、取付け基部材503上には、環境温度を検出するサーミスタ501と、耳腔内の温度測定部位から放射される赤外線を検出するサーモパイル502とが固定されている。
【0037】
サーミスタ501は、使用環境温度である絶対温度を検出できるように冷接点の近傍に配置されている。また、外気温度がサーミスタ501に伝達されるよう、取付け基部材503はアルミ材等の良熱伝導体により構成されており、かつ、サーミスタ501は、取付け面の表面積が大きくなるように取付け基部材503に固定されている。
【0038】
更に、サーミスタ501には、電極リード507が取付けられており、検出温度は電極リード507を介して出力される。
【0039】
一方、赤外線IRを検出するサーモパイル502は、相対温度を検出するように調整されている。
【0040】
本実施形態に係る耳式体温計100では、サーモパイル502として、熱電対型(サーモパイル型)の検出素子を用いている。このため、図5に示すように、取付け基部材503の台座503b上に固定されるウエハ担体502c上には、花弁状に形成された温接点502aと、冷接点502bとが形成されている。なお、冷接点502aは、赤外線が当たることがないよう、ウエハ担体502cの周辺部に配置されている。
【0041】
各温接点502aと冷接点502bとは異種金属から形成され、かつ直列に接続されており、取付け基部材503に絶縁状態で固定された電極リード508に対してはリード線を介して接続されている。なお、温接点502aで囲まれる範囲Hは、赤外線を吸収しやすくするために黒色塗装されている。
【0042】
このような構成のもと、温度測定部位から放射される赤外線により、サーモパイル502では、各接点間において起電力が発生する(これにより、冷接点502bに対する温接点502aの相対温度が検出される)。
【0043】
耳式体温計100では、サーミスタ501により検出された冷接点502cの検出温度に、サーモパイル502からの出力に基づいて換算された温接点502aの相対温度を加えることで、被検者の体温を算出する。なお、この算出処理の詳細については、例えば特開平11−123179号公報に詳しく記載されているので、ここでの詳細な説明は省略する。
【0044】
更に、検出素子収納体は、2つの検出素子を囲い込むように形成された筒状の容器部材505を備え、容器部材505は、外周面505aと、孔504を有する天井面とから構成される。
【0045】
容器部材505も取付け基部材503と同様にアルミ材、ステンレス材等の良熱伝導体から形成されており、外気温度がサーミスタ501に伝達されやすい構成となっている。また、孔504には赤外線を透過させるセラミック素材からなる窓部材506が固定されている。
【0046】
なお、図5に示す検出素子収納体の場合、取付け基部材503にはその縁部から半径方向に向かって外側鍔部503aが延設されており、これにより検出素子収納体は、プローブ部101の内壁に保持されることとなる。
【0047】
(2)接触検知部の構成
次に、プローブ部101に取り付けられた接触検知部121の構成について説明する。図6(a)に示すように、プローブ部101の先端には、接触検知部121(例えば、複数のタッチパッドセンサから構成される)が取り付けられている。
【0048】
タッチパッドセンサ601〜604は、パッド(電極)と抵抗をグランド間に並列に接続し、矩形波を加えた際の放電カーブの変化をとらえることで、接触の有無を検知する。具体的には、接触していない場合には、5pF(浮遊容量)程度の容量のコンデンサが抵抗と並列に接続されているのと等価になるのに対して、接触している場合には、大きな容量のコンデンサが抵抗と並列に接続されているのと等価になるため、両者の違いに伴う放電カーブの変化を検知することで、接触の有無を検知することができる。
【0049】
タッチパッドセンサ601〜604は、プローブ部101の先端に形成された開口部の周縁を構成する先端面から、プローブ部101の側面を構成する外周面にかけて一体的に配されており、本実施形態では4つが、プローブ部101の周方向に配置されている。
【0050】
ここで、図6(b−1)は、プローブ部101を耳穴に挿入することができない乳幼児、小児等が被検者の場合の適切な測定状態を示している。具体的には、被検者の耳穴周辺にプローブ部101が密着され、耳穴にプローブ部101内のサーモパイルが正しく正対している様子を示している。図6(b−1)に示すように、プローブ部101の先端において、周方向に設けられた4つのタッチパッドセンサ601〜604全てが接触を検知した場合に、耳式体温計100では、耳穴周辺に対してプローブ部101の先端面が密着し、プローブ部101が耳穴に対して正対していると認識することができる。
【0051】
一方、図6(b−2)は、プローブ部101が耳穴に挿入できない乳幼児、小児等が被検者の場合の適切でない測定状態を示している。具体的には、被検者の耳穴周辺にプローブ部101が密着しておらず、耳穴に対してプローブ部101の先端が正対していない様子を示している。
【0052】
図6(b−2)に示す測定状態の場合、プローブ部101の先端の開口部を介してサーモパイルが測定を行う領域内には、鼓膜またはその周辺が含まれないため、測定誤差が大きくなる。
【0053】
このような状態では、プローブ部101の先端において、周方向に設けられた4つのタッチパッドセンサ601〜604のうちのいずれか1つ以上のタッチパッドセンサが、接触していないことを検知する。つまり、接触していないタッチパッドセンサの有無を検知することで、耳式体温計100では、プローブ部101が耳穴に正対していないことを認識することができる。
【0054】
一方、図6(b−3)は、プローブ部101の先端が耳穴に挿入可能な成人が被検者の場合の適切な測定状態を示している。具体的には、プローブ部101の先端が被検者の耳穴に正しく挿入され、プローブ部101内のサーモパイルが正しく正対している様子を示している。図6(b−3)に示すように、プローブ部101の先端が耳穴に正しく挿入されている状態では、周方向に設けられた4つのタッチパッドセンサが、それぞれ、プローブ部101の側面を構成する外周面上において、接触を検知する。これにより、耳式体温計100では、プローブ部101の先端部が耳穴に正しく挿入されていることを認識することができる。
【0055】
6.耳式体温計100の機能構成
次に耳式体温計100の機能構成について図7を用いて説明する。図7は、耳式体温計100の機能構成を示すブロック図である。なお、図7に示す構成または部品のうち、既に説明済みの構成または部品については同様の参照番号を附すこととし、ここでは詳細な説明は省略する。
【0056】
図7に示すように、プローブ部101の検出素子収納体に内蔵されたサーミスタ501は、電極リード507を介して実装基板上の増幅部705に接続されている。また、赤外線IRを検出するサーモパイル502は、電極リード507を介して実装基板上の増幅部705に接続されている。
【0057】
なお、サーミスタ501からの出力は、増幅部705において増幅された後、A/Dコンバータ710によりデジタル信号に変換され、CPU702に入力され、CPU702において換算される。これにより、サーミスタ501からの出力に基づく検出温度が算出される。
【0058】
同様に、サーモパイル502からの出力は、増幅部706において増幅された後、A/Dコンバータ710によりデジタル信号に変換され、CPU702に入力され、CPU702において換算される。これにより、サーモパイル502からの出力に基づく検出温度が算出される。
【0059】
実装基板上に配された制御部701には、CPU702と記憶素子であるRAM703及びROM704とが配されており、サーミスタ501からの出力に基づいて算出された検出温度と、サーモパイル502からの出力に基づいて算出された検出温度とを用いて、被検者の体温の算出を行う。
【0060】
プローブ部101に配された4つのタッチパッドセンサ601〜604は、4つの配線711を介して検出部に接続されている。これにより、タッチパッドセンサ601〜604における検出結果は、制御部701に送信されることとなり、制御部701では、被検者の耳穴に対して、プローブ部101が正対していることを認識することができる。
【0061】
また、制御部701には、LED素子205と、表示部201と、スピーカ204と、電源スイッチ202とがそれぞれ接続されている。
【0062】
表示部201は、制御部701において算出された被検者の体温を表示する。LED素子205は、被検者の体温の測定が開始されると緑色に点灯する一方、被検者の体温の測定が完了すると、赤色に点灯する。スピーカ204は、プローブ部101の先端が耳穴周辺に密着し、耳穴に対して正対していると認識された場合(つまり、適切な測定状態になった場合)に、音声を出力する。あるいは、被検者の体温の測定が完了した場合に、音声を出力する。
【0063】
なお、制御部701は、電源スイッチ202が押圧操作されることにより、ボタン電池608(電源部)からの電力供給を受けて動作するよう構成されているものとする。
【0064】
7.体温測定処理の流れ
次に耳式体温計100における体温測定処理の流れについて説明する。図8は、耳式体温計100における体温測定処理の流れを示すフローチャートである。
【0065】
電源スイッチ202が押圧操作されると、体温測定処理が開始され、ステップS801では、サーミスタの温度変化が規定値より小さくなったか否かを判定する。これは、連続して体温測定を行う場合の2回目以降の測定を考慮した処理であり、前回の体温測定の際の接触により既にプローブ部101が温度上昇していた場合に、これをサーミスタの検出結果に反映させるためである。
【0066】
ステップS801において、サーミスタの温度変化が規定値以下になったことが確認されると、ステップS802では、更に、前回の測定開始から規定時間が経過したか否かを判定する。ステップS802において、規定時間が経過したと判定された場合には、ステップS803に進む。
【0067】
ステップS803では、接触検知部121を構成する各タッチパッドセンサ601〜604の出力に基づいて、それぞれの放電時定数を測定し、接触の有無を判定する。そして、接触検知部121を構成する4つのタッチパッドセンサ601〜604全てが接触していると判定されたことを条件に、ステップS804に進み、適切な測定状態にあることを報知する。具体的には、スピーカ204より音声を出力し、表示部201に、適切な測定状態にあることを示す絵文字を表示する。あるいは、LED素子205を緑色に点灯する。
【0068】
ステップS805では、サーミスタ501及びサーモパイル502において検出された検出温度を取得する。ステップS806では、ステップS805において取得された検出温度に基づいて、制御部701が被検者の体温を算出する。また、算出した被検者の体温を表示部201に表示する。更に、ステップS807において、体温測定処理が終了したことを報知し、体温測定処理を終了する。
【0069】
以上の説明から明らかなように、本実施形態に係る耳式体温計100では、装着部(102及び104)及び装着帯106、107を配し、測定者の指に装着できる構成とするとともに、装着時に測定者の指が接触する面111、112に指固定壁(規定部材)を設け、装着時の測定者の指の位置を規定する構成としたことで、耳式体温計100の測定者の指への安定装着を実現した結果、測定者が、被検者の体温測定に際して、両手を使うことができるようになった。
【0070】
また、耳式体温計100を装着した場合であっても、測定者が指の第1関節を自由に折り曲げることができるよう固定部104の長さを規制したことにより、プローブ部101の耳腔内への挿入に際して、プローブ部101の先端の位置を微調整できるようになった。
【0071】
更に、プローブ部101の先端に接触検知部を取り付けることにより、サーモパイル502が耳穴を適確に捉え、適切な測定状態になっているか否かを判定できる構成とした。また、適切な測定状態になっていると判定されたことを条件に、体温測定を行う構成とした。
【0072】
これにより、乳幼児や小児等の被検者であっても、適切な測定状態を実現しやくなるとともに、適切な測定状態が整ったタイミングで測定が開始されるため、再現性を向上させることが可能となった。
[第2の実施形態]
上記第1の実施形態では、プローブ部101がプローブ支持部102に対して略直交する方向に突出するものとしていたが、本発明はこれに限定されず、プローブ支持部102に対して斜めに突出するように構成してもよい。
【0073】
また、上記第1の実施形態では、プローブ支持部102の面111及び固定部104の面112は平面としたが、本発明はこれに限定されず、中央がくぼんだ曲面により形成してもよい。この場合、指の形状に一致することとなり、耳式体温計100装着時の安定性がより向上することとなる。
【0074】
更に、上記第1の実施形態では、装着部(102及び104)及び装着帯106、108を用いて耳式体温計100を測定者の指に装着する構成としたが、本発明はこれに限定されず、例えば、指サック式の装着部により装着する構成としてもよい。また、上記第1の実施形態では、耳式体温計100を装着した際に、プローブ支持部102と固定部104とが同じ側(つまり、プローブ部101と固定部104とが同じ側)にくるように配置したが、本発明はこれに限定されず、例えば、プローブ部と固定部とは、異なる側に配置するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0075】
100・・・耳式体温計、101・・・プローブ部、102・・・プローブ支持部、103・・・指固定壁、104・・・固定部、105・・・指固定壁、106・・・装着帯、107・・・装着リング、108・・・装着帯、111・・・面、112・・・面、121・・・接触検知部、201・・・表示部、202・・・電源スイッチ、204・・・スピーカ、205・・・LED素子、211・・・面、501・・・サーミスタ、502・・・サーモパイル、502a・・・温接点、502b・・・冷接点、502c・・・ウエハ担体、503・・・基部材、503a・・・外側鍔部、503b・・・台座、504・・・孔、505・・・容器部材、505a・・・外周面、506・・・窓部材、507・・・電極リード、508・・・電極リード、601〜604・・・タッチパッドセンサ、711・・・配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境温度を検出する温度検出素子と、被検者の耳腔内の温度測定部位から放射される赤外線を検出することで該温度測定部位の相対温度を検出する赤外線検出素子とを備え、該温度検出素子により検出された環境温度と該赤外線検出素子により検出された相対温度とを用いて、被検者の体温を算出する耳式体温計であって、
中空の筒状体によって形成され、前記耳腔内に挿入されるプローブと、
測定者の指に装着するための装着機能を有し、該装着機能を用いて該測定者の指に装着した場合に、前記プローブの支持位置が、該測定者の手指末節部の手掌面に対向する位置にくるように、前記プローブを支持する装着部と、
前記プローブの先端に形成された開口部の周縁を構成する先端面から、前記プローブの側面を構成する外周面にかけて一体的に配された、接触の有無を検知するための検知部が、前記プローブの周方向に複数配置された検知手段と、を備え、
前記検知手段に含まれる前記複数の検知部全てにおいて接触が検知されたことを条件に、前記体温の算出を行うことを特徴とする耳式体温計。
【請求項2】
前記検知手段に含まれる前記複数の検知部全てにおいて接触が検知されたことを条件に、音声を出力する出力手段を更に備えることを特徴とする請求項1の耳式体温計。
【請求項3】
前記装着部は、前記測定者の指に装着された場合に、該測定者の指の先端から該測定者の第1関節までの間におさまるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の耳式体温計。
【請求項4】
前記装着部は、測定した前記被検者の体温を表示する表示部を更に備え、該表示部は、前記装着部上であって、前記プローブの支持位置と同じ側の面を形成する第1の面上に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の耳式体温計。
【請求項5】
前記装着機能は、前記装着部の側面を形成する第2の面上から延設された装着帯であって、前記第1の面に対向する第3の面上に、前記測定者の指が載置された場合に、該指の外周面に対して周方向に巻くことで、該指を該第3の面上に固定する装着帯により実現されることを特徴とする請求項4に記載の耳式体温計。
【請求項6】
前記第3の面上には、前記測定者の指が載置された場合に、該指の先端部の位置を規定する規定部材が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の耳式体温計。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−70920(P2012−70920A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217719(P2010−217719)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】