耳式体温計
【課題】被検者の外耳道に対して適正にプローブ部を配置した状態での体温計測の実行を容易にする。
【解決手段】筒状のプローブ部と、赤外線検出素子を収納した収納体とを有し、被検者の外耳道内の測定部位から放射されプローブ部の先端から取り込まれた赤外線を赤外線検出素子で検出して得られた信号から被検者の体温を測定する耳式体温計は、プローブ部の先端の端面または先端部の側面にはそれぞれが独立して外部物体との接触の有無を検出可能な複数の接触センサが設けられ、プローブ部の内部には、光を発生する投光器と、投光器が発生した光の反射光を受光する受光器とを有する投受光センサが配置される。耳式体温計の制御部は、複数の接触センサそれぞれからの接触の有無を示す信号と、受光器において受光した光の強度とが所定の条件を満たす場合に、赤外線検出素子による体温の測定を開始可能とする。
【解決手段】筒状のプローブ部と、赤外線検出素子を収納した収納体とを有し、被検者の外耳道内の測定部位から放射されプローブ部の先端から取り込まれた赤外線を赤外線検出素子で検出して得られた信号から被検者の体温を測定する耳式体温計は、プローブ部の先端の端面または先端部の側面にはそれぞれが独立して外部物体との接触の有無を検出可能な複数の接触センサが設けられ、プローブ部の内部には、光を発生する投光器と、投光器が発生した光の反射光を受光する受光器とを有する投受光センサが配置される。耳式体温計の制御部は、複数の接触センサそれぞれからの接触の有無を示す信号と、受光器において受光した光の強度とが所定の条件を満たす場合に、赤外線検出素子による体温の測定を開始可能とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耳式体温計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、耳腔内にプローブを挿入し、鼓膜またはその周辺の温度を検出することで、被検者の体温を測定する耳式体温計が実用化されている。
【0003】
耳式体温計は、一般に、環境温度を検出する温度検出素子(例えば、サーミスタ)と、耳腔内の温度測定部位(鼓膜またはその周辺)から放射される赤外線を検出する赤外線検出素子(例えば、冷接点と温接点とからなるサーモパイル)とを備えており、それぞれの検出素子の検出温度に基づいて、被検者の体温を算出している。
【0004】
つまり、耳式体温計の場合、熱源である温度測定部位から放射される赤外線を直接測定する方式を採っているため、他の方式の体温計(例えば、腋下棒状の体温計)と比較して、体温測定にかかる時間が短く、かつ高精度であるという特徴を有している。
【0005】
一方で、耳式体温計の場合、他の方式の体温計と比較して、再現性が低いという欠点がある。その原因の1つとして、耳式体温計の場合、温度測定部位に対して赤外線検出素子の向きがずれたことによる影響を受けやすいことが挙げられる。
【0006】
一般に耳式体温計は、プローブ部の先端に形成された開口部を介して赤外線検出素子に直接到達した赤外線を測定している。このため、赤外線検出素子の向きがずれると、開口部を介して赤外線検出素子に到達する赤外線を放射している領域(測定範囲)がずれ、当該領域(測定範囲)に占める、熱源である温度測定部位(鼓膜またはその周辺)の割合が低くなり、結果的に測定誤差が大きくなる。
【0007】
このため、体温測定に際しては、プローブ部の先端を耳穴に確実に挿入するか、あるいは、耳穴が小さく挿入できない場合にあっては、耳穴を塞ぐように、プローブ部の先端を密着させるといった適切な測定状態を実現することが不可欠である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−241362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
小児、乳幼児の場合、耳穴が小さくて、プロ-ブ先端を耳孔に挿入することができず、この場合、耳穴を覆うようにプロ−ブの先端を耳穴周辺に密着させて測定する必要がある。しかしながら、小児、乳幼児の場合、耳が小さく、プロ−ブの先端を耳孔にあてがうのが難しく、しかも、一定時間、静止させておくことが非常に困難であり、かつ、泣いてしまうので無理が利かない場合が多い。
【0010】
したがって、測定する場合、拘束、または頭部を支えながらの測定が必要となり、測定者が目視にてプロ-ブの適切な装着を確認しての測定が困難な場合が多く、測定誤差が生じる場合が多かった。
【0011】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、被検者の外耳道に対して適正にプローブ部を配置した状態での体温計測の実行を容易にする耳式体温計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明に係る耳式体温計は以下のような構成を備える。即ち、
筒状のプローブ部と、赤外線検出素子を収納した収納体とを有し、被検者の外耳道内の測定部位から放射され前記プローブ部の先端から取り込まれた赤外線を前記赤外線検出素子で検出して得られた信号から前記被検者の体温を測定する耳式体温計であって、
前記プローブ部の先端の端面または前記先端の側面に設けられ、それぞれが独立して外部物体との接触の有無を検出可能な複数の接触センサと、
前記プローブ部の内部に装着され、光を発生する投光器、前記投光器が発生した光の反射光を受光する受光器を有する投受光センサと、
前記複数の接触センサそれぞれからの接触の有無を示す信号と、前記投受光センサの前記受光器における反射光強度の信号とが所定の条件を満たす場合に、前記赤外線検出素子による体温の測定を開始可能とする制御部とを備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、測定中、静止されることができず拘束、または、支えが必要な小児、乳幼児の場合に、目視にて確認しなくとも、プロ-ブの先端が耳穴の周辺に密着していることを検出し、耳穴にブロ−ブ先端が正対した適切な装着になっていることを装置が自動判定し、測定が可能な耳式体温計が実現可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態に係る耳式体温計100の外観構成を示す図である。
【図2】耳式体温計100の正面図及び側面図である。
【図3】測定者が耳式体温計100を装着した様子を示す図である。
【図4】耳式体温計100を用いて体温測定を行う様子を示した図である。
【図5】実施形態によるプローブ部の構成を説明する図である。
【図6】耳式体温計100の検出素子収納体の構成を示す図である。
【図7】耳式体温計100全体の機能構成を示す図である。
【図8】耳式体温計100における体温測定処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】実施形態によるプローブ部の測定開始条件を説明する図である。
【図10】耳式体温計の外観構成を示す図である。
【図11】ライトガイドを有するプローブ部への適用を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0016】
[第1の実施形態]
1.耳式体温計の外観構成
はじめに、本発明の実施形態に係る耳式体温計100の外観構成について説明する。図1は、実施形態に係る耳式体温計100の外観構成を示す図である。
【0017】
図1において、101はプローブ部であり、外耳道内の温度測定部位(好ましくは鼓膜及び/又はその周辺)から放射される赤外線を検出するために耳腔内(外耳道)に挿入される。プローブ部101は、成人の外耳道内への挿入が可能となるよう、先端の外径寸法が約7mmの筒状形状となっている。また、このプローブ部101の先端面から側面にかけて、先端部の円周に対して90度の取り付け位相差を持って4つの感圧素子110a〜110dが設けられている(図2(a)を参照)。これら感圧素子110a〜110dは、物理的な接触を電気信号として検出できればその種類は問わないが、本実施形態では、外耳道に挿入される場合があるので被検者に違和感が発生しにくい弾性体である感圧ゴム(圧力で電気抵抗が変化するゴム)とした。また、感圧素子の個数も4つに限られるものではない。このように感圧素子110a〜110dは、プローブ部101の先端の端面または先端の側面に設けられ、それぞれが独立して外部物体との接触の有無を検出可能な複数の接触センサとして機能する。
【0018】
102はプローブ支持部であり、一方の面においてプローブ部101を支持する。また、プローブ部101を支持する面に対向する面111には、指固定壁103が設けられており、耳式体温計100を測定者の指に装着した際の、当該指のX軸方向(プラス方向及びマイナス方向)及びY軸方向(マイナス方向)の位置を規定している。
【0019】
なお、面111のY軸方向の長さは、概ね、測定者の指の先端から第1関節付近までの長さとなっており、面111上であって、プローブ部101を支持する支持位置に対向する位置に、測定者の指の腹(指紋がある部分。手指末節部の手掌面側の部分)が接触するよう構成されている。これにより、プローブ部101の先端を被検者の耳腔内に挿入した際に、プローブ部101の先端が耳壁に接触する感覚を、測定者は指先で敏感に感じ取ることが可能となる。
【0020】
104は固定部であり、耳式体温計100の全体を制御する制御回路を内蔵する。固定部104は、プローブ支持部102の面111と同一平面を形成する面112を有しており、耳式体温計100が測定者の指に装着された際に、測定者の指の第1関節よりも先端側の部分が接触するよう構成されている。なお、本実施形態における耳式体温計100では、固定部104のY軸方向の長さが、概ね、測定者の指の第1関節までの長さとなるように構成されているものとする。これにより、測定者は指を折り曲げる動作を自由に行うことができ、耳式体温計100を被検者の耳腔内に挿入した際に、指先で微小角度の調整を行うことができるようになる。つまり、プローブ部の先端の位置合わせを高精度に行うことが可能となる。なお、固定部104の面112には、指固定壁105が設けられており、耳式体温計100を測定者の指に装着した際の、当該指のX軸方向(プラス方向及びマイナス方向)の位置を規定している。
【0021】
また、固定部104の側面には、測定者の指に巻かれる装着帯106、108が設けられている。プローブ支持部102の面111及び固定部104の面112に測定者の指が載置された状態で、該測定者の指に装着帯106を巻き、その先端の装着リング107に装着帯108を通したうえで、X軸方向(マイナス方向)に引っ張る。このような手順により、測定者の指を耳式体温計100に安定して固定することができる。つまり、装着帯106、108、装着リング107は、耳式体温計100を測定者の指に装着するための装着機能を実現するものであり、当該装着機能により装着されるプローブ支持部102及び固定部104は、一体で、装着部としての役割を果たす。
【0022】
なお、装着帯106及び装着帯108にはそれぞれ、雄型の面ファスナーと雌型の面ファスナーとが備えられており(不図示)、装着帯108をX軸方向(マイナス方向)に引っ張った状態で、装着帯108を装着帯106に罫着固定できるように構成されている。
【0023】
2.耳式体温計100の正面及び側面の構成
次に、耳式体温計100の正面及び側面の構成について説明する。図2(a)は、耳式体温計100の正面図であり、図2(b)は、耳式体温計100の側面図である。
【0024】
図2(a)に示すように、固定部104の面112と対向する面211上(プローブ部101を支持する支持位置と同じ側の面)には、表示部201が設けられており、測定された被検者の体温を表示する。また、面211上には、電源スイッチ202が設けられており、押圧操作により耳式体温計100の電源のON/OFFを制御することができる。
【0025】
また、図2(b)に示すように、固定部104の側面には、スピーカ204が設けられており、体温測定が終了した場合、また、適切にプロ-ブが装着された場合、装着されていない場合等に、音声を出力する。205はLED素子であり、耳式体温計100の内部状態に対応して点灯が制御される。本実施形態では、電源スイッチ202の操作により電源が投入されるとまず赤色に点灯し、その後、体温測定の実行中は緑色に点灯し、体温測定を終えると再び赤色に点灯するものとする。
【0026】
3.耳式体温計100の装着状態
次に測定者が耳式体温計100を装着した状態について図3を参照しながら説明する。図3に示すように、測定者の指の先端部が指固定壁103に接触することで、測定者の指のY軸方向(マイナス方向)及びX軸方向(プラス方向及びマイナス方向)の位置が規定される。また、装着帯106の先端に設けられた装着リング107に装着帯108が通され、装着帯108がX軸方向(マイナス方向)に引っ張られることで、測定者の指の第1関節より先端側の部分が、固定部104に固定される。
【0027】
上述したように、耳式体温計100が測定者の指に装着された状態では、測定者は指の第1関節を折り曲げることができ、これにより、被検者の耳穴周辺へのプロ−ブ部101先端部の押し当て、および外耳道内へのプローブ部101の挿入に際して、測定者はプローブ部101の先端の位置を微調整することができる。また、測定者の指の腹が、プローブ支持部102の面の直上にあるので測定者は、プローブ部101の先端が耳壁に接触する感覚を、指先で敏感に感じ取ることができる。
【0028】
なお、図3に示すように、耳式体温計100は、測定者のいずれかの指(通常は、人指し指)に安定して固定されるため、測定者は、被検者の体温測定に際して、耳式体温計100が装着された指以外の指を、頭部の拘束などに自由に使うことができる。
【0029】
4.耳式体温計100による体温測定
次に測定者が耳式体温計100を装着して、被検者の体温測定を行う様子を図4を参照しながら説明する。図4に示すように、耳式体温計100を測定者の右手の人差し指に装着した場合、右手人差し指以外の指は自由に使うことができる。このため、測定者は、被検者の頭部を両手(左手のすべての指と、右手の人差し指以外の指と)で、押えることができる。
【0030】
このように、本実施形態に係る耳式体温計100によれば、測定に際して、被検者を両手で押えることができるため、プロ−ブ部の先端が耳穴に正しく正対させた状態(被検者を静止させた状態)での体温測定が可能となり、測定誤差の発生を低減させることが可能となる。
【0031】
5.プローブ部101の構成
次にプローブ部101の構成について説明する。図5(a)〜(c)は実施形態による耳式体温計100におけるプローブ部101の構造を模式的に示す図であって、図5(a)は、プローブ部101を開口側(先端部側)からみた様子を示す図である。また、図5(b)は図5(a)のAA断面を示す図、図5(c)は図5(a)のBB断面を示す図である。プローブ部101は先端に開口部が形成された中空筒状体により形成されている。プローブ部101の開口部近傍には、検出素子収納体500が固定されている。検出素子収納体500は、冷接点温度を検出する温度検出素子(例えば、サーミスタ)と、耳腔内の温度測定部位(鼓膜またはその周辺)から放射される赤外線を検出する赤外線検出素子(例えば、冷接点と温接点とからなるサーモパイル)とを収納する。
【0032】
図6は、検出素子収納体500の一部を破断して示した外観斜視図である。図6に示すように、検出素子収納体500は、取付け基部材503を備え、取付け基部材503上には、冷接点温度を検出する温度検出素子であるサーミスタ501と、耳腔内の温度測定部位から放射される赤外線を検出する赤外線検出素子502とが固定されている。
【0033】
サーミスタ501は、サーモパイルの基準となる冷接点温度である絶対温度を検出できるように調整されている。また、雰囲気温度がサーミスタ501に伝達されるよう、取付け基部材503はアルミ材等の良熱伝導体により構成されており、かつ、サーミスタ501は、取付け面の表面積が大きくなるように取付け基部材503に固定されている。更に、サーミスタ501には、電極リード507が取付けられており、検出温度は電極リード507を介して出力される。
【0034】
一方、赤外線IRを検出する赤外線検出素子502は、相対温度を検出するように調整されている。本実施形態に係る耳式体温計100では、赤外線検出素子502として、熱電対型(サーモパイル型)の検出素子を用いている。このため、図6に示すように、取付け基部材503の台座503b上に固定されるウエハ担体502c上には、花弁状に形成された温接点502aと、冷接点502bとが形成される。
【0035】
各温接点502aと冷接点502bとは異種金属から形成され、かつ直列に接続されており、取付け基部材503に対して絶縁状態で固定された電極リード508に向かってリード線が接続されている。なお、温接点502aで囲まれる範囲Hは、赤外線を吸収しやすくするために黒色塗装されている。このような構成のもと、赤外線検出素子502では、各接点間において発生した起電力に基づいて、相対温度の検出を行う。
【0036】
そして、耳式体温計100では、被検者の体温を、温度検出素子により検出された検出温度に、赤外線検出素子により検出された検出温度を加えることで算出する。なお、この算出処理の詳細については、例えば特開平11−123179号公報に詳しく記載されているので、ここでの詳細な説明は省略する。
【0037】
更に、検出素子収納体500は、2つの検出素子を囲い込むように形成された筒状の容器部材505を備え、容器部材505は、外周面505aと、孔504を有する天井面とから構成される。容器部材505も取付け基部材503と同様にアルミ材、ステンレス材等の良熱伝導体から形成されており、外気温度がサーミスタ501に伝達されやすい構成となっている。また、孔504には赤外線を透過させるセラミック素材からなる窓部材506が固定されている。
【0038】
なお、図6に示す検出素子収納体500の場合、取付け基部材503にはその縁部から半径方向に向かって外側鍔部503aが延設されており、これにより検出素子収納体500は、プローブ部101の内壁に保持されることとなる。なお、検出素子収納体500は、不図示の装着部材により、プローブ部101の内壁に3点で固定されるものとする。外皮の熱が検出素子収納体500に伝わらないようにするためである。
【0039】
図5に戻り、プローブ部101の内部には、投光器113aと受光器113bとが設けられており、これらは投受光センサとして機能する。投光器113aと受光器113bとは、プローブ部101の先端側に配置された検出素子収納体500よりも当該先端部より遠い位置に配置されている。投光器113aは近赤外光を発生するLEDを備え、プローブ部101の内壁と検出素子収納体500との間から近赤外光をプローブ部101の先端を通して外部へ照射する。なお、投光器113aは近赤外光を発光するものとしたが、投受光センサにおいて用いる光の波長については特に限定されるものでない。受光器113bは、フォトトランジスタ或いはフォトダイオードを具備し、プローブ部101の内壁と検出素子収納体500との間からプローブ部101の先端を介して入射した反射光(投光器113aが発した近赤外光の反射光)を受光するように設けられている。制御部601は、受光器113bにおける反射光の検出強度に基づいて当該プローブ部101が正しく耳の穴を捕捉しているか否かを判定する(詳細は後述する)。
【0040】
更に、本実施形態のプローブ部101の内部には、投光器113aからの直接光またはプローブ部101の内部で生じた反射光が受光器113bに到達すことを防止するように、壁部材114が設けられている。図5に示すように、壁部材114は、プローブ部101の内壁と接続されて、プローブ部101の内部空間を二分割し、分割された空間のそれぞれに投光器113a、受光器113bが存在するようにしている。なお、上述したように検出素子収納体500は外皮の熱がプローブ部101を介して伝わらないようにプローブ部101の内壁に3点で固定されるのが好ましい。しかしながら、壁部材114が検出素子収納体500をプローブ部101の内部に固定する固定部材の一部としての機能を兼ねるようにしてもよい。たとえば、壁部材114により検出素子収納体500を支持するようにすれば、プローブ部101内の構造を簡易化することができる。
【0041】
なお、図5では、投光器113aと受光器113bは、プローブ部101の軸方向に対して直交する横断面の中心を通る直線上において当該中心を挟むように配置されている様子を示したが、これに限られるものではない。また、壁部材114の、プローブ部101の軸方向への長さは図示に限られるものではない。また、壁部材による分割数や投受光センサの配置は上述の実施形態に限られるものではない。たとえば、プローブ部101内の空間を四分割して、一つの空間に投光器を配置し、該一つの空間に対向する位置にある空間に受光器を配置し、投光器、受光器の隣接しない空間に存在するようにしても良い。
【0042】
6.耳式体温計100の機能構成
次に耳式体温計100の機能構成について図7を用いて説明する。図7は、本実施形態による耳式体温計100の機能構成を示すブロック図である。なお、図7に示す構成または部品のうち、既に説明済みの構成または部品については同様の参照番号を附すこととし、ここでは詳細な説明は省略する。
【0043】
図7に示すように、プローブ部101の検出素子収納体500に内蔵されたサーミスタ501は、電極リード507を介して実装基板上の検出部606に接続されている。検出部606はサーミスタ501の抵抗変化を電圧変化として検出し、サーミスタ501周囲の温度を示す電気信号を生成する。検出部606で生成された電気信号は、制御部601に内蔵されたA/Dコンバータ6001でデジタル信号に変換され、制御部601にて用いられる。また、赤外線IRを検出する赤外線検出素子502は、電極リード508を介して実装基板上の増幅部605に接続される。増幅部605は、赤外線検出素子502からの検出信号を増幅する。増幅部605で増幅された検出信号は、制御部601に内蔵されたA/Dコンバータ6002でデジタル信号に変換され、制御部601にて用いられる。感圧素子110a〜110dは検出部611に接続されている。検出部611は、感圧素子110a〜110dにおける抵抗変化を電圧変化として検出し、電気信号を生成する。検出部611で生成された電気信号は、制御部601に内蔵のA/Dコンバ−タ6003にてデジタル信号に変換された後、制御部601にて用いられる。また、投光器113aは制御部601の信号により駆動部609により点灯駆動される。投光器113aから発生した光は受光器113bにて受光される。受光器113bは受光した光の強度に応じた電気信号を生成する。受光器113bで生成された電気信号は制御部601に内蔵のA/Dコンバ−タ6004にてデジタル信号に変換された後、制御部601にて用いられる。
【0044】
実装基板上に配された制御部601には、CPU602と記憶素子であるRAM603及びROM604とが配されており、サーミスタ501により検出された検出温度と、赤外線検出素子502により検出された検出温度とに基づいて、被検者の体温の算出を行う。
【0045】
また、制御部601には、LED素子205と、表示部201と、スピーカ204と、電源スイッチ202とがそれぞれ接続されている。制御部601は、感圧素子110a〜110dからの検出信号及び受光器113bからの反射光強度信号に基づいて測定開始か否かを判断し、測定開始と判断されると自動的に体温測定を開始する。表示部201は、制御部601において算出された被検者の体温を表示する。LED素子205は、電源投入により赤色に点灯し、体温測定が開始されると緑色に点灯し、被検者の体温の測定が完了すると、再び赤色に点灯する。スピーカ204は、被検者の体温の測定が完了した場合に、また、4つの感圧素子110a〜110dの抵抗変化が同じでない場合、または受光器113bの光量が規定値より大きい場合といったような、感圧素子と受光器によって検出される信号が体温の測定開始条件を満足しない場合に音声を出力する。なお、制御部601は、電源スイッチ202が押圧操作されること、により、ボタン電池608(電源部)からの電力供給を受けて動作するよう構成されているものとする。
【0046】
7.体温測定処理の流れ
次に耳式体温計100における体温測定処理の流れについて説明する。図8は、耳式体温計100における体温測定処理の流れ(ROM604に格納されているプログラムの処理手順)を示すフローチャートである。
【0047】
電源スイッチ202が押圧操作されると、まず、制御部601は各種回路の初期化処理を実行する(ステップS801)。次いで、ステップS802において、制御部601は、感圧素子110a〜110dのそれぞれが外部物体と均一に接触しているか否かをチェックする。すなわち、先に説明したように、本実施形態では感圧素子110a〜110dとして感圧ゴムを利用するとしているので、制御部601は、圧力無しのときの抵抗値に対して予め設定した閾値以上の抵抗変化があった場合に接触ありと判定し、抵抗変化が閾値未満の場合には接触無しと判定することとなる。なお、ステップS803においては、全ての感圧素子で一定値以上抵抗変化を発生したか否かを検出するようにしたが、これに限られるものではない。4つの感圧素子110a〜110dにおける抵抗変化が所定範囲に収まる場合に、感圧素子110a〜110dのそれぞれが外部物体と均一に接触していると判定するようにしても良い。
【0048】
感圧素子110a〜110dの全てにおいて接触ありと判定されると処理はステップS803からステップS804へ進む。他の場合は、処理はステップS803からステップS802に戻る。ステップS804において、制御部601は、受光器113bからの反射光強度信号を取得し、反射光強度を検出する。そして、ステップS805において、制御部601は、この反射光強度と所定値とを比較する。反射光強度が所定値未満であれば、制御部601はプローブ部101が耳穴を捉えていると判断し、処理をステップS805からステップS806へ進める。そうでなければ(反射光強度が所定値以上の場合)、処理をステップS805からステップS802へ戻す。なお、図8のフローチャートでは感圧素子からの信号が条件を満たさない場合は受光器113bの検出信号について処理を行わないようにしているが、これに限られるものではない。感圧素子110a〜110bからの信号の検出、受光器113bからの信号の検出を並行して行っても良い。また、上述したように、4つの感圧素子110a〜110dの抵抗変化が同じでない場合、または受光器113bの光量が規定値より大きい場合には、上述のようにスピーカ203から音声を出力する。この音声出力は、たとえば、感圧素子110bの信号が小さい場合には「左側の接触が不十分です」といったような出力とすることにより、ユーザがどのようにプローブ部101を動かしたらよいのかをガイダンスするようにしてもよい。
【0049】
ステップS806において、制御部601は、体温測定を実行する。すなわち、制御部601は、サーミスタ501及び赤外線検出素子502において検出された検出温度を取得し、取得された検出温度に基づいて被検者の体温を算出する。このとき、制御部601は、被検者の体温測定が実行中であることを報知するために、LED素子205を緑色に点灯させる。また、このとき、投光器113aによる近赤外光の発光を停止させるようにしても良い。そして、ステップS807において、制御部601はその算出した被検者の体温を表示部201に表示する。このとき、制御部601において被検者の体温を算出する処理が完了したことを報知するために、LED素子205を赤色に点灯させる。また、スピーカ204より音声を出力し、体温測定処理を終了する。
【0050】
なお、上述した処理のステップS803、S805において、制御部601は、感圧素子110a〜110d及び受光器113bからの信号に基づいて、プローブ部101が正しく耳穴を捉えているかどうかを判断している。たとえば図9(a)のような状態は、外耳道にプローブ部101が適正に配置された状態であり、感圧素子110a〜110dのすべてで接触が検出されるとともに、受光器113bで検出される反射光の強度は所定値よりも小さくなる。そのため、ステップS803、S805でYESと判定され、体温測定が自動的に開始される。なお、幼児のように被検体の外耳道の径が小さいとプローブ部101が外耳道に入らないが、プローブ部101の先端部端面から側面に延びるように感圧素子110a〜110dが配置されているため、プローブ部101が外耳道に入らない状態でも、端面の押圧により外耳道周囲に適切にプローブ部101が押し当てられていることを検出できる。
【0051】
これに対して、図9(b)は、外耳道に対してプローブ部101が斜めに配置されて不適切に配置された状態の一例である。この状態では、感圧素子110a〜110dの全てで接触が検出されるものの、外耳道の表面からの反射光を受光器113bが受光するため、受光器113bで検出される反射光の強度が所定値以上となる。そのため、S805でNOと判定され、体温測定は開始されない。
【0052】
同様に図9(c)もプローブ部101が外耳道に対して不適切に配置された状態の一例である。図9(c)では、プローブ部101の先端の一部が外耳道から外れており、感圧素子110a〜110dのうち接触を検出できない素子が存在する。そのため、S803でNOと判定され、体温測定は開始されない。
【0053】
また、図9(d)では、プローブ部101の先端の4つの感圧素子110a〜110dの全てにおいて接触が検出されるが、プローブ部101の全体が外耳道から外れている。例えば、耳介等にプローブ部101の端面があたっており、感圧素子110a〜110dの全てで接触が検出される場合が挙げられる。この場合、受光器113bは耳介の表面からの反射光を検出するため、図9の(b)と同様に受光器113bが検出する反射光強度は所定値以上となる。従って、ステップS805でNOと判定されることとなり、体温測定は開始されない。
【0054】
以上のような本実施形態の処理によれば、感圧素子110a〜110dと投受光センサ(投光器113a、受光器113b)からの信号により、プローブ部101が正しく外耳道に向けて配置されたことを検出した時点で体温計測が開始される。このため、ユーザは、プローブ部101を正しく外耳道に向けて配置した状態から更に測定開始スイッチを押すといった煩わしい操作から解放され、耳式体温計を用いた正しい測定を容易に行えるようになる。また、プローブを外耳道内に配置した後に体温測定を開始させるための測定開始ボタンを操作しなければならない場合、測定開始ボタンを操作する直前では正しい位置にプローブが配置されていたとしても、測定開始ボタンの操作により耳式体温計の配置にずれが生じてしまい、測定誤差を生じてしまう可能性があるが、上記実施形態によれば、そのような課題は解決される。
【0055】
但し、本発明は、上述したような測定開始を自動実行する構成に限られるものではない。たとえば、図8のステップS802〜S805によりプローブ部101と被検者の耳との接触状態が測定開始の条件を満足すると判定されている間は、ステップS806において測定開始スイッチの操作を受け付け可能な状態とするように制御しても良い。この場合、不図示の測定開始ボタンが耳式体温計100に実装されることになる。たとえば耳式体温計100の面111の部に、指の先端部分で押下可能なように測定開始ボタンを設けることが挙げられる。この場合、測定開始操作により測定誤差の要因となるプローブ部の移動が生じる可能性があるが、プローブ部101と耳穴との位置関係が適切な場合にのみ測定開始の操作を受け付けるので、正しい測定を行えることになる。なお、プローブ部101と耳との接触状態が不良であるために測定開始ボタンの操作を拒否した場合には、その旨をスピーカ204及び/或いはLED素子205を用いてユーザに通知するようにするのが好ましい。
【0056】
また、以上の説明から明らかなように、本実施形態に係る耳式体温計100では、装着部(102及び104)及び装着帯106、107を配し、測定者の指に装着できる構成とするとともに、装着時に測定者の指が接触する面111、112に指固定壁(規定部材)を設け、装着時の測定者の指の位置を規定する構成としたことで、耳式体温計100の測定者の指への安定装着を実現した結果、測定者が、被検者の体温測定に際して、両手を使うことができる。
【0057】
また、耳式体温計100を装着した場合であっても、測定者が指の第1関節を自由に折り曲げることができるよう固定部104の長さを規制したことにより、プローブ部101の耳腔内への挿入に際して、測定者の指の動きによりプローブ部101の先端の位置を微調整でき、非常に操作性が良い。
【0058】
更に、耳式体温計100を装着した際に、測定者の指の腹が、プローブ部101の支持位置と対向する位置で、面111に接触するように構成したことで、プローブ部101の先端が耳穴に接触する感覚を、測定者が指先で敏感に感じ取ることができる。
【0059】
この結果、耳式体温計において、目視しないでも、プローブの入らない、乳幼児、小児の耳穴の周囲にプローブ部の先端が接触するようにプロ−ブが正しく装着されていることを、感圧素子及び投受光センサからの信号に基づいて自動的に検出し体温測定が開始されるので、被検者の耳穴にプローブ部が適切に装着されたことを目視にて確認してから測定開始スイッチを操作する必要が無い。そのため、測定スイッチの操作に起因した耳式体温計の配置状態への影響を排除でき、耳式体温計が耳穴に対して適切に維持された状態で体温測定が行われることになる。特に、耳穴周辺とプローブ先端の均一な接触を感圧素子で検出するとともに、プローブ部が耳穴を正しく捉えているかを投受光センサにより検出するので、不適切な状態での体温計測の実行が防止され、より確実に正確な体温を測定することが可能となる。
【0060】
なお、上記説明では、プローブ部101がプローブ支持部102に対して略直交する方向に突出するものとしていたが、本発明はこれに限定されず、プローブ支持部102に対して斜めに突出するように構成してもよい。また、上記説明では、プローブ支持部102の面111及び固定部104の面112は平面としたが、本発明はこれに限定されず、中央がくぼんだ曲面により形成してもよい。この場合、指の形状に一致することとなり、耳式体温計100装着時の安定性がより向上することとなる。
【0061】
なお、以上の実施形態では、本発明のプローブ部及び体温測定開始制御を指装着タイプの耳式体温計を例示したが、これに限られるものではない。たとえば、図10に示すような、一般的な耳式体温計100’のプローブ部101の構成にも本発明を適用できることは明らかである。その場合、図11に示すように、プローブ部101は、その内部に筒状のライトガイド1001が設けられ、検出素子収納体500がプローブ部101の先端側ではなく耳式体温計の本体側に設けられる構成であってもよい。ここで、プローブ部101とライトガイド1001は同心状に配置されている。このような、ライトガイド1001を有する構成の場合、投光器113a、受光器113bはライトガイド1001の外壁とプローブ部101の内壁の間の空間に配置される。そして、好ましくは、投光器113aからの直接光またはプローブ部101内で生じた反射光が受光器113bに到達すことを防止するように、プローブ部101の内壁とライトガイド1001の外壁を接続する壁部材1002が設けられる。壁部材1002は、ライトガイド1001とプローブ部101との間の空間を2つに分割し、それぞれに投光器113aと受光器113bが配置される。なお、この場合、壁部材1002がライトガイド1001をプローブ部101内に固定するための部材として利用するようにしてもよい。
【0062】
以上のような構成のプローブ部101を用いた場合も、制御部601が図8で説明したような処理を行うことにより、体温測定を自動的に開始するように構成することができる。可能である。
【0063】
なお、センサの種類について:感圧素子110a〜110dを用いたがこれに限られるものではない。たとえば、静電容量型の素子を用いても良い。
【符号の説明】
【0064】
100:耳式体温計、101:プローブ部、102:プローブ支持部、103:指固定壁、104:固定部、105:指固定壁、106:装着帯、107:装着リング、202:電源スイッチ、500:検出素子収納体、110a〜110d:感圧素子、113a:投光器、113b:受光器、114,1002:壁部材、1001:ライトガイド
【技術分野】
【0001】
本発明は、耳式体温計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、耳腔内にプローブを挿入し、鼓膜またはその周辺の温度を検出することで、被検者の体温を測定する耳式体温計が実用化されている。
【0003】
耳式体温計は、一般に、環境温度を検出する温度検出素子(例えば、サーミスタ)と、耳腔内の温度測定部位(鼓膜またはその周辺)から放射される赤外線を検出する赤外線検出素子(例えば、冷接点と温接点とからなるサーモパイル)とを備えており、それぞれの検出素子の検出温度に基づいて、被検者の体温を算出している。
【0004】
つまり、耳式体温計の場合、熱源である温度測定部位から放射される赤外線を直接測定する方式を採っているため、他の方式の体温計(例えば、腋下棒状の体温計)と比較して、体温測定にかかる時間が短く、かつ高精度であるという特徴を有している。
【0005】
一方で、耳式体温計の場合、他の方式の体温計と比較して、再現性が低いという欠点がある。その原因の1つとして、耳式体温計の場合、温度測定部位に対して赤外線検出素子の向きがずれたことによる影響を受けやすいことが挙げられる。
【0006】
一般に耳式体温計は、プローブ部の先端に形成された開口部を介して赤外線検出素子に直接到達した赤外線を測定している。このため、赤外線検出素子の向きがずれると、開口部を介して赤外線検出素子に到達する赤外線を放射している領域(測定範囲)がずれ、当該領域(測定範囲)に占める、熱源である温度測定部位(鼓膜またはその周辺)の割合が低くなり、結果的に測定誤差が大きくなる。
【0007】
このため、体温測定に際しては、プローブ部の先端を耳穴に確実に挿入するか、あるいは、耳穴が小さく挿入できない場合にあっては、耳穴を塞ぐように、プローブ部の先端を密着させるといった適切な測定状態を実現することが不可欠である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−241362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
小児、乳幼児の場合、耳穴が小さくて、プロ-ブ先端を耳孔に挿入することができず、この場合、耳穴を覆うようにプロ−ブの先端を耳穴周辺に密着させて測定する必要がある。しかしながら、小児、乳幼児の場合、耳が小さく、プロ−ブの先端を耳孔にあてがうのが難しく、しかも、一定時間、静止させておくことが非常に困難であり、かつ、泣いてしまうので無理が利かない場合が多い。
【0010】
したがって、測定する場合、拘束、または頭部を支えながらの測定が必要となり、測定者が目視にてプロ-ブの適切な装着を確認しての測定が困難な場合が多く、測定誤差が生じる場合が多かった。
【0011】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、被検者の外耳道に対して適正にプローブ部を配置した状態での体温計測の実行を容易にする耳式体温計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明に係る耳式体温計は以下のような構成を備える。即ち、
筒状のプローブ部と、赤外線検出素子を収納した収納体とを有し、被検者の外耳道内の測定部位から放射され前記プローブ部の先端から取り込まれた赤外線を前記赤外線検出素子で検出して得られた信号から前記被検者の体温を測定する耳式体温計であって、
前記プローブ部の先端の端面または前記先端の側面に設けられ、それぞれが独立して外部物体との接触の有無を検出可能な複数の接触センサと、
前記プローブ部の内部に装着され、光を発生する投光器、前記投光器が発生した光の反射光を受光する受光器を有する投受光センサと、
前記複数の接触センサそれぞれからの接触の有無を示す信号と、前記投受光センサの前記受光器における反射光強度の信号とが所定の条件を満たす場合に、前記赤外線検出素子による体温の測定を開始可能とする制御部とを備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、測定中、静止されることができず拘束、または、支えが必要な小児、乳幼児の場合に、目視にて確認しなくとも、プロ-ブの先端が耳穴の周辺に密着していることを検出し、耳穴にブロ−ブ先端が正対した適切な装着になっていることを装置が自動判定し、測定が可能な耳式体温計が実現可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態に係る耳式体温計100の外観構成を示す図である。
【図2】耳式体温計100の正面図及び側面図である。
【図3】測定者が耳式体温計100を装着した様子を示す図である。
【図4】耳式体温計100を用いて体温測定を行う様子を示した図である。
【図5】実施形態によるプローブ部の構成を説明する図である。
【図6】耳式体温計100の検出素子収納体の構成を示す図である。
【図7】耳式体温計100全体の機能構成を示す図である。
【図8】耳式体温計100における体温測定処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】実施形態によるプローブ部の測定開始条件を説明する図である。
【図10】耳式体温計の外観構成を示す図である。
【図11】ライトガイドを有するプローブ部への適用を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0016】
[第1の実施形態]
1.耳式体温計の外観構成
はじめに、本発明の実施形態に係る耳式体温計100の外観構成について説明する。図1は、実施形態に係る耳式体温計100の外観構成を示す図である。
【0017】
図1において、101はプローブ部であり、外耳道内の温度測定部位(好ましくは鼓膜及び/又はその周辺)から放射される赤外線を検出するために耳腔内(外耳道)に挿入される。プローブ部101は、成人の外耳道内への挿入が可能となるよう、先端の外径寸法が約7mmの筒状形状となっている。また、このプローブ部101の先端面から側面にかけて、先端部の円周に対して90度の取り付け位相差を持って4つの感圧素子110a〜110dが設けられている(図2(a)を参照)。これら感圧素子110a〜110dは、物理的な接触を電気信号として検出できればその種類は問わないが、本実施形態では、外耳道に挿入される場合があるので被検者に違和感が発生しにくい弾性体である感圧ゴム(圧力で電気抵抗が変化するゴム)とした。また、感圧素子の個数も4つに限られるものではない。このように感圧素子110a〜110dは、プローブ部101の先端の端面または先端の側面に設けられ、それぞれが独立して外部物体との接触の有無を検出可能な複数の接触センサとして機能する。
【0018】
102はプローブ支持部であり、一方の面においてプローブ部101を支持する。また、プローブ部101を支持する面に対向する面111には、指固定壁103が設けられており、耳式体温計100を測定者の指に装着した際の、当該指のX軸方向(プラス方向及びマイナス方向)及びY軸方向(マイナス方向)の位置を規定している。
【0019】
なお、面111のY軸方向の長さは、概ね、測定者の指の先端から第1関節付近までの長さとなっており、面111上であって、プローブ部101を支持する支持位置に対向する位置に、測定者の指の腹(指紋がある部分。手指末節部の手掌面側の部分)が接触するよう構成されている。これにより、プローブ部101の先端を被検者の耳腔内に挿入した際に、プローブ部101の先端が耳壁に接触する感覚を、測定者は指先で敏感に感じ取ることが可能となる。
【0020】
104は固定部であり、耳式体温計100の全体を制御する制御回路を内蔵する。固定部104は、プローブ支持部102の面111と同一平面を形成する面112を有しており、耳式体温計100が測定者の指に装着された際に、測定者の指の第1関節よりも先端側の部分が接触するよう構成されている。なお、本実施形態における耳式体温計100では、固定部104のY軸方向の長さが、概ね、測定者の指の第1関節までの長さとなるように構成されているものとする。これにより、測定者は指を折り曲げる動作を自由に行うことができ、耳式体温計100を被検者の耳腔内に挿入した際に、指先で微小角度の調整を行うことができるようになる。つまり、プローブ部の先端の位置合わせを高精度に行うことが可能となる。なお、固定部104の面112には、指固定壁105が設けられており、耳式体温計100を測定者の指に装着した際の、当該指のX軸方向(プラス方向及びマイナス方向)の位置を規定している。
【0021】
また、固定部104の側面には、測定者の指に巻かれる装着帯106、108が設けられている。プローブ支持部102の面111及び固定部104の面112に測定者の指が載置された状態で、該測定者の指に装着帯106を巻き、その先端の装着リング107に装着帯108を通したうえで、X軸方向(マイナス方向)に引っ張る。このような手順により、測定者の指を耳式体温計100に安定して固定することができる。つまり、装着帯106、108、装着リング107は、耳式体温計100を測定者の指に装着するための装着機能を実現するものであり、当該装着機能により装着されるプローブ支持部102及び固定部104は、一体で、装着部としての役割を果たす。
【0022】
なお、装着帯106及び装着帯108にはそれぞれ、雄型の面ファスナーと雌型の面ファスナーとが備えられており(不図示)、装着帯108をX軸方向(マイナス方向)に引っ張った状態で、装着帯108を装着帯106に罫着固定できるように構成されている。
【0023】
2.耳式体温計100の正面及び側面の構成
次に、耳式体温計100の正面及び側面の構成について説明する。図2(a)は、耳式体温計100の正面図であり、図2(b)は、耳式体温計100の側面図である。
【0024】
図2(a)に示すように、固定部104の面112と対向する面211上(プローブ部101を支持する支持位置と同じ側の面)には、表示部201が設けられており、測定された被検者の体温を表示する。また、面211上には、電源スイッチ202が設けられており、押圧操作により耳式体温計100の電源のON/OFFを制御することができる。
【0025】
また、図2(b)に示すように、固定部104の側面には、スピーカ204が設けられており、体温測定が終了した場合、また、適切にプロ-ブが装着された場合、装着されていない場合等に、音声を出力する。205はLED素子であり、耳式体温計100の内部状態に対応して点灯が制御される。本実施形態では、電源スイッチ202の操作により電源が投入されるとまず赤色に点灯し、その後、体温測定の実行中は緑色に点灯し、体温測定を終えると再び赤色に点灯するものとする。
【0026】
3.耳式体温計100の装着状態
次に測定者が耳式体温計100を装着した状態について図3を参照しながら説明する。図3に示すように、測定者の指の先端部が指固定壁103に接触することで、測定者の指のY軸方向(マイナス方向)及びX軸方向(プラス方向及びマイナス方向)の位置が規定される。また、装着帯106の先端に設けられた装着リング107に装着帯108が通され、装着帯108がX軸方向(マイナス方向)に引っ張られることで、測定者の指の第1関節より先端側の部分が、固定部104に固定される。
【0027】
上述したように、耳式体温計100が測定者の指に装着された状態では、測定者は指の第1関節を折り曲げることができ、これにより、被検者の耳穴周辺へのプロ−ブ部101先端部の押し当て、および外耳道内へのプローブ部101の挿入に際して、測定者はプローブ部101の先端の位置を微調整することができる。また、測定者の指の腹が、プローブ支持部102の面の直上にあるので測定者は、プローブ部101の先端が耳壁に接触する感覚を、指先で敏感に感じ取ることができる。
【0028】
なお、図3に示すように、耳式体温計100は、測定者のいずれかの指(通常は、人指し指)に安定して固定されるため、測定者は、被検者の体温測定に際して、耳式体温計100が装着された指以外の指を、頭部の拘束などに自由に使うことができる。
【0029】
4.耳式体温計100による体温測定
次に測定者が耳式体温計100を装着して、被検者の体温測定を行う様子を図4を参照しながら説明する。図4に示すように、耳式体温計100を測定者の右手の人差し指に装着した場合、右手人差し指以外の指は自由に使うことができる。このため、測定者は、被検者の頭部を両手(左手のすべての指と、右手の人差し指以外の指と)で、押えることができる。
【0030】
このように、本実施形態に係る耳式体温計100によれば、測定に際して、被検者を両手で押えることができるため、プロ−ブ部の先端が耳穴に正しく正対させた状態(被検者を静止させた状態)での体温測定が可能となり、測定誤差の発生を低減させることが可能となる。
【0031】
5.プローブ部101の構成
次にプローブ部101の構成について説明する。図5(a)〜(c)は実施形態による耳式体温計100におけるプローブ部101の構造を模式的に示す図であって、図5(a)は、プローブ部101を開口側(先端部側)からみた様子を示す図である。また、図5(b)は図5(a)のAA断面を示す図、図5(c)は図5(a)のBB断面を示す図である。プローブ部101は先端に開口部が形成された中空筒状体により形成されている。プローブ部101の開口部近傍には、検出素子収納体500が固定されている。検出素子収納体500は、冷接点温度を検出する温度検出素子(例えば、サーミスタ)と、耳腔内の温度測定部位(鼓膜またはその周辺)から放射される赤外線を検出する赤外線検出素子(例えば、冷接点と温接点とからなるサーモパイル)とを収納する。
【0032】
図6は、検出素子収納体500の一部を破断して示した外観斜視図である。図6に示すように、検出素子収納体500は、取付け基部材503を備え、取付け基部材503上には、冷接点温度を検出する温度検出素子であるサーミスタ501と、耳腔内の温度測定部位から放射される赤外線を検出する赤外線検出素子502とが固定されている。
【0033】
サーミスタ501は、サーモパイルの基準となる冷接点温度である絶対温度を検出できるように調整されている。また、雰囲気温度がサーミスタ501に伝達されるよう、取付け基部材503はアルミ材等の良熱伝導体により構成されており、かつ、サーミスタ501は、取付け面の表面積が大きくなるように取付け基部材503に固定されている。更に、サーミスタ501には、電極リード507が取付けられており、検出温度は電極リード507を介して出力される。
【0034】
一方、赤外線IRを検出する赤外線検出素子502は、相対温度を検出するように調整されている。本実施形態に係る耳式体温計100では、赤外線検出素子502として、熱電対型(サーモパイル型)の検出素子を用いている。このため、図6に示すように、取付け基部材503の台座503b上に固定されるウエハ担体502c上には、花弁状に形成された温接点502aと、冷接点502bとが形成される。
【0035】
各温接点502aと冷接点502bとは異種金属から形成され、かつ直列に接続されており、取付け基部材503に対して絶縁状態で固定された電極リード508に向かってリード線が接続されている。なお、温接点502aで囲まれる範囲Hは、赤外線を吸収しやすくするために黒色塗装されている。このような構成のもと、赤外線検出素子502では、各接点間において発生した起電力に基づいて、相対温度の検出を行う。
【0036】
そして、耳式体温計100では、被検者の体温を、温度検出素子により検出された検出温度に、赤外線検出素子により検出された検出温度を加えることで算出する。なお、この算出処理の詳細については、例えば特開平11−123179号公報に詳しく記載されているので、ここでの詳細な説明は省略する。
【0037】
更に、検出素子収納体500は、2つの検出素子を囲い込むように形成された筒状の容器部材505を備え、容器部材505は、外周面505aと、孔504を有する天井面とから構成される。容器部材505も取付け基部材503と同様にアルミ材、ステンレス材等の良熱伝導体から形成されており、外気温度がサーミスタ501に伝達されやすい構成となっている。また、孔504には赤外線を透過させるセラミック素材からなる窓部材506が固定されている。
【0038】
なお、図6に示す検出素子収納体500の場合、取付け基部材503にはその縁部から半径方向に向かって外側鍔部503aが延設されており、これにより検出素子収納体500は、プローブ部101の内壁に保持されることとなる。なお、検出素子収納体500は、不図示の装着部材により、プローブ部101の内壁に3点で固定されるものとする。外皮の熱が検出素子収納体500に伝わらないようにするためである。
【0039】
図5に戻り、プローブ部101の内部には、投光器113aと受光器113bとが設けられており、これらは投受光センサとして機能する。投光器113aと受光器113bとは、プローブ部101の先端側に配置された検出素子収納体500よりも当該先端部より遠い位置に配置されている。投光器113aは近赤外光を発生するLEDを備え、プローブ部101の内壁と検出素子収納体500との間から近赤外光をプローブ部101の先端を通して外部へ照射する。なお、投光器113aは近赤外光を発光するものとしたが、投受光センサにおいて用いる光の波長については特に限定されるものでない。受光器113bは、フォトトランジスタ或いはフォトダイオードを具備し、プローブ部101の内壁と検出素子収納体500との間からプローブ部101の先端を介して入射した反射光(投光器113aが発した近赤外光の反射光)を受光するように設けられている。制御部601は、受光器113bにおける反射光の検出強度に基づいて当該プローブ部101が正しく耳の穴を捕捉しているか否かを判定する(詳細は後述する)。
【0040】
更に、本実施形態のプローブ部101の内部には、投光器113aからの直接光またはプローブ部101の内部で生じた反射光が受光器113bに到達すことを防止するように、壁部材114が設けられている。図5に示すように、壁部材114は、プローブ部101の内壁と接続されて、プローブ部101の内部空間を二分割し、分割された空間のそれぞれに投光器113a、受光器113bが存在するようにしている。なお、上述したように検出素子収納体500は外皮の熱がプローブ部101を介して伝わらないようにプローブ部101の内壁に3点で固定されるのが好ましい。しかしながら、壁部材114が検出素子収納体500をプローブ部101の内部に固定する固定部材の一部としての機能を兼ねるようにしてもよい。たとえば、壁部材114により検出素子収納体500を支持するようにすれば、プローブ部101内の構造を簡易化することができる。
【0041】
なお、図5では、投光器113aと受光器113bは、プローブ部101の軸方向に対して直交する横断面の中心を通る直線上において当該中心を挟むように配置されている様子を示したが、これに限られるものではない。また、壁部材114の、プローブ部101の軸方向への長さは図示に限られるものではない。また、壁部材による分割数や投受光センサの配置は上述の実施形態に限られるものではない。たとえば、プローブ部101内の空間を四分割して、一つの空間に投光器を配置し、該一つの空間に対向する位置にある空間に受光器を配置し、投光器、受光器の隣接しない空間に存在するようにしても良い。
【0042】
6.耳式体温計100の機能構成
次に耳式体温計100の機能構成について図7を用いて説明する。図7は、本実施形態による耳式体温計100の機能構成を示すブロック図である。なお、図7に示す構成または部品のうち、既に説明済みの構成または部品については同様の参照番号を附すこととし、ここでは詳細な説明は省略する。
【0043】
図7に示すように、プローブ部101の検出素子収納体500に内蔵されたサーミスタ501は、電極リード507を介して実装基板上の検出部606に接続されている。検出部606はサーミスタ501の抵抗変化を電圧変化として検出し、サーミスタ501周囲の温度を示す電気信号を生成する。検出部606で生成された電気信号は、制御部601に内蔵されたA/Dコンバータ6001でデジタル信号に変換され、制御部601にて用いられる。また、赤外線IRを検出する赤外線検出素子502は、電極リード508を介して実装基板上の増幅部605に接続される。増幅部605は、赤外線検出素子502からの検出信号を増幅する。増幅部605で増幅された検出信号は、制御部601に内蔵されたA/Dコンバータ6002でデジタル信号に変換され、制御部601にて用いられる。感圧素子110a〜110dは検出部611に接続されている。検出部611は、感圧素子110a〜110dにおける抵抗変化を電圧変化として検出し、電気信号を生成する。検出部611で生成された電気信号は、制御部601に内蔵のA/Dコンバ−タ6003にてデジタル信号に変換された後、制御部601にて用いられる。また、投光器113aは制御部601の信号により駆動部609により点灯駆動される。投光器113aから発生した光は受光器113bにて受光される。受光器113bは受光した光の強度に応じた電気信号を生成する。受光器113bで生成された電気信号は制御部601に内蔵のA/Dコンバ−タ6004にてデジタル信号に変換された後、制御部601にて用いられる。
【0044】
実装基板上に配された制御部601には、CPU602と記憶素子であるRAM603及びROM604とが配されており、サーミスタ501により検出された検出温度と、赤外線検出素子502により検出された検出温度とに基づいて、被検者の体温の算出を行う。
【0045】
また、制御部601には、LED素子205と、表示部201と、スピーカ204と、電源スイッチ202とがそれぞれ接続されている。制御部601は、感圧素子110a〜110dからの検出信号及び受光器113bからの反射光強度信号に基づいて測定開始か否かを判断し、測定開始と判断されると自動的に体温測定を開始する。表示部201は、制御部601において算出された被検者の体温を表示する。LED素子205は、電源投入により赤色に点灯し、体温測定が開始されると緑色に点灯し、被検者の体温の測定が完了すると、再び赤色に点灯する。スピーカ204は、被検者の体温の測定が完了した場合に、また、4つの感圧素子110a〜110dの抵抗変化が同じでない場合、または受光器113bの光量が規定値より大きい場合といったような、感圧素子と受光器によって検出される信号が体温の測定開始条件を満足しない場合に音声を出力する。なお、制御部601は、電源スイッチ202が押圧操作されること、により、ボタン電池608(電源部)からの電力供給を受けて動作するよう構成されているものとする。
【0046】
7.体温測定処理の流れ
次に耳式体温計100における体温測定処理の流れについて説明する。図8は、耳式体温計100における体温測定処理の流れ(ROM604に格納されているプログラムの処理手順)を示すフローチャートである。
【0047】
電源スイッチ202が押圧操作されると、まず、制御部601は各種回路の初期化処理を実行する(ステップS801)。次いで、ステップS802において、制御部601は、感圧素子110a〜110dのそれぞれが外部物体と均一に接触しているか否かをチェックする。すなわち、先に説明したように、本実施形態では感圧素子110a〜110dとして感圧ゴムを利用するとしているので、制御部601は、圧力無しのときの抵抗値に対して予め設定した閾値以上の抵抗変化があった場合に接触ありと判定し、抵抗変化が閾値未満の場合には接触無しと判定することとなる。なお、ステップS803においては、全ての感圧素子で一定値以上抵抗変化を発生したか否かを検出するようにしたが、これに限られるものではない。4つの感圧素子110a〜110dにおける抵抗変化が所定範囲に収まる場合に、感圧素子110a〜110dのそれぞれが外部物体と均一に接触していると判定するようにしても良い。
【0048】
感圧素子110a〜110dの全てにおいて接触ありと判定されると処理はステップS803からステップS804へ進む。他の場合は、処理はステップS803からステップS802に戻る。ステップS804において、制御部601は、受光器113bからの反射光強度信号を取得し、反射光強度を検出する。そして、ステップS805において、制御部601は、この反射光強度と所定値とを比較する。反射光強度が所定値未満であれば、制御部601はプローブ部101が耳穴を捉えていると判断し、処理をステップS805からステップS806へ進める。そうでなければ(反射光強度が所定値以上の場合)、処理をステップS805からステップS802へ戻す。なお、図8のフローチャートでは感圧素子からの信号が条件を満たさない場合は受光器113bの検出信号について処理を行わないようにしているが、これに限られるものではない。感圧素子110a〜110bからの信号の検出、受光器113bからの信号の検出を並行して行っても良い。また、上述したように、4つの感圧素子110a〜110dの抵抗変化が同じでない場合、または受光器113bの光量が規定値より大きい場合には、上述のようにスピーカ203から音声を出力する。この音声出力は、たとえば、感圧素子110bの信号が小さい場合には「左側の接触が不十分です」といったような出力とすることにより、ユーザがどのようにプローブ部101を動かしたらよいのかをガイダンスするようにしてもよい。
【0049】
ステップS806において、制御部601は、体温測定を実行する。すなわち、制御部601は、サーミスタ501及び赤外線検出素子502において検出された検出温度を取得し、取得された検出温度に基づいて被検者の体温を算出する。このとき、制御部601は、被検者の体温測定が実行中であることを報知するために、LED素子205を緑色に点灯させる。また、このとき、投光器113aによる近赤外光の発光を停止させるようにしても良い。そして、ステップS807において、制御部601はその算出した被検者の体温を表示部201に表示する。このとき、制御部601において被検者の体温を算出する処理が完了したことを報知するために、LED素子205を赤色に点灯させる。また、スピーカ204より音声を出力し、体温測定処理を終了する。
【0050】
なお、上述した処理のステップS803、S805において、制御部601は、感圧素子110a〜110d及び受光器113bからの信号に基づいて、プローブ部101が正しく耳穴を捉えているかどうかを判断している。たとえば図9(a)のような状態は、外耳道にプローブ部101が適正に配置された状態であり、感圧素子110a〜110dのすべてで接触が検出されるとともに、受光器113bで検出される反射光の強度は所定値よりも小さくなる。そのため、ステップS803、S805でYESと判定され、体温測定が自動的に開始される。なお、幼児のように被検体の外耳道の径が小さいとプローブ部101が外耳道に入らないが、プローブ部101の先端部端面から側面に延びるように感圧素子110a〜110dが配置されているため、プローブ部101が外耳道に入らない状態でも、端面の押圧により外耳道周囲に適切にプローブ部101が押し当てられていることを検出できる。
【0051】
これに対して、図9(b)は、外耳道に対してプローブ部101が斜めに配置されて不適切に配置された状態の一例である。この状態では、感圧素子110a〜110dの全てで接触が検出されるものの、外耳道の表面からの反射光を受光器113bが受光するため、受光器113bで検出される反射光の強度が所定値以上となる。そのため、S805でNOと判定され、体温測定は開始されない。
【0052】
同様に図9(c)もプローブ部101が外耳道に対して不適切に配置された状態の一例である。図9(c)では、プローブ部101の先端の一部が外耳道から外れており、感圧素子110a〜110dのうち接触を検出できない素子が存在する。そのため、S803でNOと判定され、体温測定は開始されない。
【0053】
また、図9(d)では、プローブ部101の先端の4つの感圧素子110a〜110dの全てにおいて接触が検出されるが、プローブ部101の全体が外耳道から外れている。例えば、耳介等にプローブ部101の端面があたっており、感圧素子110a〜110dの全てで接触が検出される場合が挙げられる。この場合、受光器113bは耳介の表面からの反射光を検出するため、図9の(b)と同様に受光器113bが検出する反射光強度は所定値以上となる。従って、ステップS805でNOと判定されることとなり、体温測定は開始されない。
【0054】
以上のような本実施形態の処理によれば、感圧素子110a〜110dと投受光センサ(投光器113a、受光器113b)からの信号により、プローブ部101が正しく外耳道に向けて配置されたことを検出した時点で体温計測が開始される。このため、ユーザは、プローブ部101を正しく外耳道に向けて配置した状態から更に測定開始スイッチを押すといった煩わしい操作から解放され、耳式体温計を用いた正しい測定を容易に行えるようになる。また、プローブを外耳道内に配置した後に体温測定を開始させるための測定開始ボタンを操作しなければならない場合、測定開始ボタンを操作する直前では正しい位置にプローブが配置されていたとしても、測定開始ボタンの操作により耳式体温計の配置にずれが生じてしまい、測定誤差を生じてしまう可能性があるが、上記実施形態によれば、そのような課題は解決される。
【0055】
但し、本発明は、上述したような測定開始を自動実行する構成に限られるものではない。たとえば、図8のステップS802〜S805によりプローブ部101と被検者の耳との接触状態が測定開始の条件を満足すると判定されている間は、ステップS806において測定開始スイッチの操作を受け付け可能な状態とするように制御しても良い。この場合、不図示の測定開始ボタンが耳式体温計100に実装されることになる。たとえば耳式体温計100の面111の部に、指の先端部分で押下可能なように測定開始ボタンを設けることが挙げられる。この場合、測定開始操作により測定誤差の要因となるプローブ部の移動が生じる可能性があるが、プローブ部101と耳穴との位置関係が適切な場合にのみ測定開始の操作を受け付けるので、正しい測定を行えることになる。なお、プローブ部101と耳との接触状態が不良であるために測定開始ボタンの操作を拒否した場合には、その旨をスピーカ204及び/或いはLED素子205を用いてユーザに通知するようにするのが好ましい。
【0056】
また、以上の説明から明らかなように、本実施形態に係る耳式体温計100では、装着部(102及び104)及び装着帯106、107を配し、測定者の指に装着できる構成とするとともに、装着時に測定者の指が接触する面111、112に指固定壁(規定部材)を設け、装着時の測定者の指の位置を規定する構成としたことで、耳式体温計100の測定者の指への安定装着を実現した結果、測定者が、被検者の体温測定に際して、両手を使うことができる。
【0057】
また、耳式体温計100を装着した場合であっても、測定者が指の第1関節を自由に折り曲げることができるよう固定部104の長さを規制したことにより、プローブ部101の耳腔内への挿入に際して、測定者の指の動きによりプローブ部101の先端の位置を微調整でき、非常に操作性が良い。
【0058】
更に、耳式体温計100を装着した際に、測定者の指の腹が、プローブ部101の支持位置と対向する位置で、面111に接触するように構成したことで、プローブ部101の先端が耳穴に接触する感覚を、測定者が指先で敏感に感じ取ることができる。
【0059】
この結果、耳式体温計において、目視しないでも、プローブの入らない、乳幼児、小児の耳穴の周囲にプローブ部の先端が接触するようにプロ−ブが正しく装着されていることを、感圧素子及び投受光センサからの信号に基づいて自動的に検出し体温測定が開始されるので、被検者の耳穴にプローブ部が適切に装着されたことを目視にて確認してから測定開始スイッチを操作する必要が無い。そのため、測定スイッチの操作に起因した耳式体温計の配置状態への影響を排除でき、耳式体温計が耳穴に対して適切に維持された状態で体温測定が行われることになる。特に、耳穴周辺とプローブ先端の均一な接触を感圧素子で検出するとともに、プローブ部が耳穴を正しく捉えているかを投受光センサにより検出するので、不適切な状態での体温計測の実行が防止され、より確実に正確な体温を測定することが可能となる。
【0060】
なお、上記説明では、プローブ部101がプローブ支持部102に対して略直交する方向に突出するものとしていたが、本発明はこれに限定されず、プローブ支持部102に対して斜めに突出するように構成してもよい。また、上記説明では、プローブ支持部102の面111及び固定部104の面112は平面としたが、本発明はこれに限定されず、中央がくぼんだ曲面により形成してもよい。この場合、指の形状に一致することとなり、耳式体温計100装着時の安定性がより向上することとなる。
【0061】
なお、以上の実施形態では、本発明のプローブ部及び体温測定開始制御を指装着タイプの耳式体温計を例示したが、これに限られるものではない。たとえば、図10に示すような、一般的な耳式体温計100’のプローブ部101の構成にも本発明を適用できることは明らかである。その場合、図11に示すように、プローブ部101は、その内部に筒状のライトガイド1001が設けられ、検出素子収納体500がプローブ部101の先端側ではなく耳式体温計の本体側に設けられる構成であってもよい。ここで、プローブ部101とライトガイド1001は同心状に配置されている。このような、ライトガイド1001を有する構成の場合、投光器113a、受光器113bはライトガイド1001の外壁とプローブ部101の内壁の間の空間に配置される。そして、好ましくは、投光器113aからの直接光またはプローブ部101内で生じた反射光が受光器113bに到達すことを防止するように、プローブ部101の内壁とライトガイド1001の外壁を接続する壁部材1002が設けられる。壁部材1002は、ライトガイド1001とプローブ部101との間の空間を2つに分割し、それぞれに投光器113aと受光器113bが配置される。なお、この場合、壁部材1002がライトガイド1001をプローブ部101内に固定するための部材として利用するようにしてもよい。
【0062】
以上のような構成のプローブ部101を用いた場合も、制御部601が図8で説明したような処理を行うことにより、体温測定を自動的に開始するように構成することができる。可能である。
【0063】
なお、センサの種類について:感圧素子110a〜110dを用いたがこれに限られるものではない。たとえば、静電容量型の素子を用いても良い。
【符号の説明】
【0064】
100:耳式体温計、101:プローブ部、102:プローブ支持部、103:指固定壁、104:固定部、105:指固定壁、106:装着帯、107:装着リング、202:電源スイッチ、500:検出素子収納体、110a〜110d:感圧素子、113a:投光器、113b:受光器、114,1002:壁部材、1001:ライトガイド
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のプローブ部と、赤外線検出素子を収納した収納体とを有し、被検者の外耳道内の測定部位から放射され前記プローブ部の先端から取り込まれた赤外線を前記赤外線検出素子で検出して得られた信号から前記被検者の体温を測定する耳式体温計であって、
前記プローブ部の先端の端面または前記先端の側面に設けられ、それぞれが独立して外部物体との接触の有無を検出可能な複数の接触センサと、
前記プローブ部の内部に装着され、光を発生する投光器、前記投光器が発生した光の反射光を受光する受光器を有する投受光センサと、
前記複数の接触センサそれぞれからの接触の有無を示す信号と、前記投受光センサの前記受光器における反射光強度の信号とが所定の条件を満たす場合に、前記赤外線検出素子による体温の測定を開始可能とする制御部とを備えることを特徴とする耳式体温計。
【請求項2】
前記収納体は前記プローブ部の前記先端の側に配置され、前記投光器と前記受光器は前記収納体よりも前記先端から遠い位置に配置され、
前記投光器は前記プローブ部の内壁と前記収納体との間から光を前記プローブ部の先端を通して外部へ照射し、前記受光器は前記内壁と前記収納体との間から前記プローブ部の先端を介して入射した反射光を受光するように設けられていることを特徴とする請求項1に記載の耳式体温計。
【請求項3】
前記投光器からの直接光または前記プローブ部内で生じた反射光が前記受光器に到達することを防止するように前記プローブ部の空間を分割する壁部材を更に備え、前記プローブ部の前記壁部材により分割された一つの空間に前記投光器が、前記壁部材により分割された前記一つの空間とは別の空間に前記受光器が配置されることを特徴とする請求項2に記載の耳式体温計。
【請求項4】
前記壁部材は、前記収納体を前記プローブ部内で支持する支持部としての機能を有することを特徴とする請求項3に記載の耳式体温計。
【請求項5】
前記プローブ部の内部に、前記プローブ部と同心状に配置された筒状のライトガイドを更に有し、
前記投光器と前記受光器は、前記ライトガイドの外壁と前記プローブ部の内壁との間に配置されることを特徴とする請求項1に記載の耳式体温計。
【請求項6】
前記投光器からの直接光または前記プローブ部内で生じた反射光が前記受光器に到達すことを防止するように、前記プローブ部の内壁と前記ライトガイドの外壁との間の空間を分割する壁部材を更に備え、前記壁部材により分割された一つの空間に前記投光器が、前記壁部材により分割された前記一つの空間とは別の空間に前記受光器が配置されることを特徴とする請求項5に記載の耳式体温計。
【請求項7】
前記壁部材は、前記ライトガイドを前記プローブ部内で支持するための支持部としての機能を有することを特徴とする請求項6に記載の耳式体温計。
【請求項8】
前記プローブ部及び前記収納体を含む体温計の本体を、測定者の指先に前記プローブ部が位置するように、当該測定者の指に装着可能にする装着手段を更に備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の耳式体温計。
【請求項9】
前記制御部は、前記複数の接触センサそれぞれからの接触の有無を示す信号と、前記投受光センサの前記受光器における反射光強度の信号とが前記所定の条件を満たす場合に、前記赤外線検出素子による体温の測定を自動的に開始することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の耳式体温計。
【請求項1】
筒状のプローブ部と、赤外線検出素子を収納した収納体とを有し、被検者の外耳道内の測定部位から放射され前記プローブ部の先端から取り込まれた赤外線を前記赤外線検出素子で検出して得られた信号から前記被検者の体温を測定する耳式体温計であって、
前記プローブ部の先端の端面または前記先端の側面に設けられ、それぞれが独立して外部物体との接触の有無を検出可能な複数の接触センサと、
前記プローブ部の内部に装着され、光を発生する投光器、前記投光器が発生した光の反射光を受光する受光器を有する投受光センサと、
前記複数の接触センサそれぞれからの接触の有無を示す信号と、前記投受光センサの前記受光器における反射光強度の信号とが所定の条件を満たす場合に、前記赤外線検出素子による体温の測定を開始可能とする制御部とを備えることを特徴とする耳式体温計。
【請求項2】
前記収納体は前記プローブ部の前記先端の側に配置され、前記投光器と前記受光器は前記収納体よりも前記先端から遠い位置に配置され、
前記投光器は前記プローブ部の内壁と前記収納体との間から光を前記プローブ部の先端を通して外部へ照射し、前記受光器は前記内壁と前記収納体との間から前記プローブ部の先端を介して入射した反射光を受光するように設けられていることを特徴とする請求項1に記載の耳式体温計。
【請求項3】
前記投光器からの直接光または前記プローブ部内で生じた反射光が前記受光器に到達することを防止するように前記プローブ部の空間を分割する壁部材を更に備え、前記プローブ部の前記壁部材により分割された一つの空間に前記投光器が、前記壁部材により分割された前記一つの空間とは別の空間に前記受光器が配置されることを特徴とする請求項2に記載の耳式体温計。
【請求項4】
前記壁部材は、前記収納体を前記プローブ部内で支持する支持部としての機能を有することを特徴とする請求項3に記載の耳式体温計。
【請求項5】
前記プローブ部の内部に、前記プローブ部と同心状に配置された筒状のライトガイドを更に有し、
前記投光器と前記受光器は、前記ライトガイドの外壁と前記プローブ部の内壁との間に配置されることを特徴とする請求項1に記載の耳式体温計。
【請求項6】
前記投光器からの直接光または前記プローブ部内で生じた反射光が前記受光器に到達すことを防止するように、前記プローブ部の内壁と前記ライトガイドの外壁との間の空間を分割する壁部材を更に備え、前記壁部材により分割された一つの空間に前記投光器が、前記壁部材により分割された前記一つの空間とは別の空間に前記受光器が配置されることを特徴とする請求項5に記載の耳式体温計。
【請求項7】
前記壁部材は、前記ライトガイドを前記プローブ部内で支持するための支持部としての機能を有することを特徴とする請求項6に記載の耳式体温計。
【請求項8】
前記プローブ部及び前記収納体を含む体温計の本体を、測定者の指先に前記プローブ部が位置するように、当該測定者の指に装着可能にする装着手段を更に備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の耳式体温計。
【請求項9】
前記制御部は、前記複数の接触センサそれぞれからの接触の有無を示す信号と、前記投受光センサの前記受光器における反射光強度の信号とが前記所定の条件を満たす場合に、前記赤外線検出素子による体温の測定を自動的に開始することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の耳式体温計。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−73129(P2012−73129A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218493(P2010−218493)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
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