説明

耳鳴を抑制する装置および方法

対象の耳鳴を完全にまたは部分的に抑制する耳鳴抑制音を対象に知覚させる、ヒトまたは動物の対象の耳鳴を治療するための方法および装置。この方法の幾つかの実施形態において、対象は耳鳴と同じように感知する音を選択し、次いでその音(または対象が知覚した耳鳴に対して補完的な類似音)は、耳鳴抑制音として使用される。他の実施形態において、耳鳴抑制は、相当数の対象者の耳鳴を抑制するために事前に決定された音であってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物医学の装置および方法に一般に関する。より詳細には、本発明は耳鳴の治療に使用可能な装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願
本願は、米国特許仮出願第60/992,638号明細書(出願日:2007年12月5日)の優先権の利益を主張し、その全内容は引用によって本明細書に明示的に援用される。
【0003】
政府支援について
本発明は、米国政府支援の下、国立衛生研究所(National Institutes of Health)の助成番号RO1−DC−002267の少なくとも一部としてなされた。米国政府は、本発明に権利を有し得る。
【0004】
耳鳴は、対応する外部音が存在しないときの音の知覚である。耳鳴は、損傷、感染、または大きな音を繰返し聴くことによって生じる場合があり、一方の耳または両方の耳で生じ得る。耳鳴は高ピッチで鳴り響く音として知られているが、ピッチおよび周波数が変動する内部ノイズである。知覚される音は、静かな背景ノイズから、すべての外部音をかき消すほど十分な大きさの信号までに及び得る。
【0005】
耳鳴は、約5千万人のアメリカ人、または一般人口の約15%に影響している。耳鳴を改善するための効果的な方法はない。従来技術には、耳鳴をマスクしようとする装置および方法が含まれている。
【0006】
ジェネラルヒアリング(General Hearing)社および他の数社によって、音を生成可能なイヤホン(earpiece)が製造されている。マスキング方法は、軽度の耳鳴を患う人々には効果を発揮するが、耳鳴をマスクするためには外部音が耳鳴よりも大きくなければならないため、大きな耳鳴を患う人々にはあまり効果がない。
【0007】
幾つかの治療法(たとえば、薬剤、手術、心理療法、およびマスキング)があるが、いずれも確実な効果はなく、重大な副作用を有し得る。本明細書においては、耳鳴を抑制するために音を使用することを提案する。従来のマスキング方法は、通常耳鳴よりも大きく、且つピッチの質が耳鳴と同様の外部音を使用するが、本願発明者等は、この従来のマスキング技術とは異なり、耳鳴よりも弱く、且つピッチの質が耳鳴とは異なる最適な音を使用することを提案する。従来のマスキング装置と本願の抑制方法とのもう1つの重大な相違点は、マスキング効果は瞬間的であるが、本願の抑制方法は、展開し衰退するのに通常時間がかかることである。音はオーディオ装置(たとえば、エムピースリー(MP3)プレイヤ、アイポッド(iPod)(登録商標)装置、または他の耳装置によって音響的に伝達されてもよく、一時的な埋込または永久埋込によって電気的に伝達されてもよい。
【0008】
特に、疾病または併存疾患向けの様々な薬物治療が、耳鳴の治療に使用されている。耳鳴は、不安神経症および鬱病に関係していることが多い。状態が精神的苦痛をもたらすものか否か、あるいは耳鳴が精神的苦痛のある人々により広くみられるか否かが議論されている。三環系抗鬱薬は、耳鳴を直接治療するよりも、内在する精神的問題を治療することが示唆されている。幾つかの研究によると、リドカインの静脈(IV)投与によって、耳鳴の激しさが有意に低下することが実証されているが、経口の類似物(たとえば、トカイ
ニド)による効果は再現されていない。リドカインの静脈投与は、半減期が短く、重大な副作用があるため実用的な方法ではない。他の薬剤(たとえば、カルバマゼピン、アルプラゾラム、バクロフェン、ベタヒスチン、およびシンナリジン)も、考えられる耳鳴治療として研究されているが、結果に一貫性は見られない。選択的セロトニン再摂取阻害剤は、プラセボ対照試験における利点がない(またはほとんどない)ことが示されている。
【0009】
従来技術の耳鳴マスキング装置は、継続的な低レベルのノイズまたはトーンを耳に伝達し、その結果、耳鳴はカモフラージュされる。耳鳴の重症度を低下させるための装置の使用が示されている。ニューロモニクス耳鳴治療法(The Neuromonics tinnitus treatment)は、カウンセリングの構造的プログラムと組み合わせた音響刺激の新しい方法である。装置出力は、それぞれの個人の聴覚プロファイルを構成する広帯域刺激である。この治療法によって患者の生活の質が総じて改善されることが、3つの臨床試験で報告されている。聴力損失がある耳鳴患者の第一線治療として、通常、補聴器が試みられる。補聴器はまた、成功率を上げる音源発生装置と組み合わせて使用されてもよい。
【0010】
1980年代の終わりに、耳鳴順応療法(tinnitus retraining therapy(TRT))と呼ばれる新しい治療的なアプローチの開発を引き出す耳鳴の神経生理学的モデルが提案された。TRTは、患者の患側の耳に低レベルで一定のホワイトノイズを伝達することと共にカウンセリングからなる。通常、音は耳鳴に対する患者の聴覚系の慣れとなってしまうため、自身の状態についての患者の認知力は低下する。成功率は、様々な患者間で異なる。TRTは、耳鳴を効果的に治療するのに1年〜2年の治療を要する。
【0011】
過去の研究によると、両側で重度の感覚神経的な聴覚損失がある患者の28%〜79%において、耳鳴を弱めるのに蝸牛移植が効果的であったことが認められている。蝸牛移植後、患者の9%において耳鳴の悪化が報告されている。耳鳴が減少するという蝸牛移植の成功によって、他の形態の電気刺激(たとえば、蝸牛の鼓室刺激、内耳神経刺激、および聴覚皮質の経頭蓋磁気刺激)がもたらされた。最近の研究によると、蝸牛移植の使用者の3人のうち1人、および鼓室刺激対象の11人のうち5人(45%)で、高速パルス列によって刺激された場合、耳鳴が実質的または完全に軽減されたことが示されている。その他、外的な知覚は閾値以下で示されるか、あるいは短時間の間閾値未満にまで低下した。結果的に耳鳴と外的刺激のいずれも知覚されないため、これは耳鳴患者にとって理想的な状況である。文献から鑑みると、患者の67%において、一側性の蝸牛移植を使用すると、反対側の耳鳴の低下を伴うことが示唆されている。蝸牛移植の効果は、新たに知覚される周囲音によって、または聴覚神経の電気刺激によって耳鳴をマスキングしたことによることが実証されている。耳鳴の複雑さに内在するメカニズムは不明であり、この状態の解決策は見出しにくい。主流となっている理論は、一般に、自覚的な耳鳴(明確な器質的原因がなく、患者にのみ知覚可能な音として定義されるもの)の中枢源または末梢源について指摘している。現実的には、この両方の組み合わせに関係することが最も多く、末梢の損傷および病変によって中枢神経系における機能上および構造上の変化がもたらされる。
【0012】
ホッホメア(Hochmair)らによる特許文献1には、蝸牛移植装置と、耳鳴治療を伝達するために使用可能な他の埋込装置とについて記載されている。特許文献1の全内容は、引用によって本明細書に明示的に援用される。
【0013】
コーイ(Choy)による特許文献2には、単一周波数の耳鳴の患者を治療する装置およびプロセスが記載されている。この装置およびプロセスにおいては、単一周波数の耳鳴の患者が、自身の耳鳴音のトーンと大きさの両方に整合するように主観的に選択した外部生成音を用いることによって、位相キャンセル効果が達成されることが表されている。こ
の主観的に選択した外部生成音波は、トーンと大きさにおいて患者の耳鳴音に整合するものであるが、(i)合計で少なくとも180度になる複数の位相シフトシーケンス工程によって連続的にシフトされるか、あるいは(ii)代替として、単一工程動作において、患者定義の耳鳴音との打消関係にある、すなわち180度の位相不一致の相互関係に、直接的に位相シフトされる。位相シフトされたトーンまたは直接的に位相シフトされたトーンのシーケンス工程は、患者の耳鳴を打消す(または軽減する)ために耳鳴患者に適用される。特許文献2の全内容は、引用によって本明細書に明示的に援用される。
【0014】
コーイによる特許文献2に記載されるような位相キャンセル技術は、耳鳴を治療する上で最も効果的ではない場合がある。低周波数の耳鳴のケースも幾つかあるが、ほとんどの耳鳴は高周波数(>1000Hz)である。しかし、たとえ患者の耳鳴が低周波数であっても、知覚される耳鳴音はアコースティック音ではなくて神経インパルスであり、位相反転によって物理的にまたは外部から打ち消すことはできないため、位相キャンセル技術は効果がない(または最適にはならない)場合がある。生理学的には、蝸牛においてすべての音が半波長整流され、神経系においてデジタル的なパルス(活動電位という)になる。位相不一致の外部音は、内部で生成される耳鳴を打ち消すのではなく、むしろ増加させる。
【0015】
大多数の患者において、感覚神経的な聴力損失に伴い耳鳴が生じるため、耳鳴は蝸牛の末梢に起こることが前提とされる。ノイズ被害によって、不動毛とクチクラ板で構造タンパク質への分子変化が生じる。細胞質のカルシウムレベルは、音に反応して劇的に増加し、正常な有毛細胞機能を潜在的に崩壊させる。徐々に進行する損傷によって、基底膜の特定領域の有毛細胞が完全に破壊される。有毛細胞の損失エリア周囲には異常な聴覚的信号が生じ、すなわち音が知覚されるという周辺効果が生じる。また、静かな時は聴覚神経線維が自発的に活発になり、神経伝達物質が放出される。自発的な活動が失われると、異常な中枢性聴覚活動につながる場合があり、音として知覚され得る。音の入力と、耳鳴の原因としての周辺効果とが無い場合、蝸牛移植の後に一般的に見られる耳鳴の弱化が説明される。聴覚患者および難聴患者における電気刺激による耳鳴抑制は、比較的最近の研究で示されている。
【0016】
一方、聴覚損失を患うすべての患者に耳鳴があるわけではなく、すべての耳鳴患者が聴覚損失を患うわけではない。聴覚神経を切断すると耳鳴となる場合があり、1つの中枢的な病因が示唆される。ポジトロン断層法(PET)による耳鳴患者のイメージングは、ブロードマンエリア(Brodmann area)21,22(42の可能性あり)における一側性の神経活動を示す。これらの効果は、耳鳴の抑制剤として知られるリドカインの投与によって低下した。どちらの耳が刺激されるかに拘らず、音によって両側性の活動が生じた。顔の動きに反応して耳鳴があった患者は、脳血流において一側性の変化を示した。単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)による耳鳴時のイメージングを用いた別の研究では、右側の聴覚皮質の信号において16%の増加を示し、左側において5%の増加を示したが、ノイズによって両側性の変化が生じた。この効果は、リドカインの投与によって無くなった。活動パターンのこのような違いによって、中枢における耳鳴生成の理論が支持されている。
【0017】
この解釈は、ノイズまたはシスプラチンにさらした後の背側蝸牛神経核(DCN)の自発的活動における変化を示す動物モデルの耳鳴と一致している。このような活動過剰は、続くアブレーション(損なわれた蝸牛のアブレーション)においても持続する。これは末梢の損傷はDCNの変化を刺激し得るが、中枢の活動過剰は末梢の入力とは無関係であることを示唆している。
【0018】
耳鳴は重度によって、および聴力損失の有無によって3つのカテゴリに分けられる。カ
テゴリ0は、患者の生活への影響が低い耳鳴を特徴とする。カテゴリ1,2は、生活への影響が高い耳鳴を説明するために用いられ、カテゴリ2は、耳鳴を伴う主観的な聴力損失があることを示す。発明者らの研究はこの慣習に従ったが、大きさに基づく第2のパラメータを定義した。大きさのパラメータは、各対象によって、低度、中度、または高度として決定された。1を大きさの最低音(閾値)とし、10を大きさの上限とする10段階評価において、低度が0〜3、中度が3〜6、および高度が6〜10である。各対象に苛立ちではなく大きさのランク付けを行っていることが確実に理解されるように、測定は注意して行われた。
【0019】
本特許出願の図1は、耳鳴の重度の分類と、典型的な耳鳴患者群とのグラフ図である。カテゴリ0の患者は、耳鳴治療を求める可能性が最も少ない。大きさが低レベルであるカテゴリ1,2の患者は、TRTによって支援される可能性が高い。TRTによって、大多数の患者(72.5%)がくつろぎ易くなることが示されているが、労働能力(25.5%)や睡眠(47%)に関しては、はるかに低いパーセンテージしか得られていない。現在のところ、大きさが高レベルであるカテゴリ1,2の患者は、効果的な治療がなさないままであることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0203536号明細書
【特許文献2】米国特許第7,347,827号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
耳鳴を治療するための新しい装置および方法の開発が、本技術分野においてなお必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、耳鳴を単にマスキングするのではない、耳鳴を抑制する方法および装置を提供する。
本発明の一態様によると、ヒトまたは動物の対象の耳鳴を治療する方法が提供される。この方法は、対象の耳鳴を完全にまたは部分的に抑制する耳鳴抑制音を対象に知覚させる工程を含む。この方法の幾つかの実施形態において、対象は耳鳴と同一に知覚する音を選択し、次いでその音(または対象が知覚した耳鳴に対して補完的な類似音)は、耳鳴抑制音として使用される。この方法の他の実施形態において、耳鳴抑制は、相当数の対象の耳鳴を抑制するために事前に決定された音であってもよい。この方法の幾つかの実施形態において、耳鳴抑制音は耳鳴よりも弱いと対象によって知覚されると、対象が知覚する音環境が低下される。この方法の幾つかの実施形態において、対象の耳鳴が抑制される程度を最適化するように、耳鳴抑制音の少なくとも1つの変数は変更される。耳鳴抑制音は、アコースティック音として、または電気刺激(たとえば蝸牛移植によって伝達される電気刺激)として伝達されてもよい。
【0023】
また本発明によると、ヒトまたは動物の対象の耳鳴を抑制する装置が提供される。この装置は、対象の耳鳴を抑制する耳鳴抑制音を対象に知覚させる機器を備える。この装置の幾つかの実施形態において、装置は、対象に数々の音を聴かせ、対象が耳鳴と同一に知覚する特定の音を選択させることを可能にする機器を備えてもよい。また装置はその後、選択した音、または選択した音に対して補完的な別の音を、耳鳴抑制音として再生してもよい。この装置の他の実施形態において、耳鳴抑制音は、相当数の対象者の耳鳴を抑制するために事前に決定された音であってもよい。この装置の幾つかの実施形態において、耳鳴抑制音は耳鳴よりも弱いと対象によって知覚されると、対象が知覚する音環境が低下され
るように再生されてもよい。この装置の幾つかの実施形態において、対象の耳鳴が抑制される程度を最適化するように、耳鳴抑制音の少なくとも1つの変数は変更されてもよい。これはバイオフィードバック(biofeedback)プロセッサ、または他の適切な機器を用いて行われてもよい。この装置は、アコースティック音(たとえば、音再生装置、およびスピーカまたはイヤホン(earpiece))として、または電気刺激(たとえば、挿入もしくは埋込の電極、電極アレイ、または蝸牛移植によって対象に信号を伝達する電気信号生成または伝達装置)として伝達され得る耳鳴抑制音を伝達してもよい。
【0024】
本発明の更なる態様、詳細、目的、要素、工程、および利点は、以下の詳細な説明および実施例を読むことによって当業者に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】耳鳴の重症度の分類と典型的な耳鳴患者群とのグラフ図。
【図2】本発明の方法の一例を示すフローチャート。
【図2A】耳鳴マスキングと耳鳴抑制との違いを示すグラフ図。
【図3】以下の実施例1において治療した2人の対象それぞれの音持続期間に応じて、耳鳴と外部音の両方の大きさを予測する、大きさレベルと持続時間との複合図。
【図4】以下の実施例1において治療した2人の対象それぞれのマスキングと抑制の効果を比較するために、耳鳴と、耳鳴抑制音または耳鳴マスキング音との合計の大きさを予測する、大きさレベルと持続時間との複合図。
【図5】大きさの予測と時間とのグラフ。このグラフは単極頂部状態を示すとともに、以下の実施例1において治療した対象のうちの1人には、刺激が完全に順応する間に耳鳴への効果が見られなかったことを示す。
【図6】順応をほとんど(またはまったく)しないが、全体的に耳鳴を抑制する低速刺激(100Hz)を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下の詳細な説明、および詳細な説明において参照される添付の図面は、本発明の幾つか(すべてでなくてもよい)の実施例または実施形態について記載する。記載の実施形態は、すべての態様において、単に例示であって限定的ではないと見なされる。詳細な説明および添付の図面の内容は、何ら本発明の範囲を限定するものではない。
【0027】
従来技術におけるように耳鳴がマスクされる場合、耳鳴音はマスキング音(たとえば、音量が耳鳴音と同等またはより大きいホワイトノイズまたはバンドパスノイズ)によってカバーされる。このため、耳鳴がマスクされる場合、耳鳴音を完全にカバーすべく、マスキング音は少なくとも耳鳴音と同等の音量でなければならないため、対象の音環境は、耳鳴だけを聴くのと同等またはそれよりも大きい。マスキング音が耳鳴音よりも静かである場合、部分マスキングとして知られる症状が生じる。この名前が示すように、これは耳鳴の音量は低くなるが、部分マスキング音の提示によって全体的な音環境はほぼ同じになるように、耳鳴が部分的にカバーされることである。本発明は、対象に耳鳴抑制音(所望の耳鳴抑制音に対応する外部アコースティック音、または電気的な蝸牛刺激もしくは神経刺激であってよい)を提供することによって、耳鳴を抑制する。耳鳴抑制音は、耳鳴よりも音量が低くてもよく、対象の耳鳴の知覚を実質的または完全に無くす。この結果、対象は低い音量の抑制音のみ聴く。この抑制音は耳鳴よりも弱くてもよいため、全体的な音環境は、本発明を使用することによって低下され得る。
【0028】
図2は、本発明の耳鳴抑制音の一例を示すフローチャートである。この方法において、主観的な耳鳴の大きさおよびピッチについて整合したトーンが、随意に取得されてもよい。このような耳鳴整合音は、対象に外部トーン提示することによって取得され、対象は、該トーンの振幅および周波数を、知覚した耳鳴の大きさおよびピッチに整合するように調
節することを指示される。外部トーンは、耳鳴が一側性である場合、耳鳴の生じる耳の反対側の耳に最適に提示され、耳鳴が両側性である場合、聴覚損失の量が最も少ない耳に提示される。更に、耳鳴整合音は、ダブルブラケット手順(double−bracketing procedure)において最も正確に取得される。この手順においては、まず外部トーンの振幅が、知覚した耳鳴の大きさよりもはるかに弱くなるように提示され、次いではるかに大きくなるように提示され、弱い振幅から大きな振幅までの範囲は、外部トーンが知覚した耳鳴の大きさよりもちょうど気づく程度に弱くなるまで、あるいはちょうど気づく程度に大きくなるまで縮小される。外部トーンのちょうど気づく程度の弱い振幅とちょうど気づく程度の大きい振幅の平均は、整合された耳鳴の大きさである。整合された耳鳴の大きさが取得されると、外部トーンの周波数が、知覚した耳鳴のピッチよりもはるかに低くなるように、およびはるかに高くなるように変更される。同様に、周波数の範囲は、外部トーンが、知覚した耳鳴のピッチよりもちょうど気づく程度に低くなるまで、あるいはちょうど気づく程度に高くなるまで縮小される。外部トーンの気づく程度に低い周波数と気づく程度に高い周波数の平均は、整合された耳鳴のピッチである。
【0029】
次に、耳鳴抑制音(整合された大きさとピッチを有してもよい)は、対象に使用されるように選択される。これは任意の適切な方法によって行われてもよい。たとえば、対象は一連の音を(たとえば、ヘッドホンによって)聴いて、知覚した耳鳴と同じものとして、または非常に類似しているものとして知覚する特定の音を選択してもよい。選択した音は、その後耳鳴抑制音として使用されてもよい。別の例は、相当数の対象の耳鳴を抑制するために過去の経験によって決定され、事前に選択された耳鳴抑制音を使用する。耳鳴抑制音は、振幅または周波数が変調された音であってもよい。
【0030】
耳鳴抑制音の選択後、対象の耳鳴を抑制するために、耳鳴抑制音は一連の治療において、または継続的に対象に伝達される。以下により詳細に記載するように、耳鳴抑制音は、アコースティック音の形式で(たとえば、スピーカ、イヤホン(earphones)、ヘッドセット、イヤホン(earbuds)、外耳道に挿入されるスピーカなどによって)伝達されてもよく、あるいは蝸牛、聴覚神経、または脳の適切なエリアへの電気刺激として伝達されてもよい。本発明の耳鳴抑制治療を伝達するのに使用され得る蝸牛移植および埋込電極の非限定的な例は、ホッホメアらによる上記の特許文献1に記載されている。
【0031】
任意選択で、耳鳴抑制音、または耳鳴抑制音の少なくとも1つの成分または変数を、対象の耳鳴が抑制される程度を最適化するために変更させてもよい。
また任意選択で、耳鳴抑制音の大きさを耳鳴よりも弱くなるように調節してもよく、これにより、対象は無用に高いと感知される音環境にさらされなくなる。耳鳴抑制音を、アコースティック音として、または電気刺激(たとえば、蝸牛移植によって伝達された電気刺激)として伝達してもよい。
【0032】
また任意選択で、耳鳴抑制音を止めることが望まれる場合(たとえば、特定の治療期間の終わりに)、耳鳴の突然のリバウンドを無くすために耳鳴抑制音の大きさを低下させるオフセットランプを生成して、音を徐々に消してもよい。
【0033】
図2Aは、耳鳴マスキングと耳鳴抑制との違いをグラフで示す。全体的なマスキングでは、耳鳴は聴き取れないが、マスキング音は耳鳴よりも大きい。部分マスキングでは、マスキング音は耳鳴よりも弱く、耳鳴の知覚は弱められるが、音の全体レベル(マスキング音プラス耳鳴)は耳鳴のみに類似している。抑制では、耳鳴よりは弱いが耳鳴の知覚を完全に無くす音が提示される。全体レベルは耳鳴のみよりも低い。
【0034】
本発明は、耳鳴を抑制するための音伝達装置および方法を含む。この装置は、耳鳴に対して補完的な特徴を有する音を伝達するのに使用可能な装置である。このような音は、聴
覚装置(たとえば、ステレオ、またはスピーカ付属の単音発生装置(たとえば、スピーカ、イヤホン(earpiece(s))、ヘッドホンなど)によって音響的に伝達されてもよく、または電極もしくは電極アレイ(たとえば、針電極、耳埋込(ear implant)、蝸牛移植など)によって電気的に伝達されてもよい。音は静的であっても動的であってもよく、純音、クリックトレイン、振幅変調音、周波数変調音や、スピーチおよび音楽であってもよい。抑制後、耳鳴のリバウンドを削減または除去するために、音は典型的には長いオフセットランプを含む。リバウンドは、耳鳴をマスクまたは抑制する音の後に知覚される耳鳴のレベルの増加として定義される。
【0035】
また本発明によると、耳鳴に対して補完的な音の入力を対象の脳に与えることによって耳鳴を抑制する装置および方法が提供される。本発明の1つの利点は、知覚される耳鳴音ほどは大きくない(実際には、知覚される耳鳴音よりもはるかに弱くてもよく、僅かに聴き取れてもよい)が、にもかかわらず耳鳴を抑制できる外部音を提供し得ることである。このような抑制音の検索は、バイオフィードバックプロセッサによって最適化されてもよい。
【0036】
本発明の1つの目的は、カスタム化またはパターン化を行った音響刺激または電気刺激によって耳鳴を完全に抑制するための、効果的で低コストの手段を伝達することである。出願人のアプローチは、現在ある従来方法によって制御できない耳鳴を患う患者のうち、選択した一群において、これらのカスタマイズ化およびパターン化を行った音響刺激および電気刺激を識別することである。メカニズムは不明であるが、患者それぞれの耳鳴を抑制するユニークな外部刺激(音響刺激または電気刺激)が存在することが仮定される。出願人のデータに基づけば、このユニークな刺激は、耳鳴を効果的に抑制可能であり、マスキングとは全く異なるメカニズムにおいて動作可能である。従来のマスキング音を効果的にするためには、耳鳴に類似した時間特性とスペクトル特性を有する必要がある。本願のサプレッサにおいては、耳鳴に対して補完的特性を有する(たとえば、高ピッチの耳鳴を抑制するために、低ピッチ音が使用されてもよい)。
【0037】
本発明のさらなる目的は、耳鳴に内在するメカニズムと耳鳴抑制の研究および解明を行う更なる手段を提供すること、および耳鳴の客観的なマーカを識別することである。
実験例1
この実験例において、一側性で継続的に高レベルの耳鳴を患う成人2名について、識別およびテストを行った。対象AS1は耳鳴を2.5年間患っており、中度の難聴(8kHzで50dB)である。また、大きさのランクは10段階の7であり、耳鳴は反対側の耳の純音(8kHz、70dB SPL)に整合する。このため、AS1はカテゴリ1の一側性高度である(図1を参照)。対象AS2は耳鳴を1.5年間患っており、聴力損失は4kHz〜8kHzで25dB〜40dBである。また、ランクは10段階の5であり、耳鳴は反対側の耳の純音(7kHz、69dB SPL)に整合する。AS2はカテゴリ1の一側性中度である。
【0038】
図3は、音の持続期間の関数としての、耳鳴と外部音の両方の大きさの推定値を示す。80dBで8kHzのトーンは、AS1の耳鳴を全体的にマスクし得る(左上パネル)。60dB SPLで8kHzのトーンは、大きさ7〜4の耳鳴を部分的にマスクし得る(中左パネル)。しかし、80Hzの正弦波で振幅変調が行われると、60dB SPLでの同じトーン(大きさ2)は、耳鳴を全体的に抑制し得る(下左パネル)。対象AS2は、30分まで続く大きな残りの抑制分を除くと、類似したパターンを示した。
【0039】
図4は、マスキングと抑制の有効性を比較するために、耳鳴および音の全体の大きさを推定する。破線は耳鳴の初期レベルを表しており、全体的に知覚されたものが高いか低いかを示すのに使用される。全体マスキングでは、音は耳鳴よりも大きくなければならない
ため、刺激が存在する間、知覚はより高い。部分マスキングでは、存在する間、全体レベルは耳鳴とほぼ同等である。対象AS2はオフセット後、非常に大きな残りの抑止分のために、より低い音を知覚した。抑制によって、音が存在する間、全体レベルは低下する。要するに、抑制が、対象が知覚する刺激の全体的な大きさおよび外部音を弱めるために可能な治療であり得ることである。言い方を換えれば、耳鳴をより弱く、望ましくはより心地よい外部音に置き換えることができる。理想的には、耳鳴を全体的に抑制する上でなお効果的であり、且つ閾値以下である外部刺激、または全体的に順応し得る外部刺激を見つけたいものである。現在のところ80Hzの振幅変調音は、iポッドを購入し、日常的に耳鳴を軽減させるべくこの変調音の8時間バージョンをダウンロードしているAS1にとって、最良の選択肢である。
【0040】
この実施例において、対象(47歳男性)は、2004年6月より一側性の聴力損失(右耳)、平行失調、衰弱した耳鳴を患っている。耳鳴を制御するために、この対象にはクラリオンハイレス(Clarion HiRes)90K蝸牛移植装置を(右耳に)取り付けた。対象は、オーリア(Auria)プロセッサにロードしたハイレスシーケンシャルストラテジ(HiRes Sequential strategy)ではまったく軽減されなかったと報告している。耳鳴の質は、右耳の耳鳴と、健全な耳(正常な聴覚をもつ左耳)に伝達される音とを整合させることによって測定した。また耳鳴の質は、間欠的により高い周波数成分を含むバンドパスノイズ(500Hz〜8000Hz、70dB〜90dB)から主に構成された。この対象は、カテゴリ2の一側性高度である。
【0041】
従来技術において見られる効果をテストするために、この対象には、5000Hzのパルス列によって刺激を与えた。頂部と基部の構成や単極と双極の構成をテストした。パルス幅は、53.9us/phaseであった。単極刺激は、1つの蝸牛内電極と、蝸牛移植装置の内部レシーバに配置された1つの参照電極(クラリオンハイレス(Clarion HiRes)90K蝸牛移植装置、アドバンストバイオニクス(Advanced Bionics)社、カリフォルニア州バレンシア)とを用いて伝達する。これは、電流の刺激エリアが広いことを示している。双極刺激は、隣接する2つの蝸牛内電極を用いて伝達する。これは刺激の領域がはるかに制限されることを示している。電気刺激を生成および伝達するために、リサーチインタフェースおよびソフトウェア(research interface and software)(人工耳データ収集システム(Bionic Ear Data Collection System)−BEDCS、アドバンスバイオニクス(Advance Bionics)社、カリフォルニア州バレンシア)を使用した。
【0042】
図5は、単極頂部状態を示し、刺激が全体的に順応する間、この対象の耳鳴には効果が見られなかったことを実証している。大きさの順応は、連続する大きさの予測を30秒毎に使用して測定した(タング(Tang)、リウ(Liu)、およびツェン(Zeng)によるJARO2006を参照)。同様の結果が、すべての高速刺激でも見られた。
【0043】
一方図6は、低速刺激(100Hz)によっては、ほとんどまたはまったく順応しないが、対象の耳鳴は全体的に抑制され得ることを示す。電気刺激をオフセットすると、ベースラインの耳鳴よりも40%の増加(リバウンド)が観察され、約1分間続いた。
【0044】
出願人はまた、効果的なサプレッサには、臨界速度(20Hz〜130Hz)、臨界場所(最も頂部の複数の電極)、および臨界レベル(少なくとも大きさ10段階の2でなければならない)が必要であることも見出した。効果的な低速刺激は、107.8us/phaseであった。自発的な電位と、イベントに関係して生じた電位との客観的な測定値によって、耳鳴の有無に関係する違いも示された。
【0045】
出願人は、対象の臨床的なスピーチプロセッサを用いて、結果的に耳鳴を効果的に抑制する類似音を生成した。耳鳴を抑制するために、患者はこの改変された装置を日常的に使用した。その結果、患者は耳鳴の薬物治療を中止した。
【0046】
これらのデータは、抑制とマスキングとの基本的な違いを示している。期待できる結果が幅広い患者に一般化されることが理想的である。
テスト刺激
音響抑制を行うために、タッカーデイビステクノロジー(Tucker−Davis Technologies)(TDT)システムIII(タッカーデイビステクノロジー社、フロリダ州アラチュア)を用いて音をデジタル的に生成し、ヘッドホンによって伝達した。16ビットD/A変換器を、サンプリングレート44,100Hzとして使用する。スペクトルのスプラッタを回避するために、2.5msのランプをすべての刺激に与える。この刺激には、純音(20Hz〜10kHz)と、中心周波数を100Hz〜10kHzとし、変調周波数を0.5Hz〜中心周波数の25%とする正弦波振幅変調された(sinusoidal amplitude modulated(SAM))トーンと、様々な遮断周波数のバンドパスノイズとが含まれる。僅かに聴き取れる大きさから、マスクを完全に使用するのに十分な大きさまでのレベルが使用される。
【0047】
蝸牛移植を行った対象は、外部スピーチプロセッサを迂回してリサーチインタフェースに直接接続された内部レシーバを有する。電気刺激は、パルス列として、または可能であれば電気正弦波(人工耳データ収集システム(Bionic Ear Data Collection System)−BEDCS、アドバンストバイオニクス(Advanced Bionics)社、カリフォルニア州バレンシア)として伝達される。刺激速度(10pps〜10,000pps)は、頂部から基部のすべての電極、0.5Hz〜搬送パルスレートの25%までのエンベロープ変調をテストする。音響刺激と一致するレベルを使用する。対象への伝達前に精度を確認するために、刺激はオシロスコープによって照合される。
【0048】
テスト手順
対象の聴覚が正常である場合、または幾分残聴がある場合、大きさとピッチについて、耳鳴は外部音に整合される。これは低ピッチ(100Hz)または高ピッチ(10000Hz)を、一側性耳鳴においては反対側の耳に、または両側性耳鳴においては耳鳴が弱い方の耳に伝達することによって行われる。対象は、ピッチが耳鳴よりも高いか低いかについて識別するように求められる。周波数は、整合していると思われるまで、あるいは非常に近いと思われるまで調節される。整合を保証するために音質が純音とあまりに異なる場合、対象は、広いバンドノイズまたは狭いバンドノイズを用いて音と別の音との整合について説明するように求められ、あるいは、振幅変調または周波数変調が試みられる。次いで、耳鳴と外部音との間で大きさを整合するように調節される。正確な整合が必要とされ、PIは二重段階波の適応手順(double−staircaseadaptive procedure)を開発および使用した(ツェン(Zeng)およびターナー(Turner)、1991年)。
【0049】
対象は、1を閾値とし、6を最も快適なレベル(MCL)とし、10を大きさの上限(ULL)とする1〜10のランク段階を理解するように指示される。音響提示または電気提示の前に、対象は耳鳴のレベルを報告する。刺激が提示され、対象は20秒間隔で、提示された音の大きさと、耳鳴のレベルについて報告するように求められる。対象は前回の回答にとらわれず、依存しないで大きさについて報告するように指示される。患者は刺激のある時に耳鳴を識別できない場合、値0が割り当てられる。音は3〜6分間提示される。音の提示および残りの抑止の持続時間を測定するために、報告は刺激オフセット後の1〜4分間で行う。
【0050】
潜在的な問題と代替的なストラテジ
少なくとも幾つかの対象においては、本発明の音響的または電気的な耳鳴抑制音のオフセット後、耳鳴のリバウンド増加が生じ得る。幾つかの場合、サプレッサが8時間まで使用されると、リバウンドは数時間持続し得る。リバウンドを軽減する1つの方法は、サプレッサにおいて約1分間のオフセットランプを生成することである。オフセットランプは、1分間またはそれ以上の長い時間にわたり、耳鳴抑制音の振幅を徐々に低下させる。
【0051】
上記のイベントに関係して生じる電位は、耳鳴の「サイン」を導出するのに使用されてもよく、このサインは耳鳴の有無を客観的に識別するのに使用されてもよい。出願人は、N100がこのようなサインになり得ることを見出した。客観的な耳鳴サインの識別は、耳鳴治療の有効性の評価や、子供の耳鳴の診断、および動物の耳鳴モデルの開発に重要である。
【0052】
本発明は、本発明の特定の実施例または実施形態に基づき記載してきたが、本発明の意図した精神および範囲から逸脱することなく、これらの実施例および実施形態に対して様々な追加、削除、改変、および変更がなされてもよいことを理解されたい。たとえば、そうすることによって実施形態もしくは実施例が意図した使用に不適切となるかについて特に指定のない限り、1つの実施形態または実施例の要素または属性は、別の実施形態または実施例において取り込まれても使用されてもよい。また、方法またはプロセスの工程が特定の順序で記載またはリストされている場合、このような工程の順序は、特に指定のない限り、またはそうすることによって方法もしくはプロセスが意図した目的のために実行不可能とならない限り、変更されてもよい。すべての妥当な追加、削除、変更、または改変は、記載した実施例および実施形態の同等物と見なされ、以下の特許請求の範囲内に含まれるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトまたは動物の対象の耳鳴を治療する方法であって、
(A)前記対象の耳鳴を完全にまたは部分的に抑制する耳鳴抑制音を前記対象に知覚させる工程を含む、方法。
【請求項2】
前記対象は耳鳴と同一に知覚する音を選択し、耳鳴抑制音は選択した音に対して補完的な音である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
耳鳴抑制音は、相当数の対象の耳鳴を抑制するために事前に決定された音である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
耳鳴抑制音が耳鳴よりも弱いと前記対象によって知覚されると、前記対象が知覚する音環境が低下される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
(B)前記対象の耳鳴が抑制される程度を最適化するように、耳鳴抑制音の少なくとも1つの変数を変化させる工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記方法は、耳鳴抑制音の大きさおよびピッチを、耳鳴の大きさおよびピッチに整合させる工程を更に含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
耳鳴抑制音は、前記対象の耳鳴に整合させた高周波トーンであり、工程(B)は、耳鳴抑制音の振幅変調または周波数変調を行うために低周波数トーンを使用する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
耳鳴抑制音は、アコースティック音として伝達される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
耳鳴抑制音は、蝸牛移植による電気刺激として伝達される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ヒトまたは動物の対象の耳鳴を抑制する装置であって、
前記対象の耳鳴を抑制する耳鳴抑制音を対象に知覚させる機器を備える装置。
【請求項11】
耳鳴抑制音は、耳鳴よりも音量が低いものとして前記対象によって知覚される、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記装置は、耳鳴抑制音をアコースティック音として伝達する、請求項10または11に記載の装置。
【請求項13】
前記装置は、耳鳴抑制音を、蝸牛移植による電気刺激として伝達する、請求項10または11に記載の装置。
【請求項14】
前記対象の耳鳴が抑制される程度を最適化するように、耳鳴抑制音の少なくとも1つの変数を変化させる機器を更に含む、請求項10または11に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図2A】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−505915(P2011−505915A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−537104(P2010−537104)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【国際出願番号】PCT/US2008/085652
【国際公開番号】WO2009/076191
【国際公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(500210903)ザ、リージェンツ、オブ、ザ、ユニバーシティ、オブ、カリフォルニア (31)
【氏名又は名称原語表記】THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF CALIFORNIA