聴力損失を予防及び/又は治療するためのフェノチアジン誘導体の使用
本発明は、聴力損失を予防及び/又は治療することを目的とした医薬を製造するための、式
〔式中、Rは水素原子、アルキル基、アリールアルキル基又は−C(O)R´基を表す〕
のフェノチアジンの使用に関する。
〔式中、Rは水素原子、アルキル基、アリールアルキル基又は−C(O)R´基を表す〕
のフェノチアジンの使用に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、聴力損失を予防及び/又は治療することを目的とした医薬を製造するための、カルパイン阻害活性と、活性酸素種(ROS)を捕捉する活性とを有するフェノチアジン誘導体の使用に関する。本発明はまた、少なくとも1種のこのような化合物を含有する製品及びそれを含有する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
聴力損失の多くの原因の中から、特に髄膜炎又は耳炎などの病気、遺伝的要因、外傷、腫瘍、薬物、医薬 例えばある種の抗生物質、抗癌薬、非ステロイド系抗炎症剤、利尿薬、潰瘍薬又は抗痙攣剤の投与、トルエン又はキシレンなどの芳香族有機溶媒に対する長期暴露、老化及び騒音に対する暴露を挙げ得る。雑音(noise)や及び医薬の投与に長期間暴露された老人性難聴(老化に関連した難聴)は、聴力損失の主な原因である。
【0003】
現在、アミノグリコシド群のある種の抗生物質、例えばゲンタマイシン又はトブラマイシン(これらは重篤な感染症の治療に使用される)が迷路性難聴の原因であることは周知である。アミノシド類(アミノグルコシド類、例えばアミカシン、ジベカシン、ゲンタマイシン、イセパマイシン、ネチルマイシン、スペクチノマイシン、トブラマイシン)に対する毒性は、初期には聴力損失により高い頻度で現れ、最初は患者によって認識されない。患者は次第にこれによって悩まされるであろう。あいにく、聴力損失は不可逆的である場合が多い。
【0004】
我々の周囲の雑音は、我々の聴力機能を低下させる。雑音によって引き起こされる聴力損失は、音を内耳の方に運ぶ聴覚有毛細胞が損傷を受け、もはや聴覚神経に電気パルスを脳に送ることを命令することができない場合に生じる。
【0005】
音量と暴露の期間が、聴力損失に影響を及ぼす2つの主な因子である。雑音に対する暴露に対する反応はあるヒトから次のヒトまで変化するが、幾つかの因子を確信をもって報告することができる。研究により、85デシベル(dB)又はそれ以上の雑音に対する長期暴露は、時間と共に永続的な聴力損失を引き起こすことが明らかにされている。
【0006】
欧州及び北アメリカの統計は、集団の8〜10%が蝸牛症(聴力損失、難聴、耳鳴)をわずらっていることを明らかにしている。ディスコ、テクノ音楽コンサート及びウォークマンによって生じる音量があるとすれば、全ての世代で耳の聞こえない人々及び耳鳴りに苦しんでいるヒトが生み出されつつある。従って、最近は約60歳で始まる年齢に関連した問題(老人性難聴)は、さらに早く始まる、すなわち約35〜40歳で始まる。
【0007】
聴覚病理(auditory pathologies)に関する問題は、その大多数が内耳(又は蝸牛)の聴覚有毛細胞及び神経細胞の消失に起因することである。これらの細胞は、本質的に子宮内にある発生段階を過ぎて、分化の最終段階の後にはそれ自体新しくなる能力を持たない。
【0008】
種々の蝸牛病理(cochlear pathologies)に関連した耳の感覚及び神経能力の進行する喪失は、今日でもまだ治療の範囲を超えていると思われる。
【発明の開示】
【0009】
従って、発明の主題は、聴力損失を予防及び/又は治療することを目的とした医薬を製造するためのジアステレオ異性体又はこれらの異性体の任意の組み合わせの形の式
〔式中、Rは水素原子、(C1〜C6)アルキル基、アリールアルキル基又は−C(O)R´基を表し、前記の基のR´はヘテロシクロアルキル基、(C1〜C6)アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す;
但し、前記のアルキル基、アリール基又はヘテロシクロアルキル基は、場合により(C1〜C6)アルキル基、ヒドロキシ基、(C1〜C6)アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子又は−NR1R2から選択される1個又はそれ以上の同一又は異なる置換基で置換されていてもよく;R1及びR2は、独立して水素原子又は(C1〜C6)アルキル基を表すか、あるいはR1及びR2は、これらを結合している窒素原子と一緒になって場合により置換されていてもよい複素環を形成する〕
に対応する複素環誘導体の使用である。
【0010】
本願明細書において、“外傷”とは、外部物質によって引き起こされる組織及び器官を含む一群の局所病変を意味する。音響外傷の場合には、外部物質は主として騒音である。
【0011】
(C1〜C6)アルキル基とは、1〜6個の炭素原子を含有する線状又は分岐アルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基及びtert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基を意味する。(C1〜C6)アルコキシ基は、前記のアルキル基に対応することができ、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基又はイソプロピルオキシ基、あるいはまた線状、二級又は三級ブトキシ基であり得る。アルキルカルボニル基は、前記のアルキル基に対応することができ、例えばメチルカルボニル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基であり得る。ハロゲン原子とは、弗素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を意味する。
【0012】
アリール基とは、少なくとも1個の芳香族環を含有する炭素環式又は複素環式の系を意味し、系はそれを構成する複数の環の少なくとも一つが異種原子(O、N又はS原子)を含有する場合には複素環式と呼ばれる。炭素環式アリール基の例としては、フェニル基又はナフチル基を挙げることができる。複素環式アリール基(ヘテロアリール基)の例としては、チエニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、イソチアゾリル基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジル基、ベンゾチエニル基、ベンゾフリル基及びインドリル基を挙げることができる。
【0013】
複素環(すなわちヘテロシクロアルキル)という用語は、好ましくはO、N又はS原子から選択される1〜5個の異種原子を含有する飽和又は不飽和単環式又は二環式複素環を表す。その窒素原子は、場合によりアルキル基、アリール基、アラルキル基及びアルキルカルボニル基から選択される基で置換することができる。飽和複素環の例として、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、オキセタン、オキセパン、テトラヒドロチオフェン、テトラヒドロチオピラン、チエタン、ピロリジン、ピペリジン、アゼチジン、1,3-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、1,3-ジチオラン、1,3-ジチアン、1,3-オキサチオラン、1,3-オキサゾリジン、1,3-イミダゾリジン又は1,3-チアゾリジンを挙げることができる。不飽和複素環の例としては、ジヒドロチオフェン、ジヒドロフラン、ジヒドロピロール、ジヒドロイミダゾール、ジヒドロピラゾール、ジヒドロピリジン、インドリンを挙げ得る。
【0014】
アリールアルキル(すなわちアラルキル)基は、アリール基及びアルキル基それぞれが前記の意義を有する基、例えばベンジル基、フェネチル基又はナフチルメチル基を意味する。
【0015】
式−NR1R2(式中、R1及びR2はこれらを結合している窒素原子と一緒になって場合により置換されていてもよい複素環を形成する)で示される基の場合には、前記複素環は飽和されていることが好ましく且つ4〜7員と、すでに存在する窒素原子を含めて1〜3個の異種原子とからなる。上記の追加の異種原子は、O、N及びS原子によって構成される群から独立して選択される。前記の複素環は、例えば、アゼチジン環、ピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環又はチオモルホリン環であり得る。前記の複素環は、ヒドロキシ基、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子から選択される1個又はそれ以上の同一又は異なる置換基で置換されることができる。
【0016】
さらに詳しくは、本発明の主題は、Rが-C(O)R´を表し且つ好ましくはR´がアルキル基を表すことを特徴とする前記の使用である。
【0017】
極めて好ましくは、化合物(I)はRが-C(O)-CH3を表すことを特徴とする。後者の化合物は、以下、化合物(I)として知られるであろう。
【0018】
さらに詳しくは、本発明の主題は、Rが水素原子を表すことを特徴とする前記の使用である。
【0019】
また、極めて好ましくは、前記の化合物(I)は式
さらに詳しくは次式
の一つを有する。
【0020】
また、極めて好ましくは、前記の化合物(I)は式
さらに詳しくは次式
の一つを有する。
【0021】
前記の化合物は、酸化防止効果及び抗カルパイン効果を兼ね備える保護剤であり、国際出願公開第WO01/32654号パンフレットに記載されている。
【0022】
従って、本発明の主題はまた、聴力損失の原因に関する治療前又は治療後における前記の式(I)で示される化合物の使用である。
【0023】
本発明の主題はまた、別の医薬の投与の後の聴力損失を予防及び/又は治療することを目的とした医薬を製造するための前記の式(I)で示される化合物の使用である。好ましくは、前記の別の医薬は、ゲンタマイシンなどの抗生物質、シスプラチンなどの抗癌薬、サリチル酸の誘導体又はイブプロフェンなどの非ステロイド系抗炎症剤、フロセミドなどの利尿薬、シメチジン又は オメプラゾールなどの抗潰瘍薬、カルバマゼピン又はバロプロ酸などの抗痙攣薬である。前記の別の医薬は、抗生物質、特にゲンタマイシンであることが極めて好ましい。
【0024】
本発明の主題はまた、老人性難聴の後の聴力損失を予防及び/又は治療することを目的とした医薬を製造するための前記の式(I)で示される化合物の使用である。
【0025】
本発明の主題はまた、音響外傷の後の聴力損失を予防及び/又は治療することを目的とした医薬を製造するための前記の式(I)で示される化合物の使用である。
【0026】
本発明の化合物は、単独で使用できるし又は医薬活性をもつ少なくとも1種の別の物質、好ましくは聴力損失を予防及び/又は治療することができるかあるいは聴力損失に関連した病気を予防及び/又は治療することができる物質と組み合わせて使用できる。
【0027】
前記化合物は、酸化防止剤、ロイペプチン又はNeurodurなどのカルパイン阻害剤、EGb 761(登録商標)などの末梢血管拡張剤、NMDA受容体の作動薬又は拮抗薬、D-JNK-1などのc-Jun N末端キナーゼのペプチド阻害剤と組み合わせることができる。
【0028】
本発明の主題はまた、医薬活性をもつ少なくとも1種の別の物質、好ましくは酸化防止剤、カルパイン阻害剤、末梢血管拡張剤、NMDA受容体の作動薬又は拮抗薬、c-Jun N末端 キナーゼのペプチド阻害剤から選択される物質と組み合わせることを特徴とする前記の使用である。
【0029】
式(I)で示される化合物、好ましくは前記の化合物(1)は、局部施用として50〜500 μMからなる用量で投与することができる。局所蝸牛内治療の場合には、前記化合物は50〜200μMからなる用量で投与することができる。局所蝸牛外治療の場合には、前記化合物は200〜500μMからなる用量で投与することができる。場合によりこれらと組み合わせられる物質であって、薬理学において公知の物質が、標準的に推奨される用量で投与される。
【0030】
前記の化合物及び場合によりこれらと組み合わせられる医薬活性を持つ物質は、標準的な投与経路、例えば経口、腹腔内、皮下又は静脈内経路で投与することができる。これらの物質は、同じ投与経路又は異なる投与経路で同時に又は別々に投与することができる。好ましくは、前記の化合物(I)は、内耳の治療に常用される方法、例えばマイクロカテーテル、経鼓膜注入用注射器又はSilverstein Microwick型の芯(wick)を備えたチューブで局所投与される。
【0031】
本発明の主題はまた、ジアステレオマーの形又はこれらジアステレオマーの形の組み合わせの形の前記の式(I)で示される複素環誘導体と、治療活性をもつ少なくとも1種の物質とを、聴力損失を予防及び/又は治療するために同時に、別々に又は時間全体にわたって使用するための併用剤として含有する製品である。好ましくは、本発明の主題は、医薬の投与後、又は老人性難聴後、あるいは音響外傷後の聴力損失を予防及び/又は治療するための前記の製品である。
【0032】
最後に、本発明の主題は、医薬としての前記の製品である。
【0033】
医薬の投与後の聴力損失の場合には、医薬は抗生物質、好ましくはゲンタマイシンであることが好ましい。
【0034】
医薬活性をもつ物質であって、場合により併用される物質は、考慮される治療分野でこれらの物質について通常想定される投与経路で投与される。
【0035】
音響外傷によって引き起こされる聴力損失の場合には、前記の化合物(I)の投与は、音響外傷の数日前に、好ましくは外傷の2〜3日前に、及び外傷後24時間に生じ得る。好ましくは、この投与は音響外傷のあとの7日以内に生じる。また好ましくは、この投与は音響外傷のあとの2時間以内に生じ得る。
【0036】
従って、本発明の主題は、ジアステレオマーの形又はこれらジアステレオマーの形の任意の組み合わせの形の前記の化合物(1)を外傷の後の7時間以内に、好ましくは1時間以内に投与することを特徴とする前記の使用である。
【0037】
音響外傷後の機能回復について化合物(1)の治療有効性を示す結果を、実験の部に示す。
【0038】
以下の実施例は前記の方法を例証する目的で示すものであり、いかなる場合にも本発明の範囲を限定するとみなされるべきではない。
【実施例】
【0039】
実験の部:
薬理学的研究
1)ゲンタマイシンを用いた治療によって誘発される中毒性難聴
ゲンタマイシンによって誘発される聴覚有毛細胞の消失に対して同時治療として投与される化合物1の保護効果の実証
ゲンタマイシン及びその他のアミノグリコシドは、ヒトにおいて聴覚有毛細胞に対する損傷及び聴力損失を引き起こすことが明らかにされている。ゼブラフィッシュは、その体表面に神経小丘と呼ばれる感覚器を示す。この魚の場合には、神経小丘聴覚有毛細胞はDASPEIを用いて染色することができ、この染色は聴覚有毛細胞の数を反映する。この聴覚有毛細胞はヒトの耳の内部聴覚有毛細胞と構造的及び機能的に類似している。
【0040】
内部聴覚有毛細胞に対する損傷は、ゼブラフィッシュではゲンタマイシンによって引き起こされる。ゲンタマイシンによって損傷した聴覚有毛細胞の保護に関する化合物(1)の効果を試験するために、化合物(1)をゲンタマイシンとの同時治療剤として投与した。次いで、内部聴覚有毛細胞を染色し、定量した。
【0041】
この研究は、化合物(1)の存在下又は不存在下で1μg/mlのゲンタマイシンと共に24時間インキュベートした5日齢の魚について行なった。対照は、並行して行なった;単一のビヒクル(1%DMSO;陽性対照)。ゲンタマイシンを用いて処理した魚は、陰性対照である。
【0042】
DASPEI(2,4-ジメチル-アミノスチリル-N-エチルピリジニウムヨージド)染色を行って、聴覚有毛細胞を生体内で視覚化した(1群当たりn=5)。形態計測分析を使用して、聴覚有毛細胞の染色信号を定量した。陽性対照のDASPEI染色信号を100%と定義した。
【0043】
得られた結果を図1に示す(DASPEIで染色された聴覚有毛細胞の%)。陽性対照(ゼブラフィッシュ − 1%DMSO);陰性対照(ゼブラフィッシュ − 1%DMSO − ゲンタマイシン1μg/ml)及び製品の効果(ゼブラフィッシュ − 1%DMSO − ゲンタマイシン−化合物1)。実験は1群当たり5匹の動物について行った。
【0044】
図1の結果は、
− 陰性対照の染色信号は対照の信号の31.5±4.2%に相当するか、又はゲンタマイシンを用いて処理した後の聴覚有毛細胞の68.5±4.9%の喪失に相当すること、
− ゲンタマイシンと化合物1を用いて処理した動物の染色信号は、対照の信号の65.2± 4.4%に相当するか、又はゲンタマイシンを用いた処理によって損傷した聴覚有毛細胞の48.7±2.63%の極めて顕著な保護に相当すること
を示す。
【0045】
2)音響外傷後の聴力損失
これは、モルモットで音響外傷によって引き起こされた聴力損失後の、一方では内耳の聴覚有毛細胞の保護及び他方では聴覚の機能回復に関する治療前及び治療後における化合物(1)の保護効果の研究を含む。化合物(1)は、ヒトの外科臨床医学でその使用を模擬実験するように“蝸牛内又は蝸牛外”局所経路で投与した。
【0046】
この新規保護剤を用いて得られた機能回復は、前記の動物のオージオグラムの読み取りである機能試験を使用して定量化される。このオージオグラムは、聴覚神経の可能な合成作用の活動を記録することによって作成される。オージオグラムは、音響外傷の前後に記録される。走査電子顕微鏡による分析は、蝸牛ラセンに沿った細胞消失及び化合物(1)の保護効果の研究によってこの機能データを完成する。
【0047】
実験は全て、モルモットで行った:それぞれの実験は同様のスキーマに従って行った。
【0048】
実験段階の一般的なスキーマは次の通りである:
− 動物に、Rompun(登録商標)2%(3mg/kg)+Zoletil(登録商標)(40mg/kg) の混合物の筋肉内注射で麻酔をかけた。この麻酔は、急速に消散するという利点を有し且つ最初の用量の3分の1の規則的注射(2時間毎)によって数時間維持することができる。
【0049】
− 図2の電極及びミニポンプの配置。
【0050】
蝸牛には背部からのアクセスで近づいた。頭部の毛を剃り、きれいにした後に、耳介の後に2cmの切開を行った。鼓室胞を覆う耳下面及び筋肉面を横たえた。乾燥し、きれいにしたら直ちに、骨に顔面神経が現れる場所の下の上部壁に穴を開けた。次いで、活性電極(テフロンで覆われた直径0.13mmの白金線)を鼓室胞の中に導入し、手術用顕微鏡(WILD M650)の制御下で正円窓の膜と接触させて配置した。計量(metric)聴覚閾値を記録した後に、直径0.2 mmの小さな穴を、正円窓の真下の鼓室神経小管の基底回転(basal turn)で相互に円錐形に広げた。
【0051】
マイクロポンプにカテーテルを介して連結されたガラスピペット(先端で直径0.1 mm)を、第二のマイクロマニピュレーターを使用して蝸牛に挿入した。
【0052】
記録電極及び灌流ピペットを含んでいる鼓室胞を、歯科用樹脂で閉じた。
【0053】
マイクロポンプを動物の皮膚の下で滑らせ、筋肉面及び皮膚面にベタジンを塗布し、吸収性縫合糸で縫合し、抗生物質溶液〔Rifocin 5P100(登録商標)〕で覆った。
【0054】
次いで、動物の頭蓋骨上にコネクター(Connectral製、ref.:8/45-05.050.000)を固定する目的で頭頂に約1.5cmの第二の切開を行った。頭蓋骨の骨膜を擦り落とした後に、この領域を注意深く乾燥し、硝酸銀を塗布し、次いでシラノライト(cyanolite)のフィルムで覆った。
【0055】
前記の(活性及び参照)電極を、皮膚の下でこれらが結合されるコネクターまで滑らせた。次いで、コネクターを、歯科用樹脂を用いて頭蓋骨に固定した。
【0056】
刺激方法:
音刺激を、2つのヒューレット・パッカードシンセサイザー(HP 3314 A及びHP 8904 A)を使用して生じさせ、耳から10cm離して配置したラウンドスピーカー(JBL 075)を用いて自由野で伝えた。音響装置の較正は、人工内耳で1/2インチマイクロホン(型式4134、Bruel and Kjaer)及びデシベルSP(dB SPL、reference:2.10-5 Pa)の音響レベルの直接読み取りを可能にする測定用アンプ(型式2606)を使用して行った。音響信号を表示するために、測定用アンプの出力をオシロスコープに接続した。動物を6 kHzの音に、120 dB SPLで30分間暴露した。
【0057】
記録方法
動物の頭部に固定されたコネクターを経由して蝸牛に埋め込まれた電極によって記録された蝸牛の反応を増幅し(増幅率1000)、プレアンプ及びGRASS P 511 K型の差動増幅器を使用してフィルターにかけた(32 Hz〜3200 Hz)。ダイレクトトレース(direct trace)をオシロスコープ(Tektronix type 513)上に表示した。この信号を平均して(256パス)バックグラウンドノイズを減少させ、486 PCコンピューター、66メガヘルツ(Hewlett-Packard-Vectra 05/65)に保存した。限界基準を、測定可能な応答( >2μV)を生じさせるのに必要なdB SPL値と定義した。蝸牛(正円窓)と接触させて配置した電極は、それぞれの耳について蝸牛反応及びオージオグラムの生成を可能にする。計量音響閾値を、音響外傷の20分後に記録し、1ヶ月間毎日記録した。
【0058】
音響外傷後のカルパインの活性化の関与:
音響外傷後のカルパイン酵素の活性を測定することを目的として、カルパインの特異基質(ホドリン)の切断を定量した。カルパインは、240 KDのホドリンを切断して150 KDの分解生成物を生成する。二重マーキング(marking)を、150 KDの断片に特異的なポリクロナール抗体と、聴覚有毛細胞の確認を可能にする抗カルビンジン抗体とを用いて行った。蛍光は共焦点顕微鏡を用いて示された。
【0059】
音響外傷後の聴覚有毛細胞の死滅の分子メカニズム:
細胞死の性質を調べることを目的として、蝸牛細胞のDNAの断片化を、TUNEL法を使用して定量した。
【0060】
音響外傷後の聴覚有毛細胞の完全性の測定:
蝸牛細胞の完全性を、免疫細胞化学により抗シトクロムC抗体を使用して調べた。健常細胞では、シトクロムCはミトコンドリアに局在する。音響外傷後に、シトクロムCは細胞質に拡散され、分配される。
【0061】
第1相(Phase I):外傷によって引き起こされた聴力損失及び蝸牛ラセンに沿った細胞消滅に対する前治療として投与された化合物(1)の保護効果の実証:
プロトコール − 第1相:化合物(1)の前投与
皮膚の下に配置された浸透圧ミニポンプは、化合物(1)を送達する。
【0062】
動物に、ミニポンプの埋め込んだ2日後にカテーテルで蝸牛内部に音響外傷を与えた(蝸牛内灌流)。
【0063】
この実験は、7動物について行い、次いで用量応答について30動物について行った。
【0064】
化合物(1)を、外傷の2日前に、蝸牛内に永久的に埋め込んだ浸透圧ミニポンプ(流量1μl/時間、容量200μl、拡散期間7日間)によって蝸牛に直接に投与した。この方法は、外傷によって生じた蝸牛ラセンに沿った細胞消失と聴覚の機能回復に関して、100μMの用量で化合物(1)の保護効果の測定を可能にする。この場合に、化合物の用量効果は、聴覚の50%を保存することを可能にする有効用量の決定を可能にする。
【0065】
第1相の結果
100μMの濃度の化合物(1)
オージオグラムで測定した機能試験。音響外傷後の聴力損失及び化合物1による保護
120 dBで30分間の外傷後5日目に、オージオグラムの読み取りは、化合物(1)の有効性を実証することを可能にした;この化合物は、この外傷の2日前に100μMで灌流させた場合に聴覚の100%の回復を可能にした(図3)。
【0066】
形態学的研究:音響外傷後の蝸牛ラセンに沿った細胞の組織学。化合物(1)による保護
電気生理学的評価(オージオグラム)の終わり、すなわち音響外傷後30日目に、動物の蝸牛を採取し、電子顕微鏡用に調製した。
【0067】
細胞消失を、走査顕微鏡を用いて線毛の房状分岐を数えることによって調べた。定量データは、コルチ(Corti)器の表面の高拡大観察を行うことによって得た。
【0068】
120 dBで30分間の外傷の後に、内部聴覚有毛細胞が破壊され且つ外部聴覚有毛細胞の3列の幾つかが破壊された。これらの細胞の組織学は、化合物(1)の有効性を実証することを可能にする。この化合物は、この外傷の2日前に100μMで灌流させた場合に内部聴覚有毛細胞の100%及び外部聴覚有毛細胞の大部分を保護することを可能にした(図4:組織学的データ;写真A:音響外傷;写真B:化合物(1)+音響外傷;I=内部聴覚有毛細胞;0=外部聴覚有毛細胞)。
【0069】
音響外傷後のカルパインの活性化の関与。化合物1による阻害。
【0070】
カルパイン酵素の活性化を、酵素の特異基質ホドリンの150 KD断片への分解の定量によって調べた。
【0071】
ホドリンのこの切断は、対照の蝸牛細胞では検出されなかった。
【0072】
音響外傷後に、カルパイン酵素の活性化によるホドリンの切断により生じる150KD 断片の免疫マーキングは、抗FBDP抗体を用いたマーキングにより外部蝸牛細胞上で目視できた(“ホドリン分解性生物”、緑色蛍光;図5A:音響外傷後48時間)。音響外傷後のカルパイン活性のこの活性化は、無傷の聴覚有毛細胞の確認を可能にする抗カルビンジン抗体によるマーキングが存在しないことによって視覚化された蝸牛の細胞の消失に関連する。
【0073】
100μMの化合物(1)(カルパイン活性化阻害剤及び酸化防止剤)の局所投与は、音響外傷に暴露された蝸牛細胞においてカルパイン酵素によるホドリンの切断を防止する。この緑色蛍光マーキングが存在しないこと、すなわち、カルパインの特異基質の非分解(non-degradation)が存在しないことは、蝸牛細胞の保護と関係があった(抗カルビンジン抗体を用いたマーキング;図5B)。
【0074】
音響外傷後の聴覚有毛細胞の死滅の分子メカニズム。化合物1による保護。
【0075】
音響外傷によって生じた蝸牛細胞の死滅の性質を調べるために、DNAの断片化(TUNEL法で定量される)を、音響外傷を受けている動物について行った。化合物1の効果を、このパラメーターについて試験して、このアポトーシスによる細胞死滅のメカニズムによるその関与を調べた。
【0076】
“TUNEL陽性”細胞は、雑音に暴露されなかった対照動物から得た蝸牛では認められなかった。
【0077】
音響外傷に暴露された蝸牛は、コルチ器の領域にTUNEL陽性の細胞核を有していた(図6A:音響外傷後48時間)。標識された核は、コルチ器の上部領域に局在した。従って、これらの標識された核は支持細胞よりもむしろ聴覚有毛細胞に属すると思われる。多数の標識された核が音響外傷後1時間で目視することができ、この標識は音響外傷後4日目でもまだ目視することができた。従って、音響外傷後の聴覚有毛細胞の細胞死滅は、DNAの断片化に関連したアポトーシスメカニズムによって得られる。
【0078】
100μMの化合物(1)(カルパイン活性化阻害剤及び酸化防止剤)の局所投与は、聴覚有毛細胞の核のマーキングを妨げた(TUNEL法、図6B: 化合物(1) − 音響外傷後48時間)。化合物(1)は、音響外傷で生じたアポトーシスによる細胞死を抑制した。
【0079】
音響外傷後の聴覚有毛細胞の完全性の喪失。化合物(1)による保護。
【0080】
音響外傷後の聴覚有毛細胞の完全性の喪失を調べることを目的として、抗シトクロムC抗体の使用による免疫細胞化学によるシトクロムCの拡散を、音響外傷を受けた動物で行った。
【0081】
化合物(1)を、音響外傷後の聴覚有毛細胞の完全性の喪失に対するその効果を調べることを目的として、ミトコンドリア区画(compartment) から細胞質区画へのシトクロムCの放出について試験した。
【0082】
雑音に暴露されなかった対照動物から得られた蝸牛では、シトクロムCはミトコンドリア内に局在する。
【0083】
音響外傷に暴露された蝸牛は、細胞質内に拡散し且つ分配されたシトクロムCのマーキングを示した(図7A)。
【0084】
100μMの化合物(1)(カルパイン活性化阻害剤及び酸化防止剤)は、シトクロムC音響外傷に暴露された聴覚有毛細胞のミトコンドリアから細胞質に向かう分散を防止し、従って細胞の完全性を維持した(図7B)。
【0085】
化合物(1)の用量応答
化合物(1)の保護効果を、聴力損失の50%を回復させる有効量(ED50)を規定することを目的として用量を変化させることによって評価した。動物5匹からなる8群、例えば人工外リンパのみを受けいれた群及び化合物(1)1μM、3μM、10μM、33μM及び100μMを受け入れた群、すなわち動物30匹を使用した。
【0086】
120 dB、30分間の外傷後5日目に、オージオグラムの読み取りは、外傷後の聴力損失の50%の回復を可能にする化合物(1)の有効量(ED50=3.61μM)の決定を可能にした(図8)。
【0087】
第2相(Phase II): 蝸牛ラセンに沿った細胞消失及び聴力損失に対して後治療において蝸牛外灌流によって投与された化合物(1)の保護効果の実証。外傷後に化合物(1)が聴覚の50%の回復を可能にする時間の決定。
【0088】
化合物(1)の後投与:
予備研究により、暴露後に行った蝸牛開口術(cochleostomy)は音の外傷効果をさらに悪化させることが明らかにされた。このようにして、外傷後に埋め込まれた動物は、回復しないし、また埋め込まれていない動物も回復しない。蝸牛開口術(cochleostomy)に関連した外傷を除くために、本発明者らは、本発明の化合物を直接に正円窓(蝸牛外)に投与することによる非外傷法(non-traumatic method)を開発した。
【0089】
浸透圧ミニポンプを皮膚の下に埋め込み、動物が音響外傷を受けた30分、1時間、3時間、6時間、12時間又は24時間後に、化合物(1)をカテーテルで蝸牛に送達した(蝸牛外灌流)。
【0090】
この実験は動物30匹について行った。
【0091】
化合物(1)を、浸透圧ミニポンプ(流量1μl/時間、容量200μl、拡散期間7日間)による中耳の外傷(蝸牛内灌流)の48時間前あるいは1時間、3時間、6時間、12時間又は24時間後に投与した。このミニポンプは、中耳に永久的に埋め込まれ、前記化合物を正円窓に直接に拡散させる。
【0092】
これらの実験は、化合物(1)の休薬期間(DH)、すなわち化合物(1)が外傷後に保護効果を実証しながら示すことができる最大時間の決定を可能にする。外傷後に失われた聴覚の50%の回復を可能にする有効時間(ET50)も調べた。この方法はまた、音響外傷1ヶ月後に、外傷によって生じたラセン蝸牛に沿った細胞消失に対して300μMの用量で化合物(1)の保護効果の測定を可能にした。
【0093】
第2相の結果
300μMの濃度での化合物(1)
機能試験:オージオグラム
外傷後1時間で、化合物(1)は聴覚の90%を維持する。化合物(1)が外傷後に聴覚の50%を維持しながら示すことができる時間は、6〜7時間と決定された。化合物(1)の治療窓は、120 dBで30分間の音響外傷後24時間である。これは、このモデルにおいて化合物(1)が音響外傷後の最初の24時間活性であることを意味する(図9:音響外傷後10日間行ったオージオグラム)。
【0094】
形態学的研究:音響外傷後1ヶ月の蝸牛ラセンに沿った細胞の組織学
音響外傷の6時間後に開始した300μMの化合物(1)の蝸牛外灌流は、音響外傷の1ヶ月後に聴覚有毛細胞の大部分をまだ保護している。実際に、雑音に暴露されるが化合物(1)で処理されない反対側(contralateral side)(この場合には内部聴覚有毛細胞の86%及び外部聴覚有毛細胞の62%が音響障害によって損傷した領域に存在しない)と比べて、内部聴覚有毛細胞の32%及び外部聴覚有毛細胞の18%が音響障害によって損傷した領域に存在しないだけである。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】ゲンタマイシンによって誘発される聴覚有毛細胞の消失に対して同時治療として投与される化合物1の保護効果を示した説明図である。
【図2】電極及びミニポンプの配置を示した説明図である。
【図3】音響外傷後の聴力損失に対する化合物(1)の保護効果を表すオージオグラムである。
【図4】120 dBで30分間の外傷後の内部聴覚有毛細胞及び外部聴覚有毛細胞の走査顕微鏡写真である。Iは内部聴覚有毛細胞、Oは外部聴覚有毛細胞を示す。
【図5A】音響外傷後の外部蝸牛細胞の走査顕微鏡写真である。
【図5B】音響外傷後の100μMの化合物(1)の局所投与の外部蝸牛細胞の走査顕微鏡写真である。
【図6A】音響外傷後の聴覚有毛細胞の走査顕微鏡写真である。
【図6B】音響外傷後の100μMの化合物(1)の局所投与の聴覚有毛細胞の走査顕微鏡写真である。
【図7A】音響外傷に暴露された蝸牛の走査顕微鏡写真である。
【図7B】音響外傷後の100μMの化合物(1)の局所投与の蝸牛の走査顕微鏡写真である。
【図8】化合物(1)の用量応答曲線である
【図9】音響外傷後10日間行ったオージオグラムである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、聴力損失を予防及び/又は治療することを目的とした医薬を製造するための、カルパイン阻害活性と、活性酸素種(ROS)を捕捉する活性とを有するフェノチアジン誘導体の使用に関する。本発明はまた、少なくとも1種のこのような化合物を含有する製品及びそれを含有する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
聴力損失の多くの原因の中から、特に髄膜炎又は耳炎などの病気、遺伝的要因、外傷、腫瘍、薬物、医薬 例えばある種の抗生物質、抗癌薬、非ステロイド系抗炎症剤、利尿薬、潰瘍薬又は抗痙攣剤の投与、トルエン又はキシレンなどの芳香族有機溶媒に対する長期暴露、老化及び騒音に対する暴露を挙げ得る。雑音(noise)や及び医薬の投与に長期間暴露された老人性難聴(老化に関連した難聴)は、聴力損失の主な原因である。
【0003】
現在、アミノグリコシド群のある種の抗生物質、例えばゲンタマイシン又はトブラマイシン(これらは重篤な感染症の治療に使用される)が迷路性難聴の原因であることは周知である。アミノシド類(アミノグルコシド類、例えばアミカシン、ジベカシン、ゲンタマイシン、イセパマイシン、ネチルマイシン、スペクチノマイシン、トブラマイシン)に対する毒性は、初期には聴力損失により高い頻度で現れ、最初は患者によって認識されない。患者は次第にこれによって悩まされるであろう。あいにく、聴力損失は不可逆的である場合が多い。
【0004】
我々の周囲の雑音は、我々の聴力機能を低下させる。雑音によって引き起こされる聴力損失は、音を内耳の方に運ぶ聴覚有毛細胞が損傷を受け、もはや聴覚神経に電気パルスを脳に送ることを命令することができない場合に生じる。
【0005】
音量と暴露の期間が、聴力損失に影響を及ぼす2つの主な因子である。雑音に対する暴露に対する反応はあるヒトから次のヒトまで変化するが、幾つかの因子を確信をもって報告することができる。研究により、85デシベル(dB)又はそれ以上の雑音に対する長期暴露は、時間と共に永続的な聴力損失を引き起こすことが明らかにされている。
【0006】
欧州及び北アメリカの統計は、集団の8〜10%が蝸牛症(聴力損失、難聴、耳鳴)をわずらっていることを明らかにしている。ディスコ、テクノ音楽コンサート及びウォークマンによって生じる音量があるとすれば、全ての世代で耳の聞こえない人々及び耳鳴りに苦しんでいるヒトが生み出されつつある。従って、最近は約60歳で始まる年齢に関連した問題(老人性難聴)は、さらに早く始まる、すなわち約35〜40歳で始まる。
【0007】
聴覚病理(auditory pathologies)に関する問題は、その大多数が内耳(又は蝸牛)の聴覚有毛細胞及び神経細胞の消失に起因することである。これらの細胞は、本質的に子宮内にある発生段階を過ぎて、分化の最終段階の後にはそれ自体新しくなる能力を持たない。
【0008】
種々の蝸牛病理(cochlear pathologies)に関連した耳の感覚及び神経能力の進行する喪失は、今日でもまだ治療の範囲を超えていると思われる。
【発明の開示】
【0009】
従って、発明の主題は、聴力損失を予防及び/又は治療することを目的とした医薬を製造するためのジアステレオ異性体又はこれらの異性体の任意の組み合わせの形の式
〔式中、Rは水素原子、(C1〜C6)アルキル基、アリールアルキル基又は−C(O)R´基を表し、前記の基のR´はヘテロシクロアルキル基、(C1〜C6)アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す;
但し、前記のアルキル基、アリール基又はヘテロシクロアルキル基は、場合により(C1〜C6)アルキル基、ヒドロキシ基、(C1〜C6)アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子又は−NR1R2から選択される1個又はそれ以上の同一又は異なる置換基で置換されていてもよく;R1及びR2は、独立して水素原子又は(C1〜C6)アルキル基を表すか、あるいはR1及びR2は、これらを結合している窒素原子と一緒になって場合により置換されていてもよい複素環を形成する〕
に対応する複素環誘導体の使用である。
【0010】
本願明細書において、“外傷”とは、外部物質によって引き起こされる組織及び器官を含む一群の局所病変を意味する。音響外傷の場合には、外部物質は主として騒音である。
【0011】
(C1〜C6)アルキル基とは、1〜6個の炭素原子を含有する線状又は分岐アルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基及びtert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基を意味する。(C1〜C6)アルコキシ基は、前記のアルキル基に対応することができ、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基又はイソプロピルオキシ基、あるいはまた線状、二級又は三級ブトキシ基であり得る。アルキルカルボニル基は、前記のアルキル基に対応することができ、例えばメチルカルボニル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基であり得る。ハロゲン原子とは、弗素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を意味する。
【0012】
アリール基とは、少なくとも1個の芳香族環を含有する炭素環式又は複素環式の系を意味し、系はそれを構成する複数の環の少なくとも一つが異種原子(O、N又はS原子)を含有する場合には複素環式と呼ばれる。炭素環式アリール基の例としては、フェニル基又はナフチル基を挙げることができる。複素環式アリール基(ヘテロアリール基)の例としては、チエニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、イソチアゾリル基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジル基、ベンゾチエニル基、ベンゾフリル基及びインドリル基を挙げることができる。
【0013】
複素環(すなわちヘテロシクロアルキル)という用語は、好ましくはO、N又はS原子から選択される1〜5個の異種原子を含有する飽和又は不飽和単環式又は二環式複素環を表す。その窒素原子は、場合によりアルキル基、アリール基、アラルキル基及びアルキルカルボニル基から選択される基で置換することができる。飽和複素環の例として、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、オキセタン、オキセパン、テトラヒドロチオフェン、テトラヒドロチオピラン、チエタン、ピロリジン、ピペリジン、アゼチジン、1,3-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、1,3-ジチオラン、1,3-ジチアン、1,3-オキサチオラン、1,3-オキサゾリジン、1,3-イミダゾリジン又は1,3-チアゾリジンを挙げることができる。不飽和複素環の例としては、ジヒドロチオフェン、ジヒドロフラン、ジヒドロピロール、ジヒドロイミダゾール、ジヒドロピラゾール、ジヒドロピリジン、インドリンを挙げ得る。
【0014】
アリールアルキル(すなわちアラルキル)基は、アリール基及びアルキル基それぞれが前記の意義を有する基、例えばベンジル基、フェネチル基又はナフチルメチル基を意味する。
【0015】
式−NR1R2(式中、R1及びR2はこれらを結合している窒素原子と一緒になって場合により置換されていてもよい複素環を形成する)で示される基の場合には、前記複素環は飽和されていることが好ましく且つ4〜7員と、すでに存在する窒素原子を含めて1〜3個の異種原子とからなる。上記の追加の異種原子は、O、N及びS原子によって構成される群から独立して選択される。前記の複素環は、例えば、アゼチジン環、ピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環又はチオモルホリン環であり得る。前記の複素環は、ヒドロキシ基、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子から選択される1個又はそれ以上の同一又は異なる置換基で置換されることができる。
【0016】
さらに詳しくは、本発明の主題は、Rが-C(O)R´を表し且つ好ましくはR´がアルキル基を表すことを特徴とする前記の使用である。
【0017】
極めて好ましくは、化合物(I)はRが-C(O)-CH3を表すことを特徴とする。後者の化合物は、以下、化合物(I)として知られるであろう。
【0018】
さらに詳しくは、本発明の主題は、Rが水素原子を表すことを特徴とする前記の使用である。
【0019】
また、極めて好ましくは、前記の化合物(I)は式
さらに詳しくは次式
の一つを有する。
【0020】
また、極めて好ましくは、前記の化合物(I)は式
さらに詳しくは次式
の一つを有する。
【0021】
前記の化合物は、酸化防止効果及び抗カルパイン効果を兼ね備える保護剤であり、国際出願公開第WO01/32654号パンフレットに記載されている。
【0022】
従って、本発明の主題はまた、聴力損失の原因に関する治療前又は治療後における前記の式(I)で示される化合物の使用である。
【0023】
本発明の主題はまた、別の医薬の投与の後の聴力損失を予防及び/又は治療することを目的とした医薬を製造するための前記の式(I)で示される化合物の使用である。好ましくは、前記の別の医薬は、ゲンタマイシンなどの抗生物質、シスプラチンなどの抗癌薬、サリチル酸の誘導体又はイブプロフェンなどの非ステロイド系抗炎症剤、フロセミドなどの利尿薬、シメチジン又は オメプラゾールなどの抗潰瘍薬、カルバマゼピン又はバロプロ酸などの抗痙攣薬である。前記の別の医薬は、抗生物質、特にゲンタマイシンであることが極めて好ましい。
【0024】
本発明の主題はまた、老人性難聴の後の聴力損失を予防及び/又は治療することを目的とした医薬を製造するための前記の式(I)で示される化合物の使用である。
【0025】
本発明の主題はまた、音響外傷の後の聴力損失を予防及び/又は治療することを目的とした医薬を製造するための前記の式(I)で示される化合物の使用である。
【0026】
本発明の化合物は、単独で使用できるし又は医薬活性をもつ少なくとも1種の別の物質、好ましくは聴力損失を予防及び/又は治療することができるかあるいは聴力損失に関連した病気を予防及び/又は治療することができる物質と組み合わせて使用できる。
【0027】
前記化合物は、酸化防止剤、ロイペプチン又はNeurodurなどのカルパイン阻害剤、EGb 761(登録商標)などの末梢血管拡張剤、NMDA受容体の作動薬又は拮抗薬、D-JNK-1などのc-Jun N末端キナーゼのペプチド阻害剤と組み合わせることができる。
【0028】
本発明の主題はまた、医薬活性をもつ少なくとも1種の別の物質、好ましくは酸化防止剤、カルパイン阻害剤、末梢血管拡張剤、NMDA受容体の作動薬又は拮抗薬、c-Jun N末端 キナーゼのペプチド阻害剤から選択される物質と組み合わせることを特徴とする前記の使用である。
【0029】
式(I)で示される化合物、好ましくは前記の化合物(1)は、局部施用として50〜500 μMからなる用量で投与することができる。局所蝸牛内治療の場合には、前記化合物は50〜200μMからなる用量で投与することができる。局所蝸牛外治療の場合には、前記化合物は200〜500μMからなる用量で投与することができる。場合によりこれらと組み合わせられる物質であって、薬理学において公知の物質が、標準的に推奨される用量で投与される。
【0030】
前記の化合物及び場合によりこれらと組み合わせられる医薬活性を持つ物質は、標準的な投与経路、例えば経口、腹腔内、皮下又は静脈内経路で投与することができる。これらの物質は、同じ投与経路又は異なる投与経路で同時に又は別々に投与することができる。好ましくは、前記の化合物(I)は、内耳の治療に常用される方法、例えばマイクロカテーテル、経鼓膜注入用注射器又はSilverstein Microwick型の芯(wick)を備えたチューブで局所投与される。
【0031】
本発明の主題はまた、ジアステレオマーの形又はこれらジアステレオマーの形の組み合わせの形の前記の式(I)で示される複素環誘導体と、治療活性をもつ少なくとも1種の物質とを、聴力損失を予防及び/又は治療するために同時に、別々に又は時間全体にわたって使用するための併用剤として含有する製品である。好ましくは、本発明の主題は、医薬の投与後、又は老人性難聴後、あるいは音響外傷後の聴力損失を予防及び/又は治療するための前記の製品である。
【0032】
最後に、本発明の主題は、医薬としての前記の製品である。
【0033】
医薬の投与後の聴力損失の場合には、医薬は抗生物質、好ましくはゲンタマイシンであることが好ましい。
【0034】
医薬活性をもつ物質であって、場合により併用される物質は、考慮される治療分野でこれらの物質について通常想定される投与経路で投与される。
【0035】
音響外傷によって引き起こされる聴力損失の場合には、前記の化合物(I)の投与は、音響外傷の数日前に、好ましくは外傷の2〜3日前に、及び外傷後24時間に生じ得る。好ましくは、この投与は音響外傷のあとの7日以内に生じる。また好ましくは、この投与は音響外傷のあとの2時間以内に生じ得る。
【0036】
従って、本発明の主題は、ジアステレオマーの形又はこれらジアステレオマーの形の任意の組み合わせの形の前記の化合物(1)を外傷の後の7時間以内に、好ましくは1時間以内に投与することを特徴とする前記の使用である。
【0037】
音響外傷後の機能回復について化合物(1)の治療有効性を示す結果を、実験の部に示す。
【0038】
以下の実施例は前記の方法を例証する目的で示すものであり、いかなる場合にも本発明の範囲を限定するとみなされるべきではない。
【実施例】
【0039】
実験の部:
薬理学的研究
1)ゲンタマイシンを用いた治療によって誘発される中毒性難聴
ゲンタマイシンによって誘発される聴覚有毛細胞の消失に対して同時治療として投与される化合物1の保護効果の実証
ゲンタマイシン及びその他のアミノグリコシドは、ヒトにおいて聴覚有毛細胞に対する損傷及び聴力損失を引き起こすことが明らかにされている。ゼブラフィッシュは、その体表面に神経小丘と呼ばれる感覚器を示す。この魚の場合には、神経小丘聴覚有毛細胞はDASPEIを用いて染色することができ、この染色は聴覚有毛細胞の数を反映する。この聴覚有毛細胞はヒトの耳の内部聴覚有毛細胞と構造的及び機能的に類似している。
【0040】
内部聴覚有毛細胞に対する損傷は、ゼブラフィッシュではゲンタマイシンによって引き起こされる。ゲンタマイシンによって損傷した聴覚有毛細胞の保護に関する化合物(1)の効果を試験するために、化合物(1)をゲンタマイシンとの同時治療剤として投与した。次いで、内部聴覚有毛細胞を染色し、定量した。
【0041】
この研究は、化合物(1)の存在下又は不存在下で1μg/mlのゲンタマイシンと共に24時間インキュベートした5日齢の魚について行なった。対照は、並行して行なった;単一のビヒクル(1%DMSO;陽性対照)。ゲンタマイシンを用いて処理した魚は、陰性対照である。
【0042】
DASPEI(2,4-ジメチル-アミノスチリル-N-エチルピリジニウムヨージド)染色を行って、聴覚有毛細胞を生体内で視覚化した(1群当たりn=5)。形態計測分析を使用して、聴覚有毛細胞の染色信号を定量した。陽性対照のDASPEI染色信号を100%と定義した。
【0043】
得られた結果を図1に示す(DASPEIで染色された聴覚有毛細胞の%)。陽性対照(ゼブラフィッシュ − 1%DMSO);陰性対照(ゼブラフィッシュ − 1%DMSO − ゲンタマイシン1μg/ml)及び製品の効果(ゼブラフィッシュ − 1%DMSO − ゲンタマイシン−化合物1)。実験は1群当たり5匹の動物について行った。
【0044】
図1の結果は、
− 陰性対照の染色信号は対照の信号の31.5±4.2%に相当するか、又はゲンタマイシンを用いて処理した後の聴覚有毛細胞の68.5±4.9%の喪失に相当すること、
− ゲンタマイシンと化合物1を用いて処理した動物の染色信号は、対照の信号の65.2± 4.4%に相当するか、又はゲンタマイシンを用いた処理によって損傷した聴覚有毛細胞の48.7±2.63%の極めて顕著な保護に相当すること
を示す。
【0045】
2)音響外傷後の聴力損失
これは、モルモットで音響外傷によって引き起こされた聴力損失後の、一方では内耳の聴覚有毛細胞の保護及び他方では聴覚の機能回復に関する治療前及び治療後における化合物(1)の保護効果の研究を含む。化合物(1)は、ヒトの外科臨床医学でその使用を模擬実験するように“蝸牛内又は蝸牛外”局所経路で投与した。
【0046】
この新規保護剤を用いて得られた機能回復は、前記の動物のオージオグラムの読み取りである機能試験を使用して定量化される。このオージオグラムは、聴覚神経の可能な合成作用の活動を記録することによって作成される。オージオグラムは、音響外傷の前後に記録される。走査電子顕微鏡による分析は、蝸牛ラセンに沿った細胞消失及び化合物(1)の保護効果の研究によってこの機能データを完成する。
【0047】
実験は全て、モルモットで行った:それぞれの実験は同様のスキーマに従って行った。
【0048】
実験段階の一般的なスキーマは次の通りである:
− 動物に、Rompun(登録商標)2%(3mg/kg)+Zoletil(登録商標)(40mg/kg) の混合物の筋肉内注射で麻酔をかけた。この麻酔は、急速に消散するという利点を有し且つ最初の用量の3分の1の規則的注射(2時間毎)によって数時間維持することができる。
【0049】
− 図2の電極及びミニポンプの配置。
【0050】
蝸牛には背部からのアクセスで近づいた。頭部の毛を剃り、きれいにした後に、耳介の後に2cmの切開を行った。鼓室胞を覆う耳下面及び筋肉面を横たえた。乾燥し、きれいにしたら直ちに、骨に顔面神経が現れる場所の下の上部壁に穴を開けた。次いで、活性電極(テフロンで覆われた直径0.13mmの白金線)を鼓室胞の中に導入し、手術用顕微鏡(WILD M650)の制御下で正円窓の膜と接触させて配置した。計量(metric)聴覚閾値を記録した後に、直径0.2 mmの小さな穴を、正円窓の真下の鼓室神経小管の基底回転(basal turn)で相互に円錐形に広げた。
【0051】
マイクロポンプにカテーテルを介して連結されたガラスピペット(先端で直径0.1 mm)を、第二のマイクロマニピュレーターを使用して蝸牛に挿入した。
【0052】
記録電極及び灌流ピペットを含んでいる鼓室胞を、歯科用樹脂で閉じた。
【0053】
マイクロポンプを動物の皮膚の下で滑らせ、筋肉面及び皮膚面にベタジンを塗布し、吸収性縫合糸で縫合し、抗生物質溶液〔Rifocin 5P100(登録商標)〕で覆った。
【0054】
次いで、動物の頭蓋骨上にコネクター(Connectral製、ref.:8/45-05.050.000)を固定する目的で頭頂に約1.5cmの第二の切開を行った。頭蓋骨の骨膜を擦り落とした後に、この領域を注意深く乾燥し、硝酸銀を塗布し、次いでシラノライト(cyanolite)のフィルムで覆った。
【0055】
前記の(活性及び参照)電極を、皮膚の下でこれらが結合されるコネクターまで滑らせた。次いで、コネクターを、歯科用樹脂を用いて頭蓋骨に固定した。
【0056】
刺激方法:
音刺激を、2つのヒューレット・パッカードシンセサイザー(HP 3314 A及びHP 8904 A)を使用して生じさせ、耳から10cm離して配置したラウンドスピーカー(JBL 075)を用いて自由野で伝えた。音響装置の較正は、人工内耳で1/2インチマイクロホン(型式4134、Bruel and Kjaer)及びデシベルSP(dB SPL、reference:2.10-5 Pa)の音響レベルの直接読み取りを可能にする測定用アンプ(型式2606)を使用して行った。音響信号を表示するために、測定用アンプの出力をオシロスコープに接続した。動物を6 kHzの音に、120 dB SPLで30分間暴露した。
【0057】
記録方法
動物の頭部に固定されたコネクターを経由して蝸牛に埋め込まれた電極によって記録された蝸牛の反応を増幅し(増幅率1000)、プレアンプ及びGRASS P 511 K型の差動増幅器を使用してフィルターにかけた(32 Hz〜3200 Hz)。ダイレクトトレース(direct trace)をオシロスコープ(Tektronix type 513)上に表示した。この信号を平均して(256パス)バックグラウンドノイズを減少させ、486 PCコンピューター、66メガヘルツ(Hewlett-Packard-Vectra 05/65)に保存した。限界基準を、測定可能な応答( >2μV)を生じさせるのに必要なdB SPL値と定義した。蝸牛(正円窓)と接触させて配置した電極は、それぞれの耳について蝸牛反応及びオージオグラムの生成を可能にする。計量音響閾値を、音響外傷の20分後に記録し、1ヶ月間毎日記録した。
【0058】
音響外傷後のカルパインの活性化の関与:
音響外傷後のカルパイン酵素の活性を測定することを目的として、カルパインの特異基質(ホドリン)の切断を定量した。カルパインは、240 KDのホドリンを切断して150 KDの分解生成物を生成する。二重マーキング(marking)を、150 KDの断片に特異的なポリクロナール抗体と、聴覚有毛細胞の確認を可能にする抗カルビンジン抗体とを用いて行った。蛍光は共焦点顕微鏡を用いて示された。
【0059】
音響外傷後の聴覚有毛細胞の死滅の分子メカニズム:
細胞死の性質を調べることを目的として、蝸牛細胞のDNAの断片化を、TUNEL法を使用して定量した。
【0060】
音響外傷後の聴覚有毛細胞の完全性の測定:
蝸牛細胞の完全性を、免疫細胞化学により抗シトクロムC抗体を使用して調べた。健常細胞では、シトクロムCはミトコンドリアに局在する。音響外傷後に、シトクロムCは細胞質に拡散され、分配される。
【0061】
第1相(Phase I):外傷によって引き起こされた聴力損失及び蝸牛ラセンに沿った細胞消滅に対する前治療として投与された化合物(1)の保護効果の実証:
プロトコール − 第1相:化合物(1)の前投与
皮膚の下に配置された浸透圧ミニポンプは、化合物(1)を送達する。
【0062】
動物に、ミニポンプの埋め込んだ2日後にカテーテルで蝸牛内部に音響外傷を与えた(蝸牛内灌流)。
【0063】
この実験は、7動物について行い、次いで用量応答について30動物について行った。
【0064】
化合物(1)を、外傷の2日前に、蝸牛内に永久的に埋め込んだ浸透圧ミニポンプ(流量1μl/時間、容量200μl、拡散期間7日間)によって蝸牛に直接に投与した。この方法は、外傷によって生じた蝸牛ラセンに沿った細胞消失と聴覚の機能回復に関して、100μMの用量で化合物(1)の保護効果の測定を可能にする。この場合に、化合物の用量効果は、聴覚の50%を保存することを可能にする有効用量の決定を可能にする。
【0065】
第1相の結果
100μMの濃度の化合物(1)
オージオグラムで測定した機能試験。音響外傷後の聴力損失及び化合物1による保護
120 dBで30分間の外傷後5日目に、オージオグラムの読み取りは、化合物(1)の有効性を実証することを可能にした;この化合物は、この外傷の2日前に100μMで灌流させた場合に聴覚の100%の回復を可能にした(図3)。
【0066】
形態学的研究:音響外傷後の蝸牛ラセンに沿った細胞の組織学。化合物(1)による保護
電気生理学的評価(オージオグラム)の終わり、すなわち音響外傷後30日目に、動物の蝸牛を採取し、電子顕微鏡用に調製した。
【0067】
細胞消失を、走査顕微鏡を用いて線毛の房状分岐を数えることによって調べた。定量データは、コルチ(Corti)器の表面の高拡大観察を行うことによって得た。
【0068】
120 dBで30分間の外傷の後に、内部聴覚有毛細胞が破壊され且つ外部聴覚有毛細胞の3列の幾つかが破壊された。これらの細胞の組織学は、化合物(1)の有効性を実証することを可能にする。この化合物は、この外傷の2日前に100μMで灌流させた場合に内部聴覚有毛細胞の100%及び外部聴覚有毛細胞の大部分を保護することを可能にした(図4:組織学的データ;写真A:音響外傷;写真B:化合物(1)+音響外傷;I=内部聴覚有毛細胞;0=外部聴覚有毛細胞)。
【0069】
音響外傷後のカルパインの活性化の関与。化合物1による阻害。
【0070】
カルパイン酵素の活性化を、酵素の特異基質ホドリンの150 KD断片への分解の定量によって調べた。
【0071】
ホドリンのこの切断は、対照の蝸牛細胞では検出されなかった。
【0072】
音響外傷後に、カルパイン酵素の活性化によるホドリンの切断により生じる150KD 断片の免疫マーキングは、抗FBDP抗体を用いたマーキングにより外部蝸牛細胞上で目視できた(“ホドリン分解性生物”、緑色蛍光;図5A:音響外傷後48時間)。音響外傷後のカルパイン活性のこの活性化は、無傷の聴覚有毛細胞の確認を可能にする抗カルビンジン抗体によるマーキングが存在しないことによって視覚化された蝸牛の細胞の消失に関連する。
【0073】
100μMの化合物(1)(カルパイン活性化阻害剤及び酸化防止剤)の局所投与は、音響外傷に暴露された蝸牛細胞においてカルパイン酵素によるホドリンの切断を防止する。この緑色蛍光マーキングが存在しないこと、すなわち、カルパインの特異基質の非分解(non-degradation)が存在しないことは、蝸牛細胞の保護と関係があった(抗カルビンジン抗体を用いたマーキング;図5B)。
【0074】
音響外傷後の聴覚有毛細胞の死滅の分子メカニズム。化合物1による保護。
【0075】
音響外傷によって生じた蝸牛細胞の死滅の性質を調べるために、DNAの断片化(TUNEL法で定量される)を、音響外傷を受けている動物について行った。化合物1の効果を、このパラメーターについて試験して、このアポトーシスによる細胞死滅のメカニズムによるその関与を調べた。
【0076】
“TUNEL陽性”細胞は、雑音に暴露されなかった対照動物から得た蝸牛では認められなかった。
【0077】
音響外傷に暴露された蝸牛は、コルチ器の領域にTUNEL陽性の細胞核を有していた(図6A:音響外傷後48時間)。標識された核は、コルチ器の上部領域に局在した。従って、これらの標識された核は支持細胞よりもむしろ聴覚有毛細胞に属すると思われる。多数の標識された核が音響外傷後1時間で目視することができ、この標識は音響外傷後4日目でもまだ目視することができた。従って、音響外傷後の聴覚有毛細胞の細胞死滅は、DNAの断片化に関連したアポトーシスメカニズムによって得られる。
【0078】
100μMの化合物(1)(カルパイン活性化阻害剤及び酸化防止剤)の局所投与は、聴覚有毛細胞の核のマーキングを妨げた(TUNEL法、図6B: 化合物(1) − 音響外傷後48時間)。化合物(1)は、音響外傷で生じたアポトーシスによる細胞死を抑制した。
【0079】
音響外傷後の聴覚有毛細胞の完全性の喪失。化合物(1)による保護。
【0080】
音響外傷後の聴覚有毛細胞の完全性の喪失を調べることを目的として、抗シトクロムC抗体の使用による免疫細胞化学によるシトクロムCの拡散を、音響外傷を受けた動物で行った。
【0081】
化合物(1)を、音響外傷後の聴覚有毛細胞の完全性の喪失に対するその効果を調べることを目的として、ミトコンドリア区画(compartment) から細胞質区画へのシトクロムCの放出について試験した。
【0082】
雑音に暴露されなかった対照動物から得られた蝸牛では、シトクロムCはミトコンドリア内に局在する。
【0083】
音響外傷に暴露された蝸牛は、細胞質内に拡散し且つ分配されたシトクロムCのマーキングを示した(図7A)。
【0084】
100μMの化合物(1)(カルパイン活性化阻害剤及び酸化防止剤)は、シトクロムC音響外傷に暴露された聴覚有毛細胞のミトコンドリアから細胞質に向かう分散を防止し、従って細胞の完全性を維持した(図7B)。
【0085】
化合物(1)の用量応答
化合物(1)の保護効果を、聴力損失の50%を回復させる有効量(ED50)を規定することを目的として用量を変化させることによって評価した。動物5匹からなる8群、例えば人工外リンパのみを受けいれた群及び化合物(1)1μM、3μM、10μM、33μM及び100μMを受け入れた群、すなわち動物30匹を使用した。
【0086】
120 dB、30分間の外傷後5日目に、オージオグラムの読み取りは、外傷後の聴力損失の50%の回復を可能にする化合物(1)の有効量(ED50=3.61μM)の決定を可能にした(図8)。
【0087】
第2相(Phase II): 蝸牛ラセンに沿った細胞消失及び聴力損失に対して後治療において蝸牛外灌流によって投与された化合物(1)の保護効果の実証。外傷後に化合物(1)が聴覚の50%の回復を可能にする時間の決定。
【0088】
化合物(1)の後投与:
予備研究により、暴露後に行った蝸牛開口術(cochleostomy)は音の外傷効果をさらに悪化させることが明らかにされた。このようにして、外傷後に埋め込まれた動物は、回復しないし、また埋め込まれていない動物も回復しない。蝸牛開口術(cochleostomy)に関連した外傷を除くために、本発明者らは、本発明の化合物を直接に正円窓(蝸牛外)に投与することによる非外傷法(non-traumatic method)を開発した。
【0089】
浸透圧ミニポンプを皮膚の下に埋め込み、動物が音響外傷を受けた30分、1時間、3時間、6時間、12時間又は24時間後に、化合物(1)をカテーテルで蝸牛に送達した(蝸牛外灌流)。
【0090】
この実験は動物30匹について行った。
【0091】
化合物(1)を、浸透圧ミニポンプ(流量1μl/時間、容量200μl、拡散期間7日間)による中耳の外傷(蝸牛内灌流)の48時間前あるいは1時間、3時間、6時間、12時間又は24時間後に投与した。このミニポンプは、中耳に永久的に埋め込まれ、前記化合物を正円窓に直接に拡散させる。
【0092】
これらの実験は、化合物(1)の休薬期間(DH)、すなわち化合物(1)が外傷後に保護効果を実証しながら示すことができる最大時間の決定を可能にする。外傷後に失われた聴覚の50%の回復を可能にする有効時間(ET50)も調べた。この方法はまた、音響外傷1ヶ月後に、外傷によって生じたラセン蝸牛に沿った細胞消失に対して300μMの用量で化合物(1)の保護効果の測定を可能にした。
【0093】
第2相の結果
300μMの濃度での化合物(1)
機能試験:オージオグラム
外傷後1時間で、化合物(1)は聴覚の90%を維持する。化合物(1)が外傷後に聴覚の50%を維持しながら示すことができる時間は、6〜7時間と決定された。化合物(1)の治療窓は、120 dBで30分間の音響外傷後24時間である。これは、このモデルにおいて化合物(1)が音響外傷後の最初の24時間活性であることを意味する(図9:音響外傷後10日間行ったオージオグラム)。
【0094】
形態学的研究:音響外傷後1ヶ月の蝸牛ラセンに沿った細胞の組織学
音響外傷の6時間後に開始した300μMの化合物(1)の蝸牛外灌流は、音響外傷の1ヶ月後に聴覚有毛細胞の大部分をまだ保護している。実際に、雑音に暴露されるが化合物(1)で処理されない反対側(contralateral side)(この場合には内部聴覚有毛細胞の86%及び外部聴覚有毛細胞の62%が音響障害によって損傷した領域に存在しない)と比べて、内部聴覚有毛細胞の32%及び外部聴覚有毛細胞の18%が音響障害によって損傷した領域に存在しないだけである。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】ゲンタマイシンによって誘発される聴覚有毛細胞の消失に対して同時治療として投与される化合物1の保護効果を示した説明図である。
【図2】電極及びミニポンプの配置を示した説明図である。
【図3】音響外傷後の聴力損失に対する化合物(1)の保護効果を表すオージオグラムである。
【図4】120 dBで30分間の外傷後の内部聴覚有毛細胞及び外部聴覚有毛細胞の走査顕微鏡写真である。Iは内部聴覚有毛細胞、Oは外部聴覚有毛細胞を示す。
【図5A】音響外傷後の外部蝸牛細胞の走査顕微鏡写真である。
【図5B】音響外傷後の100μMの化合物(1)の局所投与の外部蝸牛細胞の走査顕微鏡写真である。
【図6A】音響外傷後の聴覚有毛細胞の走査顕微鏡写真である。
【図6B】音響外傷後の100μMの化合物(1)の局所投与の聴覚有毛細胞の走査顕微鏡写真である。
【図7A】音響外傷に暴露された蝸牛の走査顕微鏡写真である。
【図7B】音響外傷後の100μMの化合物(1)の局所投与の蝸牛の走査顕微鏡写真である。
【図8】化合物(1)の用量応答曲線である
【図9】音響外傷後10日間行ったオージオグラムである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
聴力損失を予防及び/又は治療することを目的とした医薬を製造するためのジアステレオ異性体又はこれらの異性体の任意の組み合わせの形の式
〔式中、Rは水素原子、(C1〜C6)アルキル基、アリールアルキル基又は−C(O)R´基を表し、前記の基のR´はヘテロシクロアルキル基、(C1〜C6)アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す;
但し、前記のアルキル基、アリール基又はヘテロシクロアルキル基は、場合により(C1〜C6)アルキル基、ヒドロキシ基、(C1〜C6)アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子又は−NR1R2から選択される1個又はそれ以上の同一又は異なる置換基で置換されていてもよく;R1及びR2は、独立して水素原子又は(C1〜C6)アルキル基を表すか、あるいはR1及びR2は、これらを結合している窒素原子と一緒になって場合により置換されていてもよい複素環を形成する〕
に対応する複素環誘導体の使用。
【請求項2】
Rが−C(O)R´を表すことを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項3】
R´はがアルキル基を表すことを特徴とする請求項2に記載の使用。
【請求項4】
Rが-C(O)-CH3を表すことを特徴とする請求項3に記載の使用。
【請求項5】
Rが水素原子を表すことを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項6】
化合物(I)が式
を有することを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
化合物(I)が式
を有することを特徴とする請求項6に記載の使用。
【請求項8】
化合物(I)が式
を有することを特徴とする請求項6に記載の使用。
【請求項9】
化合物(I)が式
を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
化合物(I)が式
を有することを特徴とする請求項8に記載の使用。
【請求項11】
化合物(I)が式
を有することを特徴とする請求項8に記載の使用。
【請求項12】
誘導体(I)が治療前に投与されるものであることを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載の使用。
【請求項13】
誘導体(I)が治療後に投与されるものであることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の使用。
【請求項14】
医薬の投与の後の聴力損失を予防及び/又は治療することを目的とした医薬を製造するための前記請求項のいずれか1項に記載の使用。
【請求項15】
抗生物質、抗癌薬、非ステロイド系抗炎症剤、利尿薬、抗潰瘍薬、抗痙攣剤から選択される別の医薬の投与の後の請求項14に記載の使用。
【請求項16】
抗生物質の投与の後の請求項15に記載の使用。
【請求項17】
抗生物質がゲンタマイシンアミノであることを特徴とする請求項16に記載の使用。
【請求項18】
老人性難聴の後の聴力損失を予防及び/又は治療することを目的とした医薬を製造するための請求項1〜13のいずれか1項に記載の使用。
【請求項19】
音響外傷の後の聴力損失を予防及び/又は治療することを目的とした医薬を製造するための請求項1〜13のいずれか1項に記載の使用。
【請求項20】
化合物(I)が音響外傷の後の7時間以内、好ましく1時間以内で投与されることを特徴とする請求項19に記載の使用。
【請求項21】
化合物(I)を、医薬活性をもつ少なくとも1種の別の物質と組み合わせることを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載の使用。
【請求項22】
化合物(I)を、聴力損失を予防及び/又は治療することができるかあるいは聴力損失に関係した病気を予防及び/又は治療することができる医薬活性をもつ少なくとも1種の別の物質と組み合わせることを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載の使用。
【請求項23】
医薬活性をもつ別の物質が酸化防止剤、カルパイン阻害剤、末梢血管拡張剤、NMDA受容体の作動薬又は拮抗薬及びc-Jun N末端キナーゼのペプチド阻害剤から選択されるものであることを特徴とする請求項21又は22の1項に記載の使用。
【請求項24】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の式(I)で示される複素環誘導体と、治療活性をもつ少なくとも1種の物質とを、聴力損失を予防及び/又は治療するために同時に、別々に又は時間全体にわたって使用するための併用剤として含有する製品。
【請求項25】
医薬の投与の後の聴力損失を予防及び/又は治療するための請求項24に記載の製品。
【請求項26】
抗生物質、好ましくはゲンタマイシンの投与の後の聴力損失を予防及び/又は治療するための請求項25に記載の製品。
【請求項27】
老人性難聴の後の聴力損失を予防及び/又は治療するための請求項24に記載の製品。
【請求項28】
音響外傷の後の聴力損失を予防及び/又は治療するための請求項24に記載の製品。
【請求項29】
医薬としての請求項24〜28のいずれか1項に記載の製品。
【請求項1】
聴力損失を予防及び/又は治療することを目的とした医薬を製造するためのジアステレオ異性体又はこれらの異性体の任意の組み合わせの形の式
〔式中、Rは水素原子、(C1〜C6)アルキル基、アリールアルキル基又は−C(O)R´基を表し、前記の基のR´はヘテロシクロアルキル基、(C1〜C6)アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す;
但し、前記のアルキル基、アリール基又はヘテロシクロアルキル基は、場合により(C1〜C6)アルキル基、ヒドロキシ基、(C1〜C6)アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子又は−NR1R2から選択される1個又はそれ以上の同一又は異なる置換基で置換されていてもよく;R1及びR2は、独立して水素原子又は(C1〜C6)アルキル基を表すか、あるいはR1及びR2は、これらを結合している窒素原子と一緒になって場合により置換されていてもよい複素環を形成する〕
に対応する複素環誘導体の使用。
【請求項2】
Rが−C(O)R´を表すことを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項3】
R´はがアルキル基を表すことを特徴とする請求項2に記載の使用。
【請求項4】
Rが-C(O)-CH3を表すことを特徴とする請求項3に記載の使用。
【請求項5】
Rが水素原子を表すことを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項6】
化合物(I)が式
を有することを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
化合物(I)が式
を有することを特徴とする請求項6に記載の使用。
【請求項8】
化合物(I)が式
を有することを特徴とする請求項6に記載の使用。
【請求項9】
化合物(I)が式
を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
化合物(I)が式
を有することを特徴とする請求項8に記載の使用。
【請求項11】
化合物(I)が式
を有することを特徴とする請求項8に記載の使用。
【請求項12】
誘導体(I)が治療前に投与されるものであることを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載の使用。
【請求項13】
誘導体(I)が治療後に投与されるものであることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の使用。
【請求項14】
医薬の投与の後の聴力損失を予防及び/又は治療することを目的とした医薬を製造するための前記請求項のいずれか1項に記載の使用。
【請求項15】
抗生物質、抗癌薬、非ステロイド系抗炎症剤、利尿薬、抗潰瘍薬、抗痙攣剤から選択される別の医薬の投与の後の請求項14に記載の使用。
【請求項16】
抗生物質の投与の後の請求項15に記載の使用。
【請求項17】
抗生物質がゲンタマイシンアミノであることを特徴とする請求項16に記載の使用。
【請求項18】
老人性難聴の後の聴力損失を予防及び/又は治療することを目的とした医薬を製造するための請求項1〜13のいずれか1項に記載の使用。
【請求項19】
音響外傷の後の聴力損失を予防及び/又は治療することを目的とした医薬を製造するための請求項1〜13のいずれか1項に記載の使用。
【請求項20】
化合物(I)が音響外傷の後の7時間以内、好ましく1時間以内で投与されることを特徴とする請求項19に記載の使用。
【請求項21】
化合物(I)を、医薬活性をもつ少なくとも1種の別の物質と組み合わせることを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載の使用。
【請求項22】
化合物(I)を、聴力損失を予防及び/又は治療することができるかあるいは聴力損失に関係した病気を予防及び/又は治療することができる医薬活性をもつ少なくとも1種の別の物質と組み合わせることを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載の使用。
【請求項23】
医薬活性をもつ別の物質が酸化防止剤、カルパイン阻害剤、末梢血管拡張剤、NMDA受容体の作動薬又は拮抗薬及びc-Jun N末端キナーゼのペプチド阻害剤から選択されるものであることを特徴とする請求項21又は22の1項に記載の使用。
【請求項24】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の式(I)で示される複素環誘導体と、治療活性をもつ少なくとも1種の物質とを、聴力損失を予防及び/又は治療するために同時に、別々に又は時間全体にわたって使用するための併用剤として含有する製品。
【請求項25】
医薬の投与の後の聴力損失を予防及び/又は治療するための請求項24に記載の製品。
【請求項26】
抗生物質、好ましくはゲンタマイシンの投与の後の聴力損失を予防及び/又は治療するための請求項25に記載の製品。
【請求項27】
老人性難聴の後の聴力損失を予防及び/又は治療するための請求項24に記載の製品。
【請求項28】
音響外傷の後の聴力損失を予防及び/又は治療するための請求項24に記載の製品。
【請求項29】
医薬としての請求項24〜28のいずれか1項に記載の製品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図8】
【図9】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図2】
【図3】
【図8】
【図9】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【公表番号】特表2007−530640(P2007−530640A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−505576(P2007−505576)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【国際出願番号】PCT/FR2005/000713
【国際公開番号】WO2005/092345
【国際公開日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(505474717)ソシエテ ド コンセイユ ド ルシェルシェ エ ダアップリカーション シャンティフィック(エス.セー.エール.アー.エス.) (41)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【国際出願番号】PCT/FR2005/000713
【国際公開番号】WO2005/092345
【国際公開日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(505474717)ソシエテ ド コンセイユ ド ルシェルシェ エ ダアップリカーション シャンティフィック(エス.セー.エール.アー.エス.) (41)
【Fターム(参考)】
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