説明

聴覚障害の処置用のPDE阻害剤

本発明は、聴覚障害、即ち、難聴および耳鳴りの処置用の、PDE−5阻害剤を含む医薬組成物を提供する。本発明は、また、聴覚障害、即ち、難聴および耳鳴りの処置用の医薬の製造において使用するための、そのようなPDE−5阻害剤のスクリーニング方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、ホスホジエステラーゼ(PDE)およびPDE阻害剤の薬理に関する。より具体的には、本発明は、PDE−5阻害剤、および、聴覚障害、即ち、難聴および耳鳴りの処置用の医薬を製造するためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
聴覚障害、即ち、難聴および耳鳴りは、世界中で2億5千万人を超える患者を冒しており、従って非常に一般的な疾患である。聴覚障害は、患者の生活の質を劇的に低下させ、現在のところ、適切に処置できない。難聴は、しばしば、伝音性難聴、感音性難聴、および、伝音性難聴と感音性難聴の組み合わせである混合性難聴に分類される。伝音性難聴は、外耳または中耳の障害に起因し、即ち、耳感染により引き起こされる。感音性難聴には、蝸牛障害により引き起こされる感覚性の難聴が含まれる。神経性難聴は、内耳神経の損傷に起因する。難聴の症例の殆どが感音性であり、即ち、蝸牛の損傷または有毛細胞の喪失により引き起こされる。聴覚刺激の非存在下での音の知覚と定義される耳鳴りは、しばしば、感音性難聴と関連する。耳鳴りの病態生理学は、十分に理解されていない。耳鳴りの原因は、例えば、音響性外傷、聴覚毒性薬物および感染などの難聴の原因と同様であり得るが、心理社会的要因およびストレス関連要因も含む。上記の通り、耳鳴りは、メニエール病の症状でもある。感音性難聴と同様に、耳鳴りは、最も一般的には内耳と関連し、処置するのは非常に難しい。
【0003】
現在のところ、耳鳴りおよび難聴(感音性および神経性)の処置用の臨床的に証明された薬物療法はなく、薬物療法は非常に望ましいであろう。
【発明の概要】
【0004】
発明の開示
用語「聴覚障害」は、音を知覚する能力の欠陥を表し、部分的難聴、完全難聴、聴覚消失(完全または部分的)を含み、用語耳鳴りは、存在しない音の知覚を表す。聴覚障害は、有毛細胞または神経細胞の損傷に起因することがあり、その損傷は、遺伝的障害、大きい音、聴器毒性、または、本願で記載される他のそのようなストレス要因により引き起こされる。聴覚障害には、感音性難聴、伝音性難聴、複合型難聴、軽度(25ないし40dB)、中度(41ないし55dB)、中重度(56ないし70dB)、重度(71ないし90dB)および最重度(90dB以上)の難聴、先天性難聴、言語習得前および言語習得後難聴、片側性(一方の耳を冒す)および両側性(両方の耳を冒す)難聴、または、これら、即ち、感音性/重度/言語習得後/両側性の任意の組み合わせが含まれる。
【0005】
本発明の他の態様は、10mg/kgの用量で胃管栄養により経口投与されたPDE−5阻害剤バルデナフィル10mg/kgが、有意な音響性外傷(AT)の予防およびATからの実質的な回復を示したことの証明である。(表1)。
【0006】
本発明は、聴覚障害の処置に有用なPDE−5阻害剤を提供する。特に、本発明の化合物は、シルデナフィル(3−[2−エトキシ−5−(4−メチルピペラジン−1−イル)スルホニル−フェニル]−7−メチル−9−プロピル−2.4.7.8−テトラビシクロ[4.3.0]ノナ−3,8,10−トリエン−5−オン)、タダラフィル((6R,12aR)−2,3,6,7,12,12a−ヘキサヒドロ−2−メチル−6−(3,4−メチレン−ジオキシフェニル)ピラジノ(1',2':1,6)ピリド(3,4−b)インドール−1,4−ジオン)、バルデナフィル(2−(2−エトキシ−5−(4−エチルピペラジン−1−イル−1−スルホニル)フェニル)−5−メチル−7−プロピル−3H−イミダゾ(5,1−f)(1,2,4)トリアジン−4−オン)、ウデナフィル(Udenafil)5−[2−プロピルオキシ−5−(1−メチル−2−ピロリジニルエチルアミドスルホニル)フェニル]−メチル−3−プロピル−1,6−ジヒドロ−7H−ピラゾロ(4,3−d)ピリミジン−7−オン、ダサンタフィル(Dasantafil)7−(3−ブロモ−4−メトキシベンジル)−1−エチル−8−[[(1,2)−2−ヒドロキシシクロペンチル]アミノ]−3−(2−ヒドロキシエチル)−3,7−ジヒドロ−1−プリン−2,6−ジオン、アバナフィル(Avanafil)4−{[(3−クロロ−4−メトキシフェニル)メチル]アミノ}−2−[(2S)−2−(ヒドロキシメチル)ピロリジン−1−イル]−N−(ピリミジン−2−イルメチル)ピリミジン−5−カルボキサミド、Surface Logix のSLx2101、LAS34179トリアゾロ[1,2−]キサンチン,6−メチル−4−プロピル−2−[2−プロポキシ−5−(4−メチルピペラジノ)スルホニル]フェニルである。
【0007】
本発明のまた他の態様は、上記で定義した聴覚障害の処置用の医薬の製造に使用するための、PDE阻害剤、特に、PDE−5阻害剤のスクリーニング方法である。
【0008】
本発明は、聴覚障害の処置に使用できるPDE阻害剤の同定方法(本明細書で「スクリーニングアッセイ」とも呼ばれる)を提供する。これらの方法は、ホスホジエステラーゼに結合し、かつ/または、PDE5の生物学的活性またはその発現の刺激または阻害作用を有する候補または試験化合物もしくは物質(例えば、ペプチド、ペプチド模倣薬、低分子または他の分子)の同定を含み、次いで、これらの化合物のどれが聴覚障害に関する症状または疾患に対する効果を有するかを、インビボアッセイで決定する。
【0009】
PDE−5に結合し、かつ/または、PDE−5の活性または発現の刺激または阻害作用を有する候補または試験化合物もしくは物質は、PDE−5を発現する細胞を用いるアッセイ(細胞をベースとするアッセイ)または単離されたPDE−5を用いるアッセイ(無細胞アッセイ)のいずれかで同定される。様々なアッセイは、様々なPDEの変異体(例えば、完全長PDE、PDEの生物学的に活性な断片、または、PDEの全体または一部を含む融合タンパク質)を用いることができる。さらに、PDE−5は、任意の適する哺乳動物の種に由来し得る。このアッセイは、試験化合物または既知のPDE−5リガンドのPDE−5への結合を直接的または間接的に測定することを伴う結合アッセイであり得る。このアッセイは、また、PDE−5活性の直接的または間接的測定を伴う活性アッセイであり得る。このアッセイは、また、PDE−5mRNAおよびPDE−5タンパク質の発現の直接的または間接的測定を伴う発現アッセイであり得る。様々なスクリーニングアッセイを、聴覚障害の症状に対する試験化合物の効果の測定を伴うインビボアッセイと組み合わせる。
【0010】
本発明は、薬理学的な薬物開発用のリード構造として適するPDEの阻害剤およびアゴニストの同定を可能にする、生化学的な無細胞アッセイを含む。そのようなアッセイは、試験化合物と共にPDE−5を用い、試験化合物がPDE−5の酵素活性のアンタゴニスト(好ましくは)またはアゴニストとして作用する能力を測定する。ある実施態様では、このアッセイは、PDE−5を試験化合物と接触させた後に、cPまたはcGMPのそのヌクレオシド一リン酸塩への変換を測定することにより、PDE−5のPDE活性を監視することを含む。
【0011】
例えば、[Hansen, R. S., and Beavo, J.A., PITAS USA1982,79: 2788-92]に記載の通りにトリチウム含有化合物である3HcAMPおよび3HcGMPを使用することにより、cAMPおよびcGMPのレベルを測定できる。多数の化合物を含む化合物のプールをスクリーニングするために、[Bardelle, C. et al. (1999) Anal. Biochem. 275: 148-155]に記載のマイクロタイタープレートをベースとするシンチレーション近接アッセイ(SPA)を適用できる。
【0012】
あるいは、組換えタンパク質のホスホジエステラーゼ活性を、購入できるSPAキット(Amersham Pharmacia)を使用してアッセイできる。PDE酵素は、環状ヌクレオチド、例えば、cAMPおよびcGMPを、それらの直鎖状対応物に加水分解する。SPAアッセイは、トリチウム標識された環状ヌクレオチド[3H]cAMPまたは[3H]cGMPを利用し、トリチウム標識された非環状生成物はSPAビーズと選択的に相互作用し、一方、環状の物質は効率的に結合しないことに基づく。
【0013】
シンチレーションビーズに結合した放射性標識された生成物は、シンチレーションカウンターで分析できる光を発する。
【0014】
本発明の医薬組成物を、その企図する投与経路に適合するように製剤化する。投与経路の例には、静脈内、皮内、皮下などの非経腸、経口(例えば、吸入)、経皮(局所)、経粘膜および直腸投与が含まれる。注射可能な用途に適する医薬組成物には、滅菌水性溶液(水溶性の場合)または分散物、および、無菌の注射可能な溶液または分散物の即時調製用の滅菌粉末が含まれる。担体は、例えば、水、エタノール、医薬的に許容し得るポリオール、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール、および、これらの適する混合物を含有する、溶媒または分散媒体であり得る。例えば、レシチンなどのコーティングを使用することにより、分散物の場合に必要とされる粒子サイズを維持することにより、そして、界面活性剤の使用により、適当な流動性を維持できる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン類、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどにより、達成できる。多くの場合、組成物中に、等張剤、例えば、糖類、ポリアルコール類、例えば、マイトール(maitol)、ソルビトール、塩化ナトリウムを含むのが好ましいであろう。
【0015】
経口組成物は、一般的に、不活性希釈剤または食用担体を含む。それらは、ゼラチンカプセル剤に封入でき、または、錠剤に圧縮できる。経口治療的投与の目的で、活性化合物を補助剤と共に組み込み、錠剤、トローチ剤またはカプセル剤の形態で使用できる。経口組成物は、また、口腔洗浄薬として使用するための流体担体を使用して製造できる。その場合、流体担体中の化合物を経口投与し、うがいして吐き出すか、または飲み込む。
【0016】
医薬的に適合する結合剤、および/または、補助物質を、組成物の一部として含めることができる。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤などは、以下の成分または同様の性質の化合物のいずれも含有できる:結合剤、例えば、結晶セルロース、トラガントゴムまたはゼラチン;賦形剤、例えば、スターチまたはラクトース、崩壊剤、例えば、アルギン酸、プリモゲル(Primogel)またはコーンスターチ;滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムまたはステロテ(sterote);流動剤、例えば、コロイド状二酸化ケイ素;甘味料、例えば、スクロースまたはサッカリン;または、香味料、例えば、ペパーミント、サリチル酸メチルまたはオレンジ香料。
【0017】
吸入投与のために、化合物をエアロゾルスプレーの形態で、加圧容器または適する噴霧剤、例えば、二酸化炭素などの気体を含むディスペンサー、または、噴霧器から送達する。
【0018】
全身的投与は、経粘膜または経皮の手段によることもできる。経粘膜または経皮投与には、浸透すべき障壁にふさわしい浸透剤を製剤中で使用する。そのような浸透剤は、当分野で一般的に知られており、例えば、経粘膜投与のために、洗浄剤、胆汁酸塩およびフシジン酸誘導体が含まれる。経粘膜投与は、点鼻スプレー剤または坐剤の使用により達成できる。経皮投与のために、当分野で一般的に知られている通り、活性化合物を軟膏、膏薬、ゲルまたはクリームに製剤化する。
【0019】
これらの化合物を、坐剤(例えば、常套の坐剤基剤、例えば、カカオバターおよび他のグリセリド類を用いる)、または、直腸送達のための停留浣腸の形態に製造することもできる。
【0020】
ある実施態様では、インプラントおよび微小カプセル化送達システムを含めて、制御放出製剤のように、身体からの迅速な排出から化合物を保護する担体と共に活性化合物を製造する。エチレンビニルアセテート、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸などの、生体分解可能な、生体適合し得るポリマーを使用できる。
【0021】
本発明は、さらに、以下のものを提供する:
部分的難聴、完全難聴、聴覚消失(完全または部分的)および耳鳴りを含む、音を知覚する能力の欠陥を表す聴覚障害の処置における治療剤として有用なPDE5阻害剤のスクリーニング方法。
試験化合物を細胞内または細胞表面に接触させることを含み、細胞はインビトロである、スクリーニング方法。
無細胞系で試験化合物をPDE−5ポリペプチドと接触させることを含む、スクリーニング方法。
検出可能な標識に結合した試験化合物を含み得る、スクリーニング方法。
【0022】
特に、本発明は、以下のものを提供する:
部分的難聴、完全難聴、聴覚消失(完全または部分的)および耳鳴りを含む、音を知覚する能力の欠陥を表す聴覚障害、哺乳類の部分的難聴、完全難聴、聴覚消失(完全または部分的)および耳鳴りを含む、音を知覚する能力の欠陥を表す聴覚障害からなる疾患の群に含まれる疾患を処置するための、PDE5ポリペプチドの活性を調節する治療剤を含む医薬組成物。
【0023】
シルデナフィル(3−[2−エトキシ−5−(4−メチルピペラジン−1−イル)スルホニル−フェニル]−7−メチル−9−プロピル−2.4.7.8−テトラビシクロ[4.3.0]ノナ−3,8,10−トリエン−5−オン)、タダラフィル((6R,12aR)−2,3,6,7,12,12a−ヘキサヒドロ−2−メチル−6−(3,4−メチレン−ジオキシフェニル)ピラジノ(1',2':1,6)ピリド(3,4−b)インドール−1,4−ジオン)、バルデナフィル(2−(2−エトキシ−5−(4−エチルピペラジン−1−イル−1−スルホニル)フェニル)−5−メチル−7−プロピル−3H−イミダゾ(5,1−f)(1,2,4)トリアジン−4−オン)、ウデナフィル5−[2−プロピルオキシ−5−(1−メチル−2−ピロリジニル−エチル−アミドスルホニル)フェニル]−メチル−3−プロピル−1,6−ジヒドロ−7H−ピラゾロ(4,3−d)ピリミジン−7−オン、ダサンタフィル7−(3−ブロモ−4−メトキシベンジル)−1−エチル−8−[[(1,2)−2−ヒドロキシシクロペンチル]アミノ]−3−(2−ヒドロキシエチル)−3,7−ジヒドロ−1−プリン−2,6−ジオン、アバナフィル4−{[(3−クロロ−4−メトキシフェニル)メチル]アミノ}−2−[(2S)−2−(ヒドロキシメチル)ピロリジン−1−イル]−N−(ピリミジン−2−イルメチル)ピリミジン−5−カルボキサミド、Surface Logix のSLx2101、LAS34179トリアゾロ[1,2−]キサンチン,6−メチル−4−プロピル−2−[2−プロポキシ−5−(4−メチルピペラジノ)スルホニル]フェニル、またはそれらの塩、水和物または塩の水和物からなるPDE−5阻害剤の群から選択されるPDE−5阻害剤を含む、哺乳動物の部分的難聴、完全難聴、聴覚消失(完全または部分的)および耳鳴りを含む、音を知覚する能力の欠陥を表す聴覚障害からなる疾患の群に含まれる疾患の処置用の医薬組成物。
【0024】
哺乳動物の部分的難聴、完全難聴、聴覚消失(完全または部分的)および耳鳴りを含む、音を知覚する能力の欠陥を表す聴覚障害からなる疾患の群に含まれる疾患の処置用の医薬組成物を製造するためのPDE5阻害剤の使用。
【0025】
哺乳動物の部分的難聴、完全難聴、聴覚消失(完全または部分的)および耳鳴りを含む、音を知覚する能力の欠陥を表す聴覚障害からなる疾患の群に含まれる疾患の処置用の医薬組成物を製造するための、シルデナフィル(3−[2−エトキシ−5−(4−メチルピペラジン−1−イル)スルホニル−フェニル]−7−メチル−9−プロピル−2.4.7.8−テトラビシクロ[4.3.0]ノナ−3,8,10−トリエン−5−オン)、タダラフィル((6R,12aR)−2,3,6,7,12,12a−ヘキサヒドロ−2−メチル−6−(3,4−メチレン−ジオキシフェニル)ピラジノ(1',2':1,6)ピリド(3,4−b)インドール−1,4−ジオン)、バルデナフィル(2−(2−エトキシ−5−(4−エチルピペラジン−1−イル−1−スルホニル)フェニル)−5−メチル−7−プロピル−3H−イミダゾ(5,1−f)(1,2,4)トリアジン−4−オン)、ウデナフィル5−[2−プロピルオキシ−5−(1−メチル−2−ピロリジニル−エチル−アミドスルホニル)フェニル]−メチル−3−プロピル−1,6−ジヒドロ−7H−ピラゾロ(4,3−d)ピリミジン−7−オン、ダサンタフィル7−(3−ブロモ−4−メトキシベンジル)−1−エチル−8−[[(1,2)−2−ヒドロキシシクロペンチル]アミノ]−3−(2−ヒドロキシエチル)−3,7−ジヒドロ−1−プリン−2,6−ジオン、アバナフィル4−{[(3−クロロ−4−メトキシフェニル)メチル]アミノ}−2−[(2S)−2−(ヒドロキシメチル)ピロリジン−1−イル]−N−(ピリミジン−2−イルメチル)ピリミジン−5−カルボキサミド、Surface Logix のSLx2101、LAS34179トリアゾロ[1,2−]キサンチン,6−メチル−4−プロピル−2−[2−プロポキシ−5−(4−メチルピペラジノ)スルホニル]フェニルからなるPDE−5阻害剤の群から選択されるPDE−5阻害剤、または、その塩、水和物もしくは塩の水和物の使用。
【0026】
PDE5の阻害剤が、シルデナフィル(3−[2−エトキシ−5−(4−メチルピペラジン−1−イル)スルホニル−フェニル]−7−メチル−9−プロピル−2.4.7.8−テトラビシクロ[4.3.0]ノナ−3,8,10−トリエン−5−オン)、バルデナフィル(2−(2−エトキシ−5−(4−エチルピペラジン−1−イル−1−スルホニル)フェニル)−5−メチル−7−プロピル−3H−イミダゾ(5,1−f)(1,2,4)トリアジン−4−オン)、タダラフィル((6R,12aR)−2,3,6,7,12,12a−ヘキサヒドロ−2−メチル−6−(3,4−メチレンジオキシフェニル)、ウデナフィル5−[2−プロピルオキシ−5−(1−メチル−2−ピロリジニル−エチル−アミドスルホニル)フェニル]−メチル−3−プロピル−1,6−ジヒドロ−7H−ピラゾロ(4,3−d)ピリミジン−7−オン、ダサンタフィル7−(3−ブロモ−4−メトキシベンジル)−1−エチル−8−[[(1,2)−2−ヒドロキシシクロペンチル]アミノ]−3−(2−ヒドロキシエチル)−3,7−ジヒドロ−1−プリン−2,6−ジオン、アバナフィル4−{[(3−クロロ−4−メトキシフェニル)メチル]アミノ}−2−[(2S)−2−(ヒドロキシメチル)ピロリジン−1−イル]−N−(ピリミジン−2−イルメチル)ピリミジン−5−カルボキサミド、Surface Logix のSLx2101、LAS34179トリアゾロ[1,2−]キサンチン,6−メチル−4−プロピル−2−[2−プロポキシ−5−(4−メチルピペラジノ)スルホニル]フェニルからなるPDE−5阻害剤の群から選択されるPDE−5阻害剤である、医薬組成物の製造方法。
【0027】
部分的難聴、完全難聴、聴覚消失(完全または部分的)および耳鳴りを含む、音を知覚する能力の欠陥を表す聴覚障害からなる疾患の群に含まれる疾患を有する哺乳動物における、PDE活性を調節するための上記の医薬組成物の使用。
【0028】
本発明の好ましい実施態様は、哺乳動物の部分的難聴、完全難聴、聴覚消失(完全または部分的)および耳鳴りを含む、音を知覚する能力の欠陥を表す聴覚障害からなる疾患の群に含まれる疾患を処置するための、バルデナフィル、または、その塩、水和物もしくは塩の水和物を含有する医薬組成物である。
【0029】
図および表の説明
表1:音響性外傷に対するバルデナフィルおよびプラセボ処置の効果およびラットの閾値レベル
表1
【表1】

【0030】
実施例1
全ての動物実験を、「実験動物の保護に関するドイツ国の法律(German Law for the Protection of Laboratory animals)」により実施し、承認された動物の健康と福祉(Animal Health and Welfare)のガイドラインにより実行した。体重300−400gのメスの Sprague Dawley ラットで実験を実施した。音響性外傷(AT)の誘導のために、動物を麻酔下で飼育し(ケタミン、キシラジン、ロムプン(Rompun)i.p.注射)、反響チャンバー内の較正した大音響スピーカーを使用して、帯域騒音または純音に曝した。その音は、115dB SPLで提示される連続的な10kHzの純音からなる。全ての音響的刺激を動物の頭部のレベルで較正した。ラットをバルデナフィル[10mg/kg/p.o.、エタノール/ソルトール(Solutol)/水(10/40/50)に溶解、適用量5ml/kg]またはプラセボ[エタノール/ソルトール/水(10/40/50)、適用量5ml/kg]のいずれかで、1日2回処置した。バルデナフィルまたはプラセボによる最初の処置は、ATの1時間前であった。聴性脳幹反応(ABR)の記録により聴覚閾値を測定することにより、聴覚障害の発症および進行/緩解を検出した。ノイズレベルから区別されるARBをもたらす最低の音圧により、閾値を測定した。音響性外傷(AT)の前(表1の測定A)、ATの3−5時間後(表1の測定B)、AT後1日目から7日目まで、1日1回(表1の測定CないしI)、および、最後に、ATの3週間後(表1の測定J)に、閾値レベル分析を実施した。
【0031】
ATの前に、我々の結果は、各々5.9dB SPLおよび7.1dB SPLのレビトラ(Levitra)処置群およびプラセボ処置群の閾値レベルを示した。これらのレベルは、これらの群の間で有意に異ならず、ラットの聴覚閾値の生理的範囲内にある。ATは、プラセボ処置動物の聴覚閾値を、プラセボ処置動物およびバルデナフィル処置動物において、各々83.8および38.6に有意に高めた。これらの結果は、バルデナフィル処置が難聴を防止したことを示す。さらに、バルデナフィル処置群では、バルデナフィル処置の5日後に、難聴の完全な緩解があった。バルデナフィル処置動物は、この群のAT前の閾値レベルと有意に相違しない12.4の閾値レベルを示した。プラセボ処置動物は、音響性外傷から回復できなかった。これらの結果は、PDE5阻害剤、即ち、バルデナフィルが、聴覚障害を防止できたことを強く示唆する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部分的難聴、完全難聴、聴覚消失(完全または部分的)および耳鳴りを含む、音を知覚する能力の欠陥を表す「聴覚障害」からなる疾患の群に含まれる疾患の処置における治療剤として有用なPDE5阻害剤のスクリーニング方法であって、i)試験化合物をPDE5ポリペプチドと接触させること、ii)試験化合物の一定の濃度で、または、当該試験化合物の非存在下で、PDE5ポリペプチドの活性を測定すること、iii)当該試験化合物の異なる濃度で当該PDE5ポリペプチドの活性を測定すること、iv)PDE−5ポリペプチドに対する阻害作用を有する少なくとも1種の化合物を選択すること、の各段階を含む方法。
【請求項2】
哺乳動物の部分的難聴、完全難聴、聴覚消失(完全または部分的)および耳鳴りを含む、音を知覚する能力の欠陥を表す「聴覚障害」からなる疾患の群に含まれる疾患の処置用の医薬組成物であって、PDE5ポリペプチドの活性を調節する治療剤を含む医薬組成物。
【請求項3】
哺乳動物の部分的難聴、完全難聴、聴覚消失(完全または部分的)および耳鳴りを含む、音を知覚する能力の欠陥を表す「聴覚障害」からなる疾患の群に含まれる疾患の処置用の医薬組成物であって、バルデナフィル、シルデナフィル、タダラフィル、ウデナフィル、ダサンタフィル、アバナフィル、SLx2101およびLAS34179からなるPDE−5阻害剤の群から選択されるPDE−5阻害剤を含む医薬組成物。
【請求項4】
哺乳動物の部分的難聴、完全難聴、聴覚消失(完全または部分的)および耳鳴りを含む、音を知覚する能力の欠陥を表す「聴覚障害」からなる疾患の群に含まれる疾患の処置用の医薬組成物を製造するための、バルデナフィル、シルデナフィル、タダラフィル、ウデナフィル、ダサンタフィル、アバナフィル、SLx2101およびLAS34179からなるPDE−5阻害剤の群から選択されるPDE−5阻害剤の使用。
【請求項5】
哺乳動物の部分的難聴、完全難聴、聴覚消失(完全または部分的)および耳鳴りを含む、音を知覚する能力の欠陥を表す「聴覚障害」からなる疾患の群に含まれる疾患の処置用の、バルデナフィル、シルデナフィル、タダラフィル、ウデナフィル、ダサンタフィル、アバナフィル、SLx2101およびLAS34179の群から選択される少なくとも1種の化合物、または、その塩、水和物もしくは塩の水和物を含有する医薬組成物。
【請求項6】
難聴および耳鳴りの処置用の、バルデナフィル、シルデナフィル、タダラフィル、ウデナフィル、ダサンタフィル、アバナフィル、SLx2101およびLAS34179の群から選択される少なくとも1種の化合物、または、その塩、水和物もしくは塩の水和物を含有する医薬組成物。
【請求項7】
難聴および耳鳴りの処置用の、バルデナフィル、または、その塩、水和物もしくは塩の水和物を含有する医薬組成物。
【請求項8】
難聴および耳鳴りの処置用の医薬組成物を製造するための、バルデナフィル、シルデナフィル、タダラフィル、ウデナフィル、ダサンタフィル、アバナフィル、SLx2101およびLAS34179の群から選択される少なくとも1種の化合物、または、その塩、水和物もしくは塩の水和物の使用。
【請求項9】
難聴および耳鳴りの処置用の医薬組成物を製造するための、バルデナフィル、または、その塩、水和物もしくは塩の水和物の使用。

【公表番号】特表2010−532319(P2010−532319A)
【公表日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−511520(P2010−511520)
【出願日】平成20年5月31日(2008.5.31)
【国際出願番号】PCT/EP2008/004351
【国際公開番号】WO2008/151734
【国際公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(507113188)バイエル・シェーリング・ファルマ・アクチェンゲゼルシャフト (141)
【氏名又は名称原語表記】Bayer Schering Pharma Aktiengesellschaft
【Fターム(参考)】