説明

肌の明度改善用経口投与剤

【課題】健康な美しい肌を得ることはだれしも願って止まないものであるが、シミを予防または改善したとしても、その効果はメラニンが生成されている箇所または沈着している箇所を改善するという部分的な効果であり、単なる「美白効果」でしかかった。そこで、肌の色彩、いわゆる肌の明度を改善し得る肌の明度改善剤を提供する。
【解決手段】松樹皮抽出物を含有する肌の明度改善剤を提供する。本改善剤は、経口摂取によって肌全体の明度を改善し得、見た目に美しい肌へ改善することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、松樹皮抽出物を含有することを特徴とする肌の明度、すなわち肌全体の明るさを改善する経口投与剤に関する。
【背景技術】
【0002】
健康な美しい肌を得ることは、だれしも願って止まないものである。この為、多くの化粧料が開発され、さらには美容を目的とした健康食品が提案されてきている。このような中でも、特に肌が美しく見える要因の一つとして、肌の明度を改善することは、肌を見た目に美しくする上で効果的であり、近年ではシミの予防や改善する効果を有する素材が検討されてきている。本発明者らも、松樹皮(特に抽出物)は、メラニン生成の抑制に優れた効果があることを見出し、肌に生じたシミを予防または改善する効果を見出してきた(特許文献1)。
【特許文献1】特開2003−238425号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、シミを予防または改善したとしても、その効果はメラニンが生成されている箇所または沈着している箇所を改善するという部分的な効果であり、単なる「美白効果」でしかかった。すなわち、肌全体が美しく(肌の色彩が良く)見えるというわけではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者等は、松樹皮抽出物が単なるシミの改善効果だけでなく、肌全体の明るさ、すなわち明度を改善し、肌全体が美しく見える効果が有意に得られることを見出し、本発明に至った。また、この改善効果は、手軽に経口投与剤として使用することにより得られることを見出した。
【0005】
すなわち、本発明における肌の明度改善剤は、松樹皮抽出物を含有することを特徴としている。
【0006】
好ましくは、本発明における肌の明度改善剤は、経口投与剤であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、松樹皮抽出物は、シミが存在する箇所以外の肌の明度、すなわち肌の明るさを改善することにより、見た目に美しい肌へと改善し得る。この作用は、経口投与剤、例えば、手軽に経口摂取が可能な形態の食品を摂取するだけで、改善作用を得ることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の「肌の明度改善」とは、前述のとおり、肌全体の明度、すなわち肌全体の「明るさ」を明るくする作用をいう。この肌の明るさについては、肌の表面画像を任意の色の表示法によって表示し、肌の明るさの要素を数値化することによって表示することができる。色表示の方法としては、肌の状態を表すことができるものであれば特に制限されないが、例えばRGB表示、マンセル表示、Lab表示(JIS Z8729)、XYZ表示、明度、色相及び彩度による表示等の表色系が挙げられる。具体的には、肌の表面画像をRGB(赤、緑、青)画像として撮像し、画素毎について色表示を赤、緑、青に分け、各々の色の輝度を数値化することにより行う方法が挙げられる。さらに、RGB画像からLab値に変換し、肌の色を数値化することができる。ここで、肌の明るさは、得られたL値によって現すことができ、L値が高いほど、肌の明るさが明るいことを示し、このような肌は見た目に美しい肌である。
【0009】
本発明の肌の明度改善剤に用いる松樹皮抽出物とは、松の樹皮から抽出された抽出物であり、抽出される原料としては、フランス海岸松(Pinus Martima)、カラマツ、クロマツ、アカマツ、ヒメコマツ、ゴヨウマツ、チョウセンマツ、ハイマツ、リュウキュウマツ、ウツクシマツ、ダイオウマツ、シロマツ、カナダのケベック地方のアネダなどのマツ目に属する植物の樹皮の抽出物が好ましく用いられる。中でも、フランス海岸松(Pinus
Martima)の樹皮抽出物が好ましい。
【0010】
フランス海岸松は、南仏の大西洋沿岸の一部に生育している海洋性松をいう。このフランス海岸松の樹皮は、フラバン−3−オールおよび/またはフラバン−3,4−ジオールを構成単位とする重合度が2以上の縮合型タンニンであるプロアントシアニジンをはじめとするポリフェノール類や有機酸、糖類などの生理活性成分が含有されている。特に重合度が2〜4の縮合重合体(2〜4量体)のプロアントシアニジンが豊富に含まれている。
【0011】
本明細書では、プロアントシアニジンの縮重合体のうち、フラバン−3−オールおよび/またはフラバン−3,4−ジオールを構成単位とする重合度が2〜4の重合体を、OPC(オリゴメリック・プロアントシアニジン;oligomeric proanthocyanidin)という。
【0012】
松樹皮抽出物は、上記の松樹皮を水または有機溶媒、特に極性溶媒で抽出して得られる物が好ましい。また、水を用いる場合には、温水または熱水を用いることが好ましい。これらの水には、抽出効率を向上させる点から、塩化ナトリウムなどの塩を添加することが好ましい。抽出に用いる有機溶媒としては、食品あるいは薬剤の製造に許容される有機溶媒が用いられ、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、アセトン、ヘキサン、シクロヘキサン、プロピレングリコール、含水エタノール、含水プロピレングリコール、エチルメチルケトン、グリセリン、酢酸メチル、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、食用油脂、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、および1,1,2−トリクロロエテンが挙げられる。これらの水および有機溶媒は単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。特に、水、熱水、および極性溶媒のエタノールやプロピレングリコールまたは含水エタノール、含水プロピレングリコール等の水と極性溶媒の混合液が好ましく用いられる。
【0013】
松樹皮からプロアントシアニジンを抽出する方法は、特に限定されないが、例えば、加温抽出法、超臨界流体抽出法などが用いられる。
【0014】
超臨界流体抽出法は、物質の気液の臨界点(臨界温度、臨界圧力)を超えた状態の流体である超臨界流体を用いて抽出を行う方法である。超臨界流体としては、二酸化炭素、エチレン、プロパン、亜酸化窒素(笑気ガス)などが用いられ、二酸化炭素が好ましく用いられる。
【0015】
超臨界流体抽出法は、目的成分を超臨界流体によって抽出する抽出工程および目的成分と超臨界流体とを分離する分離工程からなる。分離工程では、圧力変化による抽出分離、温度変化による抽出分離、または吸着剤・吸収剤を用いた抽出分離のいずれを行ってもよい。
【0016】
また、エントレーナー添加法による超臨界流体抽出を行ってもよい。この方法は、超臨界流体に、例えば、エタノール、プロパノール、n−ヘキサン、アセトン、トルエン、その他の脂肪族低級アルコール類、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、またはケトン類を2〜20W/V%程度添加し、得られた抽出流体で超臨界流体抽出を行うことによって、OPC、カテキン類(後述)などの目的とする被抽出物の抽出流体に対する溶解度を飛躍的に上昇させる、あるいは分離の選択性を増強させる方法であり、効率的に松樹皮抽出物を得る方法である。
【0017】
超臨界流体抽出法は、比較的低い温度で操作できるため、高温で変質・分解する物質にも適用できるという利点;抽出流体が残留しないという利点;および溶媒の循環利用が可能であり、脱溶媒工程などが省略でき、工程がシンプルになるという利点がある。
【0018】
また、松樹皮からの抽出は、上記の方法以外に、液体二酸化炭素回分法、液体二酸化炭素還流法、超臨界二酸化炭素還流法などにより行ってもよい。
【0019】
松樹皮からの抽出は、複数の抽出方法を組み合わせてもよい。複数の抽出方法を組み合わせることにより、種々の組成の松樹皮抽出物を得ることが可能となる。
【0020】
本発明において、プロアントシアニジンを主成分として含む松樹皮抽出物は、具体的には、以下のような方法によりに調製されるが、これは例示であり、この方法に限定されない。
【0021】
フランス海岸松の樹皮1kgを、塩化ナトリウムの飽和溶液3Lに入れ、100℃にて30分間抽出し、抽出液を得る(抽出工程)。その後、抽出液を濾過し、得られる不溶物を塩化ナトリウムの飽和溶液500mlで洗浄し、洗浄液を得る(洗浄工程)。この抽出液と洗浄液とを合わせて、松樹皮の粗抽出液を得る。
【0022】
次いで、この粗抽出液に酢酸エチル250mlを添加して分液し、酢酸エチル層を回収する工程を5回行う。回収した酢酸エチル溶液を合わせて、無水硫酸ナトリウム200gに直接添加して脱水する。その後、この酢酸エチル溶液を濾過し、濾液を元の5分の1量になるまで減圧濃縮する。濃縮された酢酸エチル溶液を2Lのクロロホルムに注ぎ、攪拌して得られる沈殿物を濾過により回収する。その後、この沈殿物を酢酸エチル100mlに溶解した後、再度1Lのクロロホルムに添加して沈殿させる操作を2回繰り返す洗浄工程を行う。この方法により、例えば、OPCを20重量%以上含み、かつカテキン類を5重量%以上含有する、約5gの松樹皮抽出物が得られる。
【0023】
また、食品、医薬品に用いるときの安全性の観点から、エタノールまたは水等を用いて、より好ましくは加温しながら松樹皮からプロアントシアニジンをはじめとする成分を抽出し、ポリフェノールに対して吸着性を示す樹脂(例えば、ダイアイオンHP−20、Sephadex−LH20、またはアンバーライト)などや限外ろ過膜を用いて、精製することが好ましい。このようにして、プロアントシアニジン、特にOPCをの高含有した松樹皮抽出物を得ることができる。
【0024】
本発明においては、OPCを20重量%以上含有する松樹皮抽出物が好ましく用いられる。より好ましくは、30重量%以上である。
【0025】
また、植物(樹皮)抽出物中のプロアントシアニジンの含有量は特に制限されないが、植物(樹皮)抽出物中のプロアントシアニジン含有量が高濃度となると、プロアントシアニジン自身の生理活性が低くなることがあるため、抽出物中のプロアントシアニジン含有量が95重量%未満、好ましくは90重量%未満であることが好ましい。
【0026】
松樹皮抽出物に含有されるOPCは、上述のように抗酸化物質であるため、ガン・心臓病などの成人病の危険率を低下する効果、関節炎・アトピー性皮膚炎・花粉症などのアレルギー体質の改善効果、コラーゲンの酸化や分解の阻害効果なども有する。
【0027】
さらにOPCは、抗酸化作用のほか、血管の強度、弾力性を回復させる効果;血中コレステロールおよびLDLを低下させる効果;高血圧症に対して血圧を低下させる効果;コレステロールが付着することを防止する効果;活性酸素によって分解されたビタミンEを再生させる効果;ビタミンEの増強剤としての効果などを有することが知られている。
【0028】
上記植物抽出物には、プロアントシアニジン、特にOPCとともにカテキン(catechin)類が含まれている。カテキン類とは、ポリヒドロキシフラバン−3−オールの総称である。カテキン類としては、(+)−カテキン(狭義のカテキンといわれる)、(−)−エピカテキン、(+)−ガロカテキン、(−)−エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート、エピカテキンガレート、アフゼレキンなどが知られている。天然物からは、上記の(+)−カテキンの他、ガロカテキン、アフゼレキン、(+)−カテキンの3−ガロイル誘導体およびガロカテキンの3−ガロイル誘導体が単離されている。カテキン類には、抗アレルギー作用、抗菌作用、虫歯予防作用、口臭防止作用、抗酸化作用などがあることが知られている。カテキン類には、カテキン類は、単独では水溶性が乏しく、その生理活性が低いが、OPCの存在下で水溶性が増すと同時に、活性化する性質があり、OPCとともに摂取することで効果的に作用する。
【0029】
カテキン類は、上記原料植物抽出物中に、5重量%以上含有されていることが好ましい。より好ましくは、該抽出物中にOPCが20重量%以上、そしてカテキン類が5重量%以上含有される。例えば、抽出物のカテキン類含量が5重量%未満の場合、カテキン類を添加し、最終的な含量が5重量%以上となるように調整してもよい。OPCを20重量%以上含有し、かつカテキン類を5重量%以上含有する松樹皮抽出物を用いることが最も好ましい。
【0030】
このような松樹皮抽出物は、優れた肌の明度改善作用を有し、経口摂取するだけで、肌の見た目の美しさを改善し得る。すなわち、経口投与剤として使用することで、肌の明度改善作用を得られる。このような経口投与剤としては、食品、医薬品として用いることのできる、例えば、賦形剤、増量剤、結合剤、増粘剤、乳化剤、滑沢剤、湿潤剤、懸濁剤、着色料、香料、栄養成分、食品添加物などの通常食品または医薬品に用いられる種々の成分を目的に応じて含んでいてもよい。栄養成分としては、ローヤルゼリー、ビタミン、プロテイン、卵殻カルシウムなどのカルシウム、レシチン、クロレラ末、アシタバ末、モロヘイヤ末などが挙げられる。食品添加物としては、ステビア末、抹茶パウダー、レモンパウダー、はちみつ、還元麦芽糖、乳糖、糖液などが挙げられる。上記の各成分を当業者が通常用いる方法によって混合し、本発明の経口投与剤として各種の形態に調製することができる。例えば、松樹皮抽出物へ賦形剤などを加えて、錠剤もしくは丸剤などの形状に成形してもよく、あるいは、成形せずに、散剤の形態や、その他の形態としてもよい。その他の形態としては、ハードカプセル、ソフトカプセルなどのカプセル剤、粉末状、顆粒状、ティーバッグ状、飴状、液状、ペースト状などの形態が挙げられる。
【0031】
本発明の肌の明度改善剤を経口投与剤の剤形での使用、すなわち食品または経口摂取用の医薬品または医薬部外品として使用する場合における松樹皮抽出物の配合量には、特に制限はない。しかし、松樹皮抽出物の1日あたりの摂取量について、その下限値が、10mg以上、好ましくは40mg以上となるように配合するのが良い。また、松樹皮抽出物の1日あたりの摂取量について、その上限値が、1000mg以下、好ましくは500mg以下となるように配合するのが良い。
【0032】
本発明において、食品または医薬品等の組成物中に、松樹皮抽出物を配合する場合の配合割合は、特に制限はない。しかし、その配合割合の下限値は、0.001重量%以上、好ましくは0.005重量%以上とするのが良く、その配合割合の上限値は、50重量%以下、好ましくは20重量%以下とするのが良い。また、本発明における肌の明度改善剤を摂取する場合、その摂取方法は、特に限定されないが、その形状または好みに応じて、そのまま飲食しても良いし、あるいは水、湯、牛乳などに溶いて飲んでも良いし、成分を浸出させたものを飲んでも良い。
【0033】
なお、化粧品や皮膚外用剤として本発明の肌の明度改善剤を使用する場合は、肌への直接投与となるため、より少ない含有量でよく、好ましくは0.000001重量%〜10重量%程度でよい。
【実施例】
【0034】
以下本発明をより詳細に説明するが、本発明は、この範囲に限定されるものではない。
【0035】
(実施例1)
肌の明度改善作用を評価するため、以下のように試験を行った。まず、24〜61歳の女性84名を、ランダムに2群に分けた。次いで、そのうちの一群には、1錠あたり松樹皮抽出物(松樹皮の含水エタノール抽出物、30重量%のOPCを含有:株式会社東洋新薬)を20mg含有し、賦形剤として、ショ糖エステル、二酸化珪素、結晶セルロース、還元麦芽糖を含有する錠剤を一日あたり2錠摂取してもらうこととした。また、残りの一群は松樹皮抽出物を含有しない錠剤を1日あたり2錠摂取してもらった。次いで、この各群の被験者について、摂取開始前、4週目、6週目、12週目に、下記の評価項目で被験者にアンケートを行うと共に、同様の評価項目で医師所見を出してもらい、各群に占める割合を算出した。さらに、色素計(ミノルタcolor ReaderCR-13)で肌の色彩を測定し、L値を算出した。
【0036】
(評価項目)
1.摂取前に比べ肌の色彩が改善している。
2.摂取前と変化がない。
3.摂取前より悪化している。
【0037】
アンケートの結果を表1に、医師所見を表2に示す。なお、表1および表2において、値の単位はパーセント(%)である。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
表1および2の結果から、本発明の松樹皮抽出物は、松樹皮抽出物を含有していない場合に比べ、医師所見及び被験者アンケートにおいて改善効果が有意に見られるということが分かった。なお各週ごとに、服用群、非服用群の結果を不等分散による検定を行ったところ、試験開始から4週目で有意水準5%、8週及び12週で有意水準1%で、服用群と非服用群との間に有意差があった。
【0041】
また、上記の改善効果が被験者ならびに医師所見ともに見られた被験者7名について、色素計(ミノルタcolor ReaderCR−13)で得られたL値の平均値を算出した。結果を表3に示す。
【0042】
【表3】

【0043】
表3に示すとおり、アンケートならびに医師所見で改善効果が見られた被験者は、有意に肌の明度の改善効果が見られた。よって、本発明の松樹皮抽出物は肌の色彩、すなわち肌の明度改善作用を有し、これが肌の見た目の美しさを向上していることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明によれば、松樹皮より得られた抽出物は、肌の色彩の改善、すなわち、肌の明度を改善する効果を有する。よって、食品、医薬品等に配合することで、手軽に経口摂取するだけで、肌の明度を改善し得る肌の明度改善剤として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
松樹皮抽出物を含有することを特徴とする肌の明度改善剤。
【請求項2】
経口投与剤であることを特徴とする請求項1に記載の明度改善剤。

【公開番号】特開2007−290965(P2007−290965A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−145617(P2004−145617)
【出願日】平成16年5月14日(2004.5.14)
【出願人】(398028503)株式会社東洋新薬 (182)
【Fターム(参考)】