説明

肌改善のための外用剤セット及びこれを使用する美容方法

【課題】特定の角質剥離剤、塗布具、粉末状組成物および含水組成物を組み合わせることによって、優れた肌改善効果を奏する外用剤セット及びこれを使用した美容方法を提供する。
【解決手段】(A)乃至(D)を組み合わせることを特徴とする、肌改善のための外用剤セット。(A)トリメチルグリシンを配合する角質剥離剤(B)前記角質剥離剤を皮膚に塗布するためのコットンを塗布体とする塗布具(C)前記角質剥離剤を塗布した後に皮膚に塗布するためのL−アスコルビン酸又はその誘導体と、粉末状保湿剤とを配合する粉末状組成物(D)前記粉末状組成物を溶解するための含水組成物

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角質剥離剤と塗布具と粉末状組成物と含水組成物とを組み合わせてなる肌改善のための外用剤セット及びこれを使用する美容方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、女性のスキンケアに対する関心は高く、肌を美白に維持するため、L−アスコルビン酸等の美白成分をクリーム、ローションなどの形態にして、皮膚に塗布することでメラニンの生成を抑制する美白用皮膚外用剤が知られている(特許文献1)。
【0003】
一方、皮膚の角質層の乱れは、皮膚表面における光の入射あるいは反射角度を乱すものであり、肌のくすみを引き起こすこととなる。角質の乱れに起因する肌のくすみに対しては、不要となった角質を積極的に取り除き、角質層を健全な状態に維持することが重要であり、安全かつ効果的に角質を剥離する角質剥離剤が知られている(特許文献2)。
【0004】
上記の美白用皮膚外用剤と角質剥離剤は、作用および効果の点において異なるものであり、目的に応じていずれかを選択して通常使用するものであり、それぞれ単独で使用した場合には、配合した各薬剤の量に応じた効果に留まり、必ずしも十分な肌の改善効果を得ることはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−284664号公報
【特許文献2】特開2000−63255号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、特定の角質剥離剤、塗布具、粉末状組成物、及び含水組成物を組み合わせることによって、美白用皮膚外用剤や角質剥離剤の単独での使用では得ることができなかった優れた肌改善効果を奏することを可能とする外用剤セット及びこれを使用した美容方法を提供することにある。
【0007】
また、上記外用剤セットに経口用組成物を組み合わせることによって、更に顔全体について優れた肌改善効果を奏することを可能とする美容品セットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、下記(A)乃至(D)を組み合わせることを特徴とする、肌改善のための外用剤セットである。
(A)トリメチルグリシンを配合する角質剥離剤
(B)前記角質剥離剤を皮膚に塗布するためのコットンを塗布体とする塗布具
(C)前記角質剥離剤を塗布した後に皮膚に塗布するためのL−アスコルビン酸又はその誘導体と、粉末状保湿剤とを配合する粉末状組成物
(D)前記粉末状組成物を溶解するための含水組成物
【0009】
第2の発明は、前記(A)の角質剥離剤がトリメチルグリシンを0.01〜30質量%配合することを特徴とする外用剤セットである。
【0010】
第3の発明は、前記(C)の粉末状組成物に配合する粉末状保湿剤がマンニトールであることを特徴とする外用剤セットである。
【0011】
第4の発明は、前記(C)の粉末状組成物がL−アスコルビン酸又はその誘導体を0.01〜50質量%及びマンニトールを0.01〜50質量%配合することを特徴とする外用剤セットである。
【0012】
第5の発明は、前記(A)乃至(D)を組み合わせてなる肌改善のための外用剤セットを使用する美容方法であって、(A)角質剥離剤を(B)塗布具のコットンに含漬し、該塗布具により皮膚に塗布することによって不要な角質を除去した後、(C)粉末状組成物を(D)含水組成物で溶解することによって得られた皮膚外用剤を皮膚に塗布することによって肌を改善することを特徴とする肌改善のための美容方法である。
【0013】
第6の発明は、前記(A)乃至(D)からなる外用剤セットと(E)アセロラパウダー、ヘム鉄、ウコンエキス、及びケイヒエキスとからなる群から選択される1種又は2種以上を配合した経口用組成物を組み合わせたことを特徴とする肌改善のための美容品セットである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の肌改善のための外用剤セットおよびその美容方法によれば、メラニンを抑制するとともに、しわを少なくすることができ、肌を効果的に改善することができる。
【0015】
また、上記外用剤セットに経口用組成物を組み合わせた本発明の美容品セットによれば、上記の効果に加え、肌のしみを少なくすることができ、また、血色が良くなるなど顔全体の肌の改善効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の外用剤セットに用いる塗布具を示す図
【図2】本発明の外用剤セットによるL−アスコルビン酸の皮膚透過性効果を示すグラフ
【図3】a群のメラニン量の変化を示すグラフ
【図4】b群のメラニン量の変化を示すグラフ
【図5】a群、b群のきめの個数の変化を示すグラフ
【図6】a群のしわの個数の変化を示すグラフ
【図7】b群のしみの個数の変化を示すグラフ
【図8】a群、b群のアンケートの結果を示すグラフ
【図9】a群、b群のアンケートの結果における評価項目「血色が良いと感じる」の変化を示すグラフ
【図10】a群、b群のアンケートの結果における評価項目「顔色が良いと感じる」の変化を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0017】
(A)角質剥離剤
本発明に用いる角質剥離剤には、角質を剥離する成分としてトリメチルグリシンを配合する。配合するトリメチルグリシンの量は、特に限定するものではないが、0.01〜30質量%が好ましい。0.01%未満ではトリメチルグリシンによる角質を剥離する効果が十分に発揮されず、30質量%を超えて配合しても配合量の増加に見合った効果の増大は期待できない場合があるためである。
【0018】
角質剥離剤は、塗布具の塗布体に含漬し、皮膚表面に塗布するために適した剤型であれば良く、特に限定されるものではないが、水溶液系、可溶化系、乳化系、油液系、ゲル系、軟膏系、水−油2層系等、幅広い形態を採ることができる。
【0019】
(B)塗布具
本発明に用いる塗布具は、角質剥離剤を塗布体であるコットンに含漬し、皮膚表面に塗布して使用する。塗布具は、角質剥離剤を含漬するためのコットンを備えたものであればよく、形態を特に限定するものではないが、塗布する際に角質剥離剤が指等に付着することを避けるため、例えば、塗布体となるコットンに把持するための軸を備えた形態(図1)であることが好ましい。
【0020】
(C)粉末状組成物
本発明に用いる粉末状組成物は、L−アスコルビン酸又はその誘導体と粉末状保湿剤とを配合する。粉末状組成物とすることによって、L−アスコルビン酸又はその誘導体とマンニトールとを高配合することが可能となり、各成分による効果を充分発揮することができる。L−アスコルビン酸は、一般にビタミンCといわれ、その強い還元作用によりメラニン還元作用を有するため、美白効果を奏する。L−アスコルビン酸誘導体としては、例えばL−アスコルビン酸モノリン酸エステル、L−アスコルビン酸−2−硫酸エステルなどのL−アスコルビン酸モノエステル類や、L−アスコルビン酸−2−グルコシドなどのL−アスコルビン酸グルコシド類、あるいはこれらの塩などが挙げられる。粉末状保湿剤とは、定常状態における形態が粉末状で存在し得る保湿剤であり、例えば、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール、ラクチトール、キシリトール等の糖系保湿剤が挙げられる。本発明に用いる粉末状組成物に配合する粉末状保湿剤としては、吸湿性が低いことからマンニトールを使用することが好ましい。また、L−アスコルビン酸又はその誘導体の配合量とマンニトールとの配合量は、それぞれ粉末状組成物中0.01〜50質量%であることが好ましい。0.01質量%未満であると、各成分による効果が十分に発揮されず、50質量%を超えて配合しても配合量の増加に見合った効果の増大は期待できない場合があるためである。
【0021】
(D)含水組成物
本発明に用いる含水組成物は、前記粉末状組成物を溶解して皮膚に塗布するために用いられる。含水組成物は、水を必須成分として含有する組成物であり、水とともに配合される他の成分としては、例えば、防腐剤、保湿剤等が挙げられるが、これに限定するものではない。また、含水組成物の剤型としては、例えば、化粧水、乳液等が挙げられるが、これに限定されるものではない。前記粉末状組成物に含水組成物を滴下することによって、粉末状組成物をペースト状または液状の皮膚外用剤とし、この皮膚外用剤を皮膚に塗布する。含水組成物の量は特に限定されるものではなく、使用者の好みに応じて適宜滴下すれば良い。
【0022】
本発明に用いる(A)角質剥離剤、(C)粉末状組成物、及び(D)含水組成物には、上記の必須構成成分の他に通常化粧品に用いられる他の成分、例えば、各種粉末成分、油分、界面活性剤、保湿剤、水溶性高分子、増粘剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、多価アルコール、糖、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、pH調整剤、皮膚栄養剤、酸化防止剤、酸化防止助剤、香料等を必要に応じて適宜配合し、目的とする剤型に応じて常法により製造することができる。
【0023】
外用剤セットとは、医薬品、医薬部外品、化粧品等の分野にて、皮膚に適用することを目的とした複数の物品を組み合わせたものであって、これら複数の物品を同時または連続して使用することによって、単独の物品の使用では得られなかった優れた効果を奏するものであり、生産後の貯蔵、流通から使用者による使用に至るまでひとまとまりの状態で取り扱われるものをいう。
【0024】
本発明にかかる美容方法は、前記(A)角質剥離剤、(B)塗布具、(C)粉末状組成物、及び(D)含水組成物を組み合わせてなる肌改善のための外用剤セットを使用する方法であって、(A)角質剥離剤を(B)塗布具のコットンに含漬し、該塗布具により皮膚に塗布することによって不要な角質を除去した後、(C)粉末状組成物を(D)含水組成物で溶解することによって得られる皮膚外用剤を皮膚に塗布することによって肌を改善する美容方法である。これらの順序で皮膚に適用することによって、本発明による効果が奏されるものであって、異なる順序で皮膚に適用した場合には、十分な効果を得ることはできない。但し、(C)粉末状組成物を(D)含水組成物で溶解して皮膚外用剤を得ることは、皮膚外用剤を皮膚に塗布する前に行えばよく、例えば角質剥離剤を皮膚に塗布する前であっても構わない。
【0025】
(E)経口用組成物
本発明に用いる経口用組成物は、アセロラパウダー、ヘム鉄、ウコンエキス、及びケイヒエキスからなる群から選択される1種又は2種以上を配合する。
【0026】
アセロラパウダーは、アセロラ濃縮果汁を酵母により発酵させ、ぶどう糖と果糖を除去し、賦形剤として食物繊維及び酸化カルシウムを溶解させて粉末化したものであるが、粉末化せず抽出液の形態で配合することもできる。本発明におけるアセロラパウダーは、市販品のアセロラパウダー(商品名「アセロラパウダーVC30」(株)ニチレイバイオサイエンス)を使用することができる。本発明においては、経口用組成物の味と本発明の効果を考慮すると、1日1回分の経口用組成物中にアセロラパウダー10〜3000mgを配合することが好ましい。
【0027】
ヘム鉄とは、鉄ポリフェリン複合体と蛋白(ペプタイド)が結合しているもので、体内での吸収率が高いと言われている鉄である。例えば、動物の赤血球中のヘモグロビンを酵素により分解し、鉄分を濃縮して乾燥して得られるものである。本発明におけるヘム鉄は、これに限定されるものではなく、食品用に流通しているものを用いることができる(商品名「ヘムロンSH」ILS株式会社)。本発明においては、経口用組成物の味と本発明の効果を考慮すると、1日1回分の経口用組成物中に鉄量換算で1〜55mgを配合することが好ましい。
【0028】
ウコンエキスは、ウコンから抽出・精製することにより得ることができる。ウコン(Curcuma longa)は、ショウガ科ウコン属に属する植物である。本発明ではこの植物の任意の部位由来の生薬を用いることができるが、根茎由来の生薬を用いるのが好ましい。抽出方法は溶媒抽出に限定されず、当業界で知られている常用の手法によってもよい。また、上記抽出物の形態は、抽出液自体だけでなく、常用の手法により適宜希釈又は濃縮したものであってもよく、更に、抽出液を乾燥することによって得られる粉状あるいは塊状の固体であってもよい。本発明におけるウコンエキスは、市販品のウコンエキス(商品名「ウコン乾燥エキスF」丸善製薬株式会社)を使用することができる。本発明においては、経口用組成物の味と本発明の効果を考慮すると、1日1回分の経口用組成物中に原生薬換算で40〜20000mgを配合することが好ましい。
【0029】
ケイヒエキスは、ケイヒを水又は有機溶媒で常法により抽出した成分である。ケイヒは、クスノキ科植物クスノキ(Cinnamomum)属に属するケイ(Cinnamomum cassia)の樹皮から調整される。また使用部位として限定されるものではなく、ケイの枝から調製されるケイシエキスを用いてもよい。ケイヒエキスは、常法により得ることができ、例えばその起源となる植物を抽出溶媒とともに常温又は加熱して浸漬または加熱還流した後、濾過し濃縮して得ることができる。抽出溶媒としては通常抽出に用いられる溶媒であれば任意に用いることができる。本発明におけるケイヒエキスには、市販品のケイヒエキス(商品名「ケイヒエキスV」日本粉末薬品株式会社)を使用できる。本発明においては、経口用組成物の味と本発明の効果を考慮すると、1日1回分の経口用組成物中に原生薬換算で50〜500mgを配合することが好ましい。
【0030】
本発明に用いる(E)経口用組成物の形態としては、例えば、カプセル状、液体状、固形状、顆粒状、粉状、ペースト状、ゲル状など任意に選択することができる。また、上記の必須構成成分の他に食品、医薬品に用いられる他の成分、例えば、賦形剤、呈味剤、機能性素材、着色剤、保存剤、増粘剤、結合剤、崩壊剤、分散剤、安定化剤、ゲル化剤、酸化防止剤、界面活性剤、保存剤、pH調整剤等、食品や医薬品に使用される公知のものを適宜選択して配合することができる。
【0031】
本発明にかかる美容品セットは、前記外用剤セットと(E)経口用組成物を組み合わせたものである。美容品セットは、医薬品、医薬部外品、化粧品等の分野にて、皮膚に適用することを目的とした複数の物品を組み合わせた前記外用剤セットと、医薬品、食品等の分野で経口摂取される物品とを組み合わせたものであって、これら複数の物品を同時または連続して使用することによって、単独の物品の使用では得られなかった優れた効果を奏するものである。
【実施例】
【0032】
以下実施例によって本発明を更に詳細に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例における配合量は特に断りのない限り質量%を表す。
【0033】
(A)角質剥離剤
下記の処方により角質剥離剤を常法により得た。

(配合成分) (質量%)
イオン交換水 残余
エタノール 10
ダイナマイトグリセリン 1
苛性カリ 0.05
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.2
サリチル酸 0.2
トリメチルグリシン 5
クエン酸ナトリウム 0.2
エデト酸二ナトリウム 0.1
フェノキシエタノール 0.3
香料 0.1
(合計) 100

【0034】
(B)塗布具
塗布具は、コットンを塗布体としてこれを把持するための軸を備えた形態(図1)とした。
【0035】
(C)粉末状組成物
下記の処方により粉末状組成物を常法により得た。

(配合成分) (質量%)
マンニトール 48
炭酸ナトリウム 10
L−アスコルビン酸 40
顔料 2
(合計) 100

【0036】
(D)含水組成物
下記の処方により含水組成物を常法により得た。

(配合成分) (質量%)
イオン交換水 残余
アルコール 5
ジプロピレングリコール 5
1,3−ブチレングリコール 5
カルボキシビニルポリマー 0.1
(アクリル酸/アクリル酸アルキル(C10-30))コポリマー 0.05
苛性カリ 0.05
ジメチルポリシロキサン 3
スクワラン 2
トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル 1
エデト酸ナトリウム 0.03
フェノキシエタノール 0.5
(合計) 100

【0037】
(E)経口用組成物
経口用組成物は、下記の処方によりAカプセル(1回分)、Bカプセル(1回分)を常法により得た。

<Aカプセル>
(配合成分) (mg)
ヘム鉄※1(鉄量に換算) 2.5
ウコンエキス※2(原生薬換算) 400
ケイヒエキス※3(原生薬換算) 50
デキストリン 41.5
ステアリン酸カルシウム 8
ゼラチン 54
水 9

※1:ILS株式会社製 商品名「ヘムロンSH」を使用
※2:丸善製薬株式会社製 商品名「ウコン乾燥エキスF」を使用
※3:日本粉末薬品株式会社製 商品名「ケイヒエキスV」を使用

<Bカプセル>
(配合成分) (mg)
アセロラパウダー※4 150
カルシウム 20
トレハロース 19
ステアリン酸カルシウム 26
二酸化ケイ素 4
ゼラチン 54
水 9

※4:(株)ニチレイバイオサイエンス製 商品名「アセロラパウダーVC30」を使用
【0038】
下記の試験により、本発明の外用剤セットによるL−アスコルビン酸の皮膚透過性の効果を確認した。
【0039】
「L−アスコルビン酸のin vitro皮膚透過性試験」
<試験方法>
1.市販のラボスキン(株式会社星野試験動物飼育所製)を用意し、2−チャンバー型のフランツ(Franz)型拡散セル(有効透過面積3.14cm、レシーバー側容量17mL)に角質層が上面になるように装着した。
2.皮膚はブランク群、未処置群、及び処置群の3群に分け(各サンプル数n=5)、処置群はドナー側(角質層側)を、不要な角質を除去する処置を行った。不要な角質の除去は、(A)角質剥離剤を(B)塗布具のコットンに含漬し、該塗布具により皮膚に塗布することにより行った。
3.次に、未処置群及び処置群のドナー側(角質層側)に(C)粉末状組成物を(D)含水組成物で溶解することによって得られた皮膚外用剤を均一に塗布した。
4.拡散セルのレシーバー側(真皮側)溶液には2%メタリン酸を含む生理食塩液を用い、拡散セルのチャンバーに37℃の水を灌流することにより皮膚表面温度を30℃に保った。
5.ドナー側は非閉塞状態とした。
6.レシーバー溶液をマグネティックスターラーにて攪拌しながら、2時間目にサンプリングした。
7.サンプリングしたレシーバー溶液中のビタミンC濃度をLC/MS(高速液体クロマトグラフ質量分析計)を用いて測定し、その測定値からレセプター側のビタミンC量を算出した。
8.未処置群及び処置群のレシーバー中のL−アスコルビン酸量からブランク群のレシーバー液中のL−アスコルビン酸量の平均値を除いた値を透過L−アスコルビン酸量とした。
尚、得られたデータは、収集したサンプルに基づいて群間に違いがあるか検証するために統計処理を行った。検定結果で示された有意確率(p)が5%未満(p<0.05)であれば、検定に用いたデータ項目(変数という)間に有意差があるという。
【0040】
L−アスコルビン酸の皮膚透過性試験の結果を図2に示す。処置群(本発明の外用剤セット(A)乃至(D)を使用)は、未処置群((C)及び(D)のみを使用)と比較して、2時間経過後において有意に高い経皮吸収性を示すことを確認することができた。
【0041】
下記のヒト試験により、本発明の外用剤セット及び美容品セットによる肌改善の効果を検証した。
【0042】
「ヒト試験方法」
<試験方法>
40〜49歳の女性モニター36名について、下記の(A)乃至(D)からなる外用剤セットを使用する18名(a群)と、外用剤セットと(E)経口用組成物を組み合わせた美容品セットを使用する18名(b群)に分け、12週間の使用を行った。
【0043】
<a群:外用剤セットを使用>
a群は、下記(A)乃至(D)を組み合わせた外用剤セットを使用する。
(A)トリメチルグリシンを配合する角質剥離剤(上記処方により調製)
(B)コットンを塗布体とする化粧用具
(C)L−アスコルビン酸とマンニトールを含有する粉末状組成物(上記処方により調製)
(D)含水組成物(上記処方により調製)
【0044】
<b群:美容品セットを使用>
b群は、上記外用剤セットと(E)経口用組成物(Aカプセル及びBカプセル)(上記処方により調製)からなる美容品セットを使用する。
【0045】
a群、b群ともに、外用剤セットは、(A)トリメチルグリシンを配合する角質剥離剤を(B)塗布具のコットンに含漬し、該塗布具により皮膚に塗布することによって不要な角質を除去した後、(C)L−アスコルビン酸とマンニトールを含有する粉末状組成物に(D)水を滴下して溶解することによって得られた皮膚外用剤を皮膚に塗布して使用した。角質の除去((A)〜(D))は週一回の割合で行い、皮膚外用剤の塗布((C)〜(D))は毎日行った。b群は、更に経口用組成物を、AカプセルとBカプセルの両方を各1個ずつ計2個毎日摂取した。
【0046】
a群、b群について、試験開始前と開始後において各種評価のための測定を行った。得られたデータは、収集したサンプルに基づいて群間に違いがあるか検証するために統計処理を行った。検定結果で示された有意確率(p)が5%未満(p<0.05)であれば、検定に用いたデータ項目(変数という)間に有意差があるという。pが10%未満(p<0.1)であれば、検定に用いたデータ項目(変数)間に有意な傾向差があるという。尚、グラフ中に、p<0.05は*、P<0.01は**、P<0.001は***として表記する。
【0047】
<メラニンの評価>
ヘキサメーター(Courage and Khazaka)を使用して顔全体のメラニン指数(a.u.)を測定した(図3、4)。試験開始前後の差の検定は、paired t検定を採用した。
【0048】
図3は、a群でのメラニン指数(a.u.)の変化を示すグラフである。試験開始後6週間で、メラニン量が有意に減少(p<0.01)し、12週間では更に有意に減少(p<0.001)することが確認された。
【0049】
図4は、b群でのメラニン指数(a.u.)の変化を示すグラフである。試験開始後12週間で、メラニン量が有意に減少(p<0.001)することが確認された。
【0050】
<きめの評価>
顔の右半分に対し、肌診断器(Canfield社製「VISIA-Evolution」)を使用して、きめの個数を測定した(図5)。試験開始前後の差の検定は、paired t検定を採用した。図5は、a群およびb群でのきめの個数の変化を示すグラフであり、試験前の状態を基準として試験後の変化を示す。b群において試験開始12週間できめの個数が有意に増加(p<0.05)することが確認された。これは肌のきめは細かくなり、肌の状態が改善されていることを示す。
【0051】
<しわの評価>
顔の右半分に対し、肌診断器(Canfield社製「VISIA-Evolution」)を使用して、しわの個数を測定した(図6)。図6は、a群でのしわの個数について、試験開始前の状態を基準とし試験開始後の変化を示すグラフである。尚、試験開始前後の群間差の検定は、Mann-WhitneyのU検定を採用した。試験開始後6週間でしわの個数が有意に減少(p<0.05)することが確認された。
【0052】
<しみの評価>
顔(正面)に対し、肌診断器(Canfield社製「VISIA-Evolution」)を使用して、しみの個数を測定した(図7)。図7は、b群でのしみの個数について、試験開始前の状態を基準とし試験開始後の変化を示すグラフである。尚、試験開始前後の群間差の検定は、Mann-WhitneyのU検定を採用した。試験開始6週間以降でしみの個数が減少する傾向(p<0.1)が確認された。
【0053】
<アンケートによる評価>
試験開始から1日、2週間、4週間、6週間、12週間経過後に、試験開始前の状態と比較して肌の「しみ」、「くすみ」、「毛穴」、「つやのなさ」、「きめ」、「肌の黒さ」、「化粧崩れ」について、どのように感じられるかを調査するためのアンケートをVAS法(visual analogue scale法)により行い、改善度(試験開始後のスコア−試験開始前のスコア)を求めた(図8、9、10)。尚、試験開始前後の群間差の検定は、Mann-WhitneyのU検定を採用した。アンケートの結果からは、b群において、「血色が良いと感じる」の項目で試験開始後12週間で有意に改善(p<0.01)されていることが確認された(図9)。また、「顔色が良いと感じる」の項目でも試験開始後12週間で改善する傾向(p<0.1)が確認された(図10)。
【符号の説明】
【0054】
1 塗布具
2 塗布体
3 軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)乃至(D)を組み合わせることを特徴とする、肌改善のための外用剤セット。
(A)トリメチルグリシンを配合する角質剥離剤
(B)前記角質剥離剤を皮膚に塗布するためのコットンを塗布体とする塗布具
(C)前記角質剥離剤を塗布した後に皮膚に塗布するためのL−アスコルビン酸又はその誘導体と、粉末状保湿剤とを配合する粉末状組成物
(D)前記粉末状組成物を溶解するための含水組成物
【請求項2】
前記(A)の角質剥離剤がトリメチルグリシンを0.01〜30質量%配合することを特徴とする請求項1記載の外用剤セット。
【請求項3】
前記(C)の粉末状組成物に配合する粉末状保湿剤がマンニトールであることを特徴とする請求項1又は2記載の外用剤セット。
【請求項4】
前記(C)の粉末状組成物がL−アスコルビン酸又はその誘導体を0.01〜50質量%及びマンニトールを0.01〜50質量%配合することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の外用剤セット。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の肌改善のための外用剤セットを使用する美容方法であって、(A)角質剥離剤を(B)塗布具のコットンに含漬し、該塗布具により皮膚に塗布することによって不要な角質を除去した後、(C)粉末状組成物を(D)含水組成物で溶解することによって得られる皮膚外用剤を皮膚に塗布することによって肌を改善することを特徴とする肌改善のための美容方法。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれかに記載の肌改善のための外用剤セットと(E)アセロラパウダー、ヘム鉄、ウコンエキス、及びケイヒエキスからなる群から選択される1種又は2種以上を配合した経口用組成物とを組み合わせたことを特徴とする肌改善のための美容品セット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−6902(P2012−6902A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−165209(P2010−165209)
【出願日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】