説明

肌状態改善用経口医薬組成物

【課題】短期間で高い効果を有する、蕁麻疹、湿疹・皮膚炎、かぶれの症状を緩和し、皮膚のはれ、かゆみを治療する経口組成物を提供する。また、ニコチン酸アミド、パントテン酸、又はそれらの類縁物質の皮膚バリア機能改善効果を効果的に増強する方法を提供する。
【解決手段】(i)アゼラスチン又はその塩、及び(ii)ニコチン酸アミド、パントテン酸、及びそれらの類縁物質からなる群から選択される1種または2種以上を含有する経口医薬組成物、および、アゼラスチン又はその塩と、ニコチン酸アミド、パントテン酸、及びそれらの類縁物質からなる群から選択される1種または2種以上とを共存させる方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蕁麻疹、湿疹・皮膚炎、かぶれの症状を緩和し、皮膚のはれ、かゆみを治療する経口医薬組成物に関する。
また本発明は、ニコチン酸アミド、パントテン酸、又はそれらの類縁物質の皮膚バリア機能改善効果を増強する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の乾燥、皮膚バリア機能の低下等の肌状態の悪化は、加齢や種々の疾患、ホルモンバランスの失調等の内的要因、又は過剰の入浴や過度の洗剤使用等の生活習慣、冷暖房、紫外線、冬季の湿度の低下等の外的環境要因などにより引き起こされる。皮膚バリア機能は、皮膚が基本的に有している重要な機能であり、生体に有害な物質が体内に入り込まないようにするとともに、生体組織が恒常的な水分を保持するための機能である。この機能の低下により、炎症等の皮膚疾患が引き起されやすくなるため、蕁麻疹、湿疹・皮膚炎、かぶれ等の症状が発生し、皮膚のはれやかゆみに悩まされることになる。そのため、種々の要因により引き起こされる皮膚バリア機能の低下を改善することは重要な課題である。
【0003】
皮膚の乾燥を防ぐ目的で、従来からグリセリン、1,3−ブチレングリコール、ソルビトール等の多価アルコール、天然植物由来の抽出成分、皮膚構成成分であるアミノ酸、ピロリドンカルボン酸等の天然保湿因子、セラミド類やコレステロール類等の細胞間脂質成分及びコラーゲン、ヒアルロン酸等の生体内高分子などが外用で用いられてきた。
さらに肌状態改善組成物として経口組成物ではセラミド、アミノ酸、ヒアルロン酸、グルコサミン及びそれらの類縁体を含有する組成物や天然植物由来の健康食品、ビタミン剤等が開発されている(特許文献1、2、3)。これらの経口組成物は、長期間の投与により、限定された効果が得られることが報告されている。
また、ニコチン酸アミドの皮膚に対する効果として、アミノ酸やビタミン類、抽出物等との組み合わせで、セラミド合成促進効果(特許文献4)、美白効果(特許文献5)、抗老化効果(特許文献6)、美肌効果(特許文献7)等が報告されている。
パントテン酸は、ビタミンB5とも呼ばれ、生体内で補酵素CoAとなり、脂肪酸、たんぱく質、炭水化物等の種々の代謝系に関与する。皮膚に対しては、皮膚細胞の活性作用、弾力性や保水性の向上効果を有することが知られている。パントテン酸及びその誘導体の皮膚に対する効果として、他の化合物との組み合わせで、皮膚バリア機能改善効果(特許文献8)、美白効果(特許文献9)、美肌効果(特許文献10)、消炎効果(特許文献11)等が報告されている。
一方、抗ヒスタミン剤の一種である塩酸アゼラスチンは、医療用薬として気管支喘息、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、湿疹・皮膚炎、アトピー性皮膚炎、皮膚掻痒症、痒疹の効能・効果を有する。塩酸アゼラスチンのこれらの効能・効果は、抗ヒスタミン作用、マスト細胞の膜安定化によるヒスタミンやロイコトリエンの遊離抑制作用に基づくものと考えられている。また、塩酸アゼラスチンと他の化合物を配合した報告として、抗コリン薬またはエフェドリン薬を配合し杯細胞過形成抑制作用を示したもの(特許文献12、13)、エピナスチンを配合し湿疹等の皮膚疾患治療効果を高めたもの(特許文献14)等が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−113530号公報
【特許文献2】特開平2001−48789号公報
【特許文献3】特開2007−84460号公報
【特許文献4】特許第3129646号特許公報
【特許文献5】特開2007−176810号公報
【特許文献6】特開2005−298370号公報
【特許文献7】特開平9−315931号公報
【特許文献8】特許第3948588号特許公報
【特許文献9】特開平5−186324号公報
【特許文献10】特開平5−262635号公報
【特許文献11】特開平6−128136号公報
【特許文献12】特開2008−110970号公報
【特許文献13】特開2009−7332号公報
【特許文献14】特開2005−53907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、短期間の投与で高い皮膚バリア機能改善効果、特に角質水分量の減少を抑制する効果を有する経口医薬組成物を提供する。特に本発明により、蕁麻疹、湿疹・皮膚炎、かぶれの症状を緩和し、皮膚のはれ、かゆみを治療する経口医薬組成物を提供する。
また、本発明は、ニコチン酸アミド、パントテン酸、又はそれらの類縁物質の皮膚バリア機能改善効果、特に角質水分量の減少を抑制する効果を増強する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、(i)アゼラスチン又はその塩、および(ii)ニコチン酸アミド、パントテン酸、及びそれらの類縁物質からなる群から選択される1種または2種以上を含有する組成物を経口摂取することで皮膚バリア機能改善効果が顕著となることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明は、(i)アゼラスチン又はその塩、及び(ii)ニコチン酸アミド、パントテン酸、及びそれらの類縁物質からなる群から選択される1種または2種以上を含有する経口医薬組成物である。
特に、本発明は、皮膚バリア機能を改善し、それによって肌状態を改善することができる経口医薬組成物である。より具体的には、本発明の経口医薬組成物は皮膚の角質水分量の減少を抑制する医薬組成物である。さらに具体的には、本発明の医薬組成物は、蕁麻疹、湿疹・皮膚炎、かぶれの症状を緩和し、皮膚のはれ、かゆみの治療用医薬組成物である。
また、本発明は、アゼラスチン又はその塩と、ニコチン酸アミド、パントテン酸、及びそれらの類縁物質からなる群から選択される1種または2種以上と共存させることを含む、ニコチン酸アミド、パントテン酸、又はそれらの類縁物質の皮膚バリア機能改善効果を増強する方法である。特に本発明の方法は、ニコチン酸アミド、パントテン酸、又はそれらの類縁物質による角質水分量減少に対する抑制効果を増強する事ができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、短期間の投与により皮膚バリア機能が効果的に改善され、皮膚の角質水分量減少が抑制される。より具体的には、本発明の医薬組成物の経口投与により皮膚の乾燥、皮膚バリア機能低下等の悪化した皮膚状態が改善される、それにより蕁麻疹、湿疹・皮膚炎、かぶれの症状が緩和され、皮膚のはれ、かゆみが治療され得る。また、本発明より、ニコチン酸アミド、パントテン酸、又はそれらの類縁物質の皮膚バリア機能改善効果が効果的に増強され、皮膚の角質水分量減少が抑制され、経口投与した場合にこれらの物質による蕁麻疹、湿疹・皮膚炎、かぶれの症状を緩和する効果、および、皮膚のはれ、かゆみを治療する効果が増強される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、塩酸アゼラスチン、ニコチン酸アミドおよびパントテン酸カルシウムそれぞれを単独投与した場合、および、塩酸アゼラスチンとニコチン酸アミドを含む組成物および塩酸アゼラスチンとパントテン酸カルシウムを含む組成物を統御した場合の皮膚水分減少率(%)を示したものである。◆:対照、□:塩酸アゼラスチン単独投与、○:ニコチン酸アミド単独投与、△:パントテン酸カルシウム単独投与、●:塩酸アゼラスチンとニコチン酸アミド含有組成物投与、▲:塩酸アゼラスチンとパントテン酸カルシウム含有組成物投与。
【発明を実施するための形態】
【0009】
上述したように、従来から皮膚の乾燥を防ぐことを目的としていくつかの物質が利用されており、肌状態の改善を目的とする経口組成物も知られている。しかしながら、これらの皮膚バリア機能改善効果は必ずしも満足のいくものではなく、それらの効果は経口摂取の場合、長期間投与によって初めて確認されるものであった。本発明の組成物は、短期間の投与、例えば、1日1〜3回を好ましくは2〜14日間、少なくとも2〜7日間の投与により、皮膚バリア機能を効果的に改善し、それにより肌状態を改選することができる。より具体的には、本発明の経口医薬組成物は角質水分量の減少を抑制することができる。このような効果を奏することにより、本発明の医薬組成物は蕁麻疹、湿疹・皮膚炎、かぶれの症状を緩和し、皮膚のはれ、かゆみを治療することができる。
【0010】
本発明に用いられる「アゼラスチン又はその塩」は、薬理上許容される塩であれば特に制限はない。例えば無機酸塩(例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩等);有機カルボン酸又はスルホン酸付加塩(例えば、ギ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩等);及び酸性アミノ酸塩(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸等)等が挙げられる。好適には、本発明において「アゼラスチンの塩」は塩酸塩である「塩酸アゼラスチン」である。塩酸アゼラスチンは医薬品として市販されており、容易に入手できる(例えば、(株)三洋化学)。
【0011】
本発明の医薬組成物の投与量は、適応症や年齢により異なるが、アゼラスチンの投与量として1日あたり通常0.2〜10mgであり、これを好ましくは1日1〜3回投与する。 本発明の医薬組成物を含む固形製剤の場合において、アゼラスチンの含有量は典型的には1日あたり0.1〜10mgであり、好適には、0.5〜4mgである。
本発明の医薬組成物を含む液剤の場合において、アゼラスチンの含有量は、通常、0.05〜4mg/mLであり、好適には、0.1〜2mg/mLである。
本発明の組成物は、好ましくは2〜14日間、少なくとも2〜7日間投与することによって良好な結果が得られる。
【0012】
本発明に用いられる「ニコチン酸アミド又はその類縁物質」としては、ニコチン酸、及びその薬学上許容される塩が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明に用いられる「パントテン酸又はその類縁物質」としては、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム、パンテノール、パントテニルエチルエーテル、及びアセチルパントテニルエチルエーテルが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明には、上記のニコチン酸アミド、パントテン酸、及びそれらの類縁物質の1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の経口医薬組成物中に含まれる、アゼラスチンとニコチン酸アミド、パントテン酸、及びそれらの類縁物質との配合比に特に制限はない。好適には、重量比でアゼラスチン1に対して、ニコチン酸アミド、パントテン酸、及びそれらの類縁物質は、1〜200である。
【0013】
皮膚バリア機能改善効果を評価する方法として、例えばヒト、ラット、マウスなどの皮膚にテープストリッピングによる角質層の剥離、界面活性剤による脱脂(例えばドデシル硫酸ナトリウムなど)、または有機溶剤による脱脂(例えばアセトンなど)等の処置を施すことにより皮膚バリア機能を破壊し、元の状態へと回復していく過程をTEWLの測定により評価する方法がある。
空気の乾燥や生理機能の変動により引き起こされる皮膚バリア機能の低下時には、皮脂膜や細胞間脂質といった脂溶性の保湿成分だけでなく、天然保湿因子等の水溶性保湿成分の減少もみられる。
よって本経口医薬組成物の皮膚バリア機能改善効果を評価するために、アセトン・ジエチルエーテル混液による脂溶性保湿成分の減少、さらに蒸留水による水溶性保湿成分の減少も引き起こすことができる以下のモデル動物を利用することができる。
【0014】
具体的には、例えば以下のように本経口医薬組成物の皮膚バリア機能改善効果を評価することができる。
(1)皮膚バリア機能低下モデルの作製方法
マウス吻側背部皮膚の一部、例えば約2cm四方を剃毛し、剃毛の数日後、例えば4日後よりアセトン・ジエチルエーテル(1:1)混液を浸した脱脂綿で10〜60秒間剃毛部を被覆し、その後余分な溶媒を除去すべく払拭し、続いて蒸留水を浸した脱脂綿で30〜60秒間同様に被覆、払拭する。この処理を1日2回程度、7時間以上の間隔で数日間連続、例えば3〜7日間連続して実施することで、皮膚バリア機能低下モデルマウスを作製することができる。
(2)被験物質の投与
上記処理直後に毎回被験物質を経口投与する(1日2〜3回、約5〜7日間)。塩酸アゼラスチンとニコチン酸アミド及びパントテン酸カルシウムの量および比率は適宜調節し、経口投与する。
(3)皮膚水分量の測定
角質水分量はCorneometer CM825(Courage + Khazaka electronics製、ケルン、ドイツ)にて測定した相対的静電容量を指標とすることができる。
測定した角質水分量より、水分減少率を次式により求め、皮膚バリア機能改善効果の指標とすることができる。
水分減少率(%)=(開始時の角質水分量/各測定日の角質水分量−1)×100
【0015】
本発明においては、上記成分の他、必要に応じて他のビタミン類、アミノ酸類、抗炎症成分、交感神経興奮薬成分、生薬成分、カルシウム剤等を本発明の効果を損なわない範囲で含有させることができ、次のような成分が例示される。
ビタミン類:ビタミンA類[レチノール及びその誘導体、並びにそれらの薬学上許容される塩(例えば、レチナール、レチノイン酸、パルミチン酸レチノール、及び酢酸レチノール等)]、ビタミンB1類[チアミン及びその誘導体、並びにそれらの薬学上許容される塩(例えば、塩酸チアミン、硝酸チアミン、及びフルスルチアミン等)]、ビタミンB2類[リボフラビン及びその誘導体、並びにそれらの薬学上許容される塩(例えば、リン酸リボフラビン、リン酸リボフラビンナトリウム、酪酸リボフラビン、及びフラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム等)]、ビタミンB6類[ピリドキシン及びその誘導体、並びにそれらの薬学上許容される塩(例えば、塩酸ピリドキシン、リン酸ピリドキシン、及びピリドキサール等)]、ビタミンB12類[コバラミン及びその誘導体、並びにそれらの薬学上許容される塩(例えば、シアノコバラミン、メコバラミン、及び塩酸ヒドロキソコバラミン等)]、ビオチン、葉酸またはその薬学上許容される塩、ビタミンC類[アスコルビン酸及びその誘導体、並びにそれらの薬学上許容される塩(例えば、エリソルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、及びエリソルビン酸ナトリウム等)、ビタミンD類[カルシフェロール及びその誘導体、並びにそれらの薬学上許容される塩(例えば、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール、及びヒドロキシコレカルシフェロール等)]、ビタミンE類[トコフェロール、ユビキノン及びその誘導体、並びにそれらの薬学上許容される塩(例えば、酢酸トコフェロール、コハク酸トコフェロール、及びコハク酸トコフェロールカルシウム等)]、その他のビタミン類(例えば、ヘスペリジン、カルニチン、フェルラ酸、γ−オリザノール、オロチン酸、ルチン、エリオシトリン、イノシトール、及びそれらの薬学上許容される塩)等。
好ましくは、塩酸ピリドキシン、及びアスコルビン酸が挙げられる。
【0016】
アミノ酸類:グルタミン酸、アスパラギン酸、グリシン、アラニン、セリン、アミノエチルスルホン酸(タウリン)、及びそれらの薬学上許容される塩(例えば、塩酸エフェドリン、塩酸メチルエフェノリン等)等。
【0017】
抗炎症成分:アラントイン、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸、ジクロフェナクナトリウム、及びそれらの薬学上許容される塩(例えば、グリチルリチン酸モノアンモニウム、グリチルリチン酸カリウム、グリチルリチン酸二カリウム等)等。
【0018】
交感神経興奮薬成分:エフェドリン、メチルエフェドリン、シュードエフェドリン、トリメトキノール、メトキシフェナミン、及びそれらの薬学上許容される塩等。
【0019】
生薬成分:サイコ、ブクリョウ、ケイヒ、カンゾウ、オウゴン、オウバク、オウレン、サンシシ、ジオウ、シャクヤク、センキュウ、トウキ、ハマボウフウ、ボウフウ、オウヒ、キキョウ、ショウキョウ、ドクカツ、ケイガイ、モクツウ、ゴボウシ、チモ、センタイ、クジン、ソウジュツ、インチンコウ等。
【0020】
カルシウム剤:クエン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、乳酸カルシウム、リン酸水素カルシウム等。
【0021】
製剤の剤形としては、内服製剤であれば特に制限されないが、具体的な剤形としては、錠剤(素錠、多層錠、有核錠、チュアブル錠等)、細粒剤(顆粒剤、散剤、粉末剤を含む)、カプセル剤(硬カプセル剤、軟カプセル剤等)、丸剤、液剤(シロップ剤を含む)等が挙げられる。
【0022】
上記各剤形において、その剤形に応じ、通常使用される各種添加剤を使用することもできる。例えば、安定化剤、界面活性剤、可塑剤、滑沢剤、可溶化剤、緩衝剤、甘味剤、基剤、矯味剤、結合剤、懸濁化剤、抗酸化剤、コーティング剤、湿潤剤、充填剤、着色剤、香料、糖衣剤、等張化剤、粘稠剤、pH調整剤、賦形剤、分散剤、崩壊剤、崩壊補助剤、崩壊延長剤、防湿剤、防腐剤、保存剤、溶解剤、溶解補助剤、溶剤、流動化剤等の製剤添加物が挙げられる。
これらの各剤形に適した添加剤や基剤を適宜使用し、日本薬局方等に記載された通常の方法に従い、製造することができる。
以下に、実施例及び試験例を示し、本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0023】
錠剤の作製
下記表の成分及び分量をとり、日局製剤総則「錠剤」の項に準じて錠剤を製造した。
【0024】
4錠中(mg)

【実施例2】
【0025】
顆粒剤の製造
下記表の成分及び分量をとり、日局製剤総則「顆粒剤」の項に準じて顆粒剤を製造した。
2包中(mg)

【実施例3】
【0026】
カプセル剤の作製
下記表の成分及び分量をとり、日局製剤総則「散剤」の項に準じて細粒剤を製造した後、カプセルに充填して硬カプセル剤を製造した。
2カプセル中(mg)

【実施例4】
【0027】
シロップ剤の作製
下記表の成分及び分量をとり、日局製剤総則「シロップ剤」の項に準じてシロップ剤を製造した後、褐色ガラス瓶に充填してシロップ剤を製造した。
20mL中(mg)

【実施例5】
【0028】
皮膚バリア機能改善効果試験
(1)被検組成物
被検組成物として、塩酸アゼラスチンとニコチン酸アミドを含む組成物および塩酸アゼラスチンとパントテン酸カルシウムを含む組成物を試験し、塩酸アゼラスチン、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウムもそれぞれ単独で試験した。塩酸アゼラスチンは(株)三洋化学、ニコチン酸アミドはDSMニュートリションジャパン(株)、パントテン酸カルシウムは第一ファインケミカルのものを使用した。
各被験物質はマウス体重10gあたり、0.1mlの投与量になるように水で溶解した。対照は水のみを投与した。
(2)動物
試験には日本エスエルシーより購入した雄性ICR系マウス(5〜6週齢)を使用した。7日間予備飼育し、試験期間を通じて、飼育環境は、温度22〜23℃、湿度45〜50%、照明時間12時間(7時〜19時)とし、飼料及び水は自由摂取とした。
(3)皮膚バリア機能低下モデルの作製
マウス吻側背部皮膚約2cm四方を剃毛し、剃毛4日後よりアセトン・ジエチルエーテル(1:1)混液を浸した2cm四方の脱脂綿で15秒間剃毛部を被覆し、その後余分な溶媒を除去すべく払拭し、続いて蒸留水を浸した脱脂綿で30秒間同様に被覆、払拭した。この処理を1日2回、7時間以上の間隔で、6日間実施することで、皮膚バリア機能低下モデルマウスを作製した。
(4)被験物質の投与
(3)の処理直後に被験物質を経口投与した(1日2回、6日間)。塩酸アゼラスチンは1mg/kg、ニコチン酸アミド及びパントテン酸カルシウムは100mg/kgの用量で経口投与した(各群n=8)。
(5)皮膚水分量の測定
角質水分量はCorneometer CM825(Courage + Khazaka electronics製、ケルン、ドイツ)にて測定した相対的静電容量を指標とした。測定した角質水分量から水分減少率を次式により求め、皮膚バリア機能改善効果の指標とした。
水分減少率(%)=(開始時の角質水分量/各測定日の角質水分量−1)×100
(6)データ解析
試験成績は、個々の水分減少率の平均値及び標準誤差を算出し、群間の差についてTukey-Kramerの多重比較検討にて解析した。
【0029】
(7)結果
表1.各被検物質による水分減少率

**p<0.01 vs 対照
【0030】
この結果から、表1より、塩酸アゼラスチン、ニコチン酸アミド又はパントテン酸カルシウムのそれぞれ単独投与群の水分減少率は、対照と比較して有意な差はなく、皮膚バリア機能改善効果があるとはいえない。
しかし、塩酸アゼラスチン及びニコチン酸アミド併用投与群、又は塩酸アゼラスチン及びパントテン酸カルシウム併用投与群の水分減少率はそれぞれの単独投与群に比べ小さく、また対照群に比べ有意な皮膚バリア機能改善効果を示した。
よって単独投与では認められなかった皮膚バリア機能改善効果が、併用投与により顕著に認められ、各成分の皮膚バリア機能に対する相乗的な改善効果の増強が確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)アゼラスチン又はその塩、及び(ii)ニコチン酸アミド、パントテン酸、及びそれらの類縁物質からなる群から選択される1種または2種以上を含有する経口医薬組成物。
【請求項2】
パントテン酸類縁物質が、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム、パンテノール、パントテニルエチルエーテル、及びアセチルパントテニルエチルエーテルからなる群より選ばれる請求項1記載の経口医薬組成物。
【請求項3】
アゼラスチンの塩が塩酸アゼラスチンであり、塩酸アゼラスチンの1日当たりの投与量が、0.1〜10mgである請求項1または2記載の経口医薬組成物。
【請求項4】
アゼラスチン又はその塩と、ニコチン酸アミド、パントテン酸、及びそれらの類縁物質からなる群から選択される1種または2種以上と共存させることを含む、ニコチン酸アミド、パントテン酸、又はそれらの類縁物質の皮膚バリア機能改善効果を増強する方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−260808(P2010−260808A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−111954(P2009−111954)
【出願日】平成21年5月1日(2009.5.1)
【出願人】(000150028)株式会社池田模範堂 (8)
【出願人】(392008541)日東薬品工業株式会社 (7)
【Fターム(参考)】