説明

肌状態診断システムおよび美容のためのカウンセリングシステム

【課題】 店頭において、診断時の操作を簡単にして、初心者でも顧客の肌状態の診断ができ、その診断結果をより精度の高いものにするシステムを提供することである。
【解決手段】 データ収集システム1と、このデータ収集システム1が収集したデータに基づいた解析処理を行なうデータ解析システム11とを通信手段を介して接続し、上記データ収集システム1は、収集側通信手段7と、肌のきめ状態の解析が可能な超高精細デジタル画像を取り込む画像取り込み手段2と、ブロックノイズを抑制した高圧縮方法によって圧縮する収集側画像データ圧縮手段6と、収集側データ表示手段3とを備え、上記データ解析システム11は、解析側通信手段12と、画像データを解析するデータ解析手段13と、ブロックノイズを抑制した高圧縮方法によって圧縮する解析側データ圧縮手段13とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、化粧品販売店などの店頭において、被検者である顧客の肌状態を診断するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、化粧品販売を行なう販売店の店頭で、マイクロスコープを用いて、顧客の肌を拡大して観察し、肌状態を診断することが行われている。
パソコンなどの画像処理装置に接続したマイクロスコープを、顔の特定の部位に当てて、その拡大画像をディスプレイに表示させ、さらに、上記画像処理装置が、マイクロスコープから取り込まれた画像を解析して、例えば、きめの状態などの肌状態を定量的に評価することも行われていた。
このような設備を持っている店舗では、販売員が、肌状態の診断結果を利用して、その顧客に合った商品を選択したり、その使用方法を指導したりしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、マイクロスコープで、一度に取り込むことができる顔上の面積は小さいため、取り込んだ画像に基づく診断結果も、局所的なものとなる。例えば、頬のシミの状態を測定する場合にも、頬の全面積の、ほんの一部しか取り込むことができないので、その場所が頬全体を代表するような状態でなければ、頬の状態を診断したことにはならない。例えば、マイクロスコープを当てた場所にしか、シミがない場合には、頬全体の状態を表す診断結果は得られない。
【0004】
そこで、信頼性の高い結果を得るためには、できるだけ多数の部位の画像を取り込んで解析すればよいことになるが、例えば、頬全体や額全体の画像を取り込むために、マイクロスコープを何回も顧客の顔に当て画像を取り込むのには、手間と時間がかかってしまう。
頬や、額など、ある程度の範囲を限定したとしても、マイクロスコープで、多数の箇所を取り込んで、顔全体の状態を診断することは、現実的ではない。
【0005】
そのうえ、多量の情報を取り込んで、それらを全て解析するためには、処理時間がかかってしまう。店頭で、画像や、その他の顧客情報を全て入力してから、解析結果が出てくるまで、顧客が何もしないで待てる時間は、数分である。この間に、結果を出すためには、処理速度の速い大型コンピュータが必要である。このような大型コンピュータを各店舗に設置することはほとんど不可能である。
だからといって、ある程度の広さを持つ部位の状態を代表する画像取り込みポイントを特定して、そこにマイクロスコープを当てて画像を取り込むことは、かなりのベテランでなければできないという問題もあった。
【0006】
また、マイクロスコープを用いた診断装置では、取り込んだ部位の拡大画像を表示させることはできても、その拡大画像が、顧客の顔のどの部分に当たるのか、つまり、顔上の正確な位置が特定できない。そのため、顧客は、診断結果を示されても、それが自分の顔のどの部分なのかはっきりせず、実感できないという問題もあった。
しかも、マイクロスコープを顔に当てて、解析可能な画像を取り込む作業には、その当て方にコツが必要で、慣れていない初心者には難しいという問題もある。
【0007】
この発明の目的は、店頭において被検者である顧客の顔の肌状態を診断するシステムにおいて、診断時の操作を簡単にして、初心者でも診断ができ、しかも、その診断結果をより精度の高いものにするシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、データ収集システムと、このデータ収集システムが収集したデータに基づいた解析処理を行なうデータ解析システムとを通信手段を介して接続し、上記データ収集システムは、上記データ解析システムとの間でデータの送受信を行なう収集側通信手段と、肌のきめ状態の解析が可能なレベルの超高精細デジタル画像を取り込む画像取り込み手段と、画像データを、ブロックノイズを抑制した高圧縮方法によって圧縮する収集側画像データ圧縮手段と、収集側データ表示手段とを備え、上記データ解析システムは、上記データ収集手段との間でデータの送受信を行なう解析側通信手段と、画像データを解析するデータ解析手段と、画像データを、ブロックノイズを抑制した高圧縮方法によって圧縮する解析側画像データ圧縮手段と、上記データ解析手段による解析結果を記憶する解析側データ記憶手段とを備え、上記画像取り込み手段が被検者の全顔画像を超高精細デジタル画像として取り込み、収集側画像データ圧縮手段は、上記全顔画像を圧縮して圧縮画像データを生成し、これを収集側通信手段を介してデータ解析システムへ送信する機能を備え、データ解析手段は、解析側通信手段を介して圧縮画像データを受信し、受信した圧縮画像データに基づいて被検者の肌状態を解析し、その解析結果を上記全顔画像に反映させた視覚情報を生成し、その視覚情報を診断結果として出力する機能を備え、解析側画像データ圧縮手段は、データ解析手段から出力された診断結果を圧縮して圧縮画像データを生成し、この圧縮画像データを、解析側通信手段を介してデータ収集システムへ送信し、上記収集側データ表示手段は、解析側通信手段から送信された診断結果を表示する機能を備えた点に特徴を有する。
なお、上記データ収集システムおよびデータ解析システム間で送信される圧縮画像データを受信したシステムでは、そのデータを処理する際に、圧縮画像データの解凍処理を行なうようにしている。
【0009】
第2の発明は、上記第1請求項を前提とし、上記データ解析システムは、肌状態に関する複数の診断項目を記憶した記憶手段を備え、上記データ解析手段は、全顔画像データから、上記診断項目ごとの評価点を算出し、この評価点に対応した評価結果を全顔画像に反映させる機能を備えた点に特徴を有する。
【0010】
第3の発明は、上記第2の発明を前提とし、上記記憶手段は、上記複数の診断項目を、少なくとも2種以上の中項目に分類して記憶するとともに、上記中項目および診断項目のそれぞれに、係数値を対応付けて記憶し、上記データ解析手段は、算出した診断項目ごとの評価点に、その診断項目に対応する係数値を掛け合わせてなる診断項目ごとの点数を、中項目ごとに集計して中項目評価点を算出し、この中項目評価点に、その中項目に対応する係数値を掛け合わせ、その掛け合わせた点数を集計して肌状態の評価点を算出する機能を備えた点に特徴を有する。
【0011】
第4の発明は、上記第3の発明を前提とし、上記係数値は、視覚的に決定した肌状態の視覚的評価点と、上記データ解析手段が算出した診断項目ごとの評価点との関係を分析することによって算出した値である点に特徴を有する。
第5の発明は、上記第3、第4の発明を前提とし、データ解析手段は、上記算出した評価点と、その項目に対応する係数値とを同一画面上に表示するための表示データを生成する機能を備えた点に特徴を有する。
【0012】
第6の発明は、上記第1〜第5の発明を前提とし、上記データ解析手段は、データ収集システムから受信した全顔画像から、顔の形態要素を特定するプロセスと、診断項目を特定するプロセスと、特定した診断項目に応じた上記全顔画像上の診断部位を上記顔の形態要素に基づいて特定するプロセスと、上記診断部位における診断項目に対応した肌状態に応じて現れる画像上の特徴を解析するプロセスとを実行する点に特徴を有する。
【0013】
第7の発明は、データ収集システムと、このデータ収集システムが収集したデータに基づいた解析処理を行なうデータ解析システムとを通信手段を介して接続し、上記データ収集システムは、上記データ解析システムとの間でデータの送受信を行なう収集側通信手段と、肌のきめ状態の解析が可能な超高精細デジタル画像を取り込む画像取り込み手段と、画像データを、ブロックノイズを抑制した高圧縮方法によって圧縮する収集側画像データ圧縮手段と、収集側データ表示手段とを備え、上記データ解析システムは、上記データ収集手段との間でデータの送受信を行なう解析側通信手段と、画像データを解析するデータ解析手段と、画像データをブロックノイズを抑制した高圧縮方法によって圧縮する解析側画像データ圧縮手段と、上記データ解析手段による解析結果を記憶する解析側データ記憶手段と、予め設定した肌状態や顔形状のパターン分けに対応した経時変化傾向を記憶する変化傾向記憶手段とを備え、上記画像取り込み手段が被検者の全顔画像を超高精細デジタル画像として取り込み、収集側画像データ圧縮手段は、上記全顔画像を圧縮して圧縮画像データを生成し、これを収集側通信手段を介してデータ解析システムへ送信する機能を備え、データ解析手段は、解析側通信手段を介して圧縮画像データを受信し、受信した圧縮画像データに基づいて被検者の肌状態を解析し、その解析結果を上記全顔画像に反映させた視覚情報を生成し、その視覚情報を診断結果として出力する機能と、上記被検者の肌状態や顔形状から上記パターンを特定するとともに、このパターンに対応する変化傾向を上記変化傾向記憶手段が記憶しているデータの中から特定する機能と、特定した変化傾向に基づいて被検者の肌状態や顔形状の将来予測を行ない、その予測結果を全顔画像に反映させて将来予測顔画像として出力する機能とを備え、解析側画像データ圧縮手段は、データ解析手段から出力された将来予測顔画像を圧縮して圧縮画像データを生成し、これを解析側通信手段を介してデータ収集システムへ送信し、上記収集側データ表示手段は、解析側通信手段から送信された将来予測顔画像を表示する機能を備えた点に特徴を有する。
【0014】
第8の発明の、美容のためのカウンセリングシステムは、データ収集システムと、このデータ収集システムが収集したデータに基づいた解析処理を行なうデータ解析システムとを通信手段を介して接続し、上記データ収集システムは、上記データ解析システムとの間でデータの送受信を行なう収集側通信手段と、肌のきめ状態の解析が可能なレベルの超高精細デジタル画像を取り込む画像取り込み手段と、画像データを、ブロックノイズを抑制した高圧縮方法によって圧縮する収集側画像データ圧縮手段と、収集側データ表示手段とを備え、上記データ解析システムは、上記データ収集手段との間でデータの送受信を行なう解析側通信手段と、画像データを解析するデータ解析手段と、画像データをブロックノイズを抑制した高圧縮方法によって圧縮する解析側画像データ圧縮手段と、上記データ解析手段による解析結果を記憶する解析側データ記憶手段と、化粧品情報などの美容情報を記憶した美容情報記憶手段とを備え、上記画像取り込み手段が被検者の全顔画像を超高精細デジタル画像として取り込み、収集側画像データ圧縮手段は、上記全顔画像を圧縮して圧縮画像データを生成し、これを収集側通信手段を介してデータ解析システムへ送信する機能を備え、データ解析手段は、解析側通信手段を介して圧縮画像データを受信し、受信した圧縮画像データに基づいて被検者の肌状態を解析し、その解析結果を上記全顔画像に反映させた視覚情報を生成し、その視覚情報を診断結果として出力する機能と、上記解析結果に基づいて上記美容情報記憶手段から上記被検者に適した美容情報を抽出して出力する機能とを備え、解析側画像データ圧縮手段は、データ解析手段から出力された診断結果を圧縮して圧縮画像データを生成し、これを上記抽出された美容情報とともに解析側通信手段を介してデータ収集システムへ送信し、上記収集側データ表示手段は、解析側通信手段から送信された診断結果および美容情報を表示する機能を備えた点に特徴を有する。
【発明の効果】
【0015】
第1〜第8の発明によれば、超高精細の全顔画像を、短時間で通信できるようにしたため、高精度な診断ができるデータ解析システムを、データ収集システムと別に設けることができるようになった。
このように、高精度な解析を行なうための大型の処理装置を、データ収集システムと分離することによって、多くの店舗などに小型なデータ収集システムを設置できるようになる。
また、店舗などのデータ収集システム側では、全顔画像を、カメラを使うという簡単な操作で取り込むことができるので、従来のマイクロスコープを用いる場合と比べて、初心者でも顧客の全顔画像を取り込めるようになった。
その結果、より精度の高い診断結果を、簡単に得られるようになる。
また、診断結果が、全顔画像上に視覚的に表現されるので、化粧品店の顧客などの被検者にとっても診断結果が納得しやすくなる。
【0016】
さらに、全顔画像によって、全顔の肌状態に関するデータを同時に取り込むことができるので、全顔の肌状態を総合的に評価することもできる。もしも、顔全体のデータを同時に取り込めない場合には、場所によってそのデータの取り込み時が異なることになる。一方で、肌状態は時間とともに変化するため、場所によってデータの取り込みに時間差があると、顔全体を同時刻の状態で評価することができない。そのため、全顔の肌状態を総合的に評価する場合、正確な評価結果が得られないことがあるが、この発明のように、全顔画像を一度に取り込むようにすれば、このような心配はない。
【0017】
第2〜第4の発明によれば、肌状態を総合的に評価し、それを表示することができる。
特に、第4の発明によれば、見た目、すなわち、視覚的な肌状態の評価結果を、算出することができる。
第5の発明によれば、総合的な肌状態の評価結果に対する各項目の寄与度がわかる。従って、肌状態の総合評価結果を改善するためには、どの診断項目を改善することが効率的なのかが一目で分かる。
【0018】
第6の発明によれば、診断項目に応じて、画像上の、解析すべき部位を特定できる。
第7の発明によれば、被検者の肌状態に基づいて、将来を予測した将来予測顔画像を出力することができるようになる。将来予測顔画像を利用して、美容に関するより適切なアドバイスもできる。
第8の発明によれば、店舗などにおいて、経験のない者でも、美容に関するカウンセリングができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1、図2を用いて、この発明の第1実施形態を説明する。
この第1実施形態のシステムは、複数の店舗にそれぞれ設置したデータ収集システム1と管理センターに設置したデータ解析システム11とをインターネットなどの通信ネットNを介して接続している。なお、上記データ収集システム1の設置場所は、店舗に限らないが、以下の実施形態では、化粧品店などの店舗に設置するものとする。
そして、この肌状態診断システムでは、データ収集システム1から、診断に必要なデータをデータ解析システム11へ送信し、データ解析システム11が解析した結果をデータ収集システム1へ送信し、表示部3で解析結果を表示させるようにしている。
【0020】
図1に示すように、データ収集システム1は、この発明の超高精細デジタル画像を取り込む画像取り込み手段である撮影部2と、データを表示する表示部3と、顧客情報などを入力するキーボードや、カードリーダーなどの入力部4と、データを記憶する記憶部5と、処理部6と、データを出力する出力部8と、通信ネットNを介してデータ解析システム11と通信を行なうこの発明の収集側通信手段である送受信部7とを備えている。
なお、各店舗に設置したデータ収集システム1は、どれも同じ構成をしている。
【0021】
上記撮影部2は、被検者である顧客の顔全体を肌のきめ状態の解析が可能な超高精細デジタル画像として撮影するデジタルカメラである。上記肌のきめ状態の解析が可能な超高精細とは、30μm幅の細線を読み取れる程度の分解能を有することで、例えば、現行の14インチモニター上で50倍のマイクロスコープレベルと同等か、それ以上のレベルである。取り込む画像の画素数が大きいほど、きめ状態の解析は容易になるが、具体的には、2000万画素以上が必要であり、4000万画素以上が好ましい。
また、表示部3は、超高精細デジタル画像を表示可能なディスプレイであり、上記出力部8は、データ解析システム11から返送された解析結果やその他データを出力するためのプリンターなどである。
【0022】
上記処理部6は、上記入力部4から入力された顧客データや、撮影部2から入力された画像データを処理したり、データを記憶部5に記憶させたり、上記送受信部7を介してデータ解析システム11へ送信したりする機能を備えている。
上記処理部6のデータ処理機能として、撮影部2から入力された超高精細画像を圧縮する機能がある。この圧縮方法は、ブロックノイズを抑制した高圧縮方法である。
ブロックノイズを抑制した圧縮方法は、圧縮画像データを解凍したときにも、元画像に存在した線の連続性が損なわれない方法であり、肌のきめ状態を解析する場合に、最適な方法である。このような圧縮方法を実現するソフトとして、例えば(株)セラーテムテクノロジーの「MrSID」などがある。
【0023】
また、高圧縮の圧縮率は、店舗側で、必要なデータを入力してから、数分以内でその解析結果が、データ解析システム11から返送される通信速度を実現するための圧縮率で、20分の1程度のことである。
上記圧縮方法として、既に市販されている様々なソフトが利用できる。上記収集側処理部6には、これらのソフトを設定し、画像データを圧縮するようにしている。
つまり、上記収集側処理部6が、この発明の収集側画像データ圧縮手段を構成する。
【0024】
一方、データ解析システム11は、データ収集システム1との通信を行なう解析側通信手段である送受信部12と、データ解析手段および解析側画像データ圧縮手段に当たる中央処理部13と、記憶部14と、様々なデータベース15〜19を備えている。
記憶部14は、データ収集システム1から送信されたデータを記憶したり、中央処理部13が解析した解析結果を記憶したりする記憶部であり、データベース15〜19は、後で詳しく説明する中央処理部13のデータ解析の際に、その解析処理に必要なデータを記憶したデータベースである。
【0025】
上記データベースは、例えば、管理センターに接続している複数のデータ収集システム1から送信された顧客情報を記憶した顧客データベース15、顧客の顔画像を記憶した顔画像データベース16、肌状態を判定する際の基準データを記憶した肌判定基準データベース17、肌特性に対応させた肌の手入れ方法を記憶させたお手入れデータベース18、各店舗で販売する商品情報を記憶した商品情報データベース19などである。
なお、上記肌判定基準データベース17が記憶している基準データとは、診断項目ごとに、画像解析を行なった結果を、それぞれの肌状態のレベル値に置き換えるための基準である。例えば、顔全体の明るさ(白さ)を評価するためには、顔画像から明度を測定し、その測定値によって肌の明るさレベルを決定するが、画像の明度に対応付けた肌の明るさレベルが、上記基準データである。
また、上記中央処理部13が備えている画像データ圧縮の機能は、上記収集側処理部6が有する圧縮機能と同じで、ブロックノイズを抑制した高圧縮方法によって、画像データを圧縮することができる。
【0026】
以下に、データ収集システム1を設置した店舗に来店した顧客の肌状態を診断する手順を説明する。
なお、ここでは、顧客の顔の肌状態が、どのようになっているか、例えば、かさつきなどの問題があるかどうか、全体的に診断する例について説明する。
【0027】
まず、店舗では担当者が、上記撮影部2を用いて顧客の全顔データを取り込む。具体的には、超高精細画像用のデジタルカメラで、顧客の顔を撮影する。撮影時には、顔全体が入るようにして、ピントの合った画像を取り込まなければならないが、デジタルカメラを使って写真撮影をすることは、誰にでもできることなので、顧客の位置や、照明条件などを工夫すれば、解析可能な画像を取り込むことは特に難しいことではない。マイクロスコープでデータを取り込む場合と比べれば、簡単で肌診断の初心者でもできる作業である。
【0028】
上記のようにして、撮影部2から全顔画像が取り込まれると、処理部6がそれを圧縮し、圧縮画像データとして送受信部7を介してデータ解析システム11へ送信する。
データ解析システム11では、圧縮画像データを、送受信部12を介して中央処理部13が受信し、これを解凍してから解析を行なう。
【0029】
以下に、この解析手順を、図2〜図7を用いて説明する。
中央処理部13は、受信した圧縮画像データを解凍して、全顔画像を生成する。図2は、生成した全顔画像21を示している。この全顔画像21を元に、肌診断を行なう。
まず、中央処理部13は、全顔画像21の肌色を認識し、それを元に顔の輪郭を特定し、その輪郭に、予め記憶している顔の形態要素である目、鼻、口などの各顔パーツの特徴点データを当てはめて、全顔画像21内の顔パーツの位置を特定する。
【0030】
次に、顔パーツの情報を基にして、図3に示すように解析部位22を決定する。この解析部位22は、顔全体に設定する場合もあるし、診断項目に応じて、特定の場所、例えば、頬、目尻、というような位置に設定する場合もある。診断項目とは、このシステムにおいて、画像から解析して判定する肌状態の項目のことである。具体的には、シワや、かさつきといった項目である。
そして、例えば、かさつきの診断は、かさつきやすいほおを解析部位とするとか、シワの診断は、目尻や口の両脇を解析部位とするというように予めきめておく。
なお、この第1実施形態では、顔全体の肌状態を診断するため、予め複数の診断項目を設定し、その全てに関して診断を行なうようにしている。そして、決定した解析部位について、診断項目ごとにデータ解析を行って解析結果を出す。
【0031】
シワ、かさつき、シミなどの診断項目ごとに、きめの状態や、毛穴の形状・大きさなど、解析すべき項目や、解析手順がある。これらの解析項目や手順は、予め、中央処理部13の解析プログラムに設定されている。上記解析は、データ収集システム1側で取り込んだ全顔画像データにおいて、診断項目に応じた必要箇所の明度、色相、色の分布などの画像解析処理である。例えば、肌の明るさ(白さ)を評価する場合には、画像データ全体から明度を測定し、色味を評価する場合には、画像データ全体から色相を測定し、それぞれを基準データと対比して、肌の明るさの評価点、あるいはレベル値を決定する。
また、シミ・ソバカスの解析は、基準値以上の濃度を持つ箇所と、その密度や面積などの解析データに基づいて行ない、きめやシワについても、濃い部分が線状に連なっている部分を特定することによって、きめやシワを特定し、その濃さや大きさ、分布などの計測値を上記基準データと対比して、評価結果を出力するようにしている。
【0032】
さらに、診断項目の中には、他の診断項目と関連する診断項目もある。例えば、肌のかさつきは、きめ状態に大きく関連しているので、その診断の場合、かさつきの診断に対応した解析部位のきめ状態の解析を行って、きめの状態を数値化したものを求める。そして、その値を、上記肌判定基準データベース17のかさつきの基準データと対比して、顧客のかさつき状態を判定する。
いずれの診断項目についても、中央処理部13は、診断項目ごとに、解析項目に応じた、必要な箇所の明度、色味、濃度、線の配置などの画像解析を行ない、各解析項目の解析結果を、肌判定基準データベース17の基準データと対比して、診断項目ごとに、顧客の肌の状態を判定する。
【0033】
診断すべき全ての項目の解析結果から肌状態を判定したら、中央処理部13は、その診断結果を、図4に示すように、上記全顔画像21上に診断結果を反映させた画像情報を生成する。
すなわち、中央処理部13は、図4に示すように、目尻のシワの発生部位23や、頬のかさつき発生部位24を、全顔画像21上に色分けして表示するための診断結果画像データを生成する。
中央処理部13は、診断結果を表す診断結果画像データを、ブロックノイズを抑制した圧縮方法によって高圧縮し、送受信部12を介して、データ収集システム1へ送信する。
【0034】
データ収集システム1では、受信したデータを表示部3に表示させる。表示部3には、図4に示すように、顧客の全顔画像21上に、肌状態を色分けして表した画面が表示される。
また、図5のように、上記中央処理部13で、求めた肌状態レベルをグラフ30によって、全顔画像21とともに、表示部3に表示させることもできる。なお、上記グラフ30は、図6に示すように、シワなどの診断項目ごとに、その程度を表したグラフである。
ただし、肌状態レベルは、上記グラフ30ではなく、全顔画像21上に色で表示するようにしてもよい。例えば、かさつき部位を示すために付けた色の濃度によって、かさつきのレベルを表すこともできる。
このように、全顔画像21上に、肌診断結果が視覚的に表されることによって、顧客は、自分の肌の状態を実感することができるとともに、店舗側でも、顧客を納得させやすくなる。
【0035】
さらに、図7に示すように、データ収集システム1では、表示された全顔画像21における特定の位置をマウスポインタ31等で選択すると、その拡大画像を、拡大画像表示エリア32に表示させることもできるようにしている。
なお、この拡大画像表示エリア32に表示される画像は、上記撮影部2から取り込まれた超高精細画像を基にした画像で、きめの状態が明確にわかるレベルのものである。
【0036】
上記のように、超高精細な全顔画像に基づいた肌診断が、現実的な速度でできるようになったのは、実際の解析処理を、処理能力の高い、管理センターのデータ解析システム11に行なわせることによって、処理時間を短縮し、さらに、画像データを高圧縮して送受信することによって通信時間を短縮するようにしたためである。
画像データを圧縮することによって、画像データが劣化し、肌状態の解析精度が落ちてしまったのでは意味がない。しかし、この発明のシステムでは、ブロックノイズを抑制する圧縮方法を採用することによって、肌解析にとって重要な、線の連続性を保存したまま圧縮できるようにしたので、圧縮によって解析精度が落ちる心配はない。
【0037】
なお、上記第1実施形態では、顧客の顔全体の肌状態をチェックしたが、例えば、顧客の肌の悩みなど、気になる診断項目のみの解析を行なうようにしても良い。
その場合には、データ収集システム1の入力部4から、顧客の肌の悩みを入力し、データ解析システム11へ送信するようにする。データ解析システム11では、中央処理部13が、受信した肌の悩みに対応した診断項目を特定して、上記第1実施形態と同様の手順によってデータ解析を行なうとともに、診断結果を出力する。
この場合も、データ収集システム1の表示部3には、顧客の全顔画像上の、肌の悩みに対応した部分に、特定の色を付けてその部位を表示することができる。また、肌のダメージの程度をグラフや、点数などで示すこともできる。
【0038】
また、図8〜図10に示す第2実施形態は、上記第1実施形態のように、個々の診断項目に関する肌状態を被検者である顧客の全顔画像上に表示するだけでなく、さらに、これらの解析結果を総合して、肌状態の総合的な評価点を算出する例である。
ただし、この第2実施形態もシステムの全体構成は図1に示す第1実施形態と同じである。従って、この第2実施形態の説明にも図1を用いる。
なお、この第2実施形態で評価する総合的な肌状態とは、見た目に影響する肌状態であり、肌の美しさである。
【0039】
また、この第2実施形態のシステムで、個々の診断項目について画像解析から診断結果を出す手順と、その診断結果を顧客の全顔画像上に表示する機能は上記第1実施形態と同じなので、ここではその説明は省略し、総合的な肌状態の評価点を算出する機能を中心に説明する。
このシステムでは、図8に示すように、診断項目B1〜B28を3つの中項目、色彩C1、凹凸C2、活力C3に分類し、さらに、それぞれの項目に係数値を対応付けたテーブルを、図1に示す肌判定基準データベース17が記憶している。すなわち、各診断項目B1〜B28には、それぞれ係数値b1〜b28が対応し、中項目C1〜C3には、それぞれ係数値c1〜c3が対応している。
【0040】
なお、上記中項目C1〜C3は、肌状態Aにかかわる要素であり、これらを統合したものを総合的な肌状態Aとする。また、各中項目C1〜C3は、その中項目に分類される診断項目B1〜B28の診断結果を総合化したものである。従って、中項目の色彩C1には、顔色などの肌の色に関連する診断項目を対応付け、凹凸C2には、肌表面の凹凸に関連する診断項目を対応付けている。また、活力C3も、肌の表面状態に関する項目であるが、主に、老化によって変化する診断項目を対応付けている。
【0041】
そして、上記診断項目B1〜B28の係数値b1〜b28は、各診断項目B1〜B28が、その診断項目が分類される中項目に対して寄与する度合いを示した数値であり、中項目C1〜C3の係数値c1〜c3は、これらの中項目C1〜C3が、肌状態Aに寄与する度合いを示した数値である。中項目の色彩C1に、明るさ(白さ)B1が寄与する度合いは係数値b1であり、色味B2の寄与度は係数値b2であるが、例えば、係数値b1が係数値b2よりも大きい場合には、見た目の肌状態Aには、色味B2よりも明るさ(白さ)B1の方が大きく寄与するということである。
【0042】
また、上記第1実施形態で説明したように、中央処理部13は、上記各診断項目B1〜B28について、被検者である顧客の全顔画像データを解析することによって診断することができ、その評価結果を点数化することができる。上記第1実施形態では、肌状態を診断項目ごとの基準データと対比して、レベルを特定するようにしたが、ここでは、上記レベルを表す値を評価点とする。
そこで、上記診断項目B1〜B28に関する評価点を{B1}〜{B28}と表し、中項目C1〜C3の評価点および肌状態Aの評価点を、それぞれ{}を付けて表すことにすると、中項目の評価点{C1},{C2},{C3}および肌状態の評価点{A}は、図9の式(1)〜式(4)で表される。
従って、上記中央処理部13は、各診断項目B1〜B28の評価点{B1}〜{B28}を求め、図9に示す演算式(1)〜(4)を用いて、総合的な肌状態の評価点{A}を算出することができる。
【0043】
なお、上記図9に示す演算式(1)〜(4)に含まれる各係数値は、被検者の年代ごとに異なる値である。なぜなら、見た目の肌状態に影響を与える要素が、年代によって異なるからである。例えば、一般的に若い年代では、肌のつやや、肌のはりがあるが、このような年代では、高い年齢層よりも、きめが粗いことや、目まわりのシワが目だってしまうことがある。つまり、20代では、きめの細かさB9や、目まわりのシワB24が、他の診断項目よりも、肌の美しさの要素となる中項目に寄与する度合いが高い。また、40代で、ほおにシワがあると、急に年を取ったように見えてしまって気になるものであるが、50才以上では、ほおのシワ以上に他の項目が気になる。このように、年代によって、肌の美しさを評価するときに、着目される部位や項目に差がある。そこで、このシステムでは、上記各係数値を年代別に決め、それを記憶させるようにしている。
【0044】
上記係数値は、例えば、以下のようにして決定することができる。
まず、上記演算式(1)〜(4)が成り立つデータ構造を図10に示すように仮定する。そして、実際の年代別顧客の測定データから診断項目の点数{B1}〜{B28}を求めるとともに、その顧客の見た目、すなわち、視覚的に肌状態を評価し、評価点{A}を決める。そして、視覚に決めた評価点{A}と上記各診断項目の点数{B1}〜{B28}とを用いて共分散構造分析などを行なう。そして、各中項目C1〜C3に対する、診断項目B1〜B28の寄与度である係数値b1〜b28と、肌状態の評価点{A}に対する各中項目C1〜C3の寄与度であるc1〜c3を算出する。
【0045】
このようにして、算出した係数値を、診断項目B1〜B28、中項目C1〜C3に対応付けて、上記肌判定基準データベース17に記憶させる。
なお、上記係数値を算出するためには、視覚的な評価点{A}と測定データに基づく点数{B1}〜{B28}との組み合わせが、多数あった方が実際に即した係数値を求めることができる。また、上記視覚的な肌状態の評価は、肌状態の診断に慣れた専門家が行なうようにしたり、多数の素人が行なった結果を統計処理したりして用いることができる。
【0046】
そして、上記のように、係数値を決定する際に用いた、視覚的に評価した評価点{A}がこの発明の視覚的評価点であるが、上記係数値をこのシステムの中央処理部13に入力しておけば、この中央処理部13が、視覚的に評価したものに近い肌状態の評価点{A}を算出することができる。
上記のように、中央処理部13は、データ収集システム1から送信された全顔画像データを診断項目毎に解析して、診断結果を点数化し、その点数に基づいて、中項目の評価点{C1}〜{C3}を算出し、さらに、肌状態の評価点{A}を算出する。
【0047】
そして、顧客の肌状態の評価点{A}を算出したら、上記中央処理部13は、その結果を、送受信部12を介して、データ収集システム1へ送信し、表示部3に表示させるようにする。ただし、表示部3が表示する表示データとして、上記中央処理部13は、算出した各項目の評価点とその項目に対応する係数値とを同一画面上に表示するための表示データを作成するようにしている。この表示データによる表示画面は、例えば、図11や図12に示すグラフである。
【0048】
図11は、総合的な肌状態Aを星印ふたつ「☆☆」で表すとともに、この肌状態Aに対応する中項目C1〜C3の評価点と係数値とを表したものである。上記肌状態の評価点{A}は、星印で示し、その数が多いほど状態がよく、美しく見えるということにする。この評価点{A}は、上記図9の式(4)で算出された値であり、ここではその評価点に応じて星印「☆」の数を決めている。
【0049】
また、図11では、横軸に各中項目C1,C2,C3をとり、縦軸を各項目の評価点とし、評価点{C1},{C2},{C3}の大きさを点線の長さで表し、係数値c1,c2,c3を、円の直径で表している。ただし、各円の中心位置が、各中項目C1〜C3の評価点の値である。
従って、各点線の長さに対応する評価点{C1},{C2},{C3}に、円の直径に対応するc1,c2,c3を掛けて合計した値が、肌状態の評価点{A}である。
【0050】
そして、このような図11から、肌状態の評価点{A}が星印ふたつ「☆☆」である要因がどこにあるのかを把握することができる。図11の場合、色彩C1の評価点が最も低く、凹凸C2の評価点が高いことがわかる。また、色彩C1の係数値は、凹凸C2の係数値と比べて大きい。
このような場合、現在良いレベルにある凹凸C2を改善するよりも、色彩C1を改善して評価点を上げた方が、総合的な評価点{A}を効率的に上げることができると考えられる。
【0051】
また、図12は、中項目である色彩C1を構成する診断項目の評価点を縦軸に表し、各診断項目B1〜B8の係数値を円で表したグラフである。このグラフからは、顧客の、長所や短所が、明確になるだけでなく、どの項目を改善することが、色彩C1の評価点を上げるのに有効であるかを把握することができる。例えば、図12から、この顧客の診断結果では、顔全体のくすみB3の評価点が低く、しかも係数値が大きいことが分かる。そこで、顔全体のくすみを改善することが、総合的な肌状態を改善するために有効であることがわかる。
【0052】
そして、上記データ収集システム1側の表示部3で、図11に示す中項目の評価点を画面表示した状態で、項目名をクリックして中項目の色彩C1を選択すると、図12に示すグラフが画面表示されるようにしている。ただし、ここでは3つの中項目のうち色彩C1を選択した例を示しているが、他の中項目を選択した場合も、その中項目に対応する診断項目の評価点のグラフが表示されるようにしている。
【0053】
上記第2実施形態のシステムでは、見た目の肌の美しさとしての総合的な肌状態を定量的に評価できる。また、総合的な肌状態の評価点を導き出すための中項目や診断項目の評価点をそれぞれ示すことによって改善すべき点が明らかになる。
さらに、各項目の係数値を表示すれば、顧客や、化粧品店の店員が、肌状態の評価点を効率的に上げることができる項目を知ることができる。
【0054】
なお、この第2実施形態において、診断項目を中項目に分類し、図11に示すように、中項目の評価点および係数値を表示するようにしたのは、より効率的に肌状態を改善できるようにするためである。
もしも、中項目を設けないで、全ての診断項目の評価点のみを表示した場合、最も評価点の低い診断項目を改善する必要があると考えることができる。
【0055】
例えば、全診断項目B1〜B28のうち、最低点の診断項目がにきび・にきび跡B15(図8参照)であった場合、中項目の評価点が分からなければ、にきび・にきび跡を一番に改善しなければならないと考える。
しかし、実際は、中項目を設定していて、その評価点は図11に示すようになる。そして上記にきび・にきび跡B15が含まれる中項目は凹凸C2であるが、図11に示すように、凹凸C2の評価点は高く、色彩C1の評価点の方が低い。これは、中項目の色彩C1に含まれる各診断項目の評価点は最低点ではないが、全体的に低いということである。
【0056】
しかも、色彩C1の係数値c1は、凹凸C2の係数値c2よりも大きい。この場合、にきび・にきび跡B15を改善して凹凸C2の評価点を上げるより、色彩C1に関する評価点を上げることが、総合的な肌状態の評価点を上げるためには効果的である。具体的には、色彩C1の評価点を上げるために、顔全体のくすみB3、唇のくすみB4、明るさB1などを改善する手入れ方法を実行する必要がある。しかし、中項目を設定していないと、色彩C1に含まれる項目を改善することが、総合的な肌状態の評価点を上げるために有効であるということが分かり難くなってしまう。上記第2実施形態のシステムでは、そのようなことはなく、効果的な改善項目を明らかにし易い。
【0057】
さらに、同様の手入れ方法で改善される診断項目が、同一の中項目に分類されるように、中項目を設定すれば、中項目の評価点によって、より効率的に肌状態を改善する方法を明らかにすることができる。
このようなお手入れ方法に基づいた中項目の例を図13に示す。
図13にしめす中項目は、美白C1、血行C2、保湿C3、収斂C4、皮脂・角栓C5、たるみC6、乾燥シワC7、加齢シワC8である。そして、上記美白C1には、美白化粧法によって変化する肌状態に対応する診断項目として、明るさB1、色味B2、顔全体のくすみB3、シミ・ソバカスB5などを分類している。
【0058】
同様に、血行C2は、血行の良し悪しによって変化する肌状態の診断項目、保湿C3には、保湿によって変化する肌状態の診断項目、収斂C4には、収斂化粧法によって変化する肌状態の診断項目、皮脂・角栓C5には、皮脂・角栓に関る肌状態の診断項目を分類している。また、たるみC6、乾燥シワC7、加齢シワC8には、それぞれ、肌のたるみ、乾燥シワ、加齢シワに関連する肌状態の診断項目を分類している。
なお、図13では、各中項目に分類した診断項目名を省略して、符号のみ示しているが、ここで用いる符号は、図8で用いたものと同じ符号B1〜B28である。そして、各診断項目には、それぞれ、中項目に対する寄与度である係数値を対応付けている。
【0059】
ただし、図13に示す分類方法では、同一の診断項目が複数の中項目に対応する場合がある。例えば、診断項目のくまB8は、中項目の美白C1と、血行C2の両方の中項目に分類されている。これは、くまの原因が、メラニン色素の偏りであったり、血行不良であったりすることがあるためである。
このように、複数の中項目に分類される診断項目の係数値は、自身が分類される中項目に対する寄与度なので、中項目ごとに異なる値になることがある。
また、上記中項目C1〜C8にも、それぞれ係数値を対応付けて、これらを総合して肌状態Aの評価点を算出する際には、図9に示す演算式と同様に、各評価点に対応する係数値を掛け合わせて合計するようにしている。
【0060】
また、この発明のシステムは、通信を介して、データ解析システム11に、複数のデータ収集システム1を接続できるようにしたので、顧客データベース15や、顔画像データベース16に、複数の店舗で収集した顧客情報や、顔画像を登録しておくことができる。また、上記中央処理部13での解析結果を蓄積しておくこともできる。
このように、管理センターに、全国の顧客データや、顧客から収集した顔画像などを蓄積しておけば、それらのデータを解析して、顧客の肌状態の地域差を把握することもできる。
【0061】
また、1店舗だけでは、収集しきれない多数の顧客のデータを集積できるので、これらのデータから、顔形状や、肌特性のパターンを作り、データをパターン分けすることもできる。
さらに、大量のデータが蓄積されて、年代別の肌状態の基準や、傾向が把握できれば、それらのデータを、顔形状や肌状態の将来予測にも利用できる。
例えば、図14,図15に示すようなロジックを基に顔形状の変化や肌状態の変化を予測できる。
【0062】
つまり、図14のように、顧客の全顔画像を拡大し、口もとのきめの形状と流れ具合から肌のはりを推定し、「はりがある」タイプか、「はりがない」タイプかに分類する。そして、「はりがある」タイプの場合には、さらに、顔形状を「ふっくら型」と「ほっそり型」に分類して、変化傾向を特定できる。
また、図15に示す例のように、顧客の全顔画像を拡大して、頬のきめの整い度合い、流れ具合から、肌の水分レベルを推定し、また、毛穴の大きさ、角栓の状態および年齢から皮脂レベルを推定する。そして、「水分が多い」タイプか、「水分が少ない」タイプかに分類し、「水分が少ない」タイプをさらに、「皮脂が多い」タイプと「皮脂が少ない」タイプに分類し、それぞれの変化傾向を特定することができる。
【0063】
上記のようにして特定した変化傾向に基づいて顧客の将来を予測した将来予測顔画像を作成して出力するようにすれば、データ収集システム1側で、将来予測顔画像を表示させることもできる。
具体的には、図16に示すように、年代別に、はりの有無と、「ふっくら型」と「ほっそり型」によって、4タイプをつくり、それぞれのタイプに、肌状態の平均値を持った平均顔データを対応付ける。
【0064】
上記平均顔データとは、過去に収集した顧客のデータを年代ごと、顔型、はりの有無によって分類したタイプごとに算出した値で、タイプごとに、上記診断項目の平均値が対応付けられている。このような、平均顔データは、予め、データ解析システム11側の、例えば、肌判定基準データベース17などに記憶しておく。なお、実施には、全ての年代に、4タイプのデータを対応付けているが、図16では、「ほっそり型」のデータを一部省略して示している。
【0065】
また、上記「はりがある」タイプか、「はりがない」タイプかは、例えば、上記第2実施形態で説明した診断項目のはりB16の評価点や、中項目の活力C3が年代ごとに設定した基準値以上か未満かによって特定することができる。そして、ここでは、図16に示すように、はりの有無を上記活力C3の評価点に基づく活力レベルで、分類している。この活力レベルは、レベル1〜レベル8の順に活力がなくなっていることを表すものとする。
【0066】
そして、実際に、データ収集システム1側に来店した顧客の将来顔画像を予測する際には、上記した第1、第2実施形態のように、顧客の全顔画像を撮影する。そして、データ解析システム11では、肌状態を解析するとともに、全顔画像から顧客の顔の輪郭を解析し、その顧客の顔型を、「ふっくら型」なのか「ほっそり型」なのかを特定する。
その後、肌診断結果より、活力C3の評価点から、はりの有無を特定し、顧客が、上記4タイプのいずれに属するかを決定する。
例えば、40才、「ふっくら型」で、はり無しタイプの場合、その顧客は、図16のタイプT1に入る。そして、このタイプT1は、10年後にはタイプT2になるということである。
【0067】
そこで、その顧客の10年後の顔を予測する際には、上記タイプT2の肌状態に関する平均値を、顧客の顔画像に当てはめることによって将来予測顔画像を作成するようにする。例えば、平均顔における額のシワの評価点に応じたシワの状態を、顧客の顔画像上に表現する。
ただし、顧客が、自分の年代に応じたタイプの平均顔からかけ離れた肌状態の場合には、修正するようにしてもよい。
【0068】
例えば、タイプT1の平均活力レベルは4であるが、顧客の活力レベルが3であることもある。平均では、上記顧客の場合40才から50才で、活力レベル4〜5に変化するが、上記顧客は40才で活力レベル3なので、50才では、プラス1の活力レベル4と考えて、この活力レベルに対応した肌状態を表現するようにする。
このようにして、作成した将来予測顔画像を、中央処理部13が、データ収集システム1へ送信し、表示部3で表示させることができる。
【0069】
以上のように、上記管理センターのデータ解析システム11に、多数のデータを蓄積することにより、様々な解析を精度よくできるというメリットは計り知れない。
また、高精度な解析を行なうための大型の処理装置を、データ収集システムと分離することによって、小型なデータ収集システムを設置できる店舗が増え、より多くのデータを管理センターに集めることが可能になる。
【0070】
また、データ解析システム11の中央処理部13は、肌診断結果に応じて、お手入れデータベース18から、肌の手入れ方法を選択したり、商品情報データベース19から商品を選択したりして、そのデータをデータ収集システム1へ送信するようにしてもよい。
例えば、お手入れデータベース18には、各種のお手入れ方法に、上記診断項目に対応する基準点を対応付けたテーブルを記憶させておく。そして、中央処理部13は、肌状態の診断結果で基準点に満たない項目があったときに、その項目に対応する手入れ方法を抽出するようにする。
【0071】
また、商品情報データベース19には、商品情報を記憶しているが、各商品に、その商品を用いるお手入れ方法を対応付けて記憶させるようにする。例えば、保湿用の化粧水や美容液は、「保湿」、美白用の商品は「美白」に分類する。さらに、各お手入れ法に、上記診断項目や中項目を対応付けて、その項目の評価点によって、商品を抽出するようにする。
例えば、上記第2位実施形態で説明した中項目を、図13に示すようにお手入れの観点から設定した場合、それぞれの中項目に商品を対応付けて、その対応テーブルを商品情報データベース19に記憶させておけば、中項目の評価点によって、肌状態の改善に必要な商品を自動的に抽出することができる。ただし、商品のブランドは年代別に用意されている場合が多いので、その場合には、上記対応テーブルを年代別に用意する必要がある。
【0072】
このようにすれば、顧客の肌状態に応じた手入れの方法や、商品情報など、この発明の美容情報を中央処理部13が抽出して、データ収集システム1の表示部3に表示させることもできる。店員が新人でも、ベテランと同じように、顧客にマッチした手入れ方法や、商品を説明することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】この発明の第1実施形態におけるシステムの全体構成図である。
【図2】データ解析システムの解析対象となる全顔画像データの模式図である。
【図3】解析部位の説明図である。
【図4】診断結果を反映させた全顔画像を示した図である。
【図5】診断結果の表示例を示した図であり、全顔画像とともに、肌状態レベルを表示する例である。
【図6】肌状態のレベルを表したグラフである。
【図7】第1実施形態の診断結果の表示例を示した図であり、全顔画像とともに、拡大画像を表示する例である。
【図8】第2実施形態の診断項目、中項目および各係数値の関係を示した表である。
【図9】中項目の評価点と、肌状態の評価点とを算出する演算式である。
【図10】第2実施形態のデータ構造を示す図である。
【図11】第2実施形態の診断結果表示画面であり、中項目の評価点を示した図である。
【図12】第2実施形態の診断結果表示画面であり、診断項目の評価点を示した図である。
【図13】中項目の設定例を示した表である。
【図14】顔形状の加齢シミュレーションロジックの例を示した図である。
【図15】肌状態の加齢シミュレーションロジックの例を示した図である。
【図16】将来顔予測の基準データの例を示した図である。
【符号の説明】
【0074】
1 データ収集システム
2 撮影部
3 表示部
6 処理部
7 送受信部
11 データ解析システム
12 送受信部
13 中央処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ収集システムと、このデータ収集システムが収集したデータに基づいた解析処理を行なうデータ解析システムとを通信手段を介して接続し、上記データ収集システムは、上記データ解析システムとの間でデータの送受信を行なう収集側通信手段と、肌のきめ状態の解析が可能なレベルの超高精細デジタル画像を取り込む画像取り込み手段と、画像データを、ブロックノイズを抑制した高圧縮方法によって圧縮する収集側画像データ圧縮手段と、収集側データ表示手段とを備え、上記データ解析システムは、上記データ収集手段との間でデータの送受信を行なう解析側通信手段と、画像データを解析するデータ解析手段と、画像データを、ブロックノイズを抑制した高圧縮方法によって圧縮する解析側画像データ圧縮手段と、上記データ解析手段による解析結果を記憶する解析側データ記憶手段とを備え、上記画像取り込み手段が被検者の全顔画像を超高精細デジタル画像として取り込み、収集側画像データ圧縮手段は、上記全顔画像を圧縮して圧縮画像データを生成し、これを収集側通信手段を介してデータ解析システムへ送信する機能を備え、データ解析手段は、解析側通信手段を介して圧縮画像データを受信し、受信した圧縮画像データに基づいて被検者の肌状態を解析し、その解析結果を上記全顔画像に反映させた視覚情報を生成し、その視覚情報を診断結果として出力する機能を備え、解析側画像データ圧縮手段は、データ解析手段から出力された診断結果を圧縮して圧縮画像データを生成し、この圧縮画像データを、解析側通信手段を介してデータ収集システムへ送信し、上記収集側データ表示手段は、解析側通信手段から送信された診断結果を表示する機能を備えたことを特徴とする肌状態診断システム。
【請求項2】
上記データ解析システムは、肌状態に関する複数の診断項目を記憶した記憶手段を備え、上記データ解析手段は、全顔画像データから、上記診断項目ごとに肌状態を解析し、その解析結果に基づいて評価点を算出し、この評価点に対応した評価結果を全顔画像に反映させる機能を備えた請求項1記載の肌状態診断システム。
【請求項3】
上記記憶手段は、上記複数の診断項目を、少なくとも2種以上の中項目に分類して記憶するとともに、上記中項目および診断項目のそれぞれに、係数値を対応付けて記憶し、上記データ解析手段は、算出した診断項目ごとの評価点に、その診断項目に対応する係数値を掛け合わせてなる診断項目ごとの点数を、中項目ごとに集計して中項目評価点を算出し、この中項目評価点に、その中項目に対応する係数値を掛け合わせ、その掛け合わせた点数を集計して肌状態の評価点を算出する機能を備えた請求項2に記載の肌状態診断システム。
【請求項4】
上記係数値は、視覚的に決定した肌状態の視覚的評価点と、上記データ解析手段が算出した診断項目ごとの評価点との関係を分析することによって算出した値である請求項3に記載の肌状態診断システム。
【請求項5】
データ解析手段は、上記算出した評価点と、その項目に対応する係数値とを同一画面上に表示するための表示データを生成する機能を備えた請求項3に記載の肌状態診断システム。
【請求項6】
上記データ解析手段は、データ収集システムから受信した全顔画像から、顔の形態要素を特定するプロセスと、診断項目を特定するプロセスと、特定した診断項目に応じた上記全顔画像上の診断部位を上記顔の形態要素に基づいて特定するプロセスと、上記診断部位における診断項目に対応した肌状態に応じて現れる画像上の特徴を解析するプロセスとを実行することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1に記載の肌状態診断システム。
【請求項7】
データ収集システムと、このデータ収集システムが収集したデータに基づいた解析処理を行なうデータ解析システムとを通信手段を介して接続し、上記データ収集システムは、上記データ解析システムとの間でデータの送受信を行なう収集側通信手段と、肌のきめ状態の解析が可能な超高精細デジタル画像を取り込む画像取り込み手段と、画像データを、ブロックノイズを抑制した高圧縮方法によって圧縮する収集側画像データ圧縮手段と、収集側データ表示手段とを備え、上記データ解析システムは、上記データ収集手段との間でデータの送受信を行なう解析側通信手段と、画像データを解析するデータ解析手段と、画像データをブロックノイズを抑制した高圧縮方法によって圧縮する解析側画像データ圧縮手段と、上記データ解析手段による解析結果を記憶する解析側データ記憶手段と、予め設定した肌状態や顔形状のパターン分けに対応した経時変化傾向を記憶する変化傾向記憶手段とを備え、上記画像取り込み手段が被検者の全顔画像を超高精細デジタル画像として取り込み、収集側画像データ圧縮手段は、上記全顔画像を圧縮して圧縮画像データを生成し、これを収集側通信手段を介してデータ解析システムへ送信する機能を備え、データ解析手段は、解析側通信手段を介して圧縮画像データを受信し、受信した圧縮画像データに基づいて被検者の肌状態を解析し、その解析結果を上記全顔画像に反映させた視覚情報を生成し、その視覚情報を診断結果として出力する機能と、上記被検者の肌状態や顔形状から上記パターンを特定するとともに、このパターンに対応する変化傾向を上記変化傾向記憶手段が記憶しているデータの中から特定する機能と、特定した変化傾向に基づいて被検者の肌状態や顔形状の将来予測を行ない、その予測結果を全顔画像に反映させて将来予測顔画像として出力する機能とを備え、解析側画像データ圧縮手段は、データ解析手段から出力された将来予測顔画像を圧縮して圧縮画像データを生成し、これを解析側通信手段を介してデータ収集システムへ送信し、上記収集側データ表示手段は、解析側通信手段から送信された将来予測顔画像を表示する機能を備えたことを特徴とする肌状態診断システム。
【請求項8】
データ収集システムと、このデータ収集システムが収集したデータに基づいた解析処理を行なうデータ解析システムとを通信手段を介して接続し、上記データ収集システムは、上記データ解析システムとの間でデータの送受信を行なう収集側通信手段と、肌のきめ状態の解析が可能なレベルの超高精細デジタル画像を取り込む画像取り込み手段と、画像データを、ブロックノイズを抑制した高圧縮方法によって圧縮する収集側画像データ圧縮手段と、収集側データ表示手段とを備え、上記データ解析システムは、上記データ収集手段との間でデータの送受信を行なう解析側通信手段と、画像データを解析するデータ解析手段と、画像データをブロックノイズを抑制した高圧縮方法によって圧縮する解析側画像データ圧縮手段と、上記データ解析手段による解析結果を記憶する解析側データ記憶手段と、化粧品情報などの美容情報を記憶した美容情報記憶手段とを備え、上記画像取り込み手段が被検者の全顔画像を超高精細デジタル画像として取り込み、収集側画像データ圧縮手段は、上記全顔画像を圧縮して圧縮画像データを生成し、これを収集側通信手段を介してデータ解析システムへ送信する機能を備え、データ解析手段は、解析側通信手段を介して圧縮画像データを受信し、受信した圧縮画像データに基づいて被検者の肌状態を解析し、その解析結果を上記全顔画像に反映させた視覚情報を生成し、その視覚情報を診断結果として出力する機能と、上記解析結果に基づいて上記美容情報記憶手段から上記被検者に適した美容情報を抽出して出力する機能とを備え、解析側画像データ圧縮手段は、データ解析手段から出力された診断結果を圧縮して圧縮画像データを生成し、これを上記抽出された美容情報とともに解析側通信手段を介してデータ収集システムへ送信し、上記収集側データ表示手段は、解析側通信手段から送信された診断結果および美容情報を表示する機能を備えたことを特徴とする美容のためのカウンセリングシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−142005(P2006−142005A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−305352(P2005−305352)
【出願日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】