説明

肌着用素材

【課題】薄くて軽い保温性に優れ、かつ蒸れにくい肌着用素材と肌着を提供すること。
【解決手段】保温性clo値が0.7以上0.9以下で、かつ、透湿度が18,000以上40,000以下の編地、または生地の厚さが0.7mm以上1.4mm以下で、かつ、保温性clo値が0.7以上0.9以下である編地からなる肌着用素材で、編地片面に断熱素材を含む編地、他面に吸湿素材を含む編地を配しており、4cm中に1個以上25個以下の結束点で繋げた二層編地の形態をとり、保湿剤を付着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽くて薄く保温性に優れ、かつ蒸れにくい肌着用素材とその肌着用素材を用いてなる肌着に関するものである。
【背景技術】
【0002】
寒い季節において、通勤や戸外での作業やスポーツ観戦をするときには、防寒用の厚手の肌着やセーターなどを重ね着して寒さをしのぐが、その着用状態で暖かいオフィス等の室内や車両内に入ると、蒸れたり暑すぎたりするという問題があった。また、従来の防寒肌着は、生地が厚くかさばるため、動きづらく審美性にも劣るという課題もあった。
【0003】
従来、かかる課題に対して、吸湿すると加温するインナーウエア(特許文献1および特許文献2参照)や、ポリプロピレン系樹脂を芯部とし、ポリアミド樹脂を鞘部とした温度コントロール繊維(特許文献3参照)や、周囲の温度変化を自己感知して布帛の寸法を実質的に維持しながら通気性を自己調節する異収縮混繊糸(特許文献4参照)などが提案されている。
【特許文献1】特開平9−87942号公報
【特許文献2】特開2004−131866号公報
【特許文献3】特開2004−11032号公報
【特許文献4】特開2003−41444号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のような吸湿すると加温するインナーウエアは、アクリル繊維を原料にし、ポリマー改質をして分子を親水化・高架橋した繊維を使用したものであり、吸湿したときに発熱するため、冬場や運動中もしくは寒い外環境から暖かい屋内環境へ移行したときに暑くなりすぎるという課題があった。また、審美的には薄いピンク色を呈するため、特に紳士用で求められる蛍光白色を実現することは不可能であった。
【0005】
また、特許文献2では、高吸放湿性有機微粒子を含有する弾性糸を使用しており、特許文献1同様に、吸湿すると自己発熱し加温効果と発汗後の冷え防止に効果があるとされているが、発汗を促すことは衣服内の湿度を必要以上に上げることであり、不快感は否めないものであった。
【0006】
さらに、特許文献3は、ポリプロピレン系樹脂を芯部とし、ポリアミド樹脂を鞘部とした温度コントロール繊維で、外気の温度変化に対応できるとされるものであるが、衣服内湿度の変化は考慮されていない。特に、着用状態では衣服内温度よりも衣服内湿度変化を体感するものであり、実着用上の実感は期待できない。
【0007】
また、特許文献4は、湿度を感知して捲縮率が変化する複合繊維と変化しない繊維との混繊糸を用いたものであり、吸湿したときには布帛の充填密度が低下して通気性が高くなり、乾燥すると充填密度が増し通気性が低下するもので、湿度変化には対応できるが、保温性を併せ持つものではなかった。上述の従来技術は、いずれも環境条件に対応して素材も変化させていくものであり、環境変化があっても衣服内の温度や湿度を一定に保つというものではなかった。
そこで、本発明の目的は、かかる従来技術の欠点を改良し、見た目も通常の肌着と変わらず、薄くて軽く保温性に優れ、かつ蒸れにくい肌着用素材とその肌着用素材を用いてなる肌着を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の肌着用素材は以下の構成からなる。
【0009】
すなわち、本発明の肌着用素材は、保温性clo値が0.7以上0.9以下で、かつ、透湿度が18,000g/m・24hr以上40,000g/m・24hr以下である編地からなる肌着用素材、あるいは生地の厚さが0.7mm以上1.4mm以下であり、かつ保温性clo値が0.7以上0.9以下である編地からなる肌着用素材である。
【0010】
本発明の肌着用素材の好ましい態様のひとつは、前記の編地が多層構造の編地であることである。
【0011】
本発明の肌着用素材の好ましい態様のひとつは、編地片面に断熱素材を含む編地を配し、他面に吸湿素材を含む編地を配してなることである。
本発明の肌着用素材の好ましい態様のひとつは、前記の多層構造の編地を4cm中に1個以上25個以下の結束点で繋げてなることである。
【0012】
本発明の肌着用素材の好ましい態様のひとつは、保湿剤を付着させてなる肌着用素材である。
【0013】
そして、本発明の肌着用素材は縫製され肌着となる。
【発明の効果】
【0014】

本発明により、見た目が通常の肌着と変わらず、薄くて軽く保温性に優れ、かつ蒸れにくい肌着用素材と、その肌着用素材からなる肌着が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明者らは、前記課題、すなわち生地厚さは薄いながらも適度な保温性を保ち、なおかつ、透湿性の高い肌着用素材について鋭意検討し、保温性clo値が0.7以上0.9以下で、かつ、透湿度が18,000 g/m・24hr以上40,000 g/m・24hr以下、あるいは生地の厚さが0.7mm以上1.4mm以下である編地を設計したところ、かかる課題を一挙に解決することを究明し本発明に想到したのである。
【0016】
以下、図面に示す一形態を参照しつつ、本発明の肌着用編地およびそれを用いた肌着について詳細に説明する。なお、透湿度の単位はg/m・24hrとし、以下の説明では省略する。
【0017】
本発明において保温性は、保温性の指標の一つとして知られているclo値(1clo=0.18℃・hr・m/cal)で表し、その数値が大きいほど生地としての保温性が高いことを示す。clo値の測定方法は、KES−F7(カトーテック(株)製)を使って行ない、0.7以上0.9以下の保温性clo値は肌着着用状態で環境が変化しても暖かいと感じられる範囲である。この保温性clo値は、厚さと関係があり、生地厚さが厚くなるとclo値は高くなる。したがって、保温性clo値は、極細糸や嵩高糸等の糸を使用し、編地の厚さを、規定の厚さになるように製編することにより、調整することができる。
【0018】
また、本発明において透湿度は、JIS L 1099 B−2法に準じて測定される。透湿度が18,000以上40,000以下であれば、衣服内湿度を一定に保ち蒸れない。透湿度を測定するとき、本発明の肌着用素材は膜加工品ではないので、編地の外側にも防水透湿膜をかぶせて浸水を防止した。透湿度の値の大きい方が湿気をたくさん通し、蒸れないことを示す。一般的な織物、例えば裏地のようなタフタ平織物の透湿度は、50,000から80,000程度であり、雨衣に使用されるような防水透湿機能膜加工品、例えば微細な孔を含むポリウレタン膜を防水基布にコーティングしたような生地では10,000から15,000程度である。
【0019】
透湿度は、編設計と使用素材を最適条件で組み合わせることにより、高い透湿度を得ることができる。例えば、編設計では、特に二重構造として生地の中に空気層を作るような編地、例えば、リバーシブルニットや片袋編、袋編などが適している。また、糸の中にも空気層を保持できる単繊維繊度が細い糸や、仮撚糸のように糸に捲縮を与えて嵩高にした糸を使用することが好ましい。
【0020】
また、本発明において、生地の厚さは、JIS L 1018に準じて測定した値が0.7mm以上1.4mm以下であれば、薄くても適度な保温性を保つことができる。生地の厚さが0.7mm未満では生地が薄すぎて必要な保温性を得ることができない。また、生地の厚さが1.4mmより厚いと生地がかさばるため、動きにくく審美性に劣るという問題がある。
【0021】
次に、本発明の肌着用素材の組み合わせについて、一例を説明する。すなわち、表面に断熱素材を含む編地を配し、裏面に吸湿素材を含む編地を配してなる多層構造の編地を肌着用素材として使用する。表面に断熱素材を使用し、裏面に吸湿素材を配することにより、肌と肌着の間で発生する水分が吸収され、吸着熱が発生する。吸着熱は、表面に配置した断熱素材により外に放熱することを防ぎ、保温性をキープすることができる。また、編地の表面と裏面の間に空気層を設けた設計とすることにより、透湿度が高くなり、湿気のみ外へ逃がすことができる。
【0022】
本発明において使用される断熱素材としては、熱伝導率が5.5×10−4W/cm・℃以下である熱伝導性の低い素材を用いることが好ましい。例えば、ポリフェニレンサルファイト繊維、ポリプロピレン繊維、アクリル系繊維およびポリエステル系繊維などを使用することができる。熱伝導率が5.5×10−4W/cm・℃より大きい場合は、肌と肌着の間で発生した熱が編地裏面の糸を伝わって逃げやすくなり、保温性をキープでき難くなる。
熱伝導率の測定は、20℃×65%RHの温調室において、カトーテック(株)製のKES−F7を使い、以下の方法で測定することができる。
(1) 室温(20℃)に設定したクーリングボックスの上に試料を乗せ、さらにその上に室温+10℃に加熱したB.T.BOXの熱板を試料に当てて乗せる。
(2) 定常状態に達した後、B.T.BOXの熱損失W(ワット)を測定器のパネルメーターで読みとる。熱損失W(ワット)は以下の式で表される。
W=K・(A・△T)/D
ここでD:試料の厚さ(cm) △T:試料の温度差(℃)
A:B.T.BOXの熱板面積(cm) K:熱伝導率
(3) よって熱伝導率Kは、以下の式で表される。
K=(W・D)/(A・△T) (W/cm・℃)
本発明において使用される吸湿素材としては、吸湿性の高い綿、麻、ウール、絹などの天然繊維、レーヨンなどの再生繊維、アセテートなどの半合性繊維、およびポリアミド系繊維等の合成繊維に吸湿加工を施した糸を使用することができる。具体的には、後述する吸湿率(△MR)が1.5以上である繊維が望ましい。△MRが1.5以上であれば、通常の着用において蒸れ感を感じることなく、快適な着用感を得ることができる。
本発明の肌着用素材に用いられる繊維は、紡績糸でもフィラメント糸のいずれでも良いが、紡績糸の方が繊維内の空隙が細かくなり繊維内の不動空気層が増加し保温性が高くなり、さらに、肌触りの点からも好ましい。紡績糸、フィラメント糸のいずれの繊維においても、単繊維繊度は細い方が繊維内の不動空気層が増加し保温性が高くなり、より好ましい態様である。
【0023】
また、デザインや用途によってストレッチ性が要求される場合は、ポリウレタン系弾性繊維に代表される各種のストレッチ性弾性糸を交編させることが好ましい。
また、本発明の肌着用素材に用いられる編地の編成方法の手段は問わないが、縫製工程数が減少し、縫目の少ない丸編み地のフライス組織、あるいは表面肌面ともに美しいリバーシブル組織、片袋、袋編み組織などが、肌着に適している。
【0024】
また、本発明では、4cm中に1個以上25個以下の結束点で繋げた二層編地等多層構造の編地の形態をとることもできる。図1は、本発明の肌着用素材をモデル的に例示説明するための拡大断面図であり、図2は、本発明の肌着用素材の結束点の測定方法を説明するための平面図である。
【0025】
図1において、断熱素材を編地表面1に使用し、吸湿素材を肌面4側の編地肌面2に使用し、これを結束点5で繋げた二重編地とすることができる。この場合、編地表面1と編地肌面2との間に空隙(空気層)3が形成される。
【0026】
なお、ここでいう「結束点」とは、表面側の編地と裏面側の編地の中間に両者を繋ぐための部分をさし、その部分を形成する糸条は表面側の編地、裏面側の編地のいずれの糸を用いてもよく、また結束点の糸のみ別の素材の糸条を用いてもよい。結束点の数は少なくなるほど表面側の編地と裏面側の編地が強固に結束されず、中間の空気層が広く、生地の柔軟性を損なわないため好ましい態様である。好適な結束点の数は、4cm中に1個〜25個とすることが好ましく、より好ましくは4個〜16個である。
結束点の数え方は、図2の結束点測定枠6のような2×2cmの四角形に切り取った台紙を生地(編地)にのせテープで固定し、結束点5を目視で数える。台紙の置き方の方向は特に限定しなく、ウエル方向に対してななめになっていてもよい。10回測定し、平均値で表す。
【0027】
また、本発明の肌着用素材に保湿剤を付着させると、冬場の乾燥した状態でも肌が乾燥しないので着用快適性に優れる。保湿剤としては、深海鮫のエキスを抽出したスクワランや、コラーゲン、アロエ、シルクプロテイン、古代海底ミネラル成分など多種あり、この成分を染色工程後の仕上げ加工剤に添加しその液中に生地を浸漬、撹拌すると、繊維全体に保湿成分を付着させることができる。
本発明の肌着用素材について、その他の付帯加工としては、防汚加工、抗菌加工、消臭加工、UVカット加工およびビタミン加工など狙い用途の要求特性によって適宜使い分けて使用することができる。
【0028】
本発明の肌着用素材は、シャツ、ランニング、ランジェリー、パンツ、ショーツ等の肌着に好適である。
【実施例】
【0029】
以下、本発明の肌着用素材について実施例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例および比較例において用いた肌着用素材の品質評価は、次の方法で実施した。
(測定方法)
(1)厚さ測定
生地の厚さの測定はJIS L 1018「メリヤス生地試験方法」に準じて測定箇所を変更して5回測定し平均値を求めた。
【0030】
(2)二層間の結束点の数
本文中に述べたように、4cm中の結束点の数を目視で数え、10回の平均値を求めた。
【0031】
(3)保温性
20℃×65%RHの温調室において、カトーテック(株)製のKES−F7を使い、室温+20℃に設定した10cm×10cm熱板(B.T.BOX)の上にサンプル枠に取り付けた20cm×20cmに採取した試料をのせ、平衡に達したときのW値を測定し、3回の平均値を求めclo値とした。clo値の数字が大きいほど保温性が高いことを示す。
【0032】
(4)吸湿性
衣服内を想定した30℃×90%RHの平衡吸湿率と外気を想定した20℃×65%RHの平衡吸湿率の差から△MR(デルタエムアール)を算出し、吸湿率とした。算出式は以下のとおりである。
△MRの数字が大きいほど吸湿性が高いことを示す。
△MR=(30℃×90%RHの平衡吸湿率)−(20℃×65%RHの平衡吸湿率)
(5)透湿度
生地の透湿度の測定はJIS L 1099 B−2法「繊維製品の透湿度試験方法」に準じて3回測定し平均値を求めた。
(1) 支持枠に試験片、その外側に透湿フィルムを固定し、23℃の温度の水を入れた水槽に10mm程度の深さに浸るように固定する。この水槽を温度30℃の温度の恒温装置に入れ、15分間放置する。
(2) 透湿カップの約2/3まで吸湿剤を入れ透湿フィルムを装着する。
(3) 透湿カップの質量(g)を測定し、直ちに試験体を倒立させ、水槽に固定した試験片支持枠の中に置き、15分放置後の透湿カップの質量(g)を計測する。
次式により透湿度を算出し、3枚の平均値で表す。透湿度の数字が大きいほど蒸れないことを示す。
透湿度(g/m・24hr)={(W2−W1)×4×24}/S
ここにW1:初めの質量(g)
W2:15分後の質量(g)
S :透湿面積(m
(6)官能評価
出来上がった肌着の保温性、蒸れ感および肌触りについて官能評価基準により以下の4段階で評価を行った。
◎:非常に優れている、○:優れている、△:少し劣る、×:非常に劣る。
【0033】
(7)着用実験評価
本発明の肌着を着用して、人工気象室にて以下の着用条件および環境、運動条件で実験した時の衣服内温度、衣服内湿度の変化、そのときの官能評価(保温性)をグラフに表した。なお、グラフは実施例1と比較例1のみ表示した。
(1) 着用条件:肌着+セーター+ジャケット
(2) 環境条件:0〜 5分:環境15℃×65%(屋外を想定)、安静
5〜30分:環境15℃×65%(屋外を想定)、運動
30〜40分:環境25℃×65%(屋内を想定)、回復
40〜50分:環境15℃×65%(屋外を想定)、回復
(3) 運動条件:トレッドミル 6km/hr
(A)衣服内温度変化のグラフ
(B)衣服内湿度変化のグラフ
(C)実験中の蒸れ感について前(6)項に示す官能評価基準により4段で表した。
【0034】
(実施例1)
極細アクリル紡績糸(単繊維繊度0.7デシテックス、繊維長38mm)とポリフェニレンサルファイト繊維(2.2デシテックス、繊維長51mm)の綿番手60番手の混紡糸を編地表面に、前記の極細アクリル紡績糸と竹を原料とするセルロース系繊維(単繊維繊度1.7デシテックス、繊維長38mm)を混紡した綿番手60番の混紡糸と、18デシテックスのポリウレタン弾性糸を77デシテックスのナイロンフィラメント糸でカバーリングした糸を編地裏面となるように1本交互に配列した22Gの両面丸編機にて、裏糸を表糸にタックすることで接結しているリバーシブル状の両面丸編地を編成した。表1に、編組織と使用素材を示した。
【0035】
この両面丸編地を通常の丸編地の染色法に準じ、リラックス・精練、染色、乾燥および仕上げセットを行い、さらに編地の保湿性を高めるため、染色、仕上げ工程でスクワランとコラーゲンを含む保湿剤で液流加工を行い、肌着用素材を得た。この肌着用素材(編地)を使用して紳士用長袖肌着を縫製し、前述の環境条件、運動条件で着用実験評価を行った。この紳士用長袖肌着の生地物性評価結果と官能評価結果を表2に、そして縫製品による着用実験評価結果を図3に示した。その結果、環境条件が変化しても衣服内温度、衣服内湿度の変化量は小さく、官能評価でも快適な肌着であると判断されるものであった。
【0036】
(実施例2)
実施例1で使用した極細アクリル紡績糸(0.7デシテックス、繊維長38mm)とナイロンに吸湿ポリマーであるポリビニルピロリドンを5重量%練り込んだ44デシテックス、34フィラメント糸の綿番手40番の混紡糸を編地表面に、そして実施例1で使用した極細アクリル紡績糸と中国産の竹を原料とするセルロース系繊維を混紡した綿番手60番の混紡糸を編地裏面となるように22Gの両面丸編機にて、4cmあたり16個の接結点を有する袋編状の両面丸編地を編成した。表1に、編組織と使用素材を示した。
【0037】
この両面丸編地を通常の丸編地の染色法に準じ、リラックス・精練、染色、乾燥および仕上げセットを行い、肌着用素材を得た。この肌着用素材を使用して婦人用長袖肌着を縫製し、前述の環境条件、運動条件で着用実験評価を行った。この婦人用長袖肌着の生地物性評価結果と官能評価結果を表2に示した。その結果、環境条件が変化しても快適な肌着であると判断されるものであった。
【0038】
(実施例3)
ナイロンに吸湿ポリマーであるポリビニルピロリドンを5重量%練り込んだ44デシテックス34フィラメント糸を編地表面に、実施例1で使用した極細アクリル紡績糸と60番手の綿との混紡糸(綿番手40番)を編地裏面となるように22Gの両面丸編機にて、裏糸を表糸にタックすることで接結しているリバーシブル状の両面丸編地を編成した。表1に、編組織と使用素材を示した。
【0039】
この両面丸編地を通常の丸編地の染色法に準じ、リラックス・精練、染色、乾燥および仕上げセットを行い、肌着用素材を得た。この肌着用素材を使用して婦人用長袖肌着を縫製し、前述の環境条件、運動条件で着用実験評価を行った。この婦人用長袖肌着の生地物性評価結果と官能評価結果を表2に示した。その結果、快適な肌着であると判断されるものであった。
【0040】
(比較例1)
綿番手60番の極細アクリル紡績糸(0.7デシテックス、繊維長38mm)を編地表面に、レーヨン100%の紡績糸(1.1デシテックス、繊維長38mm)を編地裏面となるように18Gの両面丸編機にて、4cmあたり160個の接結点を有する袋編状の両面丸編地を編成した。表1に、編組織と使用素材を示した。この両面丸編地を通常の丸編地の染色法に準じ、リラックス・精練、染色、乾燥および仕上げセットを行い、肌着用素材を得た。この肌着用素材を使用して婦人用長袖肌着を縫製し、前述の環境条件、運動条件で着用実験評価を行った。この婦人用長袖肌着の生地物性評価結果と官能評価結果を表2に示した。その結果、着用時に冷たく感じる上、特に低温の環境条件下では、衣服内温度、衣服内湿度ともに上昇せず、不快な肌着であった。
【0041】
(比較例2)
綿番手30番の綿100%の紡績糸を使い20Gのヨコ編機で編成し、通常染色加工仕上げをして肌着用編地を得た。表1に、編組織と使用素材を示した。この編地を使用して紳士用長袖肌着を縫製し、前述の環境条件、運動条件で着用実験評価を行った。このようにして得られた紳士用長袖肌着の生地物性評価結果と官能評価結果を表2に示した。その結果、高温から低温へ環境条件が変化したとき、衣服内温度が急激に下降し、身体全体に冷えを感じ、不快な肌着であった。
【0042】
(比較例3)
綿番手40番のアクリル紡績糸使い24Gのヨコ編機で編成し、通常染色加工後、起毛仕上げをして肌着用編地を得た。表1に、編組織と使用素材を示した。この編地を使用して婦人用長袖肌着を縫製し、前述の環境条件、運動条件で着用実験評価を行った。このようにして得られた婦人用長袖肌着の生地物性評価結果と官能評価結果を表2に、縫製品による着用実験評価結果を図3に示した。その結果、低温から高温へ環境条件が変化したとき、衣服内温度と衣服内湿度が急激に上昇し、著しく蒸れ感を感じ、不快な肌着であった。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、見た目が通常の肌着と変わらず、薄くて軽い保温性に優れ、かつ蒸れにくい肌着用素材を提供することができる。この肌着用素材は、各種の肌着に適用でき有用である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1は、本発明の肌着用素材をモデル的に例示説明するための拡大断面図である。
【図2】図2は、本発明の肌着用素材の結束点の測定方法を説明するための平面図である。
【図3】図3は、本発明の肌着用素材を使った肌着の着用実験結果を示した図(グラフ)である。(A)は衣服内温度を示したグラフである。(B)は衣服内湿度を示したグラフである。(C)は自己申告による保温性の官能評価結果を示したグラフである。
【符号の説明】
【0047】
1 :編地表面
2 :編地肌面
3 :空隙(空気層)
4 :肌面
5 :結束点
6 :結束点測定枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保温性clo値が0.7以上0.9以下で、かつ、透湿度が18,000g/m・24hr以上40,000g/m・24hr以下である編地からなることを特徴とする肌着用素材。
【請求項2】
生地の厚さが0.7mm以上1.4mm以下で、かつ保温性clo値が0.7以上0.9以下である編地からなることを特徴とする肌着用素材。
【請求項3】
編地が多層構造の編地であることを特徴とする請求項1または2記載の肌着用素材。
【請求項4】
編地片面に断熱素材を含む編地を配し、他面に吸湿素材を含む編地を配してなることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の肌着用素材。
【請求項5】
多層構造の編地を4cm中に1個以上25個以下の結束点で繋げてなることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の肌着用素材。
【請求項6】
保湿剤を付着させてなることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の肌着用素材。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の肌着用素材からなる肌着。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−132075(P2006−132075A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−289720(P2005−289720)
【出願日】平成17年10月3日(2005.10.3)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】