説明

肌着衣料用編地

【課題】 積極的に保温性を実現でき、併せてソフト感、吸放湿性なども具現しうる、新規な肌着衣料用編地を提供する。
【解決手段】 溶剤紡糸セルロース繊維を含む表面層と、太陽光選択吸収性繊維を含む裏面層とをナイロンフィラメント糸でタックしたリバーシブル構造からなる肌着衣料用編地。本発明では、溶剤紡糸セルロース繊維を用いることにより、編地の風合いをソフト感に優れたものとすることができ、かつ吸放湿性に優れたものとすることができる。また、太陽光選択吸収性繊維を用いることにより、編地の保温性を優れたものにすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な肌着衣料用編地に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、綿やナイロンなどを適宜組み合わせた、天竺組織の編地が肌着衣料として広く用いられている。
【0003】
特に、冬季においては、保温性を具備する肌着衣料が好まれることから、天竺組織に代えて袋編組織を採用した編地が肌着衣料に適用されている。例えば、特許文献1には、表面層がポリエステルウーリー糸、接結糸にポリエステル中空糸、裏面層に綿糸を使用した三層構造編地が開示されている。
【特許文献1】特開2002−235264号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の編地は、当該編地内部に包含される空気によって保温性を実現しようというものであり、冬季の室外環境において保温性を維持するには難点があった。
【0005】
本発明は、上記のような従来技術の欠点を解消するものであり、積極的に保温性を実現でき、併せてソフト感、吸放湿性なども具現しうる、新規な肌着衣料用編地を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究の結果、太陽光選択吸収性繊維を用いることで優れた保温性を具現でき、さらに、溶剤紡糸セルロース繊維を用いることで優れた風合い、吸放湿性を具現できると共に、ナイロンフィラメント糸でタックすることで編構造を安定化できることを見出し、本発明に到達した。
【0007】
すなわち、本発明は、溶剤紡糸セルロース繊維を含む表面層と、太陽光選択吸収性繊維を含む裏面層とをナイロンフィラメント糸でタックしたリバーシブル構造からなる肌着衣料用編地を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、積極的に保温性を実現でき、併せてソフト感、吸放湿性なども具現しうる、新規な肌着衣料用編地を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】
本発明の肌着衣料用編地は、表面層と裏面層とを結接糸でつないだリバーシブル構造の編地である。一般に、表面層とは編地内の外気側に位置する面をいい、裏面層とは身体側に位置する面をいう。ただし、本発明ではリバーシブル構造を採用していることから、これに限定されるものでなく、必要に応じて、表面層を身体側に、裏面層を外気側に位置させて使用する。
【0011】
本発明における表面層には溶剤紡糸セルロース繊維が用いられる。これにより、編地の風合いをソフト感に優れたものとすることができ、かつ吸放湿性に優れたものとすることができる。
【0012】
溶剤紡糸セルロース繊維とは、原料パルプを特定の溶剤に溶解することにより得られた繊維のことである。溶剤紡糸セルロース繊維は、一般に、N−メチルモルフォリン−N−オキサイド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピペリジン−N−オキサイド、ジメチルアセトアミドなどの溶剤に原料パルプを溶解した後、濾過して不純物を除去し、しかる後に乾式紡糸又は湿式紡糸することにより得ることができる。
【0013】
本発明においては、溶剤紡糸セルロース繊維を紡糸後の長繊維状態で用いてもよいが、編地の風合いを考慮し、好ましくは短繊維状態になるよう切断した後、紡績糸としたものを用いる。この場合、ムラの少ない紡績糸を得る点から、短繊維の繊維長として30〜60mmが好ましく、繊度として1.0〜4.0dtexが好ましい。また、紡績糸の太さとしては30〜60番手(英式綿番手)が好ましく、単糸の他、必要に応じて双糸、3子糸にして用いる。
【0014】
本発明における表面層は、基本的に溶剤紡糸セルロース繊維のみから形成させるのが最も好ましいが、必要に応じて他の繊維が含まれていてもよい。他の繊維としては、特に限定されるものでなく、天然繊維、再生繊維、合成繊維のいずれも使用可能である。ただし、編地の風合いを考慮して、表面層には溶剤紡糸セルロース繊維が40質量%以上含まれるのが好ましい。
【0015】
一方、本発明における裏面層には太陽光選択吸収性繊維が用いられる。これにより、編地の保温性を優れたものにすることができる。
【0016】
本発明における太陽光選択吸収性繊維としては、例えば、光吸収熱変換機能を有する遷移金属炭化物微粒子を練り込んだ繊維形成性ポリマーからなる繊維があげられる。
【0017】
光吸収熱変換機能を有する微粒子とは、可視光線、近赤外線の光エネルギーを吸収し、そのエネルギーを熱エネルギーに転換、放射する物質であり、一般に遷移金属炭化物からなる微粒子がこれに該当する。
【0018】
また、繊維形成性ポリマーとしては、ナイロン6やナイロン66で代表されるポリアミド系ポリマー、ポリエチレンテレフタレートで代表されるポリエステル系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレンで代表されるポリオレフィン系ポリマーの他、ポリアクリロニトリル系ポリマー、ポリビニルアルコール系ポリマー、ポリ塩化ビニル系ポリマーなどがあげられる。
【0019】
太陽光選択吸収性繊維の太さとしては特に限定されるものでないが、糸条繊度として33〜167dtexが好ましい。
【0020】
また、太陽光選択吸収性繊維の編地全体に占める質量比率としては、保温性の観点から3〜50質量%が好ましい。
【0021】
本発明の肌着衣料用編地では、上記溶剤紡糸セルロース繊維を含む表面層と、上記太陽光選択吸収性繊維を含む裏面層とが特定の結接糸でつながれている。
【0022】
本発明では、結接糸としてナイロンフィラメント糸を採用し、両層をタックしながらつなげる。具体的には、丸編機のシリンダー側及びダイヤル側から両層を形成しうる繊維を供給し、ナイロンフィラメント糸でタックしながら編成する。
【0023】
本発明の編地は、以上の構成を具備することにより、肌着衣料に適した特性を発揮することができる。特に、保温性を具備することから、冬季の使用に好適である。
【実施例】
【0024】
次に本発明を実施例により具体的に説明する。
【0025】
(実施例1)
表面層に撚係数3.5、太さ40番手(英式綿番手)の溶剤紡糸セルロース繊維を、裏面層に糸条繊度56dtexの太陽光選択吸収性繊維からなるウーリー加工糸を、結接糸に78dtexのナイロンフィラメント糸をそれぞれ用いた。編成には、釜径76cm、針密度24Gのダブル丸編機を用い、両層を結接糸でタックしながらつないだ。なお、溶剤紡糸セルロース繊維を構成する短繊維には、繊維長38mm、繊度1.3dtexの短繊維を使用した。
【0026】
次に、得られた編地を、順次、精練リラックス、液流染色、仕上げセットして、本発明の肌着衣料用編地を得た。
【0027】
(比較例1)
40番手の溶剤紡糸セルロース繊維に代えて同番手の綿糸を用いる以外は、実施例1と同様にして編地を得た。
【0028】
(比較例2)
56dtexの太陽光選択吸収性繊維からなるウーリー加工糸に代えて同糸条繊度のポリエチレンテレフタレートのみからなるウーリー加工糸を用いる以外は、実施例1と同様にして編地を得た。
【0029】
(比較例3)
実施例1における丸編機にて、太さ40番手の綿糸のみを用いてフライス組織の編地を編成した後、順次、精練リラックス、液流染色、仕上げセットして編地を得た。
【0030】
以上の編地のつき、風合い及び吸放湿性を官能評価したところ、実施例1、比較例2にかかる編地は、両性能とも比較例1、比較例3にかかる編地に比べ優れていた。
【0031】
また、保温性については、室温20℃、湿度65%で恒温恒湿に保たれた室内において、サーモビュアJTG−4200(日本電子株式会社製、赤外線センサー)を用いて、エネルギー源として写真用100W白色光源を照射したときの編地の表面温度を測定することで評価した。その結果、実施例1、比較例1にかかる編地は、比較例2、比較例3にかかる編地に比べ表面温度が高く、保温性に優れることが確認できた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶剤紡糸セルロース繊維を含む表面層と、太陽光選択吸収性繊維を含む裏面層とをナイロンフィラメント糸でタックしたリバーシブル構造からなる肌着衣料用編地。


【公開番号】特開2009−144259(P2009−144259A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−319659(P2007−319659)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【出願人】(599089332)ユニチカテキスタイル株式会社 (53)
【Fターム(参考)】