説明

肌観察装置

【課題】近接照明を可能にし、発光素子毎に照射角度の変更を容易にして、小型化及び薄型化した肌観察装置を提供する。
【解決手段】樹脂製のベース部4の外周に等間隔で配置されてベース部4の中心に向けて光を出射させる複数の発光素子としてのLED5と、LED5からの光をハウジング10の肌観察口10cに向けて反射させるためのミラー12と、ベース部4の中央で肌Sからの反射光が通過する開口部4a内に組み込まれた結像レンズ7と、結像レンズ7の光軸L上でベース部4に固定された撮像素子8と、を有している。ベース部4の底面4bには、開口部4aを中心として径方向に延在する8本の凹部11が形成されている。各凹部11内には、ミラー12が配置され、各凹部11の径方向における外端にはLED5が配置されている。LED5と偏光フィルタ2との間の光軸上に配置されたミラー12は、凹部11内で一対一の関係を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肌の表面を拡大して撮像するために利用される肌観察装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、特開2004−187248号公報がある。この公報に記載された肌観察装置において、光軸に近い側の発光素子列から発した光は第1の偏光板を透過して、水平振動方向をもった偏光として被写体に照射される。表面で反射された光は偏光を保っているが、同じ振動方向の第1の偏光板を通過した後、レンズを通って撮像素子で結像する。これに対して、光軸から離れた側の発光素子列から発した光は第2の偏光板を通過して垂直振動方向をもった偏光として、被写体に照射される。そして、表面で反射した光は垂直振動方向の偏光を保っているので、水平方向の第1の偏光板で阻止されて撮像素子には届かない。皮膚内部に入ってから反射される光は第1の偏光板を通過して撮像素子に達する。従って、光軸に近い側の発光素子列が発光したときは表面反射光を活用した照明モードであるキメモード、光軸から離れた側の発光素子列が点灯した場合は表面反射光を除去したシミモードとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−187248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した従来の肌観察装置にあっては、発光素子からの光が、偏光板を通して被写体に直接照射されているので、被写体に照明を近づければ近いづける程、照明にムラが発生し易く、近接照明が難しいといった問題点がある。また、肌を観察する場合に、肌のキメとシミを観察するにあたって、照明角度を変える必要があるが、従来にあっては、発光素子からの光出射方向を変えるにあたって、発光素子列を外側に向かって多重にする必要がある。これらのことは、装置の小型化を難しくしている。
【0005】
本発明は、近接照明を可能にし、発光素子毎に照射角度の変更を容易にして、小型化及び薄型化を容易にした肌観察装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、照明によって肌の状態を観察するための肌観察装置において、
肌を照らす複数の発光素子と、
発光素子と肌との間の光軸上に配置されて、発光素子からの光を透過させる偏光フィルタと、
発光素子によって照らされた肌からの反射光を受光して肌を撮像する撮像素子と、
肌からの反射光を撮像素子に集光させる結像光学部と、
発光素子と偏光フィルタとの間の光軸上に配置され、発光素子と一対一の関係を有する複数のミラーと、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この肌観察装置において、発光素子から出射される光はミラーで反射した後、肌に照射されるので、照明にムラが発生し難く、肌に照明を近づけるような近接照明が可能になる。さらに、肌のキメとシミを観察するにあたって、照明角度を変える必要があるが、本発明にあっては、発光素子とミラーとが一対一の関係を有しているので、ミラーの光反射角度を変えるだけで、肌のキメとシミを観察する際の異なる照明角度を容易に作り出すことができる。この場合、照明角度を変えるにあたって、発光素子の配列を多重にする必要がなくなるので、装置の小型化及び薄型化に寄与する。
【0008】
また、ミラーは、光軸が通る位置が山部又は谷部になる断面V字状の反射面を有すると好適である。
ミラーによって照明のムラを無くす場合であっても、照明の中心部分では高い輝度が出現することがあり、特に、照明を肌に近づければ近づける程、顕著になるが、このような構成のミラーを採用することで、照明の中央部分の輝度を低下させ、これによって、より均一な照明を達成させることができる。このことは、近接照明を達成させる上で極めて効果的である。
【0009】
また、ミラー及び発光素子は結像光学部の光軸の周囲に配置され、発光素子は、径方向でミラーの外方に配置され、各発光素子は、その光軸が結像光学部の光軸に対して直交する面に平行に配列されていると好適である。
このような構成を採用すると、ミラー及び発光素子を同一平面上に配置させることができ、これによって、発光素子から肌までの照射距離を短くすることなく、ミラー及び発光素子の設置スペースの高さを必要最小限に抑えることができる。
【0010】
また、偏光フィルタは、結像光学部の光軸を中心として、内側に配置された第1の偏光フィルタ部と、第1の偏光フィルタ部の外側に配置され、第1の偏光フィルタ部に対して90度の光位相差をもった第2の偏光フィルタ部と、を有し、発光素子は、第1の光源部と第2の光源部と、を有し、第1の光源部からの光は、第1の偏光フィルタ部を通った後に肌で反射して、第1の偏光フィルタ部に再度入射させられ、第2の光源部からの光は、第2の偏光フィルタ部を通った後に肌で反射して、第1の偏光フィルタ部に入射させられ、第1の光源部は、電球色の発光素子であり、第2の光源部は、昼光色の発光素子であると好適である。
このような構成によって、第1の光源部により肌のキメを観察することができ、第2の光源部によって肌のシミを観察することができる。そして、肌のキメ観察に電球色の発光素子を利用し、肌のシミ観察に昼光色の発光素子を利用することで、肌の状態をより効果的に観察することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、近接照明を可能にし、発光素子毎に照射角度の変更を容易にして、小型化及び薄型化が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る肌観察装置に適用される撮像照明ユニットを示す分解斜視図である。
【図2】図4のII−II線に沿う断面図である。
【図3】撮像照明ユニットの斜視図である。
【図4】撮像照明ユニットの底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る肌観察装置の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0014】
肌観察装置には、ハンディタイプ又は据え置きタイプがあり、何れのタイプであっても、図1〜図4に示されるような撮像照明ユニットUを備えている。この撮像照明ユニットUは、CCD又はCMOSイメージセンサなどの撮像素子や照明を備えており、撮像された肌Sの状態は、画像としてモニター(図示せず)に映し出される。
【0015】
図1及び図2に示されるように、ハウジング10内に格納される撮像照明ユニットUは、ユニット本体部1と、ユニット本体部1に固定されて照明の偏光を可能にする偏光フィルタ2と、余剰な光を規制するためのマスク3と、を備えている。そして、ハウジング10は、撮像照明ユニットUを内部に固定させるために円筒形状をなす胴部10aと、肌Sに先端を圧着させるために円錐台形状をなす遮光部10bと、からなる。この遮光部10bの先端には円形の肌観察口10cが形成されている。
【0016】
図1〜図4に示されるように、ユニット本体部1は、薄形すなわち扁平な略八角形の板状をなす樹脂製のベース部4と、ベース部4の外周に等間隔で配置されてベース部4の中心に向けて光を出射させる複数(8個)の発光素子としてのLED5と、LED5からの光をハウジング10の肌観察口10cに向けて反射させるためのミラー12と、ベース部4の中央で肌Sからの反射光が通過する開口部4a内に組み込まれた結像光学部としての結像レンズ7と、結像レンズ7の光軸L上でベース部4に固定された撮像素子としてのCCD又はCMOSイメージセンサ8と、を有している。
【0017】
ベース部4の底面4bには、開口部4aを中心として径方向に延在する8本の凹部11が形成されている。各凹部11内には、ミラー12が配置され、各凹部11の径方向における外端にはLED5が配置されている。そして、各LED5から出射された光は、ミラー12で反射して肌Sを照らす。
【0018】
LED5と肌Sとの間、具体的にはLED5と偏光フィルタ2との間の光軸上に配置されたミラー12は、凹部11内で一対一の関係を有し、各LED5は、基板5aに取り付けられており、この基板5aは、ベース部4の周面に形成された基板収容凹部4c内にセットされ、ネジ13によって固定されている。各ミラー12は、反射面が肌S側に向くようにベース部4の凹部11の底面に貼り付けられ、断面V字状の反射面12bを有している。このミラー12にあっては、凹部11内でLED5の光軸が通る位置に山部12aが配置され、偏光フィルタ2側に突出するようなV字形状になっている。山部12aは、LED5の光軸と結像レンズ7の光軸Lとからなる平面上に含まれている。なお、山部12aではなく谷部が配置されてもよい。
【0019】
ミラー12によって、LED5による照明のムラを無くす場合であっても、照明の中心部分では高い輝度が出現することがあり、特に、照明を肌Sに近づければ近づける程、顕著になるが、このような構成のミラー12を採用することで、照明の中央部分の輝度を低下させ、これによって、より均一な照明を達成させることができる。このようなミラー12の形状は、近接照明を達成させる上で極めて効果的である。
【0020】
ベース部4上で一対一の関係をもって環状に配置されたミラー12及びLED5は、周方向で等間隔に配置され、LED5は、径方向でミラー12の外方に配置され、各LED5は、出射する光軸が結像レンズ7の光軸Lに対して直交する面と平行となるように、結像レンズ7の光軸Lに対して直交する同一の平面上に配列されている。このような構成を採用すると、ミラー12とLED5とを同一平面上に配置させることができ、これによって、ミラー12及びLED5の設置スペースの高さすなわち凹部11の深さを必要最小限に抑えることができ、ベース部4の肉厚を薄くすることができる。
【0021】
撮像照明ユニットUは、肌Sのキメとシミの観察を可能にしている。肌Sのキメをより効果的に観察するために、電球色(色温度約3000K)のLED5Aが4個利用される。肌表面に近い色を照射することで、反射光を強く感じることができる。肌Sのシミをより効果的に観察するために、昼光色(色温度約6500K)のLED5Bが4個利用される。特に、昼光色はシミの色(褐色)の補色関係となるので効果が高い。そして、LED5は、第1の光源部としてのキメ観察用のLED5Aと、第2の光源部としてのシミ観察用のLED5Bと、からなり、キメ観察用のLED5Aとシミ観察用のLED5Bは、周方向で交互に配置されている。同様に、キメ観察用のミラー12Aとシミ観察用のミラー12Bも、周方向で交互に配置されている。
【0022】
さらに、光が肌Sに照射される場合、光軸Lに対する光の入射角度がキメ観察用とシミ観察用とで異なる。キメ観察用のミラー12Aは、光軸Lに対する入射角αが16.5±5°になるようにベース部4の底面4bに接着され、シミ観察用のミラー12Bも、光軸Lに対する入射角βが27±3°になるようにベース部4の底面4bに接着されている。入射角α,βは、ミラー12の山部12aで光が反射したことを想定して決定される。
【0023】
このような構成のユニット本体部1には、凹部11を塞ぐようにして偏光フィルタ2がベース部4の底面4bに接着されている。この偏光フィルタ2は、ベース部4の底面4bに沿って延在する。
【0024】
偏光フィルタ2は、結像レンズ7の光軸Lを中心とした内側に配置されてP波を偏光するための第1の偏光フィルタ部2Aと、第1の偏光フィルタ部2Aの外側に配置されてS波を偏光するために、第1の偏光フィルタ部2Aに対して90度の光位相差をもった第2の偏光フィルタ部2Bと、からなる。そして、第1の偏光フィルタ部2Aと第2の偏光フィルタ部2Bとは、結像レンズ7の光軸Lに対して直交する同一の平面上に配置されている。
【0025】
キメ観察用のミラー12Aからの光は、電球色であり、第1の偏光フィルタ部2Aを通った後に肌Sで反射して、第1の偏光フィルタ部2Aに再度入射させられ、開口部4a内の結像レンズ7を介してCMOSイメージセンサ8で撮像される。また、シミ観察用のミラー12Bからの光は、昼光色であり、第2の偏光フィルタ部2Bを通った後に肌Sで反射して、第1の偏光フィルタ部2Aに入射させられ、開口部4a内の結像レンズ7を介してCMOSイメージセンサ8で撮像される。
【0026】
具体的に、偏光フィルタ2は、フィルタ機能をもった一枚の基材から第1及び第2の偏光フィルタ部2A,2Bを打ち抜くことで成形される。第2の偏光フィルタ部2Bの中央で十文字状に打ち抜かれた部分が第1の偏光フィルタ部2Aをなし、この十文字部2Aを、90度回動させて、第2の偏光フィルタ部2Bの打ち抜き穴2a内に戻すことで、十文字部2Aの周囲に第2の偏光フィルタ部2Bが配置されることになる。
【0027】
このような構成を採用することで、偏光フィルタ2を一枚の基材から容易に作り出すことができる。そして、第1の偏光フィルタ部2Aが十文字状に形成されているので、確実に90度回動させることができ、90度の光位相差をもった2種類の偏光フィルタ部2A,2Bを略同一平面上に配置させることができる。
【0028】
さらに、偏光フィルタ2から余剰な光が漏れ出ることを防止するためのマスク3が偏光フィルタ2に貼り付けられている。このマスク3には、凹部11の一部を開放するように形成された開口部3aが形成されている。従って、マスク3を採用することで、ミラー12で反射されずに肌Sに入射される光をできるだけカットすることができるので、照明を肌Sに近づけても、余剰な光が結像レンズ7内に入射することが適切に回避され、近接照明であっても明るくぼやけた画像になることがなくなる。
【0029】
このような肌観察装置において、LED5から出射される光はミラー12で反射した後、肌Sに照射されるので、照明にムラが発生し難く、肌Sに照明を近づけるような近接照明が可能になる。さらに、肌Sのキメとシミを観察するにあたって、照明角度を例えば、入射角α(16.5±5°)と入射角β(27±3°)に設定する必要があるが、LED5とミラー12とが一対一の関係を有しているので、ミラー12の光反射角度を変えるだけで、肌Sのキメとシミを観察する際の異なる照明角度を容易に作り出すことができる。この場合、照明角度を変えるにあたって、LED5の配列を多重にする必要がなくなるので、装置の小型化及び薄型化に寄与する。
【0030】
本発明は、前述した実施形態に限定されないことは言うまでもない。例えば、山部を湾曲させてもよい。また、ミラーの反射面を湾曲させてもよい。入射角の異なる第3の光源部を備えてもよい。
【符号の説明】
【0031】
U…撮像照明ユニット、S…肌、2…偏光フィルタ、2A…第1の偏光フィルタ部(十文字部)、2B…第2の偏光フィルタ部、4…ベース部、4a…ベース部の開口部、5…LED(発光素子)、5A…第1の光源部、5B…第2の光源部、7…結像光学部(結像レンズ)、8…撮像素子、11…凹部、12…ミラー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明によって肌の状態を観察するための肌観察装置において、
前記肌を照らす複数の発光素子と、
前記発光素子と前記肌との間の光軸上に配置されて、前記発光素子からの光を透過させる偏光フィルタと、
前記発光素子によって照らされた前記肌からの反射光を受光して前記肌を撮像する撮像素子と、
前記肌からの反射光を前記撮像素子に集光させる結像光学部と、
前記発光素子と前記偏光フィルタとの間の光軸上に配置され、前記発光素子と一対一の関係を有する複数のミラーと、を備えたことを特徴とする肌観察装置。
【請求項2】
前記ミラーは、前記光軸が通る位置が山部又は谷部になる断面V字状の反射面を有することを特徴とする請求項1記載の肌観察装置。
【請求項3】
前記ミラー及び前記発光素子は前記結像光学部の光軸の周囲に配置され、前記発光素子は、径方向で前記ミラーの外方に配置され、前記各発光素子は、その光軸が前記結像光学部の光軸に対して直交する面に平行に配列されていることを特徴とする請求項1又は2記載の肌観察装置。
【請求項4】
前記偏光フィルタは、前記結像光学部の前記光軸を中心として、内側に配置された第1の偏光フィルタ部と、前記第1の偏光フィルタ部の外側に配置され、前記第1の偏光フィルタ部に対して90度の光位相差をもった第2の偏光フィルタ部と、を有し、
前記発光素子は、第1の光源部と第2の光源部と、を有し、
前記第1の光源部からの光は、前記第1の偏光フィルタ部を通った後に前記肌で反射して、前記第1の偏光フィルタ部に再度入射させられ、
前記第2の光源部からの光は、前記第2の偏光フィルタ部を通った後に前記肌で反射して、前記第1の偏光フィルタ部に入射させられ、
前記第1の光源部は、電球色の発光素子であり、前記第2の光源部は、昼光色の発光素子であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の肌観察装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−22253(P2013−22253A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160105(P2011−160105)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】